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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1284921 |
審判番号 | 不服2013-341 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-09 |
確定日 | 2014-02-20 |
事件の表示 | 特願2011- 15822「画像符号化方法、画像処理方法、及び画像復号化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日出願公開、特開2012-156906〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年1月27日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成24年 5月15日(起案日) 手続補正 :平成24年 7月23日 拒絶査定 :平成24年10月 2日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成25年 1月 9日 手続補正 :平成25年 1月 9日 前置審査報告 :平成25年 3月27日(起案日) 審尋 :平成25年 5月22日(起案日) 回答 :平成25年 7月29日 2.平成25年1月9日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年1月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正 平成25年1月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含み、当該補正は、補正前の請求項1(平成24年7月23日付け手続補正書に記載された請求項1)における「前記全体画像データから、全透明の透明度情報を有する画素以外の画素を内包する画像領域を切り出す」との記載を、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載の範囲内で、「前記全体画像データから、全透明の透明度情報を有する画素以外の一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域を切り出す」に補正するものである。(補正部分をアンダーラインで示す。) (2)補正の適法性 ア 補正の範囲 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 イ 補正の目的 上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である上記画像領域を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、同補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 ウ 独立特許要件 そこで、以下、補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という)が独立特許要件を満たすか否かについて検討する。 (ア)補正後発明 補正後発明は、上記補正後の請求項1の次の記載により特定されるものである。 「【請求項1】 各画素データに透明度の情報を含む全体画像データを符号化する画像符号化方法であって、 前記全体画像データから、全透明の透明度情報を有する画素以外の一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域を切り出すと共に、切り出した領域の全体画像に対する位置情報を特定し、 前記位置情報に基づき、前記切り出した領域に係る画像データを符号化することを特徴とする画像符号化方法。」 (イ)刊行物1 a 刊行物1の記載 原査定の拒絶理由に引用された特開平8-140096号公報(以下「刊行物1」という)には、図面と共に次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、一般的な映像の場面を符号化する様々なアプリケーションに適用可能な画像信号符号化の方法である。 【0002】 【従来の技術】従来、映像場面に対する画素値情報の符号化は、単一レイアに対して行われる。すなわち、映像の1場面のすべての内容の画素値情報が、単一レイア上に完結しており、符号化はその単一レイアの画素値情報毎に行われる。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単一レイアに完結している画素値情報を符号化する従来の手段では、符号化の必要が無い画素がその単一レイアに存在する場合でも、その画素値を考慮にいれた符号化を行わなければならない。そのため符号化量が増大し、処理速度も遅くなるといった課題があった。 【0005】本発明は、このような従来技術の課題を考慮し、画像信号の符号化を効率よく行うことを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1の本発明は、画像信号について、画素値の透過状態により、符号化すべき画素領域かどうかを判定し、その判定結果を符号化して得られた符号化すべき画素位置信号に基づき、符号化すべき画素領域を所定の符号化方法により符号化することを特徴とする画像信号符号化の方法である。」 「【0040】図7は、請求項5の本発明の画像信号符号化装置にかかる1実施例のブロック図である。すなわち、符号化すべき画素位置信号4を入力信号とし、制御信号6を出力信号とする水平有効画素範囲検出手段5と、前記符号化すべき画素位置信号4を入力信号とし、制御信号8を出力信号とする垂直有効画素範囲検出手段7とが、画素値信号1を入力信号とし、符号化すべき単一画素ブロック3を出力信号とする選択手段2に接続されている。その接続手段2は、前記符号化すべき単一画素ブロック3を入力信号とし、符号化信号10を出力信号とする符号化手段9に接続されている。 【0041】次に、上記実施例の動作について説明する。 【0042】符号化すべき画素位置信号4は、画像の画素値信号の透過度から、符号化すべきかどうかが判定されて符号化された信号である。 【0043】前記符号化すべき画素位置信号4が、水平有効画素範囲検出手段5に入力されると、前記符号化すべき画素位置信号4から、水平方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号6が、その水平有効画素範囲検出手段5から出力される。また、前記符号化すべき画素位置信号4が、垂直有効画素範囲検出手段7に入力されると、前記符号化すべき画素位置信号4から、垂直方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号8が、垂直有効画素範囲検出手段7から出力される。 【0044】画像の画素値情報を含んだ画素値信号1と前記制御信号6と前記制御信号8とが、選択手段2に入力されると、前記制御信号6と前記制御信号8とにより、その画素値信号1に対して、符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロックが構成され、その選択手段2から符号化すべき単一画素ブロック3が出力される。その符号化すべき単一画素ブロック3が、複数ブロックの符号化ができないWavelet符号化により多値符号化する符号化手段9に入力されても、単一画素ブロックであるため、前記符号化により多値符号化することができ、その符号化手段9から符号化信号10が出力される。 【0045】ここで、図8は本実施例の単一ブロック化を示す図である。図8の右の段の図に示すように、符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロックを構成することにより、斜線部に示した領域の符号化を省略することができるのが分かる。」 b 刊行物1記載の発明 上記刊行物1の記載によると、刊行物1には、「画像信号符号化の方法」が記載されており、当該方法(以下「画像符号化方法」ともいう)は、画像信号について、画素値の透過状態(透明度)により、符号化すべき画素領域かどうかを判定し、その判定結果(判定結果を符号化して得られた符号化すべき画素位置信号)に基づき、符号化すべき画素領域を所定の符号化方法により符号化する」(【0006】)ものである。 ここで、上記「符号化すべき画素領域」は、一例として「符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロックを構成する」もので(【0045】、図8)、当該「最小の単一画素ブロック」は、図8から明らかなように、符号化すべき透明度の画素領域(図8で黒塗りされている領域)に外接する矩形画素領域であり、この場合、当該矩形画素領域での符号化は、刊行物1の前掲【0042】?【0044】の記載(図7参照)によると、次のようにして行われる。 a)画像の画素値信号の透過度(透明度)から、符号化すべき画素を判定し、その画素位置を示す符号化すべき画素位置信号4が水平有効画素範囲検出手段5に入力されると、当該符号化すべき画素位置信号4から、水平方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号6を上記水平有効画素範囲検出手段5から出力する。 b)また、上記符号化すべき画素位置信号4が、垂直有効画素範囲検出手段7に入力されると、当該符号化すべき画素位置信号4から、垂直方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号8を上記垂直有効画素範囲検出手段7から出力する。 c)画像の画素値情報を含んだ画素値信号1と前記制御信号6と前記制御信号8とが、選択手段2に入力されると、前記制御信号6と前記制御信号8とにより、上記画素値信号1に対して、符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロック(すなわち上記矩形画素領域)を構成し、上記選択手段2から当該単一画素ブロック3(上記矩形画素領域)を出力する。 d)上記選択手段2から出力される単一画素ブロック3(上記矩形画素領域)に含まれる画素値を符号化手段9で符号化して出力する。 上記刊行物1の記載をまとめると、刊行物1には、次の画像符号化方法に関する発明が記載されているといえる。 〈刊行物1記載の発明〉 画像信号について、画素値の透過状態(透明度)により、符号化すべき画素領域かどうかを判定し、その判定結果に基づき、符号化すべき画素領域を所定の符号化方法により符号化する画像信号符号化方法であって、 上記符号化すべき画素領域を、符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロック、すなわち、符号化すべき透明度の画素領域に外接する矩形画素領域として、当該矩形画素領域を符号化するに際し、 a)画像の画素値信号の透過度(透明度)から、符号化すべき画素を判定して、その画素位置を示す符号化すべき画素位置信号4を水平有効画素範囲検出手段5に入力し、上記符号化すべき画素位置信号4から、水平方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号6を上記水平有効画素範囲検出手段5から出力すると共に、 b)上記符号化すべき画素位置信号4を垂直有効画素範囲検出手段7に入力し、上記符号化すべき画素位置信号4から、垂直方向で最初に検出される符号化すべき画素位置と、最後に検出される符号化すべき画素位置とに基づいた制御信号8を上記垂直有効画素範囲検出手段7から出力し、 c)画像の画素値情報を含んだ画素値信号1と上記制御信号6と制御信号8とを、選択手段2に入力して、前記制御信号6と前記制御信号8とにより、上記画素値信号1に対して、符号化すべき画素値を含む最小の単一画素ブロック、すなわち、上記符号化すべき透明度の画素領域に外接する矩形画素領域を構成し、上記選択手段2から当該矩形画素領域を出力し、 d)上記選択手段2から出力された上記矩形画素領域に含まれる画素値を符号化手段9で符号化して出力する 画像符号化方法。 (ウ)対比 以下、補正後発明を上記刊行物1記載の発明(以下「引用発明」ともいう)と対比する。 a 符号化対象画像について 補正後発明で符号化対象とする画像データは、「各画素データに透明度の情報を含む全体画像データ」である。 これに対し、引用発明で符号化対象とする画像信号は、補正後発明でいう「全体画像データ」といえるものであり、また、引用発明の画像符号化方法では、上記のとおり、「画像の画素値信号の透過度から、符号化すべき画素を判定して」いる〔上記a)の要件〕のであるから、上記画像信号はその各画素値信号(各画素データ)に「透明度の情報を含む」ものといえる。 よって、補正後発明と引用発明とは、いずれも、「各画素データに透明度の情報を含む全体画像データ」を符号化対象とするものであり、この点で両者に違いはない。 b 画像領域の切り出しについて 補正後発明では、「前記全体画像データから、全透明の透明度情報を有する画素以外の一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域を切り出す」ようにしている。 ここで、補正後発明において上記のように切り出す「任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域」とは、明細書(【0022】,【0023】)の記載や図2の記載からみて、例えば全透明の透明度情報を有する画素以外の画素からなる領域の全てを含む最小の矩形領域、すなわち、全透明の透明度情報を有する画素以外の画素の集合(画素領域)に外接する矩形画像領域でよいものであるといえる。 また、補正後発明の「全透明の透明度情報を有する画素以外の画素」は、当該画素(の集合、画素領域)を切り出して符号化することを前提としているから、符号化すべき透明度の画素領域(画像領域)といえるから、補正後発明は、全体画像データから、符号化すべき透明度の画像領域に外接する矩形画像領域を切り出しているといえる。 そして、引用発明でも、上記のとおり、「符号化すべき透明度の画素領域に外接する矩形画素領域を構成し、上記選択手段2から当該矩形画素領域を出力」している、つまり選択手段2によって当該矩形画像領域(符号化すべき透明度の画素領域に外接する矩形画素領域)を全体画像データから切り出しているのであるから、全体画像データから、符号化すべき透明度の画像領域に外接する矩形画像領域を切り出している点で、補正後発明と相違がなく、符号化すべき透明度の画像領域に外接する矩形画像領域は、上記のとおり、補正後発明の「(符号化すべき透明度の)任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域」に含まれるのであるから、引用発明は、全体画像データから、符号化すべき透明度の任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域を切り出している点では補正後発明と違いがない。 しかしながら、上記「符号化すべき透明度の任意の形状の画像領域」は、補正後発明では、「全透明の透明度情報を有する画素以外の一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する任意の形状の画像領域」であり、補正後発明では、符号化すべき透明度の画像領域が、「全透明の透明度情報を有する画素以外の画像領域」と特定されている点で相違する。 また、補正後発明の「一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する任意の形状の画像領域」について明細書(【0025】)の記載に照らすと、上記(全体画像データから切り出す任意の形状における最小面積の)画像領域が複数分散して存在する場合に、上記矩形画像領域がこれらの領域をそれぞれ又は一括して内包するというものであるところ、引用発明ではそのような構成は特定されておらず、この点で両者は相違する。 c 位置情報の特定について 補正後発明では、「切り出した領域の全体画像に対する位置情報を特定」しているが、引用発明では、当該構成について特定されていない。 d 画像データの符号化について 補正後発明では、「前記位置情報に基づき、前記切り出した領域に係る画像データを符号化する」としている。 ここで、「前記位置情報に基づき、」「画像データを符号化する」との点は、その意味が明確ではないが、明細書には、上記位置情報(オフセット座標)と画像データの符号化との関連について、 「次に、切り出したマージンを含む矩形の画像データを符号化する(ステップS6)。最後に、切り出した矩形についての符号化(圧縮)画像データと、上記オフセット座標を出力する(ステップS7)。なお、このようにして得られた符号化画像データ及びオフセット座標に関し、符号化画像データは、符号化画像データを復号化して描画処理を行う画像処理装置のCGROM(Character Generator Read Only Memory)に格納され、オフセット座標はそのプログラムROM(Read Only Memory)に格納される。」(【0024】) 「画像処理装置内のデコーダ21は、CPU1からの指令(プログラムROM3からのオフセット座標を含む)に基づき、CGROM4から、切り出された矩形に係る符号化画像データを入力し復号化する(ステップS11)。その復号化画像データは、描画回路22に送られる。描画回路22は、その復号化画像データを入力すると共に、そのデータに対応するオフセット座標データを入力し、そのオフセット座標に基づき、その復号化された画像データを表示部5の所定位置に表示する(ステップ12)。」(【0029】) と記載されており、当該記載は、上記位置情報(オフセット座標)が、上記切り出した領域に係る画像データを符号化する際に用いられるものではなく、専らその復号化に際し、復号化された画像データを当該位置情報に基づいて表示部の所定位置に表示するためのものであるとするものであり、明細書にはこれとは異なる記載はない。 したがって、補正後発明における「前記位置情報に基づき、」「画像データを符号化する」との点は、上記明細書の記載に照らし、上記位置情報と対応付けて上記切り出した領域に係る画像データを符号化する(その復号化に際し、復号化画像データを上記位置情報に基づいて表示部の所定位置に表示する)ようにしたというものと解される。 然るに、引用発明では、上記のとおり、上記位置情報の構成自体が特定されておらず、したがって当該位置情報と対応付けて上記画像データの符号化を行う構成も特定されていない。 しかしながら、この点を別にすれば、引用発明でも、その上記d)の要件から明らかなように、補正後発明と同じく「前記切り出した領域に係る画像データを符号化」しているといえるから、この点では両者に違いはない。 e 対比結果のまとめ(一致点および相違点) 以上の対比結果をまとめると、補正後発明と引用発明との一致点および相違点は次のとおりである。 [一致点] 両者はいずれも 「各画素データに透明度の情報を含む全体画像データを符号化する画像符号化方法であって、 全体画像データから、符号化すべき透明度の任意の形状の画像領域であって、前記任意の形状における最小面積の画像領域を切り出し、 前記切り出した領域に係る画像データを符号化することを特徴とする画像符号化方法。」 である点。 [相違点] i)補正後発明の「一塊以上の画素をそれぞれ又は一括して内包する(任意の形状の画像領域)」について、引用発明では当該構成が特定されていない点。 ii)補正後発明では、上記符号化すべき透明度の画像領域が、「全透明の透明度情報を有する画素以外の画像領域」と特定されている点。 iii)補正後発明では、「切り出した領域の全体画像に対する位置情報を特定し」、「前記位置情報に対応付けて」上記切り出した領域に係る画像データを符号化する(その復号化に際し、復号化画像データを上記位置情報に基づいて表示部の所定位置に表示する)ようにしているのに対し、引用発明では当該構成が特定されていない点。 (エ)判断 a 相違点i)について 引用発明の利用分野について、刊行物1の前掲段落【0001】には、「本発明は、一般的な映像の場面を符号化する様々なアプリケーションに適用可能な画像信号符号化の方法である。」とあるから、引用発明は、一般的な画像(映像)を対象に上記の符号化を行うものである。 然るに、一般的な画像においては、引用発明の画像符号化方法で符号化対象とする上記「符号化すべき透明度の画像領域」は1つとは限らず全体画像(一画面)中に分散して複数あることは、普通に想定できることであり、刊行物1には、図8等において、上記符号化すべき透明度の画像領域が単一の領域として示されているが、この点は例示的なもので(単一の領域のみに)限定的なものではないと解するべきである。 そして、上記符号化すべき透明度の画像領域が分散して複数ある場合には、引用発明においても、補正後発明のように、当該符号化すべき透明度の画像領域に外接する上記矩形画素領域が当該符号化すべき透明度の画像領域を「それぞれ又は一括して内包する」ようにできることは、次のとおり当業者には容易に理解できることである。 すなわち、引用発明の前記a),b),c)の要件によると、引用発明では、画像(画面)中の符号化すべき透明度の画素と判定された各画素の画素位置を示す画素位置信号から、水平方向で最初に検出される画素位置と最後に検出される画素位置、および垂直方向で最初に検出される画素位置と最後に検出される画素位置の各画素位置に基づいて上記矩形画素領域を画定している。 引用発明における上記矩形画素領域の画定手法は、画定された矩形画素領域(最小の単一画素ブロック)を示す図8からみて、符号化すべき透明度の画素が単一の領域内にある(上記符号化すべき透明度の画素領域が単一である)場合を前提としているもので、上記符号化すべき透明度の画素領域が特に分散して複数ある場合についての上記矩形画素領域の画定手法を示すものではない。 しかしながら、上記符号化すべき透明度の画素領域が分散して複数ある場合であっても、同様に、上記水平方向で最初に検出される画素位置と最後に検出される画素位置、および垂直方向で最初に検出される画素位置と最後に検出される画素位置の各画素位置に基づいて上記矩形画素領域を画定できること、その場合、上記水平、垂直方向の各画素位置の検出を、I)上記複数の領域毎に個々に行えば、各領域をそれぞれ内包する矩形画素領域(各領域毎の矩形画素領域)が画定され、II)上記複数の領域の全体について行えば、複数の領域を一括して内包する矩形画素領域が画定されることは、引用発明が示す上記矩形画素領域の画定手法自体から当業者には容易に理解できることである。 よって、補正後発明の上記引用発明との相違点i)は、当業者が容易に想到し得たというべき事項である。 b 相違点ii)について 符号化すべき透明度の画像領域が、「全透明の透明度情報を有する画素以外の画像領域」であるとは、すなわち、全透明の透明度情報を有する画素の領域のみを符号化しないものであるといえる。 したがって、当該相違点ii)は、結局、符号化を行う画素と行わない画素との区別を、透明度を基準とし、当該透明度がいずれかの値(特定の閾値)であれば符号化を行わない引用発明に対して、補正後発明では、当該符号化を行わない画素の透明度が全透明である(すなわち、上記特定の閾値が全透明である)ことを特定している点で相違するというものであるといえる。 引用発明は、刊行物1の前掲段落【0004】、【0005】の記載にあるように、画像信号の符号化に際し、符号化の必要がない画素を省いて符号化することで効率のよい符号化を行うことを目的とし、符号化の必要がない画素を、透明度を基準として、透明度が特定の値であれば符号化をしないことを開示するのみであるが、補正後発明のように透明度が全透明の画素である場合のみ符号化しないとすることは最も普通に考えられることである。 すなわち、全透明ではないある閾値で符号化を行わないとした場合、「わずかに全透明ではない画素」が存在しているにもかかわらず、透明度が符号化すべきではない値であると判断して符号化が行われず、当該画素値について、情報が欠落することが生じることは明らかであり、この場合元の画像を再現できなくなるが、全透明の透明度情報を有する画素以外の画像領域を符号化する構成であれば、符号化されないのは全透明の透明度を有する画素のみであるから、上記「わずかに全透明ではない画素」であっても符号化され、情報の欠落がないことは、当業者であれば普通に想定できることである。 よって、補正後発明の上記引用発明との相違点ii)は当業者が容易に想到し得たというべき事項である。 c 相違点iii)について 引用発明では、上記のとおり、全体画像から切り出した領域(上記矩形画素領域)を符号化しているが、当該符号化は、上記のとおり、一般的な画像(映像)を対象として、符号化の必要がない画素を省いて符号化することで効率のよい符号化を行うために上記符号化する領域の切り出しを行っているものであって、当該領域の切り出しは全体画像に対してサイズ変更等の変更を加えるようなことを目的とするものではない。 したがって、引用発明では、上記切り出した領域の符号化画像データを復号する際には、復号化画像データを元の切り出し領域の位置に戻すことで一般的な画像(映像)としての全体画像の復元がなされていることは、刊行物1に特に明示がなくても当業者には容易に理解できることであり、この全体画像の復元は、上記復号化画像データを、補正後発明のように「上記表示部の所定位置に表示する」ようにしているといえるものである。 そして、上記全体画像の復元を行う上で、上記切り出した領域の符号化画像データのほか、上記切り出した領域の全体画像に対する位置を特定する位置情報(オフセット座標)が必要であって、当該位置情報と対応付けて上記切り出した領域に係る画像データの符号化がなされるべきことは当業者には常識的なことである。 よって、引用発明において、上記相違点iii)に係る補正後発明の要件のように、「切り出した領域の全体画像に対する位置情報を特定し」、「前記位置情報に対応付けて」上記切り出した領域に係る画像データを符号化する(その復号化に際し、復号化画像データを上記位置情報に基づいて表示部の所定位置に表示する)ようにすることは、当業者が容易に想到し得たというべき事項である。 (オ)まとめ(独立特許要件) 以上のように、補正後発明の引用発明との相違点i)?iii)は、いずれも当業者が容易に想到し得たというべきものであり、また補正後発明をその技術的効果を含めて全体としてみても、発明として格別のものがあるとは認められない。 よって補正後発明は、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび(補正却下の決定) したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 3.本願発明について (1)本願発明 平成25年1月9日付けの手続補正は上記のとおり却下したので、本件出願に係る発明は、平成24年7月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項9までの各請求項発明であるところ、請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明」ともいう)は、当該請求項1の次の記載により特定されるものである。 「【請求項1】 各画素データに透明度の情報を含む全体画像データを符号化する画像符号化方法であって、 前記全体画像データから、全透明の透明度情報を有する画素以外の画素を内包する画像領域を切り出すと共に、切り出した領域の全体画像に対する位置情報を特定し、 前記位置情報に基づき、前記切り出した領域に係る画像データを符号化することを特徴とする画像符号化方法。」 (2)刊行物1 a 刊行物1の記載 原査定の拒絶理由に引用された特開平8-140096号公報(前記の刊行物1、以下「刊行物1」という)には、前記2.(2)ウ(イ)aに示したとおりの事項が記載されている。 b 刊行物1記載の発明 上記刊行物1には、前記2.(2)ウ(イ)b に示したとおりの発明が記載されている。 (3)判断 本願発明は、前記2.(2)ウ(ア)で認定した補正後発明との対応でみると、当該補正後発明における前記画像領域についての限定〔前記2.(1)参照〕がないだけで、その余の点では補正後発明と同じである。 然るに、本願発明において、上記画像領域は上記の限定があるものであってもよい(当該限定のあるものが特に排除されているわけではない)ことは、明細書の記載に照らし明らかである。 よって、本願発明は、補正後発明について前記2.(2)ウ(ウ)および(エ)で認定、判断したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、本件出願の請求項2から9までの各請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-13 |
結審通知日 | 2013-12-17 |
審決日 | 2014-01-06 |
出願番号 | 特願2011-15822(P2011-15822) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堀井 啓明 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
松尾 淳一 渡辺 努 |
発明の名称 | 画像符号化方法、画像処理方法、及び画像復号化方法 |
代理人 | 山田 賢二 |