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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60S
管理番号 1284842
審判番号 不服2013-9959  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-30 
確定日 2014-03-04 
事件の表示 特願2006-259590号「ウォッシャ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月10日出願公開、特開2008- 80827号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年9月25日の出願であって,平成25年2月25日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成25年5月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がされ,同時に補正されたものである。
そして,当審において,平成25年6月26日付けで審査官により作成された前置報告書について,平成25年7月17日付けで審尋を行ったところ,審判請求人は平成25年9月20日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年5月30日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,
「【請求項1】
ウォッシャ液を貯蔵するタンクと,このタンク内のウォッシャ液を外部へ供給するポンプと,このポンプから供給された前記ウォッシャ液を洗浄面に噴射させる液体噴射口を形成した2つのウォッシャノズルとを備えたウォッシャ装置において,前記一方のウォッシャノズルのノズルハウジングには,前記ウォッシャ液を導入する流入路と該流入路から弁室を介して前記ウォッシャ液を2つに分配して前記液体噴射口に前記ウォッシャ液を供給する液体供給流路及び流出路をそれぞれ形成し,これら流入路と液体供給流路及び流出路を前記弁室内に収納された逆止弁で開閉自在にし,かつ前記ポンプと前記一方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続すると共に,前記一方のウォッシャノズルの流出路と前記他方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続したことを特徴とするウォッシャ装置であって,
前記一方のウォッシャノズルの前記弁室を,弁座部を有した略円筒状の弁ケースと該弁ケースの下面開口部を覆う蓋体とで密閉形成し,前記弁ケースの前記弁座部の上側には,前記流入路を形成する流入管と前記流出路を形成する流出管とを略円筒状の仕切壁を介して一直線状に延びるように一体突出形成し,前記弁ケースの前記弁座部に前記流入路と液体供給流路を連通させる連通口を形成すると共に,前記流入路と前記流出路を連通させる連通口を形成し,これら流入路と液体供給流路の連通口と前記流入路と流出路の連通口を前記逆止弁の弁体で閉塞・開放自在にしたことを特徴とするウォッシャ装置。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「弁室」及び「逆止弁」について,「一方のウォッシャノズルの前記弁室を,弁座部を有した略円筒状の弁ケースと該弁ケースの下面開口部を覆う蓋体とで密閉形成し,前記弁ケースの前記弁座部の上側には,前記流入路を形成する流入管と前記流出路を形成する流出管とを略円筒状の仕切壁を介して一直線状に延びるように一体突出形成し,前記弁ケースの前記弁座部に前記流入路と液体供給流路を連通させる連通口を形成すると共に,前記流入路と前記流出路を連通させる連通口を形成し,これら流入路と液体供給流路の連通口と前記流入路と流出路の連通口を前記逆止弁の弁体で閉塞・開放自在にした」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
(1-1) 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願日前に頒布された刊行物である独国特許出願公開第102004022998号明細書(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0026] Fig. 1 zeigt einen Teilbereich einer Scheibenreinigungsanlage 1 mit einem vor einer Scheibe 2 eines Kraftfahrzeuges angeordneten Dusengehause 3. Das Dusengehause 3 weist eine auf die Scheibe 2 gerichtete Waschduse 4 auf und ist kraftschlussig an einem Halteteil 5 befestigt. ・・・」
{[0026]図1は,自動車のフロントガラス2の前方に配置されているノズルハウジング3とフロントガラス洗浄システム1の一部を示している。ノズルハウジング3は,フロントガラス2に向けられた噴霧ノズル4を有し,支持部5に固定されている。・・・}({}は当審による翻訳文。)

イ 「[0028] Fig. 2 zeigt eine Schnittdarstellung durch das Dusengehause 3 der Scheibenreinigungsanlage 1 aus Fig. 1 entlang der Linie II-II. Hierbei ist zu erkennen, dass auf dem Mantel 8 zwei Waschdusen 4 nebeneinander angeordnet sind. Das Dusengehause 3 hat zwei Anschlussstutzen 12, 13 zum Anschluss jeweils eines Schlauches 14, 15 und eine Aufnahme 16 fur ein Ruckschlagventil 17. Das Ruckschlagventil 17 verhindert ein Eindringen von Luft durch die Waschduse 4 in das Dusengehause 3 bei abgeschalteter Scheibenreinigungsanlage 1. Die Anschlussstutzen 12, 13 sind jeweils auf einem Anschlussstuck 18, 19 angeordnet. ・・・」
{[0028]図2は,図1のフロントガラス洗浄システム1のII-II線に沿ったノズルハウジング3の断面図を示している。2つの噴霧ノズル4がケーシング8に隣同士に配置されている。ノズルハウジング3は,各チューブ14,15を逆止弁17の弁収容部16へ接続するための2つの接続片12,13を有している。フロントガラス洗浄システム1において,逆止弁17は,噴霧ノズル4を介してのノズルハウジング3内への空気の侵入を防止する。接続片12,13は,接続部18,19に接続される。・・・}

ウ 「[0029] Fig. 3 zeigt einen Schaltplan der Scheibenreinigungsanlage 1 mit zwei uber eine Waschflussigkeitspumpe 23 versorgten Dusengehausen 3, 3'. Die Dusengehause 3, 3' sind mit den Waschdusen 4, 4' in einer Reihe geschaltet. Die Waschflussigkeitspumpe 23 fordert Waschflussigkeit aus einem Vorratsbehalter 24 uber einen der Schlauche 14 zu dem ersten Dusengehause 3 und weiter uber den anderen der Schlauche 15 zu dem zweiten Dusengehause 3'. Das zweite Dusengehause 3' ist an seinem dem zweiten Schlauch 15 abgewandten Ende von einer Kappe 25 verschlossen. ・・・」
{[0029]図3は,2つのノズルハウジング3,3’と,洗浄液ポンプ23からなるフロントガラス洗浄システム1の回路図を示している。ノズルハウジング3,3’は,噴霧ノズル4,4’を有している。洗浄液ポンプ23は,リザーバ24からの洗浄液を,チューブ14と第1ノズルハウジング3とを介して,第2ノズルハウジング3’へのチューブ15に供給する。第2ノズルハウジング3’は,キャップ25により第2のチューブ15とは反対側の端部で閉鎖される。・・・}

エ 引用例1のFIG1?3を参照すると,洗浄液は,接続片12からの流路から,ノズルハウジング3内に流入し,接続片13への流路と,噴霧ノズル4への流路とに分岐し,弁収容部16内の逆止弁17は,接続片12からの流路を開閉するようになっているといえる。

上記の記載事項及び図面の記載を総合すると,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が実質的に記載されている。
「ノズルハウジング3は,フロントガラス2に向けられた噴霧ノズル4を有し,また,各チューブ14,15を逆止弁17の弁収容部16へ接続するための2つの接続片12,13を有し,
洗浄液ポンプ23は,リザーバ24からの洗浄液を,チューブ14と第1ノズルハウジング3とを介して,第2ノズルハウジング3’へのチューブ15に供給し,
洗浄液は,接続片12からの流路から,ノズルハウジング3内に流入し,接続片13への流路と,噴霧ノズル4への流路とに分岐し,弁収容部16内の逆止弁17は,接続片12からの流路を開閉するようになっている,
自動車のフロントガラス2の前方に配置されたフロントガラス洗浄システム。」


(1-2) 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願日前に頒布された刊行物である実公平4-52134号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

オ 「実用新案登録請求の範囲
筒状の弁室を形成し,その弁室の下方同一平面上の中央にポンプから送られるウオツシヤ液を導入する導入口を形成するとともに,該導入口の左右には分断された一対の吐出口を形成してなる分配器本体を備え,該弁室内には該導入口と両吐出口とを同時に密閉する弁体と,その弁体を該導入口及び両吐出口方向に付勢したスプリングとを備えたことを特徴としてなる自動車ウオツシヤ液路用分配器。」(第1ページ左欄第1?10行)

カ 「(産業上の利用分野)
本考案はポンプから送られるウオツシヤ液を左右に分配してフロントガラスやヘツドライト前面の一対のウオツシヤ液噴射ノズルに送るための自動車ウオツシヤ液路用分配器に関する。」(第1ページ左欄第12?16行)

キ 「(作用)
このように構成した自動車ウオツシヤ液路用分配器は,ポンプからのウオツシヤ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置されるもので,使用時にはポンプから送られるウオツシヤ液の圧力で該弁体が押し上げられてウオツシヤ液は導入口から弁室を経て両吐出口にそれぞれ流れ,左右の噴射ノズルから噴射される。
また,非使用時には,スプリングによつて付勢されている弁体が導入口及び両吐出口を塞いで,両吐出口側から導入口側へのウオツシヤ液の逆流が止められるとともに,両吐出口間におけるウオツシヤ液の流れをも断つこととなる
(実施例)
次に本考案の実施の一例を第1図及至第3図を参照して説明する。
図中1は本考案に係る自動車ウオツシヤ液路用分配器を示すもので,合成樹脂製で三方が開口した略十字形状とした分配器本体2を有している。
該分配器本体2は,中央上方に円筒状の弁ケース3にて弁室3aを形成し,その弁室3aの下方同一平面上の中央にはポンプPから送られるウオツシヤ液を導入する導入管4の上端部に導入口4aを形成している。
該弁室3aの内周壁下端には,内方に向けて突起せしめた環状突片7を形成するとともに,該導入口4aの左右両側に一対の吐出口5a,6aを形成している。該吐出口5a,6aは,左右に分岐した吐出管5,6にそれぞれ連通するもので,導入口4aを形成している導入管4の上端部外周に形成した仕切り壁8,8と環状突片7とで略三日月状に形成されている。
すなわち,吐出管5,6は,仕切り壁8,8によつて左右に分断され,吐出口5a,6a及び該弁室6aとを介してのみ導入口4a又は導入管4と連通しているものである。
また,該弁室3a内には該導入口4aと両吐出口5a,6aとを同時に密閉するゴム製板状の弁体9と,合成樹脂製の略皿状のバネ受け10と,このバネ受け10を介して弁体9を付勢するスプリング11を収容している。」(第2ページ左欄第14行?右欄第10行)

ク 上記記載事項及び第1?2図を参照すると,引用例2には,ウォッシャ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置される分配器であって,弁ケースと,弁ケースの開口部を覆うキャップ(12)とで形成し,導入管(4)の上端の弁体の当接部の下側には,吐出管(5)と吐出管(6)とを円筒状の導入管(4)の上端を介して一直線状に延びるように形成し,導入管(4)は,吐出管(5)及び吐出管(6)に対して,直交したものが記載されている。

(1-3) 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭61-20095号(実開昭62-131966号)のマイクロフィルム(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ケ 「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 筒状の弁室を形成し,その弁室の下方同一平面上の左右両側には分断された一対の吐出口を形成し,中央にはポンプから送られるウォッシャ液を導入する導入口を形成した分配器本体を備え,該導入口の周縁部には永久磁石若しくは磁性体を備え,該弁室内には該導入口と両吐出口とを同時に密閉する弁体と,該弁体を挟んで上記永久磁石若しくは磁性体と引き合う永久磁石を収容したことを特徴としてなる自動車ウォッシャ液路用分配器。」(明細書第1ページ第4?13行)

コ 「(産業上の利用分野)
本考案はポンプから送られるウォッシャ液を左右に分配してフロントガラスやヘツドライト前面の一対のウォッシャ液噴射ノズルに送るための自動車ウォッシャ液路用分配器に関する。」(明細書第1ページ第15?19行)

サ 「(作用)
このように構成した自動車ウォッシャ液路用分配器は,ポンプからのウォッシャ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置されるもので,使用時にはポンプから送られるウォッシャ液の圧力で該弁体が押し上げられるが,このとき,規定以上の圧力で一度開弁した後は閉弁時よりはるかに引張力は弱まり,スプリングのような抵抗を与えることなく液が両吐出口から送り出され,左右の噴射ノズルから噴射される。
また,非使用時には,該導入口の周縁部に備えた永久磁石若しくは磁性体と,弁室内に弁体を挟んで備えた永久磁石との吸着力によつて該導入口と両吐出口とが弁体によつて同時に確実に密閉され,両吐出口側から導入口側へのウォッシャ液の逆流が止められるとともに,両吐出口間におけるウォッシャ液の流れをも断つこととなる。
(実施例)
次に本考案の実施の一例を第1図及至第3図を参照して説明する。
図中1は本考案に係る自動車ウォッシャ液路用分配器を示すもので,合成樹脂製で三方が開口した略十字形状とした分配器本体2を有している。
該分配器本体2は,中央上方に円筒状の弁ケース3にて弁室3aを形成し,その弁室3aの下方同一平面上の中央にはポンプPから送られるウォッシャ液を導入する導入管4の上端部に導入口4aを形成している。この導入口4aを形成する導入管4の上端部内周縁には環状の磁性体5を嵌合せしめている。
該弁室3aの内周壁下端には,内方に向けて突起せしめた環状突片6を形成するとともに,該導入口4aの左右両側には一対の吐出口7a,7bを形成している。該吐出口7a,7bは,左右に分岐した吐出管8,9にそれぞれ連通するもので導入口4aを形成している導入管4の上端部外周に形成した仕切り壁10,10と環状突片6とでそれぞれ略三日月状に形成されている。
すなわち,吐出管8,9は,仕切り壁10,10によつて左右に分断され,吐出口7a,7b及び該弁室3aとを介してのみ導入口4a又は導入管4と連通しているものである。
また,該弁室3a内には該導入口4aと両吐出口7a,7bとを同時に密閉するゴム製板状の弁体11と,合成樹脂製の断面略皿状の弁保持体12とを上下摺動自在に収容している。
該弁保持体12は,下面に弁体11を接着するとともに,該磁性体5と対向する位置に永久磁石13を埋設して有し,該磁性体5と弁体11を挟んで互いに吸着自在としている。
弁室3aの上方開口は合成樹脂製のキャップ14にて超音波接合等により,密閉している。」(明細書第4ページ第17行?第7ページ第8行)

シ 上記記載事項及び第1?2図を参照すると,引用例3には,ウォッシャ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置される分配器であって,弁ケースと,弁ケースの開口部を覆うキャップ(14)とで形成し,導入管(4)の上端の弁体の当接部の下側には,吐出管(8)と吐出管(9)とを円筒状の導入管(4)の上端を介して一直線状に延びるように形成し,導入管(4)は,吐出管(8)及び吐出管(9)に対して,直交したものが記載されている。

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「フロントガラス洗浄システム1」は本願補正発明の「ウォッシャ装置」に相当する。
以下,同様に「洗浄液」は「ウォッシャ液」に,「リザーバ24」は「ウォッシャ液を貯蔵するタンク」に,「洗浄液ポンプ23」は「タンク内のウォッシャ液を外部へ供給するポンプ」に,「噴霧ノズル4」は「ウォッシャ液を洗浄面に噴射させる液体噴射口」に,「第1ノズルハウジング3」は「一方のウォッシャノズル」に,「接続片12からの流路」は「流入路」に,「弁収容部16」は「弁室」に,「噴霧ノズル4への流路」は「液体供給流路」に,「接続片13への流路」は「流出路」に,「逆止弁17」は「逆止弁」に,「第2ノズルハウジング3’」は「他方のウォッシャノズル」に,それぞれ相当する。
引用発明は「第1ノズルハウジング3」及び「第2ノズルハウジング3’」を備えているから,引用発明は本願補正発明の「2つのウォッシャノズル」との構成を備える。
引用発明では,「洗浄液は,接続片12からの流路から,ノズルハウジング3内に流入し,接続片13への流路と,噴霧ノズル4への流路とに分岐し,弁収容部16内の逆止弁17は,接続片12からの流路を開閉するようになっている」から,引用発明は本願補正発明の「一方のウォッシャノズルのノズルハウジングには,前記ウォッシャ液を導入する流入路と該流入路から弁室を介して前記ウォッシャ液を2つに分配して前記液体噴射口に前記ウォッシャ液を供給する液体供給流路及び流出路をそれぞれ形成し,流入路を前記弁室内に収納された逆止弁で開閉自在」との構成を備える。
引用発明では,「洗浄液ポンプ23は,リザーバ24からの洗浄液を,チューブ14と第1ノズルハウジング3とを介して,第2ノズルハウジング3’へのチューブ15に供給」するから,引用発明は本願補正発明の「ポンプと前記一方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続すると共に,前記一方のウォッシャノズルの流出路と前記他方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続」との構成を備える。

以上のことから,本願補正発明と引用発明とは次の点で一致する。
「ウォッシャ液を貯蔵するタンクと,このタンク内のウォッシャ液を外部へ供給するポンプと,このポンプから供給された前記ウォッシャ液を洗浄面に噴射させる液体噴射口を形成した2つのウォッシャノズルとを備えたウォッシャ装置において,前記一方のウォッシャノズルのノズルハウジングには,前記ウォッシャ液を導入する流入路と該流入路から弁室を介して前記ウォッシャ液を2つに分配して前記液体噴射口に前記ウォッシャ液を供給する液体供給流路及び流出路をそれぞれ形成し,流入路を前記弁室内に収納された逆止弁で開閉自在にし,かつ前記ポンプと前記一方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続すると共に,前記一方のウォッシャノズルの流出路と前記他方のウォッシャノズルの流入路をホースで接続したウォッシャ装置。」

一方で,両者は次の点で相違する。
[相違点1]
逆止弁で開閉自在とする流路について,本願補正発明では「流入路と液体供給流路及び流出路」であるのに対して,引用発明では「接続片12からの流路」である点。

[相違点2]
本願補正発明では,「一方のウォッシャノズルの前記弁室を,弁座部を有した略円筒状の弁ケースと該弁ケースの下面開口部を覆う蓋体とで密閉形成し,前記弁ケースの前記弁座部の上側には,前記流入路を形成する流入管と前記流出路を形成する流出管とを略円筒状の仕切壁を介して一直線状に延びるように一体突出形成し,前記弁ケースの前記弁座部に前記流入路と液体供給流路を連通させる連通口を形成すると共に,前記流入路と前記流出路を連通させる連通口を形成し,これら流入路と液体供給流路の連通口と前記流入路と流出路の連通口を前記逆止弁の弁体で閉塞・開放自在」としているのに対して,引用発明では,このような弁室及び逆止弁を備えていない点。

(3)判断
上記相違点2について検討する。
引用例2及び3(記載事項オ?シを参照。)に記載のものの「導入管(4)の上端」は,本願補正発明の「円筒状の仕切壁」に相当する。以下,同様に「導入管(4)の上端の弁体の当接部」は「弁座部」に,「キャップ」は「蓋体」に,「下側」は「上側」に,「導入管」は「流入管」に,「吐出管」は「流出管」に,それぞれ相当する。
すると,引用例2及び3には,ウォッシャ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置される分配器であって,弁ケースと,弁ケースの開口部を覆う蓋体とで形成し,弁ケースの弁座部の上側には,流出管と流出管とを円筒状の仕切壁を介して一直線状に延びるように形成し,流入管は,流出管及び流出管に対して,直交したものが記載されているといえる。
ところで,本願補正発明において弁室及び逆止弁を備えるものはウォッシャノズルであるのに対して,引用例2及び引用例3に記載のものではウォッシャ液を左右の噴射ノズルに分配する分岐点に配置される分配器である点で異なり,また,本願補正発明は上記相違点2に係る構成のように,弁座部の上側に,流入管と流出管とを円筒状の仕切壁を介して一直線状に延びるようにしたものであるのに対して,引用例2及び引用例3に記載のものは,弁座部の上側に,流入管と流出管とを直交するようにしたものである点で異なる。
すると,たとえ引用発明に,引用例2または3に記載された事項を適用したとしても,それによって本願補正発明の上記相違点2に係る構成に至るものではない。
以上のことから,当業者が引用発明に引用例2?3に記載された事項を組み合わせて,本願補正発明における上記相違点2に係る構成に至るのが容易であるとは認められない。

したがって,上記相違点2に係る構成に至るのが容易であるとは認められないから,上記相違点1について検討するまでもなく,上記相違点2に係る構成を具備する本願補正発明は,引用発明及び引用例2?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから,本願の請求項1に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-17 
出願番号 特願2006-259590(P2006-259590)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 平田 信勝
小関 峰夫
発明の名称 ウォッシャ装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 鈴木 三義  

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