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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1285155
審判番号 不服2011-19804  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-13 
確定日 2014-03-17 
事件の表示 特願2008-532963「改善された衣類のような特徴を有する吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日国際公開、WO2007/036907、平成21年 3月12日国内公表、特表2009-509619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、2006年9月28日(パリ条約による優先権主張2005年9月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成22年6月1日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年5月9日付けで拒絶の査定がなされ、それに対して同年9月13日付けで拒絶の査定を不服とする審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出された。その後、当審の平成24年6月11日に当審から拒絶の理由が通知され、それに対して、同年9月25日に意見書及び手続補正書が提出された。
本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明は、平成24年9月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲、及び、願書に添付した明細書、図面の記載からみて、その請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
シャーシに耳部が個別の構成要素として付着される複数片構成の使い捨て吸収性物品(multi piece diaper)において、
a)前側腰部縁部を備える前側腰部区域(36)、後側腰部縁部を備える後側腰部区域(38)、前記前側腰部区域と後側腰部区域との間の股部区域、及び1対の対向する長手方向縁部(12)を有し、
i) 液体透過性トップシート(24)と、
ii) バックシート(26)と、
iii)前記トップシート(24)と前記バックシート(26)との間に配置される吸収性コア(28)とを含む、シャーシ(20)と、
b)上側面方向縁部(43c)、近位縁(43a)、末端縁(43b)を有し、少なくとも一部分が前記後側腰部区域(38)におけるシャーシ(22)の長手方向縁部(12)から側面方向に外に向かって伸長し、個別要素として形成され、シャーシ(22)の後側腰部区域と結合される後耳部(42)と、
c)締着装置(50)であって、
i) 前記耳部(42)の末端縁(43b)近傍に配置される嵌合部材(52)と、
ii)前記シャーシ(20)の前記前側腰部区域(36)に配置される受入部材(54)と、を含む締着装置(50)と、
を有し、前記耳部(42)は、前記嵌合部材(52)が前記受入部材(54)と嵌合する時に、前側腰部区域(36)と後側腰部区域(38)を相互に接続し、
前記前側腰部区域(36)と後側腰部区域(38)が計量試験方法及び計量測定手順に従って相互に接続したときに、前記耳部(42)は次のように前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)とを有し、
1. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は12mm以下であり、
2. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部全体幅(B)に対して比率が0.30以下であり、
3. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部中点幅(X) に対して比率が0.30以下であり、
前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)は計量試験方法及び計量測定手順によって定められる、複数片構成の使い捨て吸収性物品(20)。」

第2 引用例
これに対して、当審の平成24年6月11日付けの拒絶の理由に引用された本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表平10-506030号公報(以下「刊行物1」という。)、特表平11-502427号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開2003-153955号公報(以下、「刊行物4」という。)、国際公開第2005/77313号(以下、「刊行物6」という。)、特表2000-504975号公報(以下、「刊行物7」という。)の記載内容は以下のとおりである。
1 刊行物1
(1)刊行物1記載の事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。
ア 第4ページ第3行?第7行
「 発明の分野
本発明は、使い捨ておむつ、失禁用パンツ、下着吸収材インサート、婦人用生理用品のような吸収材製品に関し、さらに詳細には、着用者に適合するために吸収材製品の収容特性及び適合性を改良する障壁カフを提供するために曲がるサイドパネルを有する吸収材製品に関する。」
イ 第9ページ第8行?第10ページ第22行
「第1図は、広がって収縮されない状態(すなわち、すべてが弾性誘導収縮プルアウト)での本発明のおむつ20の平面図であり、おむつの構造をさらにはっきりと示すために構造の一部が破断され、着用者に接触するおむつ20の部分が見る者に向いている。おむつ20は、(第1図で見る者に面する)身体に面する面40と、身体に面する表面に対向する下着に面する表面41と、前方ウエスト領域22と、後方ウエスト領域24と、クロッチ領域26と、長手方向の縁部が参照符号30で、また端縁が参照符号32で指定されるおむつ20の外縁によって定義される周縁とを有する。ウエスト領域は着用したときに、着用者の腰を包囲するおむつ20の部分を有する。このウエスト領域は、それらが着用者のウエスト領域の周りでギャザーを形成するように弾性エレメントを有する。クロッチ領域26は、前方のウエスト領域22と後方のウエスト領域24との間に配置されたおむつ20の部分であり、着用したときに着用者の足の間に配置され、着用者の下胴をカバーする。またおむつ20は、参照符号34で指定された横方向の中心線と、参照符号36で指定された長手方向の中心線を有する。
おむつ20は、液体透過性トップシート38と、(第2図及び第3図に示す)内面23及び内面23とは反対の外面28を有する液体不透過性バックシート42と、側縁50及びウエスト縁部52である側縁を有する吸収コア44と、各々が近位縁64、遠位縁66、近位縁64と遠位縁66との中間の折曲線65を有するサイドパネル62と、第1の端部72と、第2の端部74と、第2のセグメント92(及び可能である場合には、第4図に示す第3のセグメント)、身体に面する面40から遠位縁66を離す弾性部材77のようなスペーサ手段76と、おむつ20のトップシート38上に第1のセグメントの少なくとも一部を固定する第1の閉鎖手段78と前方ウエスト領域22の第1のセグメント90に第2のセグメント92の少なくとも一部を固定する第2の閉鎖手段79とを有する。この構成において、折曲線65は近位縁64と遠位縁66の双方の内側に配置されている。(ここに使用するように、用語の“内側”はおむつ20の長手方向の中心線36に向かう方向として定義される。用語“外側”は、おむつ20の長手方向中心線36から離れる方向として定義される。)
バックシート42が吸収コア44の長さと幅の寸法より大きい寸法を有するおむつ20の好ましい実施例において、バックシート42は、吸収コア44の縁部を越えて伸び、それによっておむつ20の周縁及びサイドパネル62を形成する。周囲は外周または、言い換えれば、おむつ20の縁部を形成する。周囲は長手方向の縁部30及び端縁32を有する。第1図に示すように、トップシート38は、おむつ20の端縁32並びに長手方向の縁部30に沿ってバックシート42に隣接している。各サイドパネル62の遠位縁66は、後方のウエスト領域24におむつ20の長手方向の縁部30を画定している。遠位縁66は、クロッチ領域26または後方のウエスト領域24のおむつ20の下の部材には固定されない。
第2図は、第1図の線2-2に沿って切った部分断面図であり、トップシート38と、バックシート42と、吸収コア44と、スペーサ手段76とを有する好ましい構造を示している。吸収コア44は、トップシート38とバックシート42との間に配置され、トップシート38及びバックシート42は、吸収コア44の側縁50を越えて伸びており、サイドパネル62を形成する。」
ウ 第22ページ第15行?末行
「第5図は、後方のウエスト領域24のサイドパネル62の遠位縁から横方向外側に伸びているイヤフラップ54を有する本発明の1つの他の実施例を示す。イヤフラップ54は、前方ウエスト領域22及び後方ウエスト領域24に沿って着用者の腰を包囲する構造を提供する。各イヤフラップ54は、近位縁51及び遠位縁53を有する。好ましい実施例において、少なくとも1つのイヤフラップ54は、サイドパネル62の各々に結合される。イヤフラップ54の近位縁51は、サイドパネル62の遠位縁66に結合されることが好ましい。イヤフラップ54の近位縁51は、バックシート42の下着に面する面41に、またはトップシート38の身体に面する面40に、またはトップシート38とバックシート42の間に結合される。イヤフラップは、この技術分野で公知の手段によってサイドパネル62に接続され、例えば、イヤフラップ54は、加熱または非加熱接着剤、加熱結合、圧力結合、超音波結合、動的機械的結合、またはこの技術分野で公知の他の方法を使用してサイドパネル62に連続的にまたは間断的に結合される。」
エ 第24ページ第4行?第8行
「さらに、イヤフラップ54はそれらの遠位縁53に隣接して配置された固定部材56を有することが好ましい。
固定装置56は機械的な固定具、フック、及びループタイプの固定具、圧力完納接着剤及び接着材料のようなこの技術分野でよく知られている多数の固定部材を有するが、」
オ 第24ページ第17行?第26行
「イヤフラップ54を有する本発明の実施例は、次のように着用者に適合することが好ましい。サイドパネル54は、パッキングのために折られた形状(図示せず)から元のように折り戻され、後方のウエスト領域のサイドパネルの遠位縁がサイドパネルの近位縁の外側に配置され、それによってサイドパネルを傾けるように反対側に側方外側に引かれる。後方のウエスト領域24は、着用者の背中の下に配置され、おむつの残りは着用者の足の間に引かれる。前方のウエスト領域22は着用者の腰の前方にわたって配置される。イヤフラップ54は、着用者のウエストの周りを包囲し、サイドパネルは、着用者の寸法及び形状に適合するように張力がかけられ、伸長される。イヤフラップ54はイヤパネル54の遠位縁53に隣接するように配置された固定部材56によって前方のウエスト領域22に固定される。」
カ ここで、摘記事項イの「おむつ20は、・・・長手方向の縁部が参照符号30で、また端縁が参照符号32で指定されるおむつ20の外縁によって定義される周縁とを有する。」の記載から、長手方向の縁部30、端縁32で囲まれる部分がおむつ20の周縁であるから、この部分を「シャーシ」と呼ぶこととする。また、摘記事項ウの「第5図は、後方のウエスト領域24のサイドパネル62の遠位縁から横方向外側に伸びているイヤフラップ54を有する本発明の1つの他の実施例を示す。イヤフラップ54は、前方ウエスト領域22及び後方ウエスト領域24に沿って着用者の腰を包囲する構造を提供する。各イヤフラップ54は、近位縁51及び遠位縁53を有する。好ましい実施例において、少なくとも1つのイヤフラップ54は、サイドパネル62の各々に結合される。」の記載から、図面の図5に示される実施例において、2対のイヤフラップ54、54は、おむつ20に結合されているものと考えることができる。
また、図面の図5を参照すると、クロッチ領域26が前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24の間にあることが見て取れる。また、イヤフラップ54、54に注目すると、イヤフラップ54、54は、略長方形であって、そのうちの1対の対向する辺が近位縁51、遠位縁53であるから、残りの対向する辺のうち、図5の上側の端縁32に近い辺側が上側面方向縁部となること、及び、イヤフラップ54、54は、シャーシの後方ウエスト領域24に結合され、縁部30から側面方向に外に向かって伸長していることは明らかである。
さらに、摘記事項オの「イヤフラップ54はイヤパネル54の遠位縁53に隣接するように配置された固定部材56によって前方のウエスト領域22に固定される。」の記載から、前方ウエスト領域22には、固定部材56と結合する被固定部材が設けられており、両者を結合すると、前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24とが相互に接続されることは明らかである。
(2)刊行物1記載の発明
刊行物1記載の事項を、アないしオの摘記事項、及びカの認定事項をもとに、技術常識を考慮しながら、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。
「シャーシにイヤフラップ54、54が結合される使い捨ておむつ20において、
a)端縁32を備える前方ウエスト領域22、端縁32を備える後方ウエスト領域24、前記前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24との間のクロッチ領域26、及び1対の対向する縁部30を有し、
i)液体透過性トップシート38と、
ii)液体不透過性バックシート42と、
iii)前記液体透過性トップシート38と前記液体不透過性バックシート42との間に配置される吸収コア44とを含む、シャーシと、
b)上側面方向縁部、近位縁51、遠位縁53を有し、後方ウエスト領域24におけるシャーシの縁部30から側面方向に外に向かって伸長し、シャーシの後方ウエスト領域24と結合されるイヤフラップ54、54と、
c)i)前記イヤフラップ54、54の遠位縁53、53に隣接して配置される固定部材56、56と、
ii)前記シャーシの前記前方ウエスト領域22に配置される被固定部材とを有し、前記イヤフラップ54、54は、前記固定部材56、56が前記被固定部材と結合する時に、前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24を相互に接続する、使い捨ておむつ20。」(以下、「引用発明」という。)
2 刊行物2
(1)刊行物2記載の事項
刊行物2には以下の事項が記載されている。
ア 第7ページ第3行?第6行
「発明の属する技術分野
本発明は、おむつ、子供用ケア製品、女性用生理製品、失禁用下着などのような伸縮可能吸収性下着に関する。特に、本発明は、改良された横方向の伸び特性を備えたウェストバンド部を有する使い捨て吸収性下着に関する。」
イ 第11ページ第7行?第12ページ第8行
「図1?3を参照すると、使い捨ておむつ20のような本発明の物品が、全ての弾性ギャザーを伸ばしきって、取り除いた、十分に延びきった状態で示されている。おむつ20は、長手方向の両側の側縁110と、第1および第2端縁106および107を有する。端縁106および107は、側縁110の間で横方向に延びる。おむつ20は、後方ウェストバンド部40のような第1ウェストバンド部と、前方ウェストバンド部38のような第2ウェストバンド部と、第1および第2ウェストバンド部を相互接続する中間部42を備える。後方ウェストバンド部40は、第1端縁106に近接して、そこから内方に延びる。同様に、前方ウェストバンド部38は第2端縁107に近接して、そこから内方に延びる。ここで用いる用語「内方に」は、物品の長手方向および横方向の中心に関する、部材の相対的な位置を示す。着用者がこの物品を着けるとき、中間部分42は、着用者の脚の間に配置される物品の部分にほぼ相当する。
おむつ20は、バックシート層22、バックシート層上に配置された吸収体26、第1ウェストバンド部40の側縁110に結合されたファスナタブ44、および第1ウェストバンド部において作動的にバックシート層に結合された一対の横方向に分かれた弾性サイド部89を備える。少なくとも、第1および第2ウェストバンド部40および38の一部が、着用者のウェスト回りにフィットして互いに結合するウェストバンド部の部分を備える周状ウェストゾーンを形成するように共に機能する。特に、このおむつは、第1ウェストバンド部40にある第1ファスナパネルと、第2ウェストバンド部38にある第2ファスナパネルを形成する。第1および第2ファスナパネルは、矩形ボックス200および202として図1に例示されている。おむつ20を最初につけたときに素晴らしい着心地を得て、使用中の着用者の動きに適応するために、第1ファスナパネル200が、特別な横方向の伸び特性を有することが望ましいことが発見されてきた。特に、おむつ20の構成成分が、望ましく選択されて構成され、第1ファスナパネル200が、一連の伸長力、収縮力および力の変化の割合の点からみて特徴づけられる空間的に不連続な横方向の弾性を供給する。第1ファスナパネル200の横方向弾性特性は、以下に詳細に説明されている。
本発明の様々な構成においては、おむつ20が、バックシート層22に面する関係で重ねられた液体透過性トップシート層24と、それらの間に挟まれた吸収体26を備えることができる。」
ウ 第22ページ第23行?第23ページ第2行
「再取付可能な接着剤テープシステムを供給するために、おむつ20は、テープファスナ44の接着材取付を受けるターゲットゾーンを与える副ランドゾーンパッチ46を備えることができる。この本発明の例示された具体例においては、ランドゾーンパッチ46が、バックシート22の外側の面に位置し、おむつの第2前方ウェストバンド部38上に配置される。ランドゾーンパッチ46は、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエステル等の適切な材料で生成され、例えばテープファスナであるファスナタブ44の固定接着を受け入れるように構成され配置される。」
エ 第23ページ第10行?第24ページ第24行
「本発明の様々な具体例においては、テープファスナ44が、ウェストバンド38および40のいずれか又は両方の横方向端領域116および118のいずれか又は両方に位置づけられる。示された具体例は、後方ウェストバンド40の境界側縁に位置付けられたテープファスナを有する。このテープファスナ44は、図1および5に示されるように、バックシート層22に直接的に、または間接的に結合される。
前述したように、おむつ20が、バックシート22層に作動的に結合される一対の横方向に離れた弾性サイド部89を与えられる。このサイド部89は、おむつ20の第1ファスナパネル200に、横方向の弾性を与え、特にテープファスナ44に空間的に非常に近くで横方向の弾性を与える。この例示された具体例においては、サイド部89の各々が、別のサイドパネル部材90で形成される。
図1および5を続いて参照すると、単にサイドパネル90と呼ばれる各サイドパネル部材90が、この例示された具体例においては、後方ウェストバンド部40のようなバックシート22の少なくとも1つのウェストバンド部の横方向の両端部から延び、物品の境界サイド部を供給する。さらに、各サイドパネルは、横方向に延びる境界ウェストバンド縁106から、おむつの対応する脚開口部のほとんどその位置まで広がる。例えば、おむつ20は、長手方向に延びる側縁領域110の示された対の指定された中間部分により形成される横方向両側の脚開口部の対を有する。さらに、このサイドパネル部材90は、ファスナタブ44の間に全体として位置するように、おむつ20の長さ方向86に沿って配置されるのが望ましい。
本発明の様々な構成においては、サイドパネル90が、選択されたおむつの部材で統合的に形成されてもよい。例えば、サイドパネル90は、バックシート層22を供給する材料層から統合的に形成されることができ、またトップシート24を供給するために用いられる材料から統合的に形成されてもよい(図17)。別の構成においては、サイドパネル90が、バックシート22、またはトップシート24に結合される別の部材であったり、バックシートとトップシートの間の別の部材であったり、またそれらの組合せたものであってもよい。このサイドパネル部材90は、2つの別個の部材であるのが望ましく、第1端縁106の近くのおむつの横方向の幅の少なくとも約50%の横方向の距離だけ空間的に離され、特におむつの横方向の幅の少なくとも約82%の横方向の距離だけ離され、さらに、所望の性能を得るためには、おむつの横方向の幅の少なくとも約87%の距離だけ離されるのが望ましい。
本発明の特別な態様においては、サイドパネル90のそれぞれが、おむつ物品の選択された前方及び/又は後方ウェストバンド部に適切に組み立てられ取りつけられる材料の別の部分から形成されてもよい。本発明の例示された具体例においては、例えば、サイドパネル90が、バックシート22の後方ウェストバンド部40に取り付けられ、物品のバックシートおよびトップシート部材の一方または両方に作動的に取り付けられることができる。このサイドパネルは、おむつの一対の両側ウェストフラップ部を形成するように横方向に延び、接着結合、熱結合、超音波結合、クリップ、ステープル、縫製や、これらを組合せたものなどの適切な結合手段で取り付けられる。」
オ 第30ページ第27行?第31ページ第9行
「本発明の特別な構成においては、応力ビーム部98が、サイドパネル90の実質的な長さ方向に沿って延び、物品の横方向に延びるウェストバンド縁106に実質的に隣接する。例示された具体例においては、ファスナタブ44が、応力ビーム部98の長さ方向に沿ってほぼ中心に位置される。代わりに、ファスナタブ44の位置は、応力ビーム部98の長さ方向の中心から選択された距離だけ、おむつの長手方向にオフセットされてもよい。本発明の特別な態様においては、ファスナタブ44が、およそ6cm以下の間隔120だけウェストバンド縁106から離される。この間隔は、およそ4cm以下であってもよく、改良された性能を得るためには、およそ2cm以下となる場合もある。本発明の別の態様においては、ファスナタブ44の縁が、改良された性能を与えるために、ウェストバンド縁106に実質的に一致するように配置されてもよい。」
カ 第32ページ第17行?第21行
「例示された具体例においては、ファスナテープタブ44のようなファスナタブが、サイドパネル90のそれぞれに作動的に結合される。ファスナタブ44がパネル90の境界の側縁を交差する接合部が、比較的幅の狭いパネル接合領域80を供給する。この接合は、接着剤結合、熱結合、超音波結合、クリップ、ステープル、縫製のような適切な取付手段によって達成されることができる。」
(2)刊行物2記載の事項
刊行物2記載の事項について、図面の図1及び上記アないしカの摘記事項を参照し、技術常識を考慮しながら、本願発明に照らして整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。
「サイドパネル90のそれぞれが、おむつ物品の後方ウェストバンド部40に取りつけられた使い捨ておむつ20において、
第2端縁107に近接する前方ウェストバンド部38、第1端縁106に近接する後方ウェストバンド部40、前方ウェストバンド部38と後方ウェストバンド部40との間の中間部42を有し、
i)液体透過性トップシート層24と、ii)バックシート層22と、iii)前記トップシート層24とバックシート層22との間に挟まれた吸収体26を備え、
サイドパネル90が、バックシート層22の後方ウェストバンド部40に取り付けられ、ファスナタブ44がサイドパネル90に作動的に結合されたものにおいて、
ファスナタブ44の縁が、改良された性能を与えるために、ウェストバンド縁である第1端縁106に実質的に一致するように配置されている、使い捨ておむつ20。」(以下、「刊行物2記載事項」という。)
3 刊行物4
(1)刊行物4記載の事項
刊行物4には以下の事項が記載されている。
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、排泄物を吸収、保持する開放型の使い捨ておむつに関する。」
イ 段落【0012】?【0015】
「図1,2は、一方のテープファスナ14の自由端部14bをフラップ12の外側へ折り返した状態で示すおむつ1の部分破断斜視図と、図1のA-A線端面図とであり、図3は、着用状態で示すおむつ1の斜視図である。図1では、横方向を矢印Xで示し、縦方向を矢印Yで示す。図3では、着用者22を二点鎖線で示す。なお、表裏面シート2,3や防漏シート5の内面とは、コア4に対向する面をいい、それらシート2,3,5の外面とは、コア4に非対向の面をいう。
おむつ1は、肌当接側に位置する透液性の表面シート2と、肌非当接側に位置する実質的に不透液性の裏面シート3と、表裏シート2,3の間に介在してそれらシート2,3のうちの少なくとも一方の内面に固着された吸液性コア4とを主要な構成部材とする。おむつ1は、それら部材の他に、肌当接側に位置する実質的に不透液性の防漏シート5を有する。
おむつ1は、縦方向に前胴周り域6および後胴周り域8と、それら胴周り域6,8の間に位置する股下域7とを備え、横方向へ延びる両端部9と、縦方向へ延びる両側部10とを有する。前後胴周り域6,8の両側部10には、横方向外方へ延びるフラップ11,12が取り付けられている。
フラップ11,12は、横方向に内端部11a,12aおよび外端部11c,12cと、それら端部11a,12a,11c,12cの間に位置する中央部11b,12bとを有する。フラップ11,12では、その内端部11a,12aが前後胴周り域6,8の両側部10に固着されている。前胴周り域6のフラップ11は、実質的に非伸縮性の繊維不織布から形成されている。後胴周り域8のフラップ12は、横方向と縦方向とヘ弾性的な伸縮性を有する繊維不織布から形成さている。」
ウ 段落【0017】
「テープファスナ14は、フラップ12の外端部12cに固着された固定端部14aと、固定端部14aから横方向外方へ延びる自由端部14bとを有する。自由端部14bには、メカニカルファスナのうちのフック部材15が取り付けられている。テープファスナ14では、自由端部14bがおむつ1の内側に向かって折曲され、自由端部14bがフック部材15を介してフラップ12に仮着されている。前胴周り域6における裏面シート3の外面には、テープファスナ14を着脱可能に止着する横方向へ長い矩形のターゲットテープ16(被止着部)が取り付けられている。ターゲットテープ16は、メカニカルファスナのうちのループ部材から形成されている。」
エ ここで、図面の図1を参照すると、フラップ11は、その長手方向端縁が、おむつ1の前胴周り域6の長手方向端縁とほぼ一直線になるように、また、フラップ12は、その長手方向端縁が、おむつ1の後胴周り域8の長手方向端縁とほぼ一直線になるように、それぞれ取り付けられているのが見て取れる。図3を参照すると、着用状態において、フラップ11、12の上端縁と、前胴周り域6、後胴周り域8の上端縁の位置が同じ高さであることが見て取れる。
(2)刊行物4記載の事項
刊行物4記載の事項について、図面の図1ないし3及び上記アないしウの摘記事項、及びエの認定事項を参照し、技術常識を考慮しながら、本願発明に照らして整理すると、刊行物4には以下の事項が記載されていると認める。
「フラップ11、12が前胴周り域6、後胴周り域8の両側部10に固着された使い捨ておむつ1において、
前胴周り域6、後胴周り域8、前胴周り域6と後胴周り域8との間に位置する股下域7を有し、
i)表面シート2と、ii)裏面シート3と、iii)表面シート2と裏面シート3との間に介在した吸液性コア4とを含み、
前胴周り域6、後胴周り域8の両側部10に固着されるフラップ11、12と、
後胴周り域8の両側部10に固着されたフラップ12の外端部12cに固着されたテープファスナ14を有し、
前胴周り域6と後胴周り域8とをフラップ11、12、及びテープファスナ14で接続した時に、前胴周り域6、後胴周り域8、フラップ11、12に上端縁の高さがほぼ同じになるように形成されている、使い捨ておむつ1。」(以下、「刊行物4記載事項」という。)
4 刊行物6
(1)刊行物6記載の事項
刊行物6には以下の事項が記載されている。なお、括弧内は、翻訳文を示す。
ア 第1ページ第3行?第6行
「The present invention relates to disposable absorbent articles and in particular disposable pant-like garments. More particularly, the present invention relates to a pre-fastened disposable pant like garment having improved fastener systems which provide adjustable, versatile, and refastenable, disposable products.」
(本発明は使い捨て吸収性物品に関し、特に使い捨てパンツ様衣類に関する。より詳細には、本発明は、調整可能で、汎用性があり、再締結可能な使い捨て製品を提供する、改良型締結装置を有する事前締結型の使い捨てパンツ様衣類に関する。)
イ 第8ページ第10行?第9ページ第8行
「 Fig. 1 shows an example of a basic pant like garment of the present invention. The garment 20 shown in Fig. 1 generally comprises a main absorbent portion 30 and a pair of side areas 40 and 50. The main absorbent portion 30 taken in combination with the side portions 40 and 50 generally define a waist opening 80 and a pair of leg openings 90 and 100. Each of the side areas 40 and 50 may be stretchable, including elastically stretchable. Additionally, each of the side areas 40 and 50 may be provided with a refastenability feature allowing the side areas 40 and 50 to be opened and re-closed along either or both of side attachment areas 60 and 70. As shown in Fig. 1 when the side areas 40 and 50 are each closed along respective side attachment areas 60 and 70, the waist opening 80 is complete and the garment 20 is said to be in a closed or pant-like configuration.
Fig. 2 shows the garment of Fig. 1 in which the right side attachment area has been opened. When one or both of the side areas 50 and 60 is so opened, the garment 20 is said to be an open configuration. The respective side portions 50 and 60 of the garment 20 may be either separately attached to the main absorbent portion 30 or may be made integrally with the main absorbent portion 30.
Fig. 3 shows the garment of Fig. 1 and Fig. 2 laid flat in its open uncontracted state. Garment 20 is generally composed of a main absorbent portion 30 and side areas. As shown in Fig. 3, when the garment 20 is open and unfolded, the side areas are separated into front side portions 42 and 45, and rear side portions 52 and 55.
The main absorbent portion 30 generally includes a pair of longitudinal edges, left edge 160, and right edge 150. The main absorbent portion also includes a pair of transverse ends, front waist region 144, and rear waist region 146. These waist regions may be provided with elastic gathering features, padding features, containment features, or any other features typically provided in the waist regions of disposable absorbent articles of this type, a wide variety of which are known in the art. An example of such a feature is shown in Fig. 3 as waist feature 140. The area of the main absorbent portion 30 between the described waist regions is typically referred to as the crotch region 170. The crotch region 170 is that portion of the garment 20 which, when the garment 20 is worn, is generally positioned between the legs of the wearer. As with the waist regions, the crotch region 170 may be provided with any of the features typically provided on disposable absorbent garments of this type. Examples of such features typically employed in the art are leg elastic, barrier containment structures, graphics, notches for fit or appearance, etc.
The main absorbent portion 30 of the garment 20 typically comprises at least a liquid pervious topsheet 130, a liquid impervious backsheet 120, and at least a portion of an absorbent core 110 encased between the topsheet 130 and the backsheet 120.」
(図1は、本発明の基本的なパンツ様衣類の一例を示す。図1に示す衣類20は、一般に、主要吸収性部分30と一対の側部領域40及び50とを備える。側部40及び50と組み合わせた主要吸収性部分30は、一般に、腰部開口部80と一対の脚部開口部90及び100とを画定する。側部領域40及び50の各々は、弾性的な伸縮性を含む伸縮性であってもよい。更に、側部領域40及び50の各々は、再締結可能な機構を備えてもよく、この再締結可能な機構により、側部領域40及び50を、側部付着領域60及び70のいずれか、又は両方に沿って開ける及び再び閉じることができる。図1に示すように、側部領域40及び50はそれぞれ、各々の側部付着領域60及び70に沿って閉じられ、腰部開口部80が完成し、衣類20は閉じた形状又はパンツ様形状をなしていると言える。
図2は、右側の付着領域が開けられた、図1の衣類を示す。側部領域50及び60の片方又は両方がそのように開けられているとき、衣類20は開いた形状であると言える。衣類20の各々の側部50及び60は、主要吸収性部分30に別個に付着されてもよく、又は主要吸収性部分30と一体的に作製されてもよい。
図3は、開いた非収縮状態で平らに置かれている図1及び図2の衣類を示す。衣類20は、一般に、主要吸収性部分30と側部領域とからなる。図3に示すように、衣類20が開けられ、展開されているとき、側部領域は前方側部42及び45と、後方側部52及び55とに分離される。
主要吸収性部分30は、一般に、一対の長手方向縁部、即ち、左縁部160及び右縁部150を含む。主要吸収性部分はまた、一対の横方向末端部、即ち、前方腰部区域144及び後方腰部区域146を含む。これらの腰部区域は、弾性ギャザリング機構、パディング機構、収容機構、又はこのタイプの使い捨て吸収性物品の腰部区域に典型的に設けられるその他の機構を備えてもよく、多種多様な機構が当該技術分野において周知である。このような機構の例は、図3に腰部機構140として示されている。前述の腰部区域間の主要吸収性部分30の領域は、典型的には股領域170と称される。股領域170は、衣類20を着用したときに、着用者の脚の間にほぼ位置する衣類20の部分である。腰部区域と同様に、股領域170は、このタイプの使い捨て吸収性物品に典型的に設けられる機構のいずれかを備えてもよい。当該技術分野において典型的に使用されるこのような機構の例は、レッグ弾性体、バリア収容構造体、グラフィック、フィット又は外観用切欠きなどである。
衣類20の主要吸収性部分30は、典型的には、少なくとも液体透過性トップシート130と、液体不透過性バックシート120と、トップシート130及びバックシート120の間に入れられた吸収性コア110の少なくとも一部分とを備える。)
ウ 第12ページ第12行?第32行
「As shown in Figs. 1-3, in addition to the main absorbent portion 30, the garment 20 generally comprises a pair of side areas such as left side area 40 and right side area 50. As previously noted the side areas may be integral with the main absorbent portion 30 (that is they may be continuous extensions of one or more of the layers of the main absorbent portion 30) or they may be separately attached to the main absorbent portion 30. Alternatively, the side areas may be made of multiple components or layers some of which are discrete (either attached separately to the main absorbent portion or separated therefrom by a gap) and some of which are continuous. An example of this type of construction is a garment provided with an outer nonwoven cover which completely covers all areas of the garment 20 including the side areas 40 and 50 and the main absorbent portion 30.
The side areas 40 and 50 together with the main absorbent portion form a pant like garment 20 having a waist opening 80 and a pair of leg openings 90 and 100, when said pant like garment is in a closed configuration. As shown in Figs. 1-3 the front side portions are disposed generally transversely outward from said longitudinal edges 150 and 160 of said main absorbent portion 30 at or near the front waist region 144. Similarly the rear side portions 45 and 55 are disposed generally transversely outward from said longitudinal edges 150 and 160 of said main absorbent portion 30 at or near the rear waist region 146. In this manner the respective waist regions together with the side portions (both front and rear) form a complete waist opening when the front and rear waist portions are joined such as at attachment areas 60 and 70. Similarly, the main absorbent portion 30 and the side portions in combination also form leg openings 90 and 100 in a similar manner.」
(図1?3に示されるように、主要吸収性部分30に加えて、衣類20は、一般に、左側部領域40及び右側部領域50などの一対の側部領域を含む。前述のように、側部領域は、主要吸収性部分30と一体化されてもよく(即ち、主要吸収性部分30の1以上の層の連続的な延長部であってもよく)、又は主要吸収性部分30に別個に付着されてもよい。あるいは、側部領域は、複数の構成要素又は層から作製されてもよく、これら構成要素又は層は別個である(主要吸収性部分に別個に付着されているか、又は空隙によりそこから分離している)ものもあれば、連続しているものもある。このタイプの構造例は、側部領域40及び50と、主要吸収性部分30とを含む衣類20の全領域を完全に被覆する外側不織布カバーを備えた衣類である。
側部領域40及び50は、主要吸収性部分と共にパンツ様衣類20を形成し、このパンツ様衣類20は、閉じた形状にあるとき、腰部開口部80と、一対の脚部開口部90及び100とを有する。図1?図3に示すように、前方側部は、前方腰部区域144に、又はその近くで、前記主要吸収性部分30の前記長手方向縁部150及び160からほぼ横方向外側に配置される。同様に、後方側部45及び55は、後方腰部区域146に、又はその近くで、前記主要吸収性部分30の前記長手方向縁部150及び160からほぼ横方向外側に配置される。このように、前方及び後方腰部が例えば付着領域60及び70で接合されると、各々の腰部区域は側部(前方及び後方の両方)と共に完全な腰部開口部を形成する。同様に、主要吸収性部分30及び側部も組み合わせて、同様の方法で脚部開口部90及び100を形成する。)
エ 第13ページ第13行?第29行
「As shown in Figs. 1 and 2, the side areas may be provided with attachment areas for attaching the front side areas to the rear side areas. Examples of such attachment areas are left side attachment are 60 and right side attachment area 70 shown in Fig. 1. As shown in Figs. 1-3, these attachment areas may be located approximately midway between the front and back portions of the respective side areas. However, this is not necessary and any location along the side area is acceptable to locate an attachment area.
In one embodiment of the present invention attachment areas seams such as left and right attachment areas 60 and 70 are created through the attachment of front and back portions of the side areas with a refastenable reclosure device. Other refastenable attachment areas other than in the side seam (in addition to or instead of such a side seam) are also possible. For example, such an area could be at the boundary between one or both of the side panels and the main absorbent portion. In one embodiment, such a refastenable device may be through use of cohesive materials. For example, Fig. 3 shows front and rear left side areas 42 and 45 provided with cohesive areas 43 and 44 over at least a portion of their respective surface areas. Similarly right side areas 52 and 55 are provided with cohesive areas 53 and 54. For ease of description, more details of the construction in Fig. 3 will be given with respect to the left side area. However, the same description may be applicable to side areas located on each side of the product.」
(図1及び図2に示すように、側部領域は、前方側部領域を後方側部領域に付着させるための付着領域を備えてもよい。このような付着領域の例は、図1に示す左側付着領域60及び右側付着領域70である。図1?図3に示すように、これらの付着領域は、各々の側部領域前方部と後方部の間のほぼ中ほどに位置してもよい。しかしながら、これは必要ではなく、側部領域に沿ったいかなる位置も付着領域を位置付けるのに許容できる。
本発明の1実施形態において、左側及び右側付着領域60及び70などの付着領域の継ぎ目は、側部領域の前方部及び後方部を再締結可能な再閉鎖装置で付着させることにより形成される。サイドシームにある以外の(このようなサイドシームに加えて、又はその代わりの)他の再締結可能な付着領域も可能である。例えば、このような領域は、サイドパネルの片方又は両方と、主要吸収性部分との間の境界にあり得る。1実施形態において、このような再締結可能な装置は、粘着材料の使用によるものであってもよい。例えば、図3は、それらの各々の表面領域の少なくとも一部分に粘着領域43及び44を備えた前方及び後方の左側部領域42及び45を示している。同様に、右側部領域52及び55は、粘着領域53及び54を備える。説明を簡略化するために、図3に示す構造の更なる詳細は、左側部領域に関して説明する。しかしながら、製品の各側に位置する側部領域に同じ説明が適用できる。)
オ 第14ページ第8行?第14行
「In the embodiment shown in Fig. 3 the refastening capability of the side area consists of the cohesive areas 43 and 44. In this embodiment, no other refastening capability is needed or provided to the side areas. The cohesive material provided in the cohesive areas may be located on one or both facing surfaces (i.e. the body facing surface and the garment facing surface) of the respective side areas. If the cohesive material is located on only one of the facing surfaces, the material may be disposed on opposite facing surfaces on each of the front and rear side areas. In this manner, the resulting side areas when closed, can have an overlapping configuration.」
(図3に示す実施形態において、前方側部42上に配置された第1粘着領域43は、長手方向においては前方側部と同一延長上にあるが、横方向においては同一延長上にない。同様に、後方側部45上に位置する第2粘着領域44も、長手方向においては後方側部と同一延長上にあるが、横方向においては同一延長上にない。図4は、本発明の衣類20の前方側部及び対応する後方側部の変形を示しており、第1及び第2粘着領域43及び44の各々は、それぞれ前方側部及び対応する後方側部と同一延長上にある。この場合は、付着領域60は、側部領域の一部分のみであり、前方側部42及び後方側部45が重なり合って互いに付着されている部分を示す。)
カ 図面のFig.3を参照すると、衣類20の主要吸収性部分30の長手方向一方端の両側に側部42、52が形成され、他方端の両側に側部45、55が形成されているのが見て取れる。したがって、主要吸収性部分30の長手方向一方端の両側に設けられているのが、前方側部42、52であり、長手方向他方端の両側に設けられているのが後方側部45、55であることが理解できる。
また、Fig.1を参照すると、衣類20を閉じた状態が示されており、この状態において、衣類20の上端部の腰部開口部80の上端部の位置は、ほぼ同じ高さに形成されているのが見て取れる。
(2)刊行物6記載の事項
刊行物6記載の事項について、図面のFig.1ないし3及び上記アないしオの摘記事項、及びカの認定事項を参照し、技術常識を考慮しながら、本願発明に照らして整理すると、刊行物6には以下の事項が記載されていると認める。
「主要吸収性部分30の側部領域40、50に前方側部42、52、後方側部45、55が設けられた使い捨てパンツ用衣類20において、
前方側部42、52、後方側部45、55に粘着領域43、53、44、54が設けられ、
衣類20を閉じた状態において、衣類20の上端部の腰部開口部80の上端部の位置が、ほぼ同じ高さに形成されている、使い捨てパンツ用衣類20。」(以下、「刊行物6記載事項」という。)
5 刊行物7
(1)刊行物7記載の事項
刊行物7には以下の事項が記載されている。
ア 第4ページ第5行?第10行
「本発明は、使い捨てプル・オン着衣に関する。その様な使い捨てプル・オン着衣の例には、使い捨て下着、プル・オンおむつ、トレーニングパンツ、および月経時の使用のための使い捨てパンティが含まれる。本発明は特にプル・オンおむつ、トレーニングパンツ、失禁用プル・オンブリーフなどのような一体的使い捨て吸収性プル・オン着衣に関し、それらは汚れた後の向上した引き剥がし開放取り扱い性を提供する。」
イ 第19ページ第11行?第12ページ第18行
「図1は、本発明のもう1つの側面による使い捨てプル・オンおむつ20の斜視図である。図1を参照すると、プル・オンおむつ20は、前方領域26、後方領域28および前方領域26と後方領域28との間のクロッチ領域30を有するシャーシ41を含む。シャーシ41は、液体透過性トップシート80、トップシート80と結合する液本不透過性バックシート22、およびトップシート80とバックシート22との間に配置される吸収性コア84(図1において示されていない)を含む。プル・オンおむつ20は更に、前方領域26におけるシャーシ41の対応する側面からそれぞれ横に外側に伸びるフロントサイドパネル46、および後方領域28におけるシャーシ41の対応する側面からそれぞれ横に外側に伸びるバックサイドパネル48を含む。プル・オンおむつ20は更に、フロントおよびバックサイドパネル46および48のそれぞれからそれぞれ横に外側に伸びるシームパネル66を含み、そのシームパネル66からそれぞれ横に外側に伸びる引き剥がし開放タブ31を含む。・・・
本発明のフロントおよびバックサイドパネル46および48は、シャーシ41の対応するサイドエッジから横に外側に伸びるいずれの部材であっても良い。好ましい態様において、フロントおよびバックサイドパネル46および48のそれぞれは、シャーシ41から横に外側に突出する突き出した部材である(図2および3においてより明確に示される)。好ましくは、フロントサイドパネル46およびバックサイドパネル48は、プル・オンおむつの一体的要素である(すなわち、それらはプル・オンおむつに固定された分離して取り扱われる要素ではなく、むしろ、プル・オンおむつの1以上のさまざまの層の延長から形成され、延長そのものである)。より好ましくは、シームパネル66のそれぞれは、対応するフロントおよびバックサイドパネル46および48の延長であり、または構成部分の少なくとも1つはそこで用いられる要素であり、または要素のいずれか他の組み合わせである。好ましくは、引き剥がし開放タブ31のそれぞれは、対応するシームパネル66の延長であり、またはその構成部分の少なくとも1つはそこで用いられる要素であり、または要素のいずれか他の組み合わせである。好ましい態様において、フロントおよびバックサイドパネル46および48は、シャーシ41から連続的に伸びる連続部材である。より好ましくは、フロントおよびバックサイドパネル46および48の少なくとも一方、好ましくは両方は、シャーシ41の一部であり、シャーシ41から連続的に伸びる連続的なシートまたはフィルム材料42を含む。別の態様において、フロントおよびバックサイドパネル46および48は、シャーシ41のサイドエッジに取り付けられる分離した部材(図においては示されない)である。」
ウ 第22ページ第1行?第22ページ第9行
「 図2は、さまざまのパネルおよび互いに関してのその配置を描写するその平坦に伸ばされた、収縮されていない状態において、図1のプル・オンおむつ20の単純化された平面図を示す。プル・オンおむつ20は、メインパネル56および1対の脚部フラップパネル58を含むクロッチ領域30、ウエストバンドパネル60および中間パネル62を含むセントラルパネル、フロントサイドパネル46、およびシームパネル66を含む前方領域26、並びにウエストバンドパネル60’および中間パネル62’を含むセントラルパネル、バックサイドパネル48、シームパネル66’および引き剥がし開放タブ31を含む後方領域28を有する。吸収性コア84は典型的には、ベルトの中間パネル62および62’に伸びるけれども、吸収性コア84(図2においては示されていない)は一般的にはメインパネル56の中に位置する。と言うのは、滲出物は典型的にはこの領域に排出されるからである。
図2において示される態様において、脚部フラップパネル58は、メインパネル56のそれぞれのサイドエッジ68から、およびそれに沿って一般的に横に外側に伸びる。それぞれの脚部フラップパネル58は一般的に、弾性的脚部形態52の少なくとも一部を形成する(図3において示される)。連続ベルト38(前方領域26および後方領域28)は、クロッチ領域30(メインパネル56および脚部フラップパネル58)のそれぞれの横端部69からおよびそれに沿って一般的に縦に外側に伸びる。前方領域26において、中間パネル62は、クロッチ領域30の横端部69からおよびそれに沿って一般的に縦に外側に伸びる。ウエストバンドパネル60は、中間パネル62からおよびそれに沿って一般的に縦に外側に伸びる。サイドパネル46はそれぞれ、セントラルパネル(パネル60および62)からおよびそれに沿って一般的に横に外側に伸びる。シームパネル66はそれぞれ、それぞれのサイドパネル46からおよびそれらに沿って一般的に横に外側に伸びる。後方領域28において、中間パネル62’は、クロッチ領域30の他方の横端部69からおよびそれに沿って一般的に縦に外側に伸びる。ウエストハンドパネル60’は、中間パネル62’からおよびそれに沿って一般的に縦に外側に伸びる。サイドパネル48はそれぞれ、セントラルパネル(パネル60’および62’)からおよびそれに沿って一般的に横に外側に伸びる。シームパネル66’はそれぞれ、それぞれのサイドパネル48からおよびそれに沿って一般的に横に外側に伸びる。引き剥がし開放タブ31はそれぞれ、それぞれのシームパネル66’からおよびそれに沿って一般的に横に外側に伸びる。使い捨て手段33がそれぞれの引き剥がし開放タブ31について与えられる。前方領域26、加えてそのパネルもまた、エンドエッジ70、レッグエッジ71、およびサイドエッジ72を有する。後方領域28、加えてそのパネルもまた、エンドエッジ70’、レッグエッジ71’、およびサイドエッジ72’を有する。クロッチ領域30はレッグエッジ74を有する。」
エ 図面の図1を参照すると、使い捨てプル・オンおむつ20を閉じた状態が示されており、この状態において、おむつ20の上端部の腰部開口部の上端部の位置は、ほぼ同じ高さに形成されているのが見て取れる。
(2)刊行物7記載の事項
刊行物7記載の事項について、図面の図1、図2及び上記アないしウの摘記事項、及びエの認定事項を参照し、技術常識を考慮しながら、本願発明に照らして整理すると、刊行物7には以下の事項が記載されていると認める。
「シャーシ41の前方領域26の両側部にフロントサイドパネル46、後方領域28の両側部にバックサイドパネル48が設けられた使い捨てプル・オンおむつ20において、
バックサイドパネル48に使い捨て手段33が与えられた引き剥がし開放タブ31が設けられ、
使い捨てプル・オンおむつ20を閉じた状態において、おむつ20の上端部の腰部開口部の上端部の位置が、ほぼ同じ高さに形成されている、使い捨て使い捨てプル・オンおむつ20。」(以下、「刊行物7記載事項」という。)

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると以下のとおりである。
引用発明の「イヤフラップ54、54」、「(前方ウエスト領域22の)端縁32」、「前方ウエスト領域22」、「(後方ウエスト領域24の)端縁32」、「後方ウエスト領域24」、「クロッチ領域26」、「縁部30」、「液体透過性トップシート38」、「液体不透過性バックシート42」、「吸収コア44」は、それぞれ、本願発明の「後耳部」、「前側腰部縁部」、「前側腰部区域」、「後側腰部縁部」、「後側腰部区域」、「股部区域」、「長手方向縁部」、「液体透過性トップシート」、「バックシート」、「吸収性コア」に相当する。
引用発明の「近位縁51」、「遠位縁53」は、それぞれ、本願発明の「近位縁」、「末端縁」に相当する。
引用発明の「おむつ20の後方ウエスト領域24と結合されるイヤフラップ54、54」は、おむつ20に結合されるのであるから、個別要素として形成され、付着されているものであることは明らかである。
この点に関して、審判請求人は、平成24年9月25日付けの意見書において、「引用文献1(当審注:刊行物1である特表平10-506030号公報)の図6が示すものは、いわゆる一体成形品の吸収性物品であります。
一体成形品の吸収性物品は、ウエブを接続して一体成形した後に、裁断するなど製造工程が複数片構成の使い捨て吸収性物品と全く異なります。
一体成形品の吸収性物品の場合、製造の歩留まりのために、耳部の上縁をウエスト上縁部より下げる必要性がなく、耳部の上縁をウエスト上縁部に揃えることは一般的に行われています。このような構造の一体成形品の吸収性物品ではトップハンティングの問題が生じ難い。
しかし、一体成形品の吸収性物品は、ウエブを一体成形した後に裁断するなど、材料が無駄になり、且つ、製造工程が複雑であるため、製造コストが高くなることが避けられません。
複数片構成の使い捨て吸収性物品は、それ自体一体成形品の吸収性物品の上記問題を解決する手段となっています。
本願発明は、通常の複数片構成の使い捨て吸収性物品におけるトップハンティングの問題を解決するものであるため、引用文献1の図6やその図面に関する明細書の記載は、本願発明の契機にはなり得ないと思料いたします。」(第3ページ第18行?第32行。)と主張しているが、第2の1、カで前記したように、刊行物1には、耳部に相当する「イヤフラップ54、54」がおむつ20に結合されているものも記載されていることは明らかである。
引用発明の「固定部材56、56」と、前方ウエスト領域22に配置された被固定部材とは、合わせて「締着装置」と呼ぶことができることは明らかである。そうすると、引用発明の「固定部材56、56」と「被固定部材」とは、「固定部材」と「被固定部材」という限りで、本願発明の「嵌合部材」と「受入部材」と共通する。また、引用発明の「固定部材56、56が被固定部材と結合する時」は、「固定部材が被固定部材と結合する時」という限りで、本願発明の「嵌合部材が受入部材と嵌合する時」と共通する。
引用発明の「イヤフラップ54、54の遠位縁53、53に隣接」することは、本願発明の「後耳部の末端縁近傍に配置」されることに相当する。
引用発明の「使い捨ておむつ」は、吸収コア44を有し、イヤフラップ54、54が結合されるものであるので、「複数片構成の使い捨て吸収性物品」と言えるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「シャーシに耳部が個別の構成要素として付着される複数片構成の使い捨て吸収性物品において、
a)前側腰部縁部を備える前側腰部区域、後側腰部縁部を備える後側腰部区域、前側腰部区域と後側腰部区域との間の股部区域、及び1対の対向する長手方向縁部を有し、
i)液体透過性トップシートと、
ii)バックシートと、
iii)前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収性コアとを含む、シャーシと、
b)上側面方向縁部、近位縁、末端縁を有し、後側腰部区域におけるシャーシの長手方向縁部から側面方向に外に向かって伸長し、個別要素として形成され、シャーシの後側腰部区域と結合される後耳部と、
c)締着装置であって、
i)前記耳部の末端縁近傍に配置される固定部材と、
ii)前記シャーシの前記前側腰部区域に配置される被固定部材と、を含む締着装置と、
を有し、前記耳部は、前記固定部材が前記被固定部材と結合する時に、前側腰部区域と後側腰部区域を相互に接続する、複数片構成の使い捨て吸収性物品。」
そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
締着装置に関して、本願発明では、耳部の末端縁近傍に配置されるのが「嵌合部材」であり、シャーシの前側腰部区域に配置されるのが「受入部材」であって、耳部は「嵌合部材が受入部材と嵌合する」時に、前側腰部区域と後側腰部区域とが相互に接続されるものであるのに対して、引用発明では、締着装置は固定部材56、56と被固定部材であって、嵌合により締着するものであるのかどうか、不明な点。
<相違点2>
耳部の前側腰部区域、後側腰部区域に対する位置に関して、本願発明では、「前側腰部区域と後側腰部区域が計量試験方法及び計量測定手順に従って相互に接続したときに、耳部は次のように前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)とを有し、
1.前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は12mm以下であり、
2.前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部全体幅(B)に対して比率が0.30以下であり、
3.前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部中点幅(X) に対して比率が0.30以下であり、
前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)は計量試験方法及び計量測定手順によって定められる」ものであると特定しているのに対して、引用発明では、前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24が相互接続した時、イヤフラップ54、54の前方ウエスト領域22、後方ウエスト領域24に対する位置関係について不明な点。

第4 相違点についての検討
1 <相違点1>について
刊行物1には、上記摘記事項エに「固定装置56は機械的な固定具、フック、及びループタイプの固定具、圧力完納接着剤及び接着材料のようなこの技術分野でよく知られている多数の固定部材を有する」とあるように、機械的な固定具やループタイプの固定具とすることについて示されており、機械的な固定具やループタイプの固定具が嵌合部材と受入部材とで構成されるものであることは明らかである。また、拒絶理由において引用した刊行物2においても、第35ページ第13行?末行に示されているように、おむつの締着装置としてフック-ループファスナシステム、マッシュルーム-ループファスナシステム等のファスナ手段を用いることが記載され、これらのファスナ手段が嵌合部材と受入部材とで構成されるものであることは明らかである。
してみると、引用発明において、固定部材と被固定部材として、嵌合部材と受入部材とを用い、嵌合部材が受入部材と嵌合することにより締着するものとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
2 <相違点2>について
(1)刊行物2記載事項による容易性について
刊行物2記載事項は、「サイドパネル90のそれぞれが、おむつ物品の後方ウェストバンド部40に取りつけられた使い捨ておむつ20において、
第2端縁107に近接する前方ウェストバンド部38、第1端縁106に近接する後方ウェストバンド部40、前方ウェストバンド部38と後方ウェストバンド部40との間の中間部42を有し、
i)液体透過性トップシート層24と、ii)バックシート層22と、iii)前記トップシート層24とバックシート層22との間に挟まれた吸収体26を備え、
サイドパネル90が、バックシート層22の後方ウェストバンド部40に取り付けられ、ファスナタブ44がサイドパネル90に作動的に結合されたものにおいて、
ファスナタブ44の縁が、改良された性能を与えるために、ウェストバンド縁である第1端縁106に実質的に一致するように配置されている、使い捨ておむつ20。」である。ここで、ファスナタブ44はサイドパネル90に結合されるものであるので、ファスナタブ44の縁がウェストバンド縁である第1端縁106に実質的に一致するように配置されているのであれば、ファスナタブ44を取りつけているサイドパネル90の縁も、第1端縁に実質的に一致することは明らかである。そして、サイドパネル90がバックシート層22の後方ウェストバンド部40に取り付けられるものであることを考え合わせると、刊行物2記載事項の「使い捨ておむつ20」、「サイドパネル90」、「第1端縁106」が本願発明の「複数片構成の使い捨て吸収性物品」、「後耳部」、「後側腰部縁部」に相当するから、刊行物2記載事項は、「複数片構成の使い捨て吸収性物品において、後耳部の縁を後側腰部縁部に実質的に一致させること。」と言い換えることができる。すなわち、後側縁部変位(C)をほぼゼロとすることであると言える。刊行物2記載事項では、第2端縁107とサイドパネル90との縁との関係は不明であるが、ファスナタブ44の縁が第1端縁106に実質的に一致するように取り付けられるとすれば、第2端縁107をファスナタブ44の縁から離して設けるべき理由は見当たらない。そうであるならば、刊行物2記載事項を引用発明に適用した場合には、使い捨ておむつ20の前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24を相互に接続した際に、2つの端縁32とイヤフラップ54、54の長手方向端縁の位置を実質的に一致させることは、引用発明も刊行物2記載事項もともに複数片構成の使い捨ておむつに関するものであることからすれば、当業者にとって格別困難なことではない。すなわち、引用発明において、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)を共にほぼゼロとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
(2)刊行物4記載事項による容易性について
刊行物4記載事項は、「フラップ11、12が前胴周り域6、後胴周り域8の両側部10に固着された使い捨ておむつ1において、
前胴周り域6、後胴周り域8、前胴周り域6と後胴周り域8との間に位置する股下域7を有し、
i)表面シート2と、ii)裏面シート3と、iii)表面シート2と裏面シート3との間に介在した吸液性コア4とを含み、
前胴周り域6、後胴周り域8の両側部10に固着されるフラップ11、12と、
後胴周り域8の両側部10に固着されたフラップ12の外端部12cに固着されたテープファスナ14を有し、
前胴周り域6と後胴周り域8とをフラップ11、12、及びテープファスナ14で接続した時に、前胴周り域6、後胴周り域8、フラップ11、12に上端縁の高さがほぼ同じになるように形成されている、使い捨ておむつ1。」である。ここで、刊行物4記載事項の「フラップ11、12が前胴周り域6、後胴周り域8の両側部10に固着された使い捨ておむつ1」、「フラップ12」、「前胴周り域6」の「上端縁」、「後胴周り域8」の「上端縁」が、それぞれ、本願発明の「複数片構成の使い捨て吸収性物品」、「後耳部」、「前部腰部縁部」、「後側腰部縁部」に相当するから、刊行物4記載事項は、「複数片構成の使い捨て吸収性物品において、接続した時に、後耳部の縁を前側腰部縁部及び後側腰部縁部の高さとほぼ同じになるように形成させること。」と言い換えることができる。すなわち、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)をほぼゼロとすることであると言える。そうすると、刊行物4記載事項を引用発明に適用した場合には、使い捨ておむつ20の前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24を相互に接続した場合、2つの端縁32とイヤフラップ54、54の長手方向端縁の位置を実質的に一致させることは、引用発明も刊行物4記載事項もともに複数片構成の使い捨ておむつに関するものであることからすれば、当業者にとって格別困難なことではない。すなわち、引用発明において、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)を共にほぼゼロとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
(3)刊行物6記載事項による容易性について
刊行物6記載事項は、「主要吸収性部分30の側部領域40、50に前方側部42、52、後方側部45、55が設けられた使い捨てパンツ用衣類20において、
前方側部42、52、後方側部45、55に粘着領域43、53、44、54が設けられ、
衣類20を閉じた状態において、衣類20の上端部の腰部開口部80の上端部の位置が、ほぼ同じ高さに形成されている、使い捨てパンツ用衣類20。」である。ここで、刊行物6記載事項の「使い捨てパンツ用衣類20」、「後方側部45、55」、「側部領域40」の「上端部」、「側部領域50」の「上端部」が、それぞれ、本願発明の「使い捨て吸収性物品」、「後耳部」、「前部腰部縁部」、「後側腰部縁部」に相当するから、刊行物6記載事項は、「使い捨て吸収性物品において、接続した時に、後耳部の縁を前側腰部縁部及び後側腰部縁部の上端部の位置をほぼ同じになるように形成させること。」と言い換えることができる。すなわち、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)をほぼゼロとすることであると言える。そうすると、刊行物6記載事項を引用発明に適用した場合には、使い捨ておむつ20の前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24を相互に接続した場合、2つの端縁32とイヤフラップ54、54の長手方向端縁の位置を実質的に一致させることは、引用発明も刊行物6記載事項もともに使い捨ておむつに関するものであることからすれば、当業者にとって格別困難なことではない。すなわち、引用発明において、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)を共にほぼゼロとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
請求人は、刊行物6に関して、平成24年9月25日付け意見書において、「引用文献5,6(当審注:刊行物6である国際公開第2005/77313号),7も明確に一体成形品の使い捨て吸収性物品を示しています。
本願発明は複数片構成の使い捨て吸収性物品に関するため、引用文献5,6,7は本願発明の発明契機にはなりません。」(第4ページ第4行?第6行。)と主張している。
しかしながら、一体成形品の使い捨て吸収性物品と複数片構成の使い捨て吸収性物品とで形状を変更しなければならない理由は格別見当たらないことからすれば、上記主張は採用することができない。
(4)刊行物7記載事項による容易性について
刊行物7記載事項は、「シャーシ41の前方領域26の両側部にフロントサイドパネル46、後方領域28の両側部にバックサイドパネル48が設けられた使い捨てプル・オンおむつ20において、
バックサイドパネル48に使い捨て手段33が与えられた引き剥がし開放タブ31が設けられ、
使い捨てプル・オンおむつ20を閉じた状態において、おむつ20の上端部の腰部開口部の上端部の位置が、ほぼ同じ高さに形成されている、使い捨て使い捨てプル・オンおむつ20。」である。ここで、刊行物7記載事項の「使い捨てプル・オン20」、「バックサイドパネル48」、「前方領域26」の「上端部」、「後方領域28」の「上端部」が、それぞれ、本願発明の「使い捨て吸収性物品」、「後耳部」、「前部腰部縁部」、「後側腰部縁部」に相当するから、刊行物7記載事項は、「使い捨て吸収性物品において、接続した時に、後耳部の縁を前側腰部縁部及び後側腰部縁部の上端部の位置をほぼ同じになるように形成させること。」と言い換えることができる。すなわち、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)をほぼゼロとすることであると言える。そうすると、刊行物7記載事項を引用発明に適用した場合には、使い捨ておむつ20の前方ウエスト領域22と後方ウエスト領域24を相互に接続した場合、2つの端縁32とイヤフラップ54、54の長手方向端縁の位置を実質的に一致させることは、引用発明も刊行物7記載事項もともに使い捨ておむつに関するものであることからすれば、当業者にとって格別困難なことではない。すなわち、引用発明において、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)を共にほぼゼロとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
請求人は、刊行物7に関して、平成24年9月25日付け意見書において、「引用文献5,6,7(当審注:刊行物7である特表2000-504975号公報)も明確に一体成形品の使い捨て吸収性物品を示しています。
本願発明は複数片構成の使い捨て吸収性物品に関するため、引用文献5,6,7は本願発明の発明契機にはなりません。」(第4ページ第4行?第6行。)と主張している。
しかしながら、一体成形品の使い捨て吸収性物品と複数片構成の使い捨て吸収性物品とで形状を変更しなければならない理由は格別見当たらないこと、及び、刊行物7における摘記事項イの「別の態様において、フロントおよびバックサイドパネル46および48は、シャーシ41のサイドエッジに取り付けられる分離した部材(図においては示されない)である。」の記載から、バックサイドパネル48はシャーシ41と分離した部材で構成されることもできることを考慮すれば、上記主張は採用することができない。
(5)<相違点2>に対する容易性のまとめ
以上のとおり、引用発明において、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)を共にほぼゼロとすることは、刊行物2、4、6、7記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たものと考えざるをえない。そして、前側縁部変位(A)及び後側縁部変位(C)が共にほぼゼロであるならば、「前側腰部区域(36)と後側腰部区域(38)が計量試験方法及び計量測定手順に従って相互に接続したときに、耳部(42)は次のように前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)とを有し、
1. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は12mm以下であり、
2. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部全体幅(B)に対して比率が0.30以下であり、
3. 前記前側縁部変位(A)及び前記後側縁部変位(C)の合計は前記耳部中点幅(X) に対して比率が0.30以下であり、
前側縁部変位(A)と後側縁部変位(C)と耳部全体幅(B)と耳部中点幅(X)は計量試験方法及び計量測定手順によって定められる」という条件を満たすことになるものであることは明らかである。
3 作用・効果について
本願発明の採用する構成によってもたらされる効果も、引用発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

第5 むすび
したがって、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2、4、6、7記載事項、及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願の請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-20 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-10 
出願番号 特願2008-532963(P2008-532963)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白土 博之  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
菅澤 洋二
発明の名称 改善された衣類のような特徴を有する吸収性物品  
代理人 名塚 聡  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  
代理人 森 秀行  

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