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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1284806
審判番号 不服2012-24784  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-13 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2010-202315「動的レンダリング用3次元ビデオキャプチャ・ワークフロー用のシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 86283〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
本件出願は、平成22年9月9日(パリ条約による優先権主張2009年9月11日、米国)の出願であって、平成24年2月14日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成24年5月16日付けで意見書・手続補正書が提出され、平成24年8月9日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成24年12月13日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

2.補正の却下の決定
平成24年12月13日付けの手続補正について次のとおり決定する。

<補正の却下の決定の結論>
平成24年12月13日付けの手続補正を却下する。

<補正の却下の決定の理由>
(1)補正の内容
平成24年12月13日付けの手続補正(以下、本件補正という。)は、請求項1についてする次の補正を含むものである。

[補正前](平成24年5月16日付けで補正された請求項1)
「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

[補正後](平成24年12月13日付けで補正された請求項1)
「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

この請求項1についてする補正は、「スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータ」について、「ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータ」とさらに特定するものである。

(2)補正の適法性
上記のとおり、請求項1についてする補正は、「スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータ」について、「ユーザの好みに基づいて」とさらに特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められるから、独立特許要件について検討する。

ア.補正後発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、補正後発明という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

イ.刊行物1
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特許第4188968号公報(以下、刊行物1という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「従来技術としては、2次元映像信号から抽出した奥行き情報と2次元映像信号とに基づいて立体映像を生成する立体映像受信装置及び立体映像システムが提案されている(特開2000-78611号公報参照)。
上記従来技術によれば、前記奥行き情報によって実写の2次元映像等から視差情報を持たせた立体視用映像を生成することができる。しかしながら、上記従来技術では、多様な立体映像表示を可能にしたり、送信する情報量を少なくすることについては実現されていない。」(3頁37行?43行)
「上記の課題を解決するために、2次元映像をデータとして提供する際に前記2次元映像のデータを立体視用映像に変換するのに役立つ奥行き情報とこの奥行き情報のスケール情報を前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に提供することを特徴とする。
上記の構成であれば、スケール情報が前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に提供されるので、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を被提供側において作成させることが可能となる。」(3頁48行?4頁4行)
「図1に基づいて2次元映像とデプスマップ(奥行き情報)とによる立体映像の生成について説明していく。なお、この図においては、放送局やインターネット上のサーバなどとして構成される送信側装置1と、放送受信装置やネット接続環境を備えたパーソナルコンピュータや携帯電話などの受信側装置2とからなるシステムとして説明する。
同図(a)は原画像である2次元映像100を示している。送信側装置1では2次元映像100に対して画像分析を行い、同図(b)に示すように、背景映像101、山の映像102、木の映像103、人の映像104を抽出する。これら抽出された映像がオブジェクト(例えば、エッジ情報)として扱われる。また、画素単位で奥行き値を与え、デプスマップを生成する。なお、オブジェクト単位で奥行き値を与えることもできる。奥行き値は自動的(推定的)に与えるようにしてもよいし、手作業的に与えることとしてもよい。
このように、送信側装置1では、映像を提供(送信,放送)する際に、デプスマップを前記映像の付属情報として送信する。更に、この実施形態では、その他の付属情報も送信する。その他の付属情報については後で詳述する。ディジタル放送の場合、映像データと各種の付属情報を一つのトランスポートストリームに多重して放送することができる。コンピュータネットワークを用いた配信においても、映像データと各種の付属情報とを多重して送信することができる。
ところで、2次元映像とデプスマップとによって立体視用の映像を生成する場合、デプスマップを一種の2次元映像と考えることができるので、図2に示すように、2次元映像とデプスマップの2枚の映像を提供すればよい。従って、2眼式立体視においてL画像とR画像の2枚を提供するのと同様の考え方を適用することができる。ただし、2眼式立体視用の映像や多視点用の映像では各視点映像間でフォーマットが異なることがないのに対し、2次元映像とデプスマップとによって立体視用の映像を作成する場合、デプスマップはモノクロ画像でよく各画素に数ビットを割り当てた画像とすることができる。従って、デプスマップの1画素(2次元映像の各画素に対応する奥行き情報)を何ビットで表現するかを予め規定しておくか、或いは、送信側装置1から1画素のビット数を示す情報を受信装置2に提供することになる。また、デプスマップをモノクロ画像として表現する場合、より白ければ近距離相当値を表すのか、より黒ければ近距離相当値を表すのかを区別することとなるが、これについても予め規定しておいてもよいし、送信側からそのことを示す情報を送信することとしてもよい。
[他の付属情報]
▲1▼送信側装置1は、2次元映像をデータとして提供する際に前記デプスマップとこのデプスマップの値のスケール情報を前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に送信する。デプスマップの1画素当りのビット数が決まったとして、さらに分解能と絶対的な距離相当値との関係を表すのが望ましい。図3は1画素の奥行き値を3ビットで表す場合を例示したものである(実際には3ビットということはありえないだろうが説明の便宜上、3ビットとしている)。1画素当り3ビットを割り当てる場合、8レベルのデプスを表現できることになるが、1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためにスケール情報を送信することとする。図3(a)では、分解能を100mmとしており、0から800mmの広い範囲をカバーすることができる。また、図3(b)では、分解能を10mmとしており、0から80mmの狭い範囲をカバーすることができる。従って、スケール情報を送信することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を受信側装置2において作成させることが可能となる。」(6頁22行?7頁13行)
「[受信側装置]
図1(c)に示したように、受信側装置2は、映像データ、デプスマップ、他の付属情報を受信する。これらデータがマルチプレクスされているのであればデマルチプレクス(DEMUX)処理を行なう。映像データに対するデコード処理は、基本的には例えばMPEGに基づいた処理などが採用される。そして、受信側装置2では、映像データ及びデプスマップ等に基づいて視差を与えた右眼映像105R及び左眼映像105Lを生成する。従って、受信側装置2には、データを受信するための受信部21(モデム、チューナ等)、デマルチプレクサ22(DEMUX)、デコード部23、2次元映像のデータ及びデプスマップ等に基づいて視差映像を生成する映像生成部24、モニタ25などが備えられる。
受信側装置2は、例えばモニタ手前位置に液晶バリアを備えることにより、平面視映像の表示及び立体視映像の表示の両方が行なえるようになっている。立体視映像が、例えば、右眼映像と左眼映像とを交互に縦ストライプ状に配置したものであれば、CPU26の制御により、液晶バリアにおいて、縦ストライプ状の遮光領域が形成される。なお、右眼映像と左眼映像とを交互に縦ストライプ状に配置した立体視映像に限らず、例えば、右眼映像と左眼映像とを斜め配置配置した立体視映像としてもよく(特許第3096613号公報参照)、この場合には、液晶バリアにおいて斜めバリアを形成する。
受信側装置2のCPU26は、前述した他の付属情報をデマルチプレクサ22から受け取り、当該付属情報に基づいた映像表示制御処理を実行する。以下、この映像表示制御処理について説明する。
受信側装置2のCPU26は、付属情報としてスケール情報を取得すると、このスケール情報とデプスマップとによって視差量(画素ずらし量)を決定する。すなわち、或る画素についてAという値のデプス値が設定されていたとしても、スケール情報がBである場合とCである場合とでは(B≠C)、視差映像における画素ずらし量が異なってくることになる。CPU26は視差量情報を映像生成部24に与え、映像生成部24が視差量情報に基づいて視差映像を生成する。」(9頁6行?31行)

ここで、上記記載について検討する。

a.「図1に基づいて2次元映像とデプスマップ(奥行き情報)とによる立体映像の生成について説明していく。」(6頁22行?23行)の記載からみて、刊行物1は、「立体映像の生成」の技術が記載されているものである。

b.「上記従来技術によれば、前記奥行き情報によって実写の2次元映像等から視差情報を持たせた立体視用映像を生成することができる。しかしながら、上記従来技術では、多様な立体映像表示を可能にしたり、送信する情報量を少なくすることについては実現されていない。」(3頁40行?43行)、「上記の課題を解決するために、2次元映像をデータとして提供する際に前記2次元映像のデータを立体視用映像に変換するのに役立つ奥行き情報とこの奥行き情報のスケール情報を前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に提供することを特徴とする。
上記の構成であれば、スケール情報が前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に提供されるので、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を被提供側において作成させることが可能となる。」(3頁48行?4頁4行)の記載から、刊行物1には、従来、奥行き情報によって実写の2次元映像から視差情報を持たせた立体視用映像を生成することができたこと、本願は、2次元映像のデータを立体視用映像に変換するのに役立つ奥行き情報とこの奥行き情報のスケール情報を前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に提供することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を被提供側において作成させることが可能となることが記載されている。
ここで、従来、実写の2次元映像から立体視用映像を生成することが記載され、奥行き情報のスケール情報を2次元映像のデータと共に提供することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を被提供側において作成させることが可能となるということは、奥行き情報のスケール情報を2次元映像のデータと共に提供する際の2次元映像についても、実写の2次元映像である。
すなわち、刊行物1に記載の立体映像の生成の技術における2次元映像は、実写の2次元映像である。

c.「送信側装置1では2次元映像100に対して画像分析を行い、同図(b)に示すように、背景映像101、山の映像102、木の映像103、人の映像104を抽出する。これら抽出された映像がオブジェクト(例えば、エッジ情報)として扱われる。また、画素単位で奥行き値を与え、デプスマップを生成する。なお、オブジェクト単位で奥行き値を与えることもできる。奥行き値は自動的(推定的)に与えるようにしてもよい」(6頁26行?31行)の記載からみて、刊行物1に記載の立体映像の生成の技術は、「2次元映像に対して画像分析を行い、背景映像、山の映像、木の映像、人の映像を抽出し、抽出された映像をオブジェクトとし、」「オブジェクト単位で推定的に奥行き値を与え、」「デプスマップを生成する」ものである。

d.「図1(c)に示したように、受信側装置2は、映像データ、デプスマップ、他の付属情報を受信する。これらデータがマルチプレクスされているのであればデマルチプレクス(DEMUX)処理を行なう。映像データに対するデコード処理は、基本的には例えばMPEGに基づいた処理などが採用される。」(9頁7行?10行)の記載からみて、刊行物1の映像データは、「受信側装置でデコード処理」されるものである。

e.「送信側装置1は、2次元映像をデータとして提供する際に前記デプスマップとこのデプスマップの値のスケール情報を前記2次元映像の付属情報として当該2次元映像のデータと共に送信する。デプスマップの1画素当りのビット数が決まったとして、さらに分解能と絶対的な距離相当値との関係を表すのが望ましい。図3は1画素の奥行き値を3ビットで表す場合を例示したものである(実際には3ビットということはありえないだろうが説明の便宜上、3ビットとしている)。1画素当り3ビットを割り当てる場合、8レベルのデプスを表現できることになるが、1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためにスケール情報を送信することとする。図3(a)では、分解能を100mmとしており、0から800mmの広い範囲をカバーすることができる。また、図3(b)では、分解能を10mmとしており、0から80mmの狭い範囲をカバーすることができる。従って、スケール情報を送信することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を受信側装置2において作成させることが可能となる。」(7頁2行?13行)の記載からみて、刊行物1に記載の立体映像の生成の技術は、「デプスマップの値の1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためのスケール情報」を作成するものである。

f.刊行物1に記載の「立体映像の生成の技術」は、立体映像を生成する方法として捉えることもできる。

したがって、刊行物1には以下の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されている。

「立体映像を生成する方法であり、
実写の2次元映像があり、
2次元映像に対して画像分析を行い、背景映像、山の映像、木の映像、人の映像を抽出し、抽出された映像をオブジェクトとし;
オブジェクト単位で推定的に奥行き値を与え;
デプスマップを生成し;
映像データは、受信側装置でデコード処理されるものであり、
デプスマップの値の1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためのスケール情報を作成すること;
を含む方法。」

ウ.刊行物2
また、本願の出願の日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/56133号(以下、刊行物2という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「図1に基づいて2次元映像とデプスマップ(奥行き情報)とによる立体映像の生成について説明していく。なお、この図においては、放送局やインターネット上のサーバなどとして構成される送信側装置1と、放送受信装置やネット接続環境を備えたパーソナルコンピュータや携帯電話などの受信側装置2とからなるシステムとして説明する。
同図(a)は実写の2次元映像100を示している。送信側装置1では、2次元映像100に対して画像分析を行い、同図(b)に示すように、背景映像101、ビルの映像102、自動車の映像103を抽出する。これら抽出された映像がオブジェクト(例えば、エッジ情報)として扱われる。また、画素単位で奥行き値を与え、デプスマップを生成する。なお、オブジェクト単位で奥行き値を与えることもできる。奥行き値は自動的(推定的)に与えるようにしてもよいし、手作業的に与えることとしてもよい。
このように、送信側装置1では、映像を提供(送信,放送)する際に、デプスマップを前記映像の付属情報として送信する。更に、この実施形態では、立体感タグも前記映像の付属情報として送信する。立体感タグは、立体感の強度を示すものであり、例えば、0,1,2,3,…といった数値によって表される。ディジタル放送の場合、映像データと各種の付属情報を一つのトランスポートストリームに多重して放送することができる。コンピュータネットワークを用いた配信においても、映像データと各種の付属情報を一つのトランスポートストリームに多重して放送することができる。」(5頁4行?25行)
「受信側装置2のCPU26は、表示しようとする立体映像に付加されている立体感タグをデマルチプレクサ22から受け取り、この立体感タグに基づいた映像表示制御処理を実行する。」(7頁3行?5行)
「また、図3に示すように、立体感の強度が最も低いことを示す”0”が立体感タグとして与えられている場合、そのまま立体映像を表示させる。その一方、”1,2,3”が立体感タグとして与えられている場合、CPU26は立体感タグの値に応じてデプスマップデータを変更(圧縮)する(1/2,1/3等)。そして、この弱立体化デプスマップデータを映像生成部24に与える。映像生成部24は弱立体化デプスマップデータに基づいて視差映像を生成する。また、OSD回路によって画面には「警告」の文字が表示される。これにより、図3に示しているように、モニタ25上には弱立体感映像と「警告」の文字が表示される。ユーザは、作成者側の意図そのままの立体映像を希望するのか、弱立体感映像を維持するのかを選択する。この選択は、例えば、画面に「オリジナル選択(OK)は”1”、弱立体感維持選択(NG)は”2”を操作」といった説明のOSD表示がなされているのであれば、この説明に従って操作部27を操作する。」(7頁25行?8頁12行)

すなわち、刊行物2には、立体映像の生成に際して、2次元映像と奥行き情報であるデプスマップと立体感タグを送信し、受信側では、立体感タグに応じてデプスマップデータを1/2,1/3等に変更(圧縮)し、受信側のユーザは、立体感を変えることを可能とする技術が示されている。

エ.刊行物1発明との対比
補正後発明と刊行物1発明とを対比する。

エ-1.補正後発明の「3次元ビデオデータを生成する方法」について

刊行物1発明は、「立体映像を生成する方法」である。
立体映像は、3次元ビデオデータであるから、刊行物1発明の「立体映像を生成する方法」は、補正後発明の「3次元ビデオデータを生成する方法」に一致する。

エ-2.補正後発明の「複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップ」について

補正後発明は、「複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得する」ものである。本願の段落【0009】には、「シーン110は、映画撮影セット又はコンピュータ生成の3次元世界のような、ビデオキャプチャシステム120が捕捉(キャプチャ)する実環境又は仮想環境から成る。シーン110は複数のオブジェクトを含み、図1ではオブジェクト115a及び115bとして示し、これらのオブジェクトは、3次元処理用のビデオキャプチャシステム120によって識別される。例えば、オブジェクト115a及び115bは、現実又は仮想の俳優、キャラクター、建物、背景、投射物、風景、及び3次元効果を有する可能な操作用の他の物で構成することができる。」と記載されていることから、「シーン」は、映画撮影セット又はコンピュータ生成の3次元世界のような、実環境又は仮想環境を指すものであり、オブジェクトは、シーンに含まれる現実又は仮想の俳優、キャラクター、建物、背景、投射物、風景などである。
刊行物1発明の2次元映像は、実写の2次元映像である。実写とは、実際に撮影することであるから、この2次元映像は、何らかの対象物を実際に撮影することにより取得されるものである。そして、刊行物1発明は、「2次元映像に対して画像分析を行い、背景映像、山の映像、木の映像、人の映像を抽出し、抽出された映像をオブジェクト」とするものであるから、2次元映像は、背景、山、木、人のような複数のオブジェクトが含まれる対象物から撮影することにより取得されるものである。ここで、背景、山、木、人のような複数のオブジェクトが含まれる対象物から撮影することにより取得されるということについて、この対象物が何かを考えた場合、実際の3次元の世界を指すことになるから、2次元映像は、複数のオブジェクトを有する3次元世界から撮影することにより取得されるものである。
そうすると、刊行物1発明の「実写の2次元映像」の2次元映像は、複数のオブジェクトを有する3次元世界から取得されるものであり、刊行物1発明の「2次元映像」と補正後発明の「2次元ビデオデータ」が一致し、刊行物1発明の撮影される対象物である「3次元世界」と補正後発明の「シーン」が一致する。
そして、刊行物1発明を立体映像を生成する方法と捉えた場合に、一連の流れを各ステップによる構成と捉えることができる。
よって、補正後発明と刊行物1発明とは、共に「複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップ」を含むものといえ、この点で一致する。

エ-3.補正後発明の「前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップ」について

刊行物1発明では、「2次元映像に対して画像分析を行い、背景映像、山の映像、木の映像、人の映像を抽出し、抽出された映像をオブジェクトとし」ている。ここで、オブジェクトは、抽出された背景映像、山の映像、木の映像、人の映像のことであり、画像分析を行って各オブジェクトを抽出するのは、その後に各オブジェクトの奥行き値を推定するために行うものであるから、各オブジェクトをオブジェクト単位に分けるために行っているものである。各オブジェクトをオブジェクト単位に分けるためには、各オブジェクトをそれぞれ識別することが必要となり、刊行物1発明は、2次元映像の中の、複数のオブジェクトを識別しているものである。
補正後発明の「前記シーン」とは、補正後発明における「複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップ」の「シーン」のことであり、本願の段落【0009】には、「シーン110は、映画撮影セット又はコンピュータ生成の3次元世界のような、ビデオキャプチャシステム120が捕捉(キャプチャ)する実環境又は仮想環境から成る。」と記載されていることから、「シーン」は、映画撮影セット又はコンピュータ生成の3次元世界のような、実環境又は仮想環境を指すものである。
そうすると、識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違する。
したがって、補正後発明の「前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップ」について、補正後発明と刊行物1発明は、「複数のオブジェクトを識別するステップ」を有する点で一致するが、
識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違する。

エ-4.補正後発明の「前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップ」について

刊行物1発明では、「オブジェクト単位で推定的に奥行き値を与え」ている。ここで、「デプスマップの1画素当りのビット数が決まったとして、さらに分解能と絶対的な距離相当値との関係を表すのが望ましい。図3は1画素の奥行き値を3ビットで表す場合を例示したものである(実際には3ビットということはありえないだろうが説明の便宜上、3ビットとしている)。1画素当り3ビットを割り当てる場合、8レベルのデプスを表現できることになるが、1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためにスケール情報を送信することとする。図3(a)では、分解能を100mmとしており、0から800mmの広い範囲をカバーすることができる。また、図3(b)では、分解能を10mmとしており、0から80mmの狭い範囲をカバーすることができる。従って、スケール情報を送信することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を受信側装置2において作成させることが可能となる。」(7頁4行?13行)の記載からみて、実施例では、奥行き値を3ビットで表し、8レベルで表現していること、同じ値の奥行き値でも、スケール情報に応じて奥行きの絶対値は異なることを考えると、奥行き値は、オブジェクトの絶対的な距離でなく、相対的な位置関係を示すものである。したがって、「オブジェクト単位で推定的に奥行き値を与え」とは、複数のオブジェクトの相対位置を取得することとなる。そして、複数のオブジェクトは、2次元映像の中の複数のオブジェクトを識別した複数のオブジェクトを指すものであるから、刊行物1発明は、前記複数のオブジェクトの相対位置を取得することとなる。
そうすると、補正後発明と刊行物1発明は、「前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップ」を含む点で一致する。
しかし、「前記複数のオブジェクト」に関して、補正後発明では、「前記」が、「前記シーン中の前記複数のオブジェクト」の複数のオブジェクトを指すのに対し、刊行物1発明では、「前記」が、「2次元映像の中の複数のオブジェクト」の複数のオブジェクトを指すという点で相違する。

エ-5.補正後発明の「前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップ」について

刊行物1発明の映像データは、受信側装置でデコード処理されるものである。受信側でデコード処理されるということは、通信の前段階として、送信側でエンコード処理されると考えるのが通常であるし、刊行物1発明の映像データは、2次元映像すなわち2次元ビデオデータであるから、刊行物1発明においても、「前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップ」を含むものである。

エ-6.補正後発明の「前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップ」について

補正後発明の相対位置メタデータに関して、発明の詳細な説明では、「オブジェクト相対位置メタデータ146は、3次元オブジェクトデータ126から導出することができ、3次元オブジェクトデータ126によって識別されるオブジェクトの相対位置を指定する。」(段落【0010】)とあることから、相対位置メタデータは、オブジェクトの相対位置を指定するデータのことである。
刊行物1発明では、「デプスマップを生成」しており、デプスマップは、奥行き値を与えることにより生成しているものである。
すなわち、複数のオブジェクトの相対位置を示す奥行き値からデプスマップを生成しているものであるから、刊行物1発明は、複数のオブジェクトの相対位置に基づいて、デプスマップを生成するものである。
そして、デプスマップが複数のオブジェクトの相対位置に基づいて生成されるものである以上、オブジェクトの相対位置を指定していることとなり、刊行物1発明の「デプスマップ」は、補正後発明の「相対位置メタデータ」に一致する。
したがって、刊行物1発明の「デプスマップを生成」することは、補正後発明の「前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップ」に一致する。

エ-7.補正後発明の「前記相対位置メタデータに対する演算用に、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップ」について

刊行物1発明は、「デプスマップの値の1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すためのスケール情報を作成する」ものである。
ここで、スケール情報は、デプスマップの値の1つの刻みが絶対的な距離のどれだけに相当するかを示すための情報であるから、デプスマップとスケール情報より絶対的な奥行き距離が演算でき、「図3(a)では、分解能を100mmとしており、0から800mmの広い範囲をカバーすることができる。また、図3(b)では、分解能を10mmとしており、0から80mmの狭い範囲をカバーすることができる。スケール情報を送信することにより、広狭様々な奥行きを持つ立体視用映像を受信側装置2において作成させることが可能となる。」(7頁9行?13行)の記載からみて、スケール情報は様々な値に設定可能であり、広狭様々な奥行きを可能とするので、スケーリング効果を調整可能とするものである。
すなわち、刊行物1発明のスケール情報は、デプスマップに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能なものである。
そして、「エ-6.」で検討したように、刊行物1発明の「デプスマップ」は、補正後発明の「相対位置メタデータ」に一致する。
そうすると、刊行物1発明の「スケール情報」と、補正後発明の「3次元奥行き係数メタデータ」は、「前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能」という点で共通するものである。
また、スケール情報を作成するということは、作成した結果として、スケール情報を提供するものである。
しかし、刊行物1発明のスケール情報は、スケーリング効果が調整可能であることに関して、ユーザの好みに基づいて調整可能であるかについては、特定されていない。
したがって、補正後発明の「前記相対位置メタデータに対する演算用に、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップ」について、補正後発明と刊行物1発明は、
「前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップ」という点で一致し、
スケーリング効果が調整可能であることに関して、補正後発明は、ユーザの好みに基づいて調整可能であるのに対し、刊行物1発明は、その点については特定されていない点で相違する。

エ-8.「エ-3.」および「エ-4.」についての整理

前記「エ-3.」において、識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違するとし、前記「エ-4.」において、「前記複数のオブジェクト」に関して、補正後発明では、「前記」が、「前記シーン中の前記複数のオブジェクト」の複数のオブジェクトを指すのに対し、刊行物1発明では、「前記」が、「2次元映像の中の複数のオブジェクト」の複数のオブジェクトを指すという点で相違するとした。
補正後発明および刊行物1発明のいずれも、「前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップ」を行うために、複数のオブジェクトを識別するものであるから、「エ-4.」の相違点は、「エ-3.」の相違点である、識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点に由来するものである。
したがって、「エ-3.」および「エ-4.」について整理すると、識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違する。

オ.補正後発明と刊行物1発明の一致点、相違点

前記「エ.刊行物1発明との対比」で述べたことをまとめると、補正後発明と刊行物1発明は、

[一致点]
「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

という点で一致し、

[相違点]
(a)識別する複数のオブジェクトが、補正後発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違する。
(b)スケーリング効果が調整可能であることに関して、補正後発明は、ユーザの好みに基づいて調整可能であるのに対し、刊行物1発明は、その点については特定されていない点で相違する。

カ.判断

相違点(a)について
刊行物1発明と、補正後発明は、いずれも、複数のオブジェクトを識別し、前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するものである。そして、刊行物1発明の2次元映像は、実写により取得されたもの、すなわち、実際の3次元世界から撮影により取得されたものであるから、刊行物1発明は、実際の3次元世界から撮影により取得された2次元映像の中の複数のオブジェクトを識別し、前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するものである。
そうすると、刊行物1発明における2次元映像の中の複数のオブジェクトを識別し、前記複数のオブジェクトの相対位置を取得することは、実際の3次元世界における複数のオブジェクトの相対位置を、2次元映像から推定して取得するものである。
複数のオブジェクトの相対位置を取得することについて、刊行物1発明では、実際の3次元世界における複数のオブジェクトの相対位置を、2次元映像から推定して取得しているものであるが、実際の3次元世界における複数のオブジェクトの相対位置を取得したいなら、実際の3次元世界における複数のオブジェクトの相対位置を、実際の3次元世界から直接取得すれば良いということは、当業者にとって普通に考えることである。
そして、複数のオブジェクトの相対位置を、実際の3次元世界から取得するのであれば、識別する複数のオブジェクトは、実際の3次元世界の中の複数のオブジェクトである。
したがって、識別する複数のオブジェクトが、刊行物1発明における、2次元映像の中の複数のオブジェクトであることに代えて、シーン中の複数のオブジェクトにすることは、当業者にとって容易に想到できるといえ、相違点(a)に係る補正後発明の構成とすることは当業者が容易に想到できることといえる。

相違点(b)について
刊行物2には、立体映像の生成に際して、2次元映像と奥行き情報であるデプスマップと立体感タグを送信し、受信側では、立体感タグに応じてデプスマップデータを1/2,1/3等に変更(圧縮)すること、受信側のユーザは、立体感を変えることを可能とする技術が示されている。
そして、「ユーザは、作成者側の意図そのままの立体映像を希望するのか、弱立体感映像を維持するのかを選択する」(8頁8行?9行)ことにより、自分の好みの立体感(作成者側の意図そのままの立体映像や弱立体感映像)に変えることを可能とすることから、刊行物2に記載の技術は、立体映像を見ているユーザが、自分の好みの立体感に変えたいと考えると、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能とするものである。
当業者であれば、刊行物2における、立体映像を見ているユーザが自分の好みの立体感に変えたいという要求は、刊行物1発明における、立体映像を見ている際にも普通に想定できることと認められる。
そうすると、当業者はその想定の下に、ユーザの要求(立体映像を見ているユーザが自分の好みの立体感に変えたい)を実現する手段を採用することを容易に想到する。
そして、そのような要求を実現する手段として、刊行物2にユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能とすることが記載されており、刊行物1発明においても、スケーリング効果が調整可能であるので、刊行物1発明におけるスケーリング効果が調整可能であることについて、ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能とすることは、当業者であれば容易に考え得るものである。
よって、刊行物1発明に対して、当業者は上記想定(立体映像を見ているユーザが自分の好みの立体感に変えたいという要求)の下に、刊行物2の技術を採用して、「ユーザの好みに基づいてスケーリング効果を調整可能」にすることは容易に想到できるといえ、相違点(b)に係る補正後発明の構成とすることは当業者が容易に想到できることといえる。

また、補正後発明の効果は、刊行物1発明から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。

以上のとおり、補正後発明は、刊行物1発明及び刊行物2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、平成24年12月13日付けの手続補正は却下した。
したがって、本件出願の請求項1ないし22に係る発明は、平成24年5月16日付け手続補正書で補正された明細書、特許請求の範囲および図面の記載からみて、平成24年5月16日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、次のとおりである。

[本願発明](請求項1に係る発明)
「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
前記シーン中の前記複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

(2)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1、その記載事項、および刊行物1発明は、前記「2.(2)イ.」に記載したとおりである。

(3)対比
補正後発明は、本願発明に、前記「2.(1)」の補正事項の補正をしたものである。
したがって、本願発明は、補正後発明から上記補正事項の補正を戻す関係にあり、その内容は、限定事項を戻す関係にある。
そして、本願発明と刊行物1発明との対比は、前記「2.(2)エ.」と、前記削除される構成を除いて同様に対比される。

(4)本願発明と刊行物1発明の一致点・相違点

本願発明と刊行物1発明は、

[一致点]
「3次元ビデオデータを生成する方法において、
複数のオブジェクトを有するシーンから2次元ビデオデータを取得するステップと;
複数のオブジェクトを識別するステップと;
前記複数のオブジェクトの相対位置を取得するステップと;
前記2次元ビデオデータを符号化して、符号化2次元ビデオデータを生成するステップと;
前記複数のオブジェクトの前記相対位置に基づいて、相対位置メタデータを生成するステップと;
前記相対位置メタデータに対する演算用に、スケーリング効果を調整可能な3次元奥行き係数メタデータを提供するステップと;
を含む方法。」

という点で一致し、

[相違点]
(a)識別する複数のオブジェクトが、本願発明は、「前記シーン中の前記」複数のオブジェクトであるのに対し、刊行物1発明は、「2次元映像の中の」複数のオブジェクトであるという点で相違する。

(5)判断
上記相違点(a)は、補正後発明と刊行物1発明との相違点(a)と同じであり、前記「2.(2)カ.」と同じく判断されるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について特に検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-13 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2010-202315(P2010-202315)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 俊威  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 渡辺 努
千葉 輝久
発明の名称 動的レンダリング用3次元ビデオキャプチャ・ワークフロー用のシステム及び方法  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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