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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1284930
審判番号 不服2013-6060  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-04 
確定日 2014-02-20 
事件の表示 特願2006-237927「基板カバー、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 58809〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月1日の出願であって、平成23年11月15日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成24年1月12日に手続補正がなされたが、同年12月21日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成25年4月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 当合議体の判断
1.本願発明
平成24年1月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1の記載のうち、「前記基板カバーは、」の記載は、本願の発明の詳細な説明の記載に照らして「前記枠状部材は、」の明らかな誤記であるから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、当該誤記を訂正した以下のとおりのものであると認める。

「荷電粒子ビームを用いて描画される基板上に配置され、前記基板の外周端よりも外形寸法が大きく形成され、前記外周端よりも小さな寸法で中央部に開口部が形成された枠状部材と、
前記枠状部材の下面側に設けられ、前記基板と接続して導通させる接点部と、
前記基板上に配置される前記枠状部材上に形成された、前記基板の位置を確認するための所定のマークと、
を備え、
前記枠状部材は、基板の外周部全体をカバーすることを特徴とする基板カバー。」

2.引用刊行物及び記載された発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2005-32963号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム露光装置に係り、特に、電子ビーム露光装置において被処理基板の周縁部での帯電を防止するための機構に関するものである。」
(1b)「【0011】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明に基づく電子ビーム露光装置の試料ステージ部分の概略構成を示す。図中、1はガラス基板(被処理基板)、4は支持機構、5は帯電防止枠、6は接触子、9はアース配線を表す。
【0012】
鏡筒8の下側にXYステージ2が配置される。XYステージ2の上には複数の基板支持ピン3が固定され、ガラス基板1は、これらの基板支持ピン3の上に置かれる。XYステージ2の上には、ガラス基板1の周囲を取り囲むように、更に支持機構4が設けられ、その上に帯電防止枠5が載せられる。支持機構4は、下側からバネ42で支えられた支持ピン41を備え、これらの支持ピン41の上に帯電防止枠5が支持される。ガラス基板1の周縁部は、上方から帯電防止枠5によって覆われる。支持機構4にはアース配線9が取り付けられ、帯電防止枠5は、支持機構4を介してアースに接続される。なお、このアース配線9は、支持機構4がXYステージ2等を介して接地されていれば、それがアース配線となり、特別な配線は不要である。
【0013】
帯電防止枠5は、ガラス基板1の周縁部近傍で散乱された電子を捕捉することによって、ガラス基板1の周縁部での帯電を防止する。更に、ガラス基板1の周縁部において電子ビームが帯電防止枠5により遮られるので、ガラス基板1の周縁部への電子ビームの入射も防止される。
【0014】
帯電防止枠5の下側には、内側の縁に沿って、突起状の複数の接触子6が取り付けられている。支持機構4の上に帯電防止枠5を置くと、バネ42が縮んで支持ピン41が後退し、接触子6がガラス基板1の表面に到達することにより、帯電防止枠5の下降が止まる。従って、バネ42の縮み代を調整することによって、接触子6を介してガラス基板1に加えられる荷重を適切な範囲に収めることができる。
【0015】
なお、図2の部分拡大断面図に示すように、ガラス基板1は、その表面が遮光膜11(例えば、Cr薄膜)で覆われ、更にその上からフォトレジスト膜12で覆われている。従って、接触子6に作用する荷重は、接触子6の先端がフォトレジスト膜12を突き破って遮光膜11に到達し、且つ、ガラス基板1に有害な撓みを生じさせることがないような条件内で設定される。」
(1c)「【図1】



これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「電子ビーム露光装置のXYステージ(2)の上に複数の基板支持ピン(3)が固定され、ガラス基板(1)がこれらの基板支持ピンの上に置かれ、XYステージの上にガラス基板の周囲を取り囲むように更に支持機構(4)が設けられ、その上に載せられる帯電防止枠(5)であって、
支持機構は下側からバネ(42)で支えられた支持ピン(41)を備え、これらの支持ピンの上に帯電防止枠が支持され、ガラス基板の周縁部は上方から帯電防止枠によって覆われ、支持機構にはアース配線(9)が取り付けられ、帯電防止枠は、支持機構を介してアースに接続され、
帯電防止枠の下側には、内側の縁に沿って突起状の複数の接触子(6)が取り付けられており、支持機構の上に帯電防止枠を置くとバネが縮んで支持ピンが後退し接触子がガラス基板の表面に到達することにより帯電防止枠の下降が止まる構成の、
帯電防止枠。」(以下「引用発明」という。)

(2)引用文献2
同じく、特開2000-31008号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線マスクおよびその製造方法に関し、より特定的には、マスクパターンの描画の際に用いる位置基準マークを備えるX線マスクおよびその製造方法に関する。」
(2b)「【0013】ここで、レジスト104におけるマスクパターン110の電子線描画工程は、具体的に以下のような工程を含む。まず、X線吸収体103上にレジスト104が塗布されたX線マスクを、ホルダやカセットと呼ばれる治具へ装着する。次に、電子線描画装置のロードロック室(真空状態を保ったまま電子線描画を行なうエリアにX線マスクを搬入するために事前にX線マスクの周囲を真空とするためのエリア)にカセットとともにX線マスクを搬入する。次に、ロードロック室の内部を真空とする。次に、ロードロック室から電子線描画を行なうエリアのステージ上にカセットとともにX線マスクを搬入する。そして、電子線によって、X線マスクのレジスト104にマスクパターンを描画する。このマスクパターンを電子線を用いて描画する際には、カセットもしくはステージ上に設置された位置基準マークの位置を検出・参照しながら電子線描画を行なう。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、マスクパターン110を描画する際には、カセットもしくはステージ上に設置された位置基準マークの位置を検出・参照するが、この際に以下のような問題がある。
【0015】まず、通常、ステージは除振台などの上に設置され、外部の機械的な振動の影響を受けないように設計されている。しかし、このような外部の機械的な振動を完璧に遮断することは困難であり、マスクパターンの描画中に外部の機械的な振動がステージやカセットなどに伝わることがある。この結果、レジスト104にマスクパターン110を描画する際に、この振動に起因してX線マスクとカセットとの相対的な位置、あるいはカセットとステージの相対的な位置が変化する場合がある。この結果、カセットもしくはステージ上に設置された位置基準マークとX線マスクとの相対的な位置も変化することになり、マスクパターン110の位置精度が悪化するという問題が発生していた。
【0016】また、ステージを移動させる際の加速あるいは減速により発生する振動や、電子線描画を行なう際のX線マスクやカセットあるいはステージの温度変化に伴う熱膨張などによっても同様の問題が発生していた。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「電子ビーム」、「ガラス基板」及び「帯電防止枠」は、それぞれ本願発明の「荷電粒子ビーム」、「基板」及び「枠状部材」に相当する。
引用発明の「ガラス基板の周縁部は上方から帯電防止枠によって覆われ」る構成は本願発明の「前記枠状部材は、基板の外周部全体をカバーすること」に相当する。
したがって、引用発明の帯電防止枠は「ガラス基板の外周端よりも外形寸法が大きく形成され、前記外周端よりも小さな寸法で中央部に開口部が形成された」構成を有する。
(2)引用発明の「帯電防止枠の下側に」取り付けられた「内側の縁に沿って突起状の複数の接触子」は本願発明の「枠状部材の下面側に設けられ、前記基板と接続して導通させる接点部」に相当する。

そうすると、両者は、
「荷電粒子ビームを用いて描画される基板上に配置され、前記基板の外周端よりも外形寸法が大きく形成され、前記外周端よりも小さな寸法で中央部に開口部が形成された枠状部材と、
前記枠状部材の下面側に設けられ、前記基板と接続して導通させる接点部と、
を備え、
前記枠状部材は、基板の外周部全体をカバーする基板カバー。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
本願発明が「基板上に配置される前記枠状部材上に形成された、前記基板の位置を確認するための所定のマーク」を備えるのに対して、引用発明がそのようなマークを備えるかどうか不明な点。

4.判断
(1)相違点について
荷電粒子ビームを用いて基板上にパターンを描画する装置において、基板の位置を確認するための所定のマークを備えることは、描画精度を維持するために従来からごく普通に行われている周知技術(特開昭57-210549号公報参照)である。
引用文献2には「X線マスクを、ホルダやカセットと呼ばれる治具へ装着すること」及び「このマスクパターンを電子線を用いて描画する際には、カセットもしくはステージ上に設置された位置基準マークの位置を検出・参照しながら電子線描画を行なうこと」が記載されている。
すなわち、本願の出願時点で、荷電粒子ビームを用いて基板上にパターンを描画する装置において、基板の位置を確認するための所定のマークをホルダやカセットに設けることが行われていた。
また、本願明細書の段落【0006】の記載や、上記周知技術を示す文献に記載されているとおり、当該マークを基板自体に設けることも従来から行われていた。
そして、当該マークをどの部分に形成するかは、求められる描画精度や基板の保持態様、スループット等の種々の事項やメリットデメリットを総合的に勘案して、当業者が適宜選択し得る事項(上記摘記事項(2b)の【0015】?【0016】及び上記周知技術を示す文献の第3頁左下欄?右下欄参照)である。
また、引用発明において「ガラス基板の周縁部を上方から覆って載置されている帯電防止枠」が、従来のホルダやカセットと同様に、ガラス基板とともにXYステージ上を移動する部材であることを考慮すれば、引用発明の帯電防止枠上に当該マークを形成することに、格別の困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。

(3)効果
そして、本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-18 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-07 
出願番号 特願2006-237927(P2006-237927)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 基板カバー、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法  
代理人 松山 允之  
代理人 池上 徹真  
代理人 須藤 章  

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