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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1284683 |
審判番号 | 不服2012-5649 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-03-27 |
確定日 | 2014-02-13 |
事件の表示 | 特願2006-190910「医療支援システム、及び医療支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月31日出願公開、特開2008- 21041〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成18年7月11日の出願であって,平成23年5月18日付けの拒絶理由通知に対して,平成23年7月6日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成23年12月22日付けの拒絶査定に対して平成24年3月27日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年10月10日付けで当審の審尋がなされ,平成24年12月13日に回答書が提出され,平成25年4月26日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成25年7月1日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年7月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「患者の疾病に係る情報や該患者の年齢や性別を含む患者情報を基に,各患者に対応した電子カルテを作成する電子カルテ作成手段と,前記電子カルテを表示する表示手段と,前記電子カルテ作成手段において作成された複数の前記電子カルテを格納する電子カルテ格納手段とを備える医療支援システムであって, 前記電子カルテ作成手段は,前記電子カルテの所見欄の指定された情報部分にその内容に応じて指定された記号を付して,前記電子カルテを生成する構成であり,さらに,複数の前記電子カルテから所望の電子カルテを検索する検索条件,及び前記所望の電子カルテに含まれる情報の中から所定の項目の情報を抽出し,前記記号に対応する前記情報部分を抽出する抽出条件を入力する操作手段と, 前記電子カルテ格納手段に格納された前記複数の電子カルテから,前記検索条件に一致する前記所望の電子カルテを複数の患者にまたがり検索し,検索された前記所望の電子カルテから前記抽出条件に含まれる前記所定の項目に一致する項目の情報を,及び検索された前記所望の電子カルテが有する所見欄に記載のテキストデータから前記抽出条件に含まれる記号に一致する記号に対応する前記情報部分を抽出する抽出手段と, 抽出された前記所定の項目の情報を分類するために,抽出された前記所定の項目の情報及び前記記号に対応する情報部分を基に分類条件を設定する条件設定手段と, 前記設定した分類条件に基づき前記所定の項目の情報を分類し集計することにより,疾病の情報を前記表示手段に表示させる集計手段と, を備えることを特徴とする医療支援システム。」 第3 当審における拒絶の理由について 当審における平成25年4月26日付けで通知した拒絶理由の「【理由2】進歩性について。」の概要は,以下のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <<引用文献等一覧>> 引用例1:特開2005-316850号公報 引用例2:”医療情報システム最新ガイド”,月刊新医療 7月号 第31巻第7号,株式会社エム・イー振興協会,2004年7月1日,p.125-136 引用例3:特開2005-025277号公報 (以下略)」 第4 当審の判断 1.各引用例にいて (1)引用例1について。 当審の拒絶理由通知で引用した引用例1には,以下のことが記載されている。なお,下線は当審で付加したものである。 (以下「引用例1摘記事項」という。) (ア)「【技術分野】【0001】本発明は,患者のカルテ情報を診療データ検索装置に関するものである。」 (イ)「【0012】 図1は,本実施形態に係る診療データ検索装置の概略を示すブロック図である。この診療データ検索装置は,表示部1,入力部2,記憶部3,及び,診療データ抽出部4を備える。 【0013】 表示部1には,液晶ディスプレイ等が使用できる。表示部1には,図2に示す調査画面5を表示可能である。調査画面5は,調査名欄6,対象期間欄7,調査条件欄8,検索結果欄9の各欄と,新規調査ボタン10,調査一覧ボタン11,調査条件ボタン12,カルテボタン13,患者情報ボタン14,エクスポートボタン15,発行ボタン16の各ボタンとを備えている。 【0014】 新規調査ボタン10は,新規に検索インデックスと検索条件式とを関連付けて登録する場合に利用する。新規調査ボタン10をクリック操作すると,図3に示す調査条件登録画面17が表示される。調査条件登録画面17では,調査名入力欄18,対象期間入力欄19,医薬品名/傷病名入力欄20の各欄と,検索ボタン21,条件コピーボタン22,登録ボタン23等の各ボタンとを備えている。調査名入力欄18には,オペレータが希望する種々の文字を入力することが可能である。対象期間入力欄19では,後述する記憶部3に記憶した診療データを検索する際の対象となる期間を入力する。医薬品名/傷病名入力欄20では,タブキーにより医薬品名と傷病名のいずれか一方の表示に切替可能である。検索ボタン21は,医薬品名/傷病名入力欄20のタブキーで選択したいずれか一方の検索に利用する。医薬品名/傷病名入力欄20で,記憶にある文字を入力し,検索ボタン21をクリック操作すると,その文字が含まれる医薬品名あるいは傷病名が一覧表示される。これにより,一覧表示された中から該当するものを選択することができる。条件コピーボタン22をクリック操作すると,調査一覧画面24が表示され,一覧表示された中から所望の検索条件式をコピーすることが可能である。」 (ウ)「【0015】 調査一覧ボタン11は,既に登録済みの検索インデックスと検索条件式を呼び出すために利用される。調査一覧ボタン11をクリック操作すると,図4に示す調査一覧画面24が表示される。調査一覧画面24には,調査条件登録画面17で登録した調査名及び対象期間が一覧表示される。調査名には,前述の通り,オペレータが希望する文字,例えば,文章等が表示される。図4の例では,調査名として「ロキソニン錠を処方された患者の一覧(平成16年4月)」が登録されており,登録した文章そのものが表示される。したがって,オペレータはどのような検索条件式であったのかを即座に判断することができ,時間経過後も容易に思い出すことが可能となる。 【0016】 調査条件ボタン12は,検索対象をさらに絞り込むために利用される。すなわち,図5に示す調査一覧画面24を表示させた状態で,選択ボタン25をクリック操作することにより,あるいは,図6に示すように,調査画面5に検索結果を表示させた状態で,調査条件ボタン12をクリック操作することにより,さらに検索対象を絞り込むことが可能である。すなわち,前記クリック操作により,図5に示す調査条件表示画面26に切り替わる。調査条件表示画面26では,既に設定された検索条件式として,調査名と対象期間とが表示されており,医薬品名/傷病名欄20が空欄となっている。そこで,医薬品名あるいは傷病名を入力し,検索ボタン21をクリック操作すれば,検索対象をさらに絞り込むことができる。そして,更新ボタン27を操作すれば,絞込検索で設定された検索条件式を登録することが可能である。」 (エ)「【0017】 入力部2には,キーボード,マウスのほか,前記表示部1をタッチパネルで構成したもの等,種々の入力手段が使用できる。 【0018】 記憶部3には,診療データテーブル28,条件式データテーブル29,医薬品データテーブル30,傷病名データテーブル31等が格納されている。 【0019】 診療データテーブル28は,患者のカルテ情報(カルテに書き込まれた内容)や,患者の住所等の患者情報等が記憶されている。 【0020】 条件式データテーブル29は,図7に示すように,調査コード,調査名,調査期間,調査条件,検索データベース等で構成されている。調査コードには,シリアルナンバーが自動付与される。調査名には,前記入力部2によって入力された文章等が記憶される。調査期間は,調査の開始日と終了日とで構成されている。調査条件には,医薬品で検索するのか,あるいは,傷病名で検索するのかによって種類の異なるコード番号が使用される。例えば,傷病名の場合,ICD10コード(世界保健機構(WHO)により定められた「疾病及び関係保健問題の国際統計分類第10回修正」(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, Tenth Revison))が使用可能である。」 (オ)「【0022】 診療データ抽出部4は,前記表示部1に表示された調査条件登録画面17,あるいは, 調査一覧画面24での入力により,前記記憶部3に記憶した診療データテーブル28を検索し,該当するデータを調査結果として,図6に示すように,調査画面5に一覧表示させる。 【0023】 次に,前記構成からなる診療データ検索装置の動作について,図10乃至図12のフローチャートに従って説明する。 【0024】 まず,図2に示す調査画面で,選択される検索条件,すなわち新規登録ボタン10又は調査一覧ボタン11のいずれが選択されたのかに基づいて(ステップS1),図3に示す調査条件登録画面17で新規登録する新規登録処理を実行するか(ステップS2),あるいは,図4に示す調査一覧画面24で登録済みの検索条件式を呼び出す呼出処理を実行する(ステップS3)。これにより,検索条件式が決定される。そこで,調査条件登録画面17又は調査条件表示画面26で,検索ボタン21が操作されると,決定された検索条件式に基づいて,検索を実行する(ステップS4)。そして,検索結果を,図6に示すように,調査画面5に表示させる(ステップS5)。 【0025】 なお,調査画面5では,特定の患者を選択した状態で,カルテボタン13,患者情報ボタン14,エクスポートボタン15,発行ボタン16のうちのいずれのボタンが操作されたのかに基づいて(ステップS6),該当する処理を行う。すなわち,カルテボタン13がクリック操作されると,カルテの内容を別ウィンドウでポップアップ表示する(ステップS7)。また,患者情報ボタン14がクリック操作されると,患者の住所等の患者情報を別ウィンドウでポップアップ表示する(ステップS8)。また,エクスポートボタン15がクリック操作されると,検索結果をCSV形式で出力する(ステップS9)。さらに,発行ボタン16がクリック操作されると,検索結果をプリンターで印刷する(ステップS12)。」 (カ)「【0029】 具体的に,コピー機能を利用する例について説明する。図8に示すように,調査名「ロキソニン錠とタミフルカプセルを処方した患者さん一覧」を再利用する場合,調査一覧画面24で,この調査名を選択すると,その内容が仮の記憶領域に登録され,調査条件登録画面17に,検索条件式として医薬品名と調査期間とが表示される。ここで,調査条件登録画面17で,タミフルカプセルをPL顆粒に変更すると,図9に示すように,調査条件2のコード番号が変更されるので,登録ボタン23をクリック操作すると,図7に示すように,条件式データテーブル29に登録され,新たに調査コードが付与される。 【0030】 前記ステップS2の呼出処理では,調査一覧画面24に一覧表示された調査名から該当するものがクリック操作(選択)されると(ステップS21),操作された行を反転表示する(ステップS22)。そして,選択ボタン25が操作されると(ステップS23),調査条件表示画面26を表示する(ステップS24)。調査条件表示画面26では,医薬品名/傷病名欄が空欄となっており,タブキーを操作することにより,医薬品名又は傷病名を入力することができる。新たに設定した医薬品名又は傷病名は,前記ステップS21で選択した検索条件式に追加される。 【0031】 これにより,設定した検索条件式で検索した結果をさらに絞り込んで,所望のデータを表示させることが可能となる。」 (キ)図7には,条件式データテーブル29であって,「調査コード1」には,「調査名」が「感冒と気管支炎が診断されている患者さん一覧」であって,「調査期間From」が「20040401であり」,「調査期間To」が「20050331」であり,「調査条件1」が「J00」,「調査条件2」が「J40」であることが記載されている。 (ク)図8と図9には,上記(カ)のコピー機能の説明であって,「図8」の「調査コード2」の,所定の調査期間に「ロキソニン錠とタミフルカプセルを処方した患者さん一覧」の「調査条件1」が「1149019F1021」であり,「調査条件2」が「62500021M1027」であるところ,これをコピーして,「図9」の「レコード3」の,所定の期間内に「ロキソニン錠とPL顆粒を処方した患者さん一覧」の「調査条件1」が「1149019F1021」であり,「調査条件2」が「1180107D1026」である「調査コード3」が新たに検索できるようになることが記載されている。 (2)引用例1発明について。 まず,引用例1の摘記事項の(ア),(イ),(エ),(オ),(キ)に係る事項は,検索条件を設定して患者カルテ情報を検索し,検索した患者のカルテ内容を表示し,患者情報を表示し,又は検索結果をCSV出力するものであり,さらに,引用例1の摘記事項(ウ),(カ),(ク)に係る事項は,既に登録済みの検索条件からさらに検索対象を絞り込み,又はコピー機能を利用して検索を行うものである。 ここで,まず,(キ)の調査に係るものであって,患者カルテ情報を検索してカルテ内容を表示し,患者情報を表示し,又は検索結果をCSV出力をすることを整理し,さらに,(ク)の調査に係るものであって既に登録済みの検索条件式からさらに検索対象を絞り込み,又はコピー機能を利用して検索を行うことを整理すれば,引用例1には,以下の発明が開示されている。 (以下「引用例1発明」という。) 「表示部1,入力部2,記憶部3,及び,診療データ抽出部4を備える診療データ検索装置であって, 表示部1の調査画面5は,調査名欄6,対象期間欄7,調査条件欄8,検索結果欄9の各欄と,新規調査ボタン10の各ボタンとを備え, 新規調査ボタン10をクリック操作すると,調査名入力欄18,対象期間入力欄19,医薬品名/傷病名入力欄20の各欄と,検索ボタン21とからなる調査条件登録画面17が表示され,対象期間入力欄19には診療データを検索する際の対象となる期間を入力し,医薬品名/傷病名入力欄20で文字を入力し,検索ボタン21をクリック操作すると,その文字が含まれる医薬品名あるいは傷病名が一覧表示され,一覧表示された中から該当するものを選択することができるものであり, 診療データテーブル28は,カルテに書き込まれた内容である患者のカルテ情報や,患者の住所等の患者情報等が記憶され,条件式データテーブル29は調査期間,調査条件等で構成され,調査期間は,調査の開始日と終了日とで構成され,調査条件には,医薬品での検索,傷病名での検索によりそれぞれのコード番号が使用され, まず,調査名が「感冒と気管支炎が診断されている患者さん一覧」であって,「調査期間」の「From」が「20040401であり」,「To」が「20050331」であり,「調査条件1」が「J00」,「調査条件2」が「J40」である調査条件では,診療データ抽出部4は,調査条件登録画面17の入力により,記憶部3に記憶した診療データテーブル28を検索し,該当するデータを調査結果として,調査画面5に一覧表示し,調査画面5では,特定の患者を選択した状態で,カルテボタン13,患者情報ボタン14,エクスポートボタン15,のうちのいずれのボタンが操作されたのかに基づいて,カルテボタン13をクリック操作するとカルテの内容を表示し,患者情報ボタン14をクリック操作すると患者の住所等の患者情報を表示し,エクスポートボタン15をクリック操作すると検索結果をCSV形式で出力すること, さらに,調査条件ボタン12は,検索対象をさらに絞り込むために利用され,調査一覧画面24を表示させた状態で,選択ボタン25をクリック操作することにより,あるいは調査画面5に検索結果を表示させた状態で,調査条件ボタン12をクリック操作することにより,さらに検索対象を絞り込むことが可能であり,医薬品名か傷病名を入力して検索ボタン21をクリック操作すれば,検索対象をさらに絞り込むことができ, コピー機能では,調査名「ロキソニン錠とタミフルカプセルを処方した患者さん一覧」を再利用する場合,調査一覧画面24で,この調査名を選択すると,その内容が仮の記憶領域に登録され,調査条件登録画面17に,検索条件式として医薬品名と調査期間とが表示され,調査条件登録画面17で,タミフルカプセルをPL顆粒に変更すると新たに調査コードが付与されるものであり,具体的には,「調査コード2」の,所定の調査期間に「ロキソニン錠とタミフルカプセルを処方した患者さん一覧」の「調査条件1」が「1149019F1021」であり,「調査条件2」が「62500021M1027」であるところ,これをコピーして,「図9」の「レコード3」の,所定の期間内に「ロキソニン錠とPL顆粒を処方した患者さん一覧」の「調査条件1」が「1149019F1021」であり,「調査条件2」が「1180107D1026」である「調査コード3」が新たに検索できるようになるものであり, これにより,設定した検索条件式で検索した結果をさらに絞り込んで,所望のデータを表示させることが可能となる診療データ検索装置。」 (3)引用例2について。 当審の拒絶理由通知で引用した引用例2には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例2摘記事項」という。) 「医療情報システム最新ガイド ●診療支援システム SUPER ClinicII ラボテック <特徴> ▽外注検査の結果は,全国主要検査センターからインターネット経由で自動取り込み。受信した検査データは,自動的にデータベース化し,管理される。検査データと投薬との相関関係をグラフ表示し,服薬指導ツールとしても活用可能。 ▽検査結果や時系列グラフなどの患者データをコメントと共にプリントアウトし,患者指導重畳として活用できる。また患者へのインフォームドコンセントツールとして各部位の人体画像も装備。 ▽カルテの入力途中で会計試算を行い,患者と負担金額を相談しながら検査や画像診断ができる。 ▽独自の文書登録機能で,簡単に作成・印刷できる。投薬・検査結果などはワンタッチで貼付可能。 ▽カルテ情報は,レセプトシステムへの会計情報として処理されるため,レセコンへの入力は不要。 ▽患者リストからの宛名シール作成による医院のPR・来院者数アップのためのダイレクトメール作成に活用できる。 ▽病名や薬剤などの情報を世代別,男女別で集計し,統計資料として活用できる。レセプト関連の集計をCSVファイルに出力し,表計算ソフトで診療統計・分析も可能。」 (134ページ中欄) (4)引用例2記載事項について。 引用例2摘記事項によれば,引用例2の診療支援システムは,カルテや検査結果などのデータを用いて診療を支援するものであって,病名や薬剤などの情報を世代別,男女別で集計し,統計資料として活用できるものである。 してみると,引用例2には以下の事項が記載されている。 (以下「引用例2記載事項」という。) 「カルテ等のデータを用いて,病名や薬剤などの情報を世代別,男女別で集計し,統計資料として活用することができる診療支援システム。」 (5)引用例3について。 当審の拒絶理由通知で引用した引用例3には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例3摘記事項」という。) (ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,医療機関または薬局等において,患者の病歴や薬歴,体質および現在の症状などに関して行う問診内容や診療録,投薬記録等の患者情報をコンピュータ上で管理したり情報処理を行ったりして,診療計画等に利用するための患者情報データベース管理システムに関するものである。」 (イ)「【0009】電子カルテや電子薬歴簿として記録された情報の中から,医師や薬剤師等のユーザが必要な情報を選択してその領域に所定の記号を書き込んでおけば,その領域内の情報が画像データであっても,検索することができる。従って,患者自身が書いた問診票用紙の手書き文字や,図または写真等も,そのまま検索結果として閲覧したり集計したりすることができる。」 (6)引用例3記載事項について。 引用例3摘記事項によれば,引用例3には以下の事項が記載されている。 (以下「引用例3記載事項」という。) 「電子カルテの情報の中から医師が必要な情報を選択して所定の記号を書き込み,検索することができるようにし,診療計画等に利用する患者情報データベース管理システム。」 2.対比 ア 引用例1発明と本願発明とを対比する。 (ア)まず,引用例1発明は,カルテに書き込まれた内容である患者のカルテ情報や,患者の住所等の患者情報等から所定条件の患者のカルテを検索し,患者のカルテ情報や患者情報を調査するものである。 検索をするための条件は,「20040401」から「20050331」までの期間であり,調査条件が「J00」つまり「急性鼻咽頭炎[かぜ]<感冒>(以下「感冒」という。)」であって,「J40」つまり「気管支炎,急性又は慢性と明示されないもの(以下「気管支炎」という。)」である患者,つまり感冒と気管支炎が診断されている患者さんを検索する。 検索結果は,調査画面に一覧表示され,特定の患者を選択して,カルテの内容を表示し,又は患者の住所等の患者情報を表示する。 (イ)さらに,引用例1発明の調査は,対象を絞り込んだり,既に調査された検索の条件を変更したりして行われる。 具体的には,既に検索した「ロキソニン錠とタミフルカプセルを処方した患者さん一覧」を利用して「ロキソニン錠とPL顆粒を処方した患者さん一覧」を検索し,調査する。 前者の調査条件は,処方が「1149019F1021」かつ「62500021M1027」であり,後者の調査条件は,処方が「1149019F1021」かつ「1180107D1026」であるから,オペレータは,薬効が「114」(つまり「解熱鎮痛消炎剤」。)と薬効が「625」(つまり「抗ウイルス剤」。)とが処方された患者の検索条件を用いて,薬効が「114」(つまり「解熱鎮痛消炎剤」。)と薬効が「118」(つまり「総合感冒剤」。)とが処方された患者を検索し,そのカルテの内容を表示し,又は患者の住所等の患者情報を表示して調査をする。 つまり,オペレータは,解熱鎮痛消炎剤が処方された発熱患者であって,抗ウイルス剤が処方されたウイルス性発熱患者と,総合感冒剤が処方された感冒性発熱患者のカルテ内容や住所等の患者情報を調査する。 検索結果はCSVデータとして出力するから,統計処理による調査もなされる。 以上のことから,引用例1発明は,電子カルテから医療上役に立つ知見を得るものであると理解できる。 (ウ)他方,本願発明が電子カルテから集計する疾病の情報は,例えば,予防接種の有無による症状の軽重(本願の図6参照。)や,患者の訴えや希望(例えば「急変時在宅希望」。)の年代別,性別的な傾向の把握(審判請求人の意見書の主張の第6ページ11行?12行や,図8による。)であるから,電子カルテから医療上役に立つ知見を得るものである。 (エ)してみると,上記(イ)(ウ)のことから,引用例1発明と本願発明とは,「電子カルテから医療上役に立つ知見を得るもの」である点で共通する。 (オ)上記(エ)のことから,引用例1発明の上記(ア)の,「感冒と気管支炎が診断されている患者さん」と「期間」の「検索条件」との「検索条件」は,本願発明の,「疾病名」と「診察開始,終了日」との「検索条件」に相当し,この「検索条件」は,「複数の電子カルテから所望の電子カルテを検索する検索条件」である点で共通する。 (カ)そして,引用例1発明の「検索条件」で検索され表示される「カルテの内容」や「患者の住所等の患者情報」などの「情報」は,これを調査することにより医療上役に立つ知見を得るものであり,本願発明の「所定の項目の情報」も,図4の記載などによれば,「予防接種の有無や羅患の重度」や「患者名・患者生年月日・患者番号」の「情報」であって,これを分類や集計をすることにより医療上役に立つ知見を得るものであるから,両者は,「医療上役に立つ知見を得るために抽出する所定の項目の情報」である点で共通し,この「情報」が,「検索条件」で電子カルテから検索された「所望の電子カルテに含まれる所定の項目の情報」であり,電子カルテから「抽出」された「情報」である点で共通する。 (キ)そして,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「抽出された所定の項目の情報を表示手段に表示して調査」することにより電子カルテから医療上役に立つ知見を得るものである点で共通する。 (ク)以上のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「患者の疾病に係る情報や患者の年齢や性別を含む患者情報を基に,各患者に対応した電子カルテを作成する電子カルテ作成手段と,電子カルテを表示する表示手段と,電子カルテ作成手段において作成された複数の電子カルテを格納する電子カルテ格納手段とを備える医療支援システム」である点で共通する。 イ 上記「ア」のことから,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致する。 [一致点] 「患者の疾病に係る情報や該患者の年齢や性別を含む患者情報を基に,各患者に対応した電子カルテを作成する電子カルテ作成手段と,電子カルテを表示する表示手段と,電子カルテ作成手段において作成された複数の電子カルテを格納する電子カルテ格納手段とを備える医療支援システムであって, 複数の電子カルテから所望の電子カルテを検索する検索条件を入力する操作手段と, 電子カルテ格納手段に格納された複数の電子カルテから,検索条件に一致する所望の電子カルテを複数の患者にまたがり検索し,検索された所望の電子カルテに含まれる所定の項目の情報を抽出する抽出手段と, 抽出された所定の項目の情報を表示手段に表示して調査することにより電子カルテから医療上役に立つ知見を得る医療支援システム。」 ウ そして引用例1発明と本願発明とは,以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では,「操作手段」が,「所望の電子カルテに含まれる情報の中から所定の項目の情報を抽出する抽出条件を入力する」よう構成され,「抽出手段」が,「抽出条件に含まれる所定の項目に一致する項目の情報を抽出する」よう構成され,「抽出された所定の項目の情報を分類するために,抽出された所定の項目の情報を基に分類条件を設定する条件設定手段」を有するよう構成され,「設定した分類条件に基づき所定の項目の情報を分類し集計することにより,疾病の情報を表示手段に表示させる集計手段を有する」よう構成されるのに対して,引用例1発明は,そのような構成を備えるものではない点。 [相違点2] 本願発明では,「電子カルテ作成手段」が,「電子カルテの所見欄の指定された情報部分にその内容に応じて指定された記号を付して,電子カルテを生成する」よう構成され,「操作手段」が,「記号に対応する情報部分を抽出する抽出条件を入力する」よう構成され,「抽出手段」が,「検索された所望の電子カルテが有する所見欄に記載のテキストデータから抽出条件に含まれる記号に一致する記号に対応する情報部分を抽出する」よう構成されるのに対して,引用例1発明は,そのような構成を備えるものではない点。 3.判断 以上の相違点について,以下に判断する。 ア [相違点1]について。 (ア)引用例2記載事項によれば,引用例2には,「カルテ等のデータを用いて,病名や薬剤などの情報を世代別,男女別で集計し,統計資料として活用することができる診療支援システム。」との事項が記載されている。 (イ)引用例2の「診療支援システム」は,引用例1発明や本願発明と同様に電子カルテから医療上役に立つ知見を得る医療支援システムである点で共通する。 (ウ)そして,引用例2記載事項によれば,引用例2には,「病名」や「薬剤」などの情報を「世代別,男女別で集計」することが記載されていることから,引用例1発明が,抽出した所定の項目の情報を表示手段に表示して調査し知見を得ること,つまり患者のカルテ情報や患者情報を表示して調査し知見を得ることに換えて,「所定の傷病名が診断された患者さん」や「所定の医薬品が処方された患者さん」を,「世代別・男女別で集計」して知見を得るよう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。 (エ)その際,「世代別,男女別で集計」するために,「年齢や世代の情報」と「男女の情報」とを「抽出条件」として抽出し,「世代別と男女別の分類条件」で分類するよう構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。 (オ)以上のとおりであるから,引用例1発明に引用例2記載事項を適用することにより,「操作手段」を,「年齢や世代の情報」と「男女の情報」とを抽出するべく「所望の電子カルテに含まれる情報の中から所定の項目の情報を抽出する抽出条件を入力する」よう構成したうえで,「抽出手段」を「抽出条件に含まれる所定の項目に一致する項目の情報を抽出する」よう構成すること,「世代別,男女別で集計」するために「世代別と男女別の分類条件」で分類するべく,「抽出された所定の項目の情報を分類するために,抽出された所定の項目の情報を基に分類条件を設定する条件設定手段」を有するよう構成したうえで「設定した分類条件に基づき所定の項目の情報を分類し集計する」よう構成すること,そして集計結果を医療上役に立つ知見を得るように「疾病の情報を表示手段に表示」させる「集計手段」として構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。 イ [相違点2]について。 (ア)引用例3記載事項によれば,引用例3には,「電子カルテの情報の中から医師が必要な情報を選択して所定の記号を書き込み,検索することができるようにし,診療計画等に利用する患者情報データベース管理システム。」との事項が記載されている。 (イ)引用例3の「患者情報データベース管理システム」は,引用例1発明や本願発明と同様に電子カルテから医療上役に立つ知見を得る医療支援システムである点で共通する。 (ウ)そして,引用例3記載事項によれば,引用例3には,「電子カルテの情報の中から医師が必要な情報を選択して所定の記号を書き込み,検索することができるようにし,診療計画等に利用すること」が記載されていることから,引用例1発明が,抽出した所定の項目の情報を表示手段に表示して調査し知見を得る際,つまり患者のカルテ情報や患者情報を表示して調査し知見を得る際,「急変時在宅希望」など,あいまいな表現であって複数の患者にまたがって抽出することができないものに事前に意味を対応つけた「記号」を付加し,「年齢や世代の情報」や「男女の情報」と併せて抽出できるようにすることは,当業者が容易に想到することができたものである。 (エ)以上のとおりであるから,「電子カルテ作成手段」を「電子カルテの所見欄の指定された情報部分にその内容に応じて指定された記号を付して,電子カルテを生成する」よう構成し,「操作手段」を「記号に対応する情報部分を抽出する抽出条件を入力する」よう構成し,「抽出手段」を「検索された所望の電子カルテが有する所見欄に記載のテキストデータから抽出条件に含まれる記号に一致する記号に対応する情報部分を抽出する」よう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。 以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1],[相違点2]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。 また,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例2記載事項及び引用例3記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項及び引用例3記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項及び引用例3記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-06 |
結審通知日 | 2013-12-10 |
審決日 | 2013-12-24 |
出願番号 | 特願2006-190910(P2006-190910) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮地 匡人、齋藤 正貴 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
手島 聖治 石川 正二 |
発明の名称 | 医療支援システム、及び医療支援プログラム |
代理人 | 特許業務法人三澤特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三澤特許事務所 |