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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1285038 |
審判番号 | 不服2012-23614 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-29 |
確定日 | 2014-02-19 |
事件の表示 | 特願2009-515335「排気ガス浄化装置を再生する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月21日国際公開、WO2007/145553、平成21年11月19日国内公表、特表2009-540213〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2006年6月14日を国際出願日とする出願であって、平成23年7月14日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年1月19日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年7月23日付けで拒絶査定がなされ、同年11月29日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出され、平成25年2月8日付けで当審による審尋がなされ、同年8月9日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成24年11月29日付け手続補正についての補正の却下の決定 <補正の却下の決定の結論> 平成24年11月29日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 <理由> 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年1月19日付けで提出された手続補正書で補正された)下記(1)を、下記(2)へ補正することを含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 内燃機関システム(1)内に配置された排気ガス浄化装置(13)を再生する方法であって、 再生処理中に排気ガス質量流量が所定の流量値を超えるとともに、排気ガス温度が所定の温度値を超えるように、所定の最低エンジン速度及び所定の最低エンジントルクを組み合わせて設定するステップを含むことを特徴とする、方法。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 内燃機関システム(1)内に配置された排気ガス浄化装置(13)を再生する方法であって、 エンジン負荷を増加させるために、前記内燃機関システム(5)の一部を構成する始動要素(5)が作動することを備えており、 再生処理中に排気ガス質量流量が所定の流量値を超えるとともに、排気ガス温度が所定の温度値を超えるように、所定の最低エンジン速度及び所定の最低エンジントルクを組み合わせて設定するステップを含むことを特徴とする、方法。」 (なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。) 2 本件補正の適否 2-1 本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、「エンジン負荷を増加させるために、前記内燃機関システム(5)の一部を構成する始動要素(5)が作動することを備えており、」という事項を加えることにより、本件補正前の「再生処理中に排気ガス質量流量が所定の流量値を超えるとともに、排気ガス温度が所定の温度値を超えるように、所定の最低エンジン速度及び所定の最低エンジントルクを組み合わせて設定するステップ」のうち、設定した「所定の最低エンジントルク」に到達するための具体的な手段を限定したものである。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2 独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。 (1)引用文献 (1-1)引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-297722号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある(以下、順に「記載1a」ないし「記載1d」という。)。(なお、下線は理解の一助のために当審で付した。) 1a 「1.発明の名称 ディ-ゼル排気浄化装置の再生方法 2.特許請求の範囲 1.アイドリング状態にあるエンジンを高速駆動するとともに、このエンジン自身の動力取出し機構によりエンジンの負荷を高めて排気ガスの温度を上昇させ、この排気ガスの排出経路内において触媒フィルターに付着した排気ガスの有害成分の粒子を、前記高温の排気ガスにて燃焼して除去するディーゼル排気浄化装置の再生方法。 3.発明の詳細な説明 発明の目的 (産業上の利用分野) この発明はディーゼル排気浄化装置の再生方法に関する。 ・・・(中略)・・・ (発明が解決しようとする問題点) ところが、上記したフィルター再生システムでは燃焼装置として燃料ノズル、空気ノズル、バーナー及びこれらの周辺部品を必要とし、構成が複雑になるとともに、コスト高となる。 この発明の目的は、構成が簡単にしてコストが低いディーゼル排気浄化装置の再生方法を提供することにある。 発明の構成 (問題点を解決するための手段) この発明は上記した問題点を解決するために、アイドリング状態にあるエンジンを高速駆動するとともに、このエンジン自身の動力取出し機構によりエンジンの負荷を高めて排気ガスの温度を上昇させ、この排気ガスの排出経路内において触媒フィルターに付着した排気ガスの有害成分の粒子を、前記高温の排気ガスにて燃焼させて除去することをその要旨とする。 (作用) この発明は上記した手段を採用したことにより、エンジン自身の機能により排気ガスの温度が上昇され、この高温の排気ガスによりフィルターに捕集された有害成分の粒子が燃焼される。」(明細書第1ページ左下欄第2行ないし第2ページ左上欄第15行) 1b 「(実施例) 以下、この発明をディーゼルエンジン式フォークリフトに具体化した一実施例を図面に従って詳述する。 ディーゼルエンジン1には冷却用のファン2が設けられ、さらにはエキゾーストマニホールド3から延びる排気管4がエンジン外に導出され図示しない消音装置に連通されている。前記排気管4は延出経路中においてその一部が大径状に形成されてジャケット5が構成され、その内部には排気ガス浄化用のフィルター6が固定配置されている。 このフィルター6には白金-パラジア系の触媒が担持され、排気ガスの浄化及び温度降下を行なう。 即ち、フィルター6は触媒にて、車輌走行時にエンジンから排出される排気ガス中のパティキュレートの粒子を捕捉して、有害成分を大幅に除去したのち排気ガスの温度を下げ、下流側排気管4から大気中に噴射する。 また、ジャケット5のフィルター6より上流側には背圧センサ7が設けられ、フィルター6が許容量以上のパティキュレート粒子を捕集し、フィルター6の通気性が低下したとき、ジャケット5上流側に排気ガスが充満して気圧が上昇し、この気圧が予め設定した許容値を越えると背圧センサ7がこれを検知する。また、下流側には温度センサ8が設けられ、フィルター6を通過した排気ガスの温度を検出するようになっている。 前記エンジン1には動力取出し機構としての油圧ポンプ12が設けられ、そのポンプ軸がエンジン1の出力軸に連結されている。この油圧ポンプ12はオイルタンク13に対し給油管14、送油管15により連通され、オイルタンク13に貯留された作動油Oをティルトシリンダ等の作動機構に供給するものである。前記送油管15は上流部及び下流部に分割され、両者間には電磁式流量制御弁16が介在されている。この流量制御弁16は第2アクチユエータ17にて励磁作動されると、作動油Oが前記作動機構に流れることを防止して、油圧ポンプ12とオイルタンク13間を循環させるとともに、送油管15内を流れる作動油0の流量を制御し、油圧ポンプ12にかかる負荷を増減させるようになっている。なお、図面中13aは油圧ポンプ12内の作動油Oの温度を検出するための油温センサである。 また、エンジン1がアイドリング状態にあるとき、第1アクチユエータ9にて励磁駆動されるスロットルレバー10により、燃料噴射ポンプ11からディーゼル燃料がエンジン1に噴射されて、これを高速回転数にて駆動する。同時に、前記した流量制御弁15を作動させて作動油Oの流量制限を行ない、油圧ポンプ12の吐出圧を上昇させ、同油圧ポンプ12にかかる負荷を増すことにより、エンジン1の出力を上昇させる。すると、エンジン1内は高温となり、排気ガスの温度も上昇する。そして、この高温排気ガスが排気管4内を通過してジャケット5内に達し、フィルター6に付着したパティキュレートの粒子を燃焼除去してフィルター6を浄化するようになっている。なお、触媒は再生温度を下げるためのものであり、再生装置のヒートトラブルを防止するとともに、エンジン負荷が比較的低い領域で再生できる効果を有する。」(明細書第2ページ左上欄第16行ないし同ページ右下欄第16行) 1c 「中央処理装置(以下CPUという)18には読出し専用メモリ (ROM)19と読出し及び書込み可能なメモリ (RAM)20とが接続され、さらにCPU18の入力側にはイグニッションキー22、再生動作スタートキー23、背圧センサ7、温度センサ8、油温センサ13a、エンジン1の稼動時間を計測するアワーメータ21がそれぞれ接続されている。また、前記CPU18の出力側には第1アクチユエータ9、第2アクチユエータ17、表示ランプ24、警報ブザー25がそれぞれ接続され、さらにアクチュエータ9,17にはスロットルレバー10及び流量制御弁16がそれぞれ機械的に接続されている。 前記ROM19内には、ジャケット5内下流側の排気ガスの許容最高温度、フィルター6の浄化時においてアイドリング状態にあるエンジン1の再生用高速回転数及びエンジン1の高速回転時間、作動油Oの最高許容温度、排気ガス及び作動油Oの温度に対応する流量制御弁16の流量制御量に関するデータが記憶されている。 前記したようにフィルター6に付着した排気ガスのパティキュレート粒子が許容量を越え、ジャケット5上流側に充満した排気ガスの圧力が所定の許容値を越えると、背圧センサ7がこれを検知し、CPU18に信号を出力する。CPU18はこの信号に基づく点灯信号を表示ランプ24に出力してこれを点灯させ、運転者に対し再生スタートキー23の操作によりフィルター6を再生することを促す。 エンジン1をアイドリング状態に保持し、再生スタートキー23が操作されると、CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するように第1アクチユエータ9を介してスロットルレバー10を作動させ、エンジン1を高速にて回転させる。同時に、CPU18は第2アクチユエータ17を作動励磁して流量制御弁16を絞り、油圧ポンプ12を介してエンジン1の負荷を増大させてエンジン1の出力を高め、排気ガスの温度を上昇させる。 前記排気ガスが高温に達すると、この高温排気ガスが上流側排気管4からジャケット5内に流入し、フィルター6に付着したパティキュレート粒子を燃焼除去する。前記エンジン1の高速回転開始と同時にエンジンアワーメータ21が時間計測を始め、所定時間が経過すると、CPU18は第1及び第2アクチュエータ9,17を消磁してエンジン1の高速回転を停止させるとともに、流量制御弁16を開放する。このあと、エンジン1のアイドリング動作が停止され、フィルター再生作業が終了する。 なお、排気ガスの温度は温度センサ8にて常に検知され、この温度が所定の許容値に達するまでは、CPU18は第2アクチユエータ17を作動させて流量制御弁16に絞りを加え、エンジン1の出力を増加させることにより排気ガスの温度の上昇を促進させる。そして、排気ガスの温度が前記した許容値に達したとき、流量制御弁16の絞りを一定に保持し、エンジン1の出力の増加による排気ガス温度の上昇を防止し、フィルター6の燃焼及びこれに担持される触媒の劣化を未然に阻止する。 また、油温センサ13aも同様に、流量制御弁16の絞りによる流体摩擦に起因する作動油Oの温度上昇を検知して、この油温の変化を逐一CPU18に出力し、予め設定された最高許容温度値を基準に流量制御弁16の絞り量の増減によるエンジン1の出力の調整が行われる。 なお、流量調整系統の不良作動等により、エンジン1の出力が必要以上に増加すると、排気ガス及び作動油Oの温度が所定値以上に上昇する。このとき、温度センサ8及び油温センサ13aがこの温度を検知して、CPU18に信号を出力し、CPU18はこれらの信号に基づいて警報ブザー25に警告音を発声させ、異常事態の発生を知らせる。従って、フィルター再生作業は安全な状態で行われる。」(明細書第2ページ右下欄第19行ないし第3ページ右下欄第15行) 1d 「4.図面の簡単な説明 第1図は本発明の一実施例を示す略体説明図、第2図は本発明の電気的構成を示すブロック図である。」明細書第4ページ右上欄第4行ないし7行) (1-2)引用文献の記載事項 引用文献の記載1aないし記載1c及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に「記載事項1A」ないし「記載事項1C」という。)。 1A 引用文献の記載1aの「(問題点を解決するための手段)この発明は上記した問題点を解決するために、アイドリング状態にあるエンジンを高速駆動するとともに、このエンジン自身の動力取出し機構によりエンジンの負荷を高めて排気ガスの温度を上昇させ、この排気ガスの排出経路内において触媒フィルターに付着した排気ガスの有害成分の粒子を、前記高温の排気ガスにて燃焼させて除去することをその要旨とする。」という記載、及び記載1dの「第1図は本発明の一実施例を示す路体説明図」という記載並びに第1図によると、引用文献には、ディーゼルエンジン1の排出経路内に配置されたディーゼル排気浄化装置の再生方法であって、アイドリング状態にあるエンジンを高速駆動するとともに、このエンジン自身の動力取出し機構によりエンジンの負荷を高めて排気ガスの温度を上昇させ、この排気ガスの排出経路内において触媒フィルターに付着した排気ガスの有害成分の粒子を、前記高温の排気ガスにて燃焼させて除去するディーゼル排気浄化装置の再生方法が記載されている。 1B 引用文献の記載1bの「前記エンジン1には動力取出し機構としての油圧ポンプ12が設けられ、そのポンプ軸がエンジン1の出力軸に連結されている。この油圧ポンプ12はオイルタンク13に対し給油管14、送油管15により連通され、オイルタンク13に貯留された作動油Oをティルトシリンダ等の作動機構に供給するものである。前記送油管15は上流部及び下流部に分割され、両者間には電磁式流量制御弁16が介在されている。この流量制御弁16は第2アクチユエータ17にて励磁作動されると、作動油Oが前記作動機構に流れることを防止して、油圧ポンプ12とオイルタンク13間を循環させるとともに、送油管15内を流れる作動油0の流量を制御し、油圧ポンプ12にかかる負荷を増減させるようになっている。なお、図面中13aは油圧ポンプ12内の作動油Oの温度を検出するための油温センサである。」という記載、及び記載1cの「エンジン1をアイドリング状態に保持し、再生スタートキー23が操作されると、CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するように第1アクチユエータ9を介してスロットルレバー10を作動させ、エンジン1を高速にて回転させる。同時に、CPU18は第2アクチユエータ17を作動励磁して流量制御弁16を絞り、油圧ポンプ12を介してエンジン1の負荷を増大させてエンジン1の出力を高め、排気ガスの温度を上昇させる。」という記載並びに第1図によると、引用文献には、エンジン1の負荷を増大させるために、ポンプ軸がエンジン1の出力軸に連結された動力取出し機構としての油圧ポンプ1が設けられ、流量制御弁16を励磁作動させて絞ること油圧ポンプ12を介してエンジン1の負荷を増大させてエンジン1の出力を高めることが記載されている。 1C 引用文献の記載1cの「前記ROM19内には、ジャケット5内下流側の排気ガスの許容最高温度、フィルター6の浄化時においてアイドリング状態にあるエンジン1の再生用高速回転数及びエンジン1の高速回転時間、作動油Oの最高許容温度、排気ガス及び作動油Oの温度に対応する流量制御弁16の流量制御量に関するデータが記憶されている。」という記載、記載1cの「エンジン1をアイドリング状態に保持し、再生スタートキー23が操作されると、CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するように第1アクチユエータ9を介してスロットルレバー10を作動させ、エンジン1を高速にて回転させる。同時に、CPU18は第2アクチユエータ17を作動励磁して流量制御弁16を絞り、油圧ポンプ12を介してエンジン1の負荷を増大させてエンジン1の出力を高め、排気ガスの温度を上昇させる。」という記載、及び記載1cの「なお、排気ガスの温度は温度センサ8にて常に検知され、この温度が所定の許容値に達するまでは、CPU18は第2アクチユエータ17を作動させて流量制御弁16に絞りを加え、エンジン1の出力を増加させることにより排気ガスの温度の上昇を促進させる。そして、排気ガスの温度が前記した許容値に達したとき、流量制御弁16の絞りを一定に保持し、エンジン1の出力の増加による排気ガス温度の上昇を防止し、フィルター6の燃焼及びこれに担持される触媒の劣化を未然に阻止する。」という記載並びに第1図及び第2図によると、引用文献には、再生スタートキー23が操作されると、CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するように第1アクチユエータ9を介してスロットルレバー10を作動させ、エンジン1を高速にて回転させ、同時に、CPU18は第2アクチユエータ17を作動励磁して流量制御弁16を絞り、油圧ポンプ12を介してエンジン1の負荷を増大させてエンジン1の出力を高め、排気ガスの温度を上昇させ、この温度が所定の許容値に達するまでは、CPU18は流量制御弁16に絞りを加え、エンジン1の出力を増加させることにより排気ガスの温度の上昇を促進させ、排気ガスの温度が前記した許容値に達したとき、流量制御弁16の絞りを一定に保持し、エンジン1の出力の増加による排気ガス温度の上昇を防止し、フィルター6の燃焼及びこれに担持される触媒の劣化を未然に阻止することが記載されている。 (1-3)引用文献に記載された発明 引用文献の記載1aないし1d、記載事項1Aないし1C及び図面の記載を整理すると、引用文献には、次の発明が記載されていると認める。 「ディーゼルエンジン1の排出経路内に配置されたディーゼル排気浄化装置の再生方法であって、アイドリング状態にあるエンジンを高速駆動するとともに、このエンジン自身の動力取出し機構によりエンジンの負荷を高めて排気ガスの温度を上昇させ、この排気ガスの排出経路内において触媒フィルターに付着した排気ガスの有害成分の粒子を、前記高温の排気ガスにて燃焼させて除去するディーゼル排気浄化装置の再生方法であって、 ポンプ軸がエンジン1の出力軸に連結された動力取出し機構としての油圧ポンプ1及び油圧ポンプに流れる作動油を制御する流量制御弁16が設けられ、 再生スタートキー23が操作されると、CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するようにエンジン1を高速にて回転させ、同時に、排気ガスの温度が所定の許容値に達するまでは、流量制御弁16に絞りを加え、エンジン1の負荷を増加させて排気ガスの温度を上昇させ、排気ガスの温度が前記許容値に達したとき、流量制御弁16の絞りを一定に保持し、エンジン1の出力の増加による排気ガス温度の上昇を防止し、フィルター6の燃焼及びこれに担持される触媒の劣化を未然に阻止する方法。」(以下、「引用発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における「ディーゼル排気浄化装置の再生方法」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「排気ガス浄化装置を再生する方法」に相当し、同様に、「再生スタートキー23が操作された後の運転状態」は「再生処理中」に相当する。 また、引用発明における「流量制御弁16に絞りを加え、エンジン1の負荷を増加させて排気ガスの温度を上昇させ、」は、本願補正発明における「エンジン負荷を増加させるために、始動要素(5)が作動することを備えており、」と、「エンジン負荷を増加させるために、機械要素が作動することを備えており、」という限りにおいて相当し、以下同様に「排気ガスの温度が所定の許容値に達するまで」は、「排気ガス温度が所定の温度値を超えるように」と、「排気ガス温度が所定の温度値に達するように」という限りにおいて相当し、「CPU18はROM19に記憶された再生用高速回転数を読出し、この再生用高速回転数に適合するようにエンジン1を高速にて回転させ」は、「所定の最低エンジン速度を設定するステップ」と、「所定のエンジン速度を設定するステップ」という限りにおいて相当する。 したがって、両者は、 「排気ガス浄化装置を再生する方法であって、 エンジン負荷を増加させるために、機械要素が作動することを備えており、 再生処理中に排気ガス温度が所定の温度値に達するように、所定のエンジン速度を設定するステップを含む方法。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 <相違点> 本願補正発明においては、「内燃機関システム内に配置された排気ガス浄化装置」を有しているのに対し、引用発明においては、「ディーゼルエンジン1の排出経路内に配置されたディーゼル排気浄化装置」である点(以下、「相違点1」という。)。 本願補正発明においては、「内燃機関システムの一部を構成する始動要素」を有しているのに対し、引用発明においては、そのようなものを有しているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。 本願補正発明においては、「再生処理中に排気ガス質量流量が所定の流量値を超えるとともに、排気ガス温度が所定の温度値を超えるように、所定の最低エンジン速度及び所定の最低エンジントルクを組み合わせて設定するステップ」を含むものであるのに対して、引用発明においては、「再生処理中に排気ガス温度が所定の温度値に達するように」制御し、「所定のエンジン速度を設定するステップ」含んでいるが、それ以外は不明である点(以下、「相違点3」という。)。 (3)相違点についての判断 そこで、上記各相違点1ないし3について、以下に検討する。 相違点1について 本願補正発明において「内燃機関システム」は、本願明細書の段落【0018】の「図1は、本発明の方法が適用できる、車両(図示せず)に搭載された内燃機関システム1の概略例を示す。」という記載等からみて、内燃機関のほか、排気ガス浄化装置及び該装置を再生するための要素を含むものと認められる。 一方、引用文献の記載1dの「第1図は本発明の一実施例を示す略体説明図」という記載等からみて、引用文献の第1図においてもエンジンのほか、排気ガス浄化装置及び該装置を再生するための要素を含むものが記載されているので、実質的な相違点ではない。 相違点2について 本願補正発明の「始動要素」の「始動」は、広辞苑で「動かし始めること。動き始めること。運転を開始すること。起動。」と定義されている。 そして、引用発明の「流量制御弁16」は、エンジンの負荷を増大させるために作動させるものであり、エンジンの負荷を増大するために動き始める機械要素ということもできる。上記「相違点1について」で述べたように、「流量制御弁16」は引用文献の第1図に記載されていることから、内燃機関システムの一部であるので、引用発明は、実質的に「エンジン負荷を増加させるために、内燃機関システムの一部を構成する始動要素」を有していると認められる。 仮に、本願補正発明において「始動要素」は、本願明細書に示された実施例において「トルクコンバータ」に相当するとしても、トルクコンバータの負荷を利用して排気温度の上昇を図ることは周知技術(例えば、特開2005-146904号公報の段落【0040】、特開2005-155532号公報の段落【0021】等参照。以下、「周知技術1」という。)であるので、引用発明に上記周知技術1を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点3について 本願明細書の段落【0044】において、「例えば、排気ガス質量流量を明確に判断する必要はない。代わりに、排気ガス質量流量が、あるシステム内のあるエンジン速度にほぼ対応することを利用することができる。従って、排気ガス質量流量は、排気ガス質量流量の代理、すなわちエンジン速度を判断することによって、間接的に判断することができる。」と記載されているところ、引用発明においても、再生用高速回転数に適合するようにエンジン1を高速にて回転させることにより、実質的に排ガス質量流量も増加させているといえる。 また、本願明細書の段落【0022】において、「エンジントルク(負荷)」と記載され、段落【0036】において、「エンジン負荷(トルク)」と記載されているところ、実質的に引用発明においても、排気ガスの温度が所定の許容値に達するようにエンジン負荷(トルク)を増加しているといえ、許容値達した時が最低のエンジン負荷(トルク)を設定したといえる。 さらに、アイドル回転数を上昇させることにより、排ガス量を通常のアイドル回転の時の排ガス量よりも増加させて、排ガス流量の減少によるDPFの昇温を回避して、DPFの溶損や触媒の劣化を防止することができる排ガス浄化システム及びその再生制御方法は、周知技術(例えば、特開2003-161139号公報の段落【0058】等参照。以下、「周知技術2」という。)であるので、引用発明に上記周知技術2を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 その際に、排ガス質量流量及び排気ガスの温度を所定の値とするか、又は超えるようにするか、所定のエンジン速度を最低限のものにするか、又はそれより大きくするか、所定のエンジン速度と所定のエンジントルクを組み合わせて設定するか、又は別々に設定するかは、当業者が状況に応じて適宜選択し得る事項である。 そして、本願補正発明が、引用発明、周知技術1及び2からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。 2-3 むすび したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記<補正の却下の決定の結論>のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成24年1月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 <理由>1(1)」のとおりである。 2 引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由で引用した本願の国際出願日前に日本国内において、頒布された刊行物(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)と同様に「引用文献」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(1-1)」の通りの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(1)(1-2)」のとおりの事項が記載されていると認める。 そして、引用文献には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(1-3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(1-3)と同様に「引用発明」という。)が記載されていると認める。 3 対比・判断 上記「第2<理由>2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2<理由>2 2-2(2)及び(3)」のとおり、引用発明、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用発明、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-19 |
結審通知日 | 2013-09-24 |
審決日 | 2013-10-07 |
出願番号 | 特願2009-515335(P2009-515335) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今関 雅子 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 中村 達之 |
発明の名称 | 排気ガス浄化装置を再生する方法及び装置 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 小椋 正幸 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 高木 祐一 |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 重信 和男 |