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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C01B
管理番号 1284991
審判番号 不服2013-18590  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-26 
確定日 2014-03-17 
事件の表示 特願2009-552319「ダイヤモンド」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月12日国際公開、WO2008/107860、平成22年 6月10日国内公表、特表2010-520146、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年3月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年3月8日 英国、2007年3月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月24日付けの拒絶理由が通知され、平成25年4月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月22日付けで拒絶査定がされたので、同年9月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月26日付けの当審の拒絶理由が通知され、平成26年2月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
本願発明は、平成26年2月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1?15に記載された特許を受けようとする発明を、項番に従い、「本願発明1」などといい、これらをまとめて「本願発明」という。また、その明細書を「本願明細書」という。)。
「【請求項1】
以下の工程:
(a)2つの直交する寸法がa^(*)とb^(*)の成長表面を有する単結晶ダイヤモンド種子を選択する工程、ここで、a^(*)は、前記成長表面の平面内の<100>方向に沿って整列している、前記成長表面の最大寸法であり、b^(*)は、前記成長表面の平面内にあるa^(*)に直交する方向の、前記成長表面の最大寸法であり、a^(*)/b^(*)と定義される前記成長表面のアスペクト比は少なくとも1.5である、
(b)前記種子を、基材の表面の上又は中に、前記種子の前記成長表面が露出され、かつ前記種子の前記成長表面が前記基材の前記表面に平行になるように載せる工程、及び
(c)少なくとも前記種子の前記成長表面上で単結晶ダイヤモンドが生成されるような条件下、高温高圧環境内で結晶を成長させる工程を含む、単結晶ダイヤモンドの合成方法であって、
合成された単結晶ダイヤモンドの、<100>方向に沿って整列している最大寸法a^(#)が少なくとも6mmを超える、前記方法。
【請求項2】
前記単結晶ダイヤモンド種子の前記成長表面の寸法a^(*)が少なくとも3mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単結晶ダイヤモンド種子の前記成長表面の寸法b^(*)が2mm未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたダイヤモンド種子が、該種子の成長表面の少なくとも約30%が単一の成長セクターであるような種子である、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2つの直交する寸法がa^(*)とb^(*)の成長表面を有する単結晶ダイヤモンド種子であって、a^(*)は、前記成長表面の平面内の<100>方向に沿って整列している、前記成長表面の最大寸法であり、b^(*)は、前記成長表面の平面内にあるa^(*)に直交する方向の、前記成長表面の最大寸法であり、a^(*)/b^(*)と定義される前記成長表面のアスペクト比は少なくとも1.5である、前記単結晶ダイヤモンド種子。
【請求項6】
前記成長表面の寸法a^(*)が少なくとも3mmである、請求項5に記載の単結晶ダイヤモンド種子。
【請求項7】
前記成長表面の寸法b^(*)が2mm未満である、請求項5又は6に記載の単結晶ダイヤモンド種子。
【請求項8】
前記ダイヤモンド種子が、該種子の成長表面の少なくとも約30%が単一の成長セクターであるようなダイヤモンド種子である、請求項5?7のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド種子。
【請求項9】
請求項5?8のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド種子の、単結晶ダイヤモンドを合成するための高温高圧法での使用。
【請求項10】
いずれの表面S^(#)についても、合成されたままのアスペクト比が少なくとも1.5である合成単結晶ダイヤモンド材料であって、
前記合成されたままのダイヤモンド結晶のアスペクト比はA^(#)/B^(#)と定義され、A^(#)とB^(#)は、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の種子面に平行である{100}平面に平行な、前記単結晶ダイヤモンド材料の抽象的な表面S^(#)を定義し、A^(#)は、<100>方向に沿って整列している、前記表面S^(#)内の、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法であり、B^(#)は、<100>方向に沿って整列している、前記表面S^(#)内でA^(#)と直交する、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法であり、前記抽象的な表面S^(#)は、現実の外側表面又は概念上の内側表面であってよく;かつ<100>方向に沿って整列しており、前記表面S^(#)に平行な、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法a^(#)が、少なくとも6mmである、前記合成単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項11】
前記合成されたままの単結晶ダイヤモンドが体積で少なくとも50%の単一の成長セクターを含む、請求項10に記載の合成単結晶合成ダイヤモンド材料。
【請求項12】
全体的に単一の成長セクター内にある、<100>方向に沿って整列している、前記最長寸法が少なくとも5mmを超える、請求項10又は11に記載の合成単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項13】
前記結晶の表面積の少なくとも50%が{100}型平面を構成する、請求項10?12のいずれか1項に記載の合成単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項14】
前記単一の成長セクターが{100}成長セクターである、請求項12又は13に記載の合成単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項15】
請求項10?14のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド材料を含む切断工具。」

第3 拒絶理由の概要
1 原査定の拒絶理由
この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物:特開平03-217226号公報
2 当審での拒絶理由
本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。

第4 当審の判断
4-1 原査定の拒絶理由について
1 刊行物の記載事項
(1) 刊行物の記載事項
刊行物1には、次の記載がある。
(ア)「(1)温度差法により、種結晶の(100)面を成長面として大型ダイヤモンド単結晶を合成する方法において、該種結晶の(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形とし、溶媒と炭素源の共晶点より20?90℃だけ高い温度で結晶成長させることを特徴とする上記大型ダイヤモンド単結晶の合成方法。」(第1頁左下欄5?12行)
(イ)「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明はかかる従来の事情に鑑み、種結晶の成長面を(100)面とした場合に、従来よりも広い温度範囲で安定して大型ダイヤモンド単結晶を合成出来る方法を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄11?15行)
(ウ)「〔実施例〕
超高圧発生装置の容器内に、(100)面を成長面とし正四角形、正六角形又は円形をなす種結晶、Fe-50Niからなる溶媒及び炭素源を配置し、温度差法により5.5GPaの超高圧下において種々の合成温度で150時間の結晶成長を行なった。尚、用いた溶媒と炭素源の共晶点は1300℃であった。
種結晶の成長面の形状、合成温度、並びに得られた単結晶の性状を第1表に示した。
第1表から、成長面が正四角形の場合は合成温度が1300℃+60℃を超えると溶媒の巻き込みが多くなるのに対し、成長面が正六角形及び円形の場合には合成温度が1300℃+90℃まで良質な大型ダイヤモンド単結晶が得られることが判る。
又、種結晶の成長面を楕円形とした場合も、上記実施例の正六角形又は円形の場合と同様な結果が得られた。」(第2頁左下欄10行?第3頁左下欄8行)
(エ)「第1表


」(第3頁上欄)
(オ)「〔発明の効果〕
本発明によれば、種結晶の成長面が(100)面である場合に、従来よりも広い温度範囲で良質で大型の、例えば直径又は対角線長さが8mm以上のダイヤモンド単結晶を合成することが出来る。」(第3頁左下欄12?16行)

イ 刊行物に記載された発明
記載事項(イ)によれば、刊行物には、広い温度範囲で安定して大型ダイヤモンド単結晶を合成する方法に関する発明が記載されている。具体的には、同(ア)によれば、種結晶の(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形とした種結晶を用い、該種結晶を溶媒と炭素源の共晶点より20?90℃だけ高い温度で結晶成長させることからなる発明である。
また、同(ウ)には、ダイヤモンド単結晶合成方法の具体例として、超高圧発生装置の容器内に、(100)面を成長面とした種結晶を配置し、超高圧下で種々の合成温度で結晶成長を行い、この結果、種結晶の成長面を楕円形とした場合であっても、成長面が正六角形及び円形の場合と同様に、溶媒の巻き込みが少ない良質な大型ダイヤモンド結晶を合成する方法が記載され、同(オ)によれば、直径又は対角線長さが8mm以上のダイヤモンド単結晶が合成されるものである。
したがって、刊行物にはダイヤモンド単結晶の合成方法に関する次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されているとすることができる。また、この発明を種結晶の発明として整理すると、刊行物にはタイヤモンド単結晶合成用種結晶に関する次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されており、さらに、合成されたダイヤモンド単結晶に関する発明として整理すると、合成単結晶ダイヤモンドに関する次の発明が記載されているとすることができる。
・引用発明A
「種結晶の(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形とし、該種結晶を、高圧発生装置の容器内に(100)面を成長面として配置し、溶媒と炭素源の共晶点より20?90℃だけ高い温度で結晶成長させることからなる、直径又は対角線長さが8mm以上の大型ダイヤモンド単結晶の合成方法。」
・引用発明B
「(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形としたタイヤモンド単結晶合成用の種結晶」
・引用発明C
「種結晶の成長面を(100)面として合成した、直径又は対角線長さが8mm以上の合成ダイヤモンド単結晶」

3 対比と判断
(1)本願発明1?4について
(ア)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。
引用発明Aに係る大型ダイヤモンド単結晶の合成方法においても、(100)面を成長面とした種結晶を超高圧発生装置の容器内に配置して、所定の圧力と温度で単結晶ダイヤモンドを結晶成長させているので、本願発明1における「(b)種子を、基材の表面の上又は中に、前記種子の前記成長表面が露出され、かつ前記種子の前記成長表面が前記基材の前記表面に平行になるように載せる工程、及び(c)少なくとも前記種子の前記成長表面上で単結晶ダイヤモンドが生成されるような条件下、高温高圧環境内で結晶を成長させる工程」を含む合成方法に相当する。
また、引用発明Aにおいては、直径又は対角線長さが8mm以上の大型ダイヤモンド単結晶を合成しているが、これは、本願発明1における「合成された単結晶ダイヤモンドの、<100>方向に沿って整列している最大寸法a^(#)が少なくとも6mmを超える」ことと対応している。
したがって、本願発明1と引用発明Aとは、「単結晶ダイヤモンドの合成方法であって、(b)種子を、基材の表面の上又は中に、前記種子の前記成長表面が露出され、かつ前記種子の前記成長表面が前記基材の前記表面に平行になるように載せる工程、及び(c)少なくとも前記種子の前記成長表面上で単結晶ダイヤモンドが生成されるような条件下、高温高圧環境内で結晶を成長させる工程を含む、単結晶ダイヤモンドの合成方法であって、
合成された単結晶ダイヤモンドの、<100>方向に沿って整列している最大寸法a^(#)が少なくとも6mmを超える、前記方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
本願発明の単結晶ダイヤモンド合成法では、「(a)2つの直交する寸法がa^(*)とb^(*)の成長表面を有する単結晶ダイヤモンド種子を選択する工程、ここで、a^(*)は、前記成長表面の平面内の<100>方向に沿って整列している、前記成長表面の最大寸法であり、b^(*)は、前記成長表面の平面内にあるa^(*)に直交する方向の、前記成長表面の最大寸法であり、a^(*)/b^(*)と定義される前記成長表面のアスペクト比は少なくとも1.5である」工程を含むが、
引用発明では、ダイヤモンド種子を選択する工程において、(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形としたタイヤモンド単結晶合成用の種結晶を選択している点(以下、「相違点1」という。)。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
これに関し、引用発明Aでは種結晶成長面の形状については、楕円形のほか、円形、正六角形以上の正多角体から選択されたものとしているが、該楕円形は、円形、正六角形以上の正多角体と並列的に列挙されているし、記載事項(エ)に示される実施例では、具体的には、成長面形状が正六角形と円形の種結晶を使用したものが開示されている。このため、刊行物には、種結晶成長面の形状として、アスペクト比を調整することについての技術思想は記載されていない。
とすると、「成長表面の平面内の<100>方向に沿って整列している前記成長表面の最大寸法である」「a^(*)」と、「成長表面の平面内にあるa^(*)に直交する方向の、前記成長表面の最大寸法」である「b^(*)」に関し、「a^(*)/b^(*)と定義される前記成長表面のアスペクト比は少なくとも1.5である」ことは、刊行物の記載に基づいて当業者が容易に想到できるとはいえない。 また、本願発明の奏する効果に関して本願明細書には、次の記載がある。【0007】「・・・
本発明者らは、驚くべきことに、単結晶ダイヤモンド種子の成長表面の表面積を最小にしながらエッジ長を最大にすることによって、特に金属包含物含量が低減した大型単結晶ダイヤモンドを製造できる簡単な方法を提供することによって、先行技術の問題を克服できることを見出した。」
【0013】「・・・
高いアスペクト比の種子を選択することによって、種子の成長表面のエッジ長を最大にし、かつ種子の成長表面の表面積を最小にする。エッジ長を最大にすると、例えば、旋盤加工バイト(single point turning tool)として使うのに適した合成単結晶ダイヤモンドの望ましい物体をもたらす。表面積を最小にすると、先行技術で報告され、また上述したように、大型基材の使用に伴って一般的に遭遇する問題である多核化及び包含物の取込みの問題を実質的に低減し、或いは排除さえする。」
これらの記載から明らかなように、本願発明1においては、上記相違点1に関する構成を有することにより、すなわち、種結晶のアスペクト比を1.5以上とすることにより、審判請求書の第3頁(IV)以降に記載されているように、単結晶ダイヤモンドの包含物の量を低減することができ、切断ツールに関連する分野において有用な、種結晶の表面と平行な平面において1辺の長さが大きい単結晶を得ることができる。これは、刊行物には記載されていない顕著な効果である。
したがって、本願発明1は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、本願発明2?4は、本願発明1の特定事項を全て有し、さらに本願発明1の特定事項を限定・具体化したものであるので、同様の理由から、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえた発明であるとすることはできない。

(2)本願発明5?9について
本願発明5と引用発明Bとを対比すると、両者は、「単結晶ダイヤモンド種子」である点で一致し、次の点で相違する。
本願発明の単結晶ダイヤモンド種子が「2つの直交する寸法がa^(*)とb^(*)の成長表面を有する単結晶ダイヤモンド種子であって、a^(*)は、前記成長表面の平面内の<100>方向に沿って整列している、前記成長表面の最大寸法であり、b^(*)は、前記成長表面の平面内にあるa^(*)に直交する方向の、前記成長表面の最大寸法であり、a^(*)/b^(*)と定義される前記成長表面のアスペクト比は少なくとも1.5である」のに対し、引用発明Bでは、「種結晶として、(100)面からなる成長面の形状を円形、楕円形、又は正六角形以上の正多角形」のものである点。
この相違点は、本願発明1?4において検討した相違点1と同じである。
したがって、上記したと同じ理由により、本願発明5は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、本願発明6?9は、本願発明5の特定事項を全て有し、さらに本願発明5の特定事項を限定・具体化したものであるので、同様の理由から、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえた発明であるとすることはできない。

(3)引用発明10?15について
ア 対比
本願発明10と引用発明Cとを対比する。
刊行物の記載事項(オ)によれば、引用発明1で合成されたダイヤモンド単結晶は、種結晶の成長面が(100)面である場合に、直径又は対角線長さが8mm以上である。
そして、この直径又は対角線長さは成長面上の長さであると理解されるので、この長さは、「<100>方向に沿って整列しており、前記表面S^(#)に平行な、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法」に対応し、その結果、この「最大寸法」に関しては、本願発明10は引用発明Cを包含する。
このため、本願発明10と引用発明Cとは、「<100>方向に沿って整列しており、前記表面S^(#)に平行な、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法a^(#)が、少なくとも6mmである合成単結晶ダイヤモンド材料」に関する発明である点で一致し、次の点で相違する。
本願発明10は、「いずれの表面S^(#)についても、合成されたままのアスペクト比が少なくとも1.5である合成単結晶ダイヤモンド材料であって、
前記合成されたままのダイヤモンド結晶のアスペクト比はA^(#)/B^(#)と定義され、A^(#)とB^(#)は、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の種子面に平行である{100}平面に平行な、前記単結晶ダイヤモンド材料の抽象的な表面S^(#)を定義し、A^(#)は、<100>方向に沿って整列している、前記表面S^(#)内の、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法であり、B^(#)は、<100>方向に沿って整列している、前記表面S^(#)内でA^(#)と直交する、前記合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料の最大寸法であり、前記抽象的な表面S^(#)は、現実の外側表面又は概念上の内側表面であってよい、前記合成単結晶ダイヤモンド材料。」であるのに対し、
引用発明Cでは、該「合成されたままのダイヤモンド結晶のアスペクト比はA^(#)/B^(#)」がどの程度になるかは明らかではない点(以下、「相違点2」という。)。
この相違点2について検討するに、刊行物には、 種結晶の成長面が(100)面である場合に、合成されたダイヤモンド単結晶の該成長面に平行な平面における最大寸法とこれと直交する方向の最大寸法との比であるアスペクト比について記載も示唆もない。
そして、本願発明10は、相違点2の構成を採用することにより、上記したとおり、単結晶ダイヤモンドの合成時間と包含物の量を同時に低減することができ、切断ツールに関連する分野において有用な、種結晶の表面と平行な平面において1辺の長さが大きい単結晶を得ることができる。これは、刊行物には記載されていない顕著な効果である。
したがって、本願発明10は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、本願発明11?15は、本願発明10の特定事項を全て有し、さらに本願発明10の特定事項を限定・具体化したものであるので、同様の理由から、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえた発明であるとすることはできない。

4-2 当審の拒絶理由について
当審の拒絶理由は、本願発明においては「単結晶ダイヤモンド種子」及び「合成されたままの単結晶ダイヤモンド材料」の、<100>方向に沿って実質的に配列している面、及び<110>方向に沿って実質的に配列している面について、アスペクト比や最大寸法を特定するものであるが、<110>方向に沿って実質的に配列している面に関しては、本願発明の課題を解決できるとは、発明の詳細な説明の記載や技術常識を考慮しても認めることができないので、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない、というものであった。
しかし、<110>方向に沿って実質的に配列している面に関しては、上記補正により削除されたので、当審の拒絶理由は解消した。

第5 まとめ
以上のとおりであるので、本願発明1?15は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものとすることもできず、本願発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるので、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-27 
出願番号 特願2009-552319(P2009-552319)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C01B)
P 1 8・ 537- WY (C01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 浅野 裕之  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官
吉水 純子
中澤 登
発明の名称 ダイヤモンド  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 山崎 一夫  
代理人 渡辺 浩司  
代理人 浅井 賢治  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  

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