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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1284524 |
審判番号 | 不服2012-19670 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-05 |
確定日 | 2014-02-05 |
事件の表示 | 特願2010- 53007「有機発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日出願公開、特開2010-225587〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年3月10日(パリ条約による優先権主張2009年3月19日、韓国)の出願であって、平成24年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成25年2月27日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年5月29日に回答書が提出された。 第2 本願発明の特許性 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年10月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数の副画素を含む画素を備えた有機発光表示装置において、 前記複数の副画素は、 第1アノード電極と第1有機発光層を含む第1副画素と、 第2アノード電極と第2有機発光層を含む第2副画素と、 第3アノード電極と第3有機発光層を含む第3副画素と、を含み、 前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極が下記条件を満たし、 【数1】 W1+W2<2W3<2/3P (ここで、W1、W2、W3は各々前記第1副画素、前記第2副画素、及び前記第3副画素が互いに隣接する方向に沿って測定された前記第1アノード電極の幅、前記第2アノード電極の幅、及び前記第3アノード電極の幅を示し、Pは前記画素の幅を示す。) 前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極の上部に位置する画素定義膜をさらに含み、前記画素定義膜が前記第1アノード電極の上部に位置する第1開口部、前記第2アノード電極の上部に位置する第2開口部、及び前記第3アノード電極の上部に位置する第3開口部を形成し、 前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、前記第3アノード電極、及び前記画素定義膜が下記条件を満たし、 【数2】 w1+w2+12μm<W1+W2 (ここで、w1とw2は各々前記第1副画素、前記第2副画素、及び前記第3副画素が互いに隣接する方向に沿って測定された前記第1開口部の幅と前記第2開口部の幅を示す。) 前記第3アノード電極は前記第1アノード電極よりも大きい幅を有し、 前記第1アノード電極は前記第2アノード電極よりも大きい幅を有し、 前記第3開口部は前記第1開口部よりも大きい幅を有し、 前記第1開口部は前記第2開口部よりも大きい幅を有し、 前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記第3開口部各々が前記第1アノード電極、 前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極各々より小さい幅を有し、前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極の中、前記画素定義膜と重なる部位が一定の幅を有することを特徴とする有機発光表示装置。」 2.引用刊行物及び該刊行物に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-290441号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0019】 【課題を解決するための手段】本発明のカラー表示装置は、表示画素に自発光素子を備えたカラー表示装置において、各色の表示画素のうちいずれかの色の表示画素の発光面積が他の色の表示画素の発光面積と異なっているものである。」 (2)「【0022】また、上述のカラー表示装置は、発光効率が高い自発光素子の発光面積を、該発光効率が高い自発光素子よりも低い発光効率の自発光素子の発光面積よりも小さくしたカラー表示装置である。 【0023】更に、上述のカラー表示装置は、最も発光効率が高い自発光素子の発光面積を、他の発光効率の自発光素子の発光面積よりも小さくしたカラー表示装置である。」 (3)「【0034】図1に示すように、各色の表示画素は基板上にマトリックス状に配列されており、それらの各表示画素の発光面積1R、1G、1Bはそれぞれ異なっている。具体的には図1の場合には、緑色の発光領域1Gの発光面積を最も小さくして設けられている。他の色の発光領域1R,1Bは緑の発光領域1Gよりも広い面積に形成されている。即ち、同図の場合には、緑色の発光領域1Gの発光面積を最も小さく形成し、次に赤色の発光領域1Rの発光面積を大きくし、青色の発光領域1Bの発光面積を最も大きくした場合を示している。 【0035】なお、赤色の発光領域1Rと、緑色の発光領域1Gと、青色の発光領域1Bとの発光面積の大きさの順番は、それらの発光材料の発光効率に依存する。従って、発光面積の大きさの順は上述のG<R<Bに限ることなく、使用する発光材料の発光効率によって決定する。」 (4)「【0046】次に、各表示画素における発光面積をR,G,Bで適切な異なった大きさにするための表示画素の形成方法について説明する。 【0047】その方法としては、(i)有機EL素子の陽極161の面積をR,G,Bで変える、(ii)陽極161の面積は同一として、陽極形成後、発光素子の層形成前に形成される平坦化絶縁膜167により陽極161の端部を覆うことで、陽極と発光素子層との接触面積をR,G,Bで変えるという方法がある。」 (5)「【0050】以下に、図3(a)を参照して、(i)の方法について具体的に説明する。 【0051】第2TFT40を形成し、このTFT40を覆うように層間絶縁膜15,TFT40のドレイン43dと接続された駆動電源線53、基板全面を覆う平坦化絶縁膜17を形成し、この平坦化絶縁膜17と層間絶縁膜15を貫通するようにTFT40のソース43s対応領域にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール及び平坦化絶縁膜17の全面を覆うように透明電極(陽極)材料であるITOをスパッタ法によって形成するまでの工程は、上述の図8(b)の構成と共通する。 【0052】ITOを形成した後、次にレジストを塗布し、図4に示すマスク200Aを用いて、露光、現像工程を施すことにより、マスク200Aの開口部201R,201G,201Bに対応した位置にのみレジストパターンが残り、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いてITOを所定エッチャントにてエッチングして除去する。これにより、マスク200Aの開口部201R,201G,201Bに対応した大きさ及び位置にITOパターンが形成され、その結果、陽極161は、R,G,B毎に異なる大きさとなる。 【0053】有機EL素子の陽極161を各表示画素領域に形成した後、R,G,B毎に異なる上述の有機化合物材料を用いてR,G,B用の発光素子層165をそれぞれ形成する。なお、有機EL素子において、発光素子層に用いられる材料は比較的高抵抗であり、発光領域は発光素子層のうち陽極と陰極との層間に挟まれた領域に限られる。 【0054】従って、発光素子層は陽極形成領域と同一でも、また陽極形成領域より大きくても良いが、発光素子層上に形成される陰極と、陽極とが、陽極端部において短絡することを防止するため、本実施の形態においては、図3(a)に示すように、発光素子層はR、G、Bとも陽極を覆うようにこの陽極面積より大きく設定している。もちろん、陽極と陰極との間で短絡が起こらないように他の処置を施せば、必ずしも発光素子層165を陽極より大きくする必要はない。他の処置とは、例えば後述する図3(b)のように平坦化絶縁膜167を形成すること等である。」 (6)「【0062】次に、陽極の面積は同じで陽極と発光層との間に形成した平坦化絶縁膜で陽極と発光層との接触面積を異ならせる方法(上述の(ii))について説明する。 【0063】図3(b)に示すように、陽極161上に設ける発光素子層165の陽極161の段差による断線することを防止するためには、陽極161の周縁部を平坦化絶縁膜167で覆うことが好適である。このような構成の有機EL素子の場合、実質的に発光する領域、即ち発光面積は発光素子層165が陽極161と接触している面積であり、この平坦化絶縁膜167によって覆われた陽極161の周縁部は実質的に発光しない領域となる。 【0064】従って、平坦化絶縁膜167で覆う陽極161の周縁部の面積のみ各色で異ならせることにより、各色の表示画素の発光面積を異ならせることができる。 【0065】このように各色の表示画素の発光面積を異ならせることによっても、EL素子の長寿命化が図れる。」 (7)「【0084】なお、本発明において、表示画素の発光面積とは、表示画素の発光素子が実際に発光する領域の面積である。 【0085】即ち、図3(b)に示すように、陽極の厚みによる段差に起因して発光層が段切れを起こして陰極と短絡してしまうことを防止するために設けた平坦化絶縁膜が、陽極の周辺部を覆っている場合には、陽極と発光素子層とが直接接することにより実質的に発光する領域の面積をいう。」 (8)「【図1】 」 (9)「【図3】 」 これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「有機EL素子の陽極(161)を各表示画素領域に形成した後、R,G,B毎に異なる有機化合物材料を用いてR,G,B用の発光素子層(165)をそれぞれ形成し、各色の表示画素が基板上にマトリックス状に配列されたカラー表示装置において、 陽極の面積を各色毎に変えることにより、発光効率の最も高い色の発光領域の発光面積を最も小さく形成し、次に発光効率の高い色の発光領域の発光面積を大きくし、発光効率の最も低い色の発光領域の発光面積を最も大きくし、 陽極と陰極との間で短絡が起こらないように陽極の周縁部を平坦化絶縁膜(167)で覆うことよって、発光素子層が陽極と接触している面積が発光面積となり、この平坦化絶縁膜によって覆われた陽極の周縁部は実質的に発光しない領域となる、 カラー表示装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「各色の表示画素」、「陽極」、「有機化合物材料を用いた発光素子層」及び「カラー表示装置」は、本願発明の「複数の副画素」、「アノード電極」、「有機発光層」及び「有機発光表示装置」にそれぞれ相当する。 以下同様に、「発光効率の最も高い色の陽極と発光素子層からなる表示素子」は「第2アノード電極と第2有機発光層を含む第2副画素」に、 「次に発光効率の高い色の陽極と発光素子層からなる表示素子」は「第1アノード電極と第1有機発光層を含む第1副画素」に、 「発光効率の最も低い色の陽極と発光素子層からなる表示素子」は「第3アノード電極と第3有機発光層を含む第3副画素」にそれぞれ相当する。 (2)引用文献1の図1を参酌すれば、陽極の面積が大きくなるにしたがって、互いに隣接する方向に沿った各陽極の幅が大きくなっていることがわかる。 すなわち、引用発明において「発光効率の最も高い色の陽極の幅」(本願発明の「W2」に相当)<「次に発光効率の高い色の陽極の幅」(本願発明の「W1]に相当)<「発光効率の最も低い色の陽極の幅」(本願発明の「W3]に相当)となっている。 このことから引用発明は、本願発明の【数1】の左辺の不等式を満たすことがわかる。 (3)引用発明の「平坦化絶縁膜」は本願発明の「画素定義膜」に相当し、引用発明では「平坦化絶縁膜によって覆われた陽極の周縁部は実質的に発光しない領域」であるから、同「発光素子層が陽極と接触している発光面積」の部分は、本願発明の「開口部」に相当する。 (4)以上のことから、引用発明が本願発明の「第3アノード電極は前記第1アノード電極よりも大きい幅を有し、第1アノード電極は前記第2アノード電極よりも大きい幅を有し、第3開口部は前記第1開口部よりも大きい幅を有し、第1開口部は前記第2開口部よりも大きい幅を有し、第1開口部、第2開口部、及び第3開口部各々が第1アノード電極、第2アノード電極、及び第3アノード電極各々より小さい幅を有」する構成に相当する構成を有することは明らかである。 そうすると、両者は、 「複数の副画素を含む画素を備えた有機発光表示装置において、 前記複数の副画素は、 第1アノード電極と第1有機発光層を含む第1副画素と、 第2アノード電極と第2有機発光層を含む第2副画素と、 第3アノード電極と第3有機発光層を含む第3副画素と、を含み、 前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極が下記条件を満たし、 W1+W2<2W3 (ここで、W1、W2、W3は各々前記第1副画素、前記第2副画素、及び前記第3副画素が互いに隣接する方向に沿って測定された前記第1アノード電極の幅、前記第2アノード電極の幅、及び前記第3アノード電極の幅を示し、Pは前記画素の幅を示す。) 前記第1アノード電極、前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極の上部に位置する画素定義膜をさらに含み、前記画素定義膜が前記第1アノード電極の上部に位置する第1開口部、前記第2アノード電極の上部に位置する第2開口部、及び前記第3アノード電極の上部に位置する第3開口部を形成し、 前記第3アノード電極は前記第1アノード電極よりも大きい幅を有し、 前記第1アノード電極は前記第2アノード電極よりも大きい幅を有し、 前記第3開口部は前記第1開口部よりも大きい幅を有し、 前記第1開口部は前記第2開口部よりも大きい幅を有し、 前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記第3開口部各々が前記第1アノード電極、 前記第2アノード電極、及び前記第3アノード電極各々より小さい幅を有する有機発光表示装置。」 の点で一致し、次の各点で相違している。 (相違点1) 本願発明が「2W3<2/3P」すなわち「W3<1/3P」を満たすのに対して、引用発明がそのような構成を有しているかどうか不明な点。 (相違点2) 本願発明が「w1+w2+12μm<W1+W2(ここで、w1とw2は各々第1副画素、第2副画素、及び第3副画素が互いに隣接する方向に沿って測定された第1開口部の幅と第2開口部の幅を示す。)」を満たし、「第1アノード電極、第2アノード電極、及び第3アノード電極の中、画素定義膜と重なる部位が一定の幅を有する」のに対して、引用発明がそのような構成を有しているかどうか不明な点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1について) 複数の副画素を含む画素を備えた有機発光表示装置において、画素に含まれる各副画素の大きさを同一のものとすることは、設計や製造の容易さ等の種々の要因を考慮してごく普通に行われている周知技術である。(引用文献1の図1もそれを示唆している。) 引用発明に当該周知技術を適用することに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。 そして、その場合に、最も幅の広い「発光効率の最も低い色の陽極」の幅(=W3)でさえ、画素の幅Pの1/3を超えないことは、当業者の技術常識に照らして自明である。 このことは、上記相違点1に係る不等式を満たすことを意味する。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用することにより、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 (相違点2について) 本願明細書の段落【0048】の記載を参酌すれば、上記相違点2に係る事項は、引用発明の「平坦化絶縁膜によって覆われた陽極の周縁部」の幅が3μmより大きい一定の幅のものとすることに相当する。 平坦化絶縁膜によって覆われた陽極の周縁部を有する画素を備えた有機発光表示装置において、該周縁部を幅が3μmより大きい一定の幅のものとすることは、ごく普通に行われている周知技術であり、平坦化絶縁膜の材質や陰極と陽極間の絶縁性等を考慮して当業者が適宜決定しうる事項である。 そして、引用発明に当該周知技術を用いることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。 してみると、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 また、請求人が上記回答書(「第1 手続の経緯」参照)で主張する、発光効率を最適化する及び装置の信頼性を向上させるという本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 なお、請求人が審判請求書等で主張する「アノード電極による外光反射を最小化して野外視認性を高めることができる」という効果は、本願発明に基づかない主張である。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人が上記回答書に添付した補正案を参酌しても、上記判断に変わりはない。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-28 |
結審通知日 | 2013-09-03 |
審決日 | 2013-09-24 |
出願番号 | 特願2010-53007(P2010-53007) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 佳美 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 有機発光表示装置 |
代理人 | 佐伯 義文 |
代理人 | 渡邊 隆 |