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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1284161 |
審判番号 | 不服2013-17511 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-10 |
確定日 | 2014-02-18 |
事件の表示 | 特願2010-547664「一時的編集面を使用したドキュメントの編集」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日国際公開、WO2009/108417、平成23年 5月12日国内公表、特表2011-514993、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2009年1月21日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2008年2月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月20日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され、平成23年10月31日付けで審査請求がなされ、平成25年1月8日付けで拒絶理由通知(同年1月11日発送)がなされ、これに対して同年4月9日付けで意見書が提出されると共に手続補正書が提出されたが、同年4月26日付けで拒絶査定(同年5月10日謄本送達)がなされた。 これに対して、『「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。」、との審決を求める。』ことを請求の趣旨として、平成25年9月10日付けで審判請求がなされた。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成25年4月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「コンピュータ装置が実行する方法であって、HTML(Hypertext Markup Language)ドキュメントのコンテンツのテキスト部分を、前記コンピュータ装置のディスプレイに表示されるWebブラウザのウィンドウ内でユーザが編集するための方法であって、 前記HTMLドキュメントを前記Webブラウザのウィンドウ内に表示するステップと、 前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を編集するリクエストを受信するステップと、 前記リクエストに応答して、前記ウィンドウに表示されたとおりの前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の位置およびサイズを判断するステップと、 前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なる編集面を作成するステップであって、前記編集面は、前記Webブラウザにレンダリングされる際に、前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の前記位置において前記サイズで前記ウィンドウに表示される前記編集面を生じさせるためのサイズおよび位置の属性を有するHTMLエレメントを、前記HTMLドキュメントに追加することにより作成される、ステップと、 前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を前記編集面にコピーするステップと、 前記ウィンドウ内で前記ユーザの入力操作による入力を受信するステップと、 前記入力を受信する際に、前記編集面が前記入力を処理するかどうかを判断するステップと、 前記編集面が前記入力を処理すると判断された場合には、前記入力を、処理のために前記編集面エレメントに渡し、前記編集面に対しリフローオペレーションを実行するステップと、 前記編集面が前記入力を処理しないと判断された場合には、すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を前記HTMLドキュメントから除去し、前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を見えるようにするステップと、 前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の編集を停止するリクエストを受信するステップと、 前記リクエストを受信したことに応答して、前記すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を破棄するステップとを備え、 前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を編集するリクエストを受信するステップは、 挿入ポインタが前記ウィンドウ内のある位置に置かれたことを検出するステップと、 前記挿入ポインタが置かれた場所で前記ウィンドウ内に表示された前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を判断するステップと、を含み、さらに、 前記ウィンドウ内に表示された前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を判断する際に、前記挿入ポインタの前記位置に対応する前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分に置かれているテキスト内の文字位置を判断するステップと、 前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なる前記編集面を作成する際に、前記編集面内の前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の前記テキスト内の前記文字位置にカーソルを位置づけるステップと をさらに備えることを特徴とする方法。」 第3 原査定の理由の概要 1.平成25年1月8日付け拒絶理由通知 平成25年1月8日付けで拒絶理由が通知されたが、その内容は下記のとおりである。 『【理由1】 この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1に係る発明は、下記【理由3】に記載したとおり、新規性を有さない。 したがって、請求項1に係る発明と、請求項2-20に係る発明は、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しない。 ただし、請求項2-3に係る発明については、審査基準に基づき、例外的に発明の単一性の要件を問わないこととする(「特許・実用新案 審査基準」第1部第2章4.2を参照)。 以上のように、請求項1に係る発明と請求項4-20に係る発明とは、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しないから、この出願は特許法第37条に規定する要件を満たさない。 この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項1-3以外の請求項に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。 なお、この出願は出願日が平成19年4月1日以降であるから、特許法第17条の2第4項の「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の規定が適用される。補正に当たっては、発明の特別な技術的特徴を変更する補正とならないよう、注意されたい。 【理由2】 この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 請求項1-3には、方法としての発明が記載されている。しかしながら、請求項1-3に記載された発明は、具体的にどのようにハードウェア資源と協働して実現されるものであるのかが不明であるため、請求項1-3に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえない。 よって、請求項1-3に係る方法は、特許法上の「発明」に該当するものとみることができない。 【理由3】 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 請求項:1-3 引用文献:1 備考: 引用文献1には、文書や画像を含むPDFをウィンドウに表示し、文書(テキスト)を編集したい場合、「Touch Up」というツールを起動し「Touch Upテキスト・ツール」を用いてテキストの編集を行い、編集結果は自動的にPDFに書き戻されるものが記載されている。(特にp.82、図1-図2、各図の説明の部分を参照されたい。) なお、引用文献1には、ドキュメントの一部を編集面にコピーすることや、編集面を破棄すること、挿入ポインタによる位置の把握等については明確に記載されていないが、PDFを表示するアプリケーションとは異なる「Touch Upテキスト・ツール」が起動され、該ツール上でテキストが編集されること、テキスト編集が終了するとPDFに書き戻されるという記載から、引用文献1においてもドキュメントの一部を編集面(ツール)にコピーすることや、編集面を破棄すること、挿入ポインタによる位置の把握等が行われていることは明らかである。 したがって、本願請求項1-3に係る発明は、引用文献1から把握される発明と相違せず、引用文献1に記載された発明である。 引 用 文 献 等 一 覧 1.星野 純,デジタル文書革命に備えよ!Acrobat4.0実力大検 証,日経MAC 第7巻 第8号,日本,日経BP社,1999年7月 18日,第7巻 第8号,p.80-p.87』 2.平成25年4月26日付け拒絶査定 平成25年4月26日付けで拒絶査定がなされたが、その内容は下記のとおりである。 『この出願については、平成25年1月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由3によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 出願人は、平成25年4月9日付け意見書において、概略「 (1)補正後の本願発明は、Webブラウザで実行されることを前提としており、上述した引用文献1との差異がより明確になったものと思料致します。さらに、上記補正後の本願発明においては、ドキュメントはWebブラウザに表示されるHTMLドキュメントであり、編集面はWebブラウザにレンダリングされる際に、HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の当該位置で、かつ当該サイズで編集面を生じさせるためのサイズおよび位置の属性を有するHTMLエレメントを、HTMLドキュメントに追加することにより作成されること、を特徴としています。本願発明が備えるこのような構成については、引用文献1には何ら開示もなく、その旨の示唆もありません。 (2)さらに、上記補正後の本願発明は、補正前の元請求項7の特徴を含んでおり、『編集面に対しリフローオペレーションを実行する』という特徴を備えています。 しかしながら、引用文献1には、『テキストは文字の挿入・削除が可能だが、行単位での編集となる。テキスト・ボックス内でのリフローという概念がない・・・』(82ページ本文)との記載があります。これらの記載に鑑みれば、引用文献1ではリフロー処理を行うという発想そのものが存在せず、よって、いわゆる当業者が引用文献1に基づいて本願発明に想到することは困難です。 」と主張し、そのことを理由として、本願発明の特許性を主張する。 以下、出願人が意見書において主張する上記2点についてそれぞれ検討する。 (1)本願出願当時の技術常識として、ブラウザ上でドキュメントを編集するツール、例えば「Zoho Writer」は周知の技術でありこのようなツールの提供は増え続けている。(必要であれば、引用文献等一覧2-3を参照されたい。)また、このようなツールをより有用なものとするべく機能追加や機能改善を行うことは、ソフトウェア開発では一般的に行われている事項である。そして引用文献1に記載されている機能もドキュメントを編集する一機能であることには変わりないし、ツールに実装されていない機能を別のアプリケーションを立ち上げることによって編集し、編集結果を本文に取り込むということ自体も以前から行われている事項であるから、ドキュメント編集を行うベースとなる部分をWebベースのものとすることに特段の困難性は認められず、Webベースのものとする際に発生する課題を解決することは、当業者の通常の創作能力の発揮である。 (2)編集された部分等に対し、リフローという処理を行うこと自体は、周知の技術である。(必要であれば、引用文献等一覧4-6を参照されたい。) 一方、引用文献1には「テキスト・ボックス内でのリフローという概念がないので、長文の編集には向かない。」ことが明記されており、当該記載は換言すれば、長文の編集を行いたいという要望自体はPDF化された文書に対しても存在するが、該機能を用いた長文の編集には向かないことを伝えるための記載であると言い得、当該記載は該機能の一課題であるとも言える。そして、存在する課題を改善し有用なものとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。 (3)そして、相違点は上記の点のみであるし、他に進歩性の存在を推認できる根拠もないから、本願発明は当業者が容易に想到することができたものである。 したがって、上記出願人の主張はいずれも採用することができず、請求項1-7に係る発明は、引用文献1記載の技術から当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.星野 純,デジタル文書革命に備えよ!Acrobat4.0実力大検証,日経MAC 第7巻 第8号,日本,日経BP社,1999年 7月18日,第7巻 第8号,p.80-p.87 2.水野 貴明,[SaaS]大研究 Part4 Web2.0系SaaS[オフィス・アプリケーション編] 「オフィスSaaS」の使い勝手をチェックする,COMPUTERWORLD Get Technology Right 第3巻 第10号,日本,(株)IDGジャパン,2006年10月 1日,第3巻 第10号,p.78-p.84 3.tokix,Webサイトエクスプローラー オンラインで利用できるWebアプリを多数揃えた「Zoho」,PC Japan 第12巻 第11号,日本,ソフトバンククリエイティブ株式会社,2007年11月 1日,第12巻 第11号,p.112-p.115 4.井村 克也,Illustrator CS3 スーパーリファレンス for Windows 初版,日本,株式会社ソーテック社,2007年 7月15日,第1版 ISBN: 978-4-88166-603-6,p.290 5.霜田 憲一,ついに登場! 待ちにまった日本語対応 「Adobe Reader for Palm OS 3.0 日本語版」の実力を探る,Palm Magazine vol.20,日本,株式会社アスキー,2003年11月14日,第20巻,p.54-p.55 6.特表2007-506987号公報 』 第4 当審の判断 1.引用文献 本願の優先権主張日前に頒布され、原審の平成25年1月8日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、「星野純,デジタル文書革命に備えよ!Acrobat4.0実力大検証,日経MAC,日本,日経BP社,1999年7月18日,第7巻 第8号,第80-87頁」(以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) A 「Winは一般向け,マックはDTP こうしたPDFの進化に加え,4.0ではそれを取り扱うソフトウエア群の機能も向上している。特にPDFを編集する「Acrobat 4.0」(後述)で,テキストや画像データの直接編集が可能になった点が注目される(従来はページ単位編集のみ)。」(81頁右欄3?8行) B 「PDF作成・編集の効率を上げる新機能 Acrobat 4.0 の市販パッケージには,4種類のソフトウエアが含まれる。無償配布もされているPDF閲覧・印刷専用ソフト「Acrobat Reader4.0 」のほかに, PDFの編集も可能なReaderの上位版「Acrobat4.0」(図1)がある。PDF作成ソフトとしては,簡易版のプリンター・ドライバー型ソフト「 Acrobat PDFWriter」と,高度なオプションを備えるハイエンド向けの「Acrobat Distiler 4.0」(図2)がある。このパッケージ1つで, PDFの作成から編集・加工まですべてが行える。」 (82頁上欄?左欄10行) C 「内容の直接編集が可能に PDFの編集ソフトであるAcrobat 4.0 は大幅な機能強化を果たした。中でも,PDFの内容を直接編集できるようになった点は大きい。これまでは,いったん作成したPDFに対しては,ページの入れ替えやサイズ変更,あるいはリンク,マルチメディア・データの追加といったオーサリング作業しか行えなかった。文字や画像などPDFの内容自体は修正できないため,必要なら元の書類に戻ってPDFを作り直さねばならなかった。 4.0では「Touch Up 」というツールでテキストとグラフィックスを編集できる(図2,3)。ただし,グラフィックスはオブジェクトの位置変更のみで,内容を編集する場合はほかのソフトが必要となる。ベクトル・データなら「Illustrator 8.0 」,ビットマップ画像では「Photoshop 5.0」を用いる。Touch Upツールからこれらのソフトを呼び出して内容を変更する。変更した結果は,自動的にPDFに書き戻される。」(82頁左欄11?29行) D 「テキストは文字の挿入・削除が可能だが,行単位での編集となる。テキスト・ボックス内でのリフローという概念がないので,長文の編集には向かない。製版フィルムのストリップ校正のように,最終段階でほんの数文字直すための機能と考えた方がよい。ただし,フォント,サイズ,文字送り,行の高さなどは指定できるので,ポップ広告など「ページもの」では重宝する。」(82頁左欄30行?右欄7行) ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの「特にPDFを編集する「Acrobat 4.0」(後述)で,テキストや画像データの直接編集が可能になった点が注目される(従来はページ単位編集のみ)。」との記載、上記Bの「Acrobat 4.0の市販パッケージには,4種類のソフトウエアが含まれる。無償配布もされているPDF閲覧・印刷専用ソフト「Acrobat Reader4.0」のほかに, PDFの編集も可能なReaderの上位版「Acrobat4.0」(図1)がある。」との記載からすると、Acrobat 4.0の市販パッケージに含まれるソフトウエアである「Acrobat 4.0」を利用すれば、PDFのテキストや画像データの直接編集が可能であると解され、また、図1の「Acrobat4.0」の画面表示からすると、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集することは明らかであるから、引用文献1には、 「Acrobat 4.0の市販パッケージに含まれるソフトウエアである「Acrobat 4.0」を利用して、PDFのテキストや画像データを、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するための方法」 が記載されていると解される。 (イ)上記Cの「4.0では「Touch Up」というツールでテキストとグラフィックスを編集できる(図2,3)。ただし,グラフィックスはオブジェクトの位置変更のみで,内容を編集する場合はほかのソフトが必要となる。ベクトル・データなら「Illustrator 8.0」,ビットマップ画像では「Photoshop 5.0」を用いる。Touch Upツールからこれらのソフトを呼び出して内容を変更する。変更した結果は,自動的にPDFに書き戻される。」との記載からすると、「Touch Up」というツールは、グラフィックスの内容変更の場合には必要なソフトを呼び出して編集を行うと解されるから、引用文献1には、 「「Acrobat 4.0」の「Touch Up」というツールを用いて、グラフィックスの内容変更の場合には必要なソフトを呼び出して、グラフィックスを編集するステップ、変更した結果は、自動的にPDFに書き戻されるステップ」 が記載されていると解される。 (ウ)上記Dの「テキストは文字の挿入・削除が可能だが,行単位での編集となる。テキスト・ボックス内でのリフローという概念がないので,長文の編集には向かない。製版フィルムのストリップ校正のように,最終段階でほんの数文字直すための機能と考えた方がよい。」との記載からすると、「Touch Up」というツールは、リフローを実行することなく、行単位でのテキスト編集を可能とすると解されるから、引用文献1には、 「「Touch Up」というツールを用いて、テキストの内容変更の場合には、テキスト・ボックス内でのリフローを実行することなく、行単位での文字の挿入・削除といった編集を行うステップ」 が記載されていると解される。 以上、(ア)乃至(ウ)で指摘した事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「Acrobat 4.0の市販パッケージに含まれるソフトウエアである「Acrobat 4.0」を利用して、PDFのテキストや画像データを、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するための方法であって、 前記「Acrobat 4.0」の「Touch Up」というツールを用いて、 テキストの内容変更の場合には、テキスト・ボックス内でのリフローを実行することなく、行単位での文字の挿入・削除といった編集を行うステップと、 グラフィックスの内容変更の場合には、必要なソフトを呼び出して、グラフィックスを編集するステップと、 変更した結果は、自動的にPDFに書き戻されるステップと、 を備える方法。」 2.参考文献 (2-1)参考文献1に記載されている技術的事項 本願の優先権主張日前に頒布され、原審の平成25年4月26日付けの拒絶査定において引用された刊行物、「tokix,Webサイトエクスプローラー オンラインで利用できるWebアプリを多数揃えた「Zoho」,PC Japan,日本, ソフトバンククリエイティブ株式会社,2007年11月1日,第12巻 第11号,第112-115頁」(以下、「参考文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) E 「Zohoは,オンラインで利用できるWebアプリケーションを多数公開しているWebサイトだ(表1)。ワープロや表計算,プレゼンテーションなどのオフィスツールや顧客管理ツールなど,通常ならハードディスクにインストールしてから実行するローカルアプリケーションを,Webブラウザ上の操作だけで利用できる。」(112頁左欄1?8行) F 「Zoho Writer : ワープロソフト。Word形式やHTML,PDF形式などでエクスポートが可能」(表1) G 「MicrosoftOfficeや OpenOffice.orgのファイルを開ける ZohoWriterは,マイクロソフトのWordに近い,Webブラウザ上で利用するワープロソフトだ。Zohoが提供するサービスの中でも特に歴史が長く人気も高いので,すでに日本語版が登場しており,各機能を日本語メニューで利用できる。見出しや文字修飾,画像貼り付けなど,一般的なワープロソフトに搭載されている機能はほぼ網羅されており,Wordで作成したファイルや「OpenOffice.org」の形式であるSXWファイルなども開ける。編集後にWord形式,OpenOffice形式,さらにPDF形式で出力することも可能だ(図2)。」(113頁10?25行) (2-2)参考文献2に記載されている技術的事項 本願の優先権主張日前に頒布され、原審の平成25年4月26日付けの拒絶査定において引用された、特表2007-506987号公報(平成19年3月22日出願公開、以下、「参考文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) H 「【0005】 視覚障害者を援助するための既存のシステムは幾つかの欠点を持っている。通常のSAMシステムでは、一旦1つのページが最終的な表示領域よりも大きく拡大されると、ユーザは、各ラインについて、単調な実際の混乱するような処理をすべて見るためにイメージを前後に滑らせなければならない。或るツールは、表示領域を適合させるために、フォントをサイズ変更することおよび必要に応じてページをリフローすることを可能にするHTMLのようなフォーマットを使用する。しかし、すべてのフォーマットがリフローを可能にするわけではなく、すべての表示プログラムがリフローすること或いはユーザによるサイズ変更を可能にすることができるわけではない。例えば、典型的なインターネット・ブラウザでは、HTMLテキストをリフローすることが可能である。しかし、ブラウザ上で表示されたテキストが、例えば、.gif、.jpg、または .pdf ファイルの一部分である場合、ブラウザはテキストをリフローすることができない。」 (2-3)参考文献3乃至5 上記参考文献1,2のほか、原審の平成25年4月26日付けの拒絶査定において引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物は以下のとおりである。 ・水野貴明,[SaaS]大研究 Part4 Web2.0系SaaS[オフィス・アプリケーション編] 「オフィスSaaS」の使い勝手をチェックする,COMPUTERWORLD Get Technology Right,日本,(株)IDGジャパン,2006年10月1日,第3巻 第10号,第78-84頁(以下、「参考文献3」という。) ・井村克也,Illustrator CS3 スーパーリファレンス for Windows,日本,株式会社ソーテック社,2007年7月15日,第1版 ISBN: 978-4-88166-603-6,第290頁(以下、「参考文献4」という。) ・霜田憲一,ついに登場! 待ちにまった日本語対応 「Adobe Reader for Palm OS 3.0 日本語版」の実力を探る,Palm Magazine,日本,株式会社アスキー,2003年11月14日,第20巻,第54-55頁(以下、「参考文献5」という。) 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (3-1)引用発明の「Acrobat 4.0の市販パッケージに含まれるソフトウエアである「Acrobat 4.0」」はコンピュータ装置が実行するソフトウエアであること、引用発明の「PDF」はドキュメントのコンテンツであることは明らかであるから、引用発明の「Acrobat 4.0の市販パッケージに含まれるソフトウエアである「Acrobat 4.0」を利用して、PDFのテキストや画像データを、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するための方法」と、本願発明の「コンピュータ装置が実行する方法であって、HTML(Hypertext Markup Language)ドキュメントのコンテンツのテキスト部分を、前記コンピュータ装置のディスプレイに表示されるWebブラウザのウィンドウ内でユーザが編集するための方法」は、ともに、“コンピュータ装置が実行する方法であって、ドキュメントのコンテンツのテキスト部分を、前記コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するための方法”である点で共通するといえる。 (3-2)引用発明の「行単位での文字の挿入・削除といった編集」は、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でのユーザの入力操作による入力に応じて実行されることは明らかであり、一方、本願発明における「ウィンドウ内で前記ユーザの入力操作による入力」は、コンテンツのテキスト部分の編集のための入力を含むものであるといえる。 そうすると、引用発明の「前記「Acrobat 4.0」の「Touch Up」というツールを用いて、テキストの内容変更の場合には、テキスト・ボックス内でのリフローを実行することなく、行単位での文字の挿入・削除といった編集を行うステップ」と、本願発明の「前記ウィンドウ内で前記ユーザの入力操作による入力を受信するステップと、前記入力を受信する際に、前記編集面が前記入力を処理するかどうかを判断するステップと、前記編集面が前記入力を処理すると判断された場合には、前記入力を、処理のために前記編集面エレメントに渡し、前記編集面に対しリフローオペレーションを実行するステップ」は、ともに、“ウィンドウ内でユーザの入力操作による入力を受信するステップと、前記入力に応じてコンテンツのテキスト部分の編集を行うステップ”である点で共通するといえる。 (3-3)引用発明の「PDF」は本願発明の「HTMLドキュメント」に対応し、両者は“ドキュメントのコンテンツ”である点で共通することは明らかである。また、引用発明の「変更した結果」は、「PDF」のテキスト部分などの編集を停止する時に確定するものであるといえる。 そうすると、引用発明の「変更した結果は、自動的にPDFに書き戻されるステップ」と、本願発明の「前記編集面が前記入力を処理しないと判断された場合には、すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を前記HTMLドキュメントから除去し、前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を見えるようにするステップと、前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の編集を停止するリクエストを受信するステップと、前記リクエストを受信したことに応答して、前記すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を破棄するステップ」は、ともに、“コンテンツのテキスト部分の編集を停止する時には、すべての変更をドキュメントのコンテンツに適用するステップ”である点で共通するといえる。 以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 「コンピュータ装置が実行する方法であって、ドキュメントのコンテンツのテキスト部分を、前記コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するための方法であって、 前記ウィンドウ内で前記ユーザの入力操作による入力を受信するステップと、 前記入力に応じてコンテンツのテキスト部分の編集を行うステップと、 前記コンテンツのテキスト部分の編集を停止する時には、すべての変更をドキュメントのコンテンツに適用するステップと、 を備える方法。」 (相違点1) コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内でユーザが編集するドキュメントのコンテンツの種類に関して、本願発明では「HTML(Hypertext Markup Language)ドキュメント」のテキスト部分を編集するのに対して、引用発明では「PDFのテキスト」を編集する点。 (相違点2) ドキュメントのコンテンツを編集するリクエスト受信時の処理に関して、本願発明では、「前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を編集するリクエストを受信するステップと、前記リクエストに応答して、前記ウィンドウに表示されたとおりの前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の位置およびサイズを判断するステップと、前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なる編集面を作成するステップであって、前記編集面は、前記Webブラウザにレンダリングされる際に、前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の前記位置において前記サイズで前記ウィンドウに表示される前記編集面を生じさせるためのサイズおよび位置の属性を有するHTMLエレメントを、前記HTMLドキュメントに追加することにより作成される、ステップと、前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を前記編集面にコピーするステップ」を実行し、「前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を編集するリクエストを受信するステップ」は、「挿入ポインタが前記ウィンドウ内のある位置に置かれたことを検出するステップと、前記挿入ポインタが置かれた場所で前記ウィンドウ内に表示された前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を判断するステップと、を含み、さらに、前記ウィンドウ内に表示された前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を判断する際に、前記挿入ポインタの前記位置に対応する前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分に置かれているテキスト内の文字位置を判断するステップと、前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なる前記編集面を作成する際に、前記編集面内の前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の前記テキスト内の前記文字位置にカーソルを位置づけるステップ」を含むのに対して、引用発明では、ドキュメントのコンテンツを編集するリクエスト受信時の処理については詳細が不明である点。 (相違点3) ウィンドウ内でのユーザの入力操作による入力を受信した時の処理に関して、本願発明では、「前記ウィンドウ内で前記ユーザの入力操作による入力を受信するステップと、前記入力を受信する際に、前記編集面が前記入力を処理するかどうかを判断するステップと、前記編集面が前記入力を処理すると判断された場合には、前記入力を、処理のために前記編集面エレメントに渡し、前記編集面に対しリフローオペレーションを実行するステップと、前記編集面が前記入力を処理しないと判断された場合には、すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を前記HTMLドキュメントから除去し、前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を見えるようにするステップ」を実行するのに対して、引用発明では、「「Acrobat 4.0」の「Touch Up」というツールを用いて、テキストの内容変更の場合には、テキスト・ボックス内でのリフローを実行することなく、行単位での文字の挿入・削除といった編集を行うステップ」を実行するものの、編集面が入力を処理するかどうかを判断することについては特に記載されていない点。 (相違点4) ドキュメントのコンテンツの編集を停止する時の処理に関して、本願発明では、「前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の編集を停止するリクエストを受信するステップと、前記リクエストを受信したことに応答して、前記すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用し、前記編集面を破棄するステップ」を実行するのに対して、引用発明では、「変更した結果は、自動的にPDFに書き戻されるステップ」を実行するものの編集面の表示処理については特に記載されていない点。 4.判断 上記相違点1乃至相違点4について検討する。 (4-1)相違点1について 引用発明は、「Acrobat 4.0」を利用して、PDFのテキストを、コンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内で編集可能とするものであるが、参考文献1(上記E,F,G参照),参考文献3に記載されているように、Webブラウザ上で利用可能なワープロソフトを利用して、HTML形式のドキュメントを編集する旨の技術は、本願優先権主張日前にはテキスト編集技術の分野における周知の技術的事項であった。 そして、引用発明においても、ドキュメントのテキストをコンピュータ装置のディスプレイに表示されるウィンドウ内で編集可能としているいるところ、上記周知技術に基づき「PDF」の編集に代えて「HTMLドキュメント」を編集可能とすること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、この相違点1には格別の技術的進歩性があるものではない。 よって、相違点1は格別なものではない。 (4-2)相違点2について 本願発明は、ドキュメントのコンテンツを編集するリクエストを受信すると、「リクエストに応答して、前記ウィンドウに表示されたとおりの前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の位置およびサイズを判断するステップ」、「前記ウィンドウに表示されたように前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なる編集面を作成するステップ」、「前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を前記編集面にコピーするステップ」などを実行するものであり、「編集面」に編集対象のテキスト部分をコピーし、当該テキスト部分の位置およびサイズを合わせて、HTMLドキュメントの上に重ねて表示するという特徴を有している。 また、本願発明は、HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を編集するリクエストの受信を、「挿入ポインタが前記ウィンドウ内のある位置に置かれたことを検出するステップと、前記挿入ポインタが置かれた場所で前記ウィンドウ内に表示された前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分を判断するステップ」で実行しており、「挿入ポインタ」のウィンドウ内での位置検出により編集対象のテキスト部分をリクエストとともに受信するという特徴を有している。 上記の本願発明の特徴に関して、引用発明では詳細が不明であるが、「行単位での文字の挿入・削除といった編集を行う」ことからすると、編集対象のテキスト部分である「行」の位置を特定するための何らかの手段を備えていることは自明である。また、挿入ポインタによりテキスト上の編集位置を特定する旨の技術は、本願優先権主張日前にはテキスト編集技術の分野における周知の技術的事項であった。 しかしながら、ウィンドウ内でテキスト部分の編集を行うための「編集面」を作成するための具体的手順については、引用文献1には記載されておらず、特に、HTMLドキュメントを編集するための「編集面」を本願発明のように、Webブラウザにレンダリングされる際に、HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分と同じ位置およびサイズでウィンドウに表示させるための属性を有するHTMLエレメントを、前記HTMLドキュメントに追加することにより、前記HTMLドキュメントのコンテンツのテキスト部分の上に重なるように作成することは、本願優先権主張日前に当該技術分野の周知技術と認めることはできない。 してみると、引用発明に上記周知の技術的事項を適用しても、「挿入ポインタ」のウィンドウ内での位置検出により編集対象のテキスト部分を特定する情報をリクエストとともに受信する構成を得るにとどまり、本願発明の相違点2に係る構成とすることはできないものである。 したがって、上記相違点2に係る構成が容易に想到しえたものであるとはいえない。 (4-3)相違点3について 本願発明は、ウィンドウ内でのユーザの入力操作による入力を受信した時の処理に関して、「入力を受信する際に、前記編集面が前記入力を処理するかどうかを判断するステップ」を実行し、「編集面が前記入力を処理すると判断された場合には、前記入力を、処理のために前記編集面エレメントに渡し」、「編集面が前記入力を処理しないと判断された場合には、すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用」する処理を実行するという特徴を有している。 上記の本願発明の特徴に関して、確かに、ブラウザに表示されるHTMLテキストやPDFのテキストにリフローを実行する旨の技術は、例えば、参考文献2(上記H参照),参考文献4,参考文献5に記載されているように、本願優先権主張日前にはテキスト編集技術の分野における周知の技術的事項であり、この周知技術をディスプレイのウィンドウ内でのテキスト編集に適用することについては格別困難性があったとは認められない。 しかしながら、ユーザの入力操作による入力を受信する際に、前記編集面が前記入力を処理するかどうかを判断し、編集面が前記入力を処理しないと判断された場合に、すべての変更を前記HTMLドキュメントのコンテンツに適用する点については、引用発明には特に記載がなく、また、それに伴う編集面の表示処理を本願発明のように実行することも、本願優先権主張日前に当該技術分野の周知技術と認めることはできない。 してみると、引用発明に上記周知の技術的事項を適用しても、編集対象範囲のリフローを実行して、HTMLテキストの文字の挿入・削除といった編集を行う構成を得るにとどまり、本願発明の相違点3に係る構成とすることはできないものである。 したがって、上記相違点3に係る構成が容易に想到しえたものであるとはいえない。 (4-4)相違点4について 引用文献1(図2)にも記載されているように、ドキュメントの編集対象範囲が枠囲いなどにより識別可能に表示され、編集終了時に編集対象範囲の指定が解除されるとともに編集対象範囲の表示が消去される旨の技術は、本願優先権主張日前にはテキスト編集技術の分野における周知の技術的事項であった。 そして、引用発明においても、編集により変更された結果を自動的にPDFドキュメントに書き戻す処理が実行されるところ、上記周知技術に基づき、ドキュメントのコンテンツの編集を停止する時に、それまでの編集対象範囲の指定を解除すること、すなわち、上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、この相違点4には格別の技術的進歩性があるものではない。 よって、相違点4は格別なものではない。 5.まとめ 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないものである。 6.請求項2乃至7に係る発明について 請求項2乃至3は請求項1を引用するものであるから、上記5.で示した理由により当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないものである。 また、請求項4及び請求項7に係る発明は、請求項1に記載の発明を、それぞれ、記憶媒体の発明及び装置の発明に変えたものであり、さらに、請求項5乃至6は請求項4を引用するものであるから、これら請求項4乃至7に係る発明についても、上記5.で示した理由により当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないものである。 7.むすび 以上のとおり、本願の請求項1乃至7に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-02-06 |
出願番号 | 特願2010-547664(P2010-547664) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 本郷 彰 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
仲間 晃 山崎 達也 |
発明の名称 | 一時的編集面を使用したドキュメントの編集 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 末松 亮太 |
代理人 | 大牧 綾子 |
代理人 | 上田 忠 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 田中 英夫 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 中村 彰吾 |
代理人 | 鳥居 健一 |
代理人 | 大房 直樹 |
代理人 | 竹内 茂雄 |