ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1284917 |
審判番号 | 不服2012-20432 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-17 |
確定日 | 2014-02-20 |
事件の表示 | 特願2006-126601「ビデオゲーム処理装置、ビデオゲーム処理方法、およびビデオゲーム処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-296109〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成18年4月28日の出願であって、平成21年4月21日付け及び平成24年6月18日付けで手続補正がなされ、同年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成24年10月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年10月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成24年10月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成24年6月18日付け手続補正後のもの)の請求項として、 「【請求項1】 プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 プレイヤキャラクタが戦闘による受けたダメージポイントを保存するダメージポイント保存手段と、 該ダメージポイント保存手段に保存されたダメージポイントに応じて特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する特殊制御ポイント加算手段と、 前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する累積特殊制御ポイント表示手段と、 プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける特殊制御実行指定受付手段と、 該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する特殊制御実行手段とを含み、 前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることである、 ビデオゲーム処理装置。 【請求項2】 プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 所定の時間経過に伴って特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する特殊制御ポイント加算手段と、 前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する累積特殊制御ポイント表示手段と、 プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける特殊制御実行指定受付手段と、 該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する特殊制御実行手段とを含み、 前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることである、 ビデオゲーム処理装置。 【請求項3】 所定のタイミングとは、ノンプレイヤキャラクタが所定の動作を行っている間であり、所定の行動とは、プレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して攻撃を行うことである請求項1又は2に記載のビデオゲーム処理装置。 【請求項4】 ノンプレイヤキャラクタの移動パターン、攻撃パターンを含む行動パターンがあらかじめ設定された行動パターン設定テーブルから選択された行動パターンに従って、ノンプレイヤキャラクタの行動を制御するノンプレイヤキャラクタ行動制御手段を含み、 前記行動パターン設定テーブルには、特殊制御時に有効となる特殊制御時行動パターンを含む行動パターンが設定されており、 前記ノンプレイヤキャラクタ行動制御手段は、特殊制御の実行中であるときに特殊制御時行動パターンを選択可能となり、特殊制御の実行中であるときには、あらかじめ定められた特殊行動選択条件が成立しているか否かを判定し、当該特殊行動選択条件が成立していれば特殊制御時行動パターンを選択し、特殊制御時行動パターンを選択したときは、選択した特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御し、 前記特殊行動選択条件は、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタが所定のタイミングで所定の行動をとることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度とは、ノンプレイヤキャラクタが特殊制御時行動パターンに従って行動が制御されている場合に、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタが所定のタイミングで所定の行動をとることが可能である程度である、 ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載のビデオゲーム処理装置。」 とあったものを、 「【請求項1】 プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 プレイヤキャラクタが戦闘による受けたダメージポイントを保存するダメージポイント保存手段と、 該ダメージポイント保存手段に保存されたダメージポイントに応じて特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する特殊制御ポイント加算手段と、 前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する累積特殊制御ポイント表示手段と、 プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける特殊制御実行指定受付手段と、 該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する特殊制御実行手段とを含み、 前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることであり、 所定のタイミングで所定の行動を取ることとは、特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることである、 ビデオゲーム処理装置。 【請求項2】 プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 所定の時間経過に伴って特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する特殊制御ポイント加算手段と、 前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する累積特殊制御ポイント表示手段と、 プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける特殊制御実行指定受付手段と、 該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する特殊制御実行手段とを含み、 前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることであり、 所定のタイミングで所定の行動を取ることとは、特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることである、 ビデオゲーム処理装置。 【請求項3】 所定のタイミングとは、ノンプレイヤキャラクタが所定の動作を行っている間であり、所定の行動とは、プレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して攻撃を行うことである請求項1又は2に記載のビデオゲーム処理装置。 【請求項4】 ノンプレイヤキャラクタの移動パターン、攻撃パターンを含む行動パターンがあらかじめ設定された行動パターン設定テーブルから選択された行動パターンに従って、ノンプレイヤキャラクタの行動を制御するノンプレイヤキャラクタ行動制御手段を含み、 前記行動パターン設定テーブルには、特殊制御時に有効となる特殊制御時行動パターンを含む行動パターンが設定されており、 前記ノンプレイヤキャラクタ行動制御手段は、特殊制御の実行中であるときに特殊制御時行動パターンを選択可能となり、特殊制御の実行中であるときには、あらかじめ定められた特殊行動選択条件が成立しているか否かを判定し、当該特殊行動選択条件が成立していれば特殊制御時行動パターンを選択し、特殊制御時行動パターンを選択したときは、選択した特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御し、 前記特殊行動選択条件は、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタが所定のタイミングで所定の行動をとることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度とは、ノンプレイヤキャラクタが特殊制御時行動パターンに従って行動が制御されている場合に、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタが所定のタイミングで所定の行動をとることが可能である程度である、 ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載のビデオゲーム処理装置。」 と補正することを含むものである。 本件補正は、補正前の請求項2の「(プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して)所定のタイミングで所定の行動を取ること」が、「特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることである」との限定を行うものであるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 2 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-129960号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明はシューティングゲームに好適な画像処理技術に関する。」 イ 「【0012】 【発明の実施の形態】 以下、各図を参照して本実施形態について説明する。 【0013】 図1は本実施形態に係わるゲーム装置のハードウエア構成図である。同図に示すように、ゲーム装置10には、プレイヤがゲーム操作を行うための入力手段として、銃型コントローラ20,21及びフットペダル22,23と、ゲーム画面を表示する画像表示手段としてのビデオモニタ(CRTディスプレイ)24と、効果音などを出力する音響出力手段としてのスピーカ25とが各々接続されている。… 【0014】 銃型コントローラ20,21は機関銃、拳銃、ライフル銃、散弾銃などの外観を模したコントローラであり、プレイヤが弾丸発射を指示するためのトリガスイッチ(引き金)20a,21aと、赤外線を放射状に射出する赤外線射出器20a,20bを備えている。トリガスイッチ20a,21aの入力操作により、赤外線射出器20a,20からは赤外線がビデオモニタ24へ向けて射出される。 ビデオモニタ24には、画面24bの枠を囲むように複数の受光センサ24aが配置されており、受光センサ24aのセンサ出力は入出力インターフェース11へ書き込まれる。また、プレイヤによるトリガスイッチ20a,21aの入力信号(トリガ操作信号)はゲーム装置10内の入出力インターフェース11へ出力される。一方、フットペダル22,23はメインCPU12が後述する視覚効果処理を実行するためにプレイヤが足踏み入力するための入力手段であり、ある一定の踏み込み量で押下されたことを検出すると、踏込入力信号を入出力インターフェース11に出力するよう構成されている。… 【0015】 ゲーム装置10は、入出力インターフェース11、メインCPU12、ROM13、ワークRAM14、ビデオプロセッサ15、フレームメモリ16、D/Aコンバータ17、サウンドプロセッサ18、及びサウンドメモリ19を備えて構成されている。入出力インターフェース11は受光センサ24aのセンサ出力信号と、トリガ操作信号から、プレイヤの照準位置、弾丸発射の有無、発射弾丸数などを判別し、それぞれに対応するフラグをワークRAM14内の所定アドレスに書き込む。ワークRAM14はメインCPU12がゲーム処理を行うための各種演算を実行するためのワークエリアとして機能するランダム・アクセス・メモリである。ROM13には、ゲームプログラム13a、ポリゴンデータ13b、地形データ13c、及びタイムスケール変換テーブル13dが各々格納されている。システム起動時において、ワークRAM14にロードされたゲームプログラム13aはメインCPU12によってコマンド解釈、実行がなされ、ゲーム処理が行われる。」 ウ 「【0021】 図5はシューティングゲームにおける画面例を示すものである。同図において、31a,31b,31cはエネミキャラクタ、32a,32b,32cはロックオンカーソル、33はスローゲージ、34はプレイヤが発射可能な残り弾丸数、35は選択可能な武器を表示するアイコン、36はプレイヤが獲得したスコアである。仮想空間内には、同図に示す エネミキャラクタ31a,31b,31cの他、プレイヤが操作するプレイヤが配置され、所定の仮想視点から視た映像がゲーム画面としてビデオモニタ24上に表示される。ここでは、仮想視点はプレイヤキャラクタの頭部付近に設置され、プレイヤキャラクタから見た視点(主観視点)の映像を表示しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、プレイヤキャラクタと、プレイエネミキャラクタ31a,31b,31cの両方がゲーム画面に表示されるような客観視点から視た映像を表示するように構成してもよい(後述する図6の説明でも同様である)。ここでは、同図に示すように、プレイヤキャラクタの主観視点から視た映像を表示している。 【0022】 エネミキャラクタ31a,31b,31cはコンピュータ制御により予め定められた攻撃パターンでプレイヤキャラクタに向けて弾丸を発射するようプログラムされている。ロックオンカーソル32a,32b,32cの各々はエネミキャラクタ31a,31b,31cの各々に追随して移動するカーソルであり、色が緑色(点線表示)から赤色(実線表示)に変わることで、エネミキャラクタ31a,31b,31cから弾丸が発射されることをプレイヤに示唆している。…同図に示す例では、エネミキャラクタ31aにロックされているロックオンカーソル32aは緑色に表示されているが、エネミキャラクタ31b,31cにロックしているロックオンカーソル32b,32cは赤色に表示されている。ここで、エネミキャラクタ31b,31cが弾丸を発射すると、照準がプレイヤキャラクタの座標と一致している場合には、プレイヤは弾丸を避ける余裕もなく、一瞬にして被弾し、ダメージを受ける。…」 エ 「【0023】 そこで、本実施形態においては、プレイヤに弾丸をかわす余裕を与えるため、予め定められた条件(以下、「視覚効果処理可能条件」と称する)下において、ゲーム画面に視覚効果処理を施す。視覚効果処理可能条件とは、ゲーム画面に視覚効果処理を施すために前提となる条件であり、例えば、ロックオンカーソル32の色が緑色から赤色に変わるなど、まもなくエネミキャラクタ31からの攻撃が開始される状態、つまり、弾丸発射待ち状態に遷移した場合に当該条件が満たされる。メインCPU12は視覚効果処理可能条件が成立した場合(弾丸発射待ち状態に遷移した場合)に、ワークRAM14に視覚効果処理可能フラグを「1」に設定する。視覚効果処理としては、例えば、エネミキャラクタ31と、当該エネミキャラクタ31が発射した弾丸のタイムスケールを1/nに変更することで、エネミキャラクタ31と弾丸のみをスロー再生処理することが考えられる。 かかる視覚効果処理により、プレイヤキャラクタの動作速度を仮想的に速めることができる。つまり、エネミキャラクタ31とその弾丸の移動速度はプレイヤキャラクタの1/nになるため、プレイヤは十分な余裕をもって当該弾丸を避けることもできるし、さらには、当該弾丸に照準をあてて当該弾丸を爆破することもできる。nの値としては、例えば、n=10が好適である。 【0024】 図6は本実施形態の視覚効果処理を施したときのシューティングゲームの画面例を示すものである。図5と同一符号については同一のものを示すものとし、詳細な説明を省略する。エネミキャラクタ31b,31cをロックしているロックオンカーソル32b,32cが緑色から赤色に変わると、視覚効果処理可能条件が成立する。すると、まもなくしてエネミキャラクタ31b,31cから弾丸40a,40bが発射される。視覚効果処理可能条件が成立した段階で、プレイヤが視覚効果要求入力を行うと、メインCPU12は視覚効果処理を施したゲーム画面を生成するため、タイムスケールの変更などの所望の処理を行う。視覚効果要求入力としては、例えば、プレイヤがフットペダル22,23を足踏み入力した操作信号などが好適である。当該足踏み操作信号は入出力インターフェース11へ出力され、メインCPU12によって検出される。但し、視覚効果要求入力として、フットペダルに限定されるものではなく、銃型コントローラ20,21に視覚効果要求入力用のスイッチを設け、当該スイッチの入力操作でもよい。…メインCPU12はプレイヤからの視覚効果要求入力を検出すると、予め定められた所定のオブジェクト(ここでは、エネミキャラクタ31及び弾丸40)についてタイムスケールを変換してスロー再生処理を行う。 【0025】 すると、これまでは視覚的に表示されなかった弾丸40a,40bがスロー再生されてゲーム画面に表示される。このとき、ゲーム画面には、画面の縁辺から略中央に向かって延びる残像のような線60が多数表示され、プレイヤキャラクタが仮想的に高速移動しているような画像エフェクト処理が施されている。これにより、プレイヤはあたかも自分が高速移動しているかのような感覚を体験できる上に、エネミキャラクタ31b,31cと弾丸40a,40bの移動速度は遅いため、余裕をもって弾丸40a,40bを避けることもできるし、さらには、銃型コントローラ20,21の向きを調整して照準カーソル50a,50bを弾丸40a,40bに合わせてトリガスイッチ20a,21aを引き、弾丸40a,40bを爆破することもできる。ここで、照準カーソル50aはプレイヤAの照準カーソルであり、照準カーソル50bはプレイヤBの照準カーソルである。 照準カーソル50a,50bによる弾丸40の爆破処理は通常の動作時間で行うことができる。つまり、プレイヤが弾丸発射操作を行ってから、射撃目標に着弾するまでの時間や、プレイヤがアイコン35に表示される武器を選択してからこれに応答して当該武器が画面に表示されるまでの時間、照準カーソル50a,50bの移動時間などのプレイヤ操作に関連するオブジェクトの表示速度は視覚効果処理がなされる前の通常の表示速度でなされる。また、スローゲージ33は視覚効果処理としてのスロー再生処理ができる時間経過を示すものであり、視覚効果処理を行う時間経過に伴いゲージの値が減少し、当該値が0となると、視覚効果処理がゲーム処理上できなくなるよう設計されている。図6に示すように、視覚効果処理が行われている間は、スローゲージ33は拡大表示され、視覚効果処理できる残存時間をプレイヤに示唆している。」 オ 「【0028】 また、視覚効果処理の継続時間が所定値を超えると、スローゲージ33の値が0となり、視覚効果処理ができなくなるが、視覚効果処理を施さない通常の動作状態の継続時間に応じてスローゲージ33の値を増加させるよう構成してもよい。」 カ 「【0029】 このように、本実施形態によれば、視覚効果処理可能条件が成立したときに、プレイヤがフットペダル22,23を踏み込むことで、エネミキャラクタ31及び弾丸40のみがスロー再生されるため、ゲーム操作が稚拙なプレイヤでも弾丸40を避けることができるため、飽きのこないシューティングゲームを実現できる。また、スキルレベルが上級のプレイヤならば、エネミキャラクタ31から発射された弾丸40がスロー再生されている際に、弾丸40に照準を当ててこれを被弾させることも可能である…。」 上記摘記事項を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「プレイヤがゲーム操作を行うための入力手段として、銃型コントローラ20,21及びフットペダル22,23と、ゲーム画面を表示する画像表示手段としてのビデオモニタ(CRTディスプレイ)24と、効果音などを出力する音響出力手段としてのスピーカ25とが各々接続されているゲーム装置10であって、 銃型コントローラ20,21は機関銃、拳銃、ライフル銃、散弾銃などの外観を模したコントローラであり、プレイヤが弾丸発射を指示するためのトリガスイッチ(引き金)20a,21aと、赤外線を放射状に射出する赤外線射出器20a,20bを備えており、トリガスイッチ20a,21aの入力操作により、赤外線射出器20a,20からは赤外線がビデオモニタ24へ向けて射出され、 ビデオモニタ24には、画面24bの枠を囲むように複数の受光センサ24aが配置されており、受光センサ24aのセンサ出力は入出力インターフェース11へ書き込まれ、また、プレイヤによるトリガスイッチ20a,21aの入力信号(トリガ操作信号)はゲーム装置10内の入出力インターフェース11へ出力され、一方、フットペダル22,23はメインCPU12が後述する視覚効果処理を実行するためにプレイヤが足踏み入力するための入力手段であり、ある一定の踏み込み量で押下されたことを検出すると、踏込入力信号を入出力インターフェース11に出力するよう構成されており、 ゲーム装置10は、入出力インターフェース11、メインCPU12、ROM13、ワークRAM14、ビデオプロセッサ15、フレームメモリ16、D/Aコンバータ17、サウンドプロセッサ18、及びサウンドメモリ19を備えて構成されており、 シューティングゲームにおける画面例において、エネミキャラクタ31a,31b,31c、ロックオンカーソル32a,32b,32c、スローゲージ33、プレイヤが発射可能な残り弾丸数34、選択可能な武器を表示するアイコン35、プレイヤが獲得したスコア36が表示され、 エネミキャラクタ31a,31b,31cはコンピュータ制御により予め定められた攻撃パターンでプレイヤキャラクタに向けて弾丸を発射するようプログラムされており、エネミキャラクタ31b,31cが弾丸を発射すると、照準がプレイヤキャラクタの座標と一致している場合には、プレイヤは弾丸を避ける余裕もなく、一瞬にして被弾し、ダメージを受け、 プレイヤに弾丸をかわす余裕を与えるため、メインCPU12は視覚効果処理可能条件が成立した場合(弾丸発射待ち状態に遷移した場合)に、ワークRAM14に視覚効果処理可能フラグを「1」に設定し、視覚効果処理としては、例えば、エネミキャラクタ31と、当該エネミキャラクタ31が発射した弾丸のタイムスケールを1/nに変更することで、エネミキャラクタ31と弾丸のみをスロー再生処理し、かかる視覚効果処理により、プレイヤキャラクタの動作速度を仮想的に速めることができ、エネミキャラクタ31とその弾丸の移動速度はプレイヤキャラクタの1/nになるため、プレイヤは十分な余裕をもって当該弾丸を避けることもできるし、さらには、当該弾丸に照準をあてて当該弾丸を爆破することもでき、視覚効果要求入力としては、例えば、プレイヤがフットペダル22,23を足踏み入力した操作信号などが好適であり、当該足踏み操作信号は入出力インターフェース11へ出力され、メインCPU12によって検出され、視覚効果要求入力として、フットペダルに限定されるものではなく、銃型コントローラ20,21に視覚効果要求入力用のスイッチを設け、当該スイッチの入力操作でもよく、メインCPU12はプレイヤからの視覚効果要求入力を検出すると、予め定められた所定のオブジェクト(エネミキャラクタ31及び弾丸40)についてタイムスケールを変換してスロー再生処理を行い、スローゲージ33は視覚効果処理としてのスロー再生処理ができる時間経過を示すものであり、視覚効果処理を行う時間経過に伴いゲージの値が減少し、当該値が0となると、視覚効果処理がゲーム処理上できなくなるよう設計されており、視覚効果処理が行われている間は、スローゲージ33は拡大表示され、視覚効果処理の継続時間が所定値を超えると、スローゲージ33の値が0となり、視覚効果処理ができなくなるが、視覚効果処理を施さない通常の動作状態の継続時間に応じてスローゲージ33の値を増加させるよう構成してもよく、エネミキャラクタ31から発射された弾丸40がスロー再生されている際に、弾丸40に照準を当ててこれを被弾させることも可能である、ゲーム装置10。」 (2)対比、判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、「プレイヤがゲーム操作を行うための入力手段として、銃型コントローラ20,21及びフットペダル22,23と、ゲーム画面を表示する画像表示手段としてのビデオモニタ(CRTディスプレイ)24と、…が各々接続されているゲーム装置10であって、銃型コントローラ20,21は…プレイヤが弾丸発射を指示するためのトリガスイッチ(引き金)20a,21aと、赤外線を放射状に射出する赤外線射出器20a,20bを備えており、トリガスイッチ20a,21aの入力操作により、赤外線射出器20a,20からは赤外線がビデオモニタ24へ向けて射出され、(ビデオモニタ24の画面24bの枠を囲むように配置された複数の)受光センサ24aのセンサ出力は入出力インターフェース11へ書き込まれ、また、プレイヤによるトリガスイッチ20a,21aの入力信号(トリガ操作信号)はゲーム装置10内の入出力インターフェース11へ出力され、一方、フットペダル22,23はメインCPU12が後述する視覚効果処理を実行するためにプレイヤが足踏み入力するための入力手段であり、ある一定の踏み込み量で押下されたことを検出すると、踏込入力信号を入出力インターフェース11に出力するよう構成されており」、「エネミキャラクタ31a,31b,31cはコンピュータ制御により予め定められた攻撃パターンでプレイヤキャラクタに向けて弾丸を発射するようプログラムされており、エネミキャラクタ31b,31cが弾丸を発射すると、照準がプレイヤキャラクタの座標と一致している場合には、プレイヤは弾丸を避ける余裕もなく、一瞬にして被弾し、ダメージを受け」るものであるから、引用発明の「『銃型コントローラ20,21』、『フットペダル22,23』、『ビデオモニタ24』及び『ゲーム装置10』」と、本願補正発明の「(プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御する)ビデオゲーム処理装置」とは、「(プレイヤの操作に応じてビデオゲームの進行を制御する)ビデオゲーム処理装置」である点で共通する。 イ 引用発明は、「スローゲージ33」が「視覚効果処理としてのスロー再生処理ができる時間経過を示すものであ」って、「視覚効果処理を行う時間経過に伴いゲージの値が減少し、当該値が0となると、視覚効果処理がゲーム処理上できなくなるよう設計されており、視覚効果処理が行われている間は、スローゲージ33は拡大表示され、視覚効果処理の継続時間が所定値を超えると、スローゲージ33の値が0となり、視覚効果処理ができなくなるが、視覚効果処理を施さない通常の動作状態の継続時間に応じてスローゲージ33の値を増加させるよう構成してもよい」ものであるから、 (ア)引用発明は、本願補正発明の「(所定の時間経過に伴って特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する)特殊制御ポイント加算手段」を備えるとともに、 (イ)引用発明の「スローゲージ33」は、本願補正発明の「(前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する)累積特殊制御ポイント表示手段」に相当する。 ウ 引用発明は、「プレイヤに弾丸をかわす余裕を与えるため、メインCPU12は視覚効果処理可能条件が成立した場合(弾丸発射待ち状態に遷移した場合)に、ワークRAM14に視覚効果処理可能フラグを『1』に設定し、視覚効果処理としては、例えば、エネミキャラクタ31と、当該エネミキャラクタ31が発射した弾丸のタイムスケールを1/nに変更することで、エネミキャラクタ31と弾丸のみをスロー再生処理し、かかる視覚効果処理により、プレイヤキャラクタの動作速度を仮想的に速めることができ、エネミキャラクタ31とその弾丸の移動速度はプレイヤキャラクタの1/nになるため、プレイヤは十分な余裕をもって当該弾丸を避けることもでき」、「さらには、当該弾丸に照準をあてて当該弾丸を爆破することもでき」、「視覚効果要求入力としては、例えば、プレイヤがフットペダル22,23を足踏み入力した操作信号などが好適であり、…視覚効果要求入力として、フットペダルに限定されるものではなく、銃型コントローラ20,21に視覚効果要求入力用のスイッチを設け、当該スイッチの入力操作でもよく、メインCPU12はプレイヤからの視覚効果要求入力を検出すると、予め定められた所定のオブジェクト(エネミキャラクタ31及び弾丸40)についてタイムスケールを変換してスロー再生処理を行い、スローゲージ33は視覚効果処理としてのスロー再生処理ができる時間経過を示すものであり、視覚効果処理を行う時間経過に伴いゲージの値が減少し、当該値が0となると、視覚効果処理がゲーム処理上できなくなるよう設計されて」いるものであるから、 (ア)引用発明の「(銃型コントローラ20,21に設けた)視覚効果要求入力用のスイッチ」は、本願補正発明の「(プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける)特殊制御実行指定受付手段」に相当し、 (イ)引用発明の「(視覚効果処理可能条件が成立した場合(弾丸発射待ち状態に遷移した場合)に、ワークRAM14に視覚効果処理可能フラグを『1』に設定し、視覚効果処理としては、例えば、エネミキャラクタ31と、当該エネミキャラクタ31が発射した弾丸のタイムスケールを1/nに変更することで、エネミキャラクタ31と弾丸のみをスロー再生処理する)メインCPU12」は、本願補正発明の「(該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する)特殊制御実行手段」に相当し、 (ウ)引用発明は、本願補正発明の「前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることであり」との事項を備えるといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「プレイヤの操作に応じてビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 所定の時間経過に伴って特殊制御ポイントを所定の最大累積値まで加算する特殊制御ポイント加算手段と、 前記特殊制御ポイントの累積値を前記表示画面に表示する累積特殊制御ポイント表示手段と、 プレイヤの操作にもとづく特殊制御の実行指定を受け付ける特殊制御実行指定受付手段と、 該特殊制御実行指定受付手段が特殊制御の実行指定を受け付けたときに、前記特殊制御ポイントの累積値が初期値を超える値であるか否か判定し、超える値であれば、ノンプレイヤキャラクタの行動速度を非特殊制御時よりも遅くして当該ノンプレイヤキャラクタをスローモーション表示し、非特殊制御時にはプレイヤキャラクタによる対応時間の確保が不可能な程度に高速であるノンプレイヤキャラクタの行動速度が、プレイヤキャラクタによる対応時間の確保が可能な程度まで低速化される特殊制御を実行する特殊制御実行手段とを含み、 前記対応時間の確保が不可能な程度に高速であるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが不可能な程度に、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が高速であることであり、 前記対応時間の確保が可能な程度まで低速化されるとは、プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して所定のタイミングで所定の行動を取ることが可能な程度まで、ノンプレイヤキャラクタの行動速度が低速化されることである、 ビデオゲーム処理装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 a 本願補正発明は、プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するのに対し、引用発明は、プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示するのか否か明らかでない点(以下「相違点1」という。)。 b (プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して行う)所定のタイミングで所定の行動を取ることが、本願補正発明では、特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることであるのに対し、引用発明では、ノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることではない点(以下「相違点2」という。) 上記相違点につき検討する。 [相違点1]について 上記(1)ウ(【0021】)によれば、引用刊行物には、「ここでは、仮想視点はプレイヤキャラクタの頭部付近に設置され、プレイヤキャラクタから見た視点(主観視点)の映像を表示しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、プレイヤキャラクタと、プレイエネミキャラクタ31a,31b,31cの両方がゲーム画面に表示されるような客観視点から視た映像を表示するように構成してもよい」と記載され、「プレイヤキャラクタ」と「プレイエネミキャラクタ31a,31b,31c」の両方をゲーム画面に表示することが示唆されているから、引用発明において、「ビデオモニタ24」の画面に「プレイヤキャラクタ」と「プレイエネミキャラクタ31a,31b,31c」の両方を表示し、プレイヤのゲーム操作に応じて前記「プレイヤキャラクタ」の行動を制御することでゲームの進行を制御して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 [相違点2]について 引用発明において「(エネミキャラクタ31と弾丸のみをスロー再生処理する)視覚効果処理」中の「ビデオモニタ24」の画面に如何なる画像を表示するようになすかは、当業者が当該引用発明を実施する際に適宜に定めるべき設計的事項であるところ、引用発明において、前記「視覚効果処理」中に、「ビデオモニタ24」の画面に、選択可能な「視覚効果処理」時の行動パターンに従う「エネミキャラクタ31a,31b,31c」の行動を表示させるようにすることは当業者が適宜になし得ることである。そして、その際、「ビデオモニタ24」の画面に前記「エネミキャラクタ31a,31b,31c」の行動を表示させるべく、プレイヤによる弾丸発射を指示するトリガスイッチ(引き金)20a,21aの入力操作を、前記「視覚効果処理」中に選択可能な「視覚効果処理」時行動パターンに従って前記「エネミキャラクタ31a,31b,31c」の行動を制御するための「視覚効果処理」時行動選択条件を成立させる行動と定めることが、当業者において格別困難なことであるとはいえない。また、本願の明細書をみても、本願補正発明において、所定のタイミングで所定の行動を取ることを、特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることであるとした点に、設計的事項の域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとは認められず、本願補正発明の奏する効果が、引用発明から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 よって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成24年6月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1において補正前のものとして記載したとおりのものである。 2 刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用刊行物及び引用発明は、上記第2の2(1)のとおりである。 3 判断 本願発明は、上記第2の2(2)で検討した本願補正発明において、「(プレイヤの操作に従ってプレイヤキャラクタがノンプレイヤキャラクタに対して)所定のタイミングで所定の行動を取ること」が、「特殊制御の実行中であるときに選択可能な特殊制御時行動パターンに従ってノンプレイヤキャラクタの行動を制御するための特殊行動選択条件を成立させる行動を取ることである」との限定を省いたものである。そうすると、本願発明を減縮したものである本願補正発明が、上記第2の2(2)で検討したとおり、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-19 |
結審通知日 | 2013-12-24 |
審決日 | 2014-01-07 |
出願番号 | 特願2006-126601(P2006-126601) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫻井 茂樹 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
佐々木 訓 黒瀬 雅一 |
発明の名称 | ビデオゲーム処理装置、ビデオゲーム処理方法、およびビデオゲーム処理プログラム |
代理人 | 田村 良介 |