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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1284528
審判番号 不服2012-22108  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-07 
確定日 2014-02-05 
事件の表示 特願2007- 92658「書き換え可能光学アドレス型光配向液晶表示装置の光学駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日出願公開,特開2008-250073〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年3月30日の出願であって,原審において平成24年6月25日付けで手続補正がなされ,同年7月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月7日に拒絶査定不服審判がされると同時に手続補正がなされ,平成25年4月16日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるために審尋を行ったところ,同年7月17日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成24年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年11月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成24年11月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前(平成24年6月25日付け手続補正後のもの)の請求項1として,

「一方の基板上に光配向層を有し,他方の基板上に固定配向層を有する光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置の光学駆動装置であって,
偏光又は非偏光の直接光を照射することによって,光配向層の配向を書き換え,すなわち,LCアラインメント方向を,安定なLC配向基板に対して所定の視覚的に明瞭なねじれ角度へ変化させ,これによって2つのポラライザー間のLCセルの反射率を変化させ,照射エネルギー量が感光性アラインメント層の配向角の変化を決定し,
さらに,リフレクターを有する装置。」

とあったものを,以下のように補正して新たな請求項1とすることを含むものである。

「一方の基板上に光配向層を有し,他方の基板上に固定配向層を有し,前記2つの基板は前記光配向層と前記固定配向層が対向するように配置され,前記光配向層と前記固定配向層の間に光配向液晶(LC)が設けられ,前記2つの基板における,互いに対向する面とは反対側の面のそれぞれにポラライザーが設けられ,光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置の光学駆動装置であって,
偏光又は非偏光の直接光を照射することによって,光配向層の配向を書き換え,すなわち,LCアラインメント方向を,安定なLC配向基板に対して所定の視覚的に明瞭なねじれ角度へ変化させ,これによって2つのポラライザー間のLCセルの反射率を変化させ,照射エネルギー量が感光性アラインメント層の配向角の変化を決定し,
さらに,リフレクターを有する装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。)


2 補正の目的
本件補正は,「光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置」につき,「前記2つの基板は前記光配向層と前記固定配向層が対向するように配置され,前記光配向層と前記固定配向層の間に光配向液晶(LC)が設けられ,前記2つの基板における,互いに対向する面とは反対側の面のそれぞれにポラライザーが設けられ」との限定を行うものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。


3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された特開2005-284175号公報(以下「刊行物」という。)には,図とともに以下の事項が記載されている。
ア 「本発明は,液晶表示素子およびその使用方法に関し,更に詳しくは,偏光照射を利用して,表示情報の書き込みおよび書き換えを行うことのできる新規な液晶表示素子,並びにその使用方法(表示情報の書き込みおよび書き換え方法)に関する。」(【0001】)
イ 「<液晶表示素子>
以下,本発明について詳細に説明する。
図1は,本発明の液晶表示素子における層構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示す液晶表示素子は,液晶層Lを介して対向配置された透明基板1および透明基板2を備えてなる。
透明基板1の一面(液晶との接触面)には,第1の配向膜1Aが形成されており,透明基板2の一面(液晶との接触面)には,第2の配向膜2Aが形成されている。
第1の配向膜1Aおよび第2の配向膜2Aは,それぞれ,(通常の液晶表示素子のように透明電極を介挿することなく)透明基板1の一面および透明基板2の一面に直接形成されている。」(【0011】)
ウ 「透明基板1に形成された第1の配向膜1Aは,その配向方向が固定化されている配向膜である。第1の配向膜1Aの構成材料としては特に制限がなく,液晶表示素子用の配向膜として従来公知のものを使用することができる。第1の配向膜1Aは,透明基板1の一面に形成されたポリイミド等の高分子の膜を一方向に布等で摩擦する,いわゆるラビング法により形成することができる。第1の配向膜に接する液晶分子は,その長軸(ダイレクタ)がラビングの方向に平行になるように配列する。」(【0013】)
エ 「透明基板2に形成された第2の配向膜2Aは,その配向方向が偏光照射により可逆的に変化する配向膜である。
第2の配向膜2Aの構成材料としては,書き込み用の偏光(例えば紫外線)で配向方向を容易に変更することができるとともに,情報表示用の光(例えば可視光)に対しては比較的安定なものが好ましい。
具体的には,二色性色素による塗膜からなるものが挙げられる。ここに,二色性染料とは,発色団における光の吸収能が偏光の電気ベクトルの方向によって異なる色素をいう。」(【0014】)
オ 「図2および図3は,それぞれ,本発明の液晶表示素子における層構成の他の例を示す概略断面図である。
図2に示す液晶表示素子は,透明基板1の他面に偏光フィルター1Fが設けられていること以外は,図1に示したものと同一の構造である。
図3に示す液晶表示素子は,透明基板1の他面に偏光フィルター1Fが設けられているとともに,透明基板2の他面に偏光フィルター2Fが設けられていること以外は,図1に示したものと同一の構造である。
偏光フィルター1Fおよび偏光フィルター2Fは,偏光の方向が一致するパラレルニコルに配置してもよく,偏光の方向が90°ずれるクロスニコルに配置してもよい。」(【0030】)
カ 「<液晶表示素子の使用方法>
(1)表示情報の書き込み:
本発明の液晶表示素子を構成する第2の配向膜に,選択的に偏光(例えば紫外線)を照射することにより表示情報の書き込みを行うことができる。」(【0031】)
キ 「液晶に照射する偏光には,レーザ光のほか,蛍光灯,太陽光などの無偏光の光を偏光フィルター(液晶表示装置を構成し,または構成しない偏光フィルター)を通して得られるものも使用することができる。」(【0044】)
ク 図3から,液晶表示素子は,偏光フィルター1F,透明基板1,第1の配向膜1A,液晶層L,第2の配向膜2A,透明基板2,偏光フィルター2Fの順で積層されたものであることが看取できる。

(2)引用発明
したがって,上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から,刊行物には,以下の発明が記載されていると認められる。
「液晶層Lを介して対向配置された透明基板1および透明基板2を備え,
透明基板1の一面(液晶との接触面)には,第1の配向膜1Aが形成されており,透明基板2の一面(液晶との接触面)には,第2の配向膜2Aが形成され,
第1の配向膜1Aおよび第2の配向膜2Aは,それぞれ,(通常の液晶表示素子のように透明電極を介挿することなく)透明基板1の一面および透明基板2の一面に直接形成され,
透明基板1に形成された第1の配向膜1Aは,その配向方向が固定化されている配向膜であり,
透明基板2に形成された第2の配向膜2Aは,その配向方向が偏光照射により可逆的に変化する配向膜であり,
液晶表示素子は,透明基板1の他面に偏光フィルター1Fが設けられているとともに,透明基板2の他面に偏光フィルター2Fが設けられ,
液晶表示素子を構成する第2の配向膜に,選択的に偏光(例えば紫外線)を照射することにより表示情報の書き込みを行うことができ,
液晶に照射する偏光には,レーザ光のほか,蛍光灯,太陽光などの無偏光の光を偏光フィルター(液晶表示装置を構成し,または構成しない偏光フィルター)を通して得られるものも使用することができ,
偏光フィルター1F,透明基板1,第1の配向膜1A,液晶層L,第2の配向膜2A,透明基板2,偏光フィルター2Fの順で積層されたものである,
液晶表示素子。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の液晶表示素子は,液晶表示素子を構成する第2の配向膜に,選択的に偏光(例えば紫外線)を照射することにより表示情報の書き込みを行うことができものであるから,引用発明の液晶表示素子を構成する「液晶層L」は,本願補正発明の「光配向液晶(LC)」に相当すると共に,引用発明の「液晶表示素子」は,本願補正発明の「光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置」に相当する。
イ (ア)本願補正発明の光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置の「光学駆動装置」は,本願明細書の記載「【図6】TNLC装置を用いた光学的駆動装置である。」(【0021】)に照らせば,光源と光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置からなるものと解することができる。
(イ)他方,引用発明の「液晶表示素子」は,偏光及び無偏光の光が照射されるものであることから,引用発明の「液晶表示素子」に光源が付設されていることは自明の事項である。
(ウ)したがって,引用発明の「液晶表示素子」は,本願補正発明の「光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置の光学駆動装置」に相当する。
ウ 引用発明の「第1の配向膜1A」は,その配向方向が固定化されている配向膜であること,引用発明の「第2の配向膜2A」は,その配向方向が偏光照射により可逆的に変化する配向膜であること,及び,前記摘記事項(1)クの各層の配置に照らせば,引用発明の「透明基板1」,「第1の配向膜1A」,「第2の配向膜2A」,「透明基板2」はそれぞれ,本願補正発明の「他方の基板」,「固定配向層」,「光配向層」,「一方の基板」に相当する。
エ 引用発明の「偏光フィルター1F」及び「偏光フィルター2F」は,偏光(ポラライズ)機能を有するものであり,また,前記摘記事項(1)クの配置に照らせば,本願補正発明の「ポラライザー」に相当する。
オ (ア)引用発明の「第2の配向膜2A」は,「透明基板2に形成され」,「その配向方向が偏光照射により可逆的に変化する配向膜」であって,引用発明は,「液晶表示素子を構成する第2の配向膜に,選択的に偏光(例えば紫外線)を照射することにより表示情報の書き込みを行うことができ」るものである。
(イ)「『配向膜』の『配向方向が偏光照射により可逆的に変化する』」ことが,「光配向層の配向を書き換え」といえることは明らかである。
(ウ)本願補正発明の「偏光又は非偏光の直接光を照射することによって,光配向層の配向を書き換え」は,「すなわち」という接続詞に続いて,「LCアラインメント方向を,安定なLC配向基板に対して所定の視覚的に明瞭なねじれ角度へ変化させ,これによって2つのポラライザー間のLCセルの反射率を変化させ,照射エネルギー量が感光性アラインメント層の配向角の変化を決定し」と言い換えるよう特定されている。
(エ)したがって,引用発明は,本願補正発明の「偏光又は非偏光の直接光を照射することによって,光配向層の配向を書き換え,すなわち,LCアラインメント方向を,安定なLC配向基板に対して所定の視覚的に明瞭なねじれ角度へ変化させ,これによって2つのポラライザー間のLCセルの反射率を変化させ,照射エネルギー量が感光性アラインメント層の配向角の変化を決定し」との事項を備える。

したがって,両者は,
「一方の基板上に光配向層を有し,他方の基板上に固定配向層を有し,前記2つの基板は前記光配向層と前記固定配向層が対向するように配置され,前記光配向層と前記固定配向層の間に光配向液晶(LC)が設けられ,前記2つの基板における,互いに対向する面とは反対側の面のそれぞれにポラライザーが設けられ,光学的書き換え可能アドレス型(ORW)光配向液晶(LC)装置であって,
偏光又は非偏光の直接光を照射することによって,光配向層の配向を書き換え,すなわち,LCアラインメント方向を,安定なLC配向基板に対して所定の視覚的に明瞭なねじれ角度へ変化させ,これによって2つのポラライザー間のLCセルの反射率を変化させ,照射エネルギー量が感光性アラインメント層の配向角の変化を決定する装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は,リフレクターを有するのに対し,引用発明は,リフレクターを有していない点。

(4)相違点についての判断
リフレクターを設けた液晶表示装置は,原査定の拒絶査定において例示し,本願出願前に頒布された刊行物である特表2005-526296号公報(特に段落【0018】参照。)のみならず,本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-352492号公報(特に段落【0086】?【0088】参照。),同じく,国際公開2006/132384号公報(特に第33頁第11?17行参照。)に記載されているとおり,本願の出願時点で周知の技術(以下「周知技術」という。)である。しかも,前記特開平11-352492号公報及び前記国際公開2006/132384号公報には,透過型液晶装置を反射型液晶装置にするためにリフレクタを用いることも記載されている。
してみると,反射型液晶装置にするために,本願の出願時点で周知の技術であるリフレクタを採用し,相違点に係る構成を得ることは,引用発明に周知技術を適用することにより,当業者が容易になし得ることができたものと認める。

以上のように,引用発明に周知技術を適用して,本願補正発明の上記相違点に係る構成を備えることは,当業者が容易に想到できたことであり,かかる発明特定事項を採用することによる本願補正発明の効果も当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年6月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記第2の1において本件補正前のものとして記載したとおりのものである。
2 判断
本願発明は,上記第2の3(4)で検討した本願補正発明において,
「前記2つの基板は前記光配向層と前記固定配向層が対向するように配置され,前記光配向層と前記固定配向層の間に光配向液晶(LC)が設けられ,前記2つの基板における,互いに対向する面とは反対側の面のそれぞれにポラライザーが設けられ」との限定を除いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明とは,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は,リフレクターを有するのに対し,引用発明は,リフレクターを有していない点。

上記第2の3(4)での検討に照らして,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-11 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-25 
出願番号 特願2007-92658(P2007-92658)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 昌士  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 藤本 義仁
鈴木 秀幹
発明の名称 書き換え可能光学アドレス型光配向液晶表示装置の光学駆動装置  
代理人 高橋 詔男  
代理人 渡邊 隆  
代理人 鈴木 三義  
代理人 鈴木 三義  
代理人 村山 靖彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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