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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G
管理番号 1284649
審判番号 不服2013-16143  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-21 
確定日 2014-02-25 
事件の表示 特願2010- 5566「電解コンデンサ用封口体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-146494、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年1月14日に出願したものであって、手続きの概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成25年 1月28日(起案日)
意見書 :平成25年 3月 7日
拒絶理由通知 :平成25年 4月15日(起案日)
意見書 :平成25年 6月19日
拒絶査定 :平成25年 7月 4日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 8月21日
手続補正 :平成25年 8月21日
審尋 :平成25年10月18日(起案日)
回答書 :平成25年12月11日

第2 平成25年8月21日付けの手続補正の適否

1.本件補正

平成25年8月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に、
「【請求項1】
電解コンデンサ用封口体であって、該封口体が主鎖にパーフルオロポリエーテル単位を有するパーフルオロ化合物をベースポリマーとする含フッ素ゴム組成物を架橋させて得られるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを貼り付けてなることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びメラミン樹脂のフィルムから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用封口体。
【請求項3】
上記パーフルオロ化合物の架橋サイトがSi-CH=CH2であり、上記含フッ素ゴム組成物の架橋システムが付加反応架橋又はパーオキサイド架橋のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用封口体。
【請求項4】
上記パーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴムが、
(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用封口体。
【請求項5】
上記(A)成分のアルケニル基含有パーフルオロ化合物が、下記一般式(1)
【化1】
(略)
[式中、Xは-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR-CO-(Yは
-CH2-、-Si(CH3)2CH2CH2CH2-又は下記構造式(Z)
【化2】
(略)
(o,m又はp位)で示される基)
で表される基、Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基、X’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR-Y’-(Y’は-CH2-、-CH2CH2CH2(CH3)2Si-又は下記構造式(Z’)
【化3】
(略)
(o,m又はp位)で示される基)
で表される基であり、Rは上記と同じである。aは独立に0又は1、Lは2?6の整数、b及びcはそれぞれ独立に0?200の整数である。]
で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ用封口体。」
とあったところを、

本件補正後、
「 【請求項1】
電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体であって、該封口体が、
(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを貼り付けてなることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びメラミン樹脂のフィルムから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用封口体。
【請求項3】
上記(A)成分のアルケニル基含有パーフルオロ化合物が、下記一般式(1)
【化1】
(略)
[式中、Xは-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR-CO-(Yは-CH2-、-Si(CH3)2CH2CH2CH2-又は下記構造式(Z)
【化2】
(略)
(o,m又はp位)で示される基)
で表される基、Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基、X’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR-Y’-(Y’は-CH2-、-CH2CH2CH2(CH3)2Si-又は下記構造式(Z’)
【化3】
(略)
(o,m又はp位)で示される基)
で表される基であり、Rは上記と同じである。aは独立に0又は1、Lは2?6の整数、b及びcはそれぞれ独立に0?200の整数である。]
で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用封口体。」
とするものである。

上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「電解コンデンサ」について「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ」と限定し、「主鎖にパーフルオロポリエーテル単位を有するパーフルオロ化合物をベースポリマーとする含フッ素ゴム組成物を架橋させて得られるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」について「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、(B)補強性フィラー、及び(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」と限定するとともに、補正前の請求項3、4を削除したものである。
本件補正は、請求項1について、発明特定事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとともに、補正前の請求項3、4について、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-273788号公報(平成19年10月18日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【請求項1】
電解コンデンサに用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムとポリエチレンナフタレートフィルムとが一体化された電解コンデンサ用封口体。」

(2)「【0001】
本発明は、電解コンデンサ用封口体及びこの封口体を用いた電解コンデンサの改良に関するものである。」

(3)「【0010】
そこで、本発明の目的は、高温雰囲気下での電解液の封口体部位での透過を低減するとともに、封口体の劣化を防止できる電解コンデンサ用封口体及び該封口体を用いた電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、上記の課題を解決した本発明の電解コンデンサ用封口体は、電解コンデンサに用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムとポリエチレンナフタレートフィルムとが一体化されたことを特徴としている。これによると、高温雰囲気下での電解液の封口体部位での透過を防ぎ、且つ封口体自体の劣化がない電解コンデンサ用封口体を提供できる。」

(4)「【0017】
封口体5は、弾性ゴム6と、ポリエチレンナフタレートフィルム7とからなり、弾性ゴム6とポリエチレンナフタレートフィルム7が積層されて一体化されている。弾性ゴム6の表面をアラミドフィルム7にて被覆する、また弾性ゴム内にアラミドフィルム7を積層させることもできる。具体的には、図2の(a)に示すように、ポリエチレンナフタレートフィルム7を弾性ゴム6の内側、すなわち、電解コンデンサ1に封口体5を装着した場合、コンデンサの内部側に面した弾性ゴム6の面(図示下面側)に形成しても良く、あるいは、図2の(b)に示すように外側、すなわち、電解コンデンサ1に封口体5を装着した場合コンデンサの外部側に面した弾性ゴム6の面(図示上面側)に形成しても良い。更に、電解液の透過をよりいっそう防止するためには、図2の(c)に示すように弾性ゴム6の外側面及び内側面の両方にポリエチレンナフタレートフィルム7を形成しても良く、また更に、図3の(d)に示すように外側面、内側面に加え、弾性ゴム6の側壁に設け、弾性体の表面全域にポリエチレンナフタレートフィルム7を形成しても良い。また、図3の(e)に示すように弾性ゴム6内にポリエチレンナフタレートフィルム7を内在するように積層しても良い。この場合、図3の(f)に示すようにポリエチレンナフタレートフィルム7は平坦状であってもよいが、封口体5のコンデンサ素子側に向かって傾斜するすり鉢状などの凸形状とすると封口体5自体の強度が上がるため好ましい。また更に、 図示しないがリード孔11の内壁面にもポリエチレンナフタレートフィルム7を形成すると電解液の透過防止の効果がより得られる。その他、上記の弾性ゴム6とポリエチレンナフタレートフィルム7の一体化の形態を組み合わせることもできる。例えば、図4の(g)に示すように、前述の図2の(b)のコンデンサの外部側に面した弾性ゴム6の面にポリエチレンナフタレートフィルム7を形成し、更に図3の(e)の弾性ゴム6内にポリエチレンナフタレートフィルム7を内在する様に積層したものを用いても良い。」

(5)「【0019】
弾性ゴム6としては、エチレンプロピレンターポリマー(EPDM)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR:通称ブチルゴム)及びブタジエンスチレンゴム(SBR)などがあげられるが、ポリエチレンナフタレートフィルム7との密着性からブチルゴム又はEPDMが好ましい。」

(6)「【0026】
(実施例1)
厚さ0.5mmの未加硫ゴム(ブチルゴム)を2枚積層し、その上に厚さ15μmで二軸延伸されたポリエチレンナフタレートフィルムを配し、更に厚さ0.5mmの未加硫ゴム(ブチルゴム)を2枚積層し、更に厚さ50μmのエチレンテトラフルオロエチレンフィルムを積層し、積層体を形成する。ポリエチレンナフタレートフィルム及びエチレンテトラフルオロエチレンには、スパッタエッチング処理及びプラズマ放電処理が予め施されている。この積層体を成型金型上に配置し、成型プレス型にて加圧及び加熱して該未加硫ゴムを加硫させるとともにポリエチレンナフタレートフィルム及びエチレンテトラフルオロエチレンと一体化せしめ、封口体を形成した。エチレングリコールとスルホランを含む電解液を用い、コンデンサ素子をアルミニウムからなる外装ケースに収納するとともに、この開口部をエチレンテトラフルオロエチレンがコンデンサ外部側の面にくるように前記封口体を用いて封止して電解コンデンサを作成した。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)引用例1には、「電解コンデンサに用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムとポリエチレンナフタレートフィルムとが一体化された電解コンデンサ用封口体。」が記載されている(摘示事項(1)、(3))。

(b)「弾性ゴム」と「ポリエチレンナフタレートフィルム」が積層されて一体化されている。具体的には、「ポリエチレンナフタレートフィルム」を「弾性ゴム」の「上面側」及び/又は「下面側」に形成する(摘示事項(4))。

(c)「電解コンデンサ」には、「エチレングリコールとスルホランを含む電解液を用い」る(摘示事項(6))。

以上を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

「エチレングリコールとスルホランを含む電解液を用いる電解コンデンサに用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムとポリエチレンナフタレートフィルムとが積層されて一体化され、ポリエチレンナフタレートフィルムを弾性ゴムの上面側及び/又は下面側に形成した電解コンデンサ用封口体。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-109881号公報(平成15年4月11日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(7)「【請求項1】 電解コンデンサの封口に用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムにポリフェニレンサルファイドフィルムを接合させることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。」

(8)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電解コンデンサの封口体に係り、封口体は弾性ゴムにポリフェニレンサルファイドフィルムを接合させることにより耐熱性および物性の良好な電解コンデンサ用封口体に関する。」

(9)「【0011】本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の1つは前記の封口体よりも更に耐熱性が良好で高温でも長寿命とすることができる電解コンデンサ用封口体およびその製造方法を提供することにある。
【0012】さらに他の目的として、電解液の封口部位での透過性を低減させて電解コンデンサの性能劣化を防止するとともに、封口体と空気との接触を遮断して封口体のひび割れや硬化を防止する電解コンデンサ用封口体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため、本発明に係る電解コンデンサ用封口体は、電解コンデンサの封口に用いられる封口体であって、弾性ゴムにポリフェニレンサルファイドフィルムを接合させてなることを特徴とする。
【0014】さらに、ポリフェニレンサルファイドフィルムは弾性ゴムの片面および両面に接合可能である。」

(10)「【0016】さらに、ポリフェニレンサルファイドフィルムは、サンドペーパー粗化及びプラズマ処理による表面処理を行なった後に接着剤を塗布することにより、加硫後の弾性ゴムと接合を行なうこともできる。」

(11)「【0026】本発明に係る弾性ゴムは、従来の封口体に使用するゴム素材でよいが、有機過酸化物加硫が可能なエチレンプロピレンジエンゴム、部分架橋ブチルゴム、樹脂加硫ブチルゴムのいずれかから構成される。【0027】本発明の封口体は、電解コンデンサ(図4)を封止するものであり、その構造については、図1に示すような各種構造16が可能である。この図1において、弾性ゴムを1とし、ポリフェニレンサルファイドフィルムを2とする。このように、ポリフェニレンサルファイドフィルム2は、弾性ゴム1の片面および両面に接着可能である。また、このポリフェニレンサルファイドフィルムの厚みが厚いほどゴムの劣化が抑えられるが、好ましくはポリフェニレンサルファイドフィルムの厚さは25?100μが適している。」

(12)「【0038】GBL透過試験
上記実施例1および3、比較例1および2の各封口体に対して、γ-ブチロラクトン(GBL)系電解液の透過量を経持的に計測した結果を示した結果を図3に示す。ここで、試験条件は共に、105℃、2000時間である。実施例1の封口体のGBL透過量変化は、■のプロットを示し、実施例3は、▲のプロットを示す。比較例1は、●のプロットを示し、比較例2は、○のプロットを示す。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(d)引用例2には、「電解コンデンサの封口に用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムにポリフェニレンサルファイドフィルムを接合させることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。」が記載されている(摘示事項(7)、(9))。

(e)ポリフェニレンサルファイドフィルムは弾性ゴムの上面及び/又は下面に接合する(摘示事項(9)、(11)、図1)。

(f)ポリフェニレンサルファイドフィルムは、接着剤を塗布することにより、弾性ゴムと接合を行なう(摘示事項(10))。

(g)「電解液」として「γ-ブチロラクトン(GBL)」を用いる(摘示事項(12))。

以上を総合勘案すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

「電解液としてγ-ブチロラクトン(GBL)を用いる電解コンデンサの封口に用いられる封口体であって、封口体を構成する弾性ゴムの上面及び/又は下面にポリフェニレンサルファイドフィルムを接着剤により接合させることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-312486号公報(平成6年11月8日公開、以下「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(13)「【請求項1】 フッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体であり、前記フッ素樹脂フィルムが架橋されていることを特徴とする積層体。」

(14)「【請求項3】 コンデンサ素子を内装したケースの開口部を架橋されたフッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体により封止したことを特徴とする電解コンデンサ。」

(15)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は架橋されたフッ素樹脂フィルムとゴムとの積層体、その積層体を用いた電解コンデンサ、あるいは液体(医薬液や化学液)容器用栓に関する。
【0002】
【従来の技術】電解コンデンサの封口や液体容器用栓としてフッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体を用いることは既に知られている。」

(16)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記電解コンデンサや医薬用ゴム栓はゴム層とフッ素樹脂との積層体によりγ-ブチルラクトン、ジメチルホルムアミド等の電解液や医薬液の透過漏出を阻止しようとするものであるが、例えばETFEはこれらの液により膨潤する傾向があり、その電解液透過阻止性能は未だ満足すべきものではない。」

(17)「【0007】即ち、本発明はフッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体であり、前記フッ素樹脂フィルムが架橋されていることを特徴とする積層体に関するものである。」

(18)「【0011】一方、フッ素樹脂フィルムと積層されるゴム層は特に限定されず、例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンターポリマー(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム等の合成ゴムあるいは天然ゴムのいずれも用いることができる。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(h)引用例3には、電解コンデンサの封口に用いるフッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体であり、フッ素樹脂フィルムが架橋されている積層体が記載されている(摘示事項(13)ないし(15)、(17))。

(i)電解液としてγ-ブチルラクトンを用いる(摘示事項(16))。

(j)ゴム層の下面にフッ素樹脂フィルムが積層される(図1、図2)。

以上を総合勘案すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。

「電解液としてγ-ブチルラクトンを用いる電解コンデンサの封口に用いるフッ素樹脂フィルムとゴム層との積層体であり、フッ素樹脂フィルムが架橋され、ゴム層の下面にフッ素樹脂フィルムが積層されている積層体。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-126554号公報(平成17年5月19日公開、以下「引用例4」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(19)「【請求項1】
(A)1分子中に、少なくとも2個のアルケニル基と、パーフルオロアルキレンポリエーテル構造とを有するパーフルオロポリエーテル系化合物、
(B)下記一般式(a):
H(R1)2SiO- (a)
[式中、R1は独立にアルケニル基以外の非置換または置換の1価炭化水素基である]
で表されるジオルガノハイドロジェンシロキシ基、
下記一般式(b):
H(R1)2SiCH2- (b)
[式中、R1は前記一般式(a)に関して定義のとおりである]
で表されるジオルガノハイドロジェンシルメチレン基、
または、これら両方の基、
をケイ素原子に結合した状態で1分子中に少なくとも2個有するシロキサン系化合物、
(C)白金系触媒、
(D)亜リン酸トリエステル系化合物: 該成分中のリン原子の量が、前記(C)成分中に含まれる白金金属原子1モルに対して2モル以上となる量、および
(E)有機過酸化物: 該成分中の-OO-結合の量が、前記(D)成分中に含まれるリン原子1モルに対して2モル以上となる量
を含有して成ることを特徴とする硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物。」

(20)「【請求項14】
請求項1?4の何れか1項に記載の硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物を用いる、テント膜材料、シーラント、被覆材、電気用防湿コーティング材、燃料電池用シール材、および積層ゴム布材料から選ばれる材料。」

(21)「【0010】
本明細書において、前記パーフルオロアルキレンポリエーテル構造とは、下式(e):
-ChF2hO- (e)
(hは1?6、好ましくは1?3の整数である)
で表される繰り返し単位を、1種単独で、またはその2種以上を含み、下式(f):
-(ChF2hO)q-ChF2h- (f)
(式中、hは独立に1?6、好ましくは1?3の整数であり、qは1?500、好ましくは2?400、より好ましくは 10?200の整数である)
で表される構造、または下式(g):
-ChF2h-(OChF2h)m-O(CF2)rO-(ChF2hO)n-ChF2h- (g)
(式中、hは独立に1?6、好ましくは1?3の整数であり、rは2?6、好ましくは2?4の整数であり、mおよびnは各々0?200、好ましくは5?150、より好ましくは 10?100の整数であり、m+nの和は、0?400、好ましくは 10?300、より好ましくは 20?200の整数である)
で表される構造を意味する。」

(22)「【0014】
(A)成分のパーフルオロポリエーテル系化合物中におけるアルケニル基の結合部位は特に限定されないが、前記パーフルオロアルキレンポリエーテル構造の両末端に結合していることが好ましい。また、アルケニル基は、前記構造の両末端に直接結合していてもよいし、2価の連結基を介して間接的に結合していてもよい。前記2価の連結基としては、例えば、下記のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、下記式中に“*”の記載があるものは、アルケニル基が下記2価の連結基の“*”で示した側に結合することを意味する。」

(23)「【0026】
[(B)成分]
本発明組成物の(B)成分は、
下記一般式(a):
H(R1)2SiO- (a)
[式中、R1は独立にアルケニル基以外の非置換または置換の1価炭化水素基である]
で表されるジオルガノハイドロジェンシロキシ基、
下記一般式(b):
H(R1)2SiCH2- (b)
[式中、R1は前記一般式(a)に関して定義のとおりである]
で表されるジオルガノハイドロジェンシルメチレン基、
または、これら両方の基、
をケイ素原子に結合した状態で1分子中に少なくとも2個有するシロキサン系化合物である。
この(B)成分は、後記(C)成分の白金系触媒のヒドロシリル化反応促進作用により、上記(A)成分の架橋剤として作用し、3次元網状構造の硬化物を与える成分である。」

(24)「【0048】
また、この(B)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH)の量が、通常、0.2?5モル、好ましくは 0.5?2モルとなる量とするのがよい。前記SiHの量が少なすぎると架橋度合いが不充分になる場合があり、多すぎると鎖長延長が優先し、硬化が不充分となったり、発泡したり、得られる硬化物の耐熱性、圧縮永久歪み特性等が悪化する場合がある。
【0049】
[(C)成分]
本発明組成物の(C)成分の白金系触媒は、上記(A)成分中のアルケニル基と上記(B)中のSiHとの付加反応を促進し、本発明組成物の硬化物を得るために配合される周知の成分である。
この(C)成分としては、例えば、下記一般式(2):」

(25)「【0075】
また、本発明組成物には、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒユームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;および、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤を配合してもよい。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。」

(26)「【0078】
本発明組成物を加熱処理して硬化させることにより、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐薬品性、耐溶剤性等に優れた所望形状のゴム状乃至ゲル状の硬化物を得ることができる。硬化条件としては、例えば、80?180℃の温度で、5?60分間程度とすればよい。」

上記摘示事項の記載から以下のことがいえる。

(k)引用例4には、
(A)1分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキレンポリエーテル構造を有するパーフルオロポリエーテル系化合物(摘示事項(19)、(21)、(22))、
(B)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量(摘示事項(19)、(23)、(24))、及び
フィラー(摘示事項(19)、(25))
を含有して成る硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物を硬化させたゴム状の硬化物(摘示事項(19)、(26))
が記載されている。

以上を総合勘案すると、引用例4には、次の技術的事項が記載されているものと認める。

「(A)1分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキレンポリエーテル構造を有するパーフルオロポリエーテル系化合物、
(B)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量、及び
フィラー
を含有して成る硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物を硬化させたゴム状の硬化物。」

3.対比

そこで、本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(1)電解コンデンサ用封口体
本件補正発明と引用発明1とは、「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体」である点で一致する。

(2)ゴム
本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明1の「弾性ゴム」は、そのような特定がない点で相違する。

(3)樹脂フィルム
引用発明1の「ポリエチレンナフタレートフィルム」は「樹脂フィルム」といえるから、本件補正発明と引用発明1とは、「ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを積層してなる」点で一致し、「積層」の形態が、本件補正発明は、「貼り付け」であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点で相違する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体であって、該封口体が、ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを積層してなる電解コンデンサ用封口体。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(1)本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明1の「弾性ゴム」は、そのような特定がない点。

(2)「積層」の形態が、本件補正発明は、「貼り付け」であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。

次に、本件補正発明と引用発明2とを対比する。

(1)電解コンデンサ用封口体
本件補正発明と引用発明2とは、「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体」である点で一致する。

(2)ゴム
本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明2の「弾性ゴム」は、そのような特定がない点で相違する。

(3)樹脂フィルム
引用発明2の「ポリフェニレンサルファイドフィルム」は「樹脂フィルム」といえ、「接着剤により接合させる」は、「貼り付けてなる」といえるから、本件補正発明と引用発明2とは、「ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを貼り付けてなる」点で一致する。

そうすると、本件補正発明と引用発明2とは、次の点で一致する。

<一致点>

「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体であって、該封口体が、ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを貼り付けてなる電解コンデンサ用封口体。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(3)本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明2の「弾性ゴム」は、そのような特定がない点。

次に、本件補正発明と引用発明3とを対比する。

(1)電解コンデンサ用封口体
引用発明の「封口に用いる積層体」は、「封口体」といえるから、本件補正発明と引用発明3とは、「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体」である点で一致する。

(2)ゴム
本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明3の「ゴム層」は、そのような特定がない点で相違する。

(3)樹脂フィルム
引用発明3の「フッ素樹脂フィルム」は「樹脂フィルム」に含まれるから、本件補正発明と引用発明3とは、「ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを積層してなる」点で一致し、「積層」の形態が、本件補正発明は、「貼り付け」であるのに対し、引用発明3は、そのような特定がない点で相違する。

そうすると、本件補正発明と引用発明3とは、次の点で一致する。

<一致点>

「電解液としてエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンを用いる電解コンデンサ用封口体であって、該封口体が、ゴムの上面及び/又は下面に樹脂フィルムを積層してなる電解コンデンサ用封口体。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(4)本件補正発明の「ゴム」が、
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」
であるのに対し、引用発明3の「ゴム層」は、そのような特定がない点。

(5)「積層」の形態が、本件補正発明は、「貼り付け」であるのに対し、引用発明3は、そのような特定がない点。

4.判断

そこで、本件補正発明と引用発明1との相違点である上記相違点(1)について検討する。

引用例4に記載された
「(A)1分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキレンポリエーテル構造を有するパーフルオロポリエーテル系化合物、
(B)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量、及び
フィラー
を含有して成る硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物を硬化させたゴム状の硬化物。」
は、本件補正発明の
「(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するアルケニル基含有パーフルオロ化合物、
(B)補強性フィラー、及び
(C)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(A)成分を硬化させるのに十分な量
を含有する架橋性フッ素ゴム組成物を硬化させてなるパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム」と同じものである。
しかしながら、引用例4には、「硬化性パーフルオロポリエーテル系組成物」の用途として、「燃料電池用シール材」(摘示事項(20))は記載されているものの、「電解コンデンサ用封口体」は記載されていない。
そして、燃料電池および電解コンデンサの封口体として用いられるフッ素ゴムがあるとしても、燃料電池の封口体と電解コンデンサの封口体とでは、シールするべき対象化合物が異なるとともに、フッ素ゴムもその組成により特性が異なる。
そうすると、引用例4に記載された上記「ゴム状の硬化物」を、引用発明の「電解コンデンサ用封口体」に適用する動機付けがあるとはいえず、相違点(1)の克服は困難である。

ましてや、相違点(1)、(2)をともに克服することが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

本件補正発明と引用発明2との相違点である上記相違点(3)は、本件補正発明と引用発明1との相違点である上記相違点(1)と同じである。相違点(3)についての判断も、相違点(1)についての上記判断と同じである。
したがって、本件補正発明は、引用例2に記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

本件補正発明と引用発明3との相違点である上記相違点(4)は、本件補正発明と引用発明1との相違点である上記相違点(1)と同じである。相違点(4)についての判断も、相違点(1)についての上記判断と同じである。
したがって、本件補正発明は、引用例3に記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

補正後の請求項2、3は、補正後の請求項1を直接若しくは間接に引用する請求項であるから、補正後の請求項2、3に係る発明も、本件補正発明と同様に、引用例1ないし3のいずれかに記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たす。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たす。

第3 本願発明について

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たすから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-12 
出願番号 特願2010-5566(P2010-5566)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01G)
P 1 8・ 575- WY (H01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山澤 宏  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 関谷 隆一
乾 雅浩
発明の名称 電解コンデンサ用封口体  
代理人 正木 克彦  
代理人 石川 武史  
代理人 小島 隆司  
代理人 重松 沙織  
代理人 小林 克成  

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