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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1284690 |
審判番号 | 不服2012-23185 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-22 |
確定日 | 2014-02-13 |
事件の表示 | 特願2009- 88155「表面が拡張したモジュールを有するスマートカード」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月20日出願公開,特開2009-187564〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成14年12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月20日,フランス)を国際出願日とする特願2003-555433号(以下「原出願」という。)の一部を,平成21年3月31日に新たな出願としたものであって,平成23年10月28日付けで拒絶理由が通知され,平成24年5月8日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年7月18日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年11月22日に審判請求がされたものである。 2 本願発明について (1)本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は,平成24年5月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。 「【請求項1】 モジュールを担持するカード(2)を備えたスマートカード(1)であり,該モジュールは,それ自身で少なくとも一つの電子チップ(4)を支持するリードフレーム(3)を含み,このリードフレーム(3)が前記カード(2)の表面に固定されているスマートカードであって,前記リードフレーム(3)が,前記表面上において,前記カード(2)の少なくとも一つの縁まで広がることにより,前記モジュールの少なくとも一つの縁がスマートカード(1)の少なくとも一つの縁に一致することを特徴とするスマートカード(1)。」 (2)刊行物に記載された発明 引用例: 特開2000-172814号公報 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-172814号公報(以下「引用例」という。)には,図1及び図2とともに次の記載がある。(下線は当合議体において付加。以下同様。) ア 発明の属する技術分野 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は非接触型情報媒体に関し,詳しくは,オフィス・オートメーション(いわゆるOA),ファクトリー・オートメーション(FA),あるいはセキュリティー(Security)の分野等で使用されるICカード等に代表される情報媒体において,電力の受給と信号の授受を電気接点を介して行う接触型と,電源電力の受電,並びに信号の授受を電磁結合方式によってICカードに電気接点を設けることなく非接触状態で行う非接触型の双方の機能を有する複合ICカードに関するものである。」 イ 発明の実施の形態 「【0028】 【発明の実施の形態】本発明に係わる複合ICモジュールあるいは複合ICカードの,非接触伝達機構とICモジュールの基本構成について以下に説明する。 【0029】 ・・・(中略)・・・ 【0035】一方,従来の外部端子付きICカードにおける接触型伝達機構を具備するICモジュールは,約12mm×12mmの基板の片方の表面に外部との情報の交換及び受電のための端子電極が設けられ,基板の他方の表面にICチップが実装されワイヤー等を用いて端子電極との接続を行った後,樹脂封止するものであった。その後,モジュールの嵌合穴を設けたカード基体に完成したモジュールを接着して外部端子付きICカードが完成される。 【0036】しかしながら,ISO規格やJIS規格では,端子電極の大きさと位置は規定されているが,モジュール基板の大きさは規定されていない。従って,本発明のように,カード寸法と同一の基板の一方の表面に端子電極を形成することは,カードの製造工程に於ける嵌合穴加工を不要とする利点がある。また,本発明によると,コイル又はアンテナの受信効率を高める為の容量素子(例えばコンデンサ)をもつ場合,チップ実装後の容量調整が比較的容易に行える利点もある。また,本発明によると,カード基体とモジュールの継ぎ目もなくなり,不慮の事故によりモジュールが剥離することもなく,美観上からもより好ましくなる。それから,本発明によると,従来と同等の小さなICモジュールを製作し,カード製造の最終工程でそのモジュールに設けられたアンテナとの接続端子と,アンテナ端子とをカードの内部で接続する必要もなく,モジュール製作工程で相互の接続を完了する。 【0037】そのような技術的な実状を鑑みて,従来の外部端子付きICカードの端子電極の配置を保持しつつ,製造が容易で,カードの美観を損なうことなく且つ,十分な通信距離を実現しうる手段を考案するに至った。」 ウ 実施例 「【0038】 【実施例】<実施例1>図1は,本発明にかかる複合ICカードの第1の実施例の概略構成図である。本発明にかかる複合ICカード1は,複合ICモジュール2とカード基体3からなる。 【0039】複合ICモジュール2は,モジュールの基板である樹脂シート4の一方の表面に接触型伝達機構である端子電極5を,他方の面にアンテナコイル6を導体パターンで形成し,アンテナコイル6と同一の面に接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装してなる。アンテナコイル6は複合ICカード1の外形の内周部に可能な限りコイルの断面積が大きくとれるように配置した。 【0040】また,図1では,端子電極をコイル断面の中に含むように描いているが,端子電極5はアンテナコイル6の外になるようにしてもよい。更に,本実施例では,アンテナコイル6を導体パターンで形成したが,絶縁被膜を施した導線を用いて接着,圧着または,圧入によりコイルを形成してもよい。 【0041】図2は,本発明にかかる複合ICカードの端子電極近傍の断面図である。複合ICチップ7はモジュール基板である樹脂シート4の端子電極5の形成面とは反対側の面に実装される。複合ICチップ7の図示しない外部接続点と端子電極5とはスルーホール7で結ばれた端子電極5の形成面とは反対の面に設けられた導パターンで接続される。複合ICチップ7とアンテナコイル6の回路パターンとは半田や導電性接着剤を用いて熱溶着されて回路が形成される。この接続は,複合ICチップ7の回路形成面と樹脂シート4表面に設けられた導体パターンとをワイヤボンドすることによっても実現されうる。 【0042】複合ICチップ7をモジュール基板である樹脂シート4に実装し,接合部10で回路接続された後に,複合ICチップ7は樹脂モールド8が施されて複合ICモジュール2が完成する。 【0043】続いて,本発明による複合ICカード1はカード基体3を複合ICモジュール2のICチップ7実装面で接着するようにラミネートすることで製作される。 【0044】樹脂シート4とカード基体3のカード基材としては塩化ビニルを用いたが,その他,PET,ポリカーボネート,合成紙など十分なカードの特性が得られるもので有ればすべて本発明に適用できる。 【0045】本発明において,カードの製作をラミネート方式としたが,カード特性を維持する方法であればいずれも本発明に適用可能であって,例えば,射出成形方式であってもよい。また,ラミネート方式の場合,樹脂モールド8の膨らみを逃げるため嵌合穴をカード基体3に設けてもよい。」 ここにおいて,「【0036】しかしながら,ISO規格やJIS規格では,端子電極の大きさと位置は規定されているが,モジュール基板の大きさは規定されていない。従って,本発明のように,カード寸法と同一の基板の一方の表面に端子電極を形成することは,カードの製造工程に於ける嵌合穴加工を不要とする利点がある。」との記載における「カード寸法と同一の基板」は,その直前の「ISO規格やJIS規格では,端子電極の大きさと位置は規定されているが,モジュール基板の大きさは規定されていない。従って,本発明のように,」との記載を考慮すると,「カード寸法と同一の大きさのモジュール基板」を意味することは明らかである。また,ここで「カード寸法」が,ICカードの寸法を指すことも明らかである。 したがって,引用例には以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明」という。) 「電力の受給と信号の授受を電気接点を介して行う接触型と,電源電力の受電,並びに信号の授受を電磁結合方式によってICカードに電気接点を設けることなく非接触状態で行う非接触型の双方の機能を有する複合ICカード1であって, 複合ICカード1は,複合ICモジュール2とカード基体3とを,複合ICモジュール2のICチップ7実装面で接着するようにラミネートすることで製作されたものであり, 複合ICモジュール2は,モジュールの基板である樹脂シート4の一方の表面に接触型伝達機構である端子電極5を,他方の面にアンテナコイル6を導体パターンで形成し,アンテナコイル6と同一の面に接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装してなり, モジュールの基板である樹脂シート4は,複合ICカード1の寸法と同一の大きさのものである, 複合ICカード1。」 (3)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の「複合ICモジュール2は,モジュールの基板である樹脂シート4の一方の表面に接触型伝達機構である端子電極5を,他方の面にアンテナコイル6を導体パターンで形成し,アンテナコイル6と同一の面に接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装してな」るものであり,「複合ICモジュール2とカード基体3とを,複合ICモジュール2のICチップ7実装面で接着するようにラミネートすることで」「複合ICカード1」が「製作」されている。 一方,本願発明にかかる「モジュールを担持するカード(2)を備えたスマートカード(1)」において,「該モジュールは,それ自身で少なくとも一つの電子チップ(4)を支持するリードフレーム(3)を含」むものであるところ,当該「リードフレーム(3)」について,本願明細書には「スマートカードは支持体3(リードフレーム)で構成される電子モジュールを担持しており,該支持体は,必要に応じてプリント回路が施されたプラスチック製のシートで形成され,例えば電子メモリのような電子チップ4を支持する。」(段落【0022】)と記載されており,「リードフレーム(3)」として「プリント回路が施されたプラスチック製のシート」であるものが記載されている。 そうすると,引用発明における「モジュールの基板である樹脂シート4」には,「接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装」されるものであるから,当該「モジュールの基板である樹脂シート4」は,本願発明の「それ自身で少なくとも一つの電子チップ(4)を支持するリードフレーム(3)」に相当する。 また,引用発明における「複合ICモジュール2」であって,「モジュールの基板である樹脂シート4の一方の表面に接触型伝達機構である端子電極5を,他方の面にアンテナコイル6を導体パターンで形成し,アンテナコイル6と同一の面に接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装してな」るものは,本願発明の「モジュール」であって,「それ自身で少なくとも一つの電子チップ(4)を支持するリードフレーム(3)を含」むものに相当する。 ・引用発明の「複合ICカード1は,複合ICモジュール2とカード基体3とを,複合ICモジュール2のICチップ7実装面で接着するようにラミネートすることで製作されたものであ」るから,当該「カード基体3」は,本願発明の「モジュールを担持するカード(2)」に相当する。 また,引用発明において,「複合ICモジュール2のICチップ7実装面」は,「アンテナコイル6を導体パターンで形成し,アンテナコイル6と同一の面に接触型インターフェースと非接触型インターフェースとの双方の機能を内蔵した複合ICチップ7を実装」した「モジュールの基板である樹脂シート4の」「他方の面」であるところ,引用発明に係る「複合ICカード1」は,当該「樹脂シート4の」「他方の面」が「カード基体3」に「接着するようにラミネートすることで製作されたもの」であるから,本願発明の「このリードフレーム(3)が前記カード(2)の表面に固定されている」ことに相当する。 ・引用発明の「複合ICカード1」は,本願発明の「スマートカード(1)」に相当する。 したがって,引用発明と本願発明とは次の点で一致する。 「モジュールを担持するカード(2)を備えたスマートカード(1)であり,該モジュールは,それ自身で少なくとも一つの電子チップ(4)を支持するリードフレーム(3)を含み,このリードフレーム(3)が前記カード(2)の表面に固定されているスマートカード(1)。」 一方,両者は以下の点で相違する。 《相違点》 本願発明は,「前記リードフレーム(3)が,前記表面上において,前記カード(2)の少なくとも一つの縁まで広がることにより,前記モジュールの少なくとも一つの縁がスマートカード(1)の少なくとも一つの縁に一致する」構成を備えるのに対して,引用発明においては,そのような構成を備えることが明らかではない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 前記2(2)において検討したとおり,引用例の「【0036】しかしながら,ISO規格やJIS規格では,端子電極の大きさと位置は規定されているが,モジュール基板の大きさは規定されていない。従って,本発明のように,カード寸法と同一の基板の一方の表面に端子電極を形成することは,カードの製造工程に於ける嵌合穴加工を不要とする利点がある。」との記載における「カード寸法と同一の基板」は,「カード寸法と同一の大きさのモジュール基板」を意味し,また,「カード寸法」が,ICカードの寸法,すなわち複合ICカード1の寸法を指すことは明らかである。また,一般に,ICカード自体の寸法は規格等により規定されているところ,上記「モジュール基板の大きさは規定されていない」との記載から,ICカードの寸法が「モジュール基板の大きさ」により定まるものではないことは明らかである。すなわち,引用発明については,複合ICカード1の寸法自体はカード基体3により定まり,モジュールの基板である樹脂シート4を,複合ICカード1の寸法,すなわちカード基体3の寸法と同一の大きさとしたものといえる。 それゆえ,引用発明においては,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3とを,それらのすべての縁において一致するようにラミネートすることができ,あるいは,それらの縁が一致しないようにラミネートすることもできるといえる。 しかしながら,引用例には,「また,本発明によると,カード基体とモジュールの継ぎ目もなくなり,不慮の事故によりモジュールが剥離することもなく,美観上からもより好ましくなる。」(段落【0036】)との記載があるところ,上述のように,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3とを,それらの縁が一致しないようにラミネートすると,複合ICカード1の各縁において,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3との継ぎ目が顕在化し,美観上からもより好ましいものではなくなることは明らかである。それゆえ,引用例の上記記載に照らして,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3とを,それらのすべての縁において一致するようにラミネートして,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3との継ぎ目をなくし,不慮の事故によりモジュールが剥離することを防ぐとともに,美観上からもより好ましいものとすることは,当業者が当然になし得たことである。 また,そのように構成することは,引用例の図1(b)において,樹脂シート4及びカード基体3の両端が一致するように記載されていることにも整合する。 よって,引用発明において,複合ICカード1を,モジュールの基板である樹脂シート4とカード基体3とを,それらのすべての縁において一致するようにラミネートすることで製作したものとして,相違点に係る「前記リードフレーム(3)が,前記表面上において,前記カード(2)の少なくとも一つの縁まで広がることにより,前記モジュールの少なくとも一つの縁がスマートカード(1)の少なくとも一つの縁に一致する」ことに対応する構成を備えるようにすることは当業者が適宜になし得たことである。 したがって,前記相違点は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。 (5)まとめ 以上検討したとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 むすび 以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-03 |
結審通知日 | 2013-09-10 |
審決日 | 2013-09-24 |
出願番号 | 特願2009-88155(P2009-88155) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 満 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 西脇 博志 |
発明の名称 | 表面が拡張したモジュールを有するスマートカード |
代理人 | 太田 恵一 |