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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C09K
管理番号 1284124
審判番号 無効2013-800071  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-24 
確定日 2014-01-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第4839351号発明「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

1.本件特許
本件特許第4839351号の請求項1ないし8に係る発明についての出願は、特許法第184条の3第1項の規定により2004年12月13日の国際出願日にされたものとみなされる国際特許出願(優先権主張:平成15年12月19日、特願2003-423317号)の一部を平成20年7月14日に新たな特許出願(特願2008-183142号)としたものであり、平成23年10月7日に特許権の設定登録がなされたものである。

2.以降の手続の経緯
本件審判は、下記第2の請求の趣旨及び理由により、平成25年4月24日に審判請求人(以下「請求人」という。)により請求されたものであり、以降の手続の経緯は、以下のとおりである。(なお、以下、審判被請求人を「被請求人」という。)
平成25年 5月13日付け 答弁指令・請求書副本送付
平成25年 7月16日 答弁書
平成25年 8月 8日付け 答弁書副本の送付
平成25年 8月22日付け 審理事項通知書(両当事者あて)
平成25年 9月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成25年 9月11日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)副本送付
平成25年 9月24日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 9月25日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)副本送付
平成25年10月 1日 口頭審理
平成25年10月15日 上申書(請求人)
平成25年10月30日 上申書(被請求人)

第2 本件請求の趣旨及び当事者の主張

1.本件請求の趣旨及び請求人の主張
請求人は、本件特許第4839351号の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、本件特許が、概略、下記の理由により特許法第123条第1項第2号の規定に該当する旨及び下記証拠方法を提示した。

請求項1ないし8に記載された各発明は、いずれも、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、必要に応じて当業者の周知技術(甲第6号証ないし甲第9号証)も参照し、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであり、請求項1ないし8に記載された発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求人提示の証拠方法:
<請求時>
甲第1号証:国際公開第03/087023号
甲第2号証:特開2000-182776号公報
甲第3号証:特開2001- 97897号公報
甲第4号証:特許第3148176号公報
甲第5号証:国際公開第01/21729号
甲第6号証:特開平11-167991号公報
甲第7号証:特開平11-307255号公報
甲第8号証:R&D Review of Toyota CRDL,Vol.36,No.3(2001.9)p57
甲第9号証:豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.33,No.2(1998.6)p3?22
参考資料1:本件特許に係る出願のファミリー米国出願(出願番号:10-583554)における2011年3月18日付けオフィスアクションに対する応答書(部分訳添付)
参考資料2:本件特許に係る出願のファミリー欧州出願(出願番号:04807321.7)における2012年10月25日付け通知書(部分訳添付)
<平成25年9月10日付け口頭審理陳述要領書提出時>
甲第10号証:特開2001-284050号公報
甲第11号証:米国特許第5935721号明細書(部分訳添付)
甲第12号証:特開平6-1973号公報
甲第13号証:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p3?26(第1章)及びp82?102(第6章)
(以下、「甲第1号証」などを「甲1」などと略していう。)

2.答弁の趣旨及び被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、下記の証拠方法を提示の上、請求人が主張する上記無効理由は、いずれも理由がない旨の主張をしている。

・被請求人提示の証拠方法
<答弁時>
乙第1号証:森竜雄著「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい有機ELの本」2010年5月20日(初版3刷)、日刊工業新聞社発行、p67?92(第3章)
<平成25年9月24日付け口頭審理陳述要領書提出時>
乙第2号証:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p27?39(第2章)
乙第3号証:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p148?160(第10章)
乙第4号証:別件の特許無効審判事件(無効2008-800045号)において請求人が提示した2008年9月1日付け実験報告書
乙第5号証:乙第4号証に係る無効審判事件の審決取消訴訟(平成21年(行ケ)10096号)において請求人が提出した第1準備書面
乙第6号証:被請求人従業者西村和樹の陳述書
<平成25年10月30日付け上申書提出時>
乙第7号証:H.Aziz et al,”Degradation in tris(8-hydroxyquioline)aluminum(ALQ_(3))-based organic light emitting devices(OLEDs)”,Organic Light-Emitting Materials and Devices IV,Proc.SPIE,Vol.4105,(2001),p.251?255(部分訳添付)
(以下、「乙第1号証」などを、「乙1」などということがある。)

第3 請求人主張の無効理由について
請求人が主張する無効理由の概略については、上記第2で示したとおりであるが、口頭審理陳述要領書における主張・証拠方法を踏まえて具体的に整理すると請求人が主張する無効理由は、甲1ないし13の提示を証拠方法とし、以下の「無効理由1」及び「無効理由2」に示すとおりであると解される。

1.無効理由1
甲1に記載された発明を主たる引用発明とし、甲2ないし甲5の知見を組み合わせること及び必要に応じてさらに甲6ないし甲9の当業者の周知技術並びに甲10ないし甲13の当業者の周知技術を組み合わせることにより、本件特許の請求項1ないし8に係る発明につき当業者が容易に発明することができたとするもの

2.無効理由2
甲2に記載された発明を主たる引用発明とし、甲1及び甲3ないし甲5の知見を組み合わせること並びに必要に応じてさらに甲6ないし甲9の当業者の周知技術ないしは甲10ないし甲13の当業者の周知技術を組み合わせることにより、本件特許の請求項1ないし8に係る発明につき当業者が容易に発明することができたとするもの

第4 当審の判断
当審は、
請求項1ないし8に係る発明についての特許につき、請求人が主張するいずれの無効理由についても理由がない、
と判断する。以下、詳述する。

I.本件特許に係る発明について
本件審判における各無効理由につき判断を行うにあたり、前提として本件特許に係る発明につき整理する。
本件特許に係る発明は、請求項1ないし8に記載された事項で特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】


(式中、A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基から選ばれる基である。
Ar^(1)及びAr^(2)は水素原子である。
R^(1)?R^(8)は水素原子である。
R^(9)及びR^(10)は水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【請求項2】
一般式(1)において、前記A^(1)及びA^(2)がそれぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項3】
A^(1)及びA^(2)が、それぞれ1-ナフチル基及び2-ナフチル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項4】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域が、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記有機薄膜層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料をホスト材料として含有する請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項4?6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項4?7のいずれかに記載の
有機エレクトロルミネッセンス素子。」
(以下、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明8」という。併せて「本件発明」ということがある。)

II.各甲号証に記載された事項
各甲号証の記載事項につき以下それぞれ摘示する。

1.甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(ア-1)
「1.下記一般式(A)で表される新規芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。


(式中、Ar^(1)?Ar^(3)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリール基、Ar^(4)は置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリーレン基、Ar^(5)は置換もしくは無置換の炭素数6?30の3価の芳香族残基である。R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2?40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5?40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2?40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7?40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6?40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2?30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3?40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar^(1)とAr^(2)及びR^(1)とR^(2)は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)〕
2.前記一般式(A)において、Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数5?60のアリール基である請求項1に記載の新規芳香族化合物。
・・(中略)・・
5.有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である請求項1?4のいずれかに記載の新規芳香族化合物。
6.陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1?4のいずれかに記載の芳香族化合物を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記有機薄膜層が、電子輸送層及び/又は正孔輸送層を有し、該電子輸送層及び/又は正孔輸送層が、請求項1?4のいずれかに記載の芳香族化合物を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
9.前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.電子輸送領域、又は陰極と有機薄膜層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.青色系発光する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」
(59頁?64頁)

(ア-2)
「技術分野
本発明は、新規な芳香族化合物及びそれを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関し、特に、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光し、さらに高温安定性に優れ長寿命の有機EL素子を提供可能な新規芳香族化合物及びそれを利用した有機EL素子に関するものである。」
(1頁3行?7行)

(ア-3)
「背景技術
有機EL素子は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告・・(中略)・・がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8-ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、または正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
また、発光材料としてはトリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それらからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特開平8-239655号公報、特開平7-138561号公報、特開平3-200289号公報等)。
また、発光材料としてフェニルアントラセン誘導体を用いた素子は特開平8-012600に開示されている。このようなアントラセン誘導体は青色発光材料として用いられるが、さらに高効率発光が求められていた。一方、素子寿命を伸ばすように薄膜の安定性が求められており、従来のアントラセン誘導体は結晶化し薄膜が破壊される場合が多く改善が求められていた。例えば、米国特許0593571号明細書には、ジナフチルアントラセン化合物が開示されている。しかしこの化合物は左右及び上下の対称性の分子構造であるため、高温保存及び高温駆動において容易に配列し結晶化が生じる。また、特開2000-273056号公報に左右非対称のアリルアントラセン化合物が開示されているが、アントラセンジールに置換する基の一方が、単純なフェニル基やビフェニル基であり結晶化を防ぐことはできなかった。」
(1頁8行?2頁17行)

(ア-4)
「発明の開示
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光し、さらに高温安定性に優れ長寿命の有機EL素子を提供可能な新規芳香族化合物及びそれを利用した有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高ガラス転移温度であり、かつ非対称な分子構造を保有する化合物を有機EL素子の有機薄膜層の材料として用いることにより、前記の課題を解決することを見出し本発明を解決するに至った。」
(2頁18行?3頁1行)

(ア-5)
「発明を実施するための最良の形態
本発明は、下記一般式(A)又は(B)で表される新規な芳香族化合物である。
A-Ar-B (A)
A’-Ar-Ar-B (B)
上記一般式(A)又は(B)において、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。
上記一般式(A)又は(B)において、Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基であり、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数5?60のアリール基であると好ましい。
Bの置換基であるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、・・(中略)・・スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、2,2-ジトリルビニル基・・(中略)・・等が挙げられる。
Bの置換基であるアリールアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基・・(中略)・・等が挙げられる。
Bの置換又は無置換の複素環基としては、例えば、・・(中略)・・2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基・・(中略)・・等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数2?60のものである。
Bのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、・・(中略)・・カルバゾリル基・・(中略)・・等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数5?60のものである。」
(7頁17行?11頁8行)

(ア-6)





(31頁?33頁)

(ア-7)
「合成例1(化合物(A1)の合成)
・・(中略)・・
(3)9-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(化合物(A1))の合成
・・(中略)・・
合成例2(化合物(A2)の合成)
・・(中略)・・
(4)9-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)-10-(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(化合物(A2))の合成
・・(中略)・・
合成例3(化合物(A3)の合成)
・・(中略)・・
(4)9-(3,4-ジフェニルフェニル)-10-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)アントラセン(化合物(A3))の合成
・・(中略)・・
合成例4(化合物(A4))の合成
・・(中略)・・
(4)9-(3-(4-フェニルフェニル)フェニル)-10-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)アントラセン(化合物(A4))の合成
・・(中略)・・
合成例5(化合物(A5))の合成
・・(中略)・・
(4)9-(4-ジフェニルアミノフェニル)-10-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)アントラセン(化合物(A5))の合成
・・(中略)・・
合成例6(化合物(A11))の合成
9-(4-ジフェニルアミノフェニル)-10-(3,4-ジフェニルフェニル)アントラセン(化合物(A11))の合成
・・(中略)・・
合成例7(化合物(A14))の合成
9-(4-ジフェニルアミノフェニル)-10-(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(化合物(A14))の合成
・・(中略)・・
合成例8(化合物(A20))の合成
9-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-10-(4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル)アントラセン(化合物(A20))の合成
・・(後略)」
(42頁3行?53頁10行)

(ア-8)
「実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのN,N’-ビス(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-β-ナフチル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル膜(TPD232膜)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nmのN,N,N‘,N’-テトラキス(4-ビフェニル)-4,4’-ベンジジン膜(BPTPD膜)を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1)を蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmの下記Alq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ド-パントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電圧6Vで発光輝度176cd/m^(2)、発光効率2.2cd/Aの青色発光が得られた。
さらにこの素子を封止後、100℃の恒温槽に500時間放置した後、倍率20倍の実体顕微鏡によって発光面に輝点又は色の変化が生じているなどで欠陥が生じているかを観察し評価する高温保存試験を行った。以上の結果を表1に示す。
・・(中略)・・
実施例2?10
実施例1において、化合物(A1)の代わりに表1に記載した化合物を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。これらの素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
比較例1
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第05935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である下記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。


比較例2
実施例1において、化合物(A1)の代わりに特開2000-273056号公報に記載のアリールアントラセン化合物である下記(C2)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。


比較例3
実施例1において、化合物(A1)の代わりに特開2000-273056号公報に記載のアリールアントラセン化合物である下記(C3)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。




※高温保存試験結果においては、発光面に輝点又は色の変化が生じているなどにより欠陥が生じていない場合を良好とし、輝点、色の変化が生じている場合を結晶化とした。Tgの欄におけるNDはDSC(示差走査熱量測定)により観測されなかったということである。
表1に示したように、対称性の良いC1を用いた比較例1では、結晶化が生じ発光面に欠陥が生じ、発光色も青緑色であり青色の純度が優れていない。また、比較例2及び3における化合物C2及びC3は分子構造の左右が非対象であるが、結晶化が生じており、Tgが低いためであると考えられる。本発明の化合物は非対称でありかつTgが比較的高いため、高温保存試験の結果は良好であった。
実施例11
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(旭硝子社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのTPD232を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nmのBPTPD膜を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1)を蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この時同時に下記スチリルアミン系の発光分子(D1)を7重量%添加した。この膜上に膜厚20nmのAlq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜を形成した。この膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電圧5.5Vで発光輝度200cd/m^(2)、発光効率5.5cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m^(2)にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間(半減寿命)は3000時間であった。


比較例4
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第05935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である上記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
この素子は、直流電圧5.5Vで発光輝度180cd/m^(2)、発光効率5.0cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m^(2)にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間(半減寿命)は1500時間と短かった。」
(53頁11行?58頁1行)

2.甲第2号証
甲第2号証には以下の事項が記載されている。

(イ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 アノードとカソードを含み、さらにそれらの間に正孔輸送層及び前記正孔輸送層と共働関係にあるように配置された電子輸送層を含んで成る有機系多層型エレクトロルミネセンス素子であって、前記正孔輸送層が下式の有機化合物を含むことを特徴とするエレクトロルミネセンス素子。
【化1】


(上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。)
・・(中略)・・
【請求項8】 アノードとカソードを含み、さらにそれらの間に正孔輸送層及び前記正孔輸送層と共働関係にあるように配置された電子輸送層を含んで成る有機系多層型エレクトロルミネセンス素子であって、前記正孔輸送層が下式の有機化合物を含むことを特徴とするエレクトロルミネセンス素子。
【化8】


(上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。)
・・(後略)」

(イ-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機系エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】有機系エレクトロルミネセンス素子は、光電子素子の一種であって当該素子を流れる電流に応答して発光するものである(略して、エレクトロルミネセンスの一般的頭字語であるELを代用する場合がある)。また、電流-電圧挙動が非線形である、すなわちEL素子を流れる電流がEL素子に印加される電圧の極性に依存する有機系EL素子を記述するために、用語「有機系発光ダイオード」又は「OLED」も一般に用いられている。本具体的態様には、用語「EL」及び「EL素子」にはOLEDとして記述される素子が含まれるものとする。
【0003】一般に、有機系EL素子は、アノードとカソードの間に有機系発光媒体が挟み込まれた層状構造を有している。通常、有機系発光媒体とは、非晶質又は結晶性の薄膜形態にある発光性有機材料又はその混合物をさす。初期の有機系EL素子の代表例が、Gurneeらの米国特許第3,172,862号(1965年3月9日発行)、Gurneeの米国特許第3,173,050号(1965年3月9日発行)、Dresnerの「Double Injection Electroluminescence in Anthracene」(RCA Review, Vol.30,pp.322-334,1969)、及びDresner の米国特許第3,710,167号(1973年1月9日発行)に記載されている。これらの従来技術における有機系発光媒体は、共役系有機ホスト物質と縮合ベンゼン環を有する共役系有機活性化剤とで形成されたものである。有機ホスト物質の例として、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ピセン、カルバゾール、フルオレン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、トリフェニレンオキシド、ジハロビフェニル、トランス-スチルベン及び1,4-ジフェニルブタジエンが提案されている。活性化剤の例としてはアントラセン、テトラセン及びペンタセンが挙げられている。有機系発光媒体は、1μmよりもはるかに厚い単層として存在するものであった。EL素子を駆動するのに要する電圧は二三百ボルト程度と高かったため、これらのEL素子の発光効率はむしろ低いものであった。」

(イ-3)
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】芳香族アミン類の正孔輸送特性が周知であるとの前提に立てば、有機系EL素子の正孔輸送層に芳香族アミン類以外の有機化合物を使用することは一般的ではない。しかしながら、二層型EL素子の正孔輸送層として芳香族アミン類を使用することには大きな欠点がある。すなわち、一般にアミン類は強い電子供与体であるため、電子輸送層に用いられる発光材料と相互作用して、蛍光消光中心を形成せしめ、ひいてはEL発光効率を低下させることになる場合がある。本発明の目的は、有機系EL素子の正孔輸送層として芳香族アミン類以外の有機化合物であってEL性能の向上をもたらすものを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、アノードとカソードを含み、さらにそれらの間に正孔輸送層及び前記正孔輸送層と共働関係にあるように配置された電子輸送層を含んで成る有機系多層型エレクトロルミネセンス素子であって、前記正孔輸送層が下式Iの有機化合物を含むことを特徴とするものにおいて達成される。
【0010】
【化12】


【0011】上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。正孔輸送層材料の代表例として以下のa?cが挙げられる。
・・(中略)・・
c)式VI,VII,VIII,IX,X,XIのアントラセン誘導体
【0016】
【化15】
・・(中略)・・


・・(中略)・・
【0018】上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。
【0019】当該正孔輸送層に用いられる芳香族炭化水素又は縮合芳香族炭化水素は、アルキルアミノ部分又はアリールアミノ部分を含む必要がないという特徴を有する。本発明による有機化合物のイオン化ポテンシャルは5.0eVよりも高い。本発明による正孔輸送層は、電子輸送層もしくは発光層又は発光層としても機能する電子輸送層と共に効果的に働き、効率の高いエレクトロルミネセンス素子を提供する。」

(イ-4)
「【0063】・・(中略)・・下記の分子構造は、上記一般式VI,VII,VIII,IX,X,XIで表されたアントラセン誘導体の具体例を構成するものである。これらの化合物はEL素子における正孔輸送材料として特に有用である。
・・(中略)・・
【0069】
【化52】




(イ-5)
「【0078】好ましいEL素子構造体は、アノードと、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層とを含んで成る。この好ましいEL構造体における発光層は、電子を輸送することもできるので、これを、高発光機能が付加された電子輸送層とみなすこともできる。その主要機能はエレクトロルミネセンスのための発光中心を提供することである。この発光層は、ホスト材料に一種以上の蛍光色素(FD)をドープしたものを含む。通常、この蛍光色素はホスト材料に対して2?3モル%以下程度の量で存在するが、EL発光を主に当該蛍光色素によるものとさせるには、それで十分である。この方法を用いて高効率EL素子を構築することができる。同時に、EL素子の発光色を、発光波長の異なる複数種の蛍光色素を使用することにより調節することもできる。蛍光色素の混合物を使用することにより、個々の蛍光色素のスペクトルを組み合わせたELカラー特性を得ることができる。EL素子に関するドーパントのスキームについては譲受人共通のTangの米国特許第4,769,292号に相当に詳しく記載されている。
【0079】ホスト材料中に存在させる場合に発光の色相を調節することができるドーパントとして蛍光色素を選択する際の重要な関係は、当該分子の最高被占軌道と最低空軌道との間のエネルギー差として定義されるそれぞれのバンドギャップポテンシャルを比較することである。
【0080】本発明が開示する有機系EL素子の発光層に好適なホスト材料は、オキシン(一般には8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリン又はAlqとも称する)自体のキレートをはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物である。別の種類の好適なホスト材料として、米国特許第5,141,671号に記載されている混合リガンド型8-キノリノラトアルミニウムキレートがある。別の種類の好適なホスト材料として、米国特許第5,366,811号に記載されているジスチリルスチルベン誘導体がある。
【0081】ホスト材料からドーパント分子への効率的なエネルギー伝達に必要な条件は、当該ドーパントのバンドギャップがホスト材料のそれよりも小さいことである。発光層にドーパントとして用いられる好適な蛍光色素として、クマリン類、スチルベン類、ジスチリルスチルベン類、アントラセン誘導体、テトラセン、ペリレン類、ローダミン類及びアリールアミン類が挙げられる。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(ウ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(I)
【化1】


〔式中、Ar^(1)は置換基を有していてもよい炭素数6?30の芳香族環からなる二価の基又はO,N,S及びSiの中から選ばれた少なくとも一種のヘテロ原子を含む炭素数4?30の二価の複素環式基(但し、s,tがともに0でkが1の場合はAr^(1)は9,10-アントリレンではない)、Ar^(2)及びAr^(3)は、それぞれ独立に置換基を有していてよい炭素数6?30のアリーレン基又はO,N,S及びSiの中から選ばれた少なくとも一種のヘテロ原子を含む炭素数4?30の二価の複素環式基(但し、s、tが0の場合は、化合物の末端に位置するAr^(2)、Ar^(3)は対応する一価の芳香族基又は複素環式基)、Ar^(4)?Ar^(7)は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数6?20のアリール基又はO,N,S及びSiの中から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を含む炭素数4?30の一価の複素環式基を示し、kは1,2又は3,m及びnはそれぞれ1又は2、s及びtはそれぞれ0又は1を示す。但し、Ar^(2)とAr^(3)のうちの少なくとも1つは、下記の式
【化2】


(式中、R^(1) ?R^(4) はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1?8のアルキル基、炭素数1?8のアルコキシ基、炭素数1?12のアリ-ル基であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成してもよい。)で表されるナフチレン基(但し、s、tが0の場合は、化合物の末端に位置するAr^(2)、Ar^(3)は対応する一価のナフチル基)である。〕で表される有機化合物。
【請求項2】 一対の電極間に挟持された有機発光層を少なくとも有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、請求項1に記載の有機化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】 請求項1に記載の有機化合物を主として発光帯域に含有させてなる請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】 請求項1に記載の有機化合物を有機発光層に含有させてなる請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】 有機発光層に、さらに再結合サイト形成物質を含有させてなる請求項2又は4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】 再結合サイト形成物質が、蛍光量子収率0.3?1.0の蛍光物質である請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】 再結合サイト形成物質が、スチリルアミン系化合物、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体及びピラン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種である請求項5又は6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】 請求項1に記載の有機化合物を再結合サイト形成物質として含有する請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

(ウ-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な有機化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスを「EL」と略記する。)に関する。さらに詳しくは、本発明は、有機EL素子の構成材料として有用な有機化合物、及びこのものを用いてなる優れた発光効率を有する有機EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
・・(中略)・・
【0003】このようなことから、駆動電圧を10ボルト程度まで低下させることができ、かつ高輝度に発光することのできる有機EL素子が、近年盛んに研究されている。例えば有機薄膜EL素子として、透明電極/正孔注入層/発光層/背面電極の積層型構造のものが提案されており(Appl.Phys.Lett.,第51巻,第913?915ページ(1987年)および特開昭63-264629号公報)、これらは、ここで用いられている正孔注入層により、効率よく正孔を発光層内に注入することができるようになされている。このような有機EL素子において用いられる発光層は、単層であってもよいのであるが、単層では電子輸送性と正孔輸送性とのバランスが良くないことから、多層に積層することにより、性能の向上が図られていた。
【0004】ところで、このように積層構造に形成するためには、その製造工程が煩雑になり所要時間も長くなるほか、各層に薄膜性が要求されるなどの制限が多いという問題がある。さらに、近年においては、情報機器などのコンパクト化や携帯型への移行の要請が高まり、これらの駆動電圧のさらなる低電圧化の要望が増大している。そこで、このような軽量化や駆動電圧の低電圧化のために、発光材料や正孔輸送材料などの開発が試みられている。アントラセンは発光材料として知られているが、均一な薄膜の形成が困難であることから、種々の置換基を導入することが試みられている。例えば、有機EL素子の発光材料として、縮合多環芳香族炭化水素化合物が提案されている(特開平4-178488号公報、同6-228544号公報、同6-228545号公報、同6-228546号公報、同6-228547号公報、同6-228548号公報、同6-228549号公報、同8-311442号公報及び同8-12969号公報)。しかしながら、これらの化合物を用いたものは、いずれも発光効率が充分ではないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況下で、有機EL素子の構成材料として用いた場合に高い発光効率を発揮しうる新規な化合物、及びこれを用いた有機EL素子を提供することを目的とするものである。」

(ウ-3)
「【0052】次に、本発明の有機EL素子は、一対の電極間に挟持された有機発光層を少なくとも有する素子であって、この素子としては、発光帯域、特に有機発光層に前記有機化合物を含有させたものが好適である。
【0053】この有機EL素子の代表的な素子構成としては、
・・(中略)・・
などを挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0054】・・(中略)・・そして、前記一般式(I)で表される有機化合物は、これらの構成要素の中の主として発光帯域、殊に発光層に含有させたものが好適に用いられる。この発光層への上記有機化合物の含有割合は、発光層全体に対して30?100重量%であるものが好適である。」

4.甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(エ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 陽極と陰極間に発光層を含む一層又は複数層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層の少なくとも一層が、下記一般式(1)で示される化合物を単独又は混合物で含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】


(式中、R1?R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、無置換若しくはアルキル置換基を有する芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又は、カルボキシル基を表す。R1?R9及びR10?R16は、それぞれの内の2つで環を形成していてもよい。)
・・(中略)・・
【請求項4】 前記有機薄膜層のうち発光層が一般式(1)で表される化合物を単独又は混合物で含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(中略)・・
【請求項7】 前記有機薄膜層として少なくとも正孔輸送層を有し、この正孔輸送層が一般式(1)で表される化合物を単独又は混合物で含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(中略)・・
【請求項10】 前記有機薄膜層として少なくとも電子輸送層を有し、この電子輸送層が一般式(1)で表される化合物を単独又は混合物で含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(後略)」

(エ-2)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いるナフチルアントラセン化合物は、一般式(1)で表される構造を有する化合物である。式(1)において、R1?R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、無置換若しくはアルキル置換基を有する芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又は、カルボキシル基を表す。R1?R9及びR10?R16は、それぞれの内の2つで環を形成していてもよい。
・・(中略)・・
【0037】置換又は無置換の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基、p-(2-フェニルプロピル)フェニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基、4’-メチルビフェニルイル基、4”-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル基等が挙げられる。」

(エ-3)
「【0064】
【実施例】以下、本発明を実施例をもとに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
・・(中略)・・
【0070】以下、本発明の化合物を発光層(実施例1?11)、正孔輸送材料との混合薄膜を発光層(実施例12?14)、電子輸送材料との混合薄膜を発光層(実施例15?16)、正孔輸送層(実施例17?21)、及び、電子輸送層(実施例22?26)として用いた例を示す。
【0071】(実施例1)実施例1に用いた素子の断面構造を図1に示す。以下に本発明の実施例1に用いる有機薄膜EL素子の作製手順について説明する。素子は陽極2/発光層4/陰極6により構成されている。ガラス基板1上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に発光層として、化合物(3)を真空蒸着法にて40nm形成した。次に陰極としてマグネシウム-銀合金を真空蒸着法にて200nm形成して有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を5V印加したところ、20cd/m^(2)の発光が得られた。
・・(中略)・・
【0077】(実施例7)実施例7に用いた素子の断面構造を図2に示す。素子は陽極2/正孔輸送層3/発光層4/電子輸送層5/陰極6により構成されている。ガラス基板1上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に正孔輸送層として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン[02]を真空蒸着法にて50nm形成した。次に、発光層として、化合物(3)を真空蒸着法にて40nm形成した。次に、電子輸送層として2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール[07]を真空蒸着法にて20nm形成した。次に陰極としてマグネシウム-銀合金を真空蒸着法によって200nm形成して有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、800cd/m^(2)の発光が得られた。
・・(中略)・・
【0081】(実施例11)正孔輸送層として化合物[05]を、発光層として化合物(7)を、電子輸送層として化合物[12]を用いる以外は実施例7と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、6000cd/m2の発光が得られた。
【0082】(実施例12)実施例12に用いた素子の断面構造を図4に示す。素子は陽極2/発光層4/電子輸送層5/陰極6により構成されている。ガラス基板1上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に発光層としてN,N’-ジフェニル-N-N-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン[03]と化合物(3)を1:10の重量比で共蒸着して作製した薄膜を50nm形成した。次いで電子輸送層として化合物[09]を真空蒸着法にて50nm形成した。次に陰極としてマグネシウム-銀合金を200nm形成してEL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、970cd/m^(2)の発光が得られた。
【0083】(実施例13)化合物(3)の代わりに化合物(4)を用いる以外は実施例12と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、2200cd/m^(2)の発光が得られた。
【0084】(実施例14)ガラス基板上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に化合物(7)とN,N’-ジフェニル-N-N-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン[03]をモル比で1:10の割合で含有するクロロホルム溶液を用いたスピンコート法により40nmの発光層を形成した。次に化合物[10]を真空蒸着法により50nmの電子輸送層を形成し、その上に陰極としてマグネシウム-銀合金を真空蒸着法により200nm形成して有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、1300cd/m^(2)の発光が得られた。
【0085】(実施例15)実施例15に用いた素子の断面構造を図3に示す。素子は陽極2/正孔輸送層3/発光層4/陰極6により構成されている。ガラス基板1上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に正孔輸送層としてN,N’-ジフェニル-N-N-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン[03]を真空蒸着法にて50nm形成した。次に、発光層として化合物[11]と化合物(3)とを20:1の重量比で真空共蒸着した膜を50nm形成した。次に陰極としてマグネシウム-銀合金を200nm形成してEL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、1150cd/m^(2)の発光が得られた。
・・(中略)・・
【0087】(実施例17)正孔輸送層としてN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン[02]を、発光層として化合物[13]と化合物(7)とを20:1の重量比で真空共蒸着して作製した膜を用いる以外は実施例15と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、3000cd/m^(2)の発光が得られた。
【0088】(実施例18)正孔輸送層として化合物(4)を、発光層として化合物[13]を用いる以外は実施例7と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、800cd/m^(2)の発光が得られた。
・・(中略)・・
【0091】(実施例21)正孔輸送材料として、化合物(7)を用いる以外は実施例18と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、1800cd/m^(2)の発光が得られた。
【0092】(実施例22)正孔輸送層としてN,N’-ジフェニル-N-N-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン[03]を、発光層として化合物[13]を、電子輸送層として化合物(3)を用いる以外は実施例7と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、890cd/m^(2)の発光が得られた。
・・(中略)・・
【0097】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の有機EL素子は、特定のナフチルアントラセン化合物を構成材料とすることにより、従来に比べて高輝度な発光が得られ、本発明の効果は大である。」

5.甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(オ-1)
「1.一対の電極と、これらの電極間に挟持された有機発光媒体層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、上記有機発光媒体層が、(A)アミン含有モノスチリル誘導体,アミン含有ジスチリル誘導体,アミン含有トリスチリル誘導体及びアミン含有テトラスチリル誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物と、(B)一般式(I)・・(中略)・・及び一般式(II)
A^(3)-An-A^(4) ・・・(II)
(式中、Anは置換若しくは無置換の二価のアントラセン残基を示し、A^(3)及びA^(4)は、それぞれ置換若しくは無置換の一価の縮合芳香族環基又は置換若しくは無置換の炭素数12以上の非縮合環系アリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(中略)・・
3.(B)成分の一般式(II)で表されるアントラセン誘導体が、一般式(II-a)
Ar^(1)-An-Ar^(2)・・・(II-a)
(式中、Anは置換若しくは無置換の二価のアントラセン残基を示し、Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のナフタレン,フェナントレン,アントラセン,ピレン,ペリレン,コロネン,クリセン,ピセン,フルオレン,ターフェニル,ジフェニルアントラセン,ビフェニル,N-アルキル若しくはアリールカルバゾール,トリフェニレン,ルビセン,ベンゾアントラセン又はジベンゾアントラセンの一価の残基を示す。)
で表されるアントラセン誘導体である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(中略)・・
5.有機発光媒体層が、(A)成分と(B)成分を、重量比2:98?9:91の割合で含む請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
・・(中略)・・
8.有機発光媒体層が、厚さ10?400nmのものである請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
9.(A)アミン含有モノスチリル誘導体,アミン含有ジスチリル誘導体、アミン含有トリスチリル誘導体及びアミン含有テトラスチリル誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物と、(B)一般式(I)で表されるアントラセン誘導体及び一般式(II)で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする有機発光媒体。」
(35頁?38頁「請求の範囲」)

(オ-2)
「技術分野
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスを「EL」と略記する。)及び有機発光媒体に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色系発光が得られる有機EL素子、及び上記有機EL素子に好適に用いられる有機発光媒体に関するものである。

背景技術
電界発光を利用したEL素子は、自己発光のため視認性が高く、かつ完全固体素子であるため、耐衝撃性に優れるなどの特徴を有することから、各種表示装置における発光素子としての利用が注目されている。
・・(中略)・・
このため、特に耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率の青色発光素子を得るべく、種々検討が行われてきたが、充分に満足しうるものは得られていないのが実情である。
例えば、単一のモノアントラセン化合物を有機発光材料として用いる技術が開示されている(特開平11-3782号公報)。しかしながら、この技術においては、例えば電流密度165mA/cm^(2)において、1650cd/m^(2)の輝度しか得られておらず、効率は1cd/Aであって極めて低く、実用的ではない。また、単一のビスアントラセン化合物を有機発光材料として用いる技術が開示されている(特開平8-12600号公報)。しかしながら、この技術においても、効率は1?3cd/A程度で低く、実用化のための改良が求められていた。一方、有機発光材料として、ジスチリル化合物を用い、これにスチリルアミンなどを添加したものを用いた長寿命の有機EL素子が提案されている(国際公開94-6157号)。しかしながら、この素子は、半減寿命が1000時間程度であり、さらなる改良が求められていた。」
(1頁3行?2頁17行)

(オ-3)
「一方、前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体としては、例えば一般式(II-a)
Ar^(1)-An-Ar^(2)・・・(II-a)
(式中、Anは置換若しくは無置換の二価のアントラセン残基を示し、Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のナフタレン,フェナントレン,アントラセン,ピレン,ペリレン,コロネン,クリセン,ピセン,フルオレン,ターフェニル,ジフェニルアントラセン,ビフェニル,N-アルキル若しくはアリールカルバゾール,トリフェニレン,ルビセン,ベンゾアンアトラセン又はジベンゾアントラセンの一価の残基を示す。)
で表されるアントラセン誘導体を好ましく挙げることができる。
上記一般式(II-a)におけるAn,Ar^(1)及びAr^(2)が置換基を有する場合、その置換基としては、一般式(III)及び(IV)において説明した置換基と同じものを挙げることができる。
本発明においては、この(B)成分のアントラセン誘導体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
・・(中略)・・
前記一般式(II-a)で表されるアントラセン誘導体の具体例を以下に示す。







(9頁22行?17頁)

(オ-4)
「次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
公知の文献に従い、下記化合物Ant-1,TPD78,TPD107及びPAVBを合成し、精製した。
・・(中略)・・
25×75×1.1mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。このガラス基板に紫外線及びオゾンを照射して洗浄を行ったのち、真空蒸着装置にこのガラス基板を設置した。
まず、TPD107を60nmの厚さに蒸着したのち、その上にTPD78を20nmの厚さに蒸着した。次いでAnt-1とPAVBとを、重量比40:3で同時蒸着し、厚さ30nmの発光媒体層を形成した。
次に、Alq(8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体)を20nmの厚さに蒸着した。TPD107,TPD78,Ant-1/PAVB及びAlqは、それぞれ正孔注入層,正孔輸送層,発光媒体層及び電子注入層である。
次に、LiFを0.3nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを100nmの厚さに蒸着した。このAl/LiFは陰極として働く。このようにして有機EL素子を作製した。
次に、この素子について、通電試験を行ったところ、電圧5V,電流密度1.05mA/cm^(2)にて、110cd/m^(2)の青色発光が得られ、効率は10.4cd/Aであった。
電流密度10mA/cm^(2)で直流の連続通電テストを行ったところ、半減寿命は1100時間であった。
実施例2?16
実施例1において、発光媒体層を、第1表に示す種類の化合物Aと化合物Bを第1表に示す割合で用いて形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた素子の性能を第1表に示す。




実施例17
実施例1と同様に素子を作製した。但し、発光媒体層としてEM43とEM2の重量比3:30の混合層を用い、さらに陰極をLiF/AlのかわりとしてAlq:Cs/Alを用いた。Alq:Csは電子伝達化合物であるAlqとCs金属のモル比1:1の混合層である。電圧4.5V,電流密度1.03mA/cm^(2)にて120cd/m^(2)の青色発光が得られた。効率は、11.7cd/Aと高かった。10mA/cm^(2)の定電流駆動の寿命は2200時間であった。
実施例18
実施例1と同様に素子を作製した。但し、発光媒体層として(A)成分としてEM37、(B)成分としてEM21の重量比2:3とした。電圧5Vで、3.25mA/cm^(2)の電流が流れ、効率4.9cd/Aの青色発光が得られた。電流10mA/cm^(2)の直流の連続通電テストを行ったところ、半減寿命は3200時間と長かった。(A)成分を増やすことにより、さらに低電圧化が可能となった。
比較例1
実施例1において、アミン含有スチリル誘導体であるPAVBを同時蒸着しなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
この素子の性能を評価したところ、電圧5Vで0.8mA/cm^(2)の電流が流れたが、輝度は22cd/m^(2)しか得られず、効率は2.75cd/Aであった。したがって、実施例1の効率は、比較例1の3.8倍であった。また、電流密度10mA/cm^(2)で直流の連続通電テストを行ったところ、半減寿命は200時間であり、短かった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色系発光が得られる有機EL素子を提供することができる。
この有機EL素子は、各種表示装置の発光素子として好適に用いられる。」

6.甲第6号証ないし甲第13号証について
甲第6号証ないし甲第13号証には、それぞれ概略以下の事項が記載されている。

(1)甲6
甲6には、特定の芳香族アミン化合物を発光層又はキャリア輸送層に含有させてなる有機EL素子が記載され(【特許請求の範囲】参照)、発光層におけるドーパントとして、ルブレン、DCM又はナフタセンを使用した場合につき実施例として記載されている(【0021】?【0065】参照)。

(2)甲7
甲7には、特定の芳香族アミン化合物をホスト材料として発光層に含有させてなる有機EL素子が記載され(【特許請求の範囲】参照)、発光層におけるゲスト材料として、クマリン誘導体、スチルベン誘導体又は縮合環化合物を使用することも記載されている(【0027】及び【0041】?【0087】参照)。

(3)甲8
甲8には、Ir(ppy)3をリン光材料とし、特定の芳香族アミン化合物をホスト材料とした場合に、高い量子効率の発光が達成できることが記載されている。

(4)甲9
甲9には、種々の芳香族化合物が有機EL発光材料として使用できることが記載されており、9,10-ジ置換アントラセン化合物(DSA)が使用されることも記載されている(「Fig.13」参照)。

(5)甲10
甲10には、有機発光媒体層が少なくとも一種の電子輸送性化合物と、一般式(II)
A^(3)-An-A^(4) ・・・(II)
(式中、Anは置換若しくは無置換の二価のアントラセン残基を示し、A^(3)及びA^(4)は、それぞれ置換若しくは無置換の炭素数10以上の一価の縮合芳香族環基又は置換若しくは無置換の炭素数12以上の非縮合環系アリール基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が記載され(【特許請求の範囲】参照)、当該A^(3)及びA^(4)がナフタレン基などの1価の無置換の縮合芳香族基でよいことも記載されている(【0038】参照)。

(6)甲11
甲11には、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン誘導体を発光材料として発光層を形成してなる有機ELデバイスが記載されている(CLAIM第1項、2欄「SUMMARY OF THE INVENTION」の欄参照)。

(7)甲12
甲12には、特定のビス(ジアリールアミノスチルベン)芳香族化合物及びアントラセン化合物を含む他の芳香族化合物の混合物を発光材料としてなる有機EL素子が記載されている(【特許請求の範囲】及び【0030】等参照)。

(8)甲13
甲13には、9,10-ジフェニルアントラセンが蛍光性色素として有機EL発光材料に使用されること(12頁?13頁参照)及びホスト-ゲスト系発光層を有する有機EL素子においてホスト材料も発光することがあること(95頁「図7」参照)が記載されている。

III.検討

1.甲1及び甲2に記載された発明
なお、以下の検討にあたり、「エレクトロルミネッセンス」については、「EL」と略して表記することがある。

(1)甲1
甲1には、「下記一般式(A)で表される新規芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。
・・


・・」が記載され、さらに「前記一般式(A)において、Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数5?60のアリール基である」「新規芳香族化合物」が記載されており(摘示(ア-1)の請求項1及び2参照)、当該芳香族化合物を単独で使用することにより、有機EL素子の発光層を構成し、当該発光層を陽極と陰極の間に挟持して有機EL素子を構成することも記載されている(摘示(ア-8)の各実施例に係る記載参照)。
なお、甲1の請求項1における「Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。」なる記載は、同請求項2の記載及び明細書の「Bのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、・・(中略)・・カルバゾリル基・・(中略)・・等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数5?60のものである。」なる記載(摘示(ア-5)参照)からみて、「Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。」と記載されているものと理解するのが自然である。
さらに、甲1には、上記請求項1に記載された化合物に加えてアリールアミン化合物又はスチリルアミン化合物を併用し発光層を構成することも記載されている(摘示(ア-1)の請求項8及び9を参照。)。
ちなみに、上記「新規芳香族化合物」は、単独で「有機EL素子の発光層を構成」することができるのであるから、「有機EL素子用発光材料」であることは自明である。
してみると、上記(ア-1)?(ア-8)の記載からみて、甲1には、
「下記一般式(A)で表される有機EL素子用発光材料。
A-Ar-B (A)
[式中、Arは、無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、無置換のナフチル基などの基である。]」
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)及び
「甲1発明1の有機EL素子用発光材料又は該発光材料とアリールアミン化合物又はスチリルアミン化合物とからなる混合物を発光層とし、当該発光層を陽極と陰極の間に挟持してなる有機EL素子」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。

(2)甲2
甲2には、「アノードとカソードを含み、さらにそれらの間に正孔輸送層及び前記正孔輸送層と共働関係にあるように配置された電子輸送層を含んで成る有機系多層型エレクトロルミネセンス素子であって、前記正孔輸送層が下式の有機化合物を含むことを特徴とするエレクトロルミネセンス素子。
【化8】


(上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。)」が記載されており(摘示(イ-1)の【請求項8】参照)、上記一般式で表される化合物として、「化合物58」なる式で表され非対称型アントラセン化合物である9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセンが例示されている(摘示(イ-4)参照)。
なお、上記有機化合物は、正孔輸送層に使用されるのであるから、「正孔輸送材料」であるといえる。
してみると、甲2には、上記(イ-1)ないし(イ-4)の記載事項からみて、
「下式の有機化合物からなる有機系多層型EL素子用正孔輸送材料。


(上式中、置換基R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、各々独立に、水素、炭素原子数1?24のアルキル基、炭素原子数5?20のアリール基もしくは置換アリール基、炭素原子数5?24のヘテロアリール基もしくは置換ヘテロアリール基、フッ素、塩素、臭素、又はシアノ基を表す。)」
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)及び
「甲2発明1の有機系多層型EL素子用正孔輸送材料を含む正孔輸送層をアノードとカソードの間に挟持してなる有機系多層型EL素子」
に係る発明(以下「甲2発明2」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

2.各無効理由についての検討
上記無効理由1及び2につき、各請求項ごとに具体的に以下検討する。

(1)無効理由1について

ア.本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における一般式(A)で表される化合物は、アントラセン骨格を有するものであることが明らかであるから、両者は、
「アントラセン骨格を有する化合物からなる有機EL素子用発光材料」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:「有機EL素子用発光材料」とする「アントラセン骨格を有する化合物」につき、本件発明1では、
「一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体
【化1】


(式中、A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基から選ばれる基である。
Ar^(1)及びAr^(2)は水素原子である。
R^(1)?R^(8)は水素原子である。
R^(9)及びR^(10)は水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」
であるのに対して、甲1発明1では、
「下記一般式(A)で表される
A-Ar-B (A)
[式中、Arは、無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、ナフチル基などの基である。]」ものである点

(イ)上記相違点1に係る検討
上記相違点1に係る化合物につきさらに具体的に検討すると、甲1発明1における無置換の9,10-アントラセンディール基なるアントラセン骨格及びその9位又は10位における一方の置換基である「A」置換基につきナフチル基などが該当することで両者は一致するものの、本件発明1における化合物では、甲1発明1におけるものの他方の置換基である「B」置換基に該当する「A^(1)」基又は「A^(2)」基が、アルケニル基又はアリールアミノ基などの置換基を有しない互いに異なるナフチル基などの縮合芳香族基であるのに対して、甲1発明1では、「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した・・無置換の炭素数5?60のアリール基」である点で相違し、化合物として別異のものであるものと認められる。
そこで、他の甲号証に基づき上記相違点につき当業者が適宜なし得る事項であるか否かにつき検討する。
甲2には、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセンなどの本件発明1における一般式に該当する有機系多層型EL素子用正孔輸送材料が記載され(上記1.(2)参照)、甲3には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9,10芳香族置換アントラセン系化合物が記載され(上記摘示(ウ-1)ないし(ウ-3)参照)、甲4には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9-(1-ナフチル)置換アントラセン系化合物が記載され(上記摘示(エ-1)ないし(エ-3)参照)、甲5には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9,10芳香族置換アントラセン系化合物が記載されている(上記摘示(オ-1)ないし(オ-4)参照)から、本件発明1に係る一般式で表される9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセンなどの非対称型の9,10-ジ縮合芳香族置換アントラセン化合物については、本件特許に係る出願前の当業界において、少なくとも公知の化合物であるものとは認められる。
しかるに、甲1には、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセンなる9位及び10位を共に縮合芳香族基で置換してなるアントラセン化合物を使用した場合につき、比較例1として具体的に提示されており、その場合において、発光輝度及び発光効率が低下しないまでも、高温保存試験の点で結晶化を招き問題があることが示されている(上記摘示(ア-8)参照)から、甲1発明1において、発光材料である化合物の「B」置換基につき、ナフチル基などの縮合芳香族基に代えることを妨げる阻害要因が存するものと認められ、甲1発明1において、甲2ないし甲5に記載された上記知見に基づき、化合物の「B」置換基につき、アルケニル基又はアリールアミノ基などの置換基を有しないナフチル基などの縮合芳香族基に代えることを動機付ける事項が存するものとは認められない。
なお、甲6ないし甲13の各記載を検討しても、甲1発明1において、化合物の「B」置換基につき、アルケニル基又はアリールアミノ基などの置換基を有しないナフチル基などの縮合芳香族基に代えることを動機付ける事項が存するものとは認められない。
してみると、甲1発明1において、化合物の「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した無置換の炭素数5?60のアリール基」なる「B」置換基に代えて、(アルケニル基又はアリールアミノ基などの置換基を有しない)ナフチル基などの縮合芳香族基とし、本件発明1に係る化合物とすることは、当業者が適宜なし得ることということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲2ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

イ.本件発明2及び3について
本件発明1を引用して表現される本件発明2及び3は、それぞれ本件発明1に係る技術事項を具備するものであり、さらに技術事項を限定したものである。
してみると、本件発明2及び3は、甲1発明1との対比における上記ア.で示した相違点1を有するものであって、上記ア.で説示した理由と同一の理由により、甲1発明1及び甲2ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

ウ.本件発明4について

(ア)対比・検討
本件発明4と甲1発明2とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているといえる。

相違点1’:「有機EL素子用発光材料」につき、本件発明4では、「請求項1に記載の」ものであるのに対し、甲1発明2では、「甲1発明1」のものである点

しかるに、上記相違点1’について検討すると、上記ア.において説示したとおり、請求項1に記載の有機EL素子用発光材料、すなわち本件発明1は、甲1発明1とは相違し、また甲1発明1に基づき、容易に発明することができたものではないのであるから、上記相違点1’についても当業者が適宜なし得ることということはできない。

(イ)小括
したがって、本件発明4は、上記ア.で説示した理由と同様の理由により、甲1発明2及び甲2ないし甲13の知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

エ.本件発明5ないし8について
本件発明4を引用して表現される本件発明5ないし8は、それぞれ本件発明4に係る技術事項を具備するものであり、さらに技術事項を限定したものである。
してみると、本件発明5ないし8は、いずれも甲1発明2との対比における上記ウ.で示した相違点1’を有するものであって、上記ウ.で説示した理由と同一の理由により、甲1発明2及び甲2ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

オ.無効理由1に係るまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし8は、いずれも、甲1に記載された発明及び甲2ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということができないから、上記無効理由1により、本件発明1ないし8に係る特許を無効とすることはできない。

(2)無効理由2について

ア.本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の一般式において、R^(1)及びR^(2)がいずれも水素であるとともに、R^(3)及びR^(4)がいずれも炭素数5?20のアリール基又は置換アリール基であり、かつ互いに異なる場合において、それらの基が本件請求項1のA^(1)及びA^(2)に係る規定のナフチル基など縮合アリール基である化合物(例えば、甲2に「化合物58」として記載された「9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン」など)については、本件発明1における「一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体」に相当する。
また、甲2発明1における「有機系多層型EL素子用・・材料」は、当該材料を含む層が他の層と組み合わされて多層型有機EL素子を構成する点で、本件発明1における「有機エレクトロルミネッセンス素子用・・材料」に相当する。
してみると、両者は、
「下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化1】


(式中、A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基から選ばれる基である。
Ar^(1)及びAr^(2)は水素原子である。
R^(1)?R^(8)は水素原子である。
R^(9)及びR^(10)は水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2:本件発明1では、「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料」であるのに対して、甲2発明1では、「有機系多層型EL素子用正孔輸送材料」である点
(下線は当審が付した。)

(イ)上記相違点2に係る検討
上記相違点2につき検討するにあたり他の甲号証に基づき当該相違点につき当業者が適宜なし得る事項であるか否かにつき検討する。
甲1には、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基により10位が置換された9-ナフチルアントラセンなどの有機EL素子用発光材料が記載され(上記1.(1)参照)、甲3には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9,10芳香族置換アントラセン系化合物が記載され(上記摘示(ウ-1)ないし(ウ-3)参照)、甲4には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9-(1-ナフチル)置換アントラセン系化合物が記載され(上記摘示(エ-1)ないし(エ-3)参照)、甲5には、有機EL素子における発光層に使用するための材料として、広範な9,10芳香族置換アントラセン系化合物が記載されている(上記摘示(オ-1)ないし(オ-4)参照)から、本件発明1に係る一般式で表される9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセンなどの非対称型の9,10-ジ縮合芳香族置換アントラセン化合物については、本件特許に係る出願前の当業界において、少なくとも公知の化合物であり、また、対称型及び非対称型に関わらず、多種多岐にわたる広範な種類の9,10芳香族置換アントラセン系化合物が有機EL素子における発光層に使用するための発光材料として、本件特許に係る出願前の当業界において、少なくとも公知であったものとは認められる。
しかるに、甲1及び甲3ないし甲5の記載を検討しても、本件発明1における一般式(1)で表される非対称型の9位及び10位を共に特定の縮合芳香族基で置換してなるアントラセン化合物を発光材料として使用した場合につき、他の9,10芳香族置換アントラセン系化合物を使用した場合に比して、発光効率及び発光寿命の点で優れるであろうと当業者が認識することができる記載又は作用機序に係る開示はない。
また、甲6ないし甲13の記載を検討しても、対称型及び非対称型に関わらず、多種多岐にわたる広範な種類の9,10芳香族置換アントラセン系化合物が有機EL素子における発光層に使用するための発光材料として、本件特許に係る出願前の当業界において、少なくとも公知であったこと(上記II.6.(5)ないし(8)参照)及び正孔輸送材料を発光層のホスト材料として使用した場合に発光する場合があること(上記II.6.(8)参照)をそれぞれ立証するに留まり、本件発明1における一般式(1)で表される非対称型の9位及び10位を共に特定の縮合芳香族基で置換してなるアントラセン化合物を発光材料として使用した場合につき、他の9,10芳香族置換アントラセン系化合物を使用した場合に比して、発光効率及び発光寿命の点で優れるであろうと当業者が認識することができる記載又は作用機序に係る開示はない。
してみると、甲1及び甲3ないし甲13の記載を検討しても、甲2発明1に係る有機EL素子用正孔輸送材料を、発光効率及び発光寿命の改善が図られるであろうとの期待をもって有機EL素子用発光材料に転用することを動機付ける事項が存するものとは認められないから、甲2発明1に係る有機EL素子用正孔輸送材料を有機EL素子用発光材料とすることは、当業者が適宜なし得ることということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明1及び甲1並びに甲3ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

イ.本件発明2及び3について
本件発明1を引用して表現される本件発明2及び3は、それぞれ本件発明1に係る技術事項を具備するものであり、さらに技術事項を限定したものである。
してみると、本件発明2及び3は、甲2発明1との対比における上記ア.で示した相違点2を有するものであって、上記ア.で説示した理由と同一の理由により、甲2発明1及び甲1並びに甲3ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

ウ.本件発明4について

(ア)対比・検討
本件発明4と甲2発明2とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているといえる。

相違点2’:「有機EL素子用材料」につき、本件発明4では、「発光帯域が、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する」のに対し、甲2発明2では、「甲2発明1の有機系多層型EL素子用正孔輸送材料を含む正孔輸送層」である点

しかるに、上記相違点2’について検討すると、上記ア.において説示したとおり、請求項1に記載の有機EL素子用発光材料、すなわち本件発明1は、甲2発明1とは相違し、また甲2発明1に基づき、容易に発明することができたものではないのであって、さらに、甲2発明2における正孔輸送層は、甲2発明2の有機EL素子における発光する部分(発光層)であるとは認められないから、上記相違点2’についても当業者が適宜なし得ることということはできない。

(イ)小括
したがって、本件発明4は、上記ア.で説示した理由と同様の理由により、甲2発明2及び甲1並びに甲3ないし甲13の知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

エ.本件発明5ないし8について
本件発明4を引用して表現される本件発明5ないし8は、それぞれ本件発明4に係る技術事項を具備するものであり、さらに技術事項を限定したものである。
してみると、本件発明5ないし8は、いずれも甲2発明2との対比における上記ウ.で示した相違点2’を有するものであって、上記ウ.で説示した理由と同一の理由により、甲2発明2及び甲1並びに甲3ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

オ.無効理由2に係るまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし8は、いずれも、甲2に記載された発明及び甲1並びに甲3ないし甲13に記載された知見に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということができないから、上記無効理由2により、本件発明1ないし8に係る特許を無効とすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし8についての特許は、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては無効とすることができない。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-29 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-17 
出願番号 特願2008-183142(P2008-183142)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 橋本 栄和
松浦 新司
登録日 2011-10-07 
登録番号 特許第4839351号(P4839351)
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料  
代理人 橋口 尚幸  
代理人 齋藤 誠二郎  
代理人 東平 正道  
代理人 大谷 保  
代理人 伊藤 高志  
代理人 増井 和夫  
代理人 石原 俊秀  
代理人 山下 耕一郎  

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