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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1285247
審判番号 不服2013-5926  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-03 
確定日 2014-03-19 
事件の表示 特願2011- 3508「再構成可能なプログラマブルロジックデバイスコンピュータシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 6日出願公開、特開2011- 90710、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成11年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年11月20日、米国)に出願した特願2000-584401号(以下、「原願」という。)の一部を平成22年3月16日に新たな特許出願とした特願2010-59968号の一部をさらに、平成23年1月11日に新たな特許出願としたものであって、平成23年2月10日付けで審査請求がなされ、平成24年4月24日付けで拒絶理由通知(同年5月7日発送)がなされ、同年7月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年8月14日付けで最後の拒絶理由通知(同年8月16日発送)がなされ、同年11月15日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年11月29日付けで前記平成24年11月15日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年12月4日発送)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(同年12月4日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成25年4月3日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成25年5月1日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年7月5日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年7月8日発送)がなされ、同年9月20日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成25年4月3日付け手続補正

平成25年4月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年7月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8の記載

「 【請求項1】
所与のアプリケーションを処理するためにコンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備える再構成可能なコンピュータにおいてリソースを管理する方法であって、該方法は、該コンピュータシステムによって実行され、該コンピュータシステムは、プロセッサとメモリとを備え、
該方法は、
該プロセッサが、該メモリから取り出されたリソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束に少なくとも基づいて、該所与のアプリケーションの複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割することであって、該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能、または、該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能のいずれかによって実行されることが可能である、ことと、
該プロセッサが、
該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束と、
ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソースと、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、該プログラマブルロジックは、前記所与のアプリケーションを処理するために前記コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、
該プログラマブルロジックは、前記所与のアプリケーションを処理するために前記コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成可能なコンピュータは、部分的にマイクロプロセッサ上で実行されるとともに部分的にプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、該プログラマブルロジックは、該所与のアプリケーションを処理するために該コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リソースライブラリは、前記プログラマブルロジックリソースの特性を特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リソースライブラリは、前記プログラマブルロジックリソースの特性および前記再構成可能なコンピュータに関連付けられたメモリの特性を特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、ユニットハードウェア概念に基づいてハードウェア機能を作成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記ハードウェア機能と前記ソフトウェア機能とを自動的に分割する、請求項1に記載の方法。」

を、

「 【請求項1】
所与のアプリケーションを処理するためにコンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備える再構成可能なコンピュータにおいてリソースを管理する方法であって、該方法は、該コンピュータシステムによって実行され、該コンピュータシステムは、プロセッサとメモリとを備え、
該方法は、
該プロセッサが、該メモリから取り出されたリソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性とに少なくとも基づいて、該所与のアプリケーションの複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割することであって、該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能およびハードウェア機能の両方に分割される、ことと、
該プロセッサが、
ランタイム時の該再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅であって、該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性は、該利用可能なリソースの処理能力を含む、処理バンド幅と、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記再構成可能なコンピュータは、少なくとも1つのプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、該プログラマブルロジックは、前記所与のアプリケーションを処理するために前記コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成可能なコンピュータは、マイクロプロセッサ上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、
該プログラマブルロジックは、前記所与のアプリケーションを処理するために前記コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成可能なコンピュータは、部分的にマイクロプロセッサ上で実行されるとともに部分的にプログラマブルロジックデバイス上で実行される中央プロセッシングユニットと、該中央プロセッシングユニットに結合されたプログラマブルロジックとを備え、該プログラマブルロジックは、該所与のアプリケーションを処理するために該コンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リソースライブラリは、前記プログラマブルロジックリソースの特性を特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リソースライブラリは、前記プログラマブルロジックリソースの特性および前記再構成可能なコンピュータに関連付けられたメモリの特性を特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、ユニットハードウェア概念に基づいてハードウェア機能を作成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記ハードウェア機能と前記ソフトウェア機能とを自動的に分割する、請求項1に記載の方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。)
(当審注:下線は、補正箇所を示すものとして、出願人が付与したものである。)

に補正するものである。


第3 原査定の理由の概要

1.平成24年4月24日付け拒絶理由通知

平成24年4月24日付けで拒絶理由が通知されたが、その内容は下記のとおりである。

『1.この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。



請求項1に記載される発明(以下「特定発明」という。)が解決しようとする課題は、再構成可能なコンピュータ用のソフトウェアを開発することであり、請求項10乃至13に記載される発明が解決しようとする課題は、請求項10の記載からして、再構成可能なコンピュータのリソースを管理することであると認められる。
したがって、請求項10乃至13に記載される発明は、特定発明と、解決しようとする課題が同一でない。
よって、請求項10乃至13に記載される発明は、特定発明に対し、特許法第37条第1号に掲げる関係を有しない。
また、特定発明の主要部は、ランタイムに機能を分割してソフトウェア機能又はハードウェア機能のいずれを使用するかを決定することであり、請求項10乃至13に記載される発明の主要部は、請求項10にの記載からして、仮想ロジックマネージャを使用してプログラマブルロジックリソース配分を行っている間に二次記憶装置とプログラマブルロジックリソースとの間において構成データを交換することであると認められる。
したがって、請求項10乃至13に記載される発明は、特定発明と、主要部が相違する。
よって、請求項10乃至13に記載される発明は、特定発明に対し、同条第2号に掲げる関係を有しない。
さらに、請求項10乃至13に記載される発明は、特定発明に対し、同条第3号、第4号、第5号に掲げるいずれの関係も有しない。

この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項1乃至9以外の請求項に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。

2.この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。



開発ツールを用いてソフトウェアの開発を行うのは通常人間(開発者)であることが出願時の技術常識である。すると、「ソフトウェアを開発するために開発ツールを使用する方法」である請求項1乃至9に係る発明は、人間が開発ツールを使用してソフトウェアの開発を行う方法と解される。
同様に、請求項1乃至9に係る発明において、「システム設計言語」を使用してアプリケーションの機能を形成(記述)することも、通常人間が行うことである。
さらに、請求項9には、人間が「手動」で行うことが特定されている。
よって、請求項1乃至9に係る発明は、人間の精神活動を用いたものであるから、全体としてみれば自然法則を利用したものではないから、特許法第29条第1項柱書の「発明」にあたらない。

3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1の記載において、「機能をランタイム中に存在するソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割」することは、明細書には記載も示唆もない。
例えば、明細書の段落【0045】には、「機能の拘束を満たすことができるリソースが存在するかどうかを判断することである。このようなリソースが存在する場合、このリソースが前記機能に対して配分される。」と記載されているように、機能に対するリソースの配分は、リソースが存在する場合にのみ行われている。また、段落【0061】には、「分割手段72は仕様70をソフトウェア機能78およびハードウェア機能80に分割することができる。」と記載されているが、ここで、「分割」される機能は、「ランタイム中に存在する」ことは保証されていない。
よって、請求項1及びこれ引用する請求項2乃至9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項1の記載「ソフトウェア開発ツールを使用する方法であり」との前提部の記載からすると、以降の「分割」及び「決定」は、ソフトウェア開発ツールを使用し、かつ、当該ソフトウェア開発ツールが「ランタイム中」であるときに実現されるものである。
しかしながら、そのような態様は、明細書及び図面には記載も示唆もない。
よって、請求項1及びこれ引用する請求項2乃至9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(3)請求項1の記載において、「機能」が、「ランタイム中」に存在する「ハードウェア機能」および「ソフトウェア機能」に「分割」(割当て)されているという前提の下で、「ランタイム中にソフトウェア機能を使用するかあるいはハードウェア機能を使用するかを決定する」ことは、明細書及び図面には記載も示唆もない。(明細書の段落【0061】には、「機能的分割部分」について、ソフトウェア又はハードウェアの何れで実行するかを決めずに、ソフトウェア操作およびハードウェア操作の両方を作成し、ランタイムに何れで実行するかを決定することが記載されている。)
(4)請求項5に記載の「プログラマブルロジックリソースの特性上の分割手段に対して情報を提供する」は、明細書及び図面には記載も示唆もない。
請求項6の記載についても同様。
(5)請求項6に記載の「再構成可能なコンピュータ内のメモリ」、即ち、[メモリ」自体が「再構成可能」であることは、明細書及び図面には記載も示唆もない。
(6)請求項7の記載において、「作成およびコンパイル」された「ハードウェア機能」をさらに「形成」することは、明細書及び図面には記載も示唆もない。

よって、請求項1乃至9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
4.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1に記載の「機能を…ソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割し」は、日本語として不明確である。(一つのものを2つのものに同時に「分割」することは不可能である。前記「および」を”または”にすると明確になる。明細書の段落【0011】、【0061】の記載についても同様。)
(2)請求項1の記載において、「機能」は、「ランタイム中」に存在する「ハードウェア機能」と「ソフトウェア機能」に「分割」されている。したがって、分割された「機能」の各部分は、「ランタイム中」には、「ハードウェア機能」又は「ソフトウェア機能」のいずれかで実行するかがすでに決まっていることになる。
よって、「ランタイム中にソフトウェア機能を使用するかあるいはハードウェア機能を使用するかを決定する」ことは、技術的にみて明らかに矛盾している。
したがって、請求項1及びこれを引用する請求項2乃至9に係る発明は、技術的な欠陥を含み、不明確である。
(3)請求項5に記載の「プログラマブルロジックリソースの特性上の分割手段に対して情報を提供する」は、日本語として意味が不明である。(例えば、”プログラマブルロジックリソースの特性上の情報を分割手段に対して提供する”とすれば明確となる。)
請求項6の記載についても同様。
(4)請求項7の記載において、すでに「作成およびコンパイル」された「ハードウェア機能」を、さらに「形成」するとは、どのような意味であるのか日本語として不明である。

よって、請求項1乃至9に係る発明は明確でない。

5.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(1)請求項1、2、8、9について
引用文献1、2

引用文献1(特に、図1参照。)には、協調合成システムにより、システム仕様記述を解析・シミュレーションし、システム仕様と制約条件から、最適なハードウェア仕様とソフトウェア仕様とを分割し、それぞれの部分とその間のインタフェースを自動合成する協調設計システムが記載されている。
引用文献2(特に、段落【0069】乃至【0073】、図16、図17参照。)には、メインプロセッサと拡張ハードウェア(プログラマブルロジック)とを備え、複数のアプリケーションを並列に実行可能なシステムにおいて、各アプリケーションに対応するメインプロセッサコードと拡張コードを用意しておき、あるアプリケーションの実行要求がなされると、当該アプリケーションをメインプロセッサで実行するか、拡張ハードウェアで実行するかを、拡張ハードウェア管理機構により、アプリケーションに必要なリソースに関する制約と、その時点におけるリソースの状態とに基づいて決定することが記載されている。
よって、引用文献1において、システム仕様を、ハードウェア仕様とソフトウェア仕様とに完全に分割することに替えて、あるいは、そのようにすることに加えて、分割部分を、ハードウェア仕様とソフトウェア仕様との両方に割り当て、両方に対応するコードを生成しておき、実行時に、ハードウェア又はソフトウェアのいずれで実行するかを状況に応じて動的に決定するよう構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)請求項3、4について
引用文献1、2、3

引用文献3に記載されているように、FPGA上にプロセッサを構成しプログラムを実行する装置は周知である。また、複数のプロセッサで構成される装置も周知のものである。
したがって、引用文献1及び2において、複数のCPUによりシステムを構成するとともに、そのすべて又は一部をプログラマブルロジック上に構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)請求項5、6について
引用文献1、2、3

引用文献1において、システム仕様を分割する協調合成システムは、シミュレーションを行っているが、その際に、使用するプログラマブルロジック、CPU、CPU等のハードウェアリソースの特性に関する情報を用いることは自明であり、当該情報をライブラリとして保持しておくことに格別な困難性はない。また、引用文献2の記載においても、図17に記載されている情報のうち、ハードウェアに関する特性情報をライブラリとして保持することに格別な困難性はない。

(4)請求項7について
引用文献1、2、3

引用文献1において、ハードウェアの機能として分割された仕様は、論理合成可能なRTLモデルに変換されている。また、引用文献2において、各アプリケーションは、拡張ハードウェアに実装するための拡張コードとして具現化されている。
したがって、引用文献1において、「ユニットハードウェア概念」に基づいてハードウェア機能を作成又はコンパイルすることは当業者にとって自明又は容易なことである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.片岡、外2名,ハードウェア/ソフトウェア協調設計におけるシステム仕様記述,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,1998年 9月22日,第98巻、第298号(FTS98-86),第111-118頁
2.特開平10-78932号公報
3.特表平7-503804号公報』

2.平成24年8月14日付け拒絶理由通知

平成24年8月14日付けで拒絶理由が通知されたが、その内容は下記のとおりである。

『1.平成24年7月24日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)補正後の請求項1の記載において、
「該プロセッサが、
該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束と、
ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソースと、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定することと」
は、出願当初の明細書等には記載も示唆もされていない。
特に、「リソース要件」という語句は、出願当初の明細書等には記載されたものではなく、出願当初の明細書等に記載されたどの事項に該当するのかも不明である。また、出願当初の明細書の段落【0068】及び図6の記載において、「ランタイム環境」に入力されているのは「制約」(74)のみであり、出願当初の明細書の段落【0072】の記載においても、ソフトウェア手段又はハードウェア手段の何れを使用するかに関し、ランタイム時の決定に用いられているのは、「使用可能なリソース」、「アプリケーション技術者のインストラクション」及び「拘束」のみであり、「リソース要件」なるものがランタイム時に使用されることを示唆する記載は他の箇所にも存在しない。

なお、当該補正がなされた請求項1に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該請求項1及びこれを引用する請求項2乃至8に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1乃至8に係る発明において、
「該プロセッサが、
該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束と、
ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソースと、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定することと」、特に、「リソース要件」は、明細書及び図面には記載も示唆もない。

よって、請求項1乃至8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1に記載の「該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能、または、該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能のいずれかによって実行されることが可能である」は、日本語として意味が不明である。
(分割された機能が、分割に応じた機能によって「実行されることが可能」であることは自明である。明細書の段落【0061】、【0066】及び【0072】には、アプリケーションの機能の中には、ハードウェア機能(構成パターン90)とソフトウェア機能(スレッド88)の両方のバージョンに対応するように分割(コンパイル)されるものが存在し、そのような機能は、実行(ランタイム)時に、何れの機能(手段)で実行するかを決定することが記載されているが、請求項1の上記記載が、このような態様を意味しているとしている場合、日本語として不明確といわざるを得ない。また、このような態様を意味していないとするならば、結局意味しているところが不明である。)
(2)請求項1に記載の「ソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束」において、「ソースライブラリ」によって「特定」されるのは、「リソース」であるのか「拘束」であるのか、日本語として不明確である。(「拘束」である場合、請求項1に係る当該補正は、いわゆる新規事項の追加にあたる。)

よって、請求項1及びこれを引用する請求項2乃至8に係る発明は明確でない。

4.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1乃至8に係る発明は、「コンピュータシステムの能力を最適化する」ことを目的とし、そのために、「リソースの拘束」、「利用可能なリソース」及び「リソース要件」とを用いて「分割」を行うものである。
しかしながら、
a)発明の詳細な説明には、「リソース要件」がいかなる要件であり、どのように用いるのかについて何ら記載がなく、出願時の技術常識から自明ともいえない。
b)「リソースの拘束」、「利用可能なリソース」及び「リソース要件」とをどのように用いて「分割」を行うのか、発明の詳細な説明には何ら具体的なアルゴリズムが記載されていない。よって、発明の詳細な説明には「最適化」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載していない。(原出願である特願2010-59968号の特許された請求項には「コンピュータの能力を向上させる」と記載されている。)

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1乃至8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。』

3.平成24年11月29日付け補正却下の決定

平成24年11月29日付けで平成24年11月15日付けの手続補正を却下する旨の補正の却下の決定がなされたが、その内容は下記のとおりである。

『補正後の請求項1の記載
「該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性と、
ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソースと、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定する」において、「該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソース」と「該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性」とを用いて、「ソフトウェア機能」と「ハードウェア機能」のいずれかをランタイム中に決定することは、出願当初の明細書等には記載も示唆もない。
すなわち、出願当初の明細書の段落【0040】乃至【0043】には、「ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソース」(各処理バンド幅)と、「リソース要件」とのみに基づいて、決定が行われることが記載されている。
出願人は、平成24年11月15日付けの意見書において、「当業者であれば、要求される処理バンド幅が、補正後の請求項1に規定される「リソースライブラリによって特定された・・・リソース」、「該リソースの特性」、「利用可能なリソース」に依存していることを理解することができます。」と主張している
が、そもそも、「ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソース」(ハードウェア処理バンド幅/ソフトウェア処理バンド幅)があれば、リソースライブラリに格納された仕様情報は不要である。また、出願当初の明細書の段落【0040】の記載によると、「リソース要件」を満たすか否かの判断の対象となる「処理バンド幅」は、処理をしていない「時間の総量」に基づいて決定しているから、段落【0064】に記載の「リソースの特性」(データパス幅など)とは無関係である。
また、出願人は、補正後の請求項1に記載の「リソース」、「リソースの特性」、「利用可能なリソース」及び「リソース要件」のそれぞれをどのように用いて「決定」を行うのかについて具体的に説示した上で補正の根拠を説明していない。
よって、出願人の主張は採用しない。

したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
よって、この補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。』

4.平成24年11月29日付け拒絶査定

平成24年11月29日付けで拒絶査定がなされたが、その内容は下記のとおりである。

『この出願については、平成24年8月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
平成24年11月15日付けの手続補正は、本拒絶査定と同日付けで却下された。

[補足]補正却下した上記手続補正による請求項の記載について
請求項1に記載の「所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能および該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能の両方に分割される」及び「該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するか」は、冗長で日本語として明確でない。
(例えば、”所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能とハードウェア機能との両方に分割される”、”ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するか”などと記載すると明確となる。)』


第4 当審の判断(審判請求時の補正について)

本件補正は、平成25年4月3日付け手続補正の請求項1記載の発明を特定するための事項(以下、「発明特定事項」という。)であるところの、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「プロセッサが、該メモリから取り出されたリソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束に少なくとも基づいて、該所与のアプリケーションの複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割する」を、
「プロセッサが、該メモリから取り出されたリソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性とに少なくとも基づいて、該所与のアプリケーションの複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割する」に、(以下、当該補正を「補正事項1」という。)

「該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能、または、該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能のいずれかによって実行されることが可能である」を、
「該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能およびハードウェア機能の両方に分割される」に、(以下、当該補正を「補正事項2」という。)

「プロセッサが・・・該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束と、ランタイム時に該再構成可能なコンピュータが利用可能なリソース・・・を含む」を、
「プロセッサが・・・ランタイム時の該再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅であって、該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性は、該利用可能なリソースの処理能力を含む、処理バンド幅・・・を含む」に、(以下、当該補正を「補正事項3」という。)

「プロセッサが・・・該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定すること・・・を含む」を、
「プロセッサが・・・ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定すること・・・を含む」に、(以下、当該補正を「補正事項4」という。)

それぞれ補正するものである。

1.新規事項の有無

本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、即ち、本件補正が願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、これを「当初明細書等」という。)の範囲内でなされたものであるかについて、以下に検討する。

(1)補正事項1について

出願当初の明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0061】
図6には、高レベルの設計仕様またはアルゴリズムのコンパイル、ならびに再構成可能なハードウェア構造上での実行が詳細に示されている。仕様(アルゴリズム)70、拘束のセット74、およびリソースライブラリ76がソフトウェア開発ツール192上に入力として提供される。仕様は、システム設計言語で書くことができる。仕様において、アプリケーション技術者はシステム設計言語によって提供されるツールを使用してアプリケーションを書くだけで良い。アプリケーション技術者は、システム設計言語によって作成された機能のソフトウェアバージョンならびにハードウェアバージョンを考慮する必要はない。分割手段72は仕様70をソフトウェア機能78およびハードウェア機能80に分割することができる。その結果、各機能は完全にソフトウェア上(例えばマイクロプロセッサ)で実行するか、完全にハードウェア上(例えばプログラマブルロジックデバイス)で実行するか、またはそれらの組み合わせとすることができる。それぞれの機能的分割部分に対してソフトウェア操作およびハードウェア操作の両方が形成され、これは所要の部分手段を実行する決定がランタイムが開始するまで遅延する可能性があるからである。システム設計言語プロファイラは、システム設計言語コード上で実行され重要なパスの分析および区分の割当てを行うこともできる。
【0062】
分割操作は拘束74を考慮に入れることもできる。2つの一般型式の拘束74が存在する。第1に、システム設計言語仕様70の機能的限界は、機能間のタイミング関係を含むことができ、機能間に並行または連続的拘束が存在することも可能である。第2に、コスト関数はリソースライブラリ76内のハードウェアリソースを使用することに関連付けられる。リソースライブラリ76は、使用可能な各ハードウェアリソースついての詳細を含んでいる(一般的にこれらはマイクロプロセッサ、メモリ、およびプログラマブルロジックデバイス)。これらは、計算速度、待ち時間、ならびにリソースの応答時間あるいは時間のコスト関数(通常はソフトウェア手段に対する)、エリア(通常はハードウェア手段に対する)、または通信(時間およびエリアの両方にまたがる)等を含むことができる。」

と記載されるように、ソフトウェア機能およびハードウェア機能への分割は、再構成可能なコンピュータのリソースと、再構成可能なコンピュータのリソースの特性(計算速度、待ち時間、応答時間、コスト関数、等)とに少なくとも基づいて実行されているものと解される。

したがって、上記補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められる。

(2)補正事項2及び補正事項4について

出願当初の明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0037】
しかしながら、本発明に係る仮想ロジックマネージャは、プログラマブルロジックデバイスのランタイム配分を行うことができる。仮想ロジックマネージャは、多様なアプリケーションが要求するプログラマブルロジック内で実行される機能のランタイム要件を満たすものである。1つのアプリケーションは、要求を処理するために存在するプログラマブルロジックデバイスを使用して処理される以上の機能を要求することがあり得る。従って、仮想ロジックマネージャは、プログラマブルロジック内で実行される機能のランタイム交換を管理する必要がある。」

と記載され、また、上記段落【0061】に「分割手段72は仕様70をソフトウェア機能78およびハードウェア機能80に分割することができる。その結果、各機能は完全にソフトウェア上(例えばマイクロプロセッサ)で実行するか、完全にハードウェア上(例えばプログラマブルロジックデバイス)で実行するか、またはそれらの組み合わせとすることができる」と記載されるように、当初明細書等には、ランタイム中に、アプリケーションの複数の機能が、ソフトウェア機能およびハードウェア機能のどちらを使用するか決定され、ソフトウェア機能およびハードウェア機能の両方に分割される態様が記載されているものと解される。

したがって、上記補正事項2及び上記補正事項4は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められる。

(3)補正事項3について

出願当初の明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0039】
図4には、システム内で実行する機能をロードするプロセスが示されている。このプロセスは、機能が実行される時間に使用される最適の機能手段(ソフトウェアまたはハードウェア)を選択するために使用される。
【0040】
使用可能なシステムのハードウェア処理バンド幅ならびに使用可能なシステムのソフトウェア処理バンド幅がステップ150において決定される。ソフトウェア処理バンド幅は、システム内の全てのマイクロプロセッサが休止中で機能を実行していない時間の総量から算出される。ハードウェア処理バンド幅は、システム内の非使用のプログラマブルロジックリソースと使用されているプログラマブルロジックリソースがデータを処理していない時間の総量とに基づいて計算される。」

と記載されるように、処理バンド幅は、非使用のリソース(請求項1記載の「使用されていないリソースの数」に相当)と、使用されているリソースがデータを処理していない時間の総量(請求項1記載の「使用されているリソースが利用可能である時間の量」に相当)とに基づいて計算される態様がよみとれる。

そして、上記段落【0039】の「最適の機能手段(ソフトウェアまたはハードウェア)を選択する」との記載、上記段落【0062】の「分割操作は拘束74を考慮に入れることもできる。2つの一般型式の拘束74が存在する。・・・第2に、コスト関数はリソースライブラリ76内のハードウェアリソースを使用することに関連付けられる。リソースライブラリ76は、使用可能な各ハードウェアリソースついての詳細を含んでいる(一般的にこれらはマイクロプロセッサ、メモリ、およびプログラマブルロジックデバイス)。これらは、計算速度、待ち時間、ならびにリソースの応答時間あるいは時間のコスト関数(通常はソフトウェア手段に対する)、エリア(通常はハードウェア手段に対する)、または通信(時間およびエリアの両方にまたがる)等を含むことができる」との記載からすると、ランタイム時に、最適の機能手段を分割する際に、リソースライブラリを使用する態様がよみとれ、また、当該リソースライブラリが、再構成可能なコンピュータのリソースの特性(計算速度、待ち時間、応答時間、コスト関数、等)を含む態様もよみとれる。

以上から、上記補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められる。

(4)小括

以上より、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされており、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

2.補正の目的要件

次に、本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。

(1)補正事項1について

当該補正は、上記平成24年8月14日付けで通知された拒絶理由の理由3の『(2)請求項1に記載の「ソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースの拘束」において、「ソースライブラリ」によって「特定」されるのは、「リソース」であるのか「拘束」であるのか、日本語として不明確である。』に対するものであり、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明(以下、単に「不明りょうな記載の釈明」と記す。)を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2及び補正事項4について

当該補正は、上記平成24年11月29日付けで通知された拒絶査定の[補足]の『請求項1に記載の「所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能および該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能の両方に分割される」及び「該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するか」は、冗長で日本語として明確でない。(例えば、”所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能とハードウェア機能との両方に分割される”、”ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するか”などと記載すると明確となる。)』に対するものであり、不明りょうな記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)補正事項3について

当該補正は、上記平成24年8月14日付けで通知された拒絶理由の理由1及び理由2に記載された「リソース要件」について、ランタイム時にどのように使用されるかを明確化するための補正であり、不明りょうな記載の釈明を目的とするものに該当する。

(4)小括

以上より、本件補正は、いずれも、不明りょうな記載の釈明を目的としたものと認められ、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合している。


第5 当審の判断(原査定の理由について)

1.平成24年4月24日付け拒絶理由通知について

(1)理由1

上記平成24年7月24日付け手続補正により、本願出願時の請求項10ないし請求項13が削除され、当該補正により、理由1は解消されたものと認められる。

(2)理由2

上記平成24年7月24日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、コンピュータシステムにおけるプロセッサによって実行される方法であることが明確となったことから、理由2は解消されたものと認められる。

(3)理由3

上記「第4 当審の判断(審判請求時の補正について)」の「1.新規事項の有無」で検討したように、上記平成25年4月3日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、新規事項を含んでいないものと認められるから、理由3は解消されたものと認められる。

(4)理由4

上記平成24年7月24日付け手続補正により、理由4で指摘した不明りょうな記載は明確なものとなったものと認められるから、理由4は解消されたものと認められる。

(5)理由5

(5-1)本願発明

本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2 平成25年4月3日付け手続補正」において、補正後の請求項1として引用した、次の記載のとおりのものである。

「所与のアプリケーションを処理するためにコンピュータシステムの能力を最適化するように再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備える再構成可能なコンピュータにおいてリソースを管理する方法であって、該方法は、該コンピュータシステムによって実行され、該コンピュータシステムは、プロセッサとメモリとを備え、
該方法は、
該プロセッサが、該メモリから取り出されたリソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性とに少なくとも基づいて、該所与のアプリケーションの複数の機能をソフトウェア機能およびハードウェア機能に分割することであって、該所与のアプリケーションの該複数の機能のうちの所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能およびハードウェア機能の両方に分割される、ことと、
該プロセッサが、
ランタイム時の該再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅であって、該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性は、該利用可能なリソースの処理能力を含む、処理バンド幅と、
該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と
に少なくとも基づいて、該所与の少なくとも1つの機能を実行するために、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを、該所与の少なくとも1つの機能に対して、ランタイム中に決定することと
を含む、方法。」

(5-2)引用文献1

原審の上記平成24年4月24日付けの拒絶理由通知において引用され、原願の優先日前に頒布された刊行物である、『片岡、外2名,ハードウェア/ソフトウェア協調設計におけるシステム仕様記述,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,1998年 9月22日,第98巻、第298号(FTS98-86),第111-118頁』(以下、「引用文献1」という。)には、関連する図とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「ハードウェア/ソフトウェア協調設計システムを実現する技術手法には、次の2つがある。
(1)協調検証(Co-Simulation)
ハードウュア設計部分とソフトウェア設計部分を一体としてシミュレーションする。
(2)協調合成(Co-Synthesis)
与えられたシステム仕様と制約条件から、ハードウェアとソフトウェアの最適な自動分割を行い、それぞれの部分と、その間のインタフェースを自動合成する。」(112頁左欄15?24行)

B 「2.1 機能構成
今回開発したHW/SW協調設計システム(COSMOS:Co-Synthesis Methodology Organized System)は、図1に示す6機能で構成されている。
(1)協調合成システム
ハードウェア/ソフトウェアの実装を意識しないシステム仕様記述を解析・シミュレーションし、システム仕様を最適なハードウェア仕様とソフトウェア仕様に分割する。」(112頁左欄36行?同頁右欄3行)

以上、上記A及びBで指摘した事項を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「協調合成システムにより、システム仕様記述を解析・シミュレーションし、システム仕様と制約条件から最適なハードウェア仕様とソフトウェア仕様とを分割し、それぞれの部分と、その間のインタフェースを自動合成する方法。」

(5-3)引用文献2

原審の上記平成24年4月24日付けの拒絶理由通知において引用され、原願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-78932号公報(平成10年3月24日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

C 「【0069】<実施例9>図16は第9の実施例の構成を示した図である。図16において、103は図1におけるクライアント103と同じ構成であり、メインプロセッサ105と拡張ハードウェア106を持つ。121はOSであるが、ここで、図1とは異なり、コード選択機能123の他に、拡張ハードウェア管理機能1601,拡張コード入れ替え機能1603を持つ。またクライアント103では複数のアプリケーションプログラムを実行できる。ここではアプリケーションプログラムA,1604とアプリケーションプログラムB,1607を実行する例を示す。
【0070】アプリケーションが終了した時、アプリケーションが新たに始まる時、ユーザの指示があった時のいずれかにアプリケーション毎のプライオリティーPiが決定され、拡張ハードウェア管理機能1601が起動し、各アプリケーションをメインプロセッサ105で実行するか、拡張ハードウェア106で実行するか、あるいは拡張ハードウェアで実行するが、時分割で内容を入れ替えながら実行するかを決定する。
【0071】図17は上記拡張ハードウェア管理機能1601の動作を説明する図である。図中で、iはアプリケーションプログラムi、cはクライアントc、MPはメインプロセッサ、EHWは拡張ハードウェア、Piはiに設定される実行プライオリティ値、MmiはiをMPだけで処理するために必要とする正規化されたMPの処理能力値、MsiはiをEHWで処理する場合に必要な正規化されたMPの処理能力値、MeiはiをEHWで処理する場合に必要な正規化されたEHWの処理能力値、Reiはiが必要とするEHWの正規化されたハードウェア資源使用量、MmcはcのMPの正規化された処理能力値、MecはcのEHWの正規化された処理能力値、RecはcのEHWの正規化されたハードウェア資源量、DmcはcのEHWのコードを入れ替えるために必要な正規化された処理能力値、Smmcは現在cのMP上で実行している処理の必要処理能力量の総和、Srecは現在cのEHW上で処理しているハードウェア資源量の総和、Ndは現在cでコードを入れ替えにより処理している拡張コードの総数である。
【0072】図17では、まず総和値Smmc,Srec,Ndを初期化する(1701)、次に、現在実行中の各アプリケーションiについて、Piの高い順に1703?1710を繰り返す。1703の条件分岐は、メインプロセッサで処理できる限り、または拡張ハードウェアで実行するより、メインプロセッサで実行した方が高速に処理できる場合に1704?1705へ、そうでない場合は1706?1710へ分岐する。・・・(後略)」

以上、上記Cで指摘した事項を踏まえると、引用文献2には、次の周知技術が記載されているものと認められる。

「メインプロセッサと拡張ハードウェアとを備え、複数のアプリケーションを並列に実行可能なシステムにおいて、各アプリケーションに対応するメインプロセッサコードと拡張コードを用意しておき、あるアプリケーションの実行要求がなされると、当該アプリケーションをメインプロセッサで実行するか、拡張ハードウェアで実行するかを、拡張ハードウェア管理機構により、アプリケーションに必要なリソースに関する制約と、その時点におけるリソースの状態とに基づいて決定する」技術

(5-4)対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「システム仕様」、「ハードウェア仕様」、及び「ソフトウェア仕様」は、それぞれ、本願発明の「アプリケーション(の機能)」、「ハードウェア機能」、及び「ソフトウェア機能」に相当する。

引用発明のシステムにおいても、プロセッサとメモリを備えていることは、当業者にとって自明の事項である。

本願発明の「リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性」、「再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅」、「リソース要件」とは、上位概念でみると、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを決定する際の「制約条件」と呼べるものである。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「所与のアプリケーションを処理するためにコンピュータシステムの能力を最適化するための方法であって、該方法は、該コンピュータシステムによって実行され、該コンピュータシステムは、プロセッサとメモリとを備え、
該方法は、
該プロセッサが、
制約条件に基づいて、該所与のアプリケーションの機能を実行するために、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを、決定すること
を含む、方法。」

(相違点1)

本願発明が、「再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備える再構成可能なコンピュータ」であるのに対して、引用発明は、そのようなコンピュータではない点。

(相違点2)

本願発明が、「ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを」「ランタイム中に決定する」ものであるのに対して、引用発明は、そのようではない点。

(相違点3)

制約条件に関して、本願発明が、「リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータのリソースと、該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性」、「ランタイム時の該再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅であって、該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性は、該利用可能なリソースの処理能力を含む、処理バンド幅」、「所与の少なくとも1つの機能のリソース要件」であるのに対して、引用発明は、具体的に明記されていない点。

(5-5)判断

上記相違点1ないし相違点3について検討する。

引用発明は、システム仕様記述を解析・シミュレーションし、最適なハードウェア仕様とソフトウェア仕様とに分割するものであるが、当該分割は、静的に実行されるものである。

これに対して、本願発明は、「再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備える再構成可能なコンピュータ」において、「ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを」「ランタイム中に」動的に「決定する」ものである。

確かに、上記引用文献2に「メインプロセッサと拡張ハードウェアとを備え、複数のアプリケーションを並列に実行可能なシステムにおいて、各アプリケーションに対応するメインプロセッサコードと拡張コードを用意しておき、あるアプリケーションの実行要求がなされると、当該アプリケーションをメインプロセッサで実行するか、拡張ハードウェアで実行するかを、拡張ハードウェア管理機構により、アプリケーションに必要なリソースに関する制約と、その時点におけるリソースの状態とに基づいて決定する」技術が記載されるように、リソースに関する制約やリソースの状態に基づいて、使用するハードウェアを動的に決定する技術は周知技術であったが、再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備えていない引用発明のシステムにおいて、再構成可能なプログラマブルロジックリソースを備え、ソフトウェア仕様を使用するかハードウェア仕様を使用するかを、ランタイム中に動的に決定するように構成することまでは、当業者の通常の創作能力によってなし得たものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5-6)請求項2ないし請求項8について

請求項2ないし請求項8は、請求項1に従属するので、請求項2ないし請求項8に係る発明は、上記「(5-4)判断」で検討した内容と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.平成24年8月14日付け拒絶理由通知について

(1)理由1及び理由2

当初明細書等において、「リソース要件」という語句は記載されていないものの、出願当初の明細書に、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0061】
図6には、高レベルの設計仕様またはアルゴリズムのコンパイル、ならびに再構成可能なハードウェア構造上での実行が詳細に示されている。仕様(アルゴリズム)70、拘束のセット74、およびリソースライブラリ76がソフトウェア開発ツール192上に入力として提供される。仕様は、システム設計言語で書くことができる。仕様において、アプリケーション技術者はシステム設計言語によって提供されるツールを使用してアプリケーションを書くだけで良い。アプリケーション技術者は、システム設計言語によって作成された機能のソフトウェアバージョンならびにハードウェアバージョンを考慮する必要はない。分割手段72は仕様70をソフトウェア機能78およびハードウェア機能80に分割することができる。その結果、各機能は完全にソフトウェア上(例えばマイクロプロセッサ)で実行するか、完全にハードウェア上(例えばプログラマブルロジックデバイス)で実行するか、またはそれらの組み合わせとすることができる。それぞれの機能的分割部分に対してソフトウェア操作およびハードウェア操作の両方が形成され、これは所要の部分手段を実行する決定がランタイムが開始するまで遅延する可能性があるからである。システム設計言語プロファイラは、システム設計言語コード上で実行され重要なパスの分析および区分の割当てを行うこともできる。
【0062】
分割操作は拘束74を考慮に入れることもできる。2つの一般型式の拘束74が存在する。第1に、システム設計言語仕様70の機能的限界は、機能間のタイミング関係を含むことができ、機能間に並行または連続的拘束が存在することも可能である。第2に、コスト関数はリソースライブラリ76内のハードウェアリソースを使用することに関連付けられる。リソースライブラリ76は、使用可能な各ハードウェアリソースついての詳細を含んでいる(一般的にこれらはマイクロプロセッサ、メモリ、およびプログラマブルロジックデバイス)。これらは、計算速度、待ち時間、ならびにリソースの応答時間あるいは時間のコスト関数(通常はソフトウェア手段に対する)、エリア(通常はハードウェア手段に対する)、または通信(時間およびエリアの両方にまたがる)等を含むことができる。」

と記載されているように、ランタイム中に、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを決定する際に、リソースライブラリに含まれる計算速度、待ち時間、応答時間、コスト関数、等の情報を考慮に入れる態様がよみとれる。そして、リソースライブラリに含まれるこれらの情報(計算速度、待ち時間、応答時間、コスト関数、等)が、「リソース要件」と呼べるものであることは、当業者にとって自明の事項である。

したがって、理由1及び理由2は解消されたものと認められる。

(2)理由3

上記「第4 当審の判断(審判請求時の補正について)」の「2.補正の目的要件」の「(1)補正事項1について」で検討したように、上記補正事項1による補正によって、理由3は解消されたものと認められる。

(3)理由4

(3-1)理由a)

上記「(1)理由1及び理由2」で検討したように、上記段落【0062】における記載等を参酌すると、「リソース要件」に関しては、リソースライブラリに含まれる、計算速度、待ち時間、応答時間、コスト関数、等の情報であると解される。そして、これらの情報は、ランタイム中に、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを決定する際にる際に用いられるものであると解される。
してみると、当該補正によって、理由4の理由a)は解消されたものと解される。

(3-2)理由b)

本願発明に、「ランタイム時の該再構成可能なコンピュータの利用可能なリソースの処理バンド幅であって、該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性は、該利用可能なリソースの処理能力を含む、処理バンド幅と、該所与の少なくとも1つの機能のリソース要件と、に少なくとも基づいて」「ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを」「決定する」と記載されており、「処理バンド幅」を使用して「分割」を行うことを明確にした当該補正によって、理由4の理由b)は解消されたものと解される。

3.平成24年11月29日付け拒絶査定について

上記平成24年11月29日付け拒絶査定の[補足]において、

『請求項1に記載の「所与の少なくとも1つの機能は、該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能および該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能の両方に分割される」及び「該分割された複数の機能のうちのソフトウェア機能を使用するか該分割された複数の機能のうちのハードウェア機能を使用するか」は、冗長で日本語として明確でない。
(例えば、”所与の少なくとも1つの機能は、ソフトウェア機能とハードウェア機能との両方に分割される”、”ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するか”などと記載すると明確となる。)』

との指摘がされているが、上記「第4 当審の判断(審判請求時の補正について)」の「2.補正の目的要件」の「(2)補正事項2及び補正事項4について」で検討したように、上記補正事項2及び補正事項4による補正により、当該理由は解消されている。


第6 当審の判断(前置報告について)

なお、上記平成25年5月1日付け前置報告において、

『補正後の請求項1に記載の「該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され」は、出願当初の明細書等には記載されていない。
例えば、出願当初の明細書の段落【0040】には、「ハードウェア処理バンド幅は、システム内の非使用のプログラマブルロジックリソースと使用されているプログラマブルロジックリソースがデータを処理していない時間の総量とに基づいて計算される。」と記載されているが、「非使用のプログラマブルロジックリソース」についてその「数」が用いられていることは記載されていない。(数」だけで量が決まるのであれば、各「リソース」の特性は均一である必要があるが、それを伺わせる記載は出願当初の明細書等にはどこにもない。)また、「処理バンド幅」の計算に、「リソースの特性」を用いていることも記載されていない。
前記段落【0040】以外の箇所を参酌しても、補正後の請求項1に記載の前記事項は、出願当初の明細書等には記載がなく、かつ、出願時の技術常識から自明ともいえない。』

と記載されているが、上記「第4 当審の判断(審判請求時の補正について)」の「1.新規事項の有無」で検討したように、出願当初の明細書の段落【0062】及び図6を参酌すると、ソフトウェア機能を使用するかハードウェア機能を使用するかを決定する際に、リソースライブラリによって特定された再構成可能なコンピュータのリソースの特性に基づいて行われていることは、当業者にとって自明の事項であるから、本件補正の「該処理バンド幅は、使用されていないリソースの数と、使用されているリソースが利用可能である時間の量と、該リソースライブラリによって特定された該再構成可能なコンピュータの該リソースの特性に基づいて計算され」は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められる。


第7 むすび

以上のとおり、本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされ、かつ、原査定の理由である拒絶理由で指摘された明りょうでない記載はすべて明確なものとなったものと認められる。そして、本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論の通り審決する。
 
審決日 2014-03-07 
出願番号 特願2011-3508(P2011-3508)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 561- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
仲間 晃
発明の名称 再構成可能なプログラマブルロジックデバイスコンピュータシステム  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  

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