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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10G
管理番号 1285119
審判番号 不服2011-10288  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-17 
確定日 2014-02-25 
事件の表示 特願2006-539574「潤滑油基油の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/047434、平成19年 4月26日国内公表、特表2007-510798〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
この出願は、2004年10月29日(パリ優先権による優先権主張:2003年11月10日 米国,2004年9月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月19日に手続補正書が提出され、平成22年9月9日付けの拒絶理由通知に対して同年12月17日に意見書が提出され、平成23年1月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月17日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当審において平成24年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
平成25年7月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「a)平均細孔径が10nm超で30nm以下の高表面積の担体物質に、少なくとも1種の第VIII族金属を2?20重量%および少なくとも1種の第VIB族金属を5?50重量%担持した水素化処理触媒から選択される少なくとも1種の第1触媒;および
b)バルク金属水素化処理触媒であって、少なくとも1種の第VIII族非貴金属および少なくとも1種の第VIB族金属を、前記バルク触媒の粒子の総重量を基準として、金属酸化物として計算して、30?100重量%含むバルク金属水素化処理触媒から選択され、かつ前記バルク触媒粒子の表面積が少なくとも10m^(2)/gである少なくとも1種の第2触媒
を含む積層床触媒。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成24年12月25日付けで当審が通知した拒絶理由の理由3は、「本願発明1?9は、本願優先日前に頒布された刊行物1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、刊行物1?4として以下のものが提示されている。

1.特表2002-534589号公報
2.特開平5-192578号公報
3.国際公開第2004/53028号
4.特表2002-534583号公報

第4 当審の判断
当審は、本願発明は、上記拒絶理由に記載した理由によって拒絶をすべきものと判断する。
以下、詳述する。

1.刊行物及び刊行物の記載事項
(1)刊行物
1.特表2002-534589号公報(拒絶理由通知における「刊行物1」。)
2.特開平5-192578号公報(拒絶理由通知における「刊行物2」。)
3.特開平10-118495号公報(審決において新たに引用する周知例。)
4.国際公開第2004/53028号(拒絶理由通知における「刊行物3」。)
5.特表2002-534583号公報(拒絶理由通知における「刊行物4」。)

(2)刊行物に記載された事項
ア.刊行物1について
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a:「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項2】少なくとも約90%の飽和分を含有する潤滑油基油を調製するための方法において、
(a)第1の非バルク金属水素化触媒を内含する少なくとも1つの水素化反応器を内含する第1の水素化域まで原料油材を移行させる工程と、
(b)第1の水素化条件で第1の水素化触媒の存在下で原料油材を水素化する工程であって、第1の水素化触媒が、第1の水素化原料油材を生成するべく耐火性酸化物担体上に少なくとも1つの第VIB族及び少なくとも1つの第VIII族非貴金属を含む水素化工程と、
(c)第2の水素化触媒を内含する少なくとも1つの水素化反応器を内含する第2の水素化域まで第1の水素化原料油材の少なくとも一部分を移行させる工程と、
(d)第2の水素化条件下で第2の水素化域内で第1の水素化原料油材を水素化する工程であって、前記第2の水素化域内の第2の水素化触媒が第VIII族非貴金属のモリブデン酸塩を含むバルク金属触媒であり、ここでモリブデンの全てより少ない少なくとも一部分が第2の水素化原料油材を生成するべくタングステンで置換されている水素化工程と、
(e)第2の水素化原料油材を分留する工程
を含んで成る方法。」
1b:「【0089】
本発明の触媒組成物
本発明はさらに、上述のプロセスのいずれかによって得ることができる触媒組成物に関する。さらに、本発明は、金属酸化物として計算されたときバルク触媒粒子の合計重量に基づいて30?100重量%の少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を含み、又少なくとも10m^(2)/gの表面積を有しているバルク触媒粒子を含んで成る触媒組成物にも関する。」
1c:「【0022】
問題の触媒は、従来の非バルク金属水素化触媒を用いた水素化プロセスにおいて組合わせることもできる。1実施形態においては、原料油材はまず最初に非バルク金属水素化触媒を含む水素化域内で水素化される。好ましい非バルク金属触媒には、モリブデン又はタングステンといったような少なくとも1つの第VIB族金属及びコバルト又はニッケルといったような少なくとも1つの非貴金属第VIII族が含まれる。水素化条件としては、250?400℃の温度、500?3500psig(3549?23234kPa)の水素圧力、0.1?5.0の液空間速度及び500?5000scf/B(89?890m^(3)/m^(3))の水素処理ガス速度が含まれる。第1の水素化域からの生成物は、次に、第1の水素化域内に存在するものと同じ水素化条件下で本発明に従ってバルク金属触媒を含む第2の水素化域内で水素化される。」
1d:「【0090】
1つの第VIII族非貴金属及び2つの第VIB族金属を含むバルク触媒粒子を含む触媒組成物が好ましい。この場合、バルク触媒粒子は焼結耐性をもつことがわかっている。かくして、バルク触媒粒子の活性表面積は使用中維持される。第VIB族対第VIII族非貴金属のモル比は、一般に10:1?1:10,好ましくは3:1?1:3の範囲内にある。」
1e:「【0019】
本書の水素化に標準的に付される炭化水素原料油材は、標準的に150℃以上の温度で沸騰する。炭化水素原料油材の例としては、原油又はその留分、シェール油、タールサンド又は合成原油の熱処理、触媒処理、溶媒処理、脱ロウ又は分留のうちの少なくとも1つから誘導されたものがある。所望の場合、原料は、その硫黄及び/又は窒素含有量を低減させるべく既知の又は従来の要領で処理することができる。好ましい原料は、ワックス質又は脱ロウ減圧ガスオイル留出油、ワックス質又は脱ロウ水素化又は水素化分解された減圧ガスオイル留出油及びワックス質の又は脱ロウ済みで315℃の沸点をもつ溶媒抽出されたラフィネートである。」

イ.刊行物2について
上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。

2a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】触媒が等温状態に維持され、かつ均一な性質の供給原料にさらされるように、該供給原料を水素および触媒と接触させる硫黄および金属を含有する炭化水素原料の水素化処理方法であって、該触媒は、1.0?6.0重量%の第VIII族金属の酸化物、10.0?25.0重量%の第VIB族金属の酸化物および1.0?6.0重量%のリンの酸化物を含む組成を有し、これらすべてが多孔性アルミナ担体に担持されていることを特徴とし;さらに、該触媒は160?210m^(2)/gの全表面積、0.50?0.65ml/gの全細孔容積、および100?130Åの孔径を有するミクロ細孔が触媒の全細孔容積の70.0?85.0%を構成し、160Åを越える孔径を有するミクロ細孔が触媒の全細孔容積の7.5%未満を構成し、かつ、250Åを越える孔径を有するマクロ細孔が該触媒の全細孔容積の4.0%未満を構成するような細孔径分布を有することを特徴とする方法。」
2b:「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、540℃を越える沸点をもつ供給原料成分の540℃未満の沸点をもつ生成物への水素化転換の顕著な水準を維持しながら、硫黄および金属を含有する炭化水素供給原料の接触水素化処理のための方法、全生成物中の硫黄および窒素の除去の向上された水準を達成する方法を提供することである。本発明の別の目的は、硫黄および金属を含有する炭化水素供給原料の接触水素化処理のための方法、水素化処理/水素化転換生成物の540℃未満の沸点を有する留分中の、向上された水準のHDSおよびHDNを達成する方法を提供することである。」
2c:「【0015】
・・・しかしながら、本発明の方法に使用された触媒は、処方された触媒が転換された生成物分子の水素化処理に対する拡散の限界を克服するのに十分な大きさではあるが、それほど大きくはないミクロ細孔径を有し、触媒ペレット内部の触媒被毒を許すようなマクロ細孔を含有しないという結果を達成することを可能にする。該触媒はまた、100Å未満の直径を有する細孔が水素化処理の間に汚染物質で容易にふさがれるので、これらの細孔を最小限にするような、非常に狭い孔径分布を有する。」
2d:「【0020】
【実施例】以下の表2に記載される触媒試料AおよびBは、本発明の方法に使用できる触媒であり、一方、試料CおよびDは石油残油を水素化処理するのに典型的に使用される市販の触媒である。
【0021】
【表2】




ウ.刊行物3について
上記刊行物3には、以下の事項が記載されている。

3a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 TiO_(2)/Al_(2)O_(3)重量比が3/97から20/80の範囲にあるチタニア-アルミナ担体であって、該チタニア-アルミナ担体を900℃で1時間空気中焼成した後においてラマン分光分析によるラマンスペクトルでアナターゼ型チタニアの結晶構造に帰属する波数140cm^(-1)、400cm^(-1)、520cm^(-1)、640cm^(-1)のいずれにもピークが検出されないことを特徴とするチタニア-アルミナ担体。
・・・
【請求項3】 請求項1記載のチタニア-アルミナ担体に周期律表第VIA族および第VIII族から選ばれた少なくとも1種の金属成分を担持してなる水素化処理触媒。
【請求項4】 前記水素化処理触媒は、細孔容積が0.30?1.0ml/g、平均細孔直径が90?130Å、比表面積が150?300m^(2)/gの範囲にあることを特徴とする請求項3記載の水素化処理触媒。」
3b:「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタニア-アルミナ担体およびその製造方法並びに該チタニア-アルミナ担体を使用した水素化処理触媒に関し、更に詳しくは、炭化水素油の水素化処理に使用して高い脱硫活性を示す、特別の特性を有するチタニア-アルミナを担体とした水素化処理触媒に関する。」
3c:「【0024】実施例2
実施例1および比較例1、2のチタニア-アルミナ担体A?Gを使用して水素化処理触媒を調製して活性評価した。純水4.5リットルに三酸化モリブデン2143g、炭酸コバルト(CoO濃度59.5wt%)666gおよび炭酸ニッケル(NiO濃度40.7wt%)を懸濁させ、95℃に加温し、次いで、リンゴ酸1190gを添加して金属塩を溶解し、濃度調整して5600gの含浸液Xを調製した。それぞれのチタニア-アルミナ担体A?G各500gに、それぞれ350gの含浸液Xを少量の純水で希釈してポアフィリング法で含浸した。次いで、それぞれの担体は、回転乾燥した後、550℃で1時間焼成して、それぞれ触媒A?Gを得た。これらの触媒A?Gは、いずれもMoO_(3)が20.0wt%CoOが3.7wt%およびNiOが1.6wt%であった。これら触媒A?Gの性状を表2に示す。
【0025】〈活性試験〉触媒A?Gの活性評価を中東系減圧軽油(VGO)を原料油に用いて行った。反応装置は触媒充填量200mlの連続流通式のベンチ試験装置を使用した。原料油の性状および反応条件を以下に示す。
原料油性状
減圧軽油(VGO)
比重(g/cm^(3)) 0.9324
硫黄分(wt%) 2.545
窒素分(ppm) 1065
反応条件
液空間速度(hr^(-1)) 1.5
水素圧力 (kg/cm^(2)) 48
水素/油比(nl/l) 300
【0026】各々の触媒の脱硫活性、脱窒素活性を同一反応条件、同一原料油で測定したVGO水素化処理用市販触媒〔触媒化成工業(株):CDS-D31〕を基準として反応温度380℃における反応速度定数の相対比(基準:100)で求めた。その結果を表2に示す。表2から本発明の触媒は、脱硫活性、脱窒素活性共に優れていることが分かる。
【0027】〈活性劣化速度の評価〉触媒Bおよび触媒Fを用いて脱硫活性の劣化速度を測定した。反応装置は前述のベンチ試験装置を用い、同じ原料油を用いて、以下の反応条件で行った。
反応条件
液空間速度(hr^(-1)) 1.5
水素圧力 (kg/cm^(2)) 31
水素/油比(nl/l) 120
脱硫活性の劣化速度は、生成油の硫黄濃度が0.1wt%一定となるように反応温度を調整して、反応開始後500時間から1500時間の反応温度の上昇率を比較した。その結果、触媒F(比較例)の反応温度の上昇率は触媒B(本発明)の1.03倍であった。本発明の触媒は高脱硫活性を長時間持続できることが分かる。
【0028】
【表1】

Pv(ml/g):細孔容積
PD(Å) :平均細孔直径
SA(m^(2)/g) :比表面積
ラマンスペクトル:900℃1時間焼成品の波数140cm^(-1)、40
0cm^(-1)、520cm^(-1)、および640cm^(-1)の
ピークの有無を示し、前記波数の1つでもピー
クの有るものを有、また、前記波数の全てにつ
いてピークの無いものを無、という。
【0029】
【表2】



エ.刊行物4について
上記刊行物4には、以下の事項が記載されている。(翻訳は刊行物4のパテントファミリーである特表2006-512430号公報に基づく。)

4a:「特許請求の範囲
1.重質炭化水素油を水素の存在下で水素化処理触媒1および水素化処理触媒IIの混合物と接触させることを含む、重質炭化水素油を水素化処理するための方法において、
触媒Iは多孔性無機担体上にVIB族金属成分および所望によりVIII族金属成分を含み、該触媒は少なくとも100m^(2)/gの比表面積および少なくとも0.55ml/gの総孔体積を有し、該総孔体積の少なくとも50%を少なくとも20nm(200Å)の直径を有する孔中に有し、該総孔体積の少なくとも65%を10?120nm(100?1200Å)の直径を有する孔中に有し、および
触媒IIは・・孔中に有し、
ここで、触媒Iは、その孔体積の、少なくとも20nm(200Å)の直径を有する孔中における割合が触媒IIよりも大きいところの方法。」(第21頁1?20行)
4b:「触媒Iは、総孔体積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%を少なくとも20nm(200Å)の直径を有する孔中に有する。この範囲における孔体積の割合は、好ましくは高々80%である。この範囲における孔体積の割合が50%より下の場合には、触媒性能、特にアスファルテン分解活性が低下する。その結果、沈降物形成が増加する。
触媒Iは、総孔体積の少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%を10?120nm(100?1200Å)の直径を有する孔中に有する。この範囲における孔体積の割合が不充分であると、沈降物形成が増加し、残渣分解速度が低下する。
さらに、触媒Iがその孔体積の25%未満、より好ましくは17%未満、さらにより好ましくは10%未満を10nm(100Å)以下の直径を有する孔中に有する。この範囲における孔体積の割合が高すぎると、非アスファルテン供給物構成要素の増加された水素化故に、沈降物形成が増加し得る。」(第6頁1?15行)

オ.刊行物5について
上記刊行物5には、以下の事項が記載されている。

5a:「【0065】
水素化脱硫段のいずれか、またはその両方の反応域の1つ以上に、従来の水素化脱硫触媒が含まれていてもよい。本発明に用いるのに好適な従来の水素化脱硫触媒としては、比較的表面積の広い担体材料、好ましくはアルミナ担持の、少なくとも1種類の第VIII族金属、好ましくはFe、CoまたはNi,より好ましくはCoおよび/またはNi、最も好ましくはCoと、少なくとも1種類の第VI族金属、好ましくはMoまたはW、より好ましくはMoから構成されるようなものが挙げられる。・・・。第VIII族金属は、一般に、約2?20重量%、好ましくは約4?12重量%の範囲の量で存在する。第VI族金属は、一般に、約5?50重量%、好ましくは10?40重量%、より好ましくは約20?30重量%の範囲の量で存在する。金属重量パーセントはすべて担体上でのものである。「担体上」とは、パーセントが担体の重量に基づいているということである。例えば、担体が100gであった場合には、20重量%の第VIII族金属とは、20gの第VIII族金属が担体上にあったということである。」

2.刊行物1に記載された発明
刊行物1の摘示1aには、
「・・・潤滑油基油を調製するための方法において、
・・・
(b)第1の水素化条件で第1の水素化触媒の存在下で原料油材を水素化する工程であって、第1の水素化触媒が、第1の水素化原料油材を生成するべく耐火性酸化物担体上に少なくとも1つの第VIB族及び少なくとも1つの第VIII族非貴金属を含む水素化工程と、
・・・
(d)第2の水素化条件下で第2の水素化域内で第1の水素化原料油材を水素化する工程であって、前記第2の水素化域内の第2の水素化触媒が第VIII族非貴金属のモリブデン酸塩を含むバルク金属触媒であり、ここでモリブデンの全てより少ない少なくとも一部分が第2の水素化原料油材を生成するべくタングステンで置換されている水素化工程、
・・・
を含んで成る方法。」
が、記載されている。
また、摘示1bのバルク金属触媒に関する、
「金属酸化物として計算されたときバルク触媒粒子の合計重量に基づいて30?100重量%の少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を含み、又少なくとも10m^(2)/gの表面積を有している」
との記載からみて、刊行物1には、
「潤滑油基油を調製するための方法において、
(b)第1の水素化条件で第1の水素化触媒の存在下で原料油材を水素化する工程であって、第1の水素化触媒が、第1の水素化原料油材を生成するべく耐火性酸化物担体上に少なくとも1つの第VIB族及び少なくとも1つの第VIII族非貴金属を含む水素化工程と、
(d)第2の水素化条件下で第2の水素化域内で第1の水素化原料油材を水素化する工程であって、前記第2の水素化域内の第2の水素化触媒が金属酸化物として計算されたときバルク触媒粒子の合計重量に基づいて30?100重量%の少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を含み、又少なくとも10m^(2)/gの表面積を有しているモリブデン酸塩を含むバルク金属触媒であり、ここでモリブデンの全てより少ない少なくとも一部分が第2の水素化原料油材を生成するべくタングステンで置換されている水素化工程を、
含んで成る方法。」
が記載されていると認められる。
そして、上記方法は、第1の水素化触媒と第2の水素化触媒(バルク金属触媒)を含む触媒で実施されているといえるので、刊行物1には、
「耐火性酸化物担体上に少なくとも1つの第VIB族及び少なくとも1つの第VIII族非貴金属を含む第1の水素化触媒、及び
金属酸化物として計算されたときバルク触媒粒子の合計重量に基づいて30?100重量%の少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を含み、又少なくとも10m^(2)/gの表面積を有しているモリブデン酸塩を含むバルク金属触媒であり、ここでモリブデンの少なくとも一部分がタングステンで置換されている第2の水素化触媒
を含む触媒。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.検討
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「第1の水素化触媒」は、第VIII族と第VIB族の金属を担体上に担持している触媒である点で、本願発明の「第1触媒」に相当する。
また、引用発明の「第2の水素化触媒」は、「バルク金属触媒であり、」「第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を」「バルク触媒粒子の合計重量に基づいて30?100重量%」含み、また、「10m^(2)/gの表面積を有している」点で本願発明の「第2触媒」に相当する。
さらに、本願発明の詳細な説明【0024】には、
「本明細書において使用される触媒系は、少なくとも第1および第2の水素化処理触媒を含む。「積層床」とは、分離された触媒床、反応器、または反応域に第1触媒が現れ、そして、潤滑油原料油の流れに対し第1触媒の下流側にある分離された触媒床、反応器、または反応域に第2水素化処理触媒が現れるものを意味する。」
との記載があることから、本願発明の「積層床触媒」とは、「分離された触媒床、反応器、または反応域に第1触媒が現れ、そして、潤滑油原料油の流れに対し第1触媒の下流側にある分離された触媒床、反応器、または反応域に第2水素化処理触媒が現れるもの」を意味すると解される。
そして、引用発明の「触媒」も、原料油材の流れに対して第1の水素化触媒が現れ、その下流側に第2の水素化処理触媒が配置されているので、本願発明の「積層床触媒」に相当する。
よって、本願発明と引用発明は、
「a)担体物質に、少なくとも1種の第VIII族金属および少なくとも1種の第VIB族金属を担持した水素化処理触媒から選択される少なくとも1種の第1触媒;および
b)バルク金属水素化処理触媒であって、少なくとも1種の第VIII族非貴金属および少なくとも1種の第VIB族金属を、前記バルク触媒の粒子の総重量を基準として、金属酸化物として計算して、30?100重量%含むバルク金属水素化処理触媒から選択され、かつ前記バルク触媒粒子の表面積が少なくとも10m^(2)/gである少なくとも1種の第2触媒
を含む積層床触媒。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:第1触媒に担持される第VIII族金属及び第VIB族金属の量が、本願発明は、それぞれ、「2?20重量%」及び「5?50重量%」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点

相違点2:第1触媒の担体物質が、本願発明は、「平均細孔径が10nm超で30nm以下の高表面積」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点

(2)相違点の判断
ア.相違点1及び2について
刊行物2には、「炭化水素原料の水素化処理方法」(摘示2a)に用いられ、「全生成物中の硫黄および窒素の除去の向上された水準を達成する」(摘示2b)「触媒」として、摘示2dにおいて、「細孔径中央値」が「118」(Å)であり、その触媒の化学組成がMoO_(3)(15.2重量%)、NiO(2.9重量%)、SiO_(2)(1.6重量%)、P_(2)O_(5)(1.7重量%)である、「多孔性アルミナ担体に担持されている」「触媒」「A」が記載されている。
そして、上記水素化触媒は、Mo(VIB族金属)及びNi(VIII族金属)の重量が、アルミナ担体に対して略12.9、及び2.9重量%であり、また、その平均細孔径も細孔径中央値の118Å(すなわち11.8nm)程度であると認められる。
(刊行物2の上記金属の含有量については、触媒A中の担体の重量割合が「化学組成」以外の78.6重量%(100-(15.2+2.9+1.6+1.7)=78.6)であり、また、Mo,Ni、Oの分子量が96、59、16であるとして算出した。)
すなわち、刊行物2には、「平均細孔径が10nm超で30nm以下の高表面積の担体物質に、少なくとも1種の第VIII族金属を2?20重量%および少なくとも1種の第VIB族金属を5?50重量%担持した水素化処理触媒」が、記載されている。

さらに、刊行物3には、「炭化水素油」の「水素化処理触媒」(摘示3a及び3b)であり、「脱硫活性及び脱窒素活性ともに優れている」触媒(摘示3c段落【0026】)として、摘示3cにおいて、「平均細孔直径」(PD(Å))が「101」、「112」、「101」Åであり、「MoO_(3)が20.0wt%CoOが3.7wt%およびNiOが1.6wt%」である、「チタニア-アルミナ担体」に担持されている「触媒」「A」?「C」が記載されている。
そして、上記水素化処理触媒は、Mo(VIB族金属)及びNiとCoの合計量(VIII族金属)の重量が、担体に対して略17.8、及び5.6重量%であり、また、その平均細孔径も101?118Å(すなわち10.1?11.8nm)である。
(刊行物3の上記金属の含有量については、触媒A?Cの担体の重量割合がMoO_(3)、CoO、NiO以外の74.7重量%(100-(20.0+3.7+1.6)=74.7)であり、また、Mo、Ni、Co、Oの分子量が96、59、59、16であるとして算出した。)
すなわち、刊行物3にも、「平均細孔径が10nm超で30nm以下の高表面積の担体物質に、少なくとも1種の第VIII族金属を2?20重量%および少なくとも1種の第VIB族金属を5?50重量%担持した水素化処理触媒」が、記載されている。

そして、刊行物4の摘示4aには、
「多孔性無機担体上にVIB族金属成分および所望によりVIII族金属成分を含み、・・・該総孔体積の少なくとも50%を少なくとも20nm(200Å)の直径を有する孔中に有し、該総孔体積の少なくとも65%を10?120nm(100?1200Å)の直径を有」する「触媒I」が記載されており、そして、摘示4bにおいて、
「触媒Iは、総孔体積の・・・好ましくは少なくとも60%を少なくとも20nm(200Å)の直径を有する孔中に有する。・・・この範囲における孔体積の割合が50%より下の場合には、触媒性能、特にアスファルテン分解活性が低下する。その結果、沈降物形成が増加する。
触媒Iは、・・・より好ましくは少なくとも85%を10?120nm(100?1200Å)の直径を有する孔中に有する。この範囲における孔体積の割合が不充分であると、沈降物形成が増加し、残渣分解速度が低下する。
さらに、触媒Iが・・・さらにより好ましくは10%未満を10nm(100Å)以下の直径を有する孔中に有する。この範囲における孔体積の割合が高すぎると、非アスファルテン供給物構成要素の増加された水素化故に、沈降物形成が増加し得る。」
と記載されている。
すなわち、刊行物4には、多孔性無機担体上にVIB族金属成分およびVIII族金属成分を含む水素化触媒において、触媒の孔の直径が10nm以上のものの割合が大きく、10nm以下の割合が小さいほど、水素化における沈降物形成が減少し、触媒性能が上昇することが開示されていると認められる。

また、刊行物5の摘示5aには、水素化脱硫触媒の第VIII族金属及び第VI族金属の含有量について、
「第VIII族金属は、一般に、約2?20重量%、・・・範囲の量で存在する。第VI族金属は、一般に、約5?50重量%・・・範囲の量で存在する。金属重量パーセントはすべて担体上でのものである。」
と記載されている。

すなわち、上記刊行物2、3に示されるとおり、炭化水素原料から水素化により窒素や硫黄等のヘテロ原子を除去する活性を有する触媒として、平均細孔径が10?30nmの範囲にある触媒は周知である。そして刊行物4においても、特にアスファルテンなどの重質成分の処理においては、担持触媒の孔径を10nm以上程度とすることが好ましいことが記載されている。
また、刊行物2、3、5に示されるとおり、担体を含む水素化触媒として、「第VIII族金属」及び「第VIB族金属」の量を、担体に対して「2?20重量%」及び「5?50重量%」程度とすることも通常行われていることである。
よって、上記周知の事項を採用して、引用発明の「第1の水素化触媒」の平均細孔径を「10nm超で30nm以下」とすること、及び、VIII族、及び第VIB族非貴金属の含有量をそれぞれ「2?20重量%」、「5?50重量%」となるように設計することは当業者が容易になし得るものである。

イ.効果について
本願発明の効果について、本願発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【0026】
しかしながら、上述の基準に適合する従来の水素化処理触媒がすべて本発明に使用するのに好適というわけではない。予想外なことに、本発明者らは、第1触媒が本発明に好適に使用されるためには、その平均細孔径が特定の大きさにあることが必要であることを見出した。
したがって、本発明を実施するにあたっては、上述したような従来の触媒であるが、しかし水吸着ポロシメトリー・・・によって測定された平均細孔径が10nmを超えるものを本積層床触媒系の第1触媒として使用することが必要である。好ましくは、本積層床触媒系の第1触媒、すなわち従来の水素化処理触媒の平均細孔径は、11nmを超え、より好ましくは12nmを超える。」
「【実施例】
【0045】
[実施例1]
表1に主な性状を示す中質減圧ガスオイルを、水素分圧を1200psigとした恒温のパイロットプラントにおいて、3種類の触媒系上で処理した。この触媒系および運転条件を表2に示す。触媒Bは、アルミナ担体上に第VI族金属4.5重量%と第VIII族金属23重量%とを担持した、平均細孔サイズが14.0nmである従来の水素化処理触媒である。バルク金属水素化処理触媒として、アクゾノーベル(Akzo-Nobel)社より「ネブラ(Nebula)」の名称で上市されている市販のバルク金属水素化処理触媒を用いた。
・・・
【0048】
【表2】

【0049】
簡単な一次反応速度論モデルを用いて各触媒系の窒素除去相対容積活性(「RVA」)を計算した。表2に示すように、平均細孔径の大きな触媒Bをバルク金属触媒の上流側とした50/50容量%の積層床触媒系は、単一種の触媒系が単独で示したいずれの窒素除去活性よりも高い窒素除去活性を示した。
【0050】
[実施例2]
上の実施例1で用いたものと同じ恒温のパイロットプラント設備の並列に配された2つの反応器系列において、触媒Bおよびネブラを含む異なる積層床上で異なる原料油流れを水素化処理することによって、この積層床の水素化処理能力を分析した。
使用した原料油流れは、FCC装置から得られる中質サイクルオイル(「MCO」)およびMCOと直留原料油とのブレンドである。並列に配された2つの反応器系列において試験を実施した。供給原料の性状を以下の表3に示す。
【0051】
この実施例においては、一方の反応器系列は、その全体が、従来の水素化処理触媒である触媒C(アルミナ上のNiMo、平均細孔径7.5nm)から構成されるものとした。もう一方の反応器系列は、触媒Cを75容量%と、それに続く触媒A(バルク多元金属硫化触媒、平均細孔径が5.5nm)を25容量%との積層床系を含むものとした。
【0052】
熱伝達が効率よく行われるように、両系列内の分離された反応器を流動砂浴に投入した。したがって、触媒Cの最初の75容量%の温度は、系列1においても2においても同じ温度となった。同様に、系列1の残りの25容量%の触媒Cは、系列2の残りの25容量%の触媒Aと同じ温度となった。つまり、実施例2においては、2つの反応器系列はそれぞれ2つの別個の反応槽に分割されており、この反応器に充填された触媒の75容量%を含む最初の75容量%の温度は残りの25容量%の触媒とは独立に制御可能であった。
【0053】
この2つの系列の運転条件は、H_(2)を1350psig、液時空間速度(「LHSV」)を1.4vol/hr/vol、水素を5500?6300SCF/Bとした。両系列の温度工程を表4に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
触媒Aと比較した積層床触媒C/触媒AのHDN相対容積活性を以下の図1に示す。FCC MCOを50%、67%、および100%含む供給原料に対し、触媒Aをわずか25容量%含有させた積層床系が275%の向上率・・・で安定な活性を示すことに注目されたい。
【0057】
同図に示すように、重質FCC MCOを100%供給原料として用いた場合は、積層床触媒系の活性の向上率がまず275%から225%に低下し、その後、20日間の間に、150%をわずかに下回るまで低下し続けたことに留意されたい。」
「【図1】


【0058】
[実施例3]
この実施例においては、触媒Bを75容量%およびネブラを25容量%(いずれも上述したもの)含む積層床触媒系を用いて、以下の表5に示す接触分解軽質サイクルオイル・・・供給原料(「供給原料A」)およびより重質な接触分解中質サイクルオイル・・・供給原料(「供給原料B」)を水素化処理した。実施例3は、上述の実施例2に説明したものと同じ2つの反応器系列を有するパイロットプラント設備で実施した。この2つの系列の運転条件は、H_(2)を1200psig、液時空間速度を2vol/hr/vol、水素を5000SCF/Bとした。
・・・両系列の温度工程を、本実施例の結果と一緒に以下の表5に示す。
【0060】
【表5】

【0061】
表5からわかるように、平均細孔径が14nmの従来の触媒を反応器の最初の75容量%として用いた場合は、より重質な供給原料を使用しても触媒系の窒素除去相対容積活性(「RVA」)は、一定のままであった。実施例3の結果と実施例2で得た結果とを比較すると、細孔容積が7.5nmの触媒がバルク金属触媒よりも手前にあると触媒系のRVAが低下することがわかる。しかし、実施例3においては、より重質な供給原料によって触媒系のRVAに悪影響が及ぼされることはなかった。」


そして、上記【0049】における
「表2に示すように、平均細孔径の大きな触媒Bをバルク金属触媒の上流側とした50/50容量%の積層床触媒系は、単一種の触媒系が単独で示したいずれの窒素除去活性よりも高い窒素除去活性を示した。」
という実施例1に関する記載、上記【0061】における、
「表5からわかるように、平均細孔径が14nmの従来の触媒を反応器の最初の75容量%として用いた場合は、より重質な供給原料を使用しても触媒系の窒素除去相対容積活性(「RVA」)は、一定のままであった。実施例3の結果と実施例2で得た結果とを比較すると、細孔容積が7.5nmの触媒がバルク金属触媒よりも手前にあると触媒系のRVAが低下することがわかる。しかし、実施例3においては、より重質な供給原料によって触媒系のRVAに悪影響が及ぼされることはなかった。」
という実施例2、3に関する記載、及び、上記【0026】における
「予想外なことに、本発明者らは、第1触媒が本発明に好適に使用されるためには、その平均細孔径が特定の大きさにあることが必要であることを見出した。
したがって、本発明を実施するにあたっては、・・・平均細孔径が10nmを超えるものを本積層床触媒系の第1触媒として使用することが必要である。」
という記載を総合すると、本願発明の効果は、第1触媒の担体物質の平均細孔径を10nmを超えるものとすることによって窒素除去活性が向上する、というものであると認められる。
しかしながら、以下のとおり、上記記載を参酌しても、本願発明が引用発明よりも格別の効果があるものとは認められない。

(ア)実施例1の記載について
本願実施例1(上記段落【0045】?【0049】)には、本願発明の担体物質に担持した水素化処理触媒(第1触媒)及び、バルク金属水素化処理触媒(第2触媒)にそれぞれ対応していると推定される「触媒B」(平均細孔径は本願発明の範囲内にある。)と「ネブラ(Nebula)」を、それぞれ単独使用した場合よりも、併用した場合に、窒素除去相対容積活性(RVA)が向上することが示されている。
しかしながら、上記実施例1においては、本願発明の担体物質に担持した水素化処理触媒(触媒B)にかえて、平均細孔径等が本願発明の範囲外にあるものとの比較がなされているものではない。(例えば、触媒Bにかえて、平均細孔径のみが本願発明の範囲外にある触媒を用いた場合においても、同様の結果が得られる可能性もある。)
したがって、上記実施例1のみの結果から、担体物質に担持した水素化処理触媒とバルク金属水素化処理触媒の併用による窒素除去相対容積活性の向上が、第1触媒の平均細孔径や金属の含有量が本願発明の範囲にあることにによって奏される効果であるとは必ずしもいえない。
そして、引用発明と本願発明とは、第1触媒の担体物質の平均細孔径及び第VIB族及び第VIII族の金属の含有量においてのみ相違するものであるが、上記の理由により、それらが本願発明の範囲にあることによって、本願発明が引用発明よりも格別の効果があるものとは認められない。
なお、「触媒B」は、第VI族金属4.5重量%と第VIII族金属23重量%とを含むものであるから、そもそも本願発明において第1触媒として特定される範囲外のものである。

(イ)実施例2、3の記載について
実施例2において用いられている触媒は、実施例3において用いられている触媒B(本願発明の第1触媒に対応すると推定されるが、前記したとおり第VIB族金属、第VIII族金属の含有量において第1触媒の規定を満たしていない。)と、ネブラ(同第2触媒に相当)を、それぞれ平均細孔径が7.5nmである触媒Cと、触媒Aとした、いわば比較例に該当するものである。
そして、実施例2においては、通油1日目の軽質原料に対する活性と、通油日数50日目の重油原料と比較して、HDN相対容積活性が低下することが示されている。
また、実施例3においては、軽質原料と重質原料について同様の窒素除去相対容積活性を有することが示されている。

しかしながら、実施例2のように、通油日数を50日も経れば、通常、どのような触媒でも活性はある程度低下するものであるところ、実施例3においては、通油時間の記載が無い。
また、実施例2及び3においては、実験に用いた原料も異なっているし、本願発明の第2触媒に相当する触媒についても異なる。
このように、実施例2と3の実験条件は異なることから、窒素除去相対容積活性(RVA)低下率の差が、触媒の相違によるものであるとは必ずしもいえない。(この点、請求人も、平成25年7月5日に提出された意見書第6頁28?30行において、「ここで注意すべきことは、[実施例2]と[実施例3]では、両者で採用されている反応条件や原料油種などが必ずしも一致していないため、両者のRVA数値をその絶対値で対比することには技術的に意味がありませんが、」と認めているところでもある。)
また、実施例2の結果を示した【図1】を参酌すると、50%FCCMCO?重質FCCMCOの通油40日目のRVAは、いずれも「2.0以上」であり、実施例3の「1.75」よりも高い結果となっている。
よって、実施例3において用いられた触媒が、実施例2で用いられた触媒よりも、窒素除去相対容積活性(RVA)がより高いとはいえない。
したがって、上記実施例2、3を参酌しても、本願発明において、第1触媒として、平均細孔径と第VI族及び第VIII族の金属の含有量が本願発明の範囲にあるものを採用したことによって、引用発明に比して格別の効果が有るものとはいえない。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-09 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-10-08 
出願番号 特願2006-539574(P2006-539574)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小石 真弓
新居田 知生
発明の名称 潤滑油基油の製造方法  
代理人 河備 健二  

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