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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2011800051 | 審決 | 特許 |
無効2011800177 | 審決 | 特許 |
無効2012800042 | 審決 | 特許 |
無効2007800138 | 審決 | 特許 |
無効2012800032 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A61K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1284492 |
審判番号 | 無効2013-800042 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-03-15 |
確定日 | 2013-12-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4659980号発明「二酸化炭素含有粘性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4659980号の請求項1?13に係る発明は、1998年10月5日(優先権主張1997年11月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月7日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人は平成25年3月15日に本件特許に対して無効審判を請求し、被請求人は平成25年6月10日付けで審判事件答弁書を提出した。 そして、平成25年9月20日に第1回口頭審理が行われ、これに先立ち請求人は平成25年9月4日付けで口頭審理陳述要領書、平成25年9月12日付けで口頭審理陳述要領書(2)、及び、平成25年9月20日付け差出で口頭審理陳述要領書(3)を提出し、また被請求人も平成25年9月6日付け口頭審理陳述要領書を提出した。 第2 本件発明 本件特許第4659980号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?13に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。 「【請求項1】 部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、 1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ からなり、 含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、 含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 【請求項2】 得られる二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項1に記載のキット。 【請求項3】 含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項1又は2に記載のキット。 【請求項4】 含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。 【請求項5】 含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする、水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。 【請求項7】 請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。 【請求項8】 顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、又は顎の部分肥満改善用である、請求項7に記載の化粧料。 【請求項9】 部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって、 1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物; を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、 含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。 【請求項10】 調製される二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項9に記載の調製方法。 【請求項11】 含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項9又は10に記載の調製方法。 【請求項12】 含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。 【請求項13】 含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。」 (上記請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、以下、請求項2?13に係る発明を、順次「本件特許発明2」、……、「本件特許発明13」という。なお、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。) 第3 請求人の主張 これに対して、請求人は、「特許第4659980号にかかる特許請求の範囲の請求項1乃至13の各請求項に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の書証を提出し、本件特許が無効とされるべき理由として、以下の無効理由1(特許法第123条第1項第2号)と無効理由2(特許法第123条第1項第4号)を主張している。 1 無効理由1 (i)本件特許発明1及び本件特許発明9は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (ii)本件特許発明2及び本件特許発明10は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証並びに甲第7号証の1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (iii)本件特許発明3及び本件特許発明11は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (iv)本件特許発明4及び本件特許発明12は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (v)本件特許発明5及び本件特許発明13は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (vi)本件特許発明6は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (vii)本件特許発明7は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 (viii)本件特許発明8は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。 2 無効理由2 (ix)本件特許発明3及び本件特許発明11は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号及び同条同項第1号に規定する要件を満たしていないものであって、特許法第123条第1項第4号に該当する。 (証拠方法) 甲第1号証 特開昭60-215606号公報 甲第2号証 国際公開第96/19189号 (その翻訳文として特表平11-501290号公報) 甲第3号証の1 鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発II」普及版、シ ーエムシー出版、2006年8月22日第1刷発行、 第188?191頁、「普及版の刊行にあたって」の 記された頁、「執筆者一覧」の記された頁、表紙、第 360頁及び奥付 甲第3号証の2 特開平6-285175号公報 甲第3号証の3 国際公開第97/14412号 (その翻訳文として特表平11-513683号公報) 甲第3号証の4 前田真治 他「人工炭酸泉浴剤の褥創温湿布療法にお ける皮膚温の変化」、日温気物医誌、第53巻4号、 1990年8月発行 甲第4号証 特公平7-39333号公報 甲第5号証 特開昭62-181219号公報 甲第6号証 特公平7-8779号公報 甲第7号証の1 国立天文台 編「理科年表 平成8年(机上版)」、 丸善株式会社、平成7年11月30日発行、表紙、第 442?443頁及び奥付 甲第7号証の2 社団法人日本化学会 編「化学便覧 基礎編 改訂4 版」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、表紙 、II-19頁及び奥付 甲第8号証 更家勝 作成「試験結果報告書」、平成25年3月1 1日 甲第9号証 特開平8-268828号公報 (以上、審判請求書に添付。) 甲第10号証の1 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「テレフタル酸」 (ICSC番号:0330、更新日:1994年4月) 甲第10号証の2 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「イソフタル酸」 (ICSC番号:0500、更新日:1995年10月 ) 甲第10号証の3 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「リン酸二水素カリウム」 (ICSC番号:1608、更新日:2005年10月 ) 甲第10号証の4 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「二亜硫酸ナトリウム」 (ICSC番号:1461、更新日:2002年10月 ) (以上、平成25年5月20日付け手続補正書に添付。) 疎第1号証 知的財産高等裁判所 平成25年(ネ)第10001 6号 特許権侵害差止等請求控訴事件 における、控 訴人(本件請求人)提出の平成25年3月22日付け 第1準備書面 疎第2号証 知的財産高等裁判所 平成25年(ネ)第10001 6号 特許権侵害差止等請求控訴事件 における、被 控訴人(本件被請求人)提出の平成25年5月7日付 け答弁書 疎第3号証 知的財産高等裁判所 平成25年(ネ)第10001 6号 特許権侵害差止等請求控訴事件 における、控 訴人(本件請求人)提出の平成25年6月13日付け 第2準備書面 疎第4号証 特許第4659980号に対する本件請求人提出の平 成25年6月12日付け審判請求書(特許無効審判) (以上、平成25年6月25日付け上申書に添付。) 甲第11号証 特許第2680547号公報 甲第12号証 実開平5-91700号公報 甲第13号証 実公平6-30177号公報 甲第14号証 特開平8-104618号公報 甲第15号証の1 中村亮 作成「実験成績証明書」、平成24年5月1 1日 甲第15号証の2 更家勝 作成「試験結果報告書(2)」、平成25年 6月5日 甲第16号証 特許出願拒絶査定不服審判(不服2007-886号 )における平成22年10月22日付け拒絶理由通知 書 甲第17号証の1 特許出願拒絶査定不服審判(不服2007-886号 )における平成22年11月5日付け手続補正書 甲第17号証の2 特許出願拒絶査定不服審判(不服2007-886号 )における平成22年11月5日付け意見書 甲第18号証 新村出 編「広辞苑 第六版」、岩波書店、2008 年1月11日、表紙、第2183頁及び奥付 甲第19号証 社団法人日本分析化学会、高分子分析研究懇談会「高 分子分析ハンドブック」、朝倉書店、2008年9月 20日、表紙、第656?663頁及び奥付 甲第20号証の1 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「クエン酸」 (ICSC番号:0855、更新日:1998年3月) 甲第20号証の2 国立医薬品食品衛生研究所 邦訳「国際化学物質安全 性カード」のうち「酒石酸」 (ICSC番号:0772、更新日:1996年3月) 甲第21号証 特開2012-85954号公報(平成24年5月1 0日公開) 甲第22号証 国立天文台 編「理科年表 平成8年(机上版)」、 丸善株式会社、平成7年11月30日発行、表紙、第 454頁及び奥付 甲第23号証の1 実開平5-20735号公報 甲第23号証の2 特開平5-337195号公報 甲第23号証の3 特開平8-141030号公報 甲第23号証の4 実用新案登録公報第2508351号 甲第23号証の5 登録実用新案公報第3023646号 甲第23号証の6 実用新案登録公報第2537238号 甲第24号証の1 特開昭56-65814号公報 甲第24号証の2 特開昭60-222427号公報 甲第24号証の3 特開平5-229933号公報 甲第24号証の4 特開平6-276961号公報 甲第24号証の5 特開平6-340534号公報 甲第24号証の6の1 国際公開第96/27368号 甲第24号証の6の2 特表平11-501044号公報 (以上、平成25年9月4日付け口頭審理陳述要領書に添付。) 甲第25号証の1 実開平7-14891号公報 甲第25号証の2 特開平9-275896号公報 (以上、平成25年9月20日付け口頭審理陳述要領書(3)に添付。) 第4 被請求人の主張 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。 (証拠方法) 乙第1号証 大阪地方裁判所 平成23年(ワ)第4836号 特許権 侵害差止等請求事件 判決 乙第2号証 特許第4659980号に対する本件請求人提出の平成2 4年5月24日付け審判請求書(特許無効審判(無効20 12-800084号)) 乙第3号証 特許第4659980号に対する特許無効審判(無効20 12-800084号))の第1回口頭審理調書 乙第4号証 特許第4659980号に対する特許無効審判(無効20 12-800084号))の審決 乙第5号証 日置正人 作成「実験成績証明書」、平成23年10月1 2日 乙第6号証 日置正人 作成「実験成績証明書」、平成23年10月1 2日 乙第7号証 「メディプローラーAA」の商品カタログ 乙第8号証 「スパオキシジェル」の商品カタログ (以上、平成25年6月10日付け答弁書に添付。) 乙第9号証 鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発III」普及版、シー エムシー出版、2007年6月21日第1刷発行、第31 4?323頁、表紙及び奥付 乙第10号証 特開2008-255073号公報 乙第11号証 社団法人日本分析化学会、高分子分析研究懇談会「高分子 分析ハンドブック」、朝倉書店、2008年9月20日、 表紙、第656?663頁及び奥付 (以上、平成25年9月6日付け口頭審理陳述要領書に添付。) 第5 当審の判断 A 請求人の主張する無効理由1について 1 甲第1号証ないし甲第6号証及び甲第11号証ないし甲第14号証 (1)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第1号証には,以下の事項が記載されている。 (ア)「1. 炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有することを特徴とするパツク剤。」(請求項1)、 (イ)「2. 炭酸ガス発生物質が炭酸塩と酸である特許請求の範囲第1項記載のパツク剤。」(請求項2)、 (ウ)「パツク剤は、通常ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし、これに種々の添加成分を配合したもので、その造膜課程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に、皮膚表面の汚れを吸着して正常する皮膚化粧料の一つである。」(第1頁右下欄第1?7行)、 (エ)「また、酸としては、有機酸及び無機酸の何れも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましい。」(第2頁右下欄第10?12行)、 (オ)「本発明にパツク剤には上記必須成分のほかに、通常のパツク剤に使用される油性基剤、エモリエント剤、保湿剤、皮膜剤、ゲル化剤、増粘剤、アルコールおよび精製水、さらに必要に応じて界面活性剤、血行促進剤、消炎剤、ビタミン類、殺菌剤などの薬効剤、防腐剤、香料、色素などを適宜配合することができる。」(第3頁左下欄第5?11行)、 (カ)「本発明のパツク剤は次のような形態とすることができる。<1> 従来公知のパツク剤を耐圧容器に入れ、これに高圧炭酸ガス、あるいは炭酸塩と酸、若しくはドライアイス等の炭酸ガス発生源を加えて密閉する。 本パツク剤は使用時内容物を吐出させて被パツク部位に塗布する。<2> 炭酸塩と酸を実質的に水の存在しない状態で、一つの不織布、布、紙等の担体に担持させる。更にこの担体に公知のパツク剤成分を一緒に担持させておいてもよい。 本パツク剤は、使用時被パツク部位に付着させ、この上に蒸しタオルを重ねるとか、水を添加するとかの方法によつてパツク剤に水を供給して、当該炭酸塩と酸とを反応させて炭酸ガスを発生させる。<3> 炭酸塩と酸をそれぞれ異なる2つの上記担体に担持させる。この担体には、<2>と同様に公知のパツク剤成分を担持させることも、また水分を保持させることもできる。 本パツク剤は、使用時被パツク部位に重ねて付着させ、必要な場合(パツク剤が水を含まない場合)には、<2>と同様に水を供給して炭酸ガスを発生させる。」(第2頁右上欄第1行?左下欄第8行、上記文中「<1>」、「<2>」、「<3>」はそれぞれ、丸の中に数字1、丸の中に数字2、丸の中に数字3、である。)、 (キ)「製造例4 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール4部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール6部、カルボキシメチルセルロースナトリウム3部、亜鉛華4部、炭酸水素ナトリウム5部、香料0.3部、色素を微量および水53.7部から、常法により製造したものをA剤とした。 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール5部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール5部、コラーゲン2部、酸化チタン2部、酒石酸5部、香料0.3部、色素を微量および水56.8部から常法により製造して得たものをB剤とした。使用時、A剤2重量部とB剤3重量部を混合する。使用時のpHは6.2。」第4頁右上欄第12行?左下欄第14行)、 (ク)「本発明はパツク剤に関し、更に詳細には、炭酸ガスによる血行促進作用によつて皮膚をしつとりさせることができるパツク剤に関する。」(第1頁左下欄第13?15行)、 (ケ)「そこで、本発明者は、このような欠点がなく、血行をよく促進するパツク剤を提供すべく鋭意研究を行った結果、炭酸ガスを皮膚に直接作用させると皮膚の血流が良くなり、皮膚にしつとり感を与えることを見出し、本発明を完成した。」(第2頁第1?6行)、および (コ)「 (1) 血流量は、塗布前を1とした相対値で示した。 (2) NMP値は塗布30分後の値を塗布前を1とした相対値で示した。 (3) しつとり感はn=4の平均値を示した。 第1表から明らかなように、発明品は従来品に比較し、血流量、NMP値及びしつとり感の何れにおいても顕著に優れている。」(第5頁左下欄第1行?右下欄第4行) 上記記載事項(ア)?(オ)、(カ)及び(ク)?(コ)より、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「不織布、布、紙等の担体に炭酸塩を担持させたものと、それとは異なる不織布、布、紙等の担体に酸を担持させたものの組み合わせからなり、2つの担体それぞれには、さらにパック剤成分を担持させることができ、また水分を保持させることができる、パック剤であって、使用時には被パック部位に重ねて付着させることにより(いずれの担体にも水分が保持されていない場合には併せて水を供給することにより)、発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与えるパック剤。」 また、上記記載事項(ア)?(オ)、(キ)及び(ク)?(コ)より、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明2」という。)も記載されていると認める。 「平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール4部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール6部、カルボキシメチルセルロースナトリウム3部、亜鉛華4部、炭酸水素ナトリウム5部、香料0.3部、色素を微量および水53.7部から製造したA剤と、 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール5部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール5部、コラーゲン2部、酸化チタン2部、酒石酸5部、香料0.3部、色素を微量および水56.8部から製造したB剤の組み合わせからなるパック剤であって、使用時にA剤2重量部とB剤3重量部を混合してpHが6.2となる、発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与えるパック剤。」 (2)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (サ)「このようにして、存在する重炭酸塩または炭酸塩添加物は迅速にかつ完全に中和され、歯の清浄操作開始直後、CO_(2)を放出し、これはまず使用者の側の不快な味覚を除去し、第二に、放出された二酸化炭素による微細な泡の迅速かつ有効な形成が起こる。これにより、歯の表面の全領域は、従来の歯科衛生製品では到達し難いかまたは全く到達し得ない部分も含めて洗浄操作中に練り歯磨剤と確実に実質的に均一に接触する。この強い泡の形成に基づく輸送効果の結果、歯の洗浄操作中に得られる活性成分の分布、特に存在するのが好ましいポリリン酸塩の分布が最適化され、これによりまず、新たに蓄積される歯石がキレート形成反応の結果阻害され、次にコーヒー、茶またはニコチンの消費による茶色を呈する歯の表面上の沈着物が緩和される。この結果、漂白プロセスが起こり歯がより白い外観を呈するようになる。さらに、口腔予防に重要なフッ化物イオンの分布が微細な泡により最適化される。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第7頁第2?13行)、および (シ)「実施例3: 発泡性歯磨剤 塩基性相 酸性相 (% W/W) (%W/W) ソルビトール - 60.00 水 38.05 - キシリトール 20.00 - 水酸化ナトリウム 0.90 - (50%H_(2)O中溶液) 重炭酸ナトリウム 12.50 - トリポリリン酸ナトリウム 10.00 - フッ化ナトリウム 0.30 0.30 サッカリンナトリウム 0.25 0.30 二酸化チタン 1.00 - SiO_(2 )(サイデント9) 10.00 10.00 SiO_(2 )(サイデント22S) 1.50 8.00 PEG-6 2.00 2.00 ラウリル硫酸ナトリウム 1.50 1.50 キサンタンガム*) 1.00 0.90 酒石酸 - 2.40 矯味矯臭剤 1.00 0.40 着色料(1%) - 0.50 *)増粘剤として」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第14頁第1?23行) (3)甲第3号証の1は、本件特許出願の優先権主張日後に頒布された刊行物である。しかし、甲第3号証の1には「普及版の刊行にあたって」として「本書は1996年に「機能性化粧品II」として刊行されました。普及版の刊行にあたり,内容は当時のままであり一部項目の削除のほか加筆・訂正などの手は加えておりませんので,ご了承ください。」(「普及版の刊行にあたって」の記された頁)との記載があることから、甲第3号証の1に記載された事項は、本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発II」初版、シーエムシー出版、1996年8月30日第1刷発行 にも記載された事項と推認できる。 甲第3号証の1には、以下の事項が記載されている。 (ス)「ここでスリミング機能をさらに分類して考えてみたい。肥満を大きく分けると,単純に脂肪が蓄積されたタイプと水太り・むくみ太りのタイプがあるが,前者は脂質分解促進により,後者は体液(血液・リンパ液)の循環の促進により解消される。」(第189頁第21?23行)、および (セ)「血行促進、リンパ液循環促進剤としては,安全性や効果の穏やかさの点で,植物エキスがしばしば使われてきた。漢方薬の中で「駆お血」薬として知られていた物や,ヨーロッパ生薬において古くから用いられてきた物が例としてあげられる^(4))。これらを使うことによって,むくみや水太りが解消されるが,近年特にセルライト(皮下で脂肪が水分や老廃物とともに塊になり皮膚がデコボコになったもの,皮膚の変性により外から見えやすくなる)を解消する作用に注目した報告がなされている。」(第190頁下から第4行?第191頁第2行) (4)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第3号証の2には,以下の事項が記載されている。 (ソ)「【従来の技術】高周波エネルギ-は人体内の血液の循環を良くし、細胞質の分泌液を増加させ体内の循環液の循環を活発化させるものとして良く知られており、特に容量的に高周波電流を供給する方法は、医療機器や美容機器として知られている。従来の高周波エネルギ-を供給する装置は、表面を絶縁体で被覆した活性電極を被験者の体に接触させて電流を供給するとともに該被験者が棒状の中性電極を握り活性電極側から中性電極に向かって体内に電流を送り、体内で熱流を発生させるようにしていた。」(発明の詳細な説明の段落0002)、 (タ)「また本発明に係る痩身装置の使用が局所肥満に効く理由は次のように考えられる。すなわち、脂肪細胞は常に、血糖、脂肪酸といったエネルギ-物質を貯蔵し、非常時に必要に応じて脂肪を動員し、エネルギ-を補う態勢をとっている。普段はリン脂質が脂肪滴を包みこみ脂肪が分解され流出しないよう関門の役割を果している。したがって本装置を使用して普段の状態のままで脂肪を分解するには、脂肪分解酵素(リパ-ゼ)を直接、脂肪細胞内の脂肪滴に接触させ、脂肪の分解を促進させる必要がある。この場合、ノルアドレナリンが分泌されると、リン脂質に直接働きかけ、関門を自動的に開くのでリパ-ゼが脂肪滴に作用して脂肪の分解がおきる。このアドレナリンは脂肪動員の関門をあけさせる引き金の役割を果す血中ホルモンである。本装置によるトリ-トメントは、円導子のマッサ-ジで体表近くの動脈を刺激し、血管にまとわりついた交感神経を活発にするためノルアドレナリンが分泌される。その結果、脂肪の分解がおこり、血中に動員された脂肪はさらに高周波の温熱作用で燃焼され、効率よく消費されるため局所肥満が解消する。」(発明の詳細な説明の段落0008)、および (チ)「【発明の効果】本発明によれば人体の局所肥満箇所例えば腹部、胴部、臀部、太腿、上腕部、首等に対し高周波電流を効果的に迅速かつ均一に流すことができ、優れた痩身装置を提供することができると共にこの装置を使用して短期間で確実に痩身効果をあげることができる。また本発明では中性電極として、広い面積の金属製板状体で形成することとしたので、人体の局所肥満箇所の近傍等の任意の箇所に密着させるようにして固定し、トリ-トメントしようとする人体の局所肥満箇所に導電性物質を含有するクリ-ムを塗布して、その上を円導子で半円を描くようにマッサ-ジしながら移動させて高周波を照射する時に、固定した中性電極に最短距離で電流が活発に流れるようになり、円導子をトリ-トメントするどの箇所に移動しようとも、電流が活性電極の側から次々に広い中性電極に向かって円滑に供給されることとなり、施術時間も大幅に短縮される。」(発明の詳細な説明の段落0015) (5)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第3号証の3には,以下の事項が記載されている。 (ツ)「5.前記処理は、化粧組成物の局部適用を含み、該組成物は、 a)化粧的に相性が良く、pHを減少させ、TEWLを上昇させる約1?約15パーセントのオキシカルボン酸と、 b)約0.005?約6.0パーセントの細胞再生/分化調整剤レチノイドセル とを前記組成物の重量に基づく比率で含むことを特徴とする請求項1記載の方法。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報の請求項5)、 (テ)「セリュライトは、不規則な脂肪性の塊の異常な皮下の沈殿物であり、皮膚の正常で滑らかな曲がりに、見苦しい不要なものを形成する。 生理学的に、セリュライトは、脂肪が沈殿しがちな領域における微小循環の退化によって発生する。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第6頁第11?14行)、 (ト)「以下で述べた実験データが示すところによると、本発明に係る組成物は、セリュライト処理の有効性の新しいレベルを提供する。そして、皮膚の厚さと血流を大幅に増加し、改善を促進する。これらのおよび他の生成物の有効性は、丁寧に定量化される。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第13頁第17?18行)、 (ナ)「さらに、重要なのは、組織密度がこのように肯定的効果として改善され、真皮および表皮がより堅く弾力性に富み、皮下領域の脂肪が減少し、異質の流動体が減少することである。これらは、本発明の処理による構造上の改善である。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第13頁第25?26行)、および (ニ)「 」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第33頁) (6)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第3号証の4には,以下の事項が記載されている。 (ヌ)「II 方法 人工炭酸泉浴剤による褥創治療として田中らの方法^(1))を少し代えた局所湿布法を行った(Fig.1)。先ず,市販の花王バブ1/10コ5gを50℃の温水250mlに溶かし、その中に20cm四方の厚く層にしたガーゼをひたす。そのガーゼを褥創部に当て保温と炭酸ガスの拡散防止のためビニールを当てその上に42℃のホットパックをバスタオルで包んでのせ,30分間保温する。この方法を1日2回連日で行った。」(196頁左下欄下から第4行?右上欄第6行)、および (ネ)「V 考察 炭酸ガス泉浴による褥創治療の効果については創部の温度上昇,血管拡張により褥創治療機転が働くと考えられている^(1)2))。本研究においても難治性の褥創の褥創面積の改善が認められた。その際,皮膚温の経時的変化は褥創部では比較的高温が持続されることがみられている。この温度上昇は水道水湿布に比べても1?2℃有意に上昇しており,42℃の温熱に加え炭酸ガスそのものの血管拡張作用,血流促進作用によると考えられた。また,周辺部位に比べ褥創部で高温維持されていることについては,創部では真皮が直接露出することで血管軟部組織がより浅いところに位置することになる。このことは一旦表皮を通より高濃度の炭酸ガスに血管が暴露され,より直接に血管に作用し血管拡張するとも考えられた。以上より,単なる水道水のみの湿布に比較し褥創治癒が促進されると解釈できた。 さらに,皮膚温の経時的変化において急激な温度低下の後,再上昇することについては,冷湿布後の低温暴露による反射的な血管の再拡張と同様な機序による血流再促進,あるいは,炭酸ガスの濃度が褥創部では周辺組織より高く作用し血管拡張が周囲に比べてより大きいために生じる結果ともとらえられた。 一方,湿布周辺部においては逆に湿布前の皮膚温より低温になる部位もみられ,このことは血管拡張により血液が褥創部に流入するために周辺部においては血流のsteal現象により,血流現象が生じているとも考えられる。したがって,湿布法を用いた褥瘡治療においては,周辺に褥創があるならば同時に周辺の褥創も湿布するなど血流減少に対する注意が必要であると思われた。」(第199頁左欄第5?39行) (7)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第4号証には,以下の事項が記載されている。 (ノ)「他の添加剤の1には増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを1?15重量部の範囲で含めることができる。アルギン酸ナトリウムはほど良い気泡膜を形成させるので、これも気泡の強弱を調節できるが、1重量部未満では気泡及び炭酸ガスの発生状態が強過ぎ、20重量部を越えると長く持続する反面弱くなり過ぎる。また発生した気泡が破裂する音の強弱のコントロールにも使用される。」(発明の詳細な説明の段落0012) (8)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第5号証には,以下の事項が記載されている。 (ハ)「褥瘡治療剤用組成物には、上記炭酸塩及び有機酸の必須成分の他に、消炎剤、殺菌剤、抗生物質、創傷治癒促進剤、ビタミン類等の任意成分を配合することができる。なお、これら任意成分は、必要に応じて、褥艙治僚削に別途添加することもできる。 また、その剤型は粉末、顆粒、錠剤等の形にすることができ、これらの製剤化のために、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を添加することができる。 本発明の褥瘡治療剤は、褥瘡治療剤用組成物を、その水溶液中の二酸化炭素の濃度が300ppm以上、好ましくは500ppm以上となるように水、好ましくは温水に溶解せしめることにより調製される。」(第2頁右上欄第10行?左下欄第4行)、および (ヒ)「実施例2 77オの女性。多発性脳梗塞と糖尿病、高皿圧症の基礎疾患を有し、踵に血行不全による褥瘡が生じた。軟骨塗擦・消毒処置による治療を数ケ月続けたが改善がみられないため、実施例1で得た錠剤1個を10lの温水にとかして下腿部を約20分間足浴(1日2回)させた。 当初、褥瘡面積が15.9cm^(2)であったのが、3ケ月後には完治した。」(第2頁右下欄下から第5行?第3頁左上欄第3行) (9)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第6号証には,以下の事項が記載されている。 (フ)「 」(第3頁?第4頁) (10)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第11号証には,以下の事項が記載されている。 (ヘ)「人体への遠赤外線の吸収は皮膚を通して浸透し、体表面の筋肉層、血管、リンパ管、神経等、細胞にむらなく温熱効果作用を及ぼし、振動的分子運動の共鳴作用を起こし、細胞組織へのマイクロマッサージと細胞内化学物質の活性化に作用する。この結果、生体反応として体内部から暖め、毛細血管、微細動静脈の拡張、全身の血流循環の活性化、つまり代謝の強化、体液循環障害の除去と組織再生力を高める。また血液に対する働きかけとしては水分子の共鳴振動により分子運動に電気的共振を起こし、自己発熱現象を起こして低温部分の温度を上昇させる。この自己発熱は比較的低温部の腰部、下肢部分の温度を体の中心温度まで上昇させ、その結果抹消血管に血液が早く送られるようになる。」(発明の詳細な説明の段落0023)、および (ホ)「また、自己発汗作用を活発にし、代謝活動を促進させる。発汗作用の促進はエクリン腺(体温調節)とアポクリ腺(脂質老廃物排出)共に汗腺機能を高め、皮膚と皮膚組織の洗浄をなし、人体の恒常性の維持能力を高める。更に発汗作用の促進は老廃物の皮膚面よりの体外排泄を促進し、体内老廃物排泄のための臓器負担を軽減する。」(発明の詳細な説明の段落0024) (11)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第12号証には,以下の事項が記載されている。 (マ)「すなわち、本案は遠赤外線の作用によって人体の血行を盛んにするとともに、非通気性素材によって発汗をうながすという二重の作用を持つためにより有効なダイエットが可能となるものである。」(考案の詳細な説明の段落0005) (12)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第13号証には,以下の事項が記載されている。 (ミ)「本案は、他の衣類と異なり、非通気性素材を中芯(1)に用いており、そのため腰部の発汗をうながし、特に腰部のぜい肉・脂肪を取り去ってダイエット効果が現れる。」(第3欄第46?48行) (13)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第14号証には,以下の事項が記載されている。 (ム)「 」(発明の詳細な説明の段落0018) 2 対比・判断 (1)まず、本件特許発明1と引用発明1とを比較する。 (a)本件特許発明1は、その使用により得られる二酸化炭素含有粘性組成物の用途が「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される」とされているのに対し、引用発明1は、その使用により得られるものの用途が「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」とされている点で相違し、 (b)本件特許発明1では、炭酸塩はアルギン酸ナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され、酸は顆粒(細粒、粉末)剤に含まれるのに対し、引用発明1では、炭酸塩は不織布、布、紙等の担体に担持され、酸はそれとは異なる不織布、布、紙等の担体に担持され、2つの担体それぞれには、さらにパック剤成分を担持させることができ、また水分を保持させることができるとされている点で相違する。 相違点(a)について、請求人は、上記記載事項(ス)?(ニ)及び(ヘ)?(ム)により、部分肥満改善用化粧料との用途は当業者にとって容易に想到し得たことである旨を主張し、上記記載事項(ネ)並びに(ハ)及び(ヒ)により、褥創の治療用医薬組成物との用途は当業者にとって容易に想到し得たことである旨を主張する。 しかし、上記記載事項(ス)?(ニ)及び(ヘ)?(ム)のいずれも、引用発明1における「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。 さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。 また、上記記載事項(ネ)は、上記記載事項(ヌ)を参酌すると、42℃の温熱とともに温水により炭酸ガスを発生する人工炭酸泉浴剤を用いた温湿布を併用した褥創治療についてのものであって、温熱も温水も用いない引用発明1における「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。また、上記記載事項(ハ)及び(ヒ)も、引用発明1における「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。 さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。 相違点(b)について、請求人は、上記記載事項(カ)、(サ)、(シ)及び(フ)により、引用発明1に対して、炭酸塩を担持した担体にはさらにパック剤成分を担持させるとともに水分を保持させる一方、酸を担持した担体にはパック剤成分を担持させず水を保持させないことは、当業者が容易に選択し得たことであり、その際に、上記記載事項(ウ)、(オ)及び(ノ)により、炭酸塩を増粘剤としてのアルギン酸ナトリウムとともに担持させて水性粘性組成物とする一方、上記記載事項(エ)により、酸を顆粒剤に含まれるものとすることも、当業者が容易になし得たことである旨を主張する。 しかし、引用発明1の解決しようとする課題は「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」ことであると認められるところ、引用発明1に対して、炭酸塩を担持した担体にはさらにパック剤成分を担持させるとともに水分を保持させる一方、酸を担持した担体にはパック剤成分を担持させず水を保持させないことを選択することが、その課題解決のために有効である等、当業者がその選択をする動機づけとなるものは何ら見いだせない。 また、上記記載事項(ウ)、(オ)及び(ノ)並びに(エ)を参酌しても、引用発明1で用いられる「不織布、布、紙等の担体」を用いることなく、炭酸塩を含水粘性組成物に含有させ、酸を顆粒(細粒、粉末)剤に含ませることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものも見いだせない。 さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1に対して、炭酸塩を担持した担体にはさらにパック剤成分を担持させるとともに水分を保持させる一方、酸を担持した担体にはパック剤成分を担持させず水を保持させないことを選択すること、及び、引用発明1で用いられる「不織布、布、紙等の担体」を用いることなく、炭酸塩を含水粘性組成物に含有させ、酸を顆粒(細粒、粉末)剤に含ませることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。 また、本件特許に係る平成23年(ワ)第4836号特許権侵害差止等請求事件についての大阪地裁判決(平成25年1月17日判決言渡)においては、 「前記(2)のとおり,乙3発明は,本件各特許発明と構成及び作用効果のいずれの点においても相違するものである。 乙3発明において本件各特許発明に係る「物」である「二酸化炭素含有粘性組成物」の構成を採用する動機付けや示唆の存在についても認めることはできない。 むしろ,前記(1)によれば,乙3発明は,皮膚上に皮膜を形成するものであり,皮膚への二酸化炭素の浸透量を増大させることができないものである。皮膜を形成させずに,発生させた二酸化炭素を持続的に保持させるという本件各特許発明の構成を採用すると,乙3発明の本来の目的を阻害することになる。 これらのことからすれば,本件各特許発明について,当業者が,乙3発明に基づいて容易に発明することができたものであるとは認めることができない。」(第49頁「(3)容易想到性」の項。なお、ここにいう「乙3発明」は本件における甲第1号証に記載された発明である)と判示しており、そのように判断することもできる。 本件特許発明9についても、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明1及び9が、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)次に、本件特許発明1と引用発明2とを比較する。 (a)本件特許発明1は、その使用により得られる二酸化炭素含有粘性組成物の用途が「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される」とされているのに対し、引用発明2は、その使用により得られるものの用途が「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」とされている点で相違し、 (c)本件特許発明1では、炭酸塩はアルギン酸ナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され、酸は顆粒(細粒、粉末)剤に含まれるのに対し、引用発明2は、炭酸塩はアルギン酸ナトリウムを含まずカルボキシメチルセルロース及び水を含むA剤に含有され、酸は水とともにB剤に含まれる点で相違する。 相違点(a)については、上記2(1)で判断したとおりである。 相違点(c)について、請求人は上記記載事項(サ)、(シ)及び(フ)により、引用発明2に対して、酸及び水の含まれるB剤を酸を含み水を含まない顆粒(細粒、粉末)剤とすることは当業者が容易になし得たことであり、その際に、上記記載事項(オ)、(ノ)及び(フ)により、炭酸塩が含有され水を含むA剤に含有されるカルボキシメチルセルロースをアルギン酸ナトリウムに変更することも、当業者が容易になし得たことである旨を主張する。 しかし、引用発明2の解決しようとする課題は「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」ことであると認められるところ、上記記載事項(サ)、(シ)及び(フ)を参酌しても、酸及び水の含まれるB剤を酸を含み水を含まない顆粒(細粒、粉末)剤とすることが、その課題解決のために有効である等、当業者がその発明特定事項を採用する動機づけとなるものは何ら見いだせない。 さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明2に対して、酸及び水の含まれるB剤を酸を含み水を含まない顆粒(細粒、粉末)剤とすることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。 また、本件特許に係る平成23年(ワ)第4836号特許権侵害差止等請求事件についての大阪地裁判決(平成25年1月17日判決言渡)においては、 「前記(2)のとおり,乙3発明は,本件各特許発明と構成及び作用効果のいずれの点においても相違するものである。 乙3発明において本件各特許発明に係る「物」である「二酸化炭素含有粘性組成物」の構成を採用する動機付けや示唆の存在についても認めることはできない。 むしろ,前記(1)によれば,乙3発明は,皮膚上に皮膜を形成するものであり,皮膚への二酸化炭素の浸透量を増大させることができないものである。皮膜を形成させずに,発生させた二酸化炭素を持続的に保持させるという本件各特許発明の構成を採用すると,乙3発明の本来の目的を阻害することになる。 これらのことからすれば,本件各特許発明について,当業者が,乙3発明に基づいて容易に発明することができたものであるとは認めることができない。」(第49頁「(3)容易想到性」の項。なお、ここにいう「乙3発明」は本件における甲第1号証に記載された発明である)と判示しており、そのように判断することもできる。 本件特許発明9についても、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明1及び9は、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明1及び9は、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 (4)本件特許発明2?8、10?13はいずれも、本件特許発明1又は本件特許発明9の発明特定事項のすべてを、その発明特定事項の一部としている。 そして、本件特許発明2?8、10?13が、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべき旨の請求人の主張は、本件特許発明1及び9が、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを前提としているところ、上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明1及び9は、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないのであるから、本件特許発明2?8、10?13は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 B 請求人の主張する無効理由2について (1)請求人は、本件特許発明3及び本件特許発明11は、「含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できる」を発明特定事項としているが、「炭酸塩と酸を反応させた後」が、反応を開始させた直後であるのか、反応を所定の段階まで進行させた後であるのか、又は反応を終了させた後であるのか、不明であるので、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨を主張する。 しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「<気泡の持続性> 炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。 <評価基準2> 減少率 気泡の持続性 20%以下 +++ 20%?40% ++ 40%?60% + 60%以上 0 体積の測定は、各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し、該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ、それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。」(本件特許公報第12頁第9?23行)、 「<気泡の持続性> 炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1g相当量の酸の顆粒剤を直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。 体積の測定は、実施例1?84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。」(本件特許公報第23頁第42?48行)、および 「<気泡の持続性> 含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。 体積の測定は、実施例1?84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。」(本件特許公報第36頁第25?31行) これらの記載を参酌すれば、「炭酸塩と酸を反応させた後」とは、炭酸塩と酸との反応を含水粘性組成物と顆粒剤を攪拌混合することにより開始させ、その攪拌混合1分後の時点を意味することは、当業者にとって明らかである。 したがって、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 (2)請求人は、さらに、本件特許発明3及び本件特許発明11は、「含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できる」を発明特定事項としているが、「炭酸塩と酸を反応させた後」については発明の詳細な説明における裏付けが存在せず、また、「含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量」に関して発明の詳細な説明では実施例109?144における「気泡の持続性」について「炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1g相当量の酸の顆粒剤を直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。」(本件特許公報第23頁第43?46行)との記載があり、炭酸塩と酸をカップ内にて攪拌混合して得られた二酸化炭素含有粘性組成物についての気泡の持続性テストを、メスシリンダーに入れずに体積を測定及び評価しているので、「含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量」についても発明の詳細な説明における裏付けが存在せず、本件特許発明3及び本件特許発明11はいわゆるサポート要件を充足していないので、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張する。 しかし、「炭酸塩と酸を反応させた後」については上記(1)で示したとおり発明の詳細な説明に記載されていると認められる。 また、「含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量」については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「体積の測定は、各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し、該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ、それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。」(本件特許公報第12頁第10?23行)との記載があり、しかも、本件特許発明3及び本件特許発明11は、二酸化炭素含有粘性組成物をメスシリンダーに直接入れることを発明特定事項とはしていない以上、本件特許発明3及び本件特許発明11は発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 したがって、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 (3)上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明3及び本件特許発明11は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号及び同条同項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないので、特許法第123条第1項第4号に該当しない。 C むすび 以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1ないし13に係る発明の特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-09 |
結審通知日 | 2013-10-11 |
審決日 | 2013-10-29 |
出願番号 | 特願2000-520135(P2000-520135) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(A61K)
P 1 113・ 537- Y (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 守安 智、岩下 直人 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
前田 佳与子 内田 淳子 |
登録日 | 2011-01-07 |
登録番号 | 特許第4659980号(P4659980) |
発明の名称 | 二酸化炭素含有粘性組成物 |
代理人 | 立花 顕治 |
代理人 | 岩▲崎▼ 孝治 |
代理人 | 赤尾 直人 |
代理人 | 紀田 馨 |
代理人 | 田中 順也 |
代理人 | 鈴木 一徳 |
代理人 | 七條 耕司 |
復代理人 | 水谷 馨也 |
代理人 | 山田 威一郎 |