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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C22C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C22C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C22C 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C22C |
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管理番号 | 1284579 |
審判番号 | 不服2012-18192 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-18 |
確定日 | 2014-02-06 |
事件の表示 | 特願2008-541194「超高強度マルテンサイト系合金」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日国際公開、WO2007/058759、平成21年 4月16日国内公表、特表2009-516082〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年10月30日(優先日、2005年11月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月26日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月12日付けで拒絶査定がなされ、同年9月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に手続補正がされ、同年11月9日付けで前置報告がなされ、これに基づく審尋が同年11月27日付けで発せられたところ、回答書の提出がなかったものである。 第2 平成24年9月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 本件補正を却下する。 【理由】 1.手続補正の内容 本件補正は、出願当初の特許請求の範囲の 「【請求項1】 重量パーセントにして、実質的に、 C 約0.30?0.36 Mn 最大約0.05 Si 最大約0.05 P 最大約0.005 S 最大約0.0010 Cr 約1.30?3.2 Ni 約10.0?13.0 Mo 約1.0?2.70 Co 約13.8?17.4 Ti 最大約0.02 Al 最大約0.005 Ce 最大約0.030 La 最大約0.010 を含有し、残部が鉄と通常の不純物である時効硬化性マルテンサイト系鋼合金。」を、 「【請求項1】 重量パーセントにして、 C 0.35?0.36 Mn 最大0.05 Si 最大0.05 P 最大0.005 S 最大0.0010 Cr 1.30?3.2 Ni 10.0?13.0 Mo 1.0?2.70 Co 13.8?17.4 Ti 最大0.02 Al 最大0.005 Ce 最大0.030 La 最大0.010 を含有し、残部が鉄と不可避不純物である時効硬化性マルテンサイト系鋼合金。」とするもの(以下、「補正事項a」という)を含むものである。 2.当審の判断 (1)本件補正は、発明特定事項であったCの組成を限定するものだから、限定的減縮を目的としていると認める。 そこで、当該補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (2)刊行物1(特表2000-514508号公報)の記載事項 1-1 「 発明の分野 本発明は、時効硬化性マルテンサイト鋼合金に関係し、特に、極めて大きな強度と受け容れ可能なレベルの破壊靱性との独自の組み合わせを与える合金に関係する。」(第6頁第3行?同頁第6行) 1-2 「 発明の背景 大きな強度と大きな靱性の組み合わせを持つ合金を使用することが、様々な用途で必要とされている。・・・用途としては、ランディングギヤやジェットエンジンの主軸といった航空機用の構造構成要素や工作具構成要素が考えられる。 次のような重量%組成を持つ弾道発射体に耐える合金鋼が記載されている。 C 0.38-0.43 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。」(第6頁第7行?同頁第16行) 1-3 「 合金I 合金II C 0.2-0.33 0.2-0.33 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これらの合金は、応力強度因子K_(IC)で表される破壊靱性≧109.9MPa√m(≧100 ksi√in)および極限引張り強度UTSで表される強度約1931-2068MPa(280-300ksi)を与えることができる。 しかし、・・・より強い構造構成要素を得るために、公知の合金よりさらに高い強度を持つ合金の需要が高まっている。破壊靱性は、降伏強さおよび極限引張り強度と逆の関係にあることが知られている。」(第8頁第6行?同頁第28行) 1-4 第16頁、表1には、「ヒート番号9」として、「C 0.341、Mn 最大0.01、Si 最大0.01、P 最大0.005、S 最大0.005、Cr 2.43、Mo 1.45、 Ni 10.98、Co 15.07、Al 0.003、Ti 0.008、Ce 0.004、La 0.001、残量Fe」の成分組成の鋼合金が記載されている。 (3)刊行物1に記載された発明について 刊行物1には、強度と破壊靱性との組み合わせを与える時効硬化性マルテンサイト鋼合金に関し(1-1)、「重量パーセントでC 0.341、Mn 最大0.01、Si 最大0.01、P 最大0.005、S 最大0.005、Cr 2.43、Mo 1.45、 Ni 10.98、Co 15.07、Al 0.003、Ti 0.008、Ce 0.004、La 0.001、残量Fe」の成分組成を有する鋼合金(1-4)の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。 (4)対比・判断 ア.対比 本願補正後発明と引用発明を対比すると、引用発明のC以外の成分組成は、本願補正後発明の範囲に含まれるから、両者は、 『重量パーセントにして、 Mn 最大0.01 Si 最大0.01 P 最大0.005 S 最大0.0005 Cr 2.43 Ni 10.98 Mo 1.45 Co 15.07 Ti 0.008 Al 0.003 Ce 0.004 La 0.001 を含有し、残部が鉄と不可避不純物である時効硬化性マルテンサイト系鋼合金。』で一致し、引用発明では、Cが「0.341」重量パーセントであるのに対し、本願補正後発明では、Cが「0.35?0.36」重量パーセントである点(相違点)で相違する。 イ.判断 上記相違点について検討する。 引用発明では、強度と靱性のバランスを取った時効硬化性マルテンサイト鋼合金を得ることが目的とされていると共に(1-1)、強度と靱性がトレードオフの関係にあることが認識されている(1-3)。 また、刊行物1には、大きな強度を必要とする、例えば、弾道発射体に耐える合金鋼としては、Cを0.38-0.43重量パーセント(以下、「重量パーセント」は省略する。)と高めに含有する一方で(1-2)、Cを「0.2-0.33」とした「合金I」や「合金II」では強度が十分でなく、より強い構造構成要素を得るために、さらに高い強度を持つ合金の需要があることも記載されている(1-3)。 そうすると、引用発明において、さらに高い強度を持つ合金を得るために、Cを高くする動機付けはあるというべきである。 そして、上記「合金I」や「合金II」のCの上限が「0.33」であり、より高強度が必要な弾道発射体のCが「0.38-0.43」であることから、強度と靱性のバランスを取って、Cを0.33から0.38の間に設定することは、当業者が適宜成し得る設計的事項にとどまる。 また、本願補正後発明の効果は、引用発明に比し格別に顕著であるとはいえない。 よって、上記相違点は、当業者が容易に解消できるというべきである。 したがって、本願補正後発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、補正事項aを含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年9月18日付けの手続補正は、上記第2に記載したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 重量パーセントにして、実質的に、 C 約0.30?0.36 Mn 最大約0.05 Si 最大約0.05 P 最大約0.005 S 最大約0.0010 Cr 約1.30?3.2 Ni 約10.0?13.0 Mo 約1.0?2.70 Co 約13.8?17.4 Ti 最大約0.02 Al 最大約0.005 Ce 最大約0.030 La 最大約0.010 を含有し、残部が鉄と通常の不純物である時効硬化性マルテンサイト系鋼合金。」 (以下、「本願発明」という。)。 2.原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1 特表2000-514508号公報 3.刊行物1の記載事項及び同刊行物に記載された発明 第2の2.(2)及び(3)に記載したとおりである。 4.対比・判断 第2の2.(4)ア.をふまえれば、引用発明と本願発明は、Cの組成でも一致しているから、引用発明は、本願発明と同一である。 仮に、そうでないとしても、本願補正後発明が引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、Cの組成でも一致している本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 結論 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 または、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、その余の請求項については検討するまでもなく、原査定は妥当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-25 |
結審通知日 | 2013-08-20 |
審決日 | 2013-09-02 |
出願番号 | 特願2008-541194(P2008-541194) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C22C)
P 1 8・ 572- Z (C22C) P 1 8・ 121- Z (C22C) P 1 8・ 113- Z (C22C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 油科 壮一、佐藤 陽一、本多 仁、静野 朋季 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 山田 靖 |
発明の名称 | 超高強度マルテンサイト系合金 |
代理人 | 竹下 和夫 |