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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C21D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C21D
管理番号 1285007
審判番号 不服2013-11950  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-25 
確定日 2014-03-11 
事件の表示 特願2007-253289「リング状品の変形矯正装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日出願公開、特開2009- 84610、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年9月28日の出願であって、平成25年3月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、同年7月26日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年8月19日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年10月18日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年6月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年6月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2を、
「【請求項1】
加熱されたリング状品を冷却しながら変形を矯正するリング状品の変形矯正装置であって、加熱状態のリング状品を載せる配置台と、この配置台上のリング状品の外周面にそれぞれ転動自在に接触させる一対の受けロールと、これら一対の受けロールの間隔を変更する受けロール間隔変更機構と、前記一対の受けロールに前記リング状品を介して対向して設けられた1個の加圧ロールと、この加圧ロールを前記リング状品の外周面に押付けられた前進位置と同外周面から離れた後退位置とに進退させる加圧ロール進退機構と、この加圧ロール進退機構により前記リング状品に押付けられた状態の加圧ロールを回転駆動させる回転モータを含む加圧ロール回転駆動機構とを備えることを特徴とするリング状品の変形矯正装置。
【請求項2】
請求項1において、前記受けロール間隔変更機構は、各受けロールをそれぞれ支持する受けロール支持部材と、これら受けロール支持部材を前記配置台に対しそれぞれ位置変更自在に案内するガイドと、前記受けロール支持部材を前記配置台に固定する固定手段とを有し、前記加圧ロール回転駆動機構は、前記加圧ロールを支持する加圧ロール支持部材に設置された前記回転モータと、この回転モータの出力軸および前記加圧ロールの支持軸にそれぞれ取付けられたスプロケットと、これらスプロケットに巻き掛けたチェーンとを有するリング状品の変形矯正装置。」
から
「【請求項1】
加熱されたリング状品を冷却しながら変形を矯正するリング状品の変形矯正装置であって、加熱状態のリング状品を上面のリング状品配置部上に載せる配置台と、この配置台上のリング状品の外周面にそれぞれ転動自在に接触させる一対の受けロールと、これら一対の受けロールの間隔を変更する受けロール間隔変更機構と、前記一対の受けロールに前記リング状品を介して対向して設けられた1個の加圧ロールと、この加圧ロールを前記リング状品の外周面に押付けられた前進位置と同外周面から離れた後退位置とに進退させる加圧ロール進退機構と、この加圧ロール進退機構により前記リング状品に押付けられた状態の加圧ロールを回転駆動させる回転モータを含む加圧ロール回転駆動機構とを備え、
前記受けロール間隔変更機構は、各受けロールをそれぞれ支持する受けロール支持部材と、これら受けロール支持部材を前記配置台に対しそれぞれ位置変更自在に案内するガイドと、前記受けロール支持部材を前記配置台に固定する固定手段とを有し、前記加圧ロール回転駆動機構は、前記加圧ロールを支持する加圧ロール支持部材に設置された前記回転モータと、この回転モータの出力軸および前記加圧ロールの支持軸にそれぞれ取付けられたスプロケットと、これらスプロケットに巻き掛けたチェーンとを有し、
前記加圧ロール進退機構は、前記加圧ロールを回転自在に支持し一対のガイド軸により両側部が進退自在に支持されて前記一対の受けロールの中間点と前記加圧ロールの中心点とを結ぶ方向に沿って進退自在な加圧ロール支持部材と、この加圧ロール支持部材を進退させる進退手段とでなり、前記一対のガイド軸は、前記配置台上に、前記リング状品載置台部の近傍位置から前記受けロールに対して遠ざかる方向に延びて設けられ、前記加圧ロール支持部材は前記受けロールに近づく位置にあるときに前記リング状品載置台部の上方位置へ片持ち状に延びる、
リング状品の変形矯正装置。」
とする補正を含むものである。

2.補正の適否
特許法17条の2第5項第2号は、「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と定めているから、同号の事項を目的とする補正とは、特許請求の範囲を減縮するだけでなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならないと解される。また、「発明を特定するために必要な事項」とは、特許法「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから、特許請求の範囲中の事項であって特許を受けようとする発明を特定している事項であると解される。
そして、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項は、「・・・を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定している。
上記規定の文言及び上記規定において特許法126条第7項を準用する趣旨が特許請求の範囲の減縮により改めて特許要件の具備を再審査する必要が生ずる点にあるものと解されるところからすると、「発明を特定するために必要な事項」を「限定する」補正とは、補正前の請求項における「発明を特定するために必要な事項」の一つ以上を、概念的に、より下位の「発明を特定するために必要な事項」とする補正であると解される。
これを本件について検討する。
本件補正前の請求項において、本件補正に係る「一対のガイド軸」、「加圧ロール支持部材」及びこれらの位置関係は、発明を特定するために必要な事項とはされておらず、本件補正は、これらを概念的に、より下位の発明を特定するために必要な事項とする補正ではないから、発明を特定するために必要な事項を限定する補正とはいえない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明でないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年6月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、同年3月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
加熱されたリング状品を冷却しながら変形を矯正するリング状品の変形矯正装置であって、加熱状態のリング状品を載せる配置台と、この配置台上のリング状品の外周面にそれぞれ転動自在に接触させる一対の受けロールと、これら一対の受けロールの間隔を変更する受けロール間隔変更機構と、前記一対の受けロールに前記リング状品を介して対向して設けられた1個の加圧ロールと、この加圧ロールを前記リング状品の外周面に押付けられた前進位置と同外周面から離れた後退位置とに進退させる加圧ロール進退機構と、この加圧ロール進退機構により前記リング状品に押付けられた状態の加圧ロールを回転駆動させる回転モータを含む加圧ロール回転駆動機構とを備えることを特徴とするリング状品の変形矯正装置。
【請求項2】
請求項1において、前記受けロール間隔変更機構は、各受けロールをそれぞれ支持する受けロール支持部材と、これら受けロール支持部材を前記配置台に対しそれぞれ位置変更自在に案内するガイドと、前記受けロール支持部材を前記配置台に固定する固定手段とを有し、前記加圧ロール回転駆動機構は、前記加圧ロールを支持する加圧ロール支持部材に設置された前記回転モータと、この回転モータの出力軸および前記加圧ロールの支持軸にそれぞれ取付けられたスプロケットと、これらスプロケットに巻き掛けたチェーンとを有するリング状品の変形矯正装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記リング状品の外周面に前記加圧ロールを押付けて変形矯正を行う時間が、40秒ないし90秒であるリング状品の変形矯正装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記リング状品の外周面に前記加圧ロールを押付けて変形矯正を開始するときのリング状品の温度が、マルテンサイト変態点温度よりも20℃ないし50℃高いリング状品の変形矯正装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、冷却用の油槽と、前記変形矯正時にリング状品を前記油槽の焼入れ油中に浸漬させて冷却する変形矯正時冷却機構とを設けたリング状品の変形矯正装置。
【請求項6】
請求項5において、前記変形矯正時冷却機構は、前記配置台を、この配置台の前記リング状品を載せるリング状品載置部が下側になるように傾け可能に支持する支持手段と、この支持手段に支持された配置台を傾ける傾け手段とを有し、傾け手段により配置台を傾けることでリング状品を前記油槽の焼入れ油に浸漬させるものであるリング状品の変形矯正装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記リング状品は軸受の軌道輪であるリング状品の変形矯正装置。」
(以下、本願の請求項1?7に係る発明を「本願発明1?7」という。)

2.原査定の理由の概要
本願発明1?7は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1 特公昭58-035578号公報

備考
出願人は上記手続補正書で、請求項1に記載の「一対の受けロール」が互いの間隔を変更可能であること(相違点1)、また、請求項1に記載の「加圧ロール」が回転モータにより回転駆動されるものであること(相違点2)をそれぞれ特定した上で、これらの点が引用文献1には開示されていないことを意見書で主張している。
そこで、相違点1、2について検討すると、相違点1については、各種サイズの環状体に対応するという周知の課題に基づき、引用文献1に記載された発明において、特開昭63-111123号公報(特に、第2頁左下欄第6?10行及び右下欄第14?17行の記載を参照されたい。)に記載されるような周知技術を採用したにすぎないというべきである。
そして、相違点1について、出願人は意見書で「特に、一対の受けロールの互いの間隔を変更したうえで、これら受けロールと加圧ロールとの間隔を変更することで、各種サイズのリング状品に対応させることができます。」と主張しているが、以下に示すとおり、発明の詳細な説明の記載によれば、本願発明において各種サイズのリング状品に対応させることができるのは、主に受けロールと加圧ロールとの間隔を変更するからであり、一対の受けロールの互いの間隔を変更することによって奏される効果は補助的なものにすぎないといえる。
また、相違点2については技術的に重要でなく、単なる設計事項にすぎないというべきである。

3.刊行物1の記載事項
1-1
「焼入槽と、この焼入槽の上部に設置した本体部と、この本体部に対して焼入温度に加熱した環状体の供給および排出をする装填部と、該本体部に供給された環状体を回転加圧させながら前記焼入槽内の焼入剤に浸漬させる本体可動機構とからなり、前記本体部には環状体外面に外接して該環状体を回転させる2個の円筒外面を有する駆動ロールと、該環状体外面の中心向き半径方向に移動して該環状体外面に加圧可能な円筒外面を有する加圧ロールと、該環状体を載せて該加圧ロールと同一方向に移動可能な載置台とを備え、環状体の変形の防止および矯正を行いながら焼入することを特徴とする環状体の回転焼入装置。」(特許請求の範囲)
1-2
「ホルダ65の前進で載置台12上の環状体11は同時に左側板34の方向に移動して、環状体11の外面は駆動ロール6,7の各円筒外面に接触すると移動を停止するが載置台12はストッパ72に当接するまで・・・更に左側板34の方向に前進する。載置台12がストッパ72に当接した後更に・・・スライダ8が前進し、加圧ロール9の円筒外面が載置台12上の環状体11の外面に接触して、環状体11の外面は2個の駆動ロール6,7および加圧ロール9の各円筒外面に狭持されるようになり、加圧ロール9で加圧されながら同時に駆動ロール6,7によって載置台12上で環状体11の下端面が滑りながら環状体11は回転される。・・・次に、加圧ピストン38が逆に作動して、スライダ8が後退を開始する。スライダ8が後退するとき、はじめに加圧ロール9が環状体11の外面より離脱し」(第7欄第41?第8欄第29行)
1-3
「平歯車49が各駆動ロール6,7に固設の平歯車45,46とそれぞれ噛合しており、歯車軸47・・・にはかさ歯車50が固定されている。・・・駆動軸54の両端部には・・・かさ歯車50に噛合するかさ歯車55・・・が・・・取り付けられている。・・駆動軸54はチェーン63およびチェーン64を介して電動機13によって駆動される。」(第4欄第17?37行、第3、4図)

4.刊行物1に記載された発明
(1)刊行物1には、「環状体外面に外接して該環状体を回転させる2個の円筒外面を有する駆動ロールと、該環状体外面の中心向き半径方向に移動して該環状体外面に加圧可能な円筒外面を有する加圧ロールと、該環状体を載せて該加圧ロールと同一方向に移動可能な載置台とを備え、環状体の変形の防止および矯正を行いながら焼入する環状体の回転焼入装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(1-1)。

5.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「環状体」、「環状体外面に外接して該環状体を回転させる2個の円筒外面を有する駆動ロール」、「該環状体外面の中心向き半径方向に移動して該環状体外面に加圧可能な円筒外面を有する加圧ロール」、「載置台」、「環状体の変形の防止および矯正を行いながら焼入する環状体の回転焼入装置」は、それぞれ本願発明1の「リング状品」、「リング状品の外周面にそれぞれ接触させる一対の受けロール」、「一対の受けロールに前記リング状品を介して対向して設けられた1個の加圧ロール」、「配置台」、「加熱されたリング状品を冷却しながら変形を矯正するリング状品の変形矯正装置」に相当する。
そして、引用発明の載置台が加熱状態の環状体を載せること、引用発明の駆動ロールと加圧ロールが環状体を介して対向して設けられていることは明らかである(1-2)。
そうすると、本願発明1と引用発明は、加熱されたリング状品を冷却しながら変形を矯正するリング状品の変形矯正装置であって、加熱状態のリング状品を載せる配置台と、この配置台上のリング状品の外周面にそれぞれ接触させる一対の受けロールと、前記一対の受けロールに前記リング状品を介して対向して設けられた1個の加圧ロールを備えるリング状品の変形矯正装置の点で一致している。
他方、本願発明1と引用発明は、(1)本願発明1に係る一対の受けロールが転動自在に接触させた状態で互いの間隔を変更可能であり、本願発明1に係る加圧ロールが回転駆動されるのに対して、引用発明に係る2個の円筒外面を有するロールが環状体外面に外接するのみならず、それ自体駆動し、引用発明に係る加圧ロールがそれ自体回転駆動しない点(相違点1)、(2)本願発明1は、加圧ロールをリング状品の外周面に押付けられた前進位置と同外周面から離れた後退位置とに進退させる加圧ロール進退機構と、この加圧ロール進退機構により前記リング状品に押付けられた状態の加圧ロールを回転駆動させる回転モータを含む加圧ロール回転駆動機構とを備えているのに対して、引用発明にこれらの機構が含まれるか明らかでない点(相違点2)で相違する。

6.判断
上記相違点について検討する。
(1)上記相違点1について
確かに、引用発明において、環状体外面に外接する2個の円筒外面を有するロールを、それ自体駆動させず、転動自在に接触させるにとどめ、加圧ロールの方を回転駆動させること(以下、「当該構成」という。)のみであれば、当該構成を採用することが設計事項にとどまると評価する余地がないわけではない。
しかし、当該構成ですら、引用発明の技術分野において周知・公知であるといえない上、本願発明1では、「リング状品のサイズに合わせて一対の受けロールの間隔を変更し」(【0026】)、「コストおよび手間をかけずに行え、かつ種々のサイズのリング状品に対して行える」ために(【0006】)、「一対の受けロールが転動自在に接触させた状態で互いの間隔を変更可能」にするところ、引用発明には、2個の円筒外面を有するロールが環状体外面に外接した状態で互いの間隔を変更可能であるとの構成を採用する動機付けが記載も示唆もされていない。
のみならず、引用発明では、駆動ロールおよび加圧ロールの各円筒外面と載置台が接触しないように、左側板には載置台の位置決めを行うためのストッパが取付けられており(1-2)、当該ストッパが障害となるから、2個の円筒外面を有するロールが環状体外面に外接した状態で互いの間隔を変更可能であるとはいえず、引用発明において当該構成を採用する場合、阻害要因があると解するのが相当である。
そうすると、引用発明に接した当業者が上記相違点1を解消することが容易であるとまではいえない。

(2)上記相違点2について
引用発明は、載置台12がストッパ72に当接した後、更にスライダ8が前進し、加圧ロール9の円筒外面が載置台12上の環状体11の外面に接触して、環状体11の外面は2個の駆動ロール6、7および加圧ロール9の各円筒外面に狭持されるようになり、また、加圧ピストン38が逆に作動して、スライダ8が後退を開始し、スライダ8が後退するとき、はじめに加圧ロール9が環状体11の外面より離脱するのだから(1-2)、引用発明も、加圧ロールをリング状品の外周面に押付けられた前進位置と同外周面から離れた後退位置とに進退させる加圧ロール進退機構を備えていると解するのが相当である。
また、引用発明に係る駆動ロール6,7は、平歯車45,46、平歯車49、歯車軸47、かさ歯車50、かさ歯車55を介して、駆動軸54に接続されており、当該駆動軸54は電動機13によって駆動されるから(1-3)、結局、駆動ロール6,7は、回転モータといえる電動機13によって回転駆動されると解するのが相当である。
そうすると、確かに、引用発明において、加圧ロールを回転駆動させる回転モータを含む加圧ロール回転駆動機構を備えることだけであれば、当業者が容易に推考できたともいえるが、これを加圧ロールの方を回転駆動させることと組み合わせることまでは、そのようにいうことはできない。
よって、引用発明に接した当業者が上記相違点2を解消することが容易であるとまではいえない。

(3)そして、本願発明1は、2個の円筒外面を有するロールが環状体外面に外接した状態で互いの間隔を変更可能であるとの構成を採用することにより、焼入れ処理によって生じる熱変形を焼入れ処理中に矯正できる上、当該矯正を「コストおよび手間をかけずに行え、かつ種々のサイズのリング状品に対して行える」(【0006】)という顕著な効果を奏する。

(4)小括
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

7.本願発明2?7と引用発明の対比・判断
本願発明2?7は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様な理由から、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

8.むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、本願発明1?7は、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-24 
出願番号 特願2007-253289(P2007-253289)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C21D)
P 1 8・ 572- WY (C21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤代 佳相澤 啓祐  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大橋 賢一
小川 進
発明の名称 リング状品の変形矯正装置  
代理人 杉本 修司  
代理人 野田 雅士  

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