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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1285150
審判番号 不服2012-13982  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-23 
確定日 2014-03-18 
事件の表示 特願2007-531231「担保をリスク相殺に効率的に使用するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日国際公開、WO2006/031454、平成20年 4月24日国内公表、特表2008-512778、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願の手続の経緯は,以下のとおりである。
平成17年 8月31日 国際出願
(パリ条約による優先権主張2004年9月10日,米国)
平成20年 9月 1日 手続補正書提出
平成23年 7月21日付け 拒絶理由通知
平成24年 1月27日 意見書・手続補正書提出
平成24年 3月12日付け 拒絶査定
平成24年 7月23日 審判請求
平成25年 6月12日付け 拒絶理由通知
平成25年 9月18日 意見書・手続補正書提出

第2 特許請求の範囲

本願の特許請求の範囲は,平成25年9月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲により特定される次のとおりのものである。

<特許請求の範囲>
「【請求項1】
コンピュータに実装された、取引所で取引される複数の商品のポートフォリオに関する証拠金所要額を計算するためのシステムにおいて、前記システムは、
コンピュータで実行されるリスク分析エンジン及び、それと連結されるメモリを有し、
更に、前記リスク分析エンジンは、
前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記ポートフォリオを入力として受信し、それに基づいて初期証拠金所要額を計算するように作動する初期証拠金プロセッサ部と、
前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記証拠金所要額を満たすための担保として受け取られた少なくとも1つの資産を受信し、それに基づいて、前記少なくとも1つの資産の価値の変化と、前記ポートフォリオ内の前記複数の商品の内の少なくとも1つの価値の変化との間の相関を判定するように作動する相関プロセッサ部と、
前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記初期証拠金プロセッサ部と前記相関プロセッサ部とに接続されており、前記初期証拠金所要額と前記相関に基づいて相殺額を計算し、前記初期証拠金所要額と前記計算された相殺額に基づいて証拠金所要額を計算するように作動する証拠金調整プロセッサ部と
を有し、
前記相関は、少なくとも1つの実質的に同じ要因に基づいている、前記少なくとも1つの資産の価値の変化と前記複数の商品の内の少なくとも1つの価値の変化を含んでいる、
システム。
【請求項2】
前記証拠金調整プロセッサ部は、更に、前記相関に比例して前記証拠金所要額を調整するように作動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記証拠金所要額は、前記相関が大きくなるにつれて小さくなる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記相関は、前記ポートフォリオ内の前記複数の商品の内の少なくとも1つと実質的に同じである、前記少なくとも1つの資産を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの実質的に同じ要因は、金利を含んでいる、請求項1に記載のシステム。」

第3 引用文献

1.特開2003-6436号公報(以下,「引用文献1」という。)

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1には,次の事項が記載されている。

ア.「【0041】次に、注文処理装置Dが行う処理について説明する前に、証拠金の算出について説明する。現在、先物やオプションを扱う多くの取引所は、いわゆるグローバルスタンダードとなっているSPAN(Standard Portfolio ANalysis of Risk)証拠金制度を採用している。SPANは、シカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange:CME)が開発した証拠金計算方法である。SPANによれば、個別銘柄ごとに経済的リスクを評価するのではなく、ポートフォリオ全体の経済的リスクを評価する。
【0042】従って、SPANによれば、ポートフォリオ内のあるポジションによって損失が生じている場合であっても、他方のポジションによって利益が生じていれば、ポートフォリオ全体の経済的リスクは、損失と利益の度合いに応じて、個別ポジションごとに経済的リスクを評価する場合と比べて低めに評価される。なお、SPANで用いるパラメータは、SPANパラメータと呼ばれる。SPANパラメータには、プライス・スキャンレンジ、ボラティリティ・スキャンレンジ等がある。これらSPANパラメータは、取引所E等によって事前に定められている。
【0043】SPAN証拠金額の算出は、(1)スキャンリスク額の算出、(2)限月間割増額の算出、(3)銘柄グループ間割引額の算出、(4)売りオプション最低証拠金額の算出、(5)SPAN証拠金額の算出の順に行われる。以下、各金額の算出について順に説明する。なお、ポートフォリオが1つのポジションのみからなる場合、(2)及び(3)の手順は不要である。
(1)スキャンリスク額の算出
まず、原資産の価格の変動と原資産の価格の変動率の変動との関係に基づいて、16通りのシナリオを作り、それぞれについてポートフォリオ全体での損益額を計算する。16通りのシナリオのうち、最大の損失額をスキャンリスク額とする。この計算は、同じ銘柄グループごとに行う。銘柄グループとして、例えば、日経225グループ、日経300グループ、ハイテク指数グループ等が挙げられる。図3にスキャンリスクで用いられる16通りのシナリオを示す。
(2)限月間割増額の算出
同じ銘柄グループであっても、限月が異なる銘柄は、一般に価格及び価格の変動率が異なる。そこで、限月間の値動きの差によって生じる損失額である限月間割増額を算出する。この限月間割増額をスキャンリスク額に加算することにより、必要以上に相殺された損失額を修正する。同じ銘柄グループであっても限月が異なる銘柄として、例えば、日経225グループでいうと日経225先物9月限と12月限が挙げられる。
(3)銘柄グループ間割引額
異なる銘柄グループ間であっても、値動きに相関関係が高い場合がある。この場合の経済的リスクを相殺する銘柄グループ間割引額を算出する。銘柄グループ間割引額をスキャンリスク額から差し引く事により、必要以上に算出された損失額を修正する。
(4)売りオプション最低証拠金額
同じ銘柄グループ内で本源的価値から大きく値下がりしている(ディープ・アウト・オブ・ザ・マネー:DOTM)オプションがある場合、そのオプションを売ることによるリスクを考慮するために、DOTMとなっているオプションの売りについて、1枚あたりの最低証拠金額を定める。
(5)SPAN証拠金額の算出
{(スキャンリスク額)+(限月間割増額)-(銘柄グループ間割引額)}又は、売りオプション最低証拠金額のいずれか大きい方がその銘柄グループの証拠金額となる。上述の計算をポートフォリオ内の全銘柄グループについて行い、全ての銘柄グループの証拠金額を合計した結果が、そのポートフォリオ全体のSPAN証拠金額となる。」

前記ア.によれば,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

<引用発明>
「SPAN(Standard Portfolio ANalysis of Risk)証拠金制度における証拠金額を算出する技術であって,
SPAN証拠金制度は,先物やオプションを扱う取引所において採用され,
同じ銘柄グループごとに,原資産の価格の変動と原資産の価格の変動率の変動との関係に基づいて16通りのシナリオを作り,16通りのシナリオのうち最大の損失額をスキャンリスク額とし,
異なる銘柄グループ間の値動きに高い相関関係がある場合,経済的リスクを相殺する銘柄グループ間割引額を算出し,銘柄グループ間割引額をスキャンリスク額から差し引く事により、必要以上に算出された損失額を修正し,
修正された損失額に基づいて銘柄グループの証拠金額を計算し,この計算をポートフォリオ内の全銘柄グループについて行い,全ての銘柄グループの証拠金額を合計した結果を,そのポートフォリオ全体のSPAN証拠金額とし,
これにより,個別銘柄ごとに経済的リスクを評価するのではなく,ポートフォリオ全体の経済的リスクを評価し,ポートフォリオ内のあるポジションによって損失が生じたときに,他方のポジションによって利益が生じる場合には,経済的リスクを,個別ポジションごとに評価する場合と比べて低めに評価する,証拠金額を算出する技術。」

2.馬 文傑,「取引コストとオプション価格-SPANの導入によるインプライド・ボラティリティヘの影響」,2003年度日本ファイナンス学会第11回大会予稿集,日本ファイナンス学会,2003年6月7日,p.510-524(以下,「引用文献2」という。)

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,次の事項が記載されている。

イ.「1 イントロダクション
2000年10月30日より、大阪証券取引所は、日経225指数先物・オプションの証拠金計算方法をSPANに移行した。SPANとは、シカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Ex-change:CME)が1988年に開発したリスクベースの証拠金計算方法及びシステムのことで、Standard Portfolio Analysis of Riskの略である。それまでの計算方法は、個別銘柄のリスクを評価していたが、SPANにおいては、ポートフォリオ全体のリスクを評価する。従って、以前の証拠金算計算方法では考慮していない(1)先物・オプション間(同一原資産)、(2)異なる限月取引間(同一原資産)、(3)異なるオプション取引の銘柄間(同一原資産)、(4)原資産の異なる商品間のリスクの相殺が、SPAN導入後、できるようになった。その結果、市場参加者の取るポジションによっては、証拠金を大幅に節約することが可能となった。」(第510ページ第13行?第22行)

前記イ.によれば,引用文献2には次の事項が記載されているといえる。

<引用文献2の記載事項>
「証拠金計算システムであるSPAN(Standard Portfolio Analysis of Risk)において,
ポートフォリオ全体のリスクを評価し,先物・オプション間(同一原資産),異なる限月取引間(同一原資産),異なるオプション取引の銘柄間(同一原資産),原資産の異なる商品間のリスクを相殺することにより,証拠金を節約することが可能な,SPAN。」

3.特開2004-127260号公報(以下,「引用文献3」という。)

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,次の事項が記載されている。

ウ.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、証券会社などが顧客から株式の売買注文の委託を受けて株式市場でその注文を執行する証券売買のシステムに係り、特に、買い注文を行う資金に不足が生じた場合の資金融資システム及びその方法に関する。」

エ.「【0021】
図2に、この実施形態において、個別注文毎に、顧客に自動融資を行う場合の前に行う手続の流れを示す。
【0022】
ステップS201で証券会社がその端末においてネットワークを介して顧客のクライアント端末から株式売買取引の開始の申し込みを受けると、ステップS202において顧客はクライアント端末で取引口座を開設する。この取引口座開設の通知を証券会社端末により受けた証券会社はステップS203において、その端末あるいは別の通信手段により顧客との間で、個別に売買注文の申し込みがなされたら、顧客に代わってその注文を取引所に発注する旨の包括的な売買注文委託契約が締結される。それと共にステップS204で証券会社はその端末あるいは別の通信手段により顧客と、付随的に買付代金が不足して所定の条件を満たすときに融資を行う旨の包括的な契約を締結する。
【0023】
ステップS203及びステップS204の契約の締結は、ステップS202の口座開設のとき、証券会社と顧客の間で取り交わされる約款に記載されてなされてもよい。
【0024】
ステップS204で締結される買付代金の自動融資契約は、顧客から株式の買い注文が証券会社にあったときであって、上記取引口座にある金額が買い注文の金額に満たない場合に、証券会社から自動融資することを約する契約であり、その融資のもとになる担保の対象は顧客から上記証券会社が預かっている資産のすべてであること、更にそのような状況
における融資の限度額算出基準も明記する。これ以降、実際の株式の売買注文が顧客からある毎に、証券会社はその売買注文を株式市場に出して、約定しその注文の処理を行うことになる。」

オ.「【0029】
いま、この評価担保額は、証券会社において、注文処理サーバ13の預かり資産ファイル15b、株価情報ファイル15eに記憶されているデータを用いて、電子計算機(図示せず)により算定する。例えばその顧客が、株式Aを12000株、株式Bを10000株、外貨MMF200万円を保有しているとすると、注文処理サーバ13から株式市場14に株式A及びBの株価を問い合わせ、株価情報ファイル15eに記憶される。いまこれらの株価が各々500円、400円とすると、この顧客が有する株式Aは12000×500=600万円、株式Bは10000×400=400万円となる。このとき上記証券会社の電子計算機に接続された表示装置に表示される様子を図5に示した。
【0030】
これら資産の各々を株式及び外貨MMFの金額の小計に対して担保掛目を掛けて評価担保額を計算する。この担保掛目とは、資産の種類に応じて担保として評価する場合の値で、リスクを考慮した1より小さい正数であり、リスクが大きい資産ほど小さい値に設定する。ここでは、株式の場合0.7とし、外貨MMFの場合には0.8としてある。」

前記ウ.?オ.,及び,関連する図面の記載によれば,引用文献3には次の事項が記載されているといえる。

<引用文献3の記載事項>
「顧客から株式の買い注文が証券会社にあったときに,顧客の取引口座にある金額が買い注文の金額に満たない場合に,証券会社は,顧客から預かっている株式,外貨MMFなどの資産を担保に自動融資を行うこと。」

4.特開2003-30562号公報(以下,「引用文献4」という。)

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4には,次の事項が記載されている。

カ.「【従来の技術】従来、株式や債権等の有価証券を担保として資金を調達するためには、有価証券担保ローンを扱っている証券金融等の金融機関へ保有する有価証券を持ち込み、融資の申し込みを行う必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、顧客にとっては、有価証券担保ローンを扱っている証券金融等の金融機関へ保有する有価証券を持ち込み、融資の申し込みを行うことは、多大な時間と労力がかかる。
【0004】本発明は、以上のような事情を鑑みてなされたもので、顧客からの指示により、顧客が所有する有価証券を、その有価証券を管理する証券会社が担保として預かり、その担保評価額に応じて瞬時に融資を行うため、従来、顧客が有価証券担保ローンの申し込みに要していた多大な時間と労力を減少させることができる有価証券購入システム及び購入方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、有価証券を担保として新たな有価証券を購入することを可能とする有価証券購入システムにおいて、顧客が保有する有価証券のうち、顧客が選択した有価証券に担保を設定する担保処理手段と、前記担保処理がされた有価証券の担保評価額と同額の金額を株式買付可能額に加算する加算手段とを備えたことを特徴とする。」

前記カ.によれば,引用文献4には次の事項が記載されているといえる。

<引用文献4の記載事項>
「有価証券を担保として新たな有価証券を購入することを可能とする有価証券購入システムにおいて,
顧客が保有する有価証券のうち,顧客が選択した有価証券に担保を設定する担保処理手段と,前記担保処理がされた有価証券の担保評価額と同額の金額を株式買付可能額に加算する加算手段とを備えた有価証券購入システム。」

第4 対比・判断

1.請求項1

本願の請求項1に係る発明(以下,「請求項1発明」という。)と引用発明とを対比する。

・取引所におけるSPAN証拠金額の算出が,コンピュータに実装されたシステムによって行われることは技術常識である。このSPAN証拠金額の算出は,取引所で取引される先物やオプションのポートフォリオに対して証拠金額を算出するものである。
したがって,引用発明におけるSPAN証拠金額の算出システムは,請求項1発明の「コンピュータに実装された、取引所で取引される複数の商品のポートフォリオに関する証拠金所要額を計算するためのシステム」に相当する。

・コンピュータが,中央演算ユニット(CPU)のようなプロセッサ部を用いて計算を行い,処理データをメモリに記憶することは技術常識である。
したがって,引用発明における証拠金額を算出するプロセッサ部と,請求項1発明の「前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記ポートフォリオを入力として受信し、それに基づいて初期証拠金所要額を計算するように作動する初期証拠金プロセッサ部」は,「初期」の部分を除いて,「前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、ポートフォリオを入力として受信し、それに基づいて証拠金所要額を計算するように作動する証拠金プロセッサ部」の点で共通する。

・引用発明のSPAN証拠金額は,銘柄グループの損失額のような経済的リスクに基づいて算出されるから,これを算出するためのソフトウエアは,請求項1発明の「コンピュータで実行されるリスク分析エンジン」であるといえる。

・コンピュータがメモリを使用して計算を行うことも技術常識であるから,引用発明が,リスク分析エンジンに「連結されるメモリ」を有することも自明である。

したがって,引用発明と請求項1発明は次の点で一致する。

<一致点>
「コンピュータに実装された,取引所で取引される複数の商品のポートフォリオに関する証拠金所要額を計算するためのシステムにおいて,前記システムは,
コンピュータで実行されるリスク分析エンジン及び,それと連結されるメモリを有し,
更に,前記リスク分析エンジンは,
前記メモリに記憶され,前記コンピュータで実行される,前記ポートフォリオを入力として受信し,それに基づいて証拠金所要額を計算するように作動する証拠金プロセッサ部を有するシステム。」

そして,請求項1発明と引用発明は,次の点で相違する。
<相違点1>
請求項1発明は,「前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記証拠金所要額を満たすための担保として受け取られた少なくとも1つの資産を受信し、それに基づいて、前記少なくとも1つの資産の価値の変化と、前記ポートフォリオ内の前記複数の商品の内の少なくとも1つの価値の変化との間の相関を判定するように作動する相関プロセッサ部」を有し,その相関は「少なくとも1つの実質的に同じ要因に基づいている、前記少なくとも1つの資産の価値の変化と前記複数の商品の内の少なくとも1つの価値の変化を含んでいる」のに対し,引用発明は上記相関プロセッサ部を有しない点。

<相違点2>
証拠金プロセッサ部が,請求項1発明では,「初期」証拠金所要額を計算するように作動する「初期」証拠金プロセッサ部であり,「前記メモリに記憶され、前記コンピュータで実行される、前記初期証拠金プロセッサ部と前記相関プロセッサ部とに接続されており、前記初期証拠金所要額と前記相関に基づいて相殺額を計算し、前記初期証拠金所要額と前記計算された相殺額に基づいて証拠金所要額を計算するように作動する証拠金調整プロセッサ部」を有するのに対し,引用発明では,上記証拠金調整プロセッサ部を有しておらず,算出される証拠金額(証拠金所要額)は,証拠金調整プロセッサ部よって計算される証拠金所要額の基になる「初期」証拠金所要額ではない点。

次に,前記相違点1,2について検討する。
引用文献2ないし引用文献4には,いずれも,請求項1発明の相関プロセッサ部,証拠金調整プロセッサ部に相当する構成,機能が記載も示唆もされていない。
引用文献2には,SPANの証拠金計算システムが,ポートフォリオ全体のリスクに基づいて証拠金を計算するという,引用発明と同様のことが記載されているのみで,請求項1発明の相関プロセッサ部,証拠金調整プロセッサ部に相当する構成,機能は記載も示唆もされていない。
引用文献3及び引用文献4には,有価証券を担保にして新たな有価証券を購入するための資金を融資することが記載されているものの,この担保は融資の担保であって証拠金所要額を満たすための担保ではない。したがって,引用文献3,4には,証拠金所要額を満たすための担保となる資産の価値の変化と、ポートフォリオ内の商品の内の少なくとも1つの価値の変化との間の相関に基づいて証拠金所要額を調整することについて,何の記載も示唆もなく,引用発明に引用文献3,4に記載された融資の担保を組み合わせたとしても,請求項1発明の相関プロセッサ部や証拠金調整プロセッサ部を容易に想到し得ない。
よって,請求項1発明は,引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.請求項2?請求項5

本願の請求項2?請求項5に係る発明(以下,「請求項2発明」?「請求項5発明」という。)は,請求項1発明を更に限定したものである。
請求項1発明が,引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,更に限定をした請求項2発明?請求項5発明も,引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび

以上のとおり,請求項1発明ないし請求項5発明は,引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-04 
出願番号 特願2007-531231(P2007-531231)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 西山 昇
須田 勝巳
発明の名称 担保をリスク相殺に効率的に使用するためのシステム及び方法  
代理人 伊藤 茂  

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