• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
管理番号 1284888
審判番号 不服2010-13788  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 特願2006-551557「布地の洗濯又は処置の用途に用いるための組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月18日国際公開、WO2005/075616、平成19年 8月 9日国内公表、特表2007-522289〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年2月3日、欧州特許庁)の出願であって、平成21年7月9日付けで拒絶理由が通知され、平成22年1月13日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年2月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月23日に審判請求がされるとともに、手続補正書が提出され、当審において、平成23年9月30日付けで審尋がされ、平成24年4月4日に回答書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願の特許請求の範囲に記載された発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明は、平成25年4月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に記載された発明は次のとおりのものである(以下、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」という。また、本願の明細書を「本願明細書」という。)

「布地の洗濯または処置のための微粒子形態の補助組成物であり、前記組成物が、
(i)粘土と、
(ii)シリコーンと、
の共同微粒子混合体を含み、
前記粘土が20マイクロメートル?30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有し、前記シリコーン対粘土の重量比が0.1?0.2であり、前記共同微粒子混合体が、シリコーンを水と接触させて、乳化形態のシリコーンを形成すること、およびその後に前記乳化形態のシリコーンを前記粘土と接触させて、粘土とシリコーンとの混合体を形成することを含む方法により得られ、前記補助組成物が、0.5?8の流動性指数(FI)を有し、
FI=P×R
であり、式中、Pはマイクロメートルで表される前記粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比である、補助組成物。」

第3 原査定の理由、及び、当審において通知した拒絶理由
(1)原査定の理由
平成22年2月19日付け拒絶査定は、「この出願については、平成21年7月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」という理由によるものであって、平成21年7月9日付け拒絶理由通知書からみて、次の理由によるものである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
<理由1について>
・請求項1?23
・引用文献等1?4

引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第92/07927号
2.特開平09-111662号公報
3.特開昭54-106696号公報
4.特表平11-504978号公報」

(2)当審において通知した拒絶理由
平成24年9月28日付けで当審において通知した拒絶理由は、以下の理由によるものである。
「本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
…本願の特許請求の範囲の請求項1、及び、それを引用する請求項2?4に記載された発明について、本願明細書はサポート要件を満たすものとはいえない。
[付記]
平成22年2月19日付け拒絶査定の理由の適否については、本拒絶理由に対する請求人の対応の内容を踏まえて検討されるものであり、この拒絶理由通知は、拒絶査定の理由の解消を意味するものではない。」

第4 当審の判断
当審は、本願発明は、平成22年2月19日付け拒絶査定における理由(特許法第29条第2項)、及び、平成24年9月28日付けで当審において通知した拒絶理由における理由(特許法第36条第6項第1号)によって、拒絶されるべきものと考える。
その理由は、以下のとおりである。

1.特許法第36条第6項第1号について
(1)明細書のサポート要件について
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号判決参照)。そこで、以下、この観点に立って、この出願の特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かについて検討する。

(2)本願発明
本願発明は、前記「第2」に記載したとおりのものである。

(3)本願発明の課題
本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の「…従って、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能を改善する必要性が依然として存在する。」との記載等からみて、本願発明の課題は、次のとおりのものと認められる。
「布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能を改善する」こと。

(4)発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の課題の解決に関連して、次のとおりの記載がある。

a「【0009】
本発明は、上述の問題を、布地の洗濯又は処置の用途に用いるための微粒子形態の補助組成物であり、該補助組成物が、(i)粘土と、(ii)シリコーンと、(iii)所望により、帯電ポリマー布地柔軟増強成分と、(iv)所望により、1つ以上の補助剤成分との共同微粒子混合体を含み、ここで該補助組成物が0.5?21の流動性指数(FI)を有し、FI=P×Rであり、式中、Pはマイクロメートルで表される該粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比である、補助組成物の付与により克服するものである。」

b「【0015】
好ましい粘土は、少なくとも70meq/100gのカチオン性交換容量を有する。…」

c「【0016】
好ましくは、粘土は典型的には20マイクロメートルを超える、…、より好ましくは24マイクロメートル?30マイクロメートルの、…重量平均1次粒径を有する。これらの好ましい重量平均1次粒径を有する粘土類は、さらに改善された布地柔軟化効果をもたらす。…」

d「【0018】
(シリコーン)
シリコーンは、好ましくは布地柔軟化シリコーンである。…」

e「【0020】
シリコーンは、好ましくは、2つ以上の異なる種類のシリコーンのシリコーン混合物でもよい。好ましいシリコーン混合物は、 高粘度シリコーンと低粘度シリコーン、官能化と非官能化シリコーン、又は非帯電シリコーンポリマーとカチオン性シリコーンポリマーとを含むものである。」

f「【0037】
(共同微粒子混合体)
共同微粒子混合体は、粘土、シリコーン及び所望により帯電ポリマー布地柔軟増強成分を含む。所望により、共同微粒子混合体は1つ以上の補助剤成分を含む。
【0038】
共同微粒子混合体は好ましくは、シリコーンを好ましくは液体又は液化可能な形態で及び最も好ましくは乳化した形態で、粘土及び所望により帯電ポリマー布地柔軟増強成分と接触させて混合物を形成する工程、並びに次に該混合物を高剪断混合器及び/又は低剪断混合物(low shear mixture)で凝集させ、所望によりその後乾燥工程を経て、共同微粒子混合体を形成させる工程を含む方法によって得ることができ、あるいは得られる。共同微粒子混合体は顆粒、フレーク、押出品、麺状、針状又は凝集体であり得るが、好ましくは、該共同微粒子混合体は凝集体の形態である。」

g「【0042】
補助組成物は、0.5?21、…若しくはさらに7?8、…の流動性指数(FI)を有する。好ましい流動性指数を有する補助組成物は、例えば流動性や粘結強度(cake strength)などの良好な粉末特性を有することにより、良好な布地柔軟化効果をもたらす一方で、良好な加工性ももたらし、容易に加工することが可能である。流動性指数(FI)はP×Rであり、式中、Pはマイクロメートルで表される粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比である。好ましくは、補助組成物中に存在するシリコーン対粘土の重量比は、…、好ましくは0.1?0.2である。」

h「【0055】
補助組成物は通常は微粒子形態であり、布地の洗濯又は処置に好適であり、通常(i)粘土と、(ii)シリコーンと、(iii)所望により、帯電ポリマー布地柔軟増強成分と、(iv)所望により、1つ以上の補助剤成分との共同微粒子混合体を含み、ここで該粘土は10マイクロメートル?60マイクロメートル、好ましくは10マイクロメートル?40マイクロメートル、又はさらに20マイクロメートル?30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有し、粘土対シリコーンの比は0.05?0.3、好ましくは0.1?0.2である。」

i「【0060】
組成物は、洗濯プロセス中に布地の洗浄と柔軟化との両方を行うことができる。典型的には、組成物は、自動洗濯機で使用するように配合されるが、手による洗濯用にも配合されることができる。」

j「【0062】
(方法)
補助組成物の製造方法は、(i)シリコーンを水と、及び所望により乳化剤と接触させて、乳化形態のシリコーンを形成する工程と、(ii)その後に、乳化形態の該シリコーンを粘土と接触させて、粘土とシリコーンとの混合体を形成する工程とを含む。
【0063】
好ましくは、シリコーンを工程(ii)の粘土と接触させる際には、該シリコーンは液体又は液化可能な形態である。好ましくは、工程(i)で形成されるエマルションは、シリコーンが該エマルションの連続相の少なくとも一部、好ましくは全部を形成し、水が該エマルションの不連続相の少なくとも一部、好ましくは全部を形成している油中水型エマルションである。
【0064】
好ましくは、工程(ii)に先立ち、粘土にミリング工程を実施し、好ましくは該粘土が10マイクロメートル?40マイクロメートル、好ましくは20マイクロメートル?30マイクロメートルの1次粒径を有するようにミリングする。」

k「【実施例】
【0074】
実施例1:シリコーンエマルションの調製方法
100Pa・s(100,000cp)の粘度を有するシリコーン(ポリジメチルシロキサン)81.9gをビーカーに加える。8.2gの30重量%濃度のC_(11)?C_(13)アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)水溶液を次にビーカーに加え、シリコーン、LAS、及び水を平ナイフを使って、手で2分間十分に攪拌し、エマルションを調製する。
【0075】
実施例2:粘土/シリコーン凝集体の製造方法
ベントナイト粘土601.2gを粉砕機に加え、該粘土の重量平均1次粒径が22マイクロメートルになるまで粉砕する。粘土をブラウン(Braun)ミキサーに加え、カチオン性グアーゴム7.7gをさらに該ブラウン(Braun)ミキサーに加える。実施例1のエマルション90.1gをブラウン(Braun)ミキサーに加え、該ミキサー内の全ての成分を10秒間、115rad/s(1,100rpm)(速度設定8)で攪拌する。ブラウン(Braun)ミキサーの速度を次に209rad/s(2,000rpm)(速度設定14)に上げ、水50gをブラウンミキサーにゆっくりと加える。ミキサーを209rad/s(2,000rpm)で30秒間維持し、湿った凝集体を形成する。湿った凝集体を乾燥させた流動床に移し、4分間137℃で乾燥させ、乾燥した凝集体を形成する。乾燥した凝集体をふるいにかけて、粒径が1,400マイクロメートルを超える凝集体と粒径が250マイクロメートル未満の凝集体とを除去する。
【0076】
実施例3:粘土/シリコーン凝集体
本発明における使用に適している粘土/シリコーン凝集体は、実施例2の方法に従って調製されるが、該粘土は25マイクロメートルの重量平均1次粒径を有するように粉砕され、該凝集体は、80.3重量%のベントナイト粘土、1.0重量%のカチオン性グアーゴム、10.9重量%のシリコーン(ポリジメチルシロキサン)、0.3重量%のC_(11)?C_(13)アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、及び7.5重量%の水を含む。
【0077】
実施例4:粘土/シリコーン凝集体
本発明における使用に適している粘土/シリコーン凝集体は、実施例2の方法に従って調製されるが、該粘土は30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有するように粉砕され、該凝集体は、72.8重量%のベントナイト粘土、0.7重量%のカチオン性グアーゴム、15.9重量%のシリコーン(ポリジメチルシロキサン)、0.5重量%のC_(11)?C_(13)アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、及び10.1重量%の水を含む。
【0078】
実施例5:洗濯洗剤組成物
本発明における使用に適している洗濯洗剤組成物は、 上記実施例3又は実施例4のいずれか一方の15重量%の粘土/シリコーン凝集体、300、000ダルトンの重量平均分子量を有する0.2重量%のポリエチレンオキシド、11重量%のC_(11)?_(13)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩洗浄性界面活性剤、0.3重量%のC_(12)?_(14)アルキル硫酸塩洗浄性界面活性剤、1重量%のC_(12)?C_(14)アルキル、ジメチル、エトキシ四級アンモニウム洗浄性界面活性剤、4重量%の結晶性層状ケイ酸ナトリウム、12重量%のゼオライトA、2.5重量%のクエン酸、20重量%の炭酸ナトリウム、0.1重量%のケイ酸ナトリウム、0.8重量%の疎水変性セルロース、0.2重量%のプロテアーゼ、0.1重量%のアミラーゼ、1.5重量%のテトラアセチルエチレンジアミン(tetraacetlyethylenediamine)、6.5重量%の過炭酸塩、ナトリウム塩の形態の0.1重量%のエチレンジアミン-N’N-二コハク酸,(S,S)異性体、1.2重量%の1,1-ヒドロキシエタンジホスホン酸、0.1重量%の硫酸マグネシウム、0.7重量%の香料、18重量%の硫酸塩、4.7重量%のその他/水を含む。
【0079】
実施例6:洗濯洗剤組成物
本発明における使用に適している洗濯洗剤組成物は、 上記実施例3又は実施例4のいずれか一方の12.5重量%の粘土/シリコーン凝集体、300,000ダルトンの重量平均分子量を有する0.3重量%のポリエチレンオキシド、11重量%のC_(11)?_(13)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩洗浄性界面活性剤、2.5重量%のC_(12)?C_(14)アルキル、ジメチル、エトキシ四級アンモニウム洗浄性界面活性剤、4重量%の結晶性層状ケイ酸ナトリウム、12重量%のゼオライトA、20重量%の炭酸ナトリウム、1.5重量%のテトラアセチルエチレンジアミン(tetraacetlyethylenediamine)、6.5重量%の過炭酸塩、1.0重量%の香料、18重量%の硫酸塩、10.7重量%のその他/水を含む。
【0080】
実施例7:洗濯洗剤組成物
本発明における使用に適している洗濯洗剤組成物は、上記実施例3又は実施例4のいずれか一方の12.5重量%の粘土/シリコーン凝集体、6.0重量%の粘土、300,000ダルトンの重量平均分子量を有する0.3重量%のポリエチレンオキシド、10重量%のC_(11)?C_(13)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩洗浄性界面活性剤、平均7モルのエチレンオキシドで凝結された1重量%のアルキル硫酸塩洗浄性界面活性剤、4重量%の結晶性層状ケイ酸ナトリウム、18重量%のゼオライトA、20重量%の炭酸ナトリウム、1.5重量%のテトラアセチルエチレンジアミン(tetraacetlyethylenediamine)、6.5重量%の過炭酸塩、1.0重量%の香料、15重量%の硫酸塩、4.2重量%のその他/水を含む。」

(5)検討
本願明細書の発明の詳細な説明には、(i)粘土と、(ii)シリコーンとを含み、FI=P×R(式中、Pはマイクロメートルで表される該粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比)で表される流動性指数(FI)が0.5?21である、補助組成物によって本願発明の課題が解決されること(摘記a)、該補助組成物が(i)粘土と、(ii)シリコーンとを含む共同微粒子混合体を含み、粘土は最も好ましくは20マイクロメートル?30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有し、粘土対シリコーンの比は、好ましくは0.1?0.2であること(摘記h)、共同微粒子混合体を含む補助組成物は、シリコーンを乳化した形態で、粘土等と接触させて混合物を形成する方法によって得ることができること(摘記f、j)、及び、以上の条件を満たす補助剤組成物、及び、当該補助剤組成物を含有する洗濯洗剤組成物の実施例(摘記k参照。例えば、実施例3としては、重量平均1次粒径25マイクロメートルの粘土80.3重量%を、水で乳化させたシリコーン10.9重量%と混合して共同微粒子混合体を含む補助剤組成物を得る例が記載されており、当該補助剤組成物は、粘土の重量平均1次粒径が25マイクロメートル、シリコーン対粘土の重量比が0.136(=10.9/80.3)、流動性指数が3.4(=25×0.136)であるから、本願発明の条件を満たすものと認められる。)が記載されているから、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項を備えた補助剤組成物については、記載されていると認められる。
そこで、本願明細書の発明の詳細な説明に、そのような本願発明によって、「布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能を改善する」という本願発明の課題が解決できることについて、当業者が認識できるように記載されているか否か検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の補助剤組成物を含む組成物が洗濯プロセス中に布地の洗浄と柔軟化との両方を行うことができる(摘記i)との記述、好ましい重量平均1次粒径を有する粘土やシリコーンが布地柔軟化効果を有する(摘記c、d)との記述、及び、好ましい流動性指数を有する補助組成物が良好な布地柔軟化効果、良好な加工性ももたらす(摘記g)との記述がされてはいるものの、実施例はいずれも本願発明の補助剤組成物ないしそれを含有する洗濯洗剤組成物の処方例を開示するに止まるもの(摘記k)であって、本願発明の補助剤組成物を使用した場合の布地の洗浄性、柔軟性、加工性がどの程度であるかを何ら開示しないものである。
そして、粘土やシリコーン等の成分に布地を柔軟化する効果があるとしても(摘記c、d)、それらの成分としてはカチオン性の成分が使用され得るものであるところ(摘記b、e)、一般に、洗浄剤組成物において使用される代表的な洗浄成分としてアニオン性の成分(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩等)があり、カチオン性の成分とアニオン性の成分とを併用すると各々の成分の性能(例えば、カチオン性の成分による柔軟化性能、及び、アニオン性の成分による洗浄性能。)が発揮されない可能性があることは周知の技術的事項と認められること(例えば、「洗浄と洗剤」辻薦著(地人書館)1992年10月1日発行の第45頁の「2.1界面活性剤 2)陽イオン(カチオン)系活性剤」の項には、「…この活性剤は一般に湿潤,浸透,乳化,分散,起泡などの性能は強いので,この特性を生かしての用途は広い.また,本来の界面活性力よりも親油性原子団がカチオンに帯電している性質を利用しての用途も多い.洗浄力は強くなく,また陰イオン系の界面活性剤と不溶性の複塩を生成して界面活性力を失うため,これと併用できない…」と、カチオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤と併用すると複塩を形成して、界面活性力を失うことが記載されている。)を考慮すると、本願発明の補助剤組成物等による布地の洗浄性、柔軟性等について、具体的な実験データ等による裏付けのされていない本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、当業者は、本願発明によって、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能の改善がされるものと、技術的な合理性をもって認識できるとは認められない。
そして、重量平均1次粒径20マイクロメートル?30マイクロメートルの粘土とシリコーンとをシリコーン対粘土重量比0.1?0.2となるように混合した共同微粒子混合体を含む補助剤組成物の流動性指数(FI)を0.5?8とすれば、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく布地柔軟化性能が改善されるという技術常識が存在するとも認められないから、技術常識を考慮しても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本願発明によって、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能の改善がされるという本願発明の課題の解決が図られると認識できるものとは認められない。

(6)請求人の提出した実験データについて
審判請求人は、平成25年4月2日付け意見書において、次の実験データを提出して、本願発明によって、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく布地柔軟化性能が改善された洗濯洗剤組成物が提供されるものであることを主張していると認められる。

そこで、斯かる主張について検討する。
提出された実験データには、「流動性(方法1)」、「流動性(方法2)」という試験サンプルに加える重みの条件を変えた2種類の試験方法によって測定された流動性の実験データが掲載されている。しかしながら、当該実験データは、本願発明の補助剤組成物の試験サンプルの流動性についての性能を示すものではあったとしても、流動性のデータが布地の洗浄性能、加工性及び柔軟化性能を直接的に示すものとはいえないから、斯かる実験データをもって、本願発明によって布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく布地柔軟化性能が改善された洗濯洗剤組成物が提供されることを当業者が確認できるものとは認めらない。
そもそも、当該実験データは、いずれも、P(粘土の粒径)が14、50、84μmものであって、「粘土が20マイクロメートル?30マイクロメートルの重量平均1次粒径」であることを発明特定事項とする本願発明の実施例とは認められないものである。
また、当該実験データは、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件出願後に提出されたこれらの実験データによって、出願のサポート要件適合性に係る不備が解消されるとすることは、我が国特許制度において採用される先願主義の点からも認め難いものである。
よって、審判請求人の主張を採用することはできない。

(7)特許法第36条第6項第1号についてのむすび
以上のとおりであるから、本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものとはいえない。

2.特許法第29条第2項について
(1)本願発明
本願発明は、前記「第2」に記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりのものである。
「布地の洗濯または処置のための微粒子形態の補助組成物であり、前記組成物が、
(i)粘土と、
(ii)シリコーンと、
の共同微粒子混合体を含み、
前記粘土が20マイクロメートル?30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有し、前記シリコーン対粘土の重量比が0.1?0.2であり、前記共同微粒子混合体が、シリコーンを水と接触させて、乳化形態のシリコーンを形成すること、およびその後に前記乳化形態のシリコーンを前記粘土と接触させて、粘土とシリコーンとの混合体を形成することを含む方法により得られ、前記補助組成物が、0.5?8の流動性指数(FI)を有し、
FI=P×R
であり、式中、Pはマイクロメートルで表される前記粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比である、補助組成物。」

(2)刊行物、及び、刊行物に記載された事項
ア.刊行物
刊行物a.国際公開第92/07927(原査定における引用文献1)

イ.刊行物aに記載された事項
本願の優先日(2004年2月3日)前に頒布されたことが明らかな刊行物aには、次の事項が記載されている(なお、記載された事項については、当審による訳を付して示す。)。

a1「The present invention relates to fabric treatment compositions. In particular it relates to fabric treatment compositions comprising softening clays and softening polysiloxanes and flocculating agents.」
(本発明は、繊維処理用組成物に関する。特に、本発明は、柔軟化する粘土と柔軟化するポリシロキサンと凝集剤を含有する繊維処理用組成物に関する。第1頁第3?6行)

a2「Further it is an objective to provide softening-through-the-wash detergent compositions comprising such fabric treatment compositions, preferably granular detergent compositions.」
(さらに、そのような繊維処理用組成物を含有する、洗浄を通した柔軟化を行う洗浄剤組成物、好ましくは、粒子状洗浄剤組成物を提供することも(本発明の)目的である。第3頁第4?7行)

a3「One essential component of the present compositions consists of a clay.…Further preferred are clays which have a particle size in the 5-50 micrometer range.…」
(本組成物の必須成分の1つは、粘土からなる。…さらに好ましくは、5?50マイクロメートルの範囲の粒径を有する粘土である。第4頁第21行?第5頁第8行)

a4「Example I
For compositions A,B,A'B' the following was prepared: 500g of smectic clay having a cation exchange capacity of 70-80meq/100g was mixed with 50g polysiloxane(10% of clay). The polysiloxane was of the general formula with R being methyl, R' being a strait propyl, q being 329, m being 21, n being 1 and y being a polyether of 12 ethyl oxides capped with acetic acid. Both compounds were intimately mixes and agglomerated by using a Braun^(R) multipractic-electronic-de-luxe mixer. The agglomeration aid was water and the agglomerates were sieved to a particle size from 0.15 to 0.85 mm. A reference without the siloxane was also prepared in the same manner.

Composition A was prepared by dry mixing of the clay/siloxane granules with the detergent granules of composition I, according to Table I, such that the resulting softening-through-the-wash detergent containsed 10.5 % of the smectite clay. As a reference composition B was prepared by dry mixing the clay granules with the same detergent granules of composition I, Table I, such that the resulting STW detergent also containsed 10.5 % of the smectite clay. Further compositions A'B' respectively but using detergent composition II of Table I which contains clay flocculating agent.

To facilitate a softness comparison of A,B,A',B' the following test prosedure was used:
3.5 kg of clean fabric laundry loads are washed in an automatic drum washing machine Miele^(R) 423 at 60℃ for 1.5 hours. The hardness of the water was 3.0mmol of Ca^(2+) and Mg^(2+) per liter and the composition concentration was 1% in the wash liquid. For softness evaluation swatches of terry towel softness tracers were added. The softness tracers were line dried prior to assessment of softness. Comparative softness assessment was done by expert judges using a scale of 0 to 4 panel-score-units (PSU). In this scale 0 is given for no difference and 4 is given for maximum difference. Softness was assessed after one and after four wash cycles.

Softness evaluation results of compositions A,B,A',B'



Taking result 1 there is no additive softening effect realized by adding siloxane to a clay-containing STW detergent. The effect of the invention is demonstrated in result 2 where the combination of the clay, flocculating agent and siloxane shows surprisingly clear softening superiority over prior art composition containing clay and flocculating agent.



(例1
組成物A,B,A′,B′のために、以下の調製がされた。
70-80meq/100gのカチオン交換能を有する500gのスメクタイト粘土が50gのポリシロキサン(粘土の10%)と混合された。ポリシロキサンは、Rがメチル、R′が直鎖プロピル、qが329、mが21,nが1、yが酢酸でキャップされた12個のエチレンオキサイドからなるポリエステルである(前出の)式Iのものである。両成分は、ブラウン多用途電気式デラックス混合機を使用して、緊密に混合し凝集させた。凝集助剤は水であり、凝集物は粒径0.15?0.85mmにふるい分けされた。シロキサンを含有しない対照例も同様に同じ方法で調整された。

組成物Aは、粘土/シロキサン粒状物と、テーブルIによる組成物Iの洗浄剤粒状物とを乾式混合することによって調製され、10.5%のスメクタイト粘土を含有させた、洗浄を通した柔軟化を行う洗浄剤組成物となるようにされた。同様に、粘土粒状物と、同じテーブルIによる組成物Iの洗浄剤粒状物とを乾式混合することによって対照例の組成物Bが調製され、10.5%のスメクタイト粘土を含有させた、洗浄を通した柔軟化を行う(STW)洗浄剤組成物となるようにされた。さらに、組成物A′,B′が、各々、
テーブルIの粘土凝集剤を含む洗浄剤組成物IIを使用したが、組成物A,Bと同様の方法で調製された。

A,B,A′,B′の柔軟性の比較を容易にするために、以下の試験手順を用いた。
3.5kgのクリーンな繊維洗濯物を自動ドラム式洗濯機ミール423中で、60℃で1.5時間洗浄した。水の硬度は、1リットル当たりCa^(2+)、Mg^(2+)3.0mmolであり、組成物の濃度は、洗浄液中で1%であった。 柔軟性の評価のために、タオル地の柔軟性調査物のサンプルが加えられた。その柔軟性調査物は、柔軟性の評価に先立ち干して乾かされた。比較柔軟性評価は、専門の判定者によって、スケール0?4のパネルスコアユニット(PSU)を用いて行われた。このスケールで、0は相違なし、4は最大の相違である。柔軟性は、1及び4洗浄サイクル後に評価された。

組成物A,B,A′,B′の柔軟性評価結果。

結果 組成物の比較 1洗浄サイクル 4洗浄サイクル
1. AとB -0.1PSU 0.0PSU
2. A′とB′ 0.6PSU 0.9PSU
結果1から、粘土を含有する洗浄を通した柔軟化を行う(STW)洗浄剤組成物にシロキサンを加えることによって追加的な柔軟化効果はないことがわかる。本発明の効果は、粘土と凝集剤とシロキサンとの組み合わせが、粘土と凝集剤とを含む先行技術の組成物に対して、驚くほど明らかな柔軟性の優位を示している結果2において実証されている。
(Table I の訳は省略する。)
第26頁第1行?第27頁第23行、第30頁)

a5「CLAIMS
1. A fabric treatment composition comprising

a softening clays and
- 0.005%-20% by weight of said softening clay of a clay flocculating agent and
- 0.1-50% by weight of said softening clay of straight or branched, substituted polysiloxane of the general formula

…」
(クレーム
1.以下を含有する繊維処理用組成物。
a.柔軟化粘土と
-該柔軟化粘土の0.005?20重量%の凝集剤と
-該柔軟化粘土の0.1?50重量%の直鎖、分枝鎖の以下の一般式で表される置換ポリシロキサン
(式の掲載は省略) …。
第33頁特許請求の範囲請求項1)

a6「CLAIMS…
16. A laundry detergent composition comprising at least one surface active agent characterized in that it also contains from 1% to 50% by weight of said laundry detergent composition of the fabric treatment composition according to any of the previous claims.」
(クレーム

16.少なくとも1つの表面活性剤を含む洗濯洗浄剤組成物であって、前記いずれかの請求項の繊維処理用組成物をも該洗濯洗浄剤組成物の1?50重量%含有する洗濯洗浄剤組成物。
第37頁特許請求の範囲請求項16)

a7「To provide particulate compositions, the compounds of said fabric treatment composition are preferably agglomerated. The typical agglomerate size useful in the present invention is from 0.2 to 1.2 millimeter on average, with individual agglomerates ranging from 0.05 mm to 2.5 mm.」
(粒子状組成物を提供するために、既述の繊維処理用組成物の混合物は好ましくは凝集化されている。本発明で有用な典型的な凝集物の大きさは平均0.2?1.2mmであり、0.05?2.5mmの範囲の個々の凝集粒子からなる。第16頁第6?11行)

(3)判断
(ア)刊行物aに記載された発明
刊行物aには、「柔軟化粘土と、該柔軟化粘土の0.005?20重量%の凝集剤と、該柔軟化粘土の0.1?50重量%の特定の一般式で表されるポリシロキサンとを含有する繊維処理用組成物」(摘記a5、1)が記載され、500gのスメクタイト粘土に対して50gのポリシロキサンを用いた実施例(摘記a4)、及び、平均0.2?1.2mmの凝集物を含有する混合物であること(摘記a7,4)が記載されている。
そして、刊行物aの粘土についての「5?50マイクロメートルの範囲」(摘記a3)との粒径は、凝集物(摘記a7)を形成する前の粘土についてのものであること等からみて1次粒径を意味するものと解される。
これらの事項を総合すると、刊行物aには、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。

「柔軟化粘土と、該柔軟化粘土の0.005?20重量%の凝集剤と、該柔軟化粘土の10重量%のポリシロキサンとを含有する凝集物を含有する混合物であり、該柔軟化粘土の1次粒径が5?50マイクロメートルである洗濯の用途で使用される繊維処理用組成物。」

(イ)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「柔軟化粘土」、「ポリシロキサン」、「凝集物」は、順に、本願発明の「(i)粘土」、「(ii)シリコーン」、「共同微粒子混合体」に相当する。
引用発明の「(凝集物を含有する)混合物」は、繊維の柔軟化を補助する処理剤(摘記a1、4)を構成するものであるから、実質的に、本願発明の「微粒子形態の補助組成物」に相当する。
引用発明の「洗濯の用途で使用される繊維処理用組成物」は、処理される繊維として、布状と解されるタオルが記載されていること(摘記a4)を考慮すると、本願発明の「布地の洗濯または処置のための…補助組成物」に相当する。
引用発明の「該柔軟化粘土の10重量%(のポリシロキサン)」は、ポリシロキサン対粘土の重量比が0.1(=10/100)であることを意味するから、本願発明の「シリコーン対粘土の重量比が0.1?0.2」と0.1において重複する。

以上を総合すると両者は、
「布地の洗濯または処置のための微粒子形態の補助組成物であり、前記組成物が、
(i)粘土と、
(ii)シリコーンと、
を含む共同微粒子混合体を含む、
前記シリコーン対粘土の重量比が0.1である補助組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明は、FI=P×R(式中、Pはマイクロメートルで表される前記粘土の重量平均1次粒径であり、Rはシリコーン対粘土の重量比である)で表される流動性指数(FI)が0.5?8であるのに対して、引用発明は、流動性指数(FI)を発明特定事項とするものでない点。

相違点2:本願発明は、粘土が20?30マイクロメートルの重量平均1次粒径を有するものであるのに対して、引用発明は、粘土に相当する柔軟化粘土が5?50マイクロメートルの1次粒径を有するものである点。

相違点3:本願発明は、共同微粒子混合体が、シリコーンを水と接触させて、乳化形態のシリコーンを形成すること、およびその後に前記乳化形態のシリコーンを前記粘土と接触させて、粘土とシリコーンとの混合体を形成することを含む方法により得られたものであるのに対して、引用発明は、斯かる
事項を発明特定事項とするものでない点。

相違点4:引用発明は、柔軟化粘土の0.005?20重量%の凝集剤を含有するのに対して、本願発明は、凝集剤を含有することを発明特定事項とするものでない点。

(ウ)検討
i.相違点1
引用発明は、粘土の1次粒径(=P)が5?50マイクロメートルのものであるが、これは重量平均1次粒径(累積重量分布における累積重量が50%となる1次粒径の値)が5?50マイクロメートルの範囲であるものを包含するものと認められる(例えば、全ての粘土粒子の1次粒径が、下限値の5マイクロメートルであれば重量平均1次粒径は5マイクロメートルであり、全ての粘土粒子の1次粒径が、上限値の50マイクロメートルであれば50マイクロメートルである。そして、これらの下限値と上限値の間の範囲の1次粒径の粒子が混在する引用発明の粘土粒子の重量平均1次粒径は、5?50マイクロメートルの範囲にあるといえる。)。
そして、引用発明は、シリコーン対粘土の重量比(=R)が0.1のものであるから、流動性指数(FI=P×R)の値は、0.5?5(=5×0.1?50×0.1)の範囲にあるものと認められる。
そうすると、引用発明は、流動性指数(FI)の値を発明特定事項とするものではないとしても、その流動性指数は0.5?8という本願発明において特定される条件を実質的に満たすものといえるから、相違点1は実質的な相違点とは認められない。

ii.相違点2
上記i.に記載したように、引用発明は、粘土粒子の重量平均1次粒径(P)が、5?50マイクロメートルの範囲にあるものと認められるが、粘土粒子の重量平均1次粒径を当該範囲内のどの程度の値とするかは、粘土を含有する組成物によって処理された繊維製品において発現される柔軟性、洗浄性等の程度を考慮して、当業者が適宜設定し得た事項と認められる。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載をみても、実施例はいずれも本願発明の補助剤組成物ないしそれを含有する洗濯洗剤組成物の処方を記載するに止まるものであって、本願発明の補助剤組成物を使用した場合の洗浄性、柔軟性、加工性等の効果を開示するものではないし、その他の発明の詳細な説明も本願発明の補助剤組成物を使用した場合の洗浄性、柔軟性、加工性等の効果を確認できるものとはいえないことを考慮すると、粘土粒子の重量平均1次粒径として5?50マイクロメートルのうちから20?30マイクロメートルの範囲を選択することは、当業者が格別の困難性なく、なし得たことと認められる。

iii.相違点3
シリコーンのような有機化合物と、粘土のような無機物質とを混合する際に、両者をなるべく混ざり易くするために、有機物を予め乳化形態にしておくことは、周知の技術と認められること(例えば、シリコーン及び粘土鉱物を含有する乳化組成物の製造方法等に係る、特開2000-327526号公報の段落【0002】に、【従来の技術】について、「従来において、乳化系液体に粘土鉱物を分散配合する場合には、1.予め乳化液体を調製した後、粘土鉱物を配合させる…方法が適用されていた。」と記載されるように、有機化合物を予め乳化した液体に粘土を混合する方法は、本願出願前に周知の技術であったものと推認される。)を考慮すると、引用発明において、シリコーンと粘土とを混合する際に、斯かる周知の技術を採用して、「シリコーンを水と接触させて、乳化形態のシリコーンを形成すること、およびその後に前記乳化形態のシリコーンを前記粘土と接触させて、粘土とシリコーンとの混合体を形成すること」による方法によって、両者を混合することは、当業者が周知技術を考慮して容易になし得たことと認められる。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても、そのような方法を採用することによって、当業者が予測し得ない顕著な効果が奏されるものとは認められない。

iv.相違点4
本願明細書の発明の詳細な説明の「【0036】(補助剤成分)補助組成物及び/又は洗濯洗剤組成物は、所望により1つ以上の補助剤成分を含んでよい。これらの補助剤成分は…凝集剤類…から選択される。」、「【0034】(凝集補助剤)凝集補助剤は、粘土を凝集ざせることができる。…」との記載等からみて、本願発明は、凝集剤を含有する場合を包含するものと認められるから、相違点4は実質的な相違点とは認められない。

v.本願発明の効果について
本願明細書の発明の詳細な説明の「【0008】…従って、布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能を改善する必要性が依然として存在する。
【0009】本発明は、上述の問題を、…克服するものである。」との記載等からみて、本願発明は、「布地洗浄性能及び加工性に大きな悪影響を与えることなく、洗濯洗剤組成物の布地柔軟化性能を改善する」という課題を解決することを発明の効果とするものと解されるが、本願発明によって斯かる効果が奏されることを、本願明細書の発明の詳細な説明からは確認できないし、平成25年4月2日付け意見書における実験データを考慮してもやはり確認できない(前記「1.(5)、(6)」参照。)から、本願発明が引用発明に比べて当業者が予測し得ない程の顕著な効果を奏するものと認めることはできない。

(4)特許法第29条第2項のまとめ
以上のとおり、上記相違点1?4に係る本願発明の構成の点は、いずれも、実質的な相違点といえないものであるか、当業者が容易になし得たものであり、本願発明によって、当業者が予測し得ない程の顕著な効果が奏されるものとは認められない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-24 
結審通知日 2013-09-27 
審決日 2013-10-10 
出願番号 特願2006-551557(P2006-551557)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C11D)
P 1 8・ 121- WZ (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 智大熊 幸治  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 小石 真弓
松浦 新司
発明の名称 布地の洗濯又は処置の用途に用いるための組成物  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 榎 保孝  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ