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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1285140
審判番号 不服2012-22512  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-14 
確定日 2014-02-27 
事件の表示 特願2007- 56232「生体情報測定用電極」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-212489〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年3月6日を出願日とする出願であって,平成24年5月9日付けで拒絶理由が通知され,同年7月13日付けで手続補正がなされ、同年8月8日付けで拒絶査定がなされ、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けにて手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに,平成25年8月27日付けで審尋がなされ,回答書が同年11月1日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「 【請求項1】
被検者の生体情報測定に供する電極部と、
前記電極部を覆うように設けられたゲル層と、前記ゲル層の周囲に設けられた粘着層とを有し、前記電極部と一体となって前記被検者の身体に貼付けられる貼付部と、
前記ゲル層及び前記粘着層に貼り付き、それらを被覆する被覆領域と、前記被覆領域から外延した非被覆領域と、前記非被覆領域の周縁部から前記被覆領域に向かって切込まれた切込部と、を有するフィルム部と、
を有し、
前記切込部は、前記フィルム部の縁部から始まり、前記非被覆領域及び前記被覆領域を横切って、前記フィルム部の他の縁部に到達しない、前記被覆領域の内部の前記粘着層によって粘着される位置で止まっている、
ことを特徴とする生体情報測定用電極。」
と補正された。

本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「貼付部」について、「前記電極本体に設けられ、前記電極本体を前記被検者の身体に貼付ける貼付部」を「前記電極部を覆うように設けられたゲル層と、前記ゲル層の周囲に設けられた粘着層とを有し、前記電極部と一体となって前記被検者の身体に貼付けられる貼付部」と限定し、「被覆領域」について「前記貼付部を被覆する被覆領域」を「前記ゲル層及び前記粘着層に貼り付き、それらを被覆する被覆領域」と限定し、「切込部」について「前記被覆領域の内部の位置で止まっている」を「前記フィルム部の他の縁部に到達しない、前記被覆領域の内部の前記粘着層によって粘着される位置で止まっている」と限定し、文章を整えた補正を含むものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-126145号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「心電計測方法及び生体用電極」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(1-ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、心電計測方法及びこの心電計測等に使用される生体電極に関する。」

(1-イ) 「【0023】図15は、図13、図14に示すものを従来例とする、この発明のさらに他の実施形態生体電極を示し、図15の(a)は断面図、図15の(b)は裏面図、図15の(c)は剥離シートの一部を剥がした状態を示す裏面図である。この実施形態生体電極は、電極31の周囲に非導電粘着シート33を配し、電極31を含んだ合成紙35を形成する一方、粘着シート33の離面に剥離シート36を貼着したものである。この点、図13に示した従来のものと同じである。この実施形態生体電極の特徴は、剥離シート36に円形状のカットライン36aを形成し、剥離シート36を導電部を含む粘着シート33の中心領域を覆うシート部36bと、非導電部である粘着シート33の周辺部領域を覆うシート部36cで構成している。
【0024】この生体電極を用いて計測する場合には、先ず導電部に取り付けられた剥離シート36bを剥がした〔図15の(c)参照〕状態で、生体に装着する。この場合、剥離シート36cはまだ残っている。この状態で心電確認しながら生体電極を動かし、心電波形が確実に得られる装着位置を決定する。装着位置を決定した後、非導電部の剥離シート36cを剥がして生体に貼り付けることで、非導電性の粘着シート33の粘着力を低下させずに電極31を生体に装着できる。」

(1-ウ) 「【0027】図18は、この発明のさらに他の実施形態生体電極を示す。ここに示す実施形態生体電極は、それぞれ図15、図16に示した生体電極において、剥離シート36c、あるいは剥離シート37にカットライン38a〔図18の(a)〕、ミシン目38b〔図18の(b)〕、あるいは切れ込み38c〔図18の(c)〕を設けたものである。これらのカットライン38a、またはミシン目38b、あるいは切れ込み38cを設けることにより、剥離シート36c、あるいは37を放射方向に切りやすくし、電極の貼り付け位置を決定した後に、生体から電極を剥がさなくても非導電部の剥離シートを剥がすことが可能となる。」

(1-エ) 図13?18には、非導電性粘着シート33を含んだ電極31が、それよりも大きい剥離シート36によって粘着面全体を覆われており、剥離シート36には、粘着面を覆っていないシート部分が存在している生体電極の構成が記載されている。

上記(1-ア)?(1-エ)の記載と第1?20図を参照すると,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「電極31の周囲に非導電粘着シート33を配し、電極31を含んだ合成紙35を形成する一方、非導電粘着シート33の離面に剥離シート36を貼着し、剥離シート36に円形状のカットライン36aを形成し、剥離シート36を導電部を含む粘着シート33の中心領域を覆うシート部36bと、非導電部である粘着シート33の周辺部領域を覆うシート部36cと、粘着面を覆っていないシート部分で構成し、さらに、周辺部領域を覆うシート部36cと粘着面を覆っていないシート部分にカットライン38aを設け、
導電部に取り付けられた剥離シート36bを剥がした状態で、生体に装着し、
電極の貼り付け位置を決定した後に、生体から電極を剥がさなくても非導電部の剥離シートを剥がすことが可能となる、心電計測等に使用される生体電極。」の発明(以下、「引用発明」という。)

3 対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「電極31」、「剥離シート36」、および「生体電極」は、それぞれ補正発明の「電極部」、「フィルム部」、および「生体情報測定用電極」に相当することは明らかである。

イ 引用発明の「非導電粘着シート33」は、「導電部を含む粘着シート33の中心領域」を覆うシート部36bと、非導電部である粘着シート33の周辺部領域」を含み、「導電部に取り付けられた剥離シート36bを剥がした状態で、生体に装着し電極の貼り付け位置を決定した後に、」「非導電部の剥離シートを剥がす」のであるから、剥がした後は、全体が粘着性のシートとなるので、補正発明の「前記電極部と一体となって前記被検者の身体に貼付けられる貼付部」に相当する

ウ 引用発明の「剥離シート36を導電部を含む粘着シート33の中心領域を覆うシート部36bと、非導電部である粘着シート33の周辺部領域を覆うシート部36cと、粘着面を覆っていないシート部分で構成し、さらに、周辺部領域を覆うシート部36cと粘着面を覆っていないシート部分にカットライン38aを設け」と補正発明の「前記ゲル層及び前記粘着層に貼り付き、それらを被覆する被覆領域と、前記被覆領域から外延した非被覆領域と、前記非被覆領域の周縁部から前記被覆領域に向かって切込まれた切込部と、を有するフィルム部」とは「前記貼付部を被覆する被覆領域と、前記被覆領域から外延した非被覆領域と、前記非被覆領域の周縁部から前記被覆領域に向かって切込まれた切込部と、を有するフィルム部」の点で共通する。

エ 補正発明の「切込部」は、請求項3に「前記切込部のうち、前記被覆領域の内部の位置で止まっている一端には、・・・、抜き穴が形成されている」と記載されていることから、抜き穴が形成されているものも含む。
そうすると、引用発明の「円形状のカットライン36a」は補正発明の抜き穴に相当するので、引用発明の「円形状のカットライン36aとカットライン38a」は、補正発明の「切込部」に相当する。
また、引用発明のカットライン38aが、「非導電部である粘着シート33の周辺部領域を覆うシート部36c」に設けられていることが、補正発明の「切込部は」、「被覆領域の内部の前記粘着層によって粘着される位置で止まっている」ことに相当する。
さらに、引用発明の「粘着面を覆っていないシート部分にカットライン38aを設け」ることが、補正発明の「切込部は」、「前記フィルム部の縁部から始まり、前記非被覆領域及び前記被覆領域を横切って、前記フィルム部の他の縁部に到達しない」ことに相当する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「被検者の生体情報測定に供する電極部と、
粘着層を有し、前記電極部と一体となって前記被検者の身体に貼付けられる貼付部と、
前記貼付部を被覆する被覆領域と、前記被覆領域から外延した非被覆領域と、前記非被覆領域の周縁部から前記被覆領域に向かって切込まれた切込部と、を有するフィルム部と、
を有し、
前記切込部は、前記フィルム部の縁部から始まり、前記非被覆領域及び前記被覆領域を横切って、前記フィルム部の他の縁部に到達しない、前記被覆領域の内部の前記粘着層によって粘着される位置で止まっている、
ことを特徴とする生体情報測定用電極。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点)
粘着層を有する貼付部について、補正発明は、「電極部を覆うように設けられたゲル層と、前記ゲル層の周囲に設けられた粘着層とを有し」ているのに対して、引用発明はゲル層を有しない点。

(1)相違点についての検討
本願出願前に頒布された刊行物である実願平5-20650号(実開平6-77703号)のCD-ROMには、「【0008】・・・図1において、1は使い捨て電極であり、・・・半固形の導電性粘着ゲル2、この導電性粘着ゲル2内に埋め込まれる・・・導電板3、及びこの導電板3に接続される・・・接続部4から構成される。・・・
【0012】
・・・使い捨て電極1aは、図1の実施例の使い捨て電極1に、・・・カバー10及び剥離シート11を被覆するようにしたものである。また、カバー10及び剥離シート11との接合面には、粘着材12が粘着され、・・・生体Mの所定の測定部位に使い捨て電極1aを取り付けるようにしたものである。」と記載され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-298589号公報には、「【0014】・・・電極板19と被検者10との間には電解質ゲル層24が設けられ、電極全体はこの電解質ゲル層24の周囲に設けられた粘着層25によって被検者10の胸部へ貼着されるようになっている。」と記載されており、「電極部を覆うように設けられたゲル層と、前記ゲル層の周囲に設けられた粘着層」を有す電極は周知技術である。
そして、電極部と生体との電気的及び物理的な接触を良好にすることは、正確な測定のための当然の技術課題である。
してみると、引用発明に上記周知技術を付加して、相違点に記載の補正発明の構成とすることは,十分動機付けがあり,阻害要因もなく,当業者が容易に想到するものといえる。

(2)そして,補正発明の作用効果は,刊行物1記載の事項および周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(3)したがって,補正発明は,引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?3に係る発明は,平成24年7月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
被検者の生体情報測定に供する電極本体と、
前記電極本体に設けられ、前記電極本体を前記被検者の身体に貼付ける貼付部と、
前記貼付部を被覆する被覆領域と、前記被覆領域から外延した非被覆領域と、前記非被覆領域の周縁部から前記被覆領域に向かって切込まれた切込部とを有するフィルム部と、
を有し、
前記切込部は、前記フィルム部の縁部から始まり、前記非被覆領域及び前記被覆領域を横切って、前記被覆領域の内部の位置で止まっている、
ことを特徴とする生体情報測定用電極。」(以下,「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は,補正発明の「前記電極部を覆うように設けられたゲル層と、前記ゲル層の周囲に設けられた粘着層とを有し、前記電極部と一体となって前記被検者の身体に貼付けられる貼付部」を「前記電極本体に設けられ、前記電極本体を前記被検者の身体に貼付ける貼付部」として「貼付部」を限定する構成を省き、さらに、
補正発明の「前記ゲル層及び前記粘着層に貼り付き、それらを被覆する被覆領域」を「前記貼付部を被覆する被覆領域」として「被覆領域」を限定する構成を省き、さらに、
補正発明の「前記フィルム部の他の縁部に到達しない、前記被覆領域の内部の前記粘着層によって粘着される位置で止まっている」を「前記被覆領域の内部の位置で止まっている」として「切込部」を限定する構成を省き、整えた文章を元にもどしたものに相当する。
そうすると,補正発明と引用発明との(相違点)は、本願発明が「ゲル層」の限定を省いたことにより本願発明と引用発明との相違点ではなくなるので、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3項に該当し、特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-17 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-10 
出願番号 特願2007-56232(P2007-56232)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門田 宏  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
森林 克郎
発明の名称 生体情報測定用電極  
代理人 鷲田 公一  

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