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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1284912
審判番号 不服2012-2454  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-08 
確定日 2014-02-20 
事件の表示 特願2006-529212「γδT細胞の培養方法、γδT細胞及び治療・予防剤」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日国際公開、WO2006/006720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年7月12日(優先権主張 平成16年7月13日,平成17年1月13日)を国際出願日とする特許出願であって,平成23年4月26日付けで拒絶理由通知書が出され,同年7月25日に意見書,手続補正書及び手続補足書が提出されたが,同年11月2日付けで拒絶査定がなされ,平成24年2月8日に,拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年4月5日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?15に係る発明は,平成23年7月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される発明であると認める。
そして,その内,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次の事項により特定される発明である。

「【請求項1】
末梢血単核球にビスホスホネート系骨代謝改善薬の濃度が0.05?100μM及びIL-2の濃度が700?2000U/mLとなるように添加して培養することを特徴とするγδT細胞の培養方法。」

第3 引用刊行物記載の事項
原査定の拒絶理由で引用され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第03/070921号(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が記載されている。
なお,摘記箇所の頁と行は,刊行物1の頁と行を表す。翻訳は,対応日本出願の公表特許公報である特表2005-517440号公報による。参考として,公表特許公報の対応箇所の段落番号も付しておいた。

(刊1-1)「1. ガンマデルタTリンパ球組成物を調製する方法であって,培養開始時にガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物の存在下に少なくとも5000万個の単核細胞を含む生物調製物を培養し,続いてサイトカイン存在下に培養する工程を少なくとも1つ含む方法。
・・・(略)・・・
8. ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物がガンマデルタTリンパ球のT細胞受容体リガンドである,請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
9. ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物をホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択する,請求項8に記載の方法。
10. ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物を以下の化合物より成る群:
3-(ブロモメチル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(BrHPP)
3-(ヨードメチル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(IHPP)
3-(クロロメチル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(CIHPP)
3-(ブロモメチル)-3-ブタノール-1-イル-3リン酸(BrHPPP)
3-(ヨードメチル)-3-ブタノール-1-イル-3リン酸(IHPPP)
α,γ-ジ-[3-(ブロモメチル)-3-ブタノール-1-イル]-3リン酸(diBrHTP)
α,γ-ジ-[3-(ヨードメチル)-3-ブタノール-1-イル]-3リン酸(diIHTP)
3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブチル-2リン酸(Epox-PP)
3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブチル-3リン酸(Epox-PPP)
α,γ-ジ-3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブチル-3リン酸(diーEpox-TP)
から選択する,請求項9に記載の方法。
・・・(略)・・・
11. サイトカインをインターロイキン-2およびインターロイキン-15より成る群から選択する,請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
12. サイトカインを約150U/ml?約500U/mlの範囲を含む濃度で使用する,請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。」(明細書45頁2行?46頁末行 【請求項1】?【請求項12】)

(刊1-2)「発明はリンパ球を製造する方法,ならびにその実行に有益な道具,試薬およびキットに関する。より具体的には,発明は医薬品質の機能細胞の産業生産に適応した,ガンマデルタT細胞を大量に調製する方法に関する。発明はまたガンマデルタT細胞を活性化する方法,前記方法に適応した用具,ならびに生ずる細胞組成物およびその使用にも関する。本出願はヒトまたは動物のガンマデルタT細胞の製造に応用でき,特に医薬品,治療,実験,化粧品および産業での研究に使用できる。」(明細書1頁2?12行 【0001】)

(刊1-3)「生物調製物
発明の方法は,これにより大量の未分画血液細胞を含む生物調製物からガンマデルタT細胞を効率的に製造できるようになることに関し有益である。従って方法は,血液,血漿または血清サンプル,例えばサイタフェレーシスのサンプルに直接実施されるだろう。一般には血液の単核細胞調製物,特に末梢血由来調製物が用いられる。末梢血細胞調製物は通常TまたはBリンパ細胞を約30?70%,NK細胞を5?15%,そしてガンマデルタT細胞を1?5%含んでいる。」(明細書6頁20行?7頁2行 【0018】)

(刊1-4)「発明の別の具体的目的は,(i)被検体の血液単核細胞を,典型的には約10^(7)?5.10^(9)細胞/mlを含む小分け物の形で凍結すること(または獲得すること),(ii)細胞または個々の小分け物を融解し,それらをガンマデルタT細胞の合成活性化化合物およびサイトカイン存在下に,ガンマデルタT細胞の増殖を保証する条件で培養すること,および(iii)生じたガンマデルタT細胞を回収すること,または製剤化することを含む,機能的ガンマデルタT細胞の製造方法にも関する。血液単核細胞はサイタフェレーシス由来のものが好ましい。」(明細書8頁15?23行 【0022】)

(刊1-5)「ガンマデルタT細胞の合成活性化化合物
発明の方法の優れた一側面はガンマデルタT細胞の合成活性化化合物の使用である。即ち発明は,合成化合物を利用した単一の代謝活性化だけでガンマデルタT細胞を効果的かつ方向づけられた活性化および増幅できることを示している。

合成活性化化合物という用語は,ガンマデルタT細胞を活性化できる,人工的に作られた分子を発明が使用することを表している。かかる化合物は一般にはガンマデルタT細胞のT細胞受容体に結合できるリガンド(例えば化学分子)である。活性化化合物は多様な性質であるが,とりわけてもペプチド,脂質,化学物質である。それは精製または化学合成により産生した内因性リガンド,あるいは上記リガンドの断片または誘導体,あるいは同じ抗原特異性を有する抗体でもよい。好ましくは,それはTCR受容体と選択的に結合しガンマデルタT細胞を活性化できる合成化合物である。選択的結合とは,前記化合物が他の膜受容体に比べガンマデルタT細胞のTCRに対しより高い親和性で相互作用すること,それ故にガンマデルタT細胞の増殖および活性を選択的または方向づけられた活性化に導くことを意味する。」(明細書10頁7行?末行 【0026】?【0027】)

(刊1-6)「活性化化合物の投与量は,当業者により,細胞量および用いる化合物の性質に合わせ調節されるだろう。一般には,培養開始時では化合物は約10μM以下で用いられる。発明の方法の重要な優位点は,培養開始時に必用な選択的代謝活性化がひとつだけであるという事実である。即ち一度培養を開始すれば,それ以上合成活性化化合物を培地に加える必用はない。」(明細書12頁20行?末行 【0036】)

(刊1-7)「発明の方法で使用するサイトカインの投与量は,出発細胞の性質により変わるだろう。さらに,サイトカイン濃度は培養中に変更してもよい。一般にサイトカインは100?500U/mlの範囲の濃度,典型的には約150?500U/mlの範囲の濃度で用いる。方法の進行に伴って,例えば培地にサイトカインを追加してサイトカイン濃度を調整してもよい。好ましくは150?400U/mlの範囲のサイトカイン投与量を用いる。具体的実施態様では,培養を第一投与量のサイトカイン存在下に開始し,次に第一投与量より高い第二投与量存在下に培養を続け,細胞増殖を上げることもできる。従って,発明の具体的目的は,少なくとも以下の工程を含む,単核細胞サンプルからガンマデルタT細胞組成物を調製する方法に基づいている:
-ガンマデルタT細胞合成活性化化合物およびサイトカイン存在下に単核細胞を培養し,前記サイトカインが第一有効投与量存在する第一の培養工程,および
-上記サイトカインの第二有効投与量存在下に上記細胞を培養し,上記第二有効投与量が上記第一有効投与量より高い第二の培養工程。」(明細書15頁3?21行 【0043】)

(刊1-8)「実際発明は,合成活性化化合物の使用がサイトカインIL2に対する高親和性受容体のガンマデルタT細胞表面での発現を促進することおよび低用量のIL-2によりガンマデルタT細胞の特異的増殖が十分可能であること,前記低用量では低親和性受容体を有する細胞の増殖は促進しないことを示している。しかし高親和性受容体は培養7?10日後には消失し,低親和性受容体にとって替わられる。そのため方法の性能を向上して機能的ガンマデルタT細胞の増殖を高めるには,次に細胞をより高いサイトカイン用量存在下で培養しなければならない。この実施態様では,最初のサイトカイン用量は約300U/ml以下,好ましくは約150U/ml程度であることが望ましく,そして2番目のサイトカイン用量は約300U/mlを超えて,好ましくは約350U/ml,典型的には400U/ml超であることが望ましい。」(明細書15頁22行?16頁7行 【0044】)

(刊1-9)「フラスコおよびバッグでの培養開始(分離日)
24ウエルプレートでの培養で用いる「リンパ球数/ウエル面積」の比が約1.10^(6)細胞/1.9cm^(2)に等しくなるように,各種容器(または培養用具)内に接種するMNC数を選んだ(表4参照)。

各供血者の単核細胞を,開始容量および細胞数が同一である,即ち容器あたり細胞1億個,RPMI/10%FCS/3μM BrHPP,120IU/mlのIL-2の溶液50ml(初期細胞濃度200万個/ml)のはいった容器で培養した。培養中,各操作の指示に従って360IU/mlのIL2を含む同一培地を追加した。

24ウエルプレートでの培養開始(融解後)
PBMCおよびMNCを24ウエルプレートを使い,ウエルあたり100万細胞の割合で,RPMI/10%FCS/3μM BrHPP/120IU/mlIL-2溶液1.5ml(60万細胞/mlに相当)で培養した。

細胞条件
細胞は加湿した5%CO_(2)大気中,37℃で,RPMI/10%FCS/360IU/mlIL-2の中で培養し,維持した。最初の培地交換は4日目に培地を追加する形で行い,以後3日おきに行った。このようにしてIL2濃度は培養期間中増加した。

24ウエルプレート内で増殖した細胞を,細胞密度が3.10^(6)細胞/mlに達した時点で垂直に置いた25cm^(3)フラスコに移した。フラスコまたはバック内で培養した細胞については,培地を追加して細胞密度を2.10^(6)細胞/mlに維持した:最大容積=150ml。培養全期間を通して同じ培養容器を使用しているため,容積が上記最大値に達した場合には細胞の一部を取り除いて(および新鮮培地を追加して)細胞密度を2.10^(6)細胞/mlに保つ必要がある。

3週間の培養期間中,数回,具体的にはD10,D15,D20に細胞数の測定および表現形の観察を行った。細胞数の測定および表現形観察はつぎのようにして行った:
-Coulterカウンターによる全生細胞数測定
-CD56/CD3二重標識
-Vδ2/CD3/CD69三重標識
-アイソタイプコントロール:IgG1k-FITC/R-PE/cyC
-フローサイトメトリー(FACScan,Becton Dickinson)によるデータ取得」(明細書27頁8行?28頁24行 【0083】?【0088】)

第4 刊行物1記載の発明
刊行物1記載の請求項12(刊1-1)に注目し,請求項12が引用する請求項のうち,請求項11,請求項9及び請求項1を引用する発明として,請求項の引用を解除すると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ガンマデルタTリンパ球組成物を調製する方法であって,培養開始時にガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物の存在下に少なくとも5000万個の単核細胞を含む生物調製物を培養し,続いてサイトカイン存在下に培養する工程を少なくとも1つ含む方法であって,
該ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物をホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択し,
該サイトカインをインターロイキン-2およびインターロイキン-15より成る群から選択し,
該サイトカインを約150U/ml?約500U/mlの範囲を含む濃度で使用する,
ガンマデルタTリンパ球組成物を調製する方法。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 γδT細胞の培養方法について,
引用発明の「ガンマデルタTリンパ球組成物を調製する方法」は,「培養する工程を少なくとも1つ含む方法」を含むものであって,その培養対象物は,刊行物1に「発明の別の具体的目的は,・・・(略)・・・ガンマデルタT細胞の増殖を保証する条件で培養する」(刊1-4)と記載されていることからみて,ガンマデルタTリンパ球,すなわち,γδT細胞であるから,本願発明の「γδT細胞の培養方法」に相当する。

2 末梢血単核球について
引用発明の「培養開始時にガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物の存在下に少なくとも5000万個の単核細胞を含む生物調製物」は,刊行物1に「一般には血液の単核細胞調製物,特に末梢血由来調製物が用いられる。」(刊1-3)との記載からみて,末梢血由来の単核細胞調製物を用いるものであって,末梢血単核球が含有されるものである。
そうすると,引用発明の「単核細胞を含む生物調製物」に含まれる末梢血単核球は,本願発明の「末梢血単核球」に相当する。

3 ビスホスホネート系骨代謝改善薬について
本願明細書2頁31?33行に「本発明のこのような構成によると,培養液中の末梢血単核球にビスホスホネートを0.05?100μMとなるように添加することにより,末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させ」と記載されていることから,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」は,末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させることを期待して添加されているものである。

他方,引用発明の「ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物」とは,刊行物1に「発明の方法の優れた一側面はガンマデルタT細胞の合成活性化化合物の使用である。即ち発明は,合成化合物を利用した単一の代謝活性化だけでガンマデルタT細胞を効果的かつ方向づけられた活性化および増幅できることを示している。」(刊1-5)との記載からみて,ガンマデルタT細胞の効果的かつ方向づけられた活性化および増幅を期待して添加されているものである。

そうすると,引用発明の「ホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択」される「該ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物」と,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」とは,「末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させる作用を有する化合物」という点で共通する。

4 IL-2について
引用発明の「インターロイキン-2およびインターロイキン-15より成る群から選択」される「該サイトカイン」と,本願発明の「IL-2」とは,サイトカインという点で共通する。

5 各成分の添加量について
引用発明では,「合成活性化化合物」の添加量について,何らの規定もないが,「合成活性化化合物の存在下」とあるのだから何らかの量添加されていることは自明であって,引用発明の「引用発明の合成活性化化合物の存在下」と,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬の濃度が0.05?100μM」とは,「末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させる作用を有する化合物の濃度が所定の濃度」という点で共通する。

また,引用発明の「サイトカイン」の一種である「IL-2」の濃度は「約150U/ml?約500U/ml」であって,本願発明の「IL-2の濃度が700?2000U/mLとなるように添加」することとは,サイトカインの濃度が所定の濃度となるように添加」することで共通する。

6 ビスホスホネート系骨代謝改善薬及びIL-2を添加することについて
引用発明の「合成活性化化合物の存在下に少なくとも5000万個の単核細胞を含む生物調製物を培養し,続いてサイトカイン存在下に培養する工程」は,あたかも,合成活性化合物の存在下の培養の後,サイトカイン存在下の培養をするように記載されている。
この点について,刊行物1には「発明の別の具体的目的は,・・・(略)・・・(ii)細胞または個々の小分け物を融解し,それらをガンマデルタT細胞の合成活性化化合物およびサイトカイン存在下に,ガンマデルタT細胞の増殖を保証する条件で培養すること」とあるように,合成活性化化合物およびサイトカインを共に存在する状態で培養することも,引用発明に包含するものと解される。

これを裏付けるように,刊行物1記載の実施例には,
「各供血者の単核細胞を,開始容量および細胞数が同一である,即ち容器あたり細胞1億個,RPMI/10%FCS/3μM BrHPP,120IU/mlのIL-2の溶液50ml(初期細胞濃度200万個/ml)のはいった容器で培養した。培養中,各操作の指示に従って360IU/mlのIL2を含む同一培地を追加した。」(刊1-9)
と記載されている。ここに記載の「BrHPP」は,刊行物1の請求項10によれば,合成活性化化合物の一種である「3-(ブロモメチル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(BrHPP)」((刊1-1)の請求項10)である。
このことから,供血者の単核細胞を培養を開始する段階,すなわち,引用発明の「培養開始時」において,合成活性化化合物に加えIL-2を添加した培地で培養を行っている。
そして,「各操作の指示に従って360IU/mlのIL2を含む同一培地を追加した」とあるように,IL-2の濃度は更に,高められたことがわかる。

その後,次のような24ウエルプレートでの培養に移行する。
「24ウエルプレートでの培養開始(融解後)
PBMCおよびMNCを24ウエルプレートを使い,ウエルあたり100万細胞の割合で,RPMI/10%FCS/3μM BrHPP/120IU/mlIL-2溶液1.5ml(60万細胞/mlに相当)で培養した。」(刊1-9)
この24ウエルプレート培養段階でも,合成活性化化合物とIL-2が含まれた培地で培養が行われていることから,引用発明の「続いてサイトカイン存在下に培養する工程」でも,サイトカインであるIL-2と合成活性化化合物の両者が加えられた培地で培養が行われている。

最終的に「24ウエルプレート内で増殖した細胞を,細胞密度が3.10^(6)細胞/mlに達した時点で垂直に置いた25cm^(3)フラスコに移した。」(刊1-9)とする培養に移行する。このときの培養条件は「細胞条件
細胞は加湿した5%CO_(2)大気中,37℃で,RPMI/10%FCS/360IU/mlIL-2の中で培養し,維持した。最初の培地交換は4日目に培地を追加する形で行い,以後3日おきに行った。このようにしてIL2濃度は培養期間中増加した。」とする培養条件である。

以上のことを総合すると,引用発明の「培養開始時にガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物の存在下に少なくとも5000万個の単核細胞を含む生物調製物を培養し,続いてサイトカイン存在下に培養する工程」には,合成活性化化合物及びサイトカインの双方を添加した培地で培養する工程が包含されており,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬の濃度が0.05?100μM及びIL-2の濃度が700?2000U/mLとなるように添加して培養すること」とは,「合成活性化化合物の濃度が所定の濃度及びサイトカインの濃度が所定の濃度となるように添加して培養すること」で共通する。

7 小括
以上のことから,両発明の間には,次の(一致点)並びに(相違点1)及び(相違点2)がある。

(一致点)
「末梢血単核球に末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させる作用を有する化合物の濃度が所定の濃度及びサイトカインの濃度が所定の濃度となるように添加して培養することを特徴とするγδT細胞の培養方法。」

(相違点1)
γδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させる作用を有する化合物が,本願発明では「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」であり,その濃度が「0.05?100μM」であるのに対して,引用発明では「ホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択」された化合物であって,その濃度について特段規定されていない点。

(相違点2)
サイトカインが,本願発明では「IL-2」であって,その濃度が「700?2000U/mL」であるのに対して,引用発明では,「インターロイキン-2およびインターロイキン-15より成る群から選択」されたものであって,その濃度も「約150U/ml?約500U/ml」である点。

第6 検討
1 相違点1について
(1)本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」を使用する技術的な意義について
本願明細書には,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」を使用する技術的な意義について,次のような記載がある。
「本発明のこのような構成によると,培養液中の末梢血単核球にビスホスホネートを0.05?100μMとなるように添加することにより,末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させ,更にIL-2を50?2000U/mLとなるように添加して刺激することにより活性化及び/又は増殖されたγδT細胞を高純度かつ大量に得ることが可能である。」(本願明細書2頁31?33行)(なお,本願明細書の記載に付した下線は当審にて付記したものである。以下,同様である。)
この記載から,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」を使用する目的は,末梢血単核球中のγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させることであると解される。

そして,骨代謝改善薬としての本願明細書の記載事項は,次に摘記する程度のものしかない。
「ビスホスホネートは,骨吸収抑制作用を有し,一般的に骨粗鬆症治療薬として使用されるものであればよく,その例として,パミドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,パミドロン酸二ナトリウム・五水和物(Aredia,ノバルティスファーマ)),アレンドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,アレンドロン酸ナトリウム・三水和物(Onclast,萬有製薬)),ゾレドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,ゾレドロン酸ナトリウム・水和物(Zometa,ノバルティスファーマ)),リセドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,リセドロン酸ナトリウム・水和物),イバンドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,イバンドロン酸二ナトリウム),インカドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,インカドロン酸二ナトリウム),エチドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物(例えば,エチドロン酸二ナトリウム)が挙げられ,これらの中で,とりわけパミドロン酸,アレンドロン酸,ゾレドロン酸,その塩及び/又はそれらの水和物等の窒素原子を有するもの(アミノビスホスホネート)が好ましい。」(本願明細書3頁30行?4頁9行)
ここには,ビスホスホネートの骨代謝改善薬としての薬効とγδT細胞を選択的に活性化及び/又は増殖させることとの関連については記載されていない。
そして,本願明細書記載の実施例1において
「4)γδT細胞を活性化及び/又は増殖するためのビスホスホネートとしてAredia, Onclast, Zometaをそれぞれ添加し,37℃,5%CO_(2)濃度条件下で培養を開始した。」(本願明細書6頁22?24行)
と記載されている。
実施例1で使用された「Aredia, Onclast, Zometa」は,前記したように,それぞれ,ノバルティスファーマ,萬有製薬,ノバルティスファーマから販売されている商品名である。

そうすると,本願発明の「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」は,γδT細胞を活性化及び/又は増殖するために加えられたものであって,骨代謝改善薬としての薬効を期待して加えられたものではないことが分かり,骨粗鬆症治療薬として普通に使われているものから選ぶという程度のものと理解される。

(2)「ビスホスホナート化合物」を選択することについて
他方,引用発明の「合成活性化化合物」は,「ホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択」されるものであって,ビスホスホナート,すなわち,ビスホスホネート化合物が選択肢に含まれているものである。
刊行物1の請求項9に,「ガンマデルタTリンパ球の合成活性化化合物をホスホハロヒドリン化合物,ホスホエポキシド化合物およびビスホスホナート化合物より成る群から選択する,請求項8に記載の方法。」(刊1-1)と,特許請求の範囲にその選択肢が記載されているのであるから,ビスホスホナートを選択することは,何の困難性もなくなし得ることといえる。

そして,ビスホスホナート化合物は,前記したように骨粗鬆症治療薬として市販されているものであって,引用発明において,「ビスホスホナート化合物」を,市販の化合物から選ぶことで,本願発明のように「ビスホスホネート系骨代謝改善薬」とすることは,何の創作性もなくなし得たことといえる。

(3)ビスホスホナート化合物の濃度を決めることについて
次に,引用発明において,ビスホスホナート化合物の濃度を決めることについて検討する。
刊行物1には,合成活性化化合物の添加量について,「活性化化合物の投与量は,当業者により,細胞量および用いる化合物の性質に合わせ調節されるだろう。」(刊1-6)とした上で,「一般には,培養開始時では化合物は約10μM以下で用いられる。」(刊1-6)としている。この一般的な濃度である「約10μM以下」は,本願発明の「0.05?100μM」と重複するものである。
そうすると,引用発明において,「合成活性化化合物」として,骨粗鬆症治療薬として市販されてもいるビスホスホナート化合物を選び,その添加量を,選んだビスホスホナート化合物の活性や細胞量を考慮して,刊行物1で例示された「約10μM以下」(刊1-6)との濃度を増減して,ガンマデルタT細胞の培養に最適な濃度範囲を決めることで,相違点1に記した本願発明の特定事項のごとく「0.05?100μM」とすることは,当業者が容易になし得たことといえる。

2 相違点2について
(1)刊行物1におけるIL-2の使用目的について
IL-2を使用する目的について,刊行物1の(刊1-8)の記載をまとめると次のようになる。
「合成活性化化合物の使用がサイトカインIL2に対する高親和性受容体のガンマデルタT細胞表面での発現を促進する。」
これにより,高親和性IL-2受容体がガンマデルタT細胞表面で発現するため,「低用量のIL-2によりガンマデルタT細胞の特異的増殖が十分可能」となる。
その後,「高親和性受容体は培養7?10日後には消失し,低親和性受容体にとって替わられる」ことにより,低濃度のIL-2では,充分な増殖効果が得られなくなる。「そのため方法の性能を向上して機能的ガンマデルタT細胞の増殖を高めるには,次に細胞をより高いサイトカイン用量存在下で培養しなければならない。」としている。
さらに,その添加量については,「この実施態様では,最初のサイトカイン用量は約300U/ml以下,好ましくは約150U/ml程度であることが望ましく,そして2番目のサイトカイン用量は約300U/mlを超えて,好ましくは約350U/ml,典型的には400U/ml超であることが望ましい。」としている。

(2)サイトカインとしてIL-2を選ぶことについて
上記「(1)」に記したように,刊行物1においては,IL-2がガンマデルタT細胞の増殖に寄与する原理が記載されているのだから,引用発明において,「サイトカインをインターロイキン-2およびインターロイキン-15より成る群から選択」する際に,インターロイキン-2,すなわち,IL-2を選択することは,当業者が容易になし得たことといえる。

(3)IL-2の濃度を決めることについて
刊行物1には,サイトカインの濃度について,「発明の方法で使用するサイトカインの投与量は,出発細胞の性質により変わるだろう。」(刊1-7)と記した上で「一般にサイトカインは100?500U/mlの範囲の濃度,典型的には約150?500U/mlの範囲の濃度で用いる。」と記載している。
そうすると,サイトカインの濃度は,出発細胞の性質により変わるものであって,500U/mlは,一般的な場合の上限を示しているに過ぎず,500U/mlを超えて適用すること妨げていないことは明白である。
また,上記「(1)」に記したように,「合成活性化化合物の使用がサイトカインIL2に対する高親和性受容体のガンマデルタT細胞表面での発現を促進する。」(刊1-8)のであるから,合成活性化化合物の活性化能が乏しかったり,充分量のIL-2に対する高親和性受容体が発現しない場合,それを補うために高い濃度のIL-2を添加する必要があることは明らかである。

以上のことから,引用発明において,出発細胞の性質の差や合成活性化化合物の活性化能の差等を考慮して,ガンマデルタT細胞の増殖に資するIL-2の濃度を適宜決め,「IL-2の濃度が700?2000U/mL」とする程度のことは,当業者が容易になし得たことといえる。

3 本願発明の効果について
(1)単核球中に含まれるγδT細胞の割合(%)について
本願発明の「IL-2の濃度が700?2000U/mL」としたことに対応する実施例として,本願明細書の表1?表3が記載されているが,単核球中に含まれるγδT細胞の割合(%)は,[IL-2の濃度400U/mL]の方が[IL-2の濃度700?2000U/mL]よりも概ね良いことがわかる。
また,表4の結果も同様である。(なお,表4の「a)」と「b)」は,「なお,表4a)と表5a)の末梢血単核球は,同一のドナー由来のものであり,表4b)と表5b)の末梢血単核球は,同一のドナー由来のものである。」(本願明細書8頁末行?9頁1行)との記載からみて,ドナーaとドナーbのデータである。)

したがって,単核球中に含まれるγδT細胞の割合(%)においては,本願発明の「IL-2の濃度が700?2000U/mL」としたことで,格別顕著な効果が奏されるものではないことがわかる。



(2)γδT細胞の数について
表5には,「なお,表4a)と表5a)の末梢血単核球は,同一のドナー由来のものであり,表4b)と表5b)の末梢血単核球は,同一のドナー由来のものである。」(本願明細書8頁末行?9頁1行)と記載されているように,ドナーaのデータである表5a)とドナーbのデータである表5bが記載されている。
ドナーa)では,表5a)に示されているように,[IL-2の濃度400U/mL]より[IL-2の濃度1500U/mL]のものの方が14日目のデータで倍以上のγδT細胞の数となっている。
しかし,ドナーb)では,9日目までは,どの濃度でもγδT細胞の数は大差ない。11日目では,[IL-2の濃度700U/mL]が最も良いが,他の濃度では,[IL-2の濃度400U/mL]と大差ない。14日目では,[IL-2の濃度400U/mL]が54.8なのに対して,[IL-2の濃度1500U/mL]だと48.8であり,[IL-2の濃度400U/mL]の方がよい結果となっている。
この結果からすると,IL-2の濃度による細胞の反応は,ドナーの違いによることが大きいことが分かり,刊行物1の「発明の方法で使用するサイトカインの投与量は,出発細胞の性質により変わるだろう。」(刊1-7)とする記載のとおりの結果であることが分かる。
よって,γδT細胞の数においては,刊行物1に記載の事項のとおりの結果が示されているということができ,当業者が予測し得るものといえる。



(3)小括
以上のことから,本願発明の効果は,刊行物1から当業者が予測し得るものであって,格別顕著な効果とはいえない。

第7 請求人の主張について
1 意見書の主張について
請求人は,平成23年7月25日付け手続補足書において,参考資料-1?参考資料-3を提出すると共に,平成23年7月25日付け意見書3頁20?42行で,次のように主張する。
「参考資料-1の段落番号[0015]及び[0016]をご参照ください。
「[0015]
上記の有機ピロリン酸系化合物を含むリンパ球処理剤を,ヒト血液,特に末梢血に作用させる際,補助因子としてインターロイキン-2を1?20U/mlの濃度で加えると,Vγ2Vδ2型T 細胞の特異的増殖が顕著になる。インターロイキン-2の濃度を20U/ml以下に抑制しているかぎり,LAK 細胞のように非特異的なリンパ球の活性化が起こることはない。また,インターロイキン-15など,他の補助因子を用いてもよい。ヒトVγ2Vδ2型T細胞は,一種のナチュラルキラー活性を有している。本発明は,それら一群の細胞を抗原特異的に増殖させる点で,従来の抗腫瘍作用の導出方法とは全く異なる。
[0016]
すなわち,LAK 療法およびTIL 療法は,インターロイキン-2などの細胞増殖因子を過剰に加えることにより,末梢血でナイーブな細胞群を強制的に活性化させるものであり,そのために自己の細胞をも障害するというような副作用が生ずる。」
以上の記載からわかりますように,当業者にとり,IL-2の添加濃度を低く保つことは当該分野の技術常識であります。参考資料-2及び3としてγδT細胞に関する学術論文を提出いたします。どちらもIL-2の添加濃度は10U/mlとなっております。更に参考資料-2の386ページ,右欄1行目をご参照ください。単に10U/mlと記載するのでなく,「low doses of exogenous IL-2 (10 U/ml)」と記載されております。かかる記載は,当業者にとり,IL-2添加濃度を「低く保つこと」が技術常識であったことの証左であります。」(請求人提出の書類に記載の内容に付した下線は,当審にて付記したものである。)

しかしながら,請求人の主張するとおり,仮に,IL-2添加濃度を「低く保つこと」が技術常識であったとしても,引用発明は,その技術常識に反する「該サイトカインを約150U/ml?約500U/mlの範囲を含む濃度で使用する」ものである。技術常識と反する刊行物1のサイトカイン濃度に接した当業者であれば,それが正しいか確かめてみようとして,IL-2の添加量を増減させて試す動機となることはあるとしても,かかる技術常識が阻害要因となることはない。しかも,上記「第6 3(3)引用発明において,IL-2の濃度を決めることについて」で言及したように,刊行物1には,500U/mlを超える濃度のIL-2を添加しようとする充分な動機が記載されている。
よって,請求人の主張を採用することはできない。

2 平成24年4月5日付け手続補正書(方式)における主張について
手続補正書(方式)2頁の「(4)本願出願時の技術常識について」の項において,請求人は次のように主張する。
「(4)本願出願時の技術常識について
IL-2を500U/mlを超す濃度で添加した条件で末梢血単核球由来の免疫細胞を増殖させた場合の報告例として,参考資料2?4を提出する。
参考資料2(特許公報3904374号)において,IL-2を1,000U/mL添加すると,得られる細胞はγδT細胞以外の細胞を多く含む細胞集団となることが報告されている(図2)。参考資料3(特表2006-510629号)では,γδT細胞を特異的に増殖させる場合には,100?200U/mLでIL-2を添加している一方,リンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)を取得する際には1,000U/mLのIL-2を添加している(段落番号[0334]?[0338])。更に,参考資料4(特表2003-530626号)は,刺激する物質がγδT細胞特異的な刺激を与えるものではないが,IL-2を1,000U/mL添加した結果,αβT細胞が増殖し,γδT細胞は刺激されなかったことが記載されている(段落番号[0140])。
以上のように,末梢血単核球にIL-2を大量に添加すると,LAKやαβT細胞のようにもともと細胞集団中に多く含まれる細胞や,NK細胞のようにIL-2に応答する細胞の方が増えてしまうということが当時の技術常識として存在していた。
一方,本願発明者らは,ビスホスホネート系骨代謝改善薬と「従来の技術常識よりも濃度の高い」700?2000U/mLのIL-2を共添加することにより,上記技術常識を覆し,元々末梢血単核球中,存在比率の少ないγδT細胞を選択的かつ効率よく増殖させることに成功している。
従って,出願時の技術常識を参酌すると,引用文献1及び2を読んだとしても,「γδT細胞を選択的に培養するために「IL-2の濃度を上げる方向に変化させる」ということは当業者には容易に想到できず,かつ本願明細書表3及び4,更に参考資料1にあるようなビスホスホネート系骨代謝改善薬との共添加による,顕著な増殖効果についても,容易に想到できないものと思料する。」

そこで検討するに,参考資料2(特許第3904374号公報)の培地(段落【0021】参照)には,ビスホスホネートは含まれておらず,1000単位のIL-2と1000単位のIFN-αを組合わせた培地である。引用発明の「合成活性化化合物」には,IFN-αは含まれておらず,その結果がどうあれ,ここに記載の事項が引用発明においてIL-2の濃度を決める際の阻害事由になることはない。

参考資料3(特表2006-510629号公報)の段落【0338】には,確かにLAK細胞を培養するための培地が記載されているが,培地にはビスホスホネートは含まれておらず,IL-2が単独で添加されているものである。
刊行物1の「合成活性化化合物の使用がサイトカインIL2に対する高親和性受容体のガンマデルタT細胞表面での発現を促進する。」(刊1-8)との記載に照らせば,IL-2に対する高親和性受容体の発現を導く合成活性化化合物を添加していない状態でのIL-2の反応を示す参照資料2の記載事項は,引用発明においてIL-2の濃度を決める際の阻害事由となり得ない。
また,段落【0336】に引用発明の合成活性化化合物に相当する3μMのBrHPP分子と100 IU/mlのIL-2を組合わせた培地で培養が行われているが,IL-2を100 IU/mlとした事情は参考資料3の他の記載をみても不明である。仮に,最適な濃度として100 IU/mlとする濃度が示されているとしても,刊行物1の「一般にサイトカインは100?500U/mlの範囲の濃度,典型的には約150?500U/mlの範囲の濃度で用いる。」(刊1-7)という記載どおりの濃度であって,刊行物1には「発明の方法で使用するサイトカインの投与量は,出発細胞の性質により変わるだろう。」(刊1-7)とも記載されているのだから,ここに記載の事項がIL-2の濃度を決める際阻害事由になることはない。

さらに,参考資料4(特表2003-530826号公報)の段落【0140】には,「SCF,IL-2,およびIL-7を培養培地に加えると,Tリンパ球が増大し,および/またはαβTCRを発現した。対照的に,γδTCRを発現するT細胞は刺激されなかった。」と記載されており,ビスホスホネートは含まれていない。刊行物1の「合成活性化化合物の使用がサイトカインIL2に対する高親和性受容体のガンマデルタT細胞表面での発現を促進する。」(刊1-8)との記載に照らせば,IL-2に対する高親和性受容体の発現を導く合成活性化化合物を添加していない状態でのIL-2の反応を示す参照資料4の記載事項は,引用発明においてIL-2の濃度を決める際の阻害事由となり得ない。

なお,参考資料1の下記データについても念のため言及しておくと,ドナーによりIL-2の濃度に対する反応は差があるということが分かるから,刊行物1には「発明の方法で使用するサイトカインの投与量は,出発細胞の性質により変わるだろう。」(刊1-7)という記載のとおりの結果が示されているにすぎない。


第8 結語
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-18 
結審通知日 2013-12-20 
審決日 2014-01-08 
出願番号 特願2006-529212(P2006-529212)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 田村 明照
安藤 倫世
発明の名称 γδT細胞の培養方法、γδT細胞及び治療・予防剤  
代理人 池田 幸弘  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 長沼 暉夫  
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