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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1284599
審判番号 不服2013-7890  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-30 
確定日 2014-02-06 
事件の表示 特願2008-138689「火災警報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日出願公開、特開2009-288901〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成20年5月27日の出願であって、平成24年7月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年1月22日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年4月30日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年10月1日付けの手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、
各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに警報手段に火災警報を報知させるとともに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、且つ受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段と、火災警報停止の操作入力を受け付ける操作入力受付手段とを具備し、
当該操作入力受付手段は、第1操作部と第2操作部を有し、第1操作部が操作されたときに第1の警報停止操作信号を制御手段に出力するとともに第2操作部が操作されたときに第2の警報停止操作信号を制御手段に出力し、
各火災警報器の制御手段は、第1又は第2の警報停止操作信号を受け取ると警報手段に火災警報の報知を停止させるとともに他の火災警報器に火災警報の報知を停止させるための第1又は第2の警報停止メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、且つ受信手段で受信する無線信号により第1の警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災感知しているか否かに関わらず警報手段に火災警報の報知を停止させ、第2の警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させることを特徴とする火災警報システム。」

3.引用文献記載の発明及び引用文献記載の技術
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-222319号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア.「【0028】
[1:警報システムの概要および特徴]
まず最初に、図1を用いて、本実施例に係る警報システムの概要および特徴を説明する。図1は、本実施例に係る警報システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【0029】
本実施例に係る警報システムは、図1に例示するように、一般住宅の台所や寝室、居間のほか、オフィスの一室などの比較的に小さな監視領域にそれぞれ設置された警報器10を、連動用リード線9によって相互に通信可能に接続して構成される。そして、かかる警報システムにおいて、各警報器10は、概略的には、監視領域で発生した火災やガスを検出して自ら警報を行うだけでなく、他の警報器10に対して警報信号を送信するとともに、他の警報器10から警報信号を受信して連動警報を行うものである。」(段落【0028】及び【0029】)

イ.「【0042】
また、表カバー1の上部には、皿状に突出した火災検出部(チャンバー収容部)11が形成され、火災検出部11の周囲には、複数の煙流入口が設けられている。さらに、表カバーの上部角には、ガス(CO)を検出するためのガス検出部12が設けられている。また、表カバー1の下部には、火災警報またはガス警報を出力するための火災警報ランプ6、ガス警報ランプ7およびスピーカ8が形成されている。
【0043】
そして、警報器10本体の下部には、警報点検や警報停止に使用する点検スイッチ13が形成され、さらに、警報器10の内部からは、他の警報器10との間で警報信号などを送受信するための連動用リード線9が引き出されている。なお、警報器10は、電池を動力源として内蔵したものだけでなく、いわゆるAC電源から電源供給を受けるようにしたものでもよく、後者の場合には、電源ラインから給電を受けるための差し込みプラグが筐体の底面から引き出されて構成される。
【0044】
このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。なお、記憶部17は特許請求の範囲に記載の「メッセージ記憶手段」に対応し、制御部20は同じく「連動警報処理手段」および「制御手段」に対応する。
【0045】
このうち、火災検出部11は、監視領域における火災の発生を検出する処理部である。具体的には、赤外線LEDおよびフォトダイオードを用いて火災時に発生する煙の濃度を検出し、その数値からなる検出信号を制御部20に出力する。なお、煙濃度の感知手法は、必ずしも光電式感知に限定されるものではなく、いわゆるイオン化式感知などの他手法を任意に採用してもよい。」(段落【0042】ないし【0045】)

ウ.「【0047】
点検スイッチ13は、警報点検や警報停止を受け付ける手段である。具体的には、監視時に点検スイッチ13が引かれると、制御部20は火災警報ランプ6、ガス警報ランプ7およびスピーカ8から点検用の警報を出力し、また、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると、制御部20はスピーカ8からの音声警報の出力を停止するように制御するとともに、他の警報器10に対して警報停止命令(信号)を送信する。」(段落【0047】)

エ.「【0049】
スピーカ8は、音声出力部15の制御に基づいて音声メッセージやブザー音を監視領域に出力することによって、警報器10による異常検出状態や連動状態を周囲に報知する手段である。そして、音声出力部15は、制御部20からの指示に応じて、火災検出時やガス検出時、さらには、他の警報器10から警報信号を受信した時などにスピーカ8を介して音声メッセーやブザー音を出力する処理部である。なお、音声出力部15の具体的な処理内容についても、制御部20の処理内容として後述する。
【0050】
連動用リード線9は、当該警報器10と他の警報器10とを通信可能に接続するための接続手段である。そして、連動送受信部16は、制御部20からの指示に応じて、連動用リード線9を介して他の警報器10に警報信号や警報停止信号を送信する一方、他の警報器10から警報信号や警報停止信号を受信する処理部である。なお、かかる警報信号は、警報信号の発信元(連動元)である警報器10の「アドレス」、火災またはガスのなかでいずれの種類の異常が検出されたかを示す「異常種別」、並びに、プリ警報レベルまたは本警報レベルのなかでいずれのレベルの警報が行われたかを示す「警報レベル」を含んで構成される。」(段落【0049】及び【0050】)

オ.「【0066】
なお、警報処理部20bは、警報処理による警報出力が開始された後に、警報停止命令(点検スイッチ13の押下、または、他の警報器10からの警報停止信号の受信)を受け付けた場合には、警報処理のうち音声警報のみを停止させる。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ24から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止させる。
【0067】
連動処理部20cは、検出処理部20aからの警報信号に基づいて他の警報器10に対して警報信号を送信する処理部である。具体的には、検出処理部20aから警報信号(火災プリ警報信号、COプリ警報信号、火災本警報信号またはCO本警報信号)が入力された場合に、これに自己のアドレス(例えば、図1に例示したアドレスAなど)を付加することで、警報信号の発信元(連動元)を示す「アドレス」、火災またはガスを示す「異常種別」、並びに、プリ警報レベルまたは本警報レベルを示す「警報レベル」からなる警報信号を生成し、これを連動送受信部16から他の警報器10に送信する。
【0068】
また、連動処理部20cは、連動送受信部16を介して他の警報器10から受信した警報信号に基づいて連動警報を行う処理部でもある。具体的には、連動送受信部16からアドレス付きの警報信号(火災プリ警報信号、COプリ警報信号、火災本警報信号またはCO本警報信号)が入力された場合に、音声出力部15を制御することで、連動処理用テーブル17cに記憶された対応する音声メッセージをスピーカ8から出力する。」(段落【0066】ないし【0068】)

カ.「【0086】
[4:警報停止処理]
続いて、本実施例の警報システムによる警報停止処理を説明する。図10は、本実施例による警報停止処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
なお、図10では、アドレスA、B、CおよびDの各警報器10が警報若しくは連動警報を行っている状況で、アドレスCの警報器10が警報停止命令を受け付け、アドレスA、BおよびDの警報器10に対して警報停止信号を送信する場合を例に挙げているが、アドレスA、BまたはDの警報器10が警報停止命令を受け付ける場合も同様の処理が実行される。また、同図では、警報停止信号を受信したアドレスA、BおよびDの警報器10のうち、特にアドレスAの警報器10の処理を例に挙げているが、アドレスBおよびDの警報器10においても同様の処理が実行される。
【0088】
図10に例示するように、警報器C(アドレスCの警報器10)は、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると(ステップS1001肯定)、警報停止命令を受け付けたものとして、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1002)。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ8から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止する。
【0089】
また、警報器Cは、自らの音声警報を停止させるだけでなく、連動用リード線9を介して他の警報器10(アドレスA、BまたはDの警報器10)に警報停止命令(信号)を送信する(ステップS1003)。そして、かかる警報停止命令を受信した他の警報器10でも、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1005)。」(段落【0086】ないし【0089】)

キ.「【0091】
上記したように、連動警報によって複数の警報器10がそれぞれ音声警報を出力している場合でも、いずれかの警報器10で利用者が警報停止操作を行えば、全ての警報器10の音声警報が停止するので、利用者は警報器10それぞれに対して警報停止操作を行う必要がなくなり、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止することが可能になる。
【0092】
なお、ここでは、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止する例を説明したが、自己の監視領域で異常を検出している場合には、音声警報を停止することなく警報出力を継続してもよい。これによって、少なくとも自ら異常を検出している監視領域では、継続して警報が出力されるので、より安全性を確保することが可能になる。」(段落【0091】及び【0092】)

ク.「【0113】
例えば、上記の実施例では、連動用リード線9を用いて各警報器10を通信可能に接続する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電波、微弱電波、赤外線、超音波などを利用することで、各警報器10を無線によって通信可能に接続するようにしてもよい。」(段落【0113】)

(2)上記(1)ア.ないしク.及び図面から次のことが分かる。
サ.上記(1)ア.及びク.並びに図1及び図4から、警報システムは複数の警報器10を備え、これら複数の警報器10の間で電波を媒体とする無線信号を伝送することが分かる。

シ.上記(1)イ.及びク.並びに図1及び図4から、各警報器10は、火災を感知する火災検出部11と、火災警報を報知する音声出力部15と、無線信号を送信する連動送受信部16と、無線信号を受信する連動送受信部16と、火災検出部11で火災を感知したときに音声出力部15に火災警報を報知させるとともに他の警報器10に火災警報を報知させるための警報信号を含む無線信号を連動送受信部16から送信させ、且つ連動送受信部16により他の警報器10から送信される無線信号を受信して前記警報信号を受け取ったときに音声出力部15に火災警報を報知させる制御部20を有することが分かる。

ス.上記(1)イ.及びウ.並びに図2から、点検スイッチ13は、引かれるという操作を受けることにより火災警報停止を受け付ける手段、すなわち、操作入力受付手段を構成することが分かる。

セ.上記(1)イ.ないしエ.並びに図2及び図4から、点検スイッチ13が引かれると、制御部20が音声警報の出力を停止するという制御をするのであるから、点検スイッチ13が操作されると、火災警報の出力の停止操作のための信号が制御部20に出力されることが分かり、また、各警報器10の制御部20は、火災警報の出力の停止操作のための信号を受け取ると音声出力部15に火災警報の報知を停止させることが分かる。

ソ.上記(1)エ.ないしカ.及びク.並びに図1及び図4から、各警報器10の制御部20は、他の警報器10に火災警報の報知を停止させるための警報停止信号を含む無線信号を連動送受信部16から送信させることが分かる。

タ.上記(1)エ.ないしカ.及びク.並びに図1及び図4から、各警報器10の制御部20は、連動送受信部16で受信する無線信号により警報停止信号を受け取った場合は火災検出部11が火災感知しているか否かに関わらず音声出力部15に火災警報の報知を停止させることが分かる。

チ.上記(1)エ.ないしク.並びに図1及び図4から、各警報器10の制御部20は、他の警報器10に火災警報の報知を停止させるための警報停止信号を含む無線信号を連動送受信部16から送信させることが分かる。

ツ.上記(1)エ.ないしク.並びに図1及び図4から、各警報器10の制御部20は、連動送受信部16で受信する無線信号により警報停止信号を受け取った場合は火災検出部11が火災感知していないときは音声出力部15に火災警報の報知を停止させることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)サ.ないしタ.並びに図面によると、引用文献には、次の発明が記載されている。
「複数の警報器10を備え、これら複数の警報器10の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する警報システムであって、
各警報器10は、火災を感知する火災検出部11と、火災警報を報知する音声出力部15と、無線信号を送信する連動送受信部16と、無線信号を受信する連動送受信部16と、火災検出部11で火災を感知したときに音声出力部15に火災警報を報知させるとともに他の警報器10に火災警報を報知させるための警報信号を含む無線信号を連動送受信部16から送信させ、且つ連動送受信部16により他の警報器10から送信される無線信号を受信して前記警報信号を受け取ったときに音声出力部15に火災警報を報知させる制御部20と、火災警報停止の操作入力を受け付ける操作入力受付手段とを具備し、
当該操作入力受付手段は、点検スイッチ13を有し、点検スイッチ13が操作されたときに警報の出力の停止操作のための信号を制御部20に出力し、
各警報器10の制御部20は、警報の出力の停止操作のための信号を受け取ると音声出力部15に火災警報の報知を停止させるとともに他の警報器10に火災警報の報知を停止させるための第1の警報停止信号を含む無線信号を連動送受信部16から送信させ且つ連動送受信部16で受信する無線信号により警報停止信号を受け取った場合は火災検出部11が火災感知しているか否かに関わらず音声出力部15に火災警報の報知を停止させる警報システム。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

(4)上記(1)、(2)サ.ないしセ.、チ.及びツ.並びに図面によると、引用文献には、さらに次の技術が記載されている。
「警報システムにおいて、点検スイッチ13が操作され、連動送受信部16で受信する無線信号により警報停止信号を受け取った場合は火災検出部11が火災を感知していないときにのみ音声出力部15に火災警報の報知を停止させる技術。」(以下、「引用文献記載の技術」という。)

4.対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「警報器10」、「警報システム」、「火災検出部11」、「音声出力部15」、「連動送受信部16」、「警報信号」、「制御部20」、「点検スイッチ13」、「警報の出力の停止操作のための信号」並びに「警報停止信号」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本願発明における「火災警報器」、「火災警報システム」、「火災感知手段」、「警報手段」、「送信手段」及び「受信手段」、「火災警報メッセージ」、「制御手段」、「第1操作部」、「第1の警報停止操作信号」並びに「警報停止メッセージ」に、それぞれ相当する。

よって、本願発明と引用文献記載の発明は、
「複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、
各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに警報手段に火災警報を報知させるとともに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、且つ受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段と、火災警報停止の操作入力を受け付ける操作入力受付手段とを具備し、
当該操作入力受付手段は、第1操作部を有し、第1操作部が操作されたときに第1の警報停止操作信号を制御手段に出力し、
各火災警報器の制御手段は、第1の警報停止操作信号を受け取ると警報手段に火災警報の報知を停止させるとともに他の火災警報器に火災警報の報知を停止させるための第1の警報停止メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ且つ受信手段で受信する無線信号により第1の警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災感知しているか否かに関わらず警報手段に火災警報の報知を停止させる火災警報システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明においては、「操作入力受付手段」が、「第1操作部」の他に「第2操作部」を有し、「操作入力受付手段」が「第2操作部が操作されたときに第2の警報停止操作信号を制御手段に出力し」、「各火災警報器の制御手段」は、「警報の出力の停止操作のための第2の警報停止操作信号を受け取ると警報手段に火災警報の報知を停止させるとともに他の火災警報器に火災警報の報知を停止させるための第2の警報停止メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ且つ受信手段で受信する無線信号により第2の警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させる」のに対し、引用文献記載の発明においては、「操作入力受付手段」が、「第1操作部」の他に「第2操作部」を有してるかどうかが明らかでなく、「操作入力受付手段」が「第2操作部が操作されたときに第2の警報停止操作信号を制御手段に出力し」、「各火災警報器の制御手段」は、「警報の出力の停止操作のための第2の警報停止操作信号を受け取ると警報手段に火災警報の報知を停止させるとともに他の火災警報器に火災警報の報知を停止させるための第2の警報停止メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ且つ受信手段で受信する無線信号により第2の警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させる」かどうかが明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
本願発明と引用文献記載の技術とを対比すると、引用文献記載の技術における「警報システム」、「連動送受信部16」、「火災検出部11」及び「音声出力部15」は、本願発明における「火災警報システム」、「受信手段」、「火災感知手段」及び「警報手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の技術における「点検スイッチ13」は、「操作部」という限りにおいて、本願発明における「第2操作部」に相当し、また、引用文献記載の技術における「警報停止信号」は、「警報停止メッセージ」という限りにおいて、本願発明における「第2の警報停止メッセージ」に相当する。
したがって、引用文献記載の技術を本願発明の用語を用いて表現すると、
「火災警報システムにおいて、操作部が操作され、受信手段で受信する無線信号により警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させる技術。」ということができる。
この引用文献記載の技術は、引用文献において、引用文献記載の発明とは別に開示されているものであるが、引用文献記載の発明と同様に、操作部の操作により警報停止メッセージが送信されるものである。
この引用文献記載の技術における警報停止メッセージは、火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させるためのものであるから、引用文献記載の発明における火災感知手段が火災感知しているか否かに関わらず警報手段に火災警報の報知を停止させる、すなわち、全ての火災感知手段に火災警報の報知を停止させる警報停止メッセージとは異なるものであって、引用文献記載の技術における警報停止メッセージと引用文献記載の発明における警報停止メッセージとは一つの操作部から送信することはできないものである。
ここで、一つの装置において複数のメッセージを選択的に発生させることによって、装置の多機能化を図るために、一つの装置において複数個の操作部を設けることは一般的に行われている設計的事項(以下、「設計的事項」という。)であって、当業者が引用文献に接した場合に、引用文献記載の発明と引用文献記載の技術とを一つの装置に実施させるために、引用文献記載の発明における操作入力手段に引用文献記載の技術における操作部を付加してみようとすることは当業者が通常の技術的創作の範囲内で行い得る事項にすぎない。
そして、引用文献記載の技術をより具体化するものとして、「操作入力受付手段」が、「操作部」を有し、「操作入力受付手段」が「操作部が操作されたときに警報停止操作信号を制御手段に出力し」、「各火災警報器の制御手段」は、「警報の出力の停止操作のための警報停止操作信号を受け取ると警報手段に火災警報の報知を停止させるとともに他の火災警報器に火災警報の報知を停止させるための警報停止メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ且つ受信手段で受信する無線信号により警報停止メッセージを受け取った場合は火災感知手段が火災を感知していないときにのみ警報手段に火災警報の報知を停止させる」ことは周知の技術(例えば、特開2008-4033号公報の段落【0034】及び図2並びに特開2008-33428号公報の段落【0038】及び図2等参照。以下、「周知技術」という。)でもある。
してみれば、引用文献記載の発明において、上記設計的事項及び引用文献記載の技術を参酌することにより、上記周知技術における「操作部」を「第2の操作部」として付加し、「第2の警報停止操作信号」や「第2の警報停止メッセージを含む無線信号」を発生するようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明は、全体でみても、引用文献記載の発明及び上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-29 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-17 
出願番号 特願2008-138689(P2008-138689)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
加藤 友也
発明の名称 火災警報システム  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  

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