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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01B
管理番号 1284967
審判番号 無効2013-800073  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-26 
確定日 2014-02-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第5042638号発明「導電性高分子溶液の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5042638号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5042638号(請求項の数[3]、以下、「本件特許」という。)は、平成19年 1月15日に特許出願された特願2007-5933号に係るものであって、その請求項1?3に係る発明について、平成24年 7月20日に特許権の設定登録がなされた。

これに対して、平成25年 4月26日に、本件特許の請求項1?3に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2013-800073号〕が請求されたものであり、当審は、平成25年 5月17日付けで、本件無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)に対し、相当の期間を指定して、本件無効審判請求に対する答弁書提出の機会を与えたが、答弁書は提出されなかった。

なお、被請求人は、平成25年 9月24日付けで、口頭審理によらず、書面審理によることを希望する旨の上申書を提出している。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、特許第5042638号の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
反応溶媒中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーとポリアニオンとを混合してモノマー分散液を調製する工程と、
モノマー分散液中のπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを酸化重合して導電性高分子予備溶液を調製する工程とを有する導電性高分子溶液の製造方法であって、
前記モノマー分散液および/または導電性高分子予備溶液を高圧分散処理する工程をさらに有することを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項2】
モノマー分散液または導電性高分子予備溶液に導電性向上成分を添加する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項3】
導電性向上成分が、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、1個以上のヒドロキシル基及び1個以上のカルボキシル基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の導電性向上剤であることを特徴とする請求項2に記載の導電性高分子溶液の製造方法。


第3 請求人の主張の概要及び証拠方法
3-1 請求人の主張の概要
請求人は、本件発明1?3に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、甲第1?4号証を提出し、次の無効理由を主張している。

理由1:本件発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

理由2:本件発明2?3は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件発明2?3についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

理由3:本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明を適用することで、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

理由4:本件発明2?3は、甲第1号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された発明を適用するか、甲第1?4号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明2?3についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

3-2 証拠方法
甲第1号証の1:特開2002-305086号公報
甲第1号証の2:ヨーロッパ特許第991303号公報
甲第1号証の3:特開2000-91081号公報
甲第2号証:特表2005-511808号公報
甲第3号証:特開平8-40712号公報
甲第4号証:特開2006-104471号公報


第4 証拠方法の記載事項
4-1 甲第1号証の記載事項
(A) 甲第1号証の1の請求項1には、「分散液の粒子の少なくとも90%が<50nmである、ポリアニオン及びカチオン性3、4-ポリアルキレンジオキシチオフェンを含んでなる該分散液。」と記載されている。

(B) 甲第1号証の1の段落[0019]には、「分散液を高圧下、強制的に1回ないし多数回金属またはセラミックのノズルに通す高圧ホモゲナイゼ-ションは好適である。」と記載されている。

(C) 甲第1号証の1の段落[0048]には、「【実施例】実施例1
3、4-ポリエチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸を重量比1:8で有する1.4重量%3、4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸分散液1リットルを、ヨーロッパ特許第991303号の実施例2に従って3、4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸分散液を蒸発させることによって調製し、高圧ホモゲナイザ-を700バール及びノズル直径0.1mmで用いて2回均質化した。」と記載されている。
ここで、ヨーロッパ特許第991303号(甲第1号証の2)の実施例2は、甲第1号証の2の対応日本出願の公開公報である、甲1号証の3の記載を翻訳文として参照すると、「3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート分散液,PEDT/PSS1:8の製造
20gの遊離のポリスチレンスルホン酸(Mn約40,000)、6.7gのカリウムパーオキソジサルフェート及び50mgの硫酸鉄(III)を撹拌しながら2000mlの水に添加した。2.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを撹拌しながら添加した。分散液を室温で24時間撹拌する。引き続き、100gのアニオン交換樹脂Lewatit^(R)MP62(Bayer AG)及び100gのカチオン交換樹脂Lewatit^(R)S100(Bayer AG)を、双方とも水で湿潤させて添加し、混合物を8時間撹拌する。
50μmの孔径を有するポリアクリロニトリル繊維により濾過してイオン交換樹脂を除去する。これにより、直ちに使用に供せる約1.1重量%の固形分含量を有する分散液が得られる。
分散液は0.22μmのフィルターにより容易に濾過することができた。濾過した分散液をエレクトロルミネッセンスディスプレイを製造するのに使用した。」というものである。


4-2 甲第2号証の記載事項
(A) 甲第2号証の請求項1には、「 式(I):
【化1】


[式中、R1およびR2は互いに独立して水素またはC1-5-アルキル基を表すか或いは一緒になって場合により置換されていてもよいC1-5-アルキレン基を形成する]
に従う構造単位を含有するポリチオフェンまたはチオフェン共重合体の水性もしくは非水性溶液または分散液を製造する方法であって、開始剤を用いて反応媒体中でポリアニオンの存在下に酸化または還元条件下で不活性雰囲気下に、該開始剤が加えられる時に1リットルの該反応媒体当たり3mgより少ない酸素が該反応媒体中に存在するようにして、ポリチオフェンまたはチオフェン共重合体を製造する段階を含んでなる方法。」と記載されている。

(B) 甲第2号証の段落[0042]には、「この開示で使用されるPEDOTは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を表す。」と記載されている。

(C) 甲第2号証の段落[0043]には、「この開示で使用されるEDOTは、3,4-エチレンジオキシチオフェンを表す。」と記載されている。

(D) 甲第2号証の段落[0164]には、「表12に示された量のポリ(スチレンスルホン酸)[PSS](分子量=290,000)溶液を表12に特定のPEDOT-タイプに関して示された量の脱イオン水と25℃においてスタラーおよび窒素入り口を装備した4L反応容器の中で混合した。窒素をこの混合物中に30分間にわたり泡立たせた後に、表12に特定のPEDOT-タイプに関して示された量のEDOTを次にこの溶液に加えて、30mMのEDOT-濃度を与えた。この溶液中の酸素の濃度は、インプロ6000シリーズO_(2)センサーを用いるニック・プロセス・ユニット73O_(2)で測定して<1.0mg/Lであった。それぞれ0.13および41.6mMの濃度に相当する量のFe_(2)(SO_(4))_(3).9H_(2)OおよびNa_(2)S_(2)O_(8)を次に加えて重合反応を開始させた。反応混合物中のEDOTの濃度は30mMでありそしてPSSのものはPEDOT-タイプ6および7に関しては23mMであり、PEDOT-タイプ8および9に関しては36mMであり、PEDOT-タイプ10および11に関しては57mMであり、PEDOT-タイプ12および13に関しては74mMであり、そしてPEDOT-タイプ14?17に関しては149mMであった。反応混合物を次に25℃において7時間にわたり攪拌し、その後に特定のPEDOT-タイプに関する6.95mMの濃度に相当する別量のNa_(2)S_(2)O_(8)を加えた。16時間の追加反応時間後に、反応混合物をイオン交換体(バイエルからの300mLのレワチットTMS100MB+500mLのレワチット^(TM)M600MB)を用いて2回処理した。生じた混合物を95℃において2時間にわたりさらに熱処理しそして生じた粘着性混合物を高剪断力[60MPa(600バール)における微細流動化器]で処理した。」と記載されている。

(E) 甲第2号証の段落[0119]には、「…粘着性混合物を高剪断力[60MPa(600バール)における微細流動化器(microfluidizer)]で処理した。」と記載されている(「…」は記載の省略を表す。)。

(F) 甲第2号証の段落[0086]には、「(i)少なくとも1種の非水性溶媒を式(I)に従う構造単位を含有するポリチオフェンまたはチオフェン共重合体の水性分散液と混合し、そして(ii)内部にある水の含有量が少なくとも65重量%減じられるまで段階(i)で製造された混合物から水を蒸発させる段階をさらに含んでなり、そしてここで非水性溶媒はジ-もしくはポリヒドロキシ-および/またはカルボキシ基またはアミドもしくはラクタム基を含有する有機化合物、例えば糖アルコール類、例えばソルビトール、マンニトール、サッカロースおよびフルクトース、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールN-メチルピロリドンおよびここに引用することにより本発明の内容となる欧州特許出願公開第686662号に開示されたようなそれらの抵抗を好ましくは<300Ω/平方に減ずるために調整されるそれらからの伝導性コーティングである。」と記載されている。


第5 甲各号証に記載された発明
5-1 甲第1号証に記載された発明
上記4-1の(A)?(C)からすると、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「ポリアニオン及びカチオン性3、4-ポリアルキレンジオキシチオフェンを含んでなる分散液の製造であって、ポリスチレンスルホン酸、カリウムパーオキソジサルフェート及び硫酸鉄(III)を撹拌しながら水に添加し、その後、3,4-エチレンジオキシチオフェンを撹拌しながら添加し、撹拌し、濾過して分散液を得、その分散液を、1.4重量%3、4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸分散液1リットルに調製し、高圧ホモゲナイザ-を用いて2回均質化する、分散液の製造。」(以下、「甲1発明」という。)

5-2 甲第2号証に記載された発明
上記4-2の(A)?(D)からすると、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「ポリチオフェンの分散液を製造する方法であって、ポリ(スチレンスルホン酸)溶液を脱イオン水と混合し、この混合物中に窒素を泡立たせた後に、3,4-エチレンジオキシチオフェンを加えて、3,4-エチレンジオキシチオフェン濃度30mMの溶液を得、次に、Fe_(2)(SO_(4))_(3).9H_(2)OおよびNa_(2)S_(2)O_(8)を加えて重合反応を開始させて、7時間にわたり攪拌し、その後にNa_(2)S_(2)O_(8)を加えて16時間の追加反応時間後に、反応混合物をイオン交換体を用いて2回処理し、生じた混合物を95℃において2時間にわたりさらに熱処理しそして生じた粘着性混合物を高剪断力[60MPa(600バール)における微細流動化器]で処理する、方法。」(以下、「甲2発明」という。)


第6 本件発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断
6-1 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における、「ポリアニオン及びカチオン性3、4-ポリアルキレンジオキシチオフェンを含んでなる分散液の製造」、「ポリスチレンスルホン酸」、「3,4-エチレンジオキシチオフェン」は、それぞれ、本件発明1における、「導電性高分子溶液の製造方法」、「ポリアニオン」、「π共役系導電性高分子の前駆体モノマー」に相当し、また、甲1発明における、「ポリスチレンスルホン酸、カリウムパーオキソジサルフェート及び硫酸鉄(III)を撹拌しながら水に添加し、その後、3,4-エチレンジオキシチオフェンを撹拌しながら添加し、撹拌し、濾過して分散液を得、その分散液を、1.4重量%3、4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸分散液1リットルに調製」すること、「高圧ホモゲナイザ-を用いて2回均質化する」ことは、それぞれ、本件発明1における、「分散液中のπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを酸化重合して導電性高分子予備溶液を調製する工程」、「導電性高分子予備溶液を高圧分散処理する工程」に該当すると認める。
そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
分散液中のπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを酸化重合して導電性高分子予備溶液を調製する工程とを有する導電性高分子溶液の製造方法であって、
前記導電性高分子予備溶液を高圧分散処理する工程をさらに有する導電性高分子溶液の製造方法。

<相違点A>
本件発明1は、反応溶媒中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーとポリアニオンとを混合してモノマー分散液を調製する工程(以下、「モノマー分散液調製工程」という。)を有するのに対して、モノマー分散液調製工程を甲1発明は有しない点。

(イ) そこで、相違点Aにつき検討するに、本件発明1では、モノマー分散液調製工程を、導電性高分子予備溶液を調製する工程の前工程として有しているのに対して、甲1発明では、ポリアニオン、カリウムパーオキソジサルフェート及び硫酸鉄(III)が添加されている水に、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーを添加することで、導電性高分子予備溶液を調製している(上記4-1の(C))。すなわち、甲1発明では、分散液中にπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを添加することでその前駆体モノマーの酸化重合を進行させて、導電性高分子予備溶液を調製している。そのため、甲1発明では、モノマー分散液調製工程を有していない。

(ウ) してみると、相違点Aは実質的な相違であり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、上記3-1の無効理由1のうち、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとの無効理由は妥当ではない。


6-2 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における、「ポリチオフェンの分散液を製造する方法」、「ポリ(スチレンスルホン酸)」、「3,4-エチレンジオキシチオフェン」、「粘着性混合物」は、それぞれ、本件発明1における、「導電性高分子溶液の製造方法」、「ポリアニオン」、「π共役系導電性高分子の前駆体モノマー」、「導電性高分子予備溶液」に相当し、また、甲2発明における、「ポリ(スチレンスルホン酸)溶液を脱イオン水と混合し、この混合物中に窒素を泡立たせた後に、3,4-エチレンジオキシチオフェンを加えて、3,4-エチレンジオキシチオフェン濃度30mMの溶液を得」ること、「3,4-エチレンジオキシチオフェン濃度30mMの溶液を得、次に、Fe_(2)(SO_(4))_(3).9H_(2)OおよびNa_(2)S_(2)O_(8)を加えて重合反応を開始させて、7時間にわたり攪拌し、その後にNa_(2)S_(2)O_(8)を加えて16時間の追加反応時間後に、反応混合物をイオン交換体を用いて2回処理し、生じた混合物を95℃において2時間にわたりさらに熱処理」することは、それぞれ、本件発明1における、「反応溶媒中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーとポリアニオンとを混合してモノマー分散液を調製する工程」、「モノマー分散液中のπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを酸化重合して導電性高分子予備溶液を調製する工程」に該当すると認める。
そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
反応溶媒中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーとポリアニオンとを混合してモノマー分散液を調製する工程と、
モノマー分散液中のπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを酸化重合して導電性高分子予備溶液を調製する工程とを有する導電性高分子溶液の製造方法。

<相違点B>
本件発明1は、前記モノマー分散液および/または導電性高分子予備溶液を高圧分散処理する工程(以下、「高圧分散処理工程」という。)をさらに有するのに対して、甲2発明は、粘着性混合物を高剪断力[60MPa(600バール)における微細流動化器]で処理するものの、この処理が高圧分散処理工程に該当するのか否か明らかでない点。

(イ) そこで、相違点Bにつき検討するに、上記4-2の(E)によれば、甲第2号証における、「微細流動化器」とは「microfluidizer」の意であるところ、本件特許の明細書の段落[0027]?[0028]、段落[0031]によれば、本件発明における高圧分散処理は、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザーを用いた処理であるとされている。

(ウ) してみると、甲2発明における、粘着性混合物を高剪断力[60MPa(600バール)における微細流動化器]で処理することは、本件発明1における、導電性高分子予備溶液を高圧分散処理する工程に該当するから、相違点Bは実質的な相違ではない。

(エ)小括
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるから、上記3-1の無効理由1は妥当である。


6-3 本件発明2?3と甲2発明との対比・判断
(ア) 本件発明2?3と甲2発明とを対比すると、両者は、上記6-2の相違点B以外に、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

<相違点C>
本件発明2は、モノマー分散液または導電性高分子予備溶液に導電性向上成分を添加する工程を有し、さらに、本件発明3は、その導電性向上成分を、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、1個以上のヒドロキシル基及び1個以上のカルボキシル基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の導電性向上剤としているのに対して、甲2発明は、そのような工程を有しているか明らかでなく、また、導電性向上成分がどのような化合物であるのかも明らかではない点。

(イ) 上記6-2の相違点Bについては、上記6-2(イ)で検討したとおり、実質的な相違ではない。

(ウ) そこで、相違点Cにつき検討するに、上記4-2の(F)によれば、甲第2号証には、電気抵抗を減ずるために、少なくとも1種の非水性溶媒をポリチオフェンの水性分散液と混合し、そして、その混合物の内部にある水の含有量を少なくとも65重量%減じることが開示されており、また、その非水性溶媒は、ジ-もしくはポリヒドロキシ-および/またはカルボキシ基またはアミドもしくはラクタム基を含有する有機化合物であることも開示されている。

(エ) そうすると、甲2発明において、混合物の内部にある水の含有量を少なくとも65重量%減じる前に、すなわち、95℃において2時間にわたり熱処理する前に、電気抵抗を減ずるために、少なくとも1種の非水性溶媒をポリチオフェンの水性分散液と混合すること、その非水性溶媒は、ジ-もしくはポリヒドロキシ-および/またはカルボキシ基またはアミドもしくはラクタム基を含有する有機化合物であることも、甲第2号証に開示されている技術事項であり、相違点Cも実質的な相違ではない。

(オ)小括
よって、本件発明2?3は、甲第2号証に記載された発明であるから、上記3-1の無効理由2も妥当である。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1?3についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、上記3-1の無効理由3?4について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-17 
結審通知日 2013-12-19 
審決日 2014-01-10 
出願番号 特願2007-5933(P2007-5933)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01B)
P 1 113・ 113- Z (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 油科 壮一  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 小川 進
吉水 純子
登録日 2012-07-20 
登録番号 特許第5042638号(P5042638)
発明の名称 導電性高分子溶液の製造方法  
代理人 池田 直俊  
代理人 柳井 則子  
代理人 石橋 政幸  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 太田 顕学  
代理人 寺本 光生  
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