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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1285193
審判番号 不服2013-10200  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-04 
確定日 2014-03-18 
事件の表示 特願2010-507498「推進システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日国際公開、WO2008/137246、平成22年 8月12日国内公表、特表2010-527307、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2008年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年5月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年11月6日に特許法第184条の5第1項に規定する書面及び特許法第184条の4第1項に規定する明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成23年3月31日に手続補正書が提出され、平成24年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年1月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月4日に拒絶査定に対する審判の請求がされると同時に、手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。
そして、同年7月30日付けで当審において書面による審尋がされ、同年10月31日に審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2.平成25年6月4日付けの特許請求の範囲を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年11月2日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す特許請求の範囲の記載を、下記Bに示す特許請求の範囲の記載へと補正するものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジン及び第1の駆動モータを備えた第1の牽引駆動システムであって、該エンジンは車両を推進させるために該第1の駆動モータにエネルギーを供給するように動作可能である第1の牽引駆動システムと、
第2の駆動モータ及び第1のエネルギー蓄積デバイスを備えた第2の牽引駆動システムであって、該第2の駆動モータは該第1のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第1のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第2の牽引駆動システムと、
第3の駆動モータ及び第2のエネルギー蓄積デバイスを備えた第3の牽引駆動システムであって、該第3の駆動モータは該第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第2のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能であり、前記第2の牽引駆動システムと前記第3の牽引駆動システムのうちの少なくとも一方は、第1の牽引駆動システムから可逆的に電気的に分離されており、
前記第1の駆動モータは第1の牽引駆動システムだけに電気的に結合されている、
を備える車両の推進システム。
【請求項2】
前記第1の牽引駆動システムは、第2の牽引駆動システムの少なくとも一部分が動作する第2の電圧と異なる電圧である第1の電圧で動作する、第2の電圧は該第1の電圧未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の電圧は、約200ボルトから約350ボルトまでのレンジで可変であり、第2の電圧は該第1の電圧未満である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは電気的に並列接続された第1の部分と第2の部分を有しており、該第1の部分と第2の部分は一緒になって第1の電圧より低い電圧である第2の電圧を発生させている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
第2の牽引駆動システムを単独であるいは第1の牽引駆動システムと組み合わせて用いることによって比較的より低速で、比較的より大トルクで、あるいは比較的より大トルクかつより低速の組み合わせで車両を推進させることが可能であり、かつ少なくとも第1の牽引駆動システムを用いることによって比較的より低トルクあるいは比較的より高速で車両を推進させることが可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは電気的に直列接続された第1の部分と第2の部分を有しており、該第1の部分と第2の部分の各々は第1の電圧より低い電圧である第2の電圧を発生させており、かつ該第1の部分と第2の部分は一緒になって第1の電圧にほぼ等しい電圧を発生させている、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは第1の部分及び第2の部分を有しており、かつ該第1の部分及び第2の部分は、第1の部分及び第2の部分が電気的に並列接続された第1の動作モードと、第1の部分及び第2の部分が電気的に直列接続された第2の動作モードと、から切り替え可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは、そのいずれもが共有ハウジング内に配置されている第1の部分と第2の部分を備えており、該共有ハウジングは温度制御システムと動作可能に関連付けされている、少なくとも1つの温度センサと、少なくとも1つの温度制御デバイスと、該センサと連絡すると共に共有ハウジング内部の環境を変更または維持するように熱源を制御する融解制御器と、を備える、エネルギー蓄積デバイスの温度に影響を与えることが可能な温度制御システムをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは第1の部分及び第2の部分を備えており、該第1の部分及び第2の部分はそれぞれ第1のハウジング及び第2のハウジング内に配置されており、かつ該第1のハウジング及び第2のハウジングの各々は温度制御システムと動作可能に関連付けされており、前記第1のハウジング及び第2のハウジングの各々の内部の少なくとも1つの温度センサと、該第1のハウジング及び第2のハウジングの各々の内部の少なくとも1つの熱源と、各センサと連絡していると共に該第1のハウジング及び第2のハウジングの少なくとも対応する一方の内部の環境を変更または維持するように各熱源を制御する融解制御器と、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記融解制御器は、決定された熱ランプ率(ramp rate)に基づいて動作温度レンジまで動作温度レンジの域内で局所環境温度を上昇させるように熱源を制御することによって融解過程を始動させるように動作可能であり、動作温度レンジまで動作温度レンジの域内で局所環境温度を低下させるように熱源を制御するための冷却過程を始動させるように動作可能である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは、約0.5:1を超えるエネルギー対パワー比を有するハロゲン化金属、リチウムバッテリー、ニッケル水素化金属バッテリーを備える、エネルギーバッテリーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第1のエネルギー蓄積デバイスと補助電気システムは、主要な補助電気システムに電気エネルギーを供給することによって該主要補助電気システムを補うように動作可能であり、幾つかの下位構成要素に電気エネルギーを供給することによって主要な補助電気システムを補うように動作可能であり、かつ該主要補助電気システムは別の下位構成要素に電気エネルギーを供給している、電気的に接続された補助電気システムをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記補助電気システムは複数の動作モードを有しており、該モードは、
第2の駆動モータまたは第3の駆動モータがそれぞれの第1または第2のエネルギー蓄積デバイスに対してエネルギーを供給するモード、または
エンジンがシャットオフモードにあるモード、または
エンジンが環境に敏感な領域においてパワーを低減しかつ排出を低減するモードで動作しているモード、を含んでおり、かつ
これら動作モードの間において補助電気システムが幾つかの電気下位構成要素に電気エネルギーを供給していると共に、主要補助電気システムが別の電気下位構成要素に電気エネルギーを供給しており、かつ該システムはさらに、
補助電気システムの動作モードを切り替えるように動作可能な制御器をさらに備える請求項1に記載のシステム。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジン及び第1の駆動モータを備えた第1の牽引駆動システムであって、該エンジンは車両を推進させるために該第1の駆動モータにエネルギーを供給するように動作可能である第1の牽引駆動システムと、
第2の駆動モータ及び第1のエネルギー蓄積デバイスを備えた第2の牽引駆動システムであって、該第2の駆動モータは該第1のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第1のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第2の牽引駆動システムと、
第3の駆動モータ及び第2のエネルギー蓄積デバイスを備えた第3の牽引駆動システムであって、該第3の駆動モータは該第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第2のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第3の牽引駆動システムと、
を備え、
前記第2の牽引駆動システムと前記第3の牽引駆動システムのうちの少なくとも一方は、第1の牽引駆動システムから可逆的に電気的に分離されており、
前記第1の駆動モータは第1の牽引駆動システムだけに電気的に結合されており、
前記第1の牽引駆動システムは、第2の牽引駆動システムが動作する第2の電圧と異なる電圧である第1の電圧で動作する、
車両の推進システム。
【請求項2】
前記第1の電圧は、約200ボルトから約350ボルトまでのレンジで可変であり、
第2の電圧は該第1の電圧未満である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは電気的に並列接続された第1の部分と第2の部分を有しており、
該第1の部分と第2の部分は一緒になって第1の電圧より低い電圧である第2の電圧を発生させている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第2の牽引駆動システムを単独であるいは第1の牽引駆動システムと組み合わせて用いることによって比較的より低速で、比較的より大トルクで、あるいは比較的より大トルクかつより低速の組み合わせで車両を推進させることが可能であり、かつ
少なくとも第1の牽引駆動システムを用いることによって比較的より低トルクあるいは比較的より高速で車両を推進させることが可能である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは電気的に直列接続された第1の部分と第2の部分を有しており、
該第1の部分と第2の部分の各々は第1の電圧より低い電圧である第2の電圧を発生させており、かつ 該第1の部分と第2の部分は一緒になって第1の電圧にほぼ等しい電圧を発生させている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスは第1の部分及び第2の部分を有しており、かつ
該第1の部分及び第2の部分は、第1の部分及び第2の部分が電気的に並列接続された第1の動作モードと、第1の部分及び第2の部分が電気的に直列接続された第2の動作モードと、から切り替え可能である、
請求項1に記載のシステム。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

2.本件補正の適否
請求項1における本件補正は、「第1の牽引駆動システム」に関して、「第2の牽引駆動システムが動作する第2の電圧と異なる電圧である第1の電圧で動作する」という限定を付加するもの、及び、「第3の牽引駆動システム」に係る記載を「第2の牽引駆動システム」に合わせるものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本件補正前の請求項2及び8ないし13を削除し、本件補正前の請求項3ないし7を、請求項2ないし6とするものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところもない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

2-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2006/0005738号明細書(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(和文は当審において仮訳したものである。)。
ア.「[0042]FIG. 2 is a block diagram of one embodiment of a hybrid energy locomotive system 200 . In this embodiment, the hybrid energy locomotive system preferably includes an energy tender vehicle 202 for capturing and regenerating at least a portion of the dynamic braking electric energy generated when the locomotive traction motors operate in a dynamic braking mode. The energy tender vehicle 202 is constructed and arranged to be coupled to the locomotive in a train configuration, and includes an energy capture and storage system 204 (also referred to in various embodiments as an electrical energy storage system, an energy storage medium or an energy storage). It should be understood that it is common to use two or more locomotives in a train configuration and that FIG. 2 illustrates a single locomotive for convenience.
[0043] In one embodiment, the energy capture and storage system 204 selectively receives electrical power generated during the dynamic braking mode of operation and stores it for later regeneration and use. In the alternative or in addition to receiving and storing dynamic braking power, energy capture and storage system 204 can also be constructed and arranged to receive and store power from other sources. For example, excess prime mover power from engine 102 can be transferred and stored. Similarly, when two or more locomotives are operating in a train, excess power from one of the locomotives can be transferred and stored in energy capture and storage system 204 . Also, a separate power generator (e.g., diesel generator) can be used to supply a charging voltage (e.g., a constant charging voltage) to energy capture and storage system 204 . Still another source of charging is an optional off-train charging source 220 . For example, energy capture and storage system 204 can be charged by external sources such as a battery charger in a train yard or at a wayside station. Additional examples of external energy system 220 include a locomotive, a second hybrid energy railway vehicle, an electric grid or distribution line, a third rail, or an electrical overhead line. (段落[0042]及び[0043])
(仮訳:[0042]
図2は、ハイブリッドエネルギー機関車システム200の一実施形態を示すブロック図である。この実施形態におけるハイブリッドエネルギー機関車システムは、エネルギー供給車両202を備えていることが好ましい。この供給車両は、機関車の牽引モーターを発電ブレーキモードで駆動する際に、発電ブレーキエネルギーの少なくとも一部を取得するためおよび再生するためのものである。このエネルギー供給車両202は、列車構成における機関車に連結されるように構成されており、エネルギー取得・貯蔵システム204(複数の実施形態において、電気エネルギー貯蔵システム、エネルギー貯蔵媒体、あるいはエネルギー貯蔵体とも称する)を備える。列車構成においては、二両またはそれ以上の機関車を使用することが通常であるが、図2では説明の便宜上、一両の機関車を示している。
[0043]
一実施形態におけるエネルギー取得・貯蔵システム204は、発電ブレーキモードで運転中に生成された電力を受け取り、それをその後の再生および使用のために貯蔵する。発電ブレーキ力を受け取ることに代えて、あるいはそれに加えて、エネルギー取得・貯蔵システム204は、他の電源から電力を受け取って貯蔵するように構成することができる。例えば、エンジン102から余剰動力電力を送って貯蔵することができる。同様に、一つの列車に二両あるいはそれ以上の機関車が駆動している場合には、一つの機関車から余剰電力をエネルギー取得・貯蔵システム204に送って貯蔵することができる。また、別個に電力発生機(例えば、ディーゼル発電機)を使用して、エネルギー取得・貯蔵システム204に充電電圧(例えば、定格充電電圧)を供給することができる。その他の充電電源220としては、列車に搭載されていない充電電源が選択肢としてある。例えば、エネルギー取得・貯蔵システム204を、列車の操車場あるいは沿線駅においてバッテリー充電器などの外部電源によって充電することができる。さらに、外部エネルギーシステム220の他の例としては、機関車、第二のハイブリッドエネルギー鉄道車両、電気送電網または配電線、第三の線路、あるいは電気高架線がある。)

イ.「[0046]Referring still to FIG. 2 , energy capture and storage system 204 not only captures and stores electric energy generated in the dynamic braking mode of the locomotive, it also supplies the stored energy to assist the locomotive effort (i.e., to supplement and/or replace prime mover power). For example, energy tender vehicle 202 optionally includes a plurality of energy tender traction motors 208 mounted on the trucks supporting energy tender vehicle 202 . The electrical power stored in energy capture and storage system 204 may be selectively supplied (i.e., via lines 210 ) to the energy tender traction motors 208 . Thus, during times of increased demand, energy tender traction motors 208 augment the tractive power provided by locomotive traction motors 108 . As another example, during times when it is not possible to store more energy from dynamic braking (e.g., energy capture and storage system 204 is charged to capacity), efficiency considerations may suggest that energy tender traction motors 208 also augment locomotive traction motors 108 .
[0047]It should be appreciated that when energy capture and storage system 204 drives energy tender traction motors 208 , additional circuitry will likely be required. For example, if energy capture and storage system 204 comprises a battery storing and providing a DC voltage, one or more inverter drives may be used to convert the DC voltage to a form suitable for use by the energy tender traction motors 208 . Such drives are preferably operationally similar to those associated with the main locomotive.
[0048]Rather than (or in addition to) using the electrical power stored in energy capture and storage system 204 for powering separate energy tender traction motors 208 , such stored energy may also be used to augment the electrical power supplied to locomotive traction motors 108 (e.g., via line 212 ).
[0049]Other configurations are also possible. For example, the locomotive itself may be constructed and arranged (e.g., either during manufacturing or as part of a retrofit program) to capture, store, and regenerate excess electrical energy, such as dynamic braking energy or excess motor power. In another embodiment, a locomotive may be replaced with an autonomous tender vehicle. In still another embodiment, similar to the embodiment illustrated in FIG. 2 , the separate energy tender vehicle is used solely for energy capture, storage, and regeneration#the tender does not include the optional traction motors 208 . In yet another embodiment, a separate tender vehicle is replaced with energy capture and storage subsystems located on some or all of the load units attached to the locomotive. Such load units may optionally include separate traction motors. In each of the foregoing embodiments, the energy capture and storage subsystem can include one or more of the subsystems elsewhere described herein. This includes, where appropriate, inclusion of such described subsystems for use on the multipurpose regenerative energy railway vehicles that are for carrying freight as one of their primary functions (i.e., #load units,#) that additionally comprise energy capture and storage subsystems, and optionally also comprise separate traction motors), such as are depicted in FIGS. 15-18 and further described herein. As noted above, a #load unit# is a type of railroad car that is for carrying freight.
[0050]When a separate energy tender vehicle (e.g., energy tender vehicle 202 ) is used, the tender vehicle 202 and the locomotive are preferably coupled electrically (e.g., via line 212 ) such that dynamic braking energy from the locomotive traction motors and/or from optional energy tender traction motors 208 is stored in energy storage means on board the tender. During motoring operations, the stored energy is selectively used to propel locomotive traction motors 108 and/or optional traction motors 208 of tender vehicle 202 . Similarly, when the locomotive engine produces more power than required for motoring, the excess prime mover power can be stored in energy capture and storage 202 for later use. This is exemplary, and is not meant to be limiting of embodiments of the present invention, which may include, for example, providing electrical energy to, and receiving electrical energy from, a source external to the train.
[0051]If energy tender vehicle 202 is not electrically coupled to the locomotive (other than for standard control signals), traction motors 208 on the tender vehicle can also be used in an autonomous fashion to provide dynamic braking energy to be stored in energy capture and storage system 204 for later use. One advantage of such a configuration is that tender vehicle 202 can be coupled to a wide variety of locomotives in almost any train. Examples of embodiments of an autonomous tender vehicle such as a multipurpose hybrid energy railway vehicle are illustrated in FIGS. 13 and 14 and are described below. 」(段落[0046]ないし[0051])
(仮訳:[0046]
さらに、図2に示すように、エネルギー取得・貯蔵システム204は、機関車の発電ブレーキモードにおいて生成された電気エネルギーを取得して貯蔵するのみでなく、機関車の進行力を補助するために貯蔵したエネルギーを供給する(すなわち、主要動力を補助するためやそれに代えてである)。例えば、エネルギー供給車両202は、当該エネルギー供給車両202を支持する貨車に搭載した複数のエネルギー供給牽引モーター208を備えることができる。エネルギー取得・貯蔵システム204に貯蔵された電力は、必要に応じて、エネルギー供給牽引モーター208に供給することができる。これにより、電力の需要が大きくなった際に、エネルギー供給牽引モーター208が機関車の牽引モーター108から供給される牽引力を増大させる。他の例として、発電ブレーキからのエネルギーをさらに貯蔵することができないとき(例えば、エネルギー取得・貯蔵システム204が貯蔵能力いっぱいに充電されているとき)、効率を考慮して、エネルギー供給牽引モーター208が機関車牽引モーター108を増大させる。
[0047]
なお、エネルギー取得・貯蔵システム204がエネルギー供給牽引モーター208を稼働している際は、新たな電気回路構成を追加する必要がある。例えば、もし、エネルギー取得・貯蔵システム204が直列電圧を貯蔵して供給するバッテリーを備えていると、一つあるいは複数のインバーター駆動装置を使用して、その直流電圧をエネルギー供給牽引モーター208が使用するに適した形態に変換する。こうした駆動装置は、主な機関車に関係する装置と同じように稼働することが好ましい。
[0048]
エネルギー取得・貯蔵システム204に貯蔵された電力を、別個のエネルギー供給牽引モーター208の電力に使用する代わりに(あるいはそれに加えて)、当該貯蔵されたエネルギーを機関車の牽引モーター108に供給される電力を増大するために使用することができる。
[0049]
また、その他の構成とすることもできる。例えば、機関車それ自体が余剰の発電ブレーキエネルギーあるいは余剰のモーター電力などの電気エネルギーを取得し、貯蔵し、再生するように構成して配置することができる(例えば、製造過程においてあるいは改造計画の一部として)。他の実施形態として、機関車を独立した供給車両と置き換えることができる。さらに他の実施形態では、図2に示す実施形態と同様に、自立型のエネルギー供給車両を、エネルギーを取得し、貯蔵し、再生するためにだけ使用することができる。ここでのエネルギー供給は、任意の牽引モーター208を含まない。また、他の実施形態では、独立した供給車両を、機関車に連結した全ての貨車あるいはいくつかの貨車に配置したエネルギー取得・貯蔵サブシステムと置き換えることができる。こうした貨車は、別個に牽引モーターを持つことができる。上記した各実施形態におけるエネルギー取得・貯蔵サブシステムは、本明細書中で説明する一つあるいは複数のサブシステムを設けることができる。これには、これまでに述べた多目的再生エネルギー鉄道車両に使用されるサブシステムを含む。この鉄道車両は、基本的な機能の一つとして貨物を搬送し(すなわち貨車)、さらにエネルギー取得・貯蔵サブシステムを備え、そして、独立した牽引モーターも併せて備える。これらは図15?18に示されており、ここでさらに説明する。上述したように、「貨車」は鉄道車両のうち、貨物を搬送するタイプである。
[0050]
独立したエネルギー供給車両(例えば、エネルギー供給車両202)を使用するとき、当該供給車両202と機関車を電気的に連結する(例えば、配線212を介して)。これにより、機関車の牽引モーター208からや任意であるエネルギー供給牽引モーターからの発電ブレーキエネルギーを、供給車両に搭載したエネルギー貯蔵手段に貯蔵する。駆動運転中に、貯蔵したエネルギーを必要に応じて使用して、機関車の牽引モーター108や任意である供給車両202の牽引モーター208を稼働する。同様に、機関車のエンジンが駆動に必要な電力以上の電力を生成すると、余剰の主要な動力電力をエネルギー取得・貯蔵車両202にその後の使用のために貯蔵する。これは、例示であり、本発明の実施形態を制限するものではない。本発明は、例えば、電気エネルギーを列車の外部電源に供給することや、列車の外部電源から受け取ることを含む。
[0051]
もし、エネルギー供給車両202が機関車に電気的に連結されていない場合は(標準のコントロール信号以外において)、供給車両の牽引モーター208も自動的な態様で使用して、発電ブレーキエネルギーをエネルギー取得・貯蔵システム204にその後の使用のために供給する。こうした構成の一つの利点は、供給車両202を、ほとんど全ての列車のあらゆる機関車に連結することができることである。多目的ハイブリッド鉄道車両などの自立型供給車両の実施形態例を図13および図14に示し、以下に説明する。 )

ウ.「[0055]Advantageously, energy capture and storage system 204 can store dynamic braking energy without any electrical power transfer connection with the primary locomotive. In other words, energy capture and storage system 204 can be charged without a connection such as line 212 . This is accomplished by operating the locomotive engine 102 to provide motoring power to locomotive traction motors 108 while operating tender vehicle 202 in a dynamic braking mode. For example, the locomotive engine 102 may be operated at a relatively high notch setting while tender vehicle traction motors 208 are configured for dynamic braking. Energy from the dynamic braking process can be used to charge energy capture and storage system 204 . Thereafter, the stored energy can be used to power energy tender traction motors 208 to provide additional motoring power to the train. As further discussed below, in other embodiments, a second engine 302 may be one embodiment of a charging source that is located on a second vehicle 301 (See FIG. 3 and discussion below) or on a hybrid energy railway vehicle 1302 as a hybrid energy railway vehicle charging electric energy source 1304 . In such arrangements, energy capture and storage system 204 can be charged by means of the second charging engine 302 or hybrid energy railway vehicle charging source 1304 . In yet another embodiment, energy capture and storage system 204 may be charged from an external electric energy system 220 . One of the advantages of such a configurations are that tender vehicle 202 can be placed anyway in the train. For example, in one wireless embodiment, tender vehicle 202 provides its own local power (e.g., for controls or lighting) and communicates via a radio link with other vehicles in the train, as necessary. An air brake connection would likely also be connected to tender vehicle 202 . Of course, minimal wiring such as standard lighting wiring and control wiring could be optionally routed to tender vehicle 202 , if so desired. 」 (段落[0055])
(仮訳:[0055]
エネルギー取得・貯蔵システム204は、主機関車と電力を伝送するための接続を持つことなく、発電ブレーキエネルギーを貯蔵することができるといった利点がある。すなわち、エネルギー取得・貯蔵システム204は、配線212を接続することなく充電を行うことができる。このことは、機関車のエンジン102を駆動して、供給車両202を発電ブレーキモードで稼働しながら、動力を機関車牽引モーター108に供給することによって行うことができる。例えば、供給車両牽引モーター208を発電ブレーキ用に構成して、機関車エンジン102を比較的、高ノッチ設定で駆動することができる。発電ブレーキ工程からのエネルギーは、エネルギー取得・貯蔵システム204を充電するために使用することができる。従って、貯蔵したエネルギーを使用して供給牽引モーター208を動かし、列車にさらなる動力を与えることができる。以下にさらに述べるように、その他の実施形態では、第二エンジン302を充電源の一実施形態とすることができる。この第二エンジンは、第二車両301(図3参照。これについては以下に説明する)またはハイブリッドエネルギー鉄道車両充電電気エネルギー源1304としてハイブリッドエネルギー鉄道車両1302に配置される。こうした構成では、エネルギー取得・貯蔵システム204は、第二充電エンジン302またはハイブリッドエネルギー鉄道車両充電源1304によって充電される。さらに他の実施形態では、エネルギー取得・貯蔵システム204を、外部の電気エネルギーシステム220から充電することができる。こうした構成における一つの利点は、供給車両202を列車のいかなる場所にも設置することができることである。例えば、ワイヤーレスの一実施形態では、供給車両202がそれ自体の電力を供給し(例えば、制御や照明を行うために)、必要に応じて、列車の他の車両と無線リンクを介して通信することができる。供給車両202には、エアーブレーキ接続を行うことができる。また、もし必要であれば、供給車両202に、標準照明の配線および制御用の配線などの最低限の配線を通すことができる。)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしウ.並びに図面から、次のことが分かる。
カ.上記(1)ア.及びイ.並びに図2から、ハイブリッドエネルギー機関車システム200において、機関車は、エンジン102及び機関車牽引モーター108を備え、該エンジン102は鉄道車両を推進させるために該機関車牽引モーター108に電気エネルギーを供給するように動作可能であることが分かる。

キ.上記(1)ア.及びイ.並びに図2から、エネルギー供給車両202は、エネルギー供給牽引モーター208及びエネルギー取得・貯蔵システム204を備え、該エネルギー供給牽引モーター208は該エネルギー取得・貯蔵システムへの電気エネルギーの供給と該エネルギー取得・貯蔵システムからの電気エネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能であることが分かる。

ク.上記(1)イ.の「・・・[0049]・・・独立した供給車両を、機関車に連結した全ての貨車あるいはいくつかの貨車に配置したエネルギー取得・貯蔵サブシステムと置き換えることができる。・・・」という記載から、エネルギー供給車両202を2両有することが分かり、このこと及び上記キ.から、1両目のエネルギー供給車両202を第1のエネルギー供給車両202、また、2両目のエネルギー供給車両202を第2のエネルギー供給車両202とした場合に、第1のエネルギー供給車両202は、第1のエネルギー供給牽引モーター208及び第1のエネルギー取得・貯蔵システム204を備え、該第1のエネルギー供給牽引モーター208は該第1のエネルギー取得・貯蔵システムへの電気エネルギーの供給と該第1のエネルギー取得・貯蔵システムからの電気エネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能であることが分かり、また、第2のエネルギー供給車両202は、第2のエネルギー供給牽引モーター208及び第2のエネルギー取得・貯蔵システム204を備え、該第2のエネルギー供給牽引モーター208は該第2のエネルギー取得・貯蔵システムへの電気エネルギーの供給と該第2のエネルギー取得・貯蔵システムからの電気エネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能であることが分かる。

ケ.上記(1)イ.の「・・・[0050]・・・独立したエネルギー供給車両(例えば、エネルギー供給車両202)を使用するとき、当該供給車両202と機関車を電気的に連結する(例えば、配線212を介して)。・・・」という記載及び上記(1)ウ.の「[0055]エネルギー取得・貯蔵システム204は、主機関車と電力を伝送するための接続を持つことなく、発電ブレーキエネルギーを貯蔵することができるといった利点がある。すなわち、エネルギー取得・貯蔵システム204は、配線212を接続することなく充電を行うことができる。」という記載から、エネルギー供給車両202は、機関車から可逆的に電気的に分離されていることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「エンジン102及び機関車牽引モーター108を備えた機関車であって、該エンジン102は鉄道車両を推進させるために該機関車牽引モーター108に電気エネルギーを供給するように動作可能である機関車と、
第1のエネルギー供給牽引モーター208及び第1のエネルギー取得・貯蔵システム204を備えた第1のエネルギー供給車両202であって、該第1のエネルギー供給牽引モーター208は該第1のエネルギー取得・貯蔵システムへの電気エネルギーの供給と該第1のエネルギー取得・貯蔵システムからの電気エネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第1のエネルギー供給車両202と、
第2のエネルギー供給牽引モーター208及び第2のエネルギー取得・貯蔵システム204を備えた第2のエネルギー供給車両202であって、該第2のエネルギー供給牽引モーター208は該第2のエネルギー取得・貯蔵システムへの電気エネルギーの供給と該第2のエネルギー取得・貯蔵システムからの電気エネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第2のエネルギー供給車両202と、
を備え、
前記第1のエネルギー供給車両202と前記第2のエネルギー供給車両202は、機関車から可逆的に電気的に分離されている、
ハイブリッドエネルギー機関車システム200。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

2-2.本件補正発明と引用文献記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「ハイブリッドエネルギー機関車システム200」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「車両の推進システム」に相当し、以下同様に、それぞれの技術的意義及び機能からみて、引用文献記載の発明における「エンジン102」は「エンジン」に、「機関車牽引モーター108」は[第1の駆動モータ]に、「機関車」は「第1の牽引駆動システム」に、「鉄道車両」は「車両」に、「電気エネルギー」は「エネルギー」に、「第1のエネルギー供給牽引モーター208」は「第2の駆動モータ」に、「第1のエネルギー取得・貯蔵システム204」は「第1のエネルギー蓄積デバイス」に、「第1のエネルギー供給車両202」は「第2の牽引駆動システム」に、「第2のエネルギー供給牽引モーター208」は「第3の駆動モータ」、「第2のエネルギー取得・貯蔵システム204」は「第2のエネルギー蓄積デバイス」に、「第2のエネルギー供給車両202」は「第3の牽引駆動システム」に、それぞれ相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、
「エンジン及び第1の駆動モータを備えた第1の牽引駆動システムであって、該エンジンは車両を推進させるために該第1の駆動モータにエネルギーを供給するように動作可能である第1の牽引駆動システムと、
第2の駆動モータ及び第1のエネルギー蓄積デバイスを備えた第2の牽引駆動システムであって、該第2の駆動モータは該第1のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第1のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第2の牽引駆動システムと、
第3の駆動モータ及び第2のエネルギー蓄積デバイスを備えた第3の牽引駆動システムであって、該第3の駆動モータは該第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの供給と該第2のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの受け取りの両方を行うように動作可能である第3の牽引駆動システムと、
を備え、
前記第2の牽引駆動システムと前記第3の牽引駆動システムのうちの少なくとも一方は、第1の牽引駆動システムから可逆的に電気的に分離されている、
車両の推進システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明においては、第1の駆動モータは第1の牽引駆動システムだけに電気的に結合されており、第1の牽引駆動システムは、第2の牽引駆動システムが動作する第2の電圧と異なる電圧である第1の電圧で動作するものであるのに対して、引用文献記載の発明においては、これらの点が明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

2-3.当審の判断
上記相違点について検討する。
審尋において設計事項を示す文献として例示した特開2007-1325号公報には、「【0025】
エンジンルーム内には、エンジン20とベルト41で連結された交流電動発電機からなるモータジェネレータ(M/G)40を備えている。モータジェネレータ40は、例えば、巻線界磁形3相交流電動機を用い、車載バッテリ電圧(例えば12V)よりは、通常は高い電圧、例えば42Vでの駆動及び発電が可能である。モータジェネレータ40は、ベルト41を介してエンジン20の再始動に用いられる。なお、エンジン20が冷えている時は、エンジン20は、12Vの車載バッテリ(Ba)42によって駆動されるスタータ44によって始動される。また、モータジェネレータ40は、エンジン20とトランスミッション22を介して前輪26A,26Bを駆動するのに用いられる。さらに、モータジェネレータ40は、ベルト41を介して、エンジン20により駆動され、又は、エンジン20とトランスミッション22を介して前輪26A,26Bにより駆動されて発電する。モータジェネレータ40の発電電力は、モータ30の電源と、車載バッテリ(Ba)42の充電と、車両のその他補器類(L)43の電源とを兼ねる。」(段落【0025】)、「【0044】
次に、ステップs30において、CPU66は、モータジェネレータ40からの発電力を用いて、蓄電池CDSを充電する。すなわち、図4に示すように、エンジン20の駆動力によってモータジェネレータ40が駆動され、その発電力によって、蓄電器CDSが充電される。なお、モータジェネレータ40の発電電力は、車載バッテリ42にも充電される。このときの蓄電器CDSに対する充電電圧は、車載バッテリ42の12Vよりは高電圧である。モータジェネレータ40の発電電圧は、モータジェネレータ40の回転数や、そのベクトル制御の状態によっても異なるが、例えば、36V程度である。なお、蓄電器CDSの充電は速やかに行われるので、CPU66からECU50に通知された蓄電池充電指令から所定時間後に、ECU50は、エンジン20の回転を停止して、アイドルストップ状態とする。」(段落【0044】)、「【0052】
本実施形態においては、アイドルスタート時には、モータジェネレータ40は、車載バッテリ42の電圧(例えば、12V)と、蓄電器CDSの電圧(例えば、36V)によって駆動される。したがって、時刻0からモータジェネレータ40に通電して、モータジェネレータ40の駆動力によってエンジン20を回転する場合、エンジン回転数Neを急激に増加させることができる。
【0053】
一方、車載バッテリ42の電圧(例えば、12V)のみをモータジェネレータ40に供給して、モータジェネレータ40の駆動力によってエンジン20を回転する場合、エンジン回転数Neを緩やかにしか増加させることができないものである。
【0054】
したがって、本実施形態の場合、図6に実線Xで示すように、エンジン回転数Neは急激に増加し、エンジン回転数NeがN1(例えば、1000rpm)になる直前のタイミングG1でエンジンにガソリンを供給すると、時刻t1において、エンジンは速やかに完爆することができる。エンジンが完爆すれば、速やかに、モータジェネレータ40をモータ駆動モードから発電モードに切り換えて、発電を開始することができる。したがって、モータジェネレータ40の発電電力で、速やかに、モータ30を駆動開始することができ、アイドルスタート後の発進時の加速性を向上することができる。ここで、時刻t1は、例えば、0.2秒程度である。
【0055】
それに対して、車載バッテリ42の電圧(例えば、12V)のみをモータジェネレータ40に供給して、モータジェネレータ40の駆動力によってエンジン20を回転する場合、時刻t3まで緩やかにエンジン回転数が増加し、エンジン回転数Neが回転数N2(例えば、400rpm)になったタイミングG2において、エンジンにガソリンを供給すると、この時点から次第にエンジンが掛かり始め、時刻t2において、エンジンが完爆状態となる。ここで、時刻t1は、例えば、0.4秒程度である。」(段落【0052】ないし【0055】)及び「【0058】
また、発電用のモータジェネレータは、ベクトル制御により、インバータを用いてPWM駆動されるため、低回転時での発電を可能にし、且つ、高応答性が得られる。したがって、このモータジェネレータの発電電力で駆動される後輪駆動用直流電動機からは、大きな駆動力が得られるとともに、応答性も向上する。スリップなどの過渡的に駆動力が必要な場合でも、応答遅れを生じず、小型化を図り、コスト低減ができる。なお、200Vや300Vの高圧バッテリを用い、200V或いは300V駆動の交流電動機で後輪を駆動する方式であれば、駆動力も大きく、応答性も高くできるが、高圧の大型バッテリや大型の交流モータが必要であるため、小型化することができないものである。また、直流電動機の方が、交流電動機に比べて信頼性も高いものである。」(段落【0058】)と記載されているように、「モータジェネレータを複数の電圧で駆動・発電すること」は設計事項(以下、「設計事項」という)である。
しかしながら、引用文献記載の発明において上記設計事項を参酌しても、一つのシステム内におけるモータを複数の電圧で駆動することは想到し得るものの、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項における「第1の牽引駆動システムは、第2の牽引駆動システムが動作する第2の電圧と異なる電圧である第1の電圧で動作するもの」という点までもが容易に想到し得たということはできない。
また、引用文献の段落[0051]の「もし、エネルギー供給車両202が機関車に電気的に連結されていない場合は」という記載を参酌しても、機関車(本件補正発明における「第1の牽引駆動システム」に相当。)における「機関車牽引モーター108」(本件補正発明における「第1の駆動モータ」に相当。)」の電気的な結合関係は明らかでないから、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項における「第1の駆動モータは第1の牽引駆動システムだけに電気的に結合されて」いる点が引用文献に記載及び示唆されているということはできない。
そして、本件補正発明は、本件出願の明細書の段落【0016】に「低速度/大トルク動作と高速度/中程度トルク動作の両方において効率のよいハイブリッド動作が可能となる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件補正発明は、引用文献記載の発明及び上記設計事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合する。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3.本件出願の請求項1ないし6に係る発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、本件出願の請求項2ないし6に係る発明については、いずれも本件出願の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、本件出願の請求項2ないし6に係る発明も、上記で検討したことと同じ理由により拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-05 
出願番号 特願2010-507498(P2010-507498)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (B60K)
P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 和人大山 健  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 中川 隆司
加藤 友也
発明の名称 推進システム  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  

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