• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B61F
管理番号 1284718
審判番号 不服2013-11066  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2014-03-04 
事件の表示 特願2008-226154号「鉄道車両用操舵台車及び鉄道車両、連接車両」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月18日出願公開、特開2010-58650号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月3日の出願であって、平成25年3月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に明細書及び特許請求の範囲について手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成25年10月2日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成25年10月25日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成26年1月6日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年6月12日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
平成25年6月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】
主電動機及び歯車装置が取り付けられ、台車に設けられる車軸が、主電動機によって駆動される駆動軸と、主電動機によって駆動されない付随軸とで対をなし、
車軸を操舵する操舵装置、及びディスクブレーキ装置が、前記付随軸のみに取り付けられていることを特徴とする鉄道車両用操舵台車。
【請求項2】
前記操舵装置が、リンクを用いた操舵機構によるものであることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用操舵台車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の操舵台車を鉄道車両の少なくとも一方に備えた鉄道車両であって、
前記操舵台車の付随軸が、車両の進行方向における後ろ側になるように備えさせたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の操舵台車を鉄道車両の両側に備えた鉄道車両であって、
前記両操舵台車の付随軸を、車両の内側になるように備えさせたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の操舵台車を、少なくとも2つの車体の連接部分に備えた鉄道車両であって、
前記操舵台車の付随軸が、車両の進行方向における後ろ側になるように配置したことを特徴とする連接車両。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「台車」について、「主電動機及び歯車装置が取り付けられ」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項2?5は、本件補正により減縮された請求項1を引用しているから、実質的には補正前の請求項2?5から減縮されている。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用文献の記載事項

(1-1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭49-13822号公報(以下、「引用文献1」という。)には、その特許請求の範囲、2頁右下欄4行?3頁左上欄1行、3頁右下欄19行?4頁右上欄13行の記載、及び、第3図、第4図の開示事項から、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「台車に設けられる車軸が、台車台枠5に固定される軸箱10,11に支持される進行方向前位の輪軸3と、台車台枠5に回動自在に取付けられる受金14,15に支持される軸箱12,13に支持される進行方向後位の輪軸4とで対をなす、鉄道車両用操舵台車。」

(1-2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭49-32816号公報(以下、「引用文献2」という。)には、1頁左欄19行?2頁左欄1行、2頁右欄末行?3頁左欄6行の記載、及び、第1図、第2図の開示事項から、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「台車に設けられる車軸が、操舵されない無操舵車輪の車軸と、操舵車輪の車軸とで対をなし、車軸を操舵する操舵装置が、操舵車輪の車軸のみに取り付けられている、鉄道車両用操舵台車。」

(1-3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-48964号公報(以下、「引用文献3」という。)には、その段落【0001】、【0013】?【0018】、【0021】?【0031】の記載、及び、【図1】、【図2】の開示事項から、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「電動機6及び動力伝達装置7が取り付けられ、台車枠2に設けられる車軸が、電動機6によって駆動される電動軸4aと、電動機6によって駆動されない付随軸4bとで対をなす、軌条車両用台車。」

(1-4)引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許第6336409号明細書(以下、「引用文献4」という。)には、その第4コラムの記載から、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

「台車に設けられる車軸が、主電動機によって駆動される駆動軸と、主電動機によって駆動されない付随軸とで対をなす、鉄道車両用台車。」

(2)対比・判断
本願補正発明と引用発明3又は引用発明4とを対比すると、両者は以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明が、車軸を操舵する操舵装置、及びディスクブレーキ装置が、付随軸のみに取り付けられているのに対し、引用発明3又は引用発明4は、車軸を操舵する操舵装置を有さず、ディスクブレーキ装置を有するか否か不明な点。

上記相違点について検討する。
本願補正発明は、曲線路を通過する際、車輪に作用する旋回抵抗力(横圧)を低減するために、車軸を曲線路に沿って移動させる操舵台車が公知であることを従来技術として(本願明細書、段落【0002】、【0003】)、駆動軸を操舵する操舵台車の場合、台車に搭載する駆動・制動装置に台車枠と車軸の前後方向及びヨーイング方向の相対移動量を大きくとれるようにする必要があり、従来は台車の構成が複雑になるという課題を解決するものである(本願明細書、段落【0008】?【0011】)。
そして、その課題解決の手段として、駆動軸を有する台車に、操舵装置を設ける場合であっても、台車の構成が複雑になることを回避するために、台車に設けられる車軸が、主電動機によって駆動される駆動軸と、主電動機によって駆動されない付随軸とで対をなし、車軸を操舵する操舵装置が、付随軸のみに取り付けられていることを主要な特徴としている。
これに対し、引用発明3、引用発明4は、いずれも駆動軸を有する駆動台車において、主電動機によって駆動される駆動軸と、主電動機によって駆動されない付随軸とで対をなす鉄道車両用台車ではあるが、付随軸を操舵軸とするものではなく、引用文献3及び引用文献4のいずれにも、この点は記載も示唆もされていない。
引用発明3の目的は、車軸のばね下質量を低減して動的横圧を軽減した軌条車両用台車を提供するもので(引用文献3、段落【0015】)、駆動軸と付随軸とで対をなすことで、車軸のばね下質量を低減するとともに、後軸よりも大きな動的横圧を受ける前軸を、後軸より軽量の軸重とするため、前軸を付随軸とし、後軸を駆動軸するものである。 また、引用発明4も、軸重の適切な配分を考慮して、駆動軸と付随軸とで対をなす台車(half-motor bogie)を採用するものであって、曲線通過時の横圧低減を目的とするものではなく、また、引用文献4には、これを示唆する記載も認められない。
よって、引用発明1、引用発明2が、鉄道車両用台車の一対の軸の一方を操舵する操舵装置を有するものであっても、この構成を引用発明3、引用発明4に適用する動機付けがなく、その適用は、当業者といえども容易ということはできない。
さらに、引用発明1及び引用発明2は、いずれも駆動軸を有するものではなく、駆動軸を有さない台車について横圧減少を目的として操舵装置を設けるもので、引用文献1及び引用文献2のいずれにも、これを駆動軸を有する駆動台車に適用することの記載も示唆も認められない。

したがって、上記相違点のうち、ディスクブレーキの有無について検討するまでもなく、本願補正発明は、引用発明1ないし4から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願補正発明は、台車が、駆動軸を駆動する主電動機及び歯車装置操舵装置が取り付けられるとともに、操舵装置が取り付けられた付随軸とを備えるため、単一の台車において、操舵装置による横圧軽減効果と、主電動機と歯車装置との荷重による輪重を重くすることによる輪重抜けの効果とが同時に図れるという相乗効果を奏するものであり、引用文献1ないし4に記載された事項から、当業者が通常予測し得た以上の格別な効果を奏するものと認められる。

本件補正後の請求項2ないし5に係る発明は、本願補正発明の発明特定事項のすべてをその構成の一部とするものであるから、上記理由と同様の理由により、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記 第2で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明は、原査定の拒絶理由で提示した引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定の理由により拒絶すべきものとすることはできない。
本願の請求項2ないし5に係る発明は、本願の請求項1に係る発明の発明特定事項のすべてをその構成の一部とするものであるから、上記第2で検討したとおり、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-19 
出願番号 特願2008-226154(P2008-226154)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 大熊 雄治
丸山 英行
発明の名称 鉄道車両用操舵台車及び鉄道車両、連接車両  
代理人 溝上 哲也  
代理人 岩原 義則  
代理人 山本 進  
代理人 岩原 義則  
代理人 溝上 哲也  
代理人 山本 進  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ