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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1285037
審判番号 不服2012-22351  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-12 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 特願2010-525763「HARQを用いたデータ伝送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 9日国際公開、WO2009/045011、平成22年12月16日国内公表、特表2010-539845〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年9月19日(パリ条約に基づく優先権主張 2007年10月4日 韓国、2008年2月5日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成24年3月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年6月8日に手続補正がなされ、平成24年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年11月12日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年6月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
端末(UE)によって実行されるハイブリッド再送要求(HARQ)を用いたデータ伝送方法において、
アップリンクデータを伝送する段階と、
前記アップリンクデータに対応する、ACK信号またはNACK信号であるHARQフィードバックを受信する段階と、
前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない場合、前記ACK信号を受信した後、アップリンクグラントが受信される時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管し、前記アップリンクグラントを受信した後、前記アップリンクデータを再伝送する段階と、
を含むことを特徴とするデータ伝送方法。」


第3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(LG Electronics,Modifications on UL synchronous HARQ procedure,TSG RAN WG1 #49bis,3GPP,2007年 6月25日,R1-072883,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_49b/Docs/R1-072883.zip)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第2頁下から2行目-第3頁第15行
「Also, further modification on UE behaviour may be considered together with the proposed operation in order to effectively deal with ACK/NACK feedback error case. In general, UEs are supposed to discard the on-going payload from retransmission buffer after receiving ACK signal from eNode B in case of pure synchronous/non-adaptive HARQ operation. But, one cannot fully avoid the situation where certain UE wrongly detects NACK transmission from eNode B as ACK. In this case, one cannot help resorting to RLC retransmission to retrieve the payload. Therefore, NACK to ACK error probability should be kept very low in order not to trigger frequent RLC retransmission, which implies higher power consumption for NACK transmission. However, NACK to ACK error probability requirement can be made looser if current UE behaviour in case of ACK signal reception is modified together with the HARQ operation proposed in this contribution. Here, instead of discarding the on-going payload in retransmission buffer, UE is required to keep the on-going payload of current HARQ process in the retransmission buffer until it receives the grant signal targeted to it. If UL grant signal is transmitted with new transmission indicator, it can be considered as proof that the previously transmitted ACK signal was a ‘real ’ACK signal and correspondingly the UE can be discard the payload confidently. On the other hand, if grant signal is transmitted with retransmission indicator, UE can presume that NACK signal was wrongly detected as ACK signal previously and correspondingly will retransmit the previous payload it has been keeping in the retransmission buffer on the frequency resource assigned in UL grant. 」
(当審訳:ACK/NACKフィードバック・エラーの場合を効果的に取り扱うために、提案されたオペレーションと共に、UEの動作に関する更なる修正を考慮することができる。純粋な同期/非適応的HARQオペレーションの場合、一般的に、端末は、基地局からACK信号を受信した後は、進行中のペイロードを再送バッファから廃棄することを期待されている。しかし、ある端末が基地局から伝送されたNACKを誤ってACKとして検出するという状況を、完全に避けることは不可能である。この場合、ペイロードを救済するためには、RLC再送に頼らざるを得ない。それゆえ、NACK送信のための高い電力消費量を意味する、頻繁なRLC再送を引き起こさないために、NACKからACKへ変化するエラーの確率をできるだけ低く保つべきである。しかし、ACK信号を受信した時のUEの動作が、この寄稿で提案されたHARQオペレーションと共に修正されるならば、NACKがACKへ変化するエラーの確率に対する要求は緩くできる。ここで、進行中のペイロードを再送バッファから廃棄する代わりに、端末は、該端末が自身宛のグラント信号を受信するまで、今のHARQプロセスで進行中のペイロードを再送バッファに保管しておくことを要求される。もしグラント信号が新規送信のインジケータを含んでいれば、そのグラント信号は、先に受信したACKが「本当の」ACKであったことの証拠とみなすことができる。対応して、端末は確信してペイロードを廃棄できる。他方、グラント信号が再送信のインジケータを含んでいれば、端末は、先にNACK信号が誤ってACK信号として検出されたと推定できる。対応して、端末は、該端末が再送バッファに保管してきた先のペイロードを、ULグラントによって割り当てられた周波数リソースを使って、再送する。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「HARQオペレーションにおいて、ある端末が基地局から伝送されたNACKを誤ってACKとして検出するという状況に対処するために、
進行中のペイロードを再送バッファから廃棄する代わりに、端末は、該端末が自身宛のグラント信号を受信するまで、今のHARQプロセスで進行中のペイロードを再送バッファに保管しておくことを要求され、
グラント信号が再送信のインジケータを含んでいれば、端末は、先にNACK信号が誤ってACK信号として検出されたと推定でき、対応して、端末は、該端末が再送バッファに保管してきた先のペイロードを、ULグラントによって割り当てられた周波数リソースを使って、再送する方法。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明の方法は、HARQオペレーションにおいて、ある端末が基地局から伝送されたNACKを誤ってACKとして検出するという状況に対処するための方法であるから、「端末(UE)によって実行されるハイブリッド再送要求(HARQ)を用いたデータ伝送方法」である点で、本願発明と一致している。

引用発明では、基地局からNACK又はACKが伝送されるから、「アップリンクデータを伝送する段階」を含むことが明らかである。

引用発明では、基地局からNACK又はACKが伝送されるから、本願発明と引用発明とは「前記アップリンクデータに対応する、ACK信号またはNACK信号であるHARQフィードバックを受信する段階」を含む点で一致している。

次に、本願発明の「前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない場合、」「前記アップリンクデータをHARQバッファに保管し、」の意味について検討しておく。
アップリンクデータを送信後に、PDCCHを検出しない時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管せずにいると、端末から前記アップリンクデータが失われる。したがって、アップリンクデータを送信後、PDCCHを検出しない時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管せずにいて、前記アップリンクデータをHARQバッファに保管することを、PDCCHを検出しない時から開始することはできない。
発明の詳細な説明においても、段落番号【0092】に「図12を参照すると、端末がMAC PDU0を伝送する(S1000)。このとき、RVは0である。基地局はNACK信号を伝送するが、NACK-to-ACKエラーが発生して前記端末はACK信号を受信する(S1010)。このとき、端末は、MAC PDU0をバッファで保管し、バッファを空にしない。」(下線は、当審が付加した。)と記載されており、本願発明の「(PDCCH)を検出しない場合」に相当するステップS1030以前に、アップリンクデータのバッファへの保管が実行されている。
本願発明のように「アップリンクグラントが受信される時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管」するためには、「アップリンクデータを伝送する段階」からアップリンクデータをHARQバッファに保管しておくことが必要であることは明らかである。
したがって、本願発明において、アップリンクデータのHARQバッファへの保管は、「アップリンクデータを伝送する段階」から開始されており、本願発明の「前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない場合、」「前記アップリンクデータをHARQバッファに保管し、」が、「前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しなくても、前記アップリンクデータをHARQバッファに保管することを継続する。」という意味であることは明らかである。

引用発明の再送バッファが、本願発明の「HARQバッファ」に相当する。
引用発明の進行中のペイロードが、本願発明の「アップリンクデータ」に相当する。

引用発明では、ある端末が基地局から伝送されたNACKを誤ってACKとして検出し、端末は、該端末が自身宛のグラント信号を受信するまで、今のHARQプロセスで進行中のペイロードを再送バッファに保管しておき、グラント信号が再送信のインジケータを含んでいれば、端末は、再送バッファに保管してきた先のペイロードを再送しているから、本願発明と引用発明とは、「前記ACK信号を受信した後、アップリンクグラントが受信される時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管し、前記アップリンクグラントを受信した後、前記アップリンクデータを再伝送する段階」を含む点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「端末(UE)によって実行されるハイブリッド再送要求(HARQ)を用いたデータ伝送方法において、
アップリンクデータを伝送する段階と、
前記アップリンクデータに対応する、ACK信号またはNACK信号であるHARQフィードバックを受信する段階と、
前記ACK信号を受信した後、アップリンクグラントが受信される時まで前記アップリンクデータをHARQバッファに保管し、前記アップリンクグラントを受信した後、前記アップリンクデータを再伝送する段階と、
を含むことを特徴とするデータ伝送方法。」である点。

[相違点]
本願発明は、前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない場合にも、前記アップリンクデータをHARQバッファに保管することを継続するのに対して、引用発明には、かかる場合についての記載がない点。


第5.相違点についての検討

引用発明では、端末は、該端末が自身宛のグラント信号を受信するまで、今のHARQプロセスで進行中のペイロードを再送バッファに保管しておくことを要求されている。また、刊行物1の摘記事項(a)では、もしグラント信号が新規送信のインジケータを含んでいれば、端末は確信してペイロードを廃棄できている。
したがって、引用発明において、前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない場合にも、前記アップリンクデータをHARQバッファに保管することを継続することは、当業者が容易に想到できたことである。

なお、審判請求書において、請求人は、「換言すれば、引用文献1の引用箇所には、アップリンクデータの保管ステップがいつ終了または停止するかについて開示しているのみであって、アップリンクデータの保管ステップがいつ開始またはスタートするかについては開示も示唆もされていない。」及び「一方、請求項1に係る発明は、最初に「前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない」か否かを調べているため、アップリンクデータのバッファへの保管を無条件に開始することを回避している。」と説明している。
これらの記載から、審判請求人は、「本願請求項1に係る発明は、最初に「前記UEが前記UEのセル無線ネットワークテンポラリ識別子(C-RNTI)に関連する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を検出しない」か否かを調べ、PDCCHを検出しない場合に、アップリンクデータの保管ステップを開始し、PDCCHを検出した場合には、アップリンクデータの保管ステップを開始しない。」と理解しているものと解される。
しかし、上記「第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点」において検討したように、本願発明におけるアップリンクデータの保管ステップは、アップリンクデータを伝送した時に始まるのであって、審判請求人の主張は、本願発明を正解しないものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-17 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-09 
出願番号 特願2010-525763(P2010-525763)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重清水 祐樹  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 水野 恵雄
吉田 隆之
発明の名称 HARQを用いたデータ伝送方法  
代理人 中村 健一  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  

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