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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01D
管理番号 1285173
審判番号 不服2011-6592  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-29 
確定日 2014-03-13 
事件の表示 特願2005- 81945「膜分離用スライム防止剤及び膜分離方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月 5日出願公開、特開2006-263510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成17年3月22日の出願であって、平成22年5月21日付けで拒絶理由が起案され、同年8月19日付けで意見書が提出され、平成23年1月20日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年3月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成24年2月29日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年4月12日付けで回答書が提出され、その後、当審から平成24年7月10日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。
本願の請求項1?4に係る発明は、平成24年8月31日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】
次亜塩素酸アルカリ金属塩及びスルファミン酸アルカリ金属塩を含有することを特徴とする膜分離用スライム防止剤。

第2.引用例
1.引用例1
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第03/096810号(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集じん水系、スクラバー水系などにおいて、少量の薬剤を用いてスライムに起因する障害を効果的に防止することができるスライム防止用組成物及びスライム防止方法を提供することを目的としてなされたものである。」(本文2頁11?14行)
(イ)「本発明に用いるアニオン性ポリマーは、重量平均分子量が500?50,000であることが好ま・・・・・・しい。
本発明に用いるアニオン性ポリマーを与える原料モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びこれらの不飽和カルボン酸の塩、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアル力リ土類金属塩、さらには無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の無水物などを挙げることができる。これらのモノマーは単独で重合することができ、2種以上を共重合することもでき、あるいは、該モノマー1種以上とその他の共重合可能なモノマー1種以上とを共重合させることもできる。他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、不飽和アルコール、不飽和カルボン酸エステル、アルケン、スルホン酸基を有するモノマーなどを挙げることができる。不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコールなどを挙げることができる。不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチルなどを挙げることができる。アルケンとしては、例えば、イソブチレン、n-ブチレン、ジイソブチレン、ペンテンなどを挙げることができる。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスノレホン酸、2-ヒドロキシ-3-アリロキシ-1-プロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などを挙げることができる。本発明に使用するアニオン性ポリマーの例としては、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸と2-ヒドロキシ-3-アリロキシプロパンスノレホン酸との共重合物、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とイソプレンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとの共重合物、アタリル酸とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとイソプロピレンスルホン酸の共重合物、マレイン酸とペンテンとの共重合物、前記アニオン性ポリマーのアル力リ金属塩及び前記アニオン性ポリマーのアル力リ土類金属塩などを挙げることができる。」(本文6頁5行?7頁4行)
(ウ)「本発明に用いるホスホン酸化合物としては、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン一1,2,4-トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン-Ν,Ν,Ν’,Ν’-テトラメチレンホスホン酸又は前記ホスホン酸の塩などを挙げることができる。本発明において、ホスホン酸化合物は遊離の酸として用いることができ、あるいは、塩として用いることもできる。ホスホン酸の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。ホスホン酸の塩は、酸の特性成分である水素が完全に置換された正塩であってもよく、酸成分の水素の一部が残っている酸性塩であってもよい。これらのホスホン酸及びその塩は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。」(本文7頁6?17行)
(エ)「本発明のスライム防止用組成物及びスライム防止方法によれば、殺菌効果が得られないような低濃度の組成物の添加量であっても、優れたスライム付着防止効果とスラッジ堆積防止効果が発現する。従来のように、殺菌や消毒を目的とする場合には、高濃度の薬剤の添加が必要であった。スライムは、配管や熱交換器伝熱管に付着する微生物フロックと土砂などの無機物が混在した汚れであり、スラッジは、水槽の底や熱交換器仕切板に溜まった微生物フロックと土砂などの無機物が混在した汚れである。スライムの付着やスラッジの堆積は、スケール、土砂、腐食生成物などの無機物粒子の成長、凝集と、微生物の増殖、凝集とが同時に進行して、微細な浮遊物が次第に大きくなるとともに、微生物の生成する粘質物による無機物粒子の包含、いわゆるバイオフロキュレーションによって浮遊物が粗大化し、スライムの付着やスラッジの堆積が起こると考えられる。本発明のスライム防止剤及びスライム防止方法によれば、バイオフロキュレーションを阻害する成分と、無機物の分散作用やキレート効果による封鎖作用を示す成分の相乗効果が発現し、スライム付着とスラッジ堆積が効果的に防止されるものと推定される。」(本文8頁18行?9頁3行)
(オ)「供試薬剤のA成分として、従来よりスライム防止剤として使用されている有効塩素12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液40重量%、スルファミン酸8重量%、水酸化ナトリウム10重量%及び水42重量%からなる混合液を用いた。供試薬剤のB成分として、アニオン性ポリマー又はホスホン酸を用いた。」(本文10頁1?4行)
(カ)本文14頁の第1表には、
実施例1として、A成分(有効塩素量として):5mg/L、B成分:ポリマレイン酸、スライム付着防止率 95%、
比較例2として、A成分(有効塩素量として):5mg/L、B成分:なし、スライム付着防止率 56.5%、
であることが記載されている。
(キ)「1.塩素系酸化剤、スルファミン酸化合物及びアニオン性ポリマー又はホスホン酸化合物を含有することを特徴とするスライム防止用組成物。
・・・・・・
6.塩素系酸化剤が、塩素、次亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸アルカリ金属塩及び塩素酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のスライム防止用組成物。
7.スルファミン酸化合物が、スルファミン酸、N-メチルスルファミン酸、N,N-ジメチルスルファミン酸及びN-フェニルスルファミン酸ならびに前記スルファミン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載のスライム防止用組成物。」(特許請求の範囲の請求項1、6、7)

2.引用例2
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/022491号(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(サ)「Chlorine is approved for use in the treatment of drinking water and is very effective at removing and killing bacteria. However, while acetate membranes are compatible with chlorine, polyamide membranes are not. It is well known that chlorine quickly degrades polyamide membranes.・・・・・・Accordingly, it is an object of the present invention to disinfect reverse osmosis membranes in a technically effective and efficient manner.
(当審訳: 塩素は、飲用水処理に承認されており、細菌除去および殺菌に非常に効果的である。しかし、アセテートメンブランは塩素と相容性であるのに対し、ポリアミドメンブランはそうではない。塩素がポリアミドメンブランを急速に分解することは良く知られている。・・・・・・ そこで、本発明の目的は、技術的に効果的で、効率的な様式で、逆浸透メンブランを消毒することである。)」(本文4頁1?13行)
(シ)「Summary of the Invention
The above and other objects of the present invention can be achieved by treating the reverse osmosis membranes with 1) an oxidizing biocide substance that contains a halogen in the +1 oxidation state, and 2) a nitrogen containing compound which contains at least one nitrogen atom in the imide or amide form, such that the halogen loosely binds with the nitrogen thereby forming combined halogen. This can be achieved by treating with compounds with 1 and 2 separately such that both materials are present at the membrane surface at the same time, or by treating with a compound, which contains both 1 and 2 in the same compound. Some examples of 1 (materials containing halogen in the +1 oxidation state) are sodium hypochlorite, activated sodium bromide, chlorine gas, elemental bromine, bromine chloride, or calcium hypochlorite. Some examples of 2, (materials containing at least one nitrogen atom in the imide or amide form), are dimethylhydantoin, ammonia, benzene sulfamide, sulfamic acid, and cyanuric acid. Some examples of compounds, which contain both 1 and 2 above in the same compound, are bromochlorodimethylhydantoin, trichloroisocyanuric acid, bromosulfamate, and dichloromethylethylhydantom. The preferred compound for purposes of this invention is bromochlorodimethylhydantoin (BCDMH).
(当審訳:発明の概要
本発明の上記の、および他の目的は、逆浸透メンブランを、1)+1酸化状態にあるハロゲンを含む酸化性殺菌剤物質、および2)イミドまたはアミドの形態にある少なくとも一個の窒素原子を含む窒素含有化合物で処理し、ハロゲンを窒素とゆるく結合させ、それによって結合ハロゲンを形成することにより、達成することができる。これは、両方の材料がメンブラン表面に同時に存在するように、1および2の化合物で個別に処理するか、または同じ化合物中に1と2の両方を含む化合物で処理することにより達成することができる。1(+1酸化状態にあるハロゲンを含む材料)の例は、次亜塩素酸ナトリウム、活性化臭化ナトリウム、塩素ガス、元素状臭素、塩化臭素、または次亜塩素酸カルシウムである。2(イミドまたはアミドの形態にある少なくとも一個の窒素原子を含む材料)の例は、ジメチルヒダントイン、アンモニア、ベンゼンスルファミド、スルファミン酸、およびシアヌル酸である。同じ化合物中に上記の1と2の両方を含む化合物の例は、ブロモクロロジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌル酸、ブロモスルファメート、およびジクロロジメチルエチルヒダントインである。本発明の目的に好ましい化合物は、ブロモクロロジメチルヒダントイン(BCDMH)である。)(本文4頁14行?5頁5行)
(ス)「Clearly, this invention applies to the use of BCDMH to disinfect RO membranes.
However, since the invention is related to prevalence of "combined" vs. "free" halogen, it is believed that any material that will cause halogen to be present mostly in the combined formcould be used. This would include any materials that include nitrogen atoms in the imide or amide form.Two examples are sulfamic acid and benzene sulfonamide, two materials that are currently used in industry to combine with halogens and slowly release.・・・・・・
Another possible approach would be the separate addition of halogen and a material containing an imide or amide nitrogen that would combine with the halogen and cause it to be present predominantly in the combined form. Two examples of this would be the separate addition of DMH and bromine and the separate addition of sulfamic acid and chlorine.
(当審訳: 疑いなく、本発明は、ROメンブランを消毒するためのBCDMHの使用に適用される。しかし、本発明は、「遊離」塩素に対する「結合した」塩素の優位性に関連するので、ハロゲンを大部分結合した形態で存在させるすべての材料を使用できると考えられる。これには、窒素原子をイミドまたはアミド形態で包含するすべての材料が含まれるであろう。2つの例は、工業界でハロゲンを結合し、徐々に放出する目的に現在使用されている2種類の材料であるスルファミン酸およびベンゼンスルホンアミドである。・・・・・・
もう一つの可能な手法は、ハロゲン、およびハロゲンと結合し、ハロゲンを主として結合した形態で存在させるイミドまたはアミド窒素を含む材料を、個別に加えることであろう。この2つの例は、DMHと臭素の個別添加およびスルファミン酸と塩素の個別添加であろう。)(本文7頁13?25行)

第3.対比・判断
1.引用例1に記載された発明
ア 引用例1の(キ)には、その請求項1として「塩素系酸化剤、スルファミン酸化合物及びアニオン性ポリマー又はホスホン酸化合物を含有する・・・・・・スライム防止用組成物」が記載され、この「塩素系酸化剤」として同(キ)の請求項6の記載には「次亜塩素酸アルカリ金属塩」が、「スルファミン酸化合物」として同(キ)の請求項7には「スルファミン酸のアルカリ金属塩」が、それぞれ、記載されている。
イ そうすると、引用例1には、
「次亜塩素酸アルカリ金属塩、スルファミン酸のアルカリ金属塩及びアニオン性ポリマー又はホスホン酸化合物を含有するスライム防止用組成物」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

2.本願発明について
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
イ 本願明細書の【0036】には、「本発明の膜分離用スライム防止剤は、その効果を損なうことのない範囲において、塩素系酸化剤及びスルファミン酸化合物以外の他の成分を含有していても良い。この他の成分としては、アルカリ剤、アゾール類、アニオン性ポリマー、ホスホン酸類等が挙げられる。」と記載されているから、本願発明は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸のいずれかを含有してもよいといえる。
ウ 引用発明における「アニオン性ポリマー」については、引用例1の(イ)に記載されているが、この記載は、本願明細書の【0039】?【0041】と実質的に同じであるから、引用発明の「アニオン性ポリマー」は、本願発明が含有してもよい「アニオン性ポリマー」と同じ成分である。
エ 引用発明における「ホスホン酸化合物」については、引用例1の(ウ)に記載されているが、この記載は、本願明細書の【0042】と実質的に同じであるから、引用発明の「ホスホン酸化合物」は本願発明が含有してもよい「ホスホン酸化合物」と同じ成分である。
オ 引用発明の「スライム防止用組成物」は、引用例1の(ア)の記載によれば、「冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集じん水系、スクラバー水系など」を対象とする「スライム防止剤」とみることができ、本願発明と「スライム防止剤」である点で共通している。
カ そうすると、両者は、
「次亜塩素酸アルカリ金属塩、スルファミン酸アルカリ金属塩、アニオン性ポリマー及びホスホン酸化合物を含むスライム防止剤」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:本願発明は、「膜分離用」のスライム防止剤であるのに対し、引用発明では「冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集じん水系、スクラバー水系など」用のスライム防止剤であり、膜分離の用途について記載がない点
キ そこで、この相違点1について検討する。
ク-1 引用例2には、「塩素がポリアミドメンブランを急速に分解することは良く知られている」という状況の下で「逆浸透メンブランを消毒する」(引用例2の(サ))ために、
ク-2 同(シ)には、
「逆浸透メンブラン」を「1)+1酸化状態にあるハロゲンを含む酸化性殺菌剤物質」及び「2)イミドまたはアミドの形態にある少なくとも一個の窒素原子を含む窒素含有化合物」の「化合物で個別に処理する」こと、及び
上記「1)の酸化性殺菌剤物質」の例として「次亜塩素酸ナトリウム」、上記「2)の窒素含有化合物」の例として「スルファミン酸」が示されており、
ク-3 さらに、同(ス)には、
「ハロゲン、およびハロゲンと結合し、ハロゲンを主として結合した形態で存在させるイミドまたはアミド窒素を含む材料を、個別に加えることであろう。」と記載されているから、
ク-4 上記「個別に処理する」とは、「個別に加える」と言い換えることができるといえる。
ク-5 よって、引用例2には、「逆浸透メンブランを次亜塩素酸ナトリウム及びスルファミン酸を個別に添加して処理すること」が教示されていると認められる。
ケ そうすると、引用例2のこの教示に接した当業者は、引用発明のスライム防止用組成物を逆浸透メンブランを消毒するために、すなわち、「膜分離用」のスライム防止のために用いる動機付けを得ることは明らかである。
コ 次に、本願明細書に記載されている「ポリアミド系高分子膜等の耐塩素性の低い透過膜においても、透過膜の劣化を引き起こすことなく、微生物による透過膜の汚染を防止することができる。」(【0012】:以下、「効果1」という。)及び「本発明で用いる塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物を含有する水溶液を用いた場合においては、遊離塩素濃度はpHにより殆ど変化しない。」(【0025】:以下、「効果2」という。)について、順に検討する。
サ 効果1について
サ-1 引用例1の記載をみると、その(オ)、(カ)によれば、「A成分として、有効塩素12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液40重量%、スルファミン酸8重量%、水酸化ナトリウム10重量%及び水42重量%からなる混合液」を有効塩素量5mg/Lとなるように添加し、アニオン性ポリマー又はホスホン酸であるB成分としてポリマレイン酸を固形分として5mg/L添加した実施例1のスライム付着防止率が95%、A成分を有効塩素量5mg/Lとなるように添加し、該B成分を全く添加しない比較例2のスライム付着防止率が56.5%であることが記載されている。
よって、引用例1のこの記載によれば、有効塩素量が5mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウム水溶液やスルファミン酸等を加えれば、アニオン性ポリマーまたはホスホン酸であるB成分の添加の有無にかかわらず、ある程度のスライム付着防止率をうることができるといえる。
サ-2 ここで、ポリアミドメンブランと有効塩素量との関係についてみてみる。
サ-3 ポリアミドメンブランの処理対象水における有効塩素量が5mg/Lで程度であることや、有効塩素量が5mg/Lの水溶液を使ってポリアミドメンブランを逆洗することがなされている(要すれば、特開2005-28220号公報の【0042】、特開2004-255368号公報の【0037】、特開2003-320227号公報の【0023】等を参照。)。
サ-4 一方、例えば、引用例2の(サ)に「塩素がポリアミドメンブランを急速に分解することは良く知られている。」と記載されているから、塩素の濃度が低ければ、ポリアミド系の透過膜の劣化はほとんど起こらないとみることが自然である。
サ-5 よって、これらを併せみると、有効塩素量が5mg/L程度であれば、塩素がポリアミドメンブランを分解するという悪影響は小さいことは周知技術といえる。
サ-6 そうすると、この周知技術を熟知している当業者が、上記引用例1の(オ)、(カ)の記載に接したとき、有効塩素量が5mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウム水溶液やスルファミン酸等を加えればスライム付着防止、すなわち、微生物による汚染防止ができるとの認識を得ることができ、しかも、引用例1の(エ)によれば、有効塩素濃度が低くてもスライム防止効果があるとされ、引用発明が低い有効塩素濃度でもスライム防止効果を有することが示唆されているといえるから、この効果1は当業者ならば予想し得る程度のものである。
シ 効果2について
シ-1 奥村学、「スルファミン酸による結合塩素の異常生成」、水道協会雑誌 第66巻、第10号(第757号)21?29頁には、
「4-5-3 pHの影響
図-14はpHを5?7に、図-15はpHを7?9に変化させて実験を行った結果である。反応の進行はpHにより大きく変化した。pHが低くなると反応の進行が早くなった。」(28頁左欄)と記載され、
図-14においては、初期スルファミン酸濃度が1×10^(-5)Mの溶液に、次亜塩素酸を2×10^(-5)M(1.4mg/L)添加し、pH5?7に変化させた場合のNHCl_(2)型結合塩素濃度の経時変化を示し、図-15では、初期スルファミン酸濃度が1×10^(-5)Mの溶液に、次亜塩素酸を4×10^(-5)M(2.8mg/L)添加し、pH7?9に変化させた場合のNHCl_(2)型結合塩素濃度の経時変化を示しており、図-14と図-15をみるとpH5?8でNHCl_(2)型結合塩素濃度は0.7mg/lにおちつくことが見て取れ、上記「反応の進行はpHにより大きく変化した」との記載をみると、pH8においても0.7mg/lにおちつくとみることが自然であって、pHが少なくとも5?8の範囲においては、スルファミン酸からの遊離塩素濃度が一定であることは、当業者なら予想し得る事項である。
ス よって、本願発明は引用例1?2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1?2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-06 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-25 
出願番号 特願2005-81945(P2005-81945)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三崎 仁目代 博茂  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 國方 恭子
豊永 茂弘
発明の名称 膜分離用スライム防止剤及び膜分離方法  
代理人 重野 剛  

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