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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60H
管理番号 1284509
審判番号 不服2012-4867  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-14 
確定日 2014-02-05 
事件の表示 特願2008-529155号「温度に応答する可変色出力を有する環境照明システム」拒絶査定不服審判事件〔2007年3月8日国際公開、WO2007/027581、平成21年 2月12日国内公表、特表2009-505903号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2006年8月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2005年8月29日 米国)を国際出願日とする出願であって 、平成23年11月11日付けで拒絶査定がなされ(発送:11月15日)、これに対し平成24年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これと同時に手続補正がなされたものであり、さらに、平成25年3月22日付けで当審において拒絶理由が通知され(発送:3月26日)、これに対して平成25年7月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年7月25日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。

「【請求項1】
乗物の車内における温度変化に応答する可変色の光の出力を有する、車内のための環境照明システムであって、
空気を導くためのプレナムと、
前記プレナムに作動的に接続され、前記プレナムから車内へと空気を方向付けするための空気放出通風口と、
前記プレナムにおいて、空気の温度を感知するための検知器と、
前記プレナムの中において前記通風口の近くに配置され、前記通風口を介して車内へと光を照射するための照明装置と、
前記検知器に応答し、空気の温度が所定の値を下回ると第1の色の光を照射するよう前記照明装置を通電し、空気の温度が所定の値を上回ると第2の色の光を照射するよう前記照明装置を通電するための制御回路とを含み、
前記第1および第2の色は異なり、車内における環境は、前記通風口へ運ばれる空気の感知された温度の変化に応答して、前記プレナムから前記通風口を通じて車内へ異なる色の光を照射することにより向上され、それにより、空気および光の両方が前記通風口を通じて同じ方向に同時に流れ、第1および第2の色は活性な通風口を通じてのみ照射され不活性な通風口は照射されず、車内における環境は、光および空気が活性な通風口を通じて同じ方向に同時に流れることによりさらに向上され、
前記照明装置は前記第1の色に関連付けられる第1の光源と、前記第2の色に関連付けられる第2の光源とを含み、
前記検知器は前記第1の光源に関連付けられる第1のセンサと、前記第2の光源に関連付けられる第2のセンサとを含み、
前記第1のセンサは、車内の空調システムにおける蒸発器の近くに設置され、空気の温度が所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され、
前記第2のセンサは、車内の空調システムにおけるヒータコアの下流側に位置決めされ、空気の温度が所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成される、環境照明システム。」

3.刊行物とその記載事項
(1)当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)にて引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2001-328486号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の記載がある。

ア.「【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1にかかる車両用照明装置は、車室内に空気を吹出す車両用空調機のダクトと、前記ダクトの吹出口に配設されるレジスタと、前記レジスタの内側のダクト内で、かつ、光が前記レジスタの開口から車室内を照明可能な位置に配設された発光ダイオードからなる発光源と、前記発光ダイオードの発光源の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替える切替回路とを具備するものである。
【0009】したがって、発光ダイオードからなる発光源は、特に、ダクトが発光源からの光が拡散しないように作用するから、光が前記レジスタの開口から車室内を照明可能な位置であれば、前記レジスタの開口付近であっても、または、前記レジスタの奥部であってもよい。
【0010】ここで、前記レジスタの開口とは、フィンを有する吹出口及びメッシュ等を有する吹出口の開口とすることができる。何れにせよ、空気流及び光が通過できるものであればよい。
【0011】また、車室内を照明可能な位置に配設された発光ダイオードの発光源とは、少なくとも、暖色系及び冷色系を出力することを前提とするが、喚気のみに使用する機能も存在することから、暖色系及び冷色系及びその混色を表現できることが望ましい。しかし、赤色系の暖色系及び青色系の冷色系を表現するために三原色を発光できる赤色、緑色、青色発光ダイオードを使用し、任意の色彩を発光させるようにすることができる。
【0012】そして、発光ダイオードからなる発光源は、導光体に埋設し、その発光光をレジスタの開口方向のみの指向性を持たせることができる。
【0013】請求項2にかかる車両用照明装置の前記発光源の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替える切替回路は、室内に配設した温度センサまたは車両用空調機の空調の切替スイッチとしたものである。
【0014】ここで、温度センサによる切替えは、室内温度を所定の温度に設定し、自動運転している場合、暖房と冷房の切替えがレジスタの開口の色の変化によって判断できる。」(段落【0008】?【0014】。下線は当審にて付与、以下同じ。)

イ.「【0029】また、ステップS1で空調の自動運転を行う自動スイッチのオンを判断し、自動スイッチのオンにより空調の自動運転が設定されているとき、ステップS10で現在暖房運転中であるかを判断し、暖房運転中であるとき、ステップS11で暖色系発光を行う。このとき、センタレジスタ2、サイドレジスタ3から暖められた空気が室内に供給されている。
【0030】自動スイッチのオンにより空調の自動運転が設定されているときに、ステップS10で現在暖房運転中と判断されず、ステップS12で冷房運転中であると判断されたとき、ステップS13で冷色系発光を行う。このとき、センタレジスタ2、サイドレジスタ3から冷された空気が室内に供給されている。」(段落【0029】?【0030】)

ウ.「【0035】したがって、空調機の暖房運転の際には、センタレジスタ2、サイドレジスタ3から暖色による室内照明がなされ、また、冷房運転の際には、センタレジスタ2、サイドレジスタ3から冷色による室内照明がなされ、室内照明と空調の出力の相乗効果によって、車内の空調の効果を上げることができる。また、センタレジスタ2の内側のダクト1、サイドレジスタ3の内側の正面ダクト21A及び上部ダクト21Bから暖色または冷色による室内照明及び白色系による室内照明がなされ、運転者に邪魔にならない指向性の室内照明となり、室内の乗員のみの利便となる。
【0036】ところで、本実施の形態の車両用照明装置は、発光源10の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替える切替回路を、温度センサからの入力と設定温度との比較によって駆動される空調の暖房運転または冷房運転の判断を行っているが、特に、本発明を実施する場合には、暖房運転または冷房運転の切替スイッチからの信号を、発光源10の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替える切替回路に直接使用することもできる。また、本実施例では、暖房運転または冷房運転の判断によって、発光源10の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替えているが、本発明を実施する場合には、温度センサからの入力と設定温度との比較結果によって、発光源10の発光色を暖房の際には暖色系に、冷房の場合には冷色系に切替えることもできる。」(段落【0035】?【0036】)

エ.イの記載から、光および空気が送風中のレジスタの開口を通じて同じ方向に同時に流れていることがわかる。

以上の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

車室内の温度によって発光色が切替えられる光照射を有する、車両用照明装置であって、
空気を導くためのダクトと、
前記ダクトに配設され、前記ダクトから車内へと空気を供給するためのレジスタの開口と、
車室内において空気の温度を検出する温度センサと、
前記ダクトの中において前記レジスタの開口付近に配置され、前記レジスタの開口から光を照射する発光源と、
前記温度センサからの入力により、冷房運転と判断されると冷色系の発光色の光を照射するように前記発光源の発光色を切替え、暖房運転と判断されると暖色系の発光色の光を照射するように前記発光源の発光色を切替える切替回路を含み、
前記冷色系の発光色と暖色系の発光色は異なり、車室内における空調効果は、前記温度センサにより入力された温度に対応して前記ダクトから前記レジスタの開口を通じて車室内へ発光色を切替えて照射し、それにより、空気および光の両方がレジスタの開口を通じて同じ方向に同時に流れ、光および空気が送風中のレジスタの開口を通じて同じ方向に同時に流れることにより相乗効果を上げ、
前記発光源は前記冷色系の発光色の発光ダイオードと前記暖色系の発光色の発光ダイオードとを含み、
前記温度センサは、前記冷色系の発光色の発光ダイオード及び暖色系の発光色の発光ダイオードを切替えるものであり、
前記温度センサは車室内に設置され、その検出温度と設定温度との比較結果によって冷房運転、暖房運転を判断するように構成される車両用照明装置。

(2)当審拒絶理由にて引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭54-146353号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に、次の記載がある。

オ.「本発明は主に自動車用空調装置の操作装置に連動して、風の方向、有無及びその温度を表示板に絵表示して操作者が一見して判断できる空調表示装置に係るものである。」(第1頁右下欄第2行?第5行)

カ.「ところで、温度検出回路65cはヒータ用温度検出センサ661とクーラ用温度検出センサ662とを有している。
そしてこのヒータ用温度検出センサ661は、エンジン冷却水中またはヒータコア4の表面に配設されており、一端をヒータスイッチ630に接続されるととに、他端をアースされていて、例えばエンジンの冷却水温が50℃以上のときにONとなるものである。」(第5頁右下欄第17行?第6頁左上欄第6行)

キ.「さらに、クーラ用温度検出センサ662は、エバポレータ7内の冷媒中またはエバポレータ7の表面に配設されており、一端をクーラスイッチ58に接続されるとともに、他端をアースされていて、例えば冷媒温度が10℃以下のときにONとなるもので」(第6頁右上欄第19行?左下欄第5行)

ク.「ヒータレバー52をOFFの位置からHOTへ向けて右方へ移動させると、ヒータスイッチ630がONし、さらにエンジンの冷却水の温度が50℃以上になるとヒータ用温度検出センサ661もONするため、・・・、第8ランプ648が点灯して赤い光をDEF表示618を通して表示板に送り、DEF表示618を赤く光らせる。
・・・
また、クーラスイッチ58をONにしたまま、ヒータレバー52をOFFの位置にすると、・・・、これにより第9ランプ649が点灯しつづけ青い光をDEF表示618を通して表示板に送り、DEF表示618を青く光らせる。」(第7頁右上欄第4行?左下欄第19行)

以上を総合すると、刊行物2には、次の技術手段(以下「刊行物2記載の技術手段」という。)が記載されているものと認められる。

自動車用空調装置の操作装置に連動して、風の方向、有無及びその温度を表示するため、
冷媒温度が10℃以下のときにONとなって青い光のランプを点灯させるクーラ用温度検出センサ662をエバポレータ7の表面に配設するとともに、
エンジンの冷却水温が50℃以上のときにONとなって赤い光のランプを点灯させるヒータ用温度検出センサ661をヒータコア4の表面に配設すること

4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「車室内の温度によって発光色が切替えられる光照射」は本願発明の「乗物の車内における温度変化に応答する可変色の光の出力」に相当し、以下同様に、「車両用照明装置」は「車内のための環境照明システム」に、「ダクト」は「プレナム」に、「空気を供給するための」は「空気を方向付けするための」に、「レジスタの開口」は「空気放出通風口」に、「温度センサ」は「温度を感知するための検知器」に、「付近に」は「近くに」に、「発光源」は「照明装置」に、「冷色系の発光色」は「第1の色」に、「暖色系の発光色」は「第2の色」に、「冷色系の発光色の発光ダイオード」は「第1の色に関連付けられる第1の光源」に、「暖色系の発光色の発光ダイオード」は「第2の色に関連付けられる第2の光源」に、各々相当する。

また、刊行物1記載の発明における「車室内において空気の温度を検出する温度センサ」と本願発明における「プレナムにおいて、空気の温度を感知するための検知器」は共に「空調装置の冷房運転、暖房運転を判断するために空気の温度を感知する検知器」といえ、以下同様に、「前記温度センサからの入力により、冷房運転と判断されると冷色系の発光色の光を照射するように前記発光源の発光色を切替え、暖房運転と判断されると暖色系の発光色の光を照射するように前記発光源の発光色を切替える切替回路」と「前記検知器に応答し、空気の温度が所定の値を下回ると第1の色の光を照射するよう前記照明装置を通電し、空気の温度が所定の値を上回ると第2の色の光を照射するよう前記照明装置を通電するための制御回路」は共に「前記検知器に応答し、冷房運転と判断されると第1の色の光を照射するよう前記照明装置を通電し、暖房運転と判断されると第2の色の光を照射するよう前記照明装置を通電するための制御回路」といえ、「車室内における空調効果は、前記温度センサにより入力された温度に対応して前記ダクトから前記レジスタの開口を通じて車室内へ発光色を切替えて照射し、それにより、空気および光の両方がレジスタの開口を通じて同じ方向に同時に流れ、光および空気が送風中のレジスタの開口を通じて同じ方向に同時に流れることにより相乗効果を上げ」と「車内における環境は、前記通風口へ運ばれる空気の感知された温度の変化に応答して、前記プレナムから前記通風口を通じて車内へ異なる色の光を照射することにより向上され、それにより、空気および光の両方が前記通風口を通じて同じ方向に同時に流れ、第1および第2の色は活性な通風口を通じてのみ照射され不活性な通風口は照射されず、車内における環境は、光および空気が活性な通風口を通じて同じ方向に同時に流れることによりさらに向上され」は共に「車内における環境は、空気の感知された温度の変化に応答して、前記プレナムから前記通風口を通じて車内へ異なる色の光を照射することにより向上され、それにより、空気および光の両方が前記通風口を通じて同じ方向に同時に流れ、第1および第2の色は活性な通風口を通じて照射され、車内における環境は、光および空気が活性な通風口を通じて同じ方向に同時に流れることによりさらに向上され」といえ、「前記温度センサは、前記冷色系の発光色の発光ダイオード及び暖色系の発光色の発光ダイオードを切替えるものであり」と「前記検知器は前記第1の光源に関連付けられる第1のセンサと、前記第2の光源に関連付けられる第2のセンサとを含み」は共に「前記検知器は、前記第1の光源、第2の光源に関連付けられ」といえ、「前記温度センサは車室内に設置され、その検出温度と設定温度との比較結果によって冷房運転、暖房運転を判断するように構成される」と「前記第1のセンサは、車内の空調システムにおける蒸発器の近くに設置され、空気の温度が所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され、前記第2のセンサは、車内の空調システムにおけるヒータコアの下流側に位置決めされ、空気の温度が所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成される」は共に「前記検知器は冷房運転、暖房運転を判断する入力を与えるように構成される」といえる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
乗物の車内における温度変化に応答する可変色の光の出力を有する、車内のための環境照明システムであって、
空気を導くためのプレナムと、
前記プレナムに作動的に接続され、前記プレナムから車内へと空気を方向付けするための空気放出通風口と、
空調装置の冷房運転、暖房運転を判断するために空気の温度を感知する検知器と、
前記プレナムの中において前記通風口の近くに配置され、前記通風口を介して車内へと光を照射するための照明装置と、
前記検知器に応答し、冷房運転と判断されると第1の色の光を照射するよう前記照明装置を通電し、暖房運転と判断されると第2の光を照射するよう前記照明装置を通電するための制御回路とを含み、
前記第1および第2の色は異なり、車内における環境は、空気の感知された温度の変化に応答して、前記プレナムから前記通風口を通じて車内へ異なる色の光を照射することにより向上され、それにより、空気および光の両方が前記通風口を通じて同じ方向に同時に流れ、第1および第2の色は活性な通風口を通じて照射され、車内における環境は、光および空気が活性な通風口を通じて同じ方向に同時に流れることによりさらに向上され、
前記照明装置は前記第1の色に関連付けられる第1の光源と、前記第2の色に関連付けられる第2の光源とを含み、
前記検知器は、前記第1の光源、第2の光源に関連付けられ、
前記検知器は冷房運転、暖房運転を判断する入力を与えるように構成される、環境照明システム。

(相違点1)
「空調装置の冷房運転、暖房運転を判断するために空気の温度を感知する検知器」が、本願発明においては「プレナムにおいて、空気の温度を感知する」ものであって、「検知器は前記第1の光源に関連付けられる第1のセンサと、前記第2の光源に関連付けられる第2のセンサとを含み」、「前記第1のセンサは、車内の空調システムにおける蒸発器の近くに設置され、空気の温度が所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され、前記第2のセンサは、車内の空調システムにおけるヒータコアの下流側に位置決めされ、空気の温度が所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成され」ているのに対し、刊行物1記載の発明においては「車室内において空気の温度を検出する温度センサ」であって、「前記温度センサは、前記冷色系の発光色の発光ダイオード及び暖色系の発光色の発光ダイオードを切替えるもの」であり、「温度センサは車室内に設置され、その検出温度と設定温度との比較結果によって冷房運転、暖房運転を判断するように構成され」ている点。

(相違点2)
本願発明は、第1および第2の色が「活性な通風口を通じてのみ照射され不活性な通風口は照射されず」と特定されているのに対し、刊行物1記載の発明は、第1および第2の色が「活性な通風口を通じてのみ照射され」ているのか否かが不明な点。

5.判断
そこで、上記各相違点につき検討する。

(相違点1について)
刊行物2記載の技術手段と本願発明を対比すると、刊行物2記載の技術手段における「10℃以下のときにONとなって」は本願発明の「所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され」に相当し、以下同様に、「青い光のランプを点灯させる」は「第1の光源に関連付けられる」に、「クーラ用温度検出センサ662」は「第1のセンサ」に、「エバポレータ7」は「蒸発器」に、「50℃以上のときにONとなって」は「所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成され」に、「赤い光のランプを点灯させる」は「第2の光源に関連付けられる」に、「ヒータ用温度検出センサ661」は「第2のセンサ」に、各々相当する。

よって、刊行物2記載の技術手段は、次のように言い換えることができる。

自動車用空調装置の操作装置に連動して、風の方向、有無及びその温度を表示するため、
冷媒温度が所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され第1の光源に関連付けられる第1のセンサを蒸発器の表面に配設するとともに、
エンジンの冷却水温が所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成され第2の光源に関連付けられる第2のセンサをヒータコアの表面に配設すること

したがって、刊行物1記載の発明における「車室内において空気の温度を検出する温度センサ」に代えて、「温度が所定の値を下回るよう下降するときを判定するように構成され第1の光源に関連付けられる第1のセンサを蒸発器の表面に配設するとともに、温度が所定の値を上回るよう上昇するときを感知するように構成され第2の光源に関連付けられる第2のセンサをヒータコアの表面に配設すること」は、刊行物2記載の技術手段に倣って、当業者が容易になし得た事項である。

また、この際、第1のセンサ、第2のセンサの設置位置を、「蒸発器の表面」、「ヒータコアの表面 」ではなく、ほぼ同等の温度検知が期待できる「蒸発器の近く」、「ヒータコアの下流側に位置決め」とすることは、当業者が、適宜選択しうる設計的事項である。

(相違点2について)
ヒータの使用やクーラの使用を判別し表示する自動車用表示装置において、不活性状態の通風口(レジスタ)対応部表示部に発光表示を行わないことは、例えば刊行物2(第1?4表記載のモードに応じた点灯状態参照)、当審拒絶理由にて引用された実願昭59-153961号(実開昭61-68912号)のマイクロフィルム(第3図における「DEFスイッチ」、「FACEスイッチ」、「FOOTスイッチ」がOFFの場合の、「カラー表示」のスキップ参照)記載のように、本願優先日前周知の技術事項である。

よって、刊行物1記載の発明において、第1および第2の色を「活性な通風口を通じてのみ照射され不活性な通風口は照射されない」ものとすることは、当業者が、上記周知の技術事項に倣って容易になし得た事項である。

また、本願発明により得られる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び上記周知の技術事項から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

6.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-28 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-20 
出願番号 特願2008-529155(P2008-529155)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣山崎 勝司  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 平上 悦司
前田 仁
発明の名称 温度に応答する可変色出力を有する環境照明システム  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  

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