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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1285105
審判番号 不服2013-7052  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-17 
確定日 2014-03-18 
事件の表示 特願2009- 22893「ハイブリッド車およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日出願公開、特開2010-179712、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月3日の出願であって、平成24年12月4日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月1日付けで拒絶査定がされ、同年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2 本願発明1ないし本願発明4
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成25年1月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関をモータリング可能なモータリング用電動機と、走行用の動力を出力可能な走行用電動機と、を備えるハイブリッド車であって、
前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時には、前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて前記未実施の故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段、
を備え、
前記制御手段は、前記所定アクセルオフ時に前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関をモータリングしたときに、前記モータリングを開始してから所定時間が経過する前に前記未実施の故障診断の実施が終了したときには前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了し、前記未実施の故障診断の実施が終了する前に前記モータリングを開始してから前記所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記センサは、前記内燃機関の排気系に取り付けられた空燃比センサおよび/または酸素センサであり、
前記装置は、前記内燃機関の排気管と吸気管とを連絡する連絡管に設けられた排気再循環バルブの開度を調整することにより前記排気管の排気の前記吸気管への還流量を調整して排気再循環を行なう排気再循環装置である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記モータリング用電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段、
を備えるハイブリッド車。
【請求項4】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関をモータリング可能なモータリング用電動機と、走行用の動力を出力可能な走行用電動機と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時には、前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて前記未実施の故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御し、
前記所定アクセルオフ時に前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関をモータリングしたときに、前記モータリングを開始してから所定時間が経過する前に前記未実施の故障診断の実施が終了したときには前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了し、前記未実施の故障診断の実施が終了する前に前記モータリングを開始してから前記所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する、
ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
1 平成24年12月4日付けで通知した拒絶理由の概要
平成24年12月4日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (刊行物等については刊行物等一覧参照)
・請求項 1-5
・刊行物等 1,2
・備考
刊行物1については、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の故障診断が実施されている点を参照のこと(例えば段落【0003】,【0004】,請求項1,図1-12等参照)。
刊行物2については、アクセルオフのときに、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされている例を参照のこと(例えば段落【0026】等参照)。
刊行物1,2に記載の事項を総合的に考慮すると、アクセルオフのときに、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の故障診断が実施される構成とすることに格別の困難性があるとは認められない。
よって、請求項1-5に係る発明は、刊行物1,2に記載の事項から当業者が容易になし得たものである。

刊 行 物 等 一 覧
1.特開2008-279823号公報
2.特開2008-149902号公報」

2 平成25年3月1日付けでした拒絶査定の概要
平成25年3月1日付けでした拒絶査定の概要は、次のとおりである。

「この出願については、平成24年12月 4日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

請求項1-4について:

出願人は、上記意見書において、上記拒絶理由通知書で通知した刊行物1,2には、「未実施の故障診断の実施が終了する前にモータリングを開始してから所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了する」ことが開示も示唆もされていないので、請求項1-4に係る発明は、刊行物1,2に記載の事項から容易に想到し得ない旨主張している。
しかしながら、刊行物1には、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の故障診断が実施されていることが開示若しくは示唆されている(例えば段落【0003】,【0004】,請求項1,図1-12等参照)。
刊行物2には、アクセルオフのときに、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされている例が開示若しくは示唆されている(例えば段落【0026】等参照)。
ハイブリッド車両の技術分野において、モータリング時間が過剰になることを防止することは、当業者が考慮してしかるべき事項である(必要ならば、新たに追加する周知例1の段落【0009】,【0014】、新たに追加する周知例2の段落【0060】,【0109】等参照)。
以上を総合的に考慮すると、アクセルオフのときに、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の故障診断が実施される構成とし、さらにモータリング時間が過剰になることを防止するため、「未実施の故障診断の実施が終了する前にモータリングを開始してから所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了する」ことに格別の困難性があるとは認められない。

更にいえば、本願の明細書の『【0005】ところで、内燃機関と電動機の一方または両方からの動力を用いて走行するハイブリッド車では、内燃機関への燃料噴射の停止を継続しながら電動機からの動力により走行する機会が少ないため、燃料カット中に酸素濃度センサの異常診断や排気再循環装置の故障診断を行なう機会も少なくなり、こうしたセンサや装置を診断する機会を十分に確保することができない。特に、停車中に搭載しているバッテリを外部電源からの電力を用いて充電し、できる限り電動走行するタイプのハイブリッド車では、センサや装置を診断する機会が更に少なくなってしまう。【0006】本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサや装置の故障診断の機会を多くする』という記載事項からみて、本願の課題は、「内燃機関の排気系に取り付けられたセンサや装置の故障診断の機会を多くする」ことである。
これに対して、今回の補正時に限定された、本願の「未実施の故障診断の実施が終了する前にモータリングを開始してから所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了する」という発明特定事項は、過剰なクランキングを防止するためのものである。
そうしてみると、今回の補正時に限定された、本願の「未実施の故障診断の実施が終了する前にモータリングを開始してから所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了する」という発明特定事項が解決しようとする課題は、本願の当初明細書に記載された課題(「内燃機関の排気系に取り付けられたセンサや装置の故障診断の機会を多くする」という課題)との関連性が低く、また当該課題解決との関連で技術的な関連性も低いといえる。つまり、上記発明特定事項が、本願の「内燃機関の排気系に取り付けられたセンサや装置の故障診断の機会を多くする」という課題解決にどのように貢献しているのかが不明である。しかも、上記の通り、ハイブリッド車両の技術分野において、モータリング時間が過剰になることを防止することは、当業者が考慮してしかるべき事項であるから、したがって、上記発明特定事項は当業者が過剰なモータリングを防止することを考慮しつつ適宜設計し得る事項であるともいえる。

以上を総合的に考慮すると、請求項1-4に係る発明は、上記の、刊行物1,2に記載の技術思想等から当業者が容易になし得たものであるといわざるを得ない。

以上。

周知例:
1.特開平10-169535号公報
2.特開平10-289021号公報」

第4 当審の判断
1 引用文献1及び2並びに周知例1及び2の記載等
(1)引用文献1の記載、記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載
特開2008-279823号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「車両およびその制御方法」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1d」という。)。

1a 「【0003】
ところで、機関および電動機の一方または両方からの動力を用いて走行する車両では、機関への燃料噴射の停止を継続しながら電動機からの動力により走行する機会が少ない。このため、燃料カット中に排気還流装置の故障診断を行なうものにおいて、故障診断を完了する前に機関が回転停止してしまい、排気還流装置の故障診断を行なう機会を十分に確保できないことがあった。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、内燃機関からの排気を吸気系に供給する排気供給装置の異常診断を行なう機会を確保することを主目的とする。」(段落【0003】及び【0004】)

1b 「【0015】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。」(段落【0015】)

1c 「【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,燃料カット継続要求フラグFなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、燃料カット継続要求フラグFは、図4に例示する燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンにより、燃料カットの継続の要求を行なうときに値1が設定され、燃料カットの継続の要求を行なわないときに値0が設定されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。以下、図3の駆動制御ルーチンの説明を一旦中断し、エンジンECU24により実行される燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンについて説明する。
【0025】
燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンでは、エンジンECU24のCPU24aは、まず、燃料噴射弁126からの燃料噴射を停止している燃料カット中か否かを判定し(ステップS300)、燃料カット中でないと判定されたとき(燃料噴射弁126からの燃料噴射が行なわれているときや、エンジン22が停止しているとき)には、燃料カットの継続を要求しないと判断し、燃料カット継続要求フラグFに値0を設定し(ステップS390)、このルーチンを終了する。
【0026】
一方、燃料カット中であると判定されたときには、燃料カットを継続している時間である燃料カット継続時間tfcを入力し(ステップS310)、図5に例示するEGR装置異常診断中フラグ設定処理によりEGR装置異常診断中フラグF1を設定し(ステップS320)、図6に例示する空燃比センサ異常診断中フラグ設定処理により空燃比センサ異常診断中フラグF2を設定し(ステップS330)、図7に例示する酸素センサ異常診断中フラグ設定処理により酸素センサ異常診断中フラグF3を設定する(ステップS340)。ここで、EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3は、それぞれ、異常診断を行なっているときに値1が設定され、異常診断を行なっていないときに値0が設定されるフラグである。以下、図4の燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンの説明を一旦中断し、図5?図7に例示するEGR診断中フラグ設定処理,空燃比センサ異常診断中フラグ設定処理,酸素センサ異常診断中フラグ設定処理について説明する。
・・・(略)・・・
【0034】
以上、EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3の設定について説明した。図4の燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンの説明に戻る。EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3を設定すると(ステップS320?S340)、設定したEGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3の値を調べ(ステップS350?S370)、EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3のうち少なくとも一つが値1のとき、即ち、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なっているときには、燃料カットの継続を要求すると判断し、燃料カット継続要求フラグFに値1を設定し(ステップS400)、燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンを終了する。一方、EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3の全てが値0のとき、即ち、EGR装置,空燃比センサ,酸素センサのいずれの異常診断も行なっていないときには、燃料カット継続時間tfcを所定時間tfc0と比較する(ステップS380)。ここで、所定時間tfc0は、実施例では、前述の所定時間tfc1(例えば800msecなど),tfc2(例えば2000msecなど),tfc3(例えば2000msecなど)のうち一番長い時間を用いるものとした。いま、燃料カット継続時間tfcが所定時間tfc0未満のときを考えると、燃料カットを継続すれば、燃料カット継続時間tfcに応じてEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立する可能性がある。一方、燃料カット継続時間tfcが所定時間tfc0以上のときとしては、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bの異常診断を行なう条件がいずれも成立しなかったときや、異常診断を行なう条件が成立したものについてその異常診断を全て完了したときが考えられる。ステップS380の燃料カット継続時間tfcと所定時間tfc0との比較は、こうした現在の状態を調べる処理である。ステップS380で燃料カット継続時間tfcが所定時間tfc0未満のときには、燃料カット継続要求フラグFに値1を設定して(ステップS400)、燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンを終了する。一方、燃料カット継続時間tfcが所定時間tfc0以上のときには、燃料カット継続要求フラグFに値0を設定して(ステップS390)、燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンを終了する。このように、燃料カット継続要求フラグFには、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なっているときや、燃料カットを継続すればある程度の時間が経過したときにEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立する可能性があるときに値1が設定され、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bの異常診断を行なう条件がいずれも成立しなかったときや、異常診断を行なう条件が成立したものについてその異常診断を全て完了したときに値0が設定される。
・・・(略)・・・
【0040】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の燃料カットが行なわれている最中にEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立したときには、その条件が成立したものについて異常診断を行なうと共にその条件が成立したもの全ての異常診断が完了するまではエンジン22の燃料カットとモータMG1によるエンジン22のモータリングとの継続を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bの異常診断を行なう機会を確保することができる。」(段落【0023】ないし【0040】)

1d 「【0047】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、EGR管152とEGRバルブ154とが「排気供給手段」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「モータリング手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、エンジン22の燃料カットが行なわれている最中にEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立したときに、その条件が成立したものについて異常診断を行なう図5のEGR装置異常診断中フラグ設定処理,図6の空燃比センサ異常診断中フラグ設定処理,図7の酸素センサ異常診断中フラグ設定処理を含む図4の燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンを実行するエンジンECU24とその条件が成立したもの全ての異常診断が完了するまではエンジン22の燃料カットとモータMG1によるエンジン22のモータリングとの継続を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御する図3の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とが「制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。さらに、対ロータ電動機230も「モータリング手段」に相当する。ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能なものであれば、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であってもよい。「排気供給手段」としては、EGR管152やEGRバルブ154に限定されるものではなく、内燃機関からの排気を内燃機関の吸気系に供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「モータリング手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、内燃機関をモータリング可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「制御手段」としては、エンジン22の燃料カットが行なわれている最中にEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立したときに、その条件が成立したものについて異常診断を行なうと共にその条件が成立したもの全ての異常診断が完了するまではエンジン22の燃料カットとモータMG1によるエンジン22のモータリングとの継続を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、EGR装置と空燃比センサ135aとのうち異常診断を行なう条件が成立したもの、または、EGR装置と酸素センサ135bとのうち異常診断を行なう条件が成立したものの異常診断を行なうものとするものや、EGR装置の異常診断だけを行なうものとするなど、内燃機関への燃料噴射が停止されているときに第1の所定の条件が成立したとき、排気供給手段の異常診断を行なうと共に少なくとも排気供給手段の異常診断が完了するまでは内燃機関への燃料噴射の停止とモータリング手段による内燃機関のモータリングとの継続を伴って駆動軸に駆動力が出力されるよう内燃機関装置とモータリング手段と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。」(段落【0047】)

イ 引用文献1の記載事項
記載1aないし1d及び図面の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に、「記載事項2a」ないし「記載事項2e」という。)。

2a 記載1dの「エンジン22が「内燃機関」に相当し」(段落【0047】)及び「「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能なものであれば、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であってもよい。」(段落【0047】)並びに図1によると、引用文献1には、駆動軸に動力を出力可能な内燃機関に相当するエンジン22が記載されている。

2b 記載1cの「モータMG1によるエンジン22のモータリング」(段落【0040】)、記載1dの「動力分配統合機構30とモータMG1とが「モータリング手段」に相当し」(段落【0047】)及び図1によると 引用文献1には、エンジン22をモータリング可能なモータMG1が記載されている。

2c 記載1bの「動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2」(段落【0015】)、記載1dの「モータMG2が「電動機」に相当し」(段落【0047】)及び「「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。」(段落【0047】)並びに図1によると、引用文献1には、駆動軸に動力を出力可能なモータMG2が記載されている。

2d 記載1bの「実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。」(段落【0015】)、記載事項2aないし2c及び図1によると、引用文献1には、駆動軸に動力を出力可能な内燃機関に相当するエンジン22と、前記エンジン22をモータリング可能なモータMG1と、駆動軸に動力を出力可能なモータMG2と、を備えるハイブリッド自動車20が記載されている。

2e 記載1aの「このため、燃料カット中に排気還流装置の故障診断を行なうものにおいて、故障診断を完了する前に機関が回転停止してしまい、排気還流装置の故障診断を行なう機会を十分に確保できないことがあった。」(段落【0003】)、記載1cの「次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。」(段落【0023】)及び「以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の燃料カットが行なわれている最中にEGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行なう条件が成立したときには、その条件が成立したものについて異常診断を行なうと共にその条件が成立したもの全ての異常診断が完了するまではエンジン22の燃料カットとモータMG1によるエンジン22のモータリングとの継続を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、EGR装置,空燃比センサ135a,酸素センサ135bの異常診断を行なう機会を確保することができる。」(段落【0040】)、記載事項2aないし2d並びに図面によると、引用文献1には、内燃機関に相当するエンジン22への燃料カット中に該エンジン22をモータリングしながら行われる完了していない該エンジン22のEGR装置、空燃比センサ135a、酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行うと共に要求トルクTr*が出力されるよう前記エンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御するハイブリッド用電子制御ユニット70が記載されている。

ウ 引用発明
記載1aないし1d、記載事項2aないし2e及び図面の記載を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「駆動軸に動力を出力可能な内燃機関に相当するエンジン22と、前記エンジン22をモータリング可能なモータMG1と、駆動軸に動力を出力可能なモータMG2と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記エンジン22への燃料カット中に該エンジン22をモータリングしながら行われる完了していない該エンジン22のEGR装置、空燃比センサ135a、酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行うと共に要求トルクTr*が出力されるよう前記エンジン22と前記モータMG1と前記モータMG2とを制御するハイブリッド用電子制御ユニット70、
を備えたハイブリッド自動車20。」

(2)引用文献2の記載
特開2008-149902号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「動力出力装置およびその制御方法並びに車両」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「引用文献2の記載」という。)。

「【0018】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
・・・(略)・・・
【0026】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にシフトレバー81がSポジションにセットされている状態で踏み込んでいたアクセルペダル83が離されたとき(アクセルオフ時)の動作について説明する。図4は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるアクセルオフ時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、シフトレバー81がSポジションにセットされているときのアクセルオフ時では、エンジン22は燃料噴射を停止した状態(フューエルカット)で後述する目標回転数Ne*で回転するようモータMG1によりモータリングされる。」(段落【0018】ないし【0026】)

(3)周知例1の記載
特開平10-169535号公報(以下、「周知例1」という。)には、「エンジンの始動制御装置およびその装置を用いたハイブリッド電気車両」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「周知例1の記載」という。)。

「【0009】また高温時のエンジンの始動では、逆にクランクキング時間が過剰となるので、異音の発生の原因となる、スタータのギヤがエンジンで駆動されるというギヤの連れ回りが発生しやすい。しかも、高温時の始動は、失火が発生しやすいので再始動の機会が多く求められるが、再始動回数は一定であるために、エンジンの始動に至らないことがある。
・・・(略)・・・
【0014】この始動条件にしたがって、エンジンの始動装置は始動制御されるから、エンジン運転が必要なときに、確実にエンジンが始動される。これにより、極低温の始動時、クランクキング時間が不足してエンジンの始動が果たせなかったり、高温の始動時、クランクキング時間が過剰となってスタータから異音が発生したり、再始動回数が不足することによる始動不良がなくなる。」(段落【0009】ないし【0014】)

(4)周知例2の記載
特開平10-289021号公報(以下、「周知例2」という。)には、「動力出力装置およびその制御方法」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「周知例2の記載」という。)。

「【0060】以上説明した第1実施例の動力出力装置20によれば、アクセルペダル64が大きく踏み込まれたり、踏み込まれていたアクセルペダル64を急に戻したりして、駆動軸22に出力すべきトルクを急変させても、エンジン50の目標回転数Ne*や目標トルクTe*をエンジン50がスムーズに移行できる移行可能範囲内に設定し、これに基づいてエンジン50の運転制御を行なうから、エンジン50をスムーズに目的とする運転ポイントに移行させることができる。この結果、エンジン50を失速させたり、逆にエンジン50を過剰にモータリングするといった不都合を回避することができる。しかも、目標回転数Ne*や目標トルクTe*を変更しても、トルク指令値Td*に相当するトルクが駆動軸22に出力されるようアシストモータ40のトルク指令値Ta*を設定するから、駆動軸22にはトルク指令値Td*に相当するトルクを出力することができる。」(段落【0060】)

「【0109】以上説明した第2実施例の動力出力装置110によれば、アクセルペダル164が大きく踏み込まれたり、踏み込まれていたアクセルペダル164を急に戻したりして、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを急変させても、エンジン150の目標回転数Ne*や目標トルクTe*をエンジン150がスムーズに移行できる移行可能範囲内に設定し、これに基づいてエンジン150の運転制御を行なうから、エンジン150をスムーズに目的とする運転ポイントに移行させることができる。この結果、エンジン150を失速させたり、逆にエンジン150を過剰にモータリングするといった不都合を回避することができる。しかも、目標回転数Ne*や目標トルクTe*を変更しても、トルク指令値Tr*に相当するトルクがリングギヤ軸126に出力されるようモータMG2のトルク指令値Tm2*を設定するから、リングギヤ軸126にはトルク指令値Tr*に相当するトルクを出力することができる。」(段落【0109】)

2 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 引用発明における「駆動軸に動力を出力可能」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「走行用の動力を出力可能」に相当し、以下、同様に、「内燃機関に相当するエンジン22」は「内燃機関」に、「モータMG1」は「モータリング用電動機」に、「モータMG2」は「走行用電動機」に、「ハイブリッド自動車20」は「ハイブリッド車」に、それぞれ、相当する。

イ 引用発明における「燃料カット中に」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「燃料噴射を停止して」に相当し、以下、同様に、「完了していない」は「未実施の」に、「エンジン22のEGR装置、空燃比センサ135a、酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断」は「内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断」に、「要求トルクTr*が出力されるよう前記エンジン22と前記モータMG1と前記モータMG2とを制御する」は「走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する」に、それぞれ、相当する。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明における「前記エンジン22への燃料カット中に該エンジン22をモータリングしながら行われる完了していない該エンジン22のEGR装置、空燃比センサ135a、酸素センサ135bのうち少なくとも一つの異常診断を行うと共に要求トルクTr*が出力されるよう前記エンジン22と前記モータMG1と前記モータMG2とを制御するハイブリッド用電子制御ユニット70」と本願発明1における「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時には、前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて前記未実施の故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段、
を備え、
前記制御手段は、前記所定アクセルオフ時に前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関をモータリングしたときに、前記モータリングを開始してから所定時間が経過する前に前記未実施の故障診断の実施が終了したときには前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了し、前記未実施の故障診断の実施が終了する前に前記モータリングを開始してから前記所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する手段である」は、「前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段」という限りにおいて、一致する。

エ したがって、両者は、
「走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関をモータリング可能なモータリング用電動機と、走行用の動力を出力可能な走行用電動機と、を備えるハイブリッド車であって、
前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段、
を備えたハイブリッド車。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
「前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて未実施の該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段」に関して、本願発明1においては、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時には、前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされて前記未実施の故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する制御手段、
を備え、
前記制御手段は、前記所定アクセルオフ時に前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関をモータリングしたときに、前記モータリングを開始してから所定時間が経過する前に前記未実施の故障診断の実施が終了したときには前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了し、前記未実施の故障診断の実施が終了する前に前記モータリングを開始してから前記所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する手段である」のに対し、引用発明においては、そのようなものではない、即ち「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時には、前記内燃機関への燃料噴射を停止された状態で該内燃機関がモータリングされて前記未実施の故障診断が実施されると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する」(なお、下線は当審で付したものである。)ものではなく、また、「前記所定アクセルオフ時に前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関をモータリングしたときに、前記モータリングを開始してから所定時間が経過する前に前記未実施の故障診断の実施が終了したときには前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了し、前記未実施の故障診断の実施が終了する前に前記モータリングを開始してから前記所定時間が経過したときには該所定時間が経過したときに前記内燃機関への燃料噴射が停止された状態での該内燃機関のモータリングを終了するよう前記内燃機関と前記モータリング用電動機と前記走行用電動機とを制御する」ものでもない点(以下、「相違点」という。)。

(2)相違点についての判断
相違点は、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のための燃料噴射の停止を行う条件を、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時」とすることを含むものである。
他方、引用文献1の記載1aの「【0025】燃料カット継続要求フラグ設定ルーチンでは、エンジンECU24のCPU24aは、まず、燃料噴射弁126からの燃料噴射を停止している燃料カット中か否かを判定し(ステップS300)、燃料カット中でないと判定されたとき(燃料噴射弁126からの燃料噴射が行なわれているときや、エンジン22が停止しているとき)には、燃料カットの継続を要求しないと判断し、燃料カット継続要求フラグFに値0を設定し(ステップS390)、このルーチンを終了する。
【0026】
一方、燃料カット中であると判定されたときには、燃料カットを継続している時間である燃料カット継続時間tfcを入力し(ステップS310)、図5に例示するEGR装置異常診断中フラグ設定処理によりEGR装置異常診断中フラグF1を設定し(ステップS320)、図6に例示する空燃比センサ異常診断中フラグ設定処理により空燃比センサ異常診断中フラグF2を設定し(ステップS330)、図7に例示する酸素センサ異常診断中フラグ設定処理により酸素センサ異常診断中フラグF3を設定する(ステップS340)。ここで、EGR装置異常診断中フラグF1,空燃比センサ異常診断中フラグF2,酸素センサ異常診断中フラグF3は、それぞれ、異常診断を行なっているときに値1が設定され、異常診断を行なっていないときに値0が設定されるフラグである。」(段落【0025】及び【0026】)及び他の記載をみても、引用文献1には、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のための燃料噴射の停止を行う条件を、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時」とすることは記載されておらず、それを示唆する記載もない。そもそも、引用文献1には、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のために燃料噴射の停止を行うことは記載されていない。
また、引用文献2には、引用文献2の記載からみて、アクセルオフのときに、内燃機関への燃料噴射が停止された状態で該内燃機関がモータリングされている例が開示若しくは示唆されているが、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のための燃料噴射の停止を行う条件を、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時」とすることは記載されておらず、それを示唆する記載もない。
さらに、周知例1及び2には、周知例1及び2の記載からみて、ハイブリッド車両の技術分野において、モータリング時間が過剰になることを防止することが開示若しくは示唆されているが、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のための燃料噴射の停止を行う条件を、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時」とすることは記載されておらず、それを示唆する記載もない。
さらにまた、内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のための燃料噴射の停止を行う条件を、「前記内燃機関への燃料噴射を停止して該内燃機関をモータリングしながら行なわれる該内燃機関の排気系に取り付けられたセンサまたは装置の故障診断のうち少なくとも1つの故障診断が未実施の状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射が行なわれて該内燃機関が運転されている状態でアクセルオフされた所定アクセルオフ時」とすることは、周知であるともいえないし、当業者が適宜行う設計的事項であるともいえない。
したがって、引用発明において、引用文献1及び2に記載された技術並びに周知例1及び2に記載された技術を適用して、相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献1及び2に記載された技術並びに周知例1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2及び3は、請求項1を引用するものであり、本願発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明、引用文献1及び2に記載された技術並びに周知例1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
さらに、本願発明4は、実質的に、本願発明1を方法の発明として表現したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明、引用文献1及び2に記載された技術並びに周知例1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、引用発明、引用文献1及び2に記載された技術並びに周知例1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-04 
出願番号 特願2009-22893(P2009-22893)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 加藤 友也
柳田 利夫
発明の名称 ハイブリッド車およびその制御方法  
代理人 特許業務法人アイテック国際特許事務所  

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