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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03C
管理番号 1284631
審判番号 不服2009-22198  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-13 
確定日 2014-02-14 
事件の表示 特願2000-124470「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月31日出願公開、特開2001-302288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月25日の出願であって、平成21年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月11日付けで拒絶査定され、同年11月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に同日付けで手続補正書が提出されたものであり、その後、平成23年9月20日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され、同年11月18日付けで回答書が提出され、その後、当審において平成24年7月25日付けで平成21年11月13日付けの手続補正についての補正却下の決定がなされるとともに拒絶理由が通知され、同年10月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成24年10月1日に提出された手続補正書により補正された本願の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、
前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂が可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートにより可塑化されたものであり、
合わせガラスとしたときに、前記合わせガラスは、波長380?780nmでの可視光透過率Tvが75%以上、340?1800nmでの日射透過率Tsが60%以下、ヘイズHが1.0%以下、及び、10?2000MHzでの電磁波シールド性能ΔdBが10dB以下であり、かつ、80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際に合わせガラス端辺からの白化距離が7mm以下であり、熱線カット機能を有する金属酸化物微粒子とリン酸エステルとを含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。」

3.刊行物に記載された事項
(1)当審からの拒絶の理由において刊行物1として引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平08-259279号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が 0.2μm以下の機能性超微粒子を分散せしめてなるものとしたことを特徴とする合せガラス。
【請求項2】 前記中間膜が、ポリビニルブチラール系樹脂膜であることを特徴とする請求項1記載の合せガラス。」(特許請求の範囲 請求項1、2)
(イ)「【請求項7】 前記機能性超微粒子が、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやF のドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物、またはさらに当該各単独物もしくは複合物に有機樹脂物を含む混合物または有機樹脂物を被覆した被膜物であることを特徴とする請求項1乃至6記載の合せガラス。」(特許請求の範囲 請求項7)
(ウ)「【請求項9】 前記合せガラスが、建築用ガラスであることを特徴とする請求項1乃至8記載の合せガラス。
【請求項10】 前記合せガラスが、自動車用ウインドウガラスであることを特徴とする請求項1乃至8記載の合せガラス。」(特許請求の範囲 請求項9、10)
(エ)「【産業上の利用分野】本発明は、着色、熱線や紫外線遮断膜、電波透過等各種の機能性超微粒子を適宜有する樹脂中間膜層を用いて合せ処理することでなる合せガラスとその製造方法に関する。」(段落【0001】)
(オ)「またさらに、機能性超微粒子が、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやF のドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物、またはさらに当該単独物もしくは複合物に有機樹脂を含む混合物または有機樹脂物を被覆した被膜物であるものとしたのは、各単独もしくは複合物、混合物、被膜物として断熱性能、紫外線遮蔽性能、着色性能、遮光性等を適宜発現し、建築用や自動車用に求められる種々の機能性および性能を合せガラスとして発現せしめるためである。
また機能性超微粒子としては、例えばSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 等のほかMoなどの各種金属。例えばSnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3) 、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物。例えばTiN 、AlN 等の窒化物、あるいは窒素酸化物。例えばZnS 等の硫化物。例えば9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) 〔住友大阪セメント社製〕、F-SnO_(2)等のドープ物。さらに例えばSnO_(2)-10wt%Sb_(2)O_(3) 、In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO) 〔三菱マテリアル社製〕等の複合物である。フッ素樹脂、PTFE、ルブロン〔ダイキン工業(株)〕、セフラルル-ブ〔セントラル硝子(株)〕、低分子量TFE などが挙げられ、またATO やITO は自動車用としてその要件を備え特に好ましいものである。」(段落【0032】、【0033】)
(カ)「さらにまた、可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート(DOP) 、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジトリデシルフタレート(DTDP)、ブチルベンジルフタレート(BBP) などのフタル酸エステル、またトリクレシルホスフェート(TCP) 、トリオクチルホスフェート(TOP) などのリン酸エステル、またトリブチルシトレート、メチルアセチルリシノレート(MAR) などの脂肪酸エステル、またトリエチレングリコール・ジ-2- エチルブチレート(3GH) 、テトラエチレングリコール・ジヘキサノールなどのポリエーテルエステルなど、またさらにこれらの混合物が挙げられる。」(段落【0047】)
(キ)「実施例1
20wt%ATO(導電性アンチモン含有錫酸化物) 超微粒子(粒径0.02μm 以下)分散含有DOP(ジオクチルフタレート) 10gと通常の DOP 130gをPVB(ポリビニルブチラール) 樹脂 485gに添加し、他の紫外線吸収剤等とともに3本ロールのミキサーにより約70℃で約15分間程度練り込み混合した。得られた製膜用原料樹脂を型押出機にて190 ℃前後で厚み約0.8mm 程度にフイルム化しロールに巻き取った。なお、フイルム表面には均一な凹凸のしぼを設けた。
次に大きさ約300mm×300mm 、厚さ約2.3mm のクリアガラス基板(FL2.3) を2枚用意し、該基板と同じ大きさに前記フイルムを裁断し、調製した中間膜を該2枚のクリアガラス基板の間に挟み積層体とした。
次いで該積層体をゴム製の真空袋に入れ、袋内を脱気減圧し、約80?110 ℃程度で約20?30分程度保持した後一旦常温までにし、袋から取り出した積層体をオートクレーブ装置に入れ、圧力約10?14kg/cm^(2 )、温度約110 ?140 ℃程度で約20?40分間程度の加圧加熱して合せガラス化処理をした。
得られた合せガラスについて下記の測定および評価を行った。
〔光学特性〕:分光光度計(340 型自記、日立製作所製)で波長340 ?1800nmの間の透過率を測定し、JIS Z 8722及びJIS R 3106又はJIS Z 8701によって可視光透過率Tv(380?780nm)、日射透過率Ts(340?1800nm) 、刺激純度(%)、色調等を求めた。
〔くもり度〕:ヘーズ値H をJIS K6714 に準拠して行い求めた。建築用としては3%以下、自動車用としては1%以下を合格とした。
〔電波透過性〕:KEC 法測定(電界シールド効果測定器)によって、電波10?1000MHzの範囲の反射損失値(dB)を通常の板厚3mm のクリアガラス(FL3t)単板品と対比。その差の絶対値(△dB)が2dB以内を合格とした。
〔接着性〕: -18±0.6 ℃の温度で16±4 時間放置し調整後、ハンマー打でのガラスの剥離での中間膜露出程度。少ないものを合格とした。
〔耐熱性〕: 100 ℃の煮沸水中にて2 時間程度煮沸した後、周辺10mmを除き、残りの部分での泡の発生、くもり、ガラスのひび割れ等の異常がないものを合格とした。
〔耐湿性〕: 50±2 ℃、相対湿度95±4 %の調整内に2週間静置した後、泡の発生、くもり、ガラスのひび割れ等の異常がないものを合格とした。
〔電気的特性〕:三菱油化製表面高抵抗計(HIRESTA HT-210)によって測定。
(シート抵抗値)(M Ω/口)。10M Ω/口以上合格。
〔なお、基本的にはJIS R 3212等安全ガラス、特に合せガラスの項に準拠。〕
その結果、可視光透過率Tvが約76.8%程度、日射透過率Tsが約58.6%程度、刺激純度Peが0.7 %程度で淡いグレー系のニュートラル色調、反射によるギラツキもなく、ヘーズ値Hが約0.3 %程度となり、充分優れた熱線遮蔽性等の光学特性、格段に高い表面抵抗率で通常単板ガラス並み、例えば80MHz(FMラジオ波帯) 、約520 ?1630KHz(AMラジオ波帯) 等特に通常単板ガラスと同等の電波透過性を示し、かつ充分安定な優れた接着性と耐熱性ならびに耐湿性を示しいずれも合格であり、通常の合せガラスと変わらない合せガラスを得ることができ、優れた居住性をもちかつ運転者や搭乗者あるいは環境に優しく安全性が高くしかもAM帯をはじめ各種電波を快適に受信ができ、建築用窓ガラスはもちろん自動車用窓ガラス、ことにアンテナ導体と同時に備える自動車用窓ガラスに対しても充分採用でき、期待に充分答えることができるものであった。
なお、他に耐候性(例、サンシヤインウエザーメーターで約1000時間:可視光透過率がほぼ変化がないこと)等の種々の特性をも評価したところ、いずれも合格するものであった。
実施例2
20wt%ATO(導電性アンチモン含有錫酸化物) 超微粒子(粒径0.02μm 以下)分散含有3GH(トリエチレングリコ-ル -ジ- 2- エチルブチレ-ト) 10gと通常の3GH 130 gをPVB(ポリビニルブチラール) 樹脂 485gに添加し、さらに接着調整剤としてトスパ-ル120(東芝シリコ-ン) を5g添加し、他の紫外線吸収剤等とともに3本ロールのミキサーにより約70℃で約15分間程度練り込み混合した。得られた製膜用原料樹脂を型押出機にて190 ℃前後で厚み約0.8mm 程度にフイルム化しロールに巻き取り、実施例1と同様にして表面には均一な凹凸のしぼを設けた厚み約0.8mm 程度の中間膜を得た。
次に大きさ約300mm×300mm 、厚さ約2.0mm のクリアガラス基板(FL2) を用いて実施例1と同様にして積層体とした。次いで実施例1と同様にして合せガラス化処理をした。
得られた合せガラスは、Tvが76.5%、Tsが58.5%、Hが0.4 %等実施例1と同様に優れた光学特性ならびに電波透過性、品質等の各物性をバランスよく示す所期のものであった。」(段落【0054】?【0062】)
(ク)「【発明の効果】以上前述したように、本発明は粒径0.2 μm 以下の機能性超微粒子を中間膜層に分散含有する合せガラス及びその製造方法としたことにより、従来から使用されている合せガラス用中間膜層に大きな影響を与えることなく、断熱性能や紫外線遮断性能や電波透過性能等の機能特性を付与し、しかもクリア乃至着色の色調の制御およびヘーズ値が極めて低く優れた透視性の確保ならびに反射性とぎらつき感の防止等をバランスよくもたらしめ、従来の合せガラスと変わらない品質を得るようにでき、現在使用中の合せガラス製造ラインをそのままで合せガラス化処理と作業で行うことができ、安価にかつ容易にしかもガラスの大きさや形態に自由自在に対応し得て実施でき、ひいては冷暖房効果を高め居住性を向上せしめ、環境や人に優しく、幅広い透視性を得ることができ、AM電波、FM電波TV電波帯等を通常のフロ-トガラス並の電波透過性能として車輌用のテレビ、ラジオ、携帯電話等のためのガラスアンテナ性能を確保でき、本来のガラスアンテナ性能を発揮させ、建屋や車輌内外での快適な環境を確保することができることとなり、無色から有色と各種色調の合せガラスとして使用可能な電波透過型熱線紫外線遮蔽ガラス等となり、各種建築用窓材としてはもちろん、特に各種自動車用窓材、ことに風防用ガラス、また飛行機用窓材、その他産業用ガラス等幅広く適用でき、最近のニーズに最適なものとなる有用な機能性を有する合せガラス及びその製造方法を提供することができる。」(段落【0095】)

(2)当審からの拒絶の理由において刊行物2として引用した、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第00/18698号(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(サ)「1.可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、
前記合わせガラス用中間膜を厚さ2.0?4.0mmの2枚のガラスで挟み込んで合わせガラスを作製した後、前記合わせガラスを80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際の端辺からの白化距離が7mm以下であり、
前記合わせガラス用中間膜を150℃で1時間放置した際の重量減少が3重量%以下である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
2.可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜は、平均アセタール化度が66?72モル%のポリビニルアセタール100重量部と
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、オリゴエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びテトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤30?50重量部とからなる可塑化ポリビニルアセタール中に、
炭素数2?10のカルボン酸のマグネシウム塩及び炭素数2?100カルボン酸のカリウム塩からなる群より選択される少なくとも2種の塩が合計5ppm以上含有されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。」(請求の範囲 請求項1、2)
(シ)「少なくとも二枚のガラス板の間に可塑化ポリビニルアセタール樹脂からなる中間膜が挟着されてなる合わせガラスは、透明性や耐候性が良好で、しかも耐貫通性に優れ、ガラスの破片が飛散し難い等の合わせガラスに必要な基本性能を有しており、例えば、自動車や建築物の合わせガラス用として広く使用されている。」(明細書第1頁第10?13行)
(ス)「・・・合わせガラスとした際に、透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の優れた特性を有し、かつ、湿度の高い雰囲気下に置かれた場合でも合わせガラス周縁部に白化を起こすことが少なく、オートクレーブ時の火災や端部カット(トリムカット)性の問題が解決された合わせガラス用中間膜及びそれを用いた合わせガラスを提供することを目的とするものである。」(明細書第2頁第7?11行)

(3)当審からの拒絶の理由において刊行物3として引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平08-281860号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(タ)「【請求項1】 熱線遮蔽層および粘着剤層を有してなり、一面が粘着剤層からなることを特徴とする熱線遮蔽フィルム。
【請求項2】 上記粘着剤層が、熱線遮蔽層を兼ねていることを特徴とする請求項1記載の熱線遮蔽フィルム。」(特許請求の範囲 請求項1、2)
(チ)「【請求項9】 上記熱線遮蔽層が、熱線遮蔽性無機微粒子を含有してなることを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルム。」(特許請求の範囲 請求項9)
(ツ)「【請求項11】 上記熱線遮蔽性無機微粒子が、アンチモン含有酸化スズ微粒子であることを特徴とする請求項9記載の熱線遮蔽フィルム。
【請求項12】 上記熱線遮蔽性無機微粒子が、インジウム含有酸化スズ微粒子であることを特徴とする請求項9記載の熱線遮蔽フィルム。」(特許請求の範囲 請求項11、12)
(テ)「【従来の技術】建物の窓、乗物の窓、あるいは冷蔵、冷凍ショーケースの窓などにおいて、暑さの軽減、省エネルギー化を図るために、これらの窓に熱線(赤外線)を反射または吸収する性能を付与する方法が提案されている。・・・」(段落【0002】)
(ト)「【作用】本発明の熱線遮蔽フィルムは、熱線遮蔽層および粘着剤層を有してなり、一面が粘着剤層からなるものであるので、建物や乗物の窓ガラス等に貼着して好適に用いられ、熱線を遮蔽することができる。また本発明の熱線遮蔽フィルムを貼着することにより、窓ガラスが割れた時にガラスの破片が飛散するのを防止することができる。・・・」(段落【0007】)
(ナ)「本発明で用いられる粘着剤層3は透明樹脂粘着剤を用いて形成される。例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリイソブチル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等の樹脂を好ましく用いて形成される。粘着剤層3の厚さは、5?30μm程度とするのが好ましい。・・・」(段落【0010】)
(ニ)「本発明で用いられる熱線遮蔽性無機微粒子としては、導電性物質が用いられ、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)、硫化銅(CuS)のほか、導電性酸化物、導電性硫化物、導電性炭化物、導電性チッ化物等の微粒子を用いることができる。特に好ましいのはATO微粒子およびITO微粒子である。本実施例において、熱線遮蔽性無機微粒子はハードコート層1を形成する樹脂液に分散剤とともに均一に分散されて用いられる。ここで用いられる分散剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤が用いられる。これら分散剤の配合量は熱線遮蔽性無機微粒子に対して1?20重量%程度とするのが好ましい。」(段落【0012】)

4.対比、判断
(1)刊行物1に記載された発明
ア 刊行物1には、記載事項(ア)の請求項1に係る記載に「2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスにおいて、該中間膜層の中に・・・機能性超微粒子を分散せしめてなる・・・合せガラス」が記載されていることから、上記中間膜は「合わせガラス用」であることは明らかであり、また、同(ア)の請求項2に係る記載によれば、上記中間膜は「ポリビニルブチラール系樹脂」といえる。
イ そして、記載事項(イ)の「機能性超微粒子が、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 、Moの金属、酸化物、・・・あるいはSbやF のドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物」及び記載事項(オ)の「機能性超微粒子としては、例えばSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 等のほかMoなどの各種金属。例えばSnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3) 、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物。・・・例えば9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) 〔住友大阪セメント社製〕、F-SnO_(2)等のドープ物。さらに例えばSnO_(2)-10wt%Sb_(2)O_(3) 、In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO) 〔三菱マテリアル社製〕等の複合物である。・・・またATO やITO は自動車用としてその要件を備え特に好ましいものである。」の記載からみて、上記記載事項(ア)で特定された機能性超微粒子は、「SnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3) 、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物や9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)等の複合物からなる機能性超微粒子」であるといえる。加えて、これら機能性超微粒子は、同記載事項(オ)の「各単独もしくは複合物、混合物、被膜物として断熱性能、紫外線遮蔽性能、着色性能、遮光性等を適宜発現し、建築用や自動車用に求められる種々の機能性および性能を合せガラスとして発現せしめるためである」の記載からみて、断熱性能の発現をもたらすものと認められる。
ウ また、記載事項(キ)には、実施例1について、合わせガラスの〔光学特性〕として、波長340 ?1800nmの間の透過率を測定し、可視光透過率Tv(380?780nm)、日射透過率Ts(340?1800nm)を求め、〔くもり度〕として、ヘーズ値H を求め、〔電波透過性〕として、電界シールド効果測定器によって、電波10?1000MHzの範囲の反射損失値(dB)を通常の板厚3mm のクリアガラス(FL3t)単板品と対比し、その差の絶対値(△dB)が2dB以内を合格とすること、及び、実施例2において、上記Tvが76.5%、Tsが58.5%、Hが0.4 %の優れた光学特性ならびに電波透過性、品質等の各物性をバランスよく示す所期のものであったことが記載されている。ここで、実施例2において、電波透過性に関する具体的な物性値は記載されていないが、実施例2においても、実施例1と同様の測定及び評価が行われているのは明らかであって、実施例2において電波透過性について所期の特性を有している旨の記載より、実施例1と同様に電波10?1000MHzの範囲の△dBが2dB以内であると推認される。
エ さらに、上記記載事項(キ)の実施例2に関する記載には、「ATO(導電性アンチモン含有錫酸化物) 超微粒子分散含有3GH(トリエチレングリコ-ル -ジ- 2- エチルブチレ-ト) と通常の3GHをPVB(ポリビニルブチラール) 樹脂に添加」することも記載されている。そして、記載事項(カ)の「可塑剤としては、・・・トリエチレングリコール・ジ-2- エチルブチレート(3GH) ・・・などのポリエーテルエステル・・・が挙げられる。」の記載からみて、上記記載事項(キ)の3GHが可塑剤であることも明らかである。
オ よって、上記の記載事項を整理すると、刊行物1には可塑剤はポリエーテルエステルなら可であるとの記載もあることから、
「可塑剤であるポリエーテルエステルの3GHをポリビニルブチラール系樹脂に添加した樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスとしたときに、前記合わせガラスは、波長380?780nmでの可視光透過率Tvが76.5%、340?1800nmでの日射透過率Tsが58.5%、ヘイズHが0.4%、及び、KEC法測定(電界シールド効果測定器)によって、電波10?1000MHzの範囲の反射損失値(dB)を通常の板厚3mm のクリアガラス(FL3t)単板品と対比し、その差の絶対値(△dB)が2dB以内であり、断熱性能を発現せしめるSnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3 )、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物や9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)等の複合物からなる機能性超微粒子を分散せしめてなる合わせガラス用中間膜」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)一致点と相違点
ア 本願発明と刊行物1発明とを対比する。
イ 本願発明の「可塑化ポリビニルアセタール樹脂」について、本願明細書の記載をみてみると、その段落【0010】?【0011】には、「本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑化ポリビニルアセタール樹脂からなる。・・・例えば、・・・ポリビニルブチラール等が好適に用いられる。本発明の合わせガラス用中間膜に用いられる可塑化ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂が可塑剤により可塑化されたものである。上記可塑剤としては特に限定されず、・・・例えば・・・トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(3GH)等が好適に用いられる。」との記載がなされており、前記「可塑化ポリビニルアセタール樹脂」には、「3GHにより可塑化されたポリビニルブチラール樹脂」が含まれるといえる。ここで、3GHがポリエーテルエステルであること、ポリビニルブチラール樹脂がポリビニルブチラール系樹脂であることは明らかである。
一方、刊行物1発明の「可塑剤であるポリエーテルエステルの3GHをポリビニルブチラール系樹脂に添加した樹脂」は、「ポリエーテルエステルの3GHにより可塑化されたポリビニルブチラール系樹脂」と言い換えることができ、また、ポリビニルブチラール系樹脂がポリビニルアセタール樹脂に含まれることも明らかである。
そうすると、本願発明と刊行物1発明は、「可塑化ポリビニルブチラール系樹脂」が、「ポリエーテルエステルにより可塑化されたポリビニルブチラール系樹脂」という点で共通する。
ウ また、刊行物1発明の「断熱性能を発現せしめるSnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3) 、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物や9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)等の複合物からなる機能性超微粒子」は、断熱性能を発現するものであるから、熱線カット機能を有するものと認められ、「超微粒子」は、その大きさに特定はないから、本願発明の「微粒子」とみることができる。そして、本願明細書段落【0014】の「本発明の合わせガラス用中間膜に用いられる熱線カット機能を有する金属酸化物微粒子は、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫及びアルミニウムドープ酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の金属酸化物であることが好ましい。」との記載における「錫ドープ酸化インジウム」及び「アンチモンドープ酸化錫」が、それぞれ、刊行物1発明で記載された「In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)」及び「9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO)」と同一組成を有するものであることからも、刊行物1発明の「断熱性能を発現せしめるSnO_(2)、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、ZnO 、Fe_(2)O_(3) 、Al_(2)O_(3) 、FeO 、Cr_(2)O_(3) 、Co_(2)O_(3) 、CeO_(2)、In_(2)O_(3) 、NiO 、MnO 、CuO 等の各種酸化物や9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)等の複合物からなる機能性超微粒子」は、本願発明の「熱線カット機能を有する金属酸化物微粒子」に相当するものと認められる。
エ そして、刊行物1発明の「波長380?780nmでの可視光透過率Tvが76.5%、340?1800nmでの日射透過率Tsが58.5%、ヘイズHが0.4%」なる物性は、本願発明の「波長380?780nmでの可視光透過率Tvが75%以上、340?1800nmでの日射透過率Tsが60%以下、ヘイズHが1.0%以下」なる物性を満足するものである。また、刊行物1発明の「10?1000MHzでの電磁波シールド性能ΔdBが2dB以内」は、本願発明の「10?2000MHzでの電磁波シールド性能ΔdBが10dB以下」と電波透過性を有する点で共通している。
オ してみると、両者は、
「可塑化ポリビニルブチラール系樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、前記可塑化ポリビニルブチラール系樹脂が、ポリビニルブチラール系樹脂が可塑剤であるポリエーテルエステルにより可塑化されたものであり、合わせガラスとしたときに、前記合わせガラスは、波長380?780nmでの可視光透過率Tvが76.5%、340?1800nmでの日射透過率Tsが58.5%、ヘイズHが0.4%であり、電波透過性、熱線カット機能を有する金属酸化物微粒子を含有する合わせガラス用中間膜。」で一致し、次の点で相違する。

相違点a;本願発明は、「10?2000MHzでの電磁波シールド性能ΔdBが10dB以下」であるのに対して、刊行物1発明は、「KEC法測定(電界シールド効果測定器)によって、電波10?1000MHzの範囲の反射損失値(dB)を通常の板厚3mm のクリアガラス(FL3t)単板品と対比し、その差の絶対値(△dB)が2dB以内」である点
相違点b;本願発明は、合わせガラス中間膜が、「80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際に合わせガラス端辺からの白化距離が7mm以下」であるとの物性の特定があるのに対し、刊行物1発明は、かかる物性の特定がない点
相違点c;本願発明は、合わせガラス中間膜が、「リン酸エステルを含有する」との特定があるのに対し、刊行物1発明は、かかる特定がない点
相違点d:「可塑化ポリビニルアセタール樹脂」の可塑剤について、本願発明は「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」であるのに対し、刊行物1発明は「ポリエーテルエステル」である点

(3)相違点についての検討
ア 相違点aについて
刊行物1発明において、電波透過性が「KEC法測定(電界シールド効果測定器)によって、電波10?1000MHzの範囲の反射損失値(dB)を通常の板厚3mm のクリアガラス(FL3t)単板品と対比し、その差の絶対値(△dB)が2dB以内」のものを合格としている。ここで、「クリアガラス(FL3t)単板品」は「FL3t」の表記があることからフロートガラスの板厚3mmの単板であることは明らかである。
一方、本願明細書段落【0039】には「4)電磁波透過性
KEC法測定(電磁波シールド効果試験)に準拠し、10?2000MHzの範囲の反射損失値(dB)を、通常の板厚3mmのフロートガラス単板と比較して測定し、上記周波数の範囲での差の最大値をΔdBmaxとして評価した。」と記載されている。
してみると、両者は、板厚3mmのフロートガラス単板を用いて、KEC法測定によって電波透過性を測定している点で共通しているが、本願発明は、その実施例をみると「電界」と「磁界」の反射損失値を測定しているが、刊行物1発明は、電波すなわち電界のみの反射損失値を測定しており、測定対象が一致していない。
次に、刊行物1の記載をみてみると、記載事項(キ)に記載されているように、このΔdBの値は、「例えば80MHz(FMラジオ波帯) 、約520 ?1630KHz(AMラジオ波帯) 等特に通常単板ガラスと同等の電波透過性」(段落【0058】)を示すためのものであるが、当該合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスは、記載事項(ク)に記載されるように、「AM電波、FM電波TV電波帯等を通常のフロ-トガラス並の電波透過性能として車輌用のテレビ、ラジオ、携帯電話等のためのガラスアンテナ性能を確保でき、本来のガラスアンテナ性能を発揮させ」るものであり、記載事項(ウ)に記載されるように、「建築用ガラス」や「自動車用ウインドウガラス」として用いられるものであるから、刊行物1発明において、明言こそされていないが、携帯電話やカーナビゲーションシステムの周波数帯の電波を透過させるようにすることは自明の課題と認められる。
してみると、電波透過性の上限値を該携帯電話やカーナビゲーションシステムの周波数帯である2000MHzまで要求することは自然であり、一方、電界の反射損失値が小さくなれば、磁界の反射損失値も小さくなって、電磁波が透過しやすいことは技術常識といえるから、「10?2000MHzでの電磁波シールド性能ΔdBが10dB以下」とすることは、当業者にとって適宜なし得る設計事項である。

イ 相違点bについて
刊行物2には、その記載事項(シ)によれば、刊行物1発明と同様の用途である「自動車や建築物の合わせガラス用として広く使用され」るものであって、「透明性」や「耐候性」の向上を目的とした合わせガラス中間膜が記載され、このガラス中間膜は、その記載事項(サ)によれば、「可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、・・・80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際の端辺からの白化距離が7mm以下・・・である合わせガラス用」であることが記載されている。してみると、刊行物1発明においても、記載事項(キ)において光学特性やくもり度や耐湿性を評価しているように、透明性や耐候性の向上は当然要求されているものであるから、自動車や建築物の合わせガラス用として用いる際、該合わせガラスの透明性や耐候性を向上させるために、上記刊行物2に記載の「80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際の端辺からの白化距離が7mm以下」なる特性を持たせるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。

ウ 相違点cについて
刊行物3の記載事項(タ)?(ナ)には、ポリビニルブチラール樹脂に、刊行物1発明の「9wt%Sb_(2)O_(3)-SnO_(2)(ATO) In_(2)O_(3)-5wt%SnO_(2)(ITO)等の複合物からなる機能性超微粒子」と同じ組成を有する「アンチモン含有酸化スズ(ATO)」や「インジウム含有酸化スズ(ITO)」といった熱線遮断性無機微粒子を分散させる分散剤として「リン酸エステル塩」が用いられることが記載されている。
また、刊行物1には、記載事項(ア)に「機能性超微粒子を分散せしめてなる」と記載されているように、機能性超微粒子を樹脂中に積極的に分散させようとするものであり、合わせガラス中間膜としての光学特性やくもり度や電波透過性等の性能を考慮した場合、機能性超微粒子の分散形態にばらつきが生じれば、自ずとその中間膜自体の性能にもばらつきが生じることが予想されることを考慮すれば、上記の機能性超微粒子を均一に分散させることは当然の要請であるといえ、刊行物1の明細書の記載を参酌しても、分散剤を含有させることに対する阻害要因は見当たらない。
そして、液状で分散剤を用いるにあたり「リン酸エステル」を塩の形で用いることは一般的に行われていることであるから、刊行物1発明において分散剤として「リン酸エステル」を含有させることも、当業者であれば容易に想到し得るものである。

エ 相違点dについて
刊行物2の記載事項(サ)には、可塑化ポリビニルアセタール樹脂の可塑剤として、「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、オリゴエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びテトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤」が用いられることが記載されている。
ここで、刊行物2の記載事項(サ)に記載された「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」、「オリゴエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」、「テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート」はいずれも「ポリエーテルエステル」である。
そうすると、刊行物1発明において、可塑化ポリビニルアセタール樹脂の可塑剤として用いられる「ポリエーテルエステル」として、刊行物1に記載の可塑剤に換えて刊行物2に記載の「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、その実施例及び比較例には全て可塑剤として「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」が用いられており、他の可塑剤との比較もなんら行われていないことからみても、「可塑化ポリビニルアセタール樹脂の可塑剤」を「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」としたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。

5.審判請求人の主張についての検討
請求人は、平成24年10月1日付けの意見書において、「可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを用いるという本願発明の構成と、熱線カット機能を有する金属酸化物微粒子を分散させるために、分散剤としてリン酸エステルを用いるという本願発明の構成との双方を採用することに関する記載や示唆が何ら存在しない」なる主張をしている。
しかしながら、可塑剤として「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」を用いる点については、上記4.(3)エで述べたように当業者にとって容易であり、分散剤として「リン酸エステル」を用いることは、上記4.(3)ウで述べたように当業者にとって容易になし得ることである。
そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、「可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを用いる」ことと「分散剤としてリン酸エステルを用いる」ことを組み合わせたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が得られたものと認めることはできない。
よって、この主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-14 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2000-124470(P2000-124470)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤代 佳宮澤 尚之  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 國方 恭子
斉藤 信人
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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