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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1284543
審判番号 不服2012-8468  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-10 
確定日 2014-02-04 
事件の表示 特願2008-502957「高品質外面を有する等方性熱硬化接着材料を使用して集積電子機器を備えた最新スマートカードを製造する方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日国際公開、WO2006/101493、平成20年 9月11日国内公表、特表2008-537215〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年3月23日を国際出願日とする特許出願であって、平成19年11月15日に翻訳文が提出され、平成23年3月3日付けで拒絶理由が起案され(発送日は同年3月7日)、同年9月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月27日付けで拒絶査定が起案され(発送日は平成24年1月10日)、これに対し、平成24年5月10日に拒絶査定不服審判が請求され、同年8月24日に審判請求書の請求の理由についての手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年9月7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「最上層と、熱硬化性ポリマー材料コア層と、基板上に取り付けられた集積電子機器アセンブリを含む最下層とを含むスマートカードを製造する方法であって、
(1)基板上に取り付けられた集積電子機器アセンブリを有する最下層を、下部金型内に位置決めする段階と、
(2)合成紙又は他のプラスチック材料からなる最上層を上部金型内に位置決めする段階と、
(3)前記最上層と前記集積電子機器アセンブリを有する最下層との間に空隙を作成する方法で前記下部金型に対して前記上部金型を閉じる段階と、
(4)ポリマー材料のコア層を形成するために熱硬化性ポリマー材料を前記空隙内に注入する段階であって、その注入を、
(a)前記最上層が、前記上部金型の空洞に少なくとも部分的に冷間低圧成形され、
(b)ガス及び余分なポリマー材料が、前記空隙から追い出され、
(c)前記最下層の下部表面には注入されたポリマー材料が存在しないようにかつ、注入されたポリマー材料が最下層の上部表面に配置された前記集積電子機器アセンブリの電子部品のすべての露出した部分の上及び周囲に流れ、
(d)前記熱硬化性ポリマー材料が、前記最上層及び前記最下層の両方と結合して、統合前駆物質スマートカード本体を生成する、
温度及び圧力で前記空隙内に注入する段階と、
(5)前記統合前駆物質スマートカード本体を前記上部金型及び前記下部金型から取り外す段階と、
(6)前記前駆物質スマートカードを望ましい寸法に整えて、完成スマートカードを生成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。」

第3 引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特表2001-525968号公報(以下、「引用文献1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「1.上部層と、電子構成要素を埋設するコア層と、下部層とから成るスマートカードの製造方法であって、
(1)低収縮度接着剤の少なくとも1つのマウンドを使用して電子構成要素をスマートカードの下部層の内面に結合することにより下部層/低収縮度接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成すること、
(2)低収縮度接着剤のマウンドを部分的に硬化させて下部層/部分硬化接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成すること、
(3)下部層/部分硬化接着剤/電子構成要素のアセンブリを下型内に配置すること、
(4)上部層を上型内に配置すること、
(5)上部層及び下部層の間に空所を作るように上型を下型に対して閉じること、
(6)(a)電子構成要素と部分硬化接着剤のマウンドとを熱硬化性材料内に浸漬している間に、電子構成要素を部分硬化接着剤のマウンドによって所定位置に保持し、(b)スマートカードの少なくとも1つの層を上型内のキャビティに少なくとも部分的に低温低圧成形し、(c)気体と余分の高分子材料を空所から除去し、(d)部分硬化接着剤が完全に硬化する前に電子構成要素を熱硬化性高分子材料内に包み、そして(e)熱硬化性高分子材料が上部層及び下部層の双方と接合して一体の前駆体スマートカード本体を形成する、そのような温度と圧力の条件で熱硬化性高分子材料を空所に射出すること、
(7)一体の前駆体スマートカード本体を成形装置から取り外すこと、そして、
(8)前駆体スマートカードを所望の寸法に整えてスマートカードを形成すること、
とを包含する前記方法。
2.電子構成要素は下部層と物理的接触しない請求項1の方法。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「 発明の背景
スマートカードはバンクカード、身分証明書、テレフォンカード等に使用されている。スマートカードは、スマートカードの電子部品とカードリーダ又は他の受信装置の間の(物理的直接接触又は電磁波の何れかによる)電磁結合を利用することを基礎としている。このような結合は、読取モードのみ又は読取/書込モードを実行するために利用可能とされている。通常、この種のカードは数層のプラスチックシートをサンドイッチ配列することにより製造されている。所謂「非接触」スマートカード(即ち、電子部品が物理的接触ではなく寧ろ電磁波により接触するようなスマートカード)の場合には、重合可能な樹脂から成る中心層が電子モジュールを全体的に包んでいる。電子モジュールは例えば集積回路チップから成り、この集積回路チップは誘導コイル型のアンテナに接続しており、このアンテナはカード本体を通して電磁波を受信し得るようになっている。
スマートカードの製造方法は著しく変化してきている。例えば、欧州特許0350179は、カードの2つの表面層の間に導入したプラスチック材料層内に電子回路要素を包んだスマートカードを開示している。更に、この方法は高張力保持部材を金型の一面に当接させることから成り、この際にスマートカードの電子部品を金型の一面に関して位置付け、その後に電子部品を包むように反応成形性高分子材料を金型内に射出している。」(第7頁第3?20行)
(ウ)「 一般に、新しく施した接着剤の本体上に配置した電子部品が、接着剤本体内に或る程度沈降するということにも注意すべきである。むしろ、幾つかの例では接着剤本体が「部分硬化する」前に電子部品を接着剤本体内に機械的にわざと押し入れてもいる。何れの場合にも、出願人はスマートカードの電子部品が接着剤を施したシート材料層と接触しないようにする方が好ましいと思っている。このことから、接着剤は電子部品が底部層と直接接触するように「沈降」しない範囲で部分的に硬化すべきである。この選択は、出願人のカードのコア層を形成する熱硬化性材料に電子部品を実際に完全に浸漬する場合に、電子部品を捩り力及び/又は衝撃からより良好に保護するということを出願人が見い出しているということから当然の結果として生じている。言い換えれば、出願人はむしろ熱硬化性材料が電子部品の下と接着剤配置材料層の上の間の空間に浸入し得るように電子部品を接着剤「台座」の配列の上に設定することを選んでいる。例として出願人の接着方法を利用すれば、アンテナの一部が接着剤の2つのマウンドの間に「跨がる」又は架かることによって、流入する熱硬化性材料がアンテナの上及び周りに加えてアンテナの下にも容易に浸入できると考えられる。出願人の電子部品が新たに施した接着剤のマウント内に重力の影響に基づいて或る程度「沈降する」ことを考慮すれば、(本特許開示では「部分硬化」という言葉を使用しているので)、電子部品は「部分硬化」接着剤内で、接着剤が接着する層材料のシートの内面から(例えば「上に」)約0.01mmから約20mmまでの距離を離れたところに配置して終わることが好ましい。その上に、本発明のなお一層好ましい幾つかの実施例では、電子部品をスマートカードの接着剤含有層の上で約0.075mmから約0.13mmまでの範囲の高さに最終的に配置し、空所の中央領域近傍、従って出願人の完成スマートカードの上部層及び下部層の間に存在する硬化した熱硬化性材料の中央領域近傍に配置するであろう。」(第21頁第5?末行)
(エ)「スマートカードの厚さ39は、本特許開示の低温低圧成形方法の一部として熱硬化性材料を空所36に射出する際に金型面(図2には図示せず)の配置によって形成する。実際には、上部層及び下部層の間の空所36に射出した熱硬化性材料は、電子部品、又は電子部品を載せる低収縮度接着剤のマウンドが占有していない空所36の全部分を充填する。」(第29頁第16?21行)
(オ)「双方の図3(A)、図3(B)において、スマートカードの電子部品(例えばそのアンテナ30、チップ32等)は、下部層26の内面40の上方に配置して示している。例として、電子部品は出願人の低収縮度接着剤の2つの小滴62、62’の上に載せて示している。接着剤台座は電子部品を下部層の内面40の上に十分(例えば約0.075mmから約0.13mm)離して保持しており、そのため流入する熱硬化性高分子材料34が電子部品の上の領域ばかりでなく、電子部品の下の領域63にも侵入することができる。また、このような接着剤台座の配置は、電子部品の下に存在する熱硬化性高分子材料がカードの外面(例えば下部層の外面及び/又は上部層の外面)で受ける力又は衝撃から電子部品を高く保護するので好ましい。」(第31頁第11?20行)
(2)引用発明の認定
引用文献1の記載事項(ア)には、「上部層と、電子構成要素を埋設するコア層と、下部層とから成るスマートカードの製造方法であって、
(1)低収縮度接着剤の少なくとも1つのマウンドを使用して電子構成要素をスマートカードの下部層の内面に結合することにより下部層/低収縮度接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成すること、
(2)低収縮度接着剤のマウンドを部分的に硬化させて下部層/部分硬化接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成すること、
(3)下部層/部分硬化接着剤/電子構成要素のアセンブリを下型内に配置すること、
(4)上部層を上型内に配置すること、
(5)上部層及び下部層の間に空所を作るように上型を下型に対して閉じること、
(6)(a)電子構成要素と部分硬化接着剤のマウンドとを熱硬化性材料内に浸漬している間に、電子構成要素を部分硬化接着剤のマウンドによって所定位置に保持し、(b)スマートカードの少なくとも1つの層を上型内のキャビティに少なくとも部分的に低温低圧成形し、(c)気体と余分の高分子材料を空所から除去し、(d)部分硬化接着剤が完全に硬化する前に電子構成要素を熱硬化性高分子材料内に包み、そして(e)熱硬化性高分子材料が上部層及び下部層の双方と接合して一体の前駆体スマートカード本体を形成する、そのような温度と圧力の条件で熱硬化性高分子材料を空所に射出すること、
(7)一体の前駆体スマートカード本体を成形装置から取り外すこと、そして、
(8)前駆体スマートカードを所望の寸法に整えてスマートカードを形成すること、
とを包含する前記方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「上部層」及び「下部層」は、上下にそれ以上の層を設けていないので、それぞれ本願発明の「最上層」及び「最下層」に相当することは明らかであり、引用発明の「熱硬化性高分子材料」、「コア層」、「上型」、「キャビティ」及び「下型」は、本願発明の「熱硬化性ポリマー材料」、「コア層」、「上部金型」、「空洞」及び「下部金型」に相当し、引用発明の「空所」は、本願発明の「空隙」に相当するということができる。そして、引用発明の「スマートカードの製造方法」は、本願発明の「スマートカードを製造する方法」で一致するといえる。
さらに、引用発明の「上部層と、コア層と、下部層とから成るスマートカードの製造方法」は、本願発明の「最上層と、熱硬化性ポリマー材料コア層と、最下層とを含むスマートカードを製造する方法」に相当し、引用発明の「(3)下部層/部分硬化接着剤/電子構成要素のアセンブリを下型内に配置すること」は、本願発明の「(1)最下層を、下部金型内に位置決めする段階」に相当し、引用発明の「(4)上部層を上型内に配置すること」は、スマートカードの表面となる最上層がプラスチック材料からなることは記載されているに等しい事項と認められるから、本願発明の「(2)プラスチック材料からなる最上層を上部金型内に位置決めする段階」に相当し、引用発明の「(5)上部層及び下部層の間に空所を作るように上型を下型に対して閉じること」は、本願発明の「(3)前記最上層と前記最下層との間に空隙を作成する方法で前記下部金型に対して前記上部金型を閉じる段階」に相当し、引用発明の「(6)(b)スマートカードの少なくとも1つの層を上型内のキャビティに少なくとも部分的に低温低圧成形し、(c)気体と余分の高分子材料を空所から除去し、そして(e)熱硬化性高分子材料が上部層及び下部層の双方と接合して一体の前駆体スマートカード本体を形成する、そのような温度と圧力の条件で熱硬化性高分子材料を空所に射出すること」は、本願発明の「(4)ポリマー材料のコア層を形成するために熱硬化性ポリマー材料を前記空隙内に注入する段階であって、その注入を、
(a)前記最上層が、前記上部金型の空洞に少なくとも部分的に冷間低圧成形され、
(b)ガス及び余分なポリマー材料が、前記空隙から追い出され、
(d)前記熱硬化性ポリマー材料が、前記最上層及び前記最下層の両方と結合して、統合前駆物質スマートカード本体を生成する、
温度及び圧力で前記空隙内に注入する段階」に相当し、引用発明の「(7)一体の前駆体スマートカード本体を成形装置から取り外すこと」は、本願発明の「(5)前記統合前駆物質スマートカード本体を前記上部金型及び前記下部金型から取り外す段階」に相当し、引用発明の「(8)前駆体スマートカードを所望の寸法に整えてスマートカードを形成すること」は、本願発明の(6)前記前駆物質スマートカードを望ましい寸法に整えて、完成スマートカードを生成する段階」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「最上層と、熱硬化性ポリマー材料コア層と、最下層とを含むスマートカードを製造する方法であって、
(1)最下層を、下部金型内に位置決めする段階と、
(2)プラスチック材料からなる最上層を上部金型内に位置決めする段階と、
(3)前記最上層と前記最下層との間に空隙を作成する方法で前記下部金型に対して前記上部金型を閉じる段階と、
(4)ポリマー材料のコア層を形成するために熱硬化性ポリマー材料を前記空隙内に注入する段階であって、その注入を、
(a)前記最上層が、前記上部金型の空洞に少なくとも部分的に冷間低圧成形され、
(b)ガス及び余分なポリマー材料が、前記空隙から追い出され、
(d)前記熱硬化性ポリマー材料が、前記最上層及び前記最下層の両方と結合して、統合前駆物質スマートカード本体を生成する、
温度及び圧力で前記空隙内に注入する段階と、
(5)前記統合前駆物質スマートカード本体を前記上部金型及び前記下部金型から取り外す段階と、
(6)前記前駆物質スマートカードを望ましい寸法に整えて、完成スマートカードを生成する段階と、
を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(A)本願発明においては、「基板上に取り付けられた集積電子機器アセンブリを含む」最下層を有するのに対して、引用発明においては、「低収縮度接着剤の少なくとも1つのマウンドを使用して電子構成要素をスマートカードの下部層の内面に結合することにより下部層/低収縮度接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成する」点(以下、「相違点a」という。)。
(B)本願発明においては、「(c)前記最下層の下部表面には注入されたポリマー材料が存在しないようにかつ、注入されたポリマー材料が最下層の上部表面に配置された前記集積電子機器アセンブリの電子部品のすべての露出した部分の上及び周囲に流れ」ると特定するのに対して、引用発明は「(a)電子構成要素と部分硬化接着剤のマウンドとを熱硬化性材料内に浸漬している間に、電子構成要素を部分硬化接着剤のマウンドによって所定位置に保持し、」「(d)部分硬化接着剤が完全に硬化する前に電子構成要素を熱硬化性高分子材料内に包み、」と特定する点(以下、「相違点b」という。)。
(C)上記各相違点について以下検討する。
まず、引用文献1においては、記載事項(イ)の「発明の背景」にあるように、電磁波による「非接触」スマートカードと併せて電子部品の物理接触によるものが挙げられ、「非接触」スマートカードである引用発明の「低収縮度接着剤の少なくとも1つのマウンドを使用して電子構成要素をスマートカードの下部層の内面に結合することにより下部層/低収縮度接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成する」ことが特定事項として開示されている。すなわち、引用文献1には、電子部品の物理接触を利用するスマートカードも同時に示唆されている。また、引用文献1の特許請求の範囲の2.には、「電子構成要素は下部層と物理的接触しない請求項1の方法。」とあり、同1.には「電子構成要素は下部層と物理的接触する」「請求項1の方法。」も実質的に含むことになる。
さらに、例えば原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された特開2000-57287号公報(以下、「周知例1」という。)には「第1の区分の回路が第1の基板に形成され、第2の区分の回路が第2の基板に形成され、第1の基板と第2の基板とが絶縁性樹脂を介して積層されている請求項1又は2記載の非接触式データキャリア」(【特許請求の範囲】の【請求項3】)の「このような積層構造の形成は、両基板1A、1Bの間に液状の絶縁性樹脂を注入し、射出成形することにより行ってもよく」(段落【0014】)と記載され、当審決において引用する特開平2-24197号公報(以下、「周知例2」という。)には、「1.第1及び第2の相互に平行な主面を持つカード本体と、該カード本体の第1主面に配設されたアクセス面を含むメモリモジュールとを有するメモリカードを製造する方法において:
型キャビティが前記カードの外形を画成する型を用意する工程;
支持要素を用意する工程;
アクセス面を有するメモリモジュールを用意する工程;
前記メモリモジュールのアクセス面を前記支持要素の表面の一方に固定する工程;
前記支持要素を前記型内に、支持要素の周囲が型に固定されるように配置する工程;
プラスチック材料を前記型内に、プラスチック材料が前記型キャビティを満たし、前記メモリモジュールがプラスチック材料内に埋め込まれるように注入する工程;及び
こうして得られた成形品を型から取り出し、支持要素を該成形品から分離して、前記メモリモジュールのアクセス面が前記カード本体の第1主面に配設された状態で、メモリモジュールをカード本体内にはめ込む工程;を含む方法。
・・・
3.前記メモリモジュールがエレクトロニクスモジュールで、そのアクセス面が外側電気接点片を備えている請求項1記載の方法。」(【特許請求の範囲】)によって「さらに、エレクトロニクスモジュールの外側接点片は支持体12に接着されているので、各接点片は、注入されたプラスチック材料が接点片上に至ってそれらを覆う可能性から保護される。」(第5頁右上欄第7?11行)ことが記載されている。同様な事項が当審決において引用する特開平2-38099号公報(以下、「周知例3」という。)にも記載されている。
そうすると、「非接触」スマートカードである引用発明の「低収縮度接着剤の少なくとも1つのマウンドを使用して電子構成要素をスマートカードの下部層の内面に結合することにより下部層/低収縮度接着剤/電子構成要素のアセンブリを形成する」ことをこれらの記載及び示唆から「基板上に取り付けられた集積電子機器アセンブリを含む」という本願発明の特定事項を想到することは、当業者であれば容易というべきである。
次に、相違点bに係る「前記最下層の下部表面には注入されたポリマー材料が存在しないようにかつ、注入されたポリマー材料が最下層の上部表面に配置された前記集積電子機器アセンブリの電子部品のすべての露出した部分の上及び周囲に流れ」ると特定する点については、引用文献1の記載事項(エ)の「上部層及び下部層の間の空所36に射出した熱硬化性材料は、電子部品、又は電子部品を載せる低収縮度接着剤のマウンドが占有していない空所36の全部分を充填する。」との記載をみても、下部層と下型間には熱硬化性材料の侵入は予定されておらず、空所36の全部分を充填するので、引用発明においても同様であると推認される特定事項というべきである。
そして、これら相違点に係る本願発明の特定事項を採用することにより得られる効果についても、格別顕著であるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知例1?3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由についての手続補正書において(3)本願が特許されるべき理由において「まず、本願発明が各引用文献に記載された発明と異なる大きな点は、特許請求の範囲(請求項9)にも記載されていますが、液晶などのディスプレイ、スイッチ、電池、指紋センサ、スピーカといった電子部品をその内部に収容することができるものであるということです。本願発明がなされた背景には、これらの電子部品に対してユーザがアクセスして操作可能となるようにこれらの電子部品をスマートカードの内部に収容するようにしたいとうい要請がありました。
引用文献1乃至6に記載されている方法では、ユーザがスマートカードに収容された部品と容易に対話できるような態様で電子部品を収容しつつスマートカードを製造するのは不十分なものでありました。例えば、液晶などのディスプレイは、ユーザが視聴することができるようにカードの表面に設けられた穴に正確に位置決めし、この穴に嵌まり合うようにしなければなりません。指紋センサについても、ユーザが自分の指を指紋センサ上に置くことができるように、同様にカードの表面に設けられた穴に正確に位置決めし、この穴に嵌まり合うようにしなければなりません。スピーカも、ユーザがそのサウンドを聞くことができるようにカードの表面に設けられた穴に正確に位置決めし、この穴に嵌まり合うようにしなければなりません。」と主張するが「液晶などのディスプレイ、スイッチ、電池、指紋センサ、スピーカ」は、平成23年9月7日付けの手続補正書によって補正された【請求項1】には、単に「集積電子機器アセンブリ」と特定されるだけであり、さらに同【請求項9】には「前記集積電子機器アセンブリは、以下の群、すなわち、マイクロプロセッサ、アンテナ、集積回路(IC)チップ、バッテリ、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、高分子ドームスイッチ、音響スピーカ、及びセンサ(指紋センサのような)から選択された電子構成要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」と「集積回路(IC)チップ」単独の場合も含む記載で特定され、引用文献1の記載事項(オ)の「スマートカードの電子部品(例えばそのアンテナ30、チップ32等)」と同じである。
したがって、請求人の主張は、特許請求の範囲に記載のない事項に基づくもので失当であり、採用することができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知例1?3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-05 
結審通知日 2013-09-09 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2008-502957(P2008-502957)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 西脇 博志
近藤 幸浩
発明の名称 高品質外面を有する等方性熱硬化接着材料を使用して集積電子機器を備えた最新スマートカードを製造する方法。  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  

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