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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1285338
審判番号 不服2012-24506  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-10 
確定日 2014-03-06 
事件の表示 特願2006-236940「検体搬送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 58202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年8月31日の出願であって、平成23年12月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年3月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年12月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされ、その後、当審において平成25年7月30日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成25年10月7日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年12月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕

平成24年12月10日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1 補正の内容

平成24年12月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年3月9日付けで提出された手続補正書により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし7を下記の(b)に示す請求項1ないし7と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし7
「 【請求項1】
検体を搬送する検体搬送システムであって、
先行部と、
前記先行部と離間して配設された後継部と、
前記先行部及び前記後継部のうち少なくとも一方に設けられ、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックを搬送可能なコンベア式のラック搬送機構と、
前記先行部と前記後継部との間を走行可能に構成され、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックを搬送可能なコンベア式のラック搬送機構を備えた自走車と、
を備えたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
前記ラックは、前記検体容器を挿入保持する容器挿入孔を縦横に複数列備え、
前記ラック搬送機構は、ラックを搭載可能な所定の幅を有するベルトコンベアを有し、
前記ラック搬送機構が前記先行部及び前記後継部の両方にそれぞれ設けられ、
前記ラックが前記先行部のラック搬送機構上に配置され、かつ、前記自走車が前記先行部と隣り合う先行状態において、前記先行部および前記自走車のラック搬送機構の送り運動により前記ラックを前記先行ユニットから前記自走車へ移動可能であり、
前記自走車のラック搬送機構上に前記ラックが配置され、かつ、自走車が前記後継部に隣り合う後継状態において、前記自走車のラック搬送機構および前記後継部のラック搬送機構の送り運動により、前記ラックを自走車から前記後継部に移動可能であることを特徴とする請求項1記載の検体搬送システム。
【請求項3】
前記先行部は、
その搬送方向における上流側に、前記検体入り容器を保持した検体ホルダー毎に前記検体を搬送するベルトコンベア式のホルダ搬送機構を備え、
その搬送方向における下流側に、前記ラック搬送機構を備え、
前記ホルダ搬送機構から、前記検体入り容器を、所定本数ずつ順次に抜き出して、前記ラック搬送機構に移載する容器ハンド移載装置を備えたことを特徴とする請求項2記載の検体搬送システム。
【請求項4】
前記後継部は、
その搬送方向における下流側に、前記検体入り容器を保持した検体ホルダー毎に前記検体を搬送するベルトコンベア式のホルダ搬送機構を備え、
その搬送方向における上流側に、前記ラック搬送機構を備え、
前記ラック搬送機構から、前記検体入り容器を、所定本数ずつ順次に抜き出して、前記ホルダ搬送機構に移載する容器ハンド移載装置を備えたことを特徴とする請求項2記載の検体搬送システム。
【請求項5】
前記後継部の搬送方向下流側に、昇降可能な載置台を備えたリフトが配設され、前記載置台に、検体を収容した検体容器を複数保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構が設けられていることを特徴とする請求項2記載の検体搬送システム。
【請求項6】
前記後継部は、昇降可能な載置台を備えたリフトであり、検体を収容した検体容器を複数保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構が設けられていることを特徴とする請求項2記載の検体搬送システム。
【請求項7】
車輪と、
該車輪を駆動する駆動機構と、
前記車輪の向きを直角方向に変換できる方向転換機構と、
検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構と、を備えるとともに、
互いに離間した先行部と後継部との間を走行可能に構成されたことを特徴とする検体搬送用自走車。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7

「 【請求項1】
検体を搬送する検体搬送システムであって、
先行部と、
前記先行部と離間して配設された後継部と、
前記先行部と前記後継部との間を走行可能に構成された自走車と、
を備え、
前記先行部、前記後継部、及び前記自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式のラック搬送機構がそれぞれ設けられ、
前記ラックが前記先行部の前記ラック搬送機構の前記ベルトコンベア上に配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記先行部のベルトコンベアと隣り合う先行状態において、前記先行部の前記ベルトコンベアおよび前記自走車の前記ベルトコンベアの送り運動により前記ラックを前記先行部の前記ベルトコンベア上から前記自走車の前記ベルトコンベア上へ移動可能であり、
前記自走車の前記ベルトコンベア上に前記ラックが配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記後継部のベルトコンベアに隣り合う後継状態において、前記自走車の前記ベルトコンベアおよび前記後継部の前記ベルトコンベアの送り運動により、前記ラックを自走車の前記ベルトコンベア上から前記後継部の前記ベルトコンベア上に移動可能である、ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
前記ラックは、前記検体容器を挿入保持する容器挿入孔を縦横に複数列備え、
前記先行部は、
その搬送方向における上流側に、前記検体入り容器を保持した検体ホルダー毎に前記検体を搬送するベルトコンベア式のホルダ搬送機構を備え、
その搬送方向における下流側に、前記ラック搬送機構を備え、
前記ホルダ搬送機構から、前記検体入り容器を、所定本数ずつ順次に抜き出して、前記ラック搬送機構に移載する容器ハンド移載装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の検体搬送システム。
【請求項3】
前記ラックは、前記検体容器を挿入保持する容器挿入孔を縦横に複数列備え、
前記後継部は、
その搬送方向における下流側に、前記検体入り容器を保持した検体ホルダー毎に前記検体を搬送するベルトコンベア式のホルダ搬送機構を備え、
その搬送方向における上流側に、前記ラック搬送機構を備え、
前記ラック搬送機構から、前記検体入り容器を、所定本数ずつ順次に抜き出して、前記ホルダ搬送機構に移載する容器ハンド移載装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の検体搬送システム。
【請求項4】
前記後継部の搬送方向下流側に、昇降可能な載置台を備えたリフトが配設され、前記載置台に、検体を収容した検体容器を複数保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の検体搬送システム。
【請求項5】
前記後継部は、昇降可能な載置台を備えたリフトであり、検体を収容した検体容器を複数保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の検体搬送システム。
【請求項6】
前記自走車は、
車輪と、
該車輪を駆動する駆動機構と、
前記車輪の向きを直角方向に変換できる方向転換機構と、
検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構と、を備えるとともに、
互いに離間した先行部と後継部との間を走行可能に構成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の検体搬送システム。
【請求項7】
車輪と、
該車輪を駆動する駆動機構と、
前記車輪の向きを直角方向に変換できる方向転換機構と、
検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持可能なラックを搬送できるコンベア式のラック搬送機構と、を備えるとともに、
互いに離間した先行部と後継部との間を走行可能に構成され、
前記先行部、前記後継部、及び前記自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式のラック搬送機構がそれぞれ設けられ、
前記ラックが前記先行部の前記ラック搬送機構の前記ベルトコンベア上に配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記先行部のベルトコンベアと隣り合う先行状態において、前記先行部の前記ベルトコンベアおよび前記自走車の前記ベルトコンベアの送り運動により前記ラックを前記先行部の前記ベルトコンベア上から前記自走車の前記ベルトコンベア上へ移動可能であり、
前記自走車の前記ベルトコンベア上に前記ラックが配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記後継部のベルトコンベアに隣り合う後継状態において、前記自走車の前記ベルトコンベアおよび前記後継部の前記ベルトコンベアの送り運動により、前記ラックを自走車の前記ベルトコンベア上から前記後継部の前記ベルトコンベア上に移動可能である、ことを特徴とする自走車。」
(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「先行部」、「後継部」及び「自走車」における「コンベア式のラック搬送機構」について、本件補正前の「前記先行部及び前記後継部のうち少なくとも一方に設けられ、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックを搬送可能なコンベア式のラック搬送機構と、前記先行部と前記後継部との間を走行可能に構成され、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックを搬送可能なコンベア式のラック搬送機構を備えた自走車」という記載を、本件補正後の「前記先行部、前記後継部、及び前記自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式のラック搬送機構がそれぞれ設けられ、前記ラックが前記先行部の前記ラック搬送機構の前記ベルトコンベア上に配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記先行部のベルトコンベアと隣り合う先行状態において、前記先行部の前記ベルトコンベアおよび前記自走車の前記ベルトコンベアの送り運動により前記ラックを前記先行部の前記ベルトコンベア上から前記自走車の前記ベルトコンベア上へ移動可能であり、前記自走車の前記ベルトコンベア上に前記ラックが配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記後継部のベルトコンベアに隣り合う後継状態において、前記自走車の前記ベルトコンベアおよび前記後継部の前記ベルトコンベアの送り運動により、前記ラックを自走車の前記ベルトコンベア上から前記後継部の前記ベルトコンベア上に移動可能である」という記載にするものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「先行部」、「後継部」及び「自走車」における「コンベア式のラック搬送機構」について具体的な作動を限定するものであるといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものを含むので、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3 独立特許要件の判断

3-1 刊行物1

(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2005-300357号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(a)「【0001】
この発明は、検体入り容器を保持した検体ホルダーを、ベルトコンベア式の搬送機構で搬送することにより、検体の搬送を行なう検体搬送システムに関するものである。」(段落【0001】)

(b)「【0002】
一般に、この種の検体搬送システムにおいては、設置スペースの略全域に亘り所要の長尺な搬送路が使用目的に応じて複雑な態様で敷設されるが、長尺な搬送路は作業員や作業車の通路を遮ってしまう場合が多い。また、搬送路の途中では格別の検体処理が行なわれないにも拘わらず、検体を離間した場所へ移動する必要がある場合には、その目的だけのために長尺な搬送路を敷設せざるを得ないことになる。
【0003】
このような問題を解消する自走車を利用した検体搬送システムとして、特許文献1に記載のものが知られている。この従来の自走車を利用した検体搬送システムは、検体入り容器を保持した検体ホルダーを搬送するベルトコンベア式の搬送機構を切り離して先行搬送路と後継搬送路とし、この先行搬送路の搬送終端部(第2ポイント)と後継搬送路の搬送始端部(第1ポイント)との間に自走車ガイドに案内されて自走する自走車を装備した構成となっている。
【特許文献1】特開2002-137822号公報」(段落【0002】及び【0003】)

(c)「【0004】
しかし、前記従来の検体搬送システムに設備される自走車は、先行搬送路の搬送レーンと後継搬送路の搬送レーンに選択的に接続される搬送レーンを上面に有し、この自走車の上面搬送レーンに検体入り容器を保持した検体ホルダーを1本又は数本ずつ受け入れて搬送し、その搬送ホルダーの受け渡しを後継搬送路に対するレーン接続状態で行なうようになっているので、先行搬送路と後継搬送路の間を自走車が頻繁に自走移動しないと、ホルダー搬送に対応できなくなり、これでは先行搬送路と後継搬送路の間を作業員又は作業車の通路として利用する場合に、その通路を自走車が頻繁に通ることになって危険であるという問題があった。
【0005】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、先行搬送路と後継搬送路の間を自走車が長い時間をおいて間欠的に自走移動するだけで検体入り容器の受け渡しを行なうことができ、それにより先行搬送路と後継搬送路の間を作業員又は作業車の通路として利用する場合の通路開き時間を長くして、通路利用の安全性を確保することができる自走車利用の検体搬送システムを提供することにある。」(段落【0004】及び【0005】)

(d)「【0006】
この発明は、前記の目的を達成するために、請求項1は、検体入り容器1を保持した検体ホルダー2を搬送するベルトコンベア式の搬送機構20を切り離して先行搬送路21と後継搬送路22とし、この先行搬送路21と後継搬送路22との間に自走車ガイド24に案内されて自走する自走車23を装備した検体搬送システムにおいて、以下(a)?(c)のように構成したことを特徴とする。
【0007】
(a)先行搬送路21の搬送終端部と後継搬送路22の搬送始端部にラック載置部25a,26aを有する自走車第1接続台25と自走車第2接続台26を配設し、この自走車第1接続台25に対する自走車横付け位置Xと自走車第2接続台26に対する自走車横付け位置Yとの間に自走車ガイド24を敷設して、該自走車ガイド24に案内されて自走車23が自走するようにしたこと、
(b)自走車第1接続台25の上方位置に、先行搬送路21の終端部位置に搬送された検体入り容器1を自走車第1接続台25のラック載置部25a上に供給載置された多数本の容器収納が可能な空ラック6に所定本数ずつ順次に移載する容器ハンド移載装置31と、自走車第1接続台25のラック載置部25a上にある容器収納ラック6を自走車第1接続台25の横付け位置Xに停止した自走車23のラック載置部23a上に移載するラックリフト移載装置41とを装備したこと、
(c)自走車第2接続台26の上方位置に、前記自走車23で搬送された容器収納ラック6を自走車23上から自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載するラックリフト移載装置51と、自走車第2接続台26のラック載置部26a上にある容器収納ラック6から検体入り容器1を所定本数ずつ順次に抜き出して後継搬送路22の搬送始端部に供給される検体ホルダー2に移載挿入する容器ハンド移載装置61とを装備したことを特徴とする。
【0008】
前記(b)及び(c)の容器ハンド移載装置31,61は、請求項2のように、隣接する複数本の検体入り容器1を同時に掴むことができる開閉爪32,62を有した容器ハンド34,64と、この容器ハンドを昇降させるハンド昇降用シリンダー35,65と、このシリンダーハンドユニット36,66を横行ガイド37,67の案内のもとに搬送路直交方向に横行移動させる電動式のチェーン機構30,60とを具備する構成とすることが望ましい。
【0009】
また、前記(b)及び(c)のラックリフト移載装置41,51は、請求項3のように、容器収納ラック6の下側に侵入するラック持上げ爪42,52を有したラックハンガー43,53と、このラックハンガーを昇降させるハンガー昇降用シリンダー44,54と、このシリンダーハンガーユニット45,55を横行ガイド46,56の案内のもとに搬送路直交方向に横行移動させる電動式のチェーン機構40,50とを具備し、前記ラック持上げ爪42,52を容器収納ラック6の下側に入れ出しするために前記チェーン機構40,50及びシリンダーハンガーユニット45,55を含む装置ユニット構成体47,57を搬送路21,22と平行する方向に前後移動させるように構成することが望ましい。
【0010】
前記自走車23は先行搬送路21と後継搬送路22が間隔部を存して一直線上に位置する場合は、その直線に沿って真直ぐに自走するものであれば良いが、先行搬送路21と後継搬送路22が間隔部を存して段違い状に変位する場合は、自走車23がクランク型に曲がる案内ガイド24に沿って追従移動できるように、複数個の車輪27を駆動する駆動機構28と、各車輪27の向きを直角方向に変換できる方向転換機構29とを有する構成にすることが好ましい。」(段落【0006】ないし【0010】)

(e)「【0011】
この発明による自走車を利用した検体搬送システムは、先行搬送路21で検体ホルダー2とともに搬送した検体入り容器1を、容器ハンド移載装置31の作動により検体ホルダー2から抜き外して多数本(例えば50本)の容器収納が可能な空ラック6に所定本数ずつ順次に移載して貯留し、それが満杯になった時点で容器収納ラック6をラックリフト移載装置41の作動により自走車第1接続台25上から自走車23上に移載し、この自走車23の自走により自走車第2接続台26に対するラック受け渡し位置に搬送して、この自走車23上の容器収納ラック6をラックリフト移載装置51の作動により自走車23上から自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載することができ、また容器ハンド移載装置61の作動により自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載された容器収納ラック6から検体入り容器1を所定本数ずつ順次に抜き出して後継搬送路22の搬送始端部に供給される検体ホルダー2に移載挿入することができる。
【0012】
このため、先行搬送路21と後継搬送路22の間を自走車23が長い時間をおいて間欠的に自走移動するだけで検体入り容器1の受け渡しを行なうことができ、それにより先行搬送路21と後継搬送路22の間を作業員又は作業車の通路として利用する場合の通路開き時間を長くして、通路利用の安全性を確保することができるという効果を奏する。」(段落【0011】及び【0012】)

(f)「【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に従い具体的に説明する。図1はこの発明の検体搬送システムを示す全体的な概略平面図、図2は同検体搬送システムの搬送路部分を拡大して示した詳細断面図、図3は図1のA-A線矢視による構成説明図、図4は図3のB-B線矢視による構成説明図、図5はこの発明の検体搬送システムに用いられる空ラックの平面図、図6は同ラックの横断面図である。
【0014】
この検体搬送システムは、血液などの検体を入れた試験管のような検体入り容器1を挿入保持した検体ホルダー2を搬送するベルトコンベア式の搬送機構20を図1の如く切り離して先行搬送路21と後継搬送路22とし、この先行搬送路21と後継搬送路22との間に自走車ガイド24に案内されて自走する自走車23を装備したもので、先行搬送路21の搬送終端部と後継搬送路22の搬送始端部にラック載置部25a,26aを有する自走車第1接続台25と自走車第2接続台26を配設し、この自走車第1接続台25に対する自走車横付け位置Xと自走車第2接続台26に対する自走車横付け位置Yとの間に磁気テープ等の自走車ガイド24を床面敷設して、該自走車ガイド24に案内されて自走車23が自走するように構成している。
【0015】
図1に示す符号16aは先行搬送路21の隣接位置に配設した検体処理ユニット、16nは後継搬送路22の隣接位置に配設した異種の検体処理ユニットである。なお、前記先行搬送路21と後継搬送路22は、ダブルの搬送レーン21a,21b及び22a,22bからなり、その各搬送レーンは一対のフランジ2a,2bとフランジ間環状溝2cを有する検体ホルダー2を載置し一定間隔をおいて間欠的に搬送するベルトコンベア3と、前記検体ホルダー2のフランジ間環状溝2cに図2の如く係合する案内突条4a,5aを有し前記ベルトコンベア3の両側に配設されるガイドレール4,5とから構成される(図2参照)。」(段落【0013】ないし【0015】)

(g)「【0016】
前記自走車23は後述するラック6を複数個(例えば2個)搭載可能なラック載置部23aを上面に有し、先行搬送路21と後継搬送路22が間隔部を存して一直線上に位置する場合は、その直線に沿って真直ぐに自走する前後車輪を有するものであれば良いが、先行搬送路21と後継搬送路22が間隔部を存して図1の如く段違い状に変位する実施態様の場合は、前記自走車23がクランク型に曲がる案内ガイド24に沿って追従移動できるように、複数個の車輪27を駆動する駆動機構としての電動モータ28と、車輪軸支フォーク27aを垂直軸心周りに回動させて各車輪27の向きを直角方向に変換できる方向転換機構としてのサーボモータ29と、前記自走車ガイド24の記録情報を検知して駆動機構としての電動モータ28と方向転換機構としてのサーボモータ29を制御するセンサー(図示せず)とを具備し、クランク型に曲がる案内ガイド24に沿って自走車第1接続台25の横付け位置Xと自走車第2接続台26の横付け位置Yとの間を自走移動できるように構成している。」(段落【0016】)

(h)「【0017】
前記自走車第1接続台25の上方位置には、先行搬送路21の終端部位置に搬送された検体入り容器1を自走車第1接続台25のラック載置部25a上に供給載置された多数本(実施態様の場合には50本)の容器収納が可能な空ラック6に所定本数ずつ順次に移載する容器ハンド移載装置31と、自走車第1接続台25のラック載置部25a上にある容器収納ラック6を自走車第1接続台25の横付け位置Xに停止した自走車23のラック載置部23a上に移載するラックリフト移載装置41とが図3,図4の如く装備されている。
【0018】
前記ラック6は図5、図6に示すように、間隔を存して対向する上板7と中板8と下板9を複数本の連結杆10で結合し、前記上板7と中板8に容器挿入孔7a,8aを縦列10個、横列5個の合計50個の縦横整列孔として穿設すると共に、前記下板9に容器端嵌入凹所9aを縦横整列的に50個設けた構成になっている。
【0019】
前記容器ハンド移載装置31は、隣接する複数本(実施態様の場合には5本)の検体入り容器1を同時に掴むことができる5個の開閉爪32とその開閉作動用シリンダ33を有した容器ハンド34と、この容器ハンド34を昇降させるハンド昇降用シリンダー35と、このシリンダーハンドユニット36を横行ガイド37に対するスライダー36aの摺動案内のもとに搬送路直交方向に横行移動させる電動式のチェーン機構30とを具備する。
【0020】
この電動式のチェーン機構30は、駆動スプロケット38aと従動スプロケット38bに巻装され前記シリンダーハンドユニット36が固定されて該ハンドユニット36を容器搬送方向と直交する方向に移動させる無端チェーン38と、前記駆動スプロケット38aを可逆回転させる駆動モータ39とから構成されている。
【0021】
前記のような構成の容器ハンド移載装置31によれば、容器ハンド34の下降→開閉爪32の閉合→容器ハンド34の上昇→シリンダーハンドユニット36の横行ガイド37に沿った横行移動→容器ハンド34の下降→開閉爪32の開放という一連の容器移載動作によって、先行搬送路21で検体ホルダー2とともに搬送された検体入り容器1(図示しない搬送路出入ストッパにより搬送路端側に複数本隣接状態に搬送停止されている)を検体ホルダー2から抜き外して、自走車第1接続台25のラック載置部25a上に供給載置されている多数本(実施態様の場合は50本)の容器収納が可能な空ラック6に所定本数(5本)ずつ順次に移載して貯留することができる。
【0022】
なお、検体入り容器1の抜き外しによって先行搬送路21の搬送レーン21aに残った検体ホルダー2は、前記ストッパの開放により搬送路端のレーン開口部からホルダー受容箱(図示せず)等に落下投入されて、後継搬送路22の搬送始端部へのホルダー供給などに供せられるようになる。
【0023】
前記ラックリフト移載装置41は、容器収納ラック6の下側に図4の如く侵入するラック持上げ爪42を有したラックハンガー43と、このラックハンガー43を昇降させるハンガー昇降用シリンダー44と、このシリンダーハンガーユニット45を横行ガイド46に対するスライダー45aの摺動案内のもとに搬送路直交方向に横行移動させる電動式のチェーン機構40とを具備し、前記ラック持上げ爪42を容器収納ラック6の下側に入れ出しするために、前記チェーン機構40及びシリンダーハンガーユニット45を含む装置ユニット構成体47を縦行ビーム11,12に対する走行駆動車輪(駆動モータ13,14で回転駆動される)の係合転動で搬送路21と平行する方向に前後移動させるように構成している。
【0024】
前記チェーン機構40は、駆動スプロケット48aと従動スプロケット48bに巻装され前記シリンダーハンガーユニット45が固定されて該シリンダーハンガーユニット45を容器搬送方向と直交する方向(ラック移載方向)に移動させる無端チェーン48と、駆動スプロケット48aを可逆回転させる駆動モータ49とから構成されている。
【0025】
前記のような構成のラックリフト移載装置41によれば、ラックハンガー43の下降→ラック持上げ爪42の容器収納ラック6下への前進侵入→ラックハンガー43の上昇→シリンダーハンガーユニット45の横行ガイド46に沿った横行移動→ラックハンガー43の下降→ラック持上げ爪42の容器収納ラック6下からの後退脱出という一連のラック移載動作によって、自走車第1接続台25のラック載置部25a上にある容器満杯状態の容器収納ラック6を持上げて、自走車第1接続台25の横付け位置Xに移動停止している自走車23の上方位置に横行させ、この自走車23のラック載置部23aに下降して移載させることができる。」(段落【0017】ないし【0025】)

(i)「【0026】
前記自走車第2接続台26の上方位置には、自走車23で搬送された容器収納ラック6を自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載するラックリフト移載装置51と、自走車第2接続台26のラック載置部26a上にある容器収納ラック6から検体入り容器1を所定本数ずつ順次に抜き出して後継搬送路22の搬送始端部に供給される検体ホルダー2に移載挿入する容器ハンド移載装置61とが図3の如く装備されている。
【0027】
前記ラックリフト移載装置51は、前述したラックリフト移載装置41と同構成のものであって、自走車23上の容器収納ラック6の下側に侵入するラック持上げ爪52を有したラックハンガー53と、このラックハンガー53を昇降させるハンガー昇降用シリンダー54と、このシリンダーハンガーユニット55を横行ガイド56に対するスライダー55aの摺動案内のもとにラック移載方向に横行移動させる電動式のチェーン機構50とを具備し、前記ラック持上げ爪52を容器収納ラック6の下側に入れ出しするために、前記チェーン機構50及びシリンダーハンガーユニット55を含む装置ユニット構成体57を縦行ビーム11,12に対する走行駆動車輪(駆動モータ13,14で回転駆動される)の係合転動で搬送路26と平行する方向に前後移動させるように構成している。
【0028】
前記チェーン機構50は、駆動スプロケット58aと従動スプロケット58bに巻装され前記シリンダーハンガーユニット55が固定されて該シリンダーハンガーユニット55をラック移載方向に移動させる無端チェーン58と、駆動スプロケット58aを可逆回転させる駆動モータ59とから構成されている。
【0029】
前記のような構成のラックリフト移載装置51によれば、ラックハンガー53の下降→ラック持上げ爪52の容器収納ラック6下への前進侵入→ラックハンガー53の上昇→シリンダーハンガーユニット55の横行ガイド56に沿った横行移動→ラックハンガー53の下降→ラック持上げ爪52の容器収納ラック6下からの後退脱出という一連のラック移載動作によって、自走車23上にある容器満杯状態の容器収納ラック6を持上げて、自走車第2接続台26のラック載置部26aの上方へ横行させ、該ラック載置部26aに下降して移載させることができる。
【0030】
前記容器ハンド移載装置61は、前述した容器ハンド移載装置31と同構成のものであって、自走車第2接続台26上に載置されている容器収納ラック6内の隣接する複数本(実施態様の場合には5本)の検体入り容器1を同時に掴むことができる5個の開閉爪62と開閉作動用シリンダ63を有した容器ハンド64と、この容器ハンドを昇降させるハンド昇降用シリンダー65と、このシリンダーハンドユニット66を横行ガイド67に対するスライダー(図示せず)の摺動案内のもとに搬送路直交方向に横行移動させる電動式のチェーン機構60(この構成は前述したチェーン機構30と同様であるから詳細な説明は省略する)とを具備する。
【0031】
前記のような構成の容器ハンド移載装置61によれば、容器ハンド64の下降→開閉爪62の閉合→容器ハンド64の上昇→シリンダーハンドユニット66の横行ガイド67に沿った横行移動→容器ハンド64の下降→開閉爪62の開放という一連の容器移載動作によって、自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載された容器収納ラック6から検体入り容器1を所定本数(実施例の場合は5本)ずつ順次に抜き出して、後継搬送路22の搬送始端部に供給される検体ホルダー2に移載挿入することができる。
【0032】
前記のような検体入り容器1の抜き外しによって空になったラック6は、自走車第2接続台26のラック載置部26a上から送出され、自走車第1接続台25のラック載置部25aへのラック供給などに供せられるようになる。」(段落【0026】ないし【0032】)

(j)「【0033】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。」(段落【0033】)

(2)上記(1)及び図面の記載より分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(j)及び図面の記載によれば、刊行物1には、自走車23を用いて検体を搬送する検体搬送システムが記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(j)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムは、先行搬送路21と、前記先行搬送路21と離間して配設された後継搬送路22と、前記先行搬送路21と、前記先行搬送路22との間を走行可能に構成された自走車23とを備えることが分かる。

(ウ)上記(1)(f)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記先行搬送路21及び前記後継搬送路22には、ベルトコンベア3が設けられていることが分かる。

(エ)上記(1)(e)、(g)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記自走車23には、検体入り容器1を立位状態で縦横に複数列保持できる容器収納ラック6が載置可能であることが分かる。

(オ)上記(1)(d)ないし(i)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、自走車第1接続台25のラック載置部25a、自走車第2接続台26のラック載置部26a、及び前記自走車23のラック載置部23aには、所定の幅を有し、検体入り容器1を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であることが分かる。

(カ)上記(1)(a)、(d)、(f)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記先行搬送路21及び前記後継搬送路22には、所定の幅を有し、検体入り容器1を立位状態で保持できる検体ホルダー2が載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記検体ホルダー2を移動させるベルトコンベア3が設けられていることが分かる。

(カ)上記(1)(g)、(h)、(i)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記検体ホルダー2が前記先行搬送路21の終端部位置に配置される状態において、容器ハンド移載装置31により、検体入り容器1を自走車第1接続台25のラック載置部25a上の容器収納ラック6に移載し、前記自走車23が自走車第1接続台25の横付け位置Xにある状態において、ラックリフト移載装置41により前記容器収納ラック6を前記自走車23のラック載置部23aに移載可能であることが分かる。

(キ)上記(1)(g)、(h)、(i)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記自走車23が自走車第2接続台26の横付け位置Yにある状態において、ラックリフト移載装置51により前記容器収納ラック6を自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載可能であることが分かる。

(ク)上記(1)(g)、(h)、(i)及び図面の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、前記検体ホルダー2が後継搬送路22の搬送始端部に配置される状態において、前記自走車第2接続台26のラック載置部26a上にある容器収納ラック6から、容器ハンド移載装置61により検体入り容器1を後継搬送路22の搬送始端部に供給される前記検体ホルダー2に移載可能であることが分かる。

(ケ)上記(1)(j)の記載から、刊行物1に記載された検体搬送システムにおいて、幾つかの構成要素を削除してもよいことが分かる。

(3)刊行物1記載の発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1記載の発明>
「検体を搬送する検体搬送システムであって、
先行搬送路21と、
前記先行搬送路21と離間して配設された後継搬送路22と、
前記先行搬送路21と、前記先行搬送路22との間を走行可能に構成された自走車23とを備え、
自走車第1接続台25、自走車第2接続台、及び前記自走車23には、所定の幅を有し、検体入り容器1を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であり、
前記先行搬送路21及び前記後継搬送路22には、所定の幅を有し、検体入り容器1を立位状態で保持できる検体ホルダー2が載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記検体ホルダー2を移動させるベルトコンベア3が設けられ、
前記検体ホルダー2が前記先行搬送路21の終端部位置に配置される状態において、容器ハンド移載装置31により、検体入り容器1を自走車第1接続台25のラック載置部25a上の容器収納ラック6に移載可能であり、前記自走車23が自走車第1接続台25の横付け位置Xにある状態において、ラックリフト移載装置41により前記容器収納ラック6を前記自走車23のラック載置部23aに移載可能であり、
前記自走車23が自走車第2接続台26の横付け位置Yにある状態において、ラックリフト移載装置51により前記容器収納ラック6を自走車第2接続台26のラック載置部26a上に移載可能であり、前記検体ホルダー2が後継搬送路22の搬送始端部に配置される状態において、容器ハンド移載装置61により前記検体入り容器1を後継搬送路22の搬送始端部の前記検体ホルダー2に移載可能である、
検体搬送システム。」

3-2 刊行物2

(1)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-137822号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、検体入り容器を保持した検体ホルダーを、ベルト・コンベア式搬送機構で搬送することにより、検体の搬送を行なう検体搬送システムに関する。」(段落【0001】)

(b)「【0002】
【従来の技術】一般にこの種の検体搬送システムにおいては、設置スペースのほぼ全域に亘り所要の長尺な搬送レーンが使用目的に応じて複雑な態様で敷設される。」(段落【0002】)

(c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の検体搬送システムでは、検体を専ら搬送レーンで搬送する構成となっているため、長尺な搬送レーンが、作業員の通路を遮ってしまう場合か多い。また搬送経路の途中では格別の処理が行なわれないにも拘わらず、検体を離間した場所へ移す必要が有る場合には、その目的だけのために長尺な搬送レーンを敷設せざるを得ないことになる。
【0004】本発明の目的は、下記のような利点を有する検体搬送システムを提供することにある。
【0005】(a)長尺な搬送レーンが作業員の通路を遮ぎるのを極力避けることができる。
(b)検体を単に移送するだけの目的のような効率の悪い長尺な搬送レーンを無くす事ができる。」(段落【0003】ないし【0005】)

(d)「【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の検体搬送システムは下記の如く構成されている。
【0007】(1)本発明の自走車を使用した検体搬送システムは、検体入り容器11を保持した検体ホルダー12を、ベルト・コンベア式搬送機構13で搬送することにより、検体の搬送を行なう検体搬送システム10において、前記搬送機構13の第1ポイントP1と第2ポイントP2との間に敷設された自走車ガイド14と、この自走車ガイド14に案内されて自走するように設けられた自走車20とを備え、前記自走車20は、前部に前記第1ポイントP1に連結可能な第1の連結部21を有し、後部に前記第2ポイントP2に連結可能な第2の連結部22を有すると共に、上面に前記第1ポイントP1または前記第2ポイントP2における搬送レーン13a,13bと選択的に接続され、前記検体入り容器11の受け渡しを実行可能な搬送レーン23a,23bを有することを特徴としている。
【0008】(2)本発明の自走車を使用した検体搬送システムは、検体入り容器11を保持した検体ホルダー12を、ベルト・コンベア式搬送機構13で搬送することにより、検体の搬送を行なう検体搬送システム10において、前記搬送機構13の第1ポイントP1と第2ポイントP2との間に敷設された自走車ガイド14と、この自走車ガイド14に案内されて自走するように設けられた自走車20とを備え、前記自走車20は、自走車本体20Mと、この自走車本体20Mの前部Fに、前記第1ポイントP1に付設された連結端Q1(Q1a,Q1b)に対し着脱自在に連結可能な如く設けられた第1の連結部21(21a,21b)と、前記自走車本体20Mの後部Rに、前記第2ポイントP2に付設された連結端Q2に対し着脱自在に連結可能な如く設けられた第2の連結部22(22a,22b…不図示)と、前記自走車本体20Mの平坦な上側面に平行に配設され、前記第1の連結部21が前記第1ポイントP1に付設された連結端Q1に対して連結されたとき、前記第1の連結部側の一端部が上記第1ポイントP1における一対の搬送レーン13a,13bと接続され、前記第2の連結部22が前記第2ポイントP2に付設された連結端Q2に対して連結されたとき、前記第2の連結部側の一端部が上記第2ポイントP2における一対の搬送レーン13a,13bと接続され、前記検体入り容器11の受け渡しを実行可能な一対の搬送レーン23a,23bと、を備えていることを特徴としている。」(段落【0006】ないし【0008】)

(e)「【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態に係る検体搬送システムの概略的構成を示す略式平面図である。この検体搬送システム10は、血液などの検体を入れた例えば試験管のような検体入り容器11を保持した検体ホルダー12を、ベルト・コンベア式搬送機構13で搬送することにより、検体の搬送を行なうものとなっている。この検体搬送システム10の搬送機構13は、領域Aにおいて切断された状態を呈している。
【0011】切断された一方の端部である前記搬送機構13の第1ポイントP1と、他方の端部である第2ポイントP2との間には自走車ガイド14が敷設されている。この自走車ガイド14としては、例えばメモリー要素を保有するタグを床面に埋設したもの等が使用される。自走車20は、上記タグ等の位置を検知するセンサーを備えており、自走車ガイド14に案内されてY方向に自走し得るものとなっている。
【0012】図1において、15システムの設置エリア、16a?16nは各種の検体処理ユニットを示している。
【0013】図2は自走車20の構成を示す斜視図である。図2に示すように、この自走車20は、台車部20MAの上に搬送部20MBを載せた形態の自走車本体20Mに、以下説明する機構を設けたものである。
【0014】自走車本体20Mの前部F(具体的には搬送部20MBの前部)には、前記第1ポイントP1に付設された連結端Q1(Q1a,Q1b…不図示)に対して着脱自在に連結可能な如く、第1の連結部21(21a,21b)が設けられている。
【0015】また自走車本体20Mの後部R(具体的には搬送部20MBの後部)には、前記第2ポイントP2に付設された連結端Q2(Q2a,Q2b…不図示)に対し着脱自在に連結可能な如く設けられた第2の連結部22(22a,22b…不図示)が設けられている。
【0016】更に自走車本体20Mの平坦な上側面(具体的には搬送部20MBの上側面)には、一対の搬送レーン23a,23bが平行に配設されている。この一対の搬送レーン23a,23bは、前記ベルト・コンベア式搬送機構13と同様に、血液などの検体を入れた例えば試験管のような検体入り容器11を保持した検体ホルダー12を搬送し得る如く構成されている。
【0017】一対の搬送レーン23a,23bの前記第1の連結部側の一端部は、当該第1の連結部21が前記第1ポイントP1に付設された連結端Q1に対して連結されたとき、上記第1ポイントP1における一対の搬送レーン13a,13bと接続される。
【0018】一対の搬送レーン23a,23bの前記第2の連結部側の一端部は、当該第2の連結部22が前記第2ポイントP2に付設された連結端Q2に対して連結されたとき、上記第2ポイントP2における一対の搬送レーン13a,13bと接続される。
【0019】かくして上記一対の搬送レーン23a,23bは、前記検体入り容器11の受け渡しを実行可能なものとなっている。
【0020】図3の(a)(b)は自走車20の第1の連結部21と第1ポイントP1における連結端Q1との相互の係合構造,及び自走車20の第2の連結部22と第2ポイントP2における連結端Q2との相互の係合構造を示す図で、(a)は第1の連結部21の一方21aと連結端Q1の一方Q1aとを代表例として取出して示す平面図、(b)は連結端Q1の一方Q1aの側面図である。
【0021】本実施形態においては、第1の連結部21(21a,21b)および前記第2の連結部22(22a,22b)は、フック式連結手段30により、各連結端Q1およびQ2に対してそれぞれ連結されるものとなっている。
【0022】図3の(a)(b)に示すように、第1の連結部21aは、少なくとも板状の基体31と、この基体31の一端(図中左端)に突設した山形状をなす挿入部32と、上記基体31の中央部に設けた小判形の係合孔33とを有している。連結端Q1aは、少なくとも、板状の基体34と、この基体34の一端(図中右端)に突設したV形をなす陥凹部35と、基体34に対し先端が上下に揺動可能に取り付けられたフック36とを有している。
【0023】かくして自走車20の第1の連結部21が、第1ポイントP1における連結端Q1に当接すると、第1の連結部21(21a,21b)の山形状をなす挿入部32が,連結端Q1(Q1a,Q1b)のV形をなす陥凹部35に滑り込んで,両者の位置決めが行なわれる。このとき、第1の連結部21(21a,21b)の小判形をなす係合孔33が連結端Q1aのフック36と係合する。このため、両者間は離反不能な状態に一体的に連結される。両者を切り離す時は、フック36を押し下げた状態で自走車をバックさせれば良い。
【0024】本実施形態によれば、自走車20を使用しているため、その間をX方向に横断することが可能で、通路として利用できる。かくして長尺な搬送レーンが作業員の通路を遮ぎるのを極力避けることができる。また適宜、自走車20を活用することにより、検体を単に移送するだけの目的のような効率の悪い長尺な搬送レーンを無くす事ができる。」(段落【0010】ないし【0024】)

(2)上記(1)及び図面の記載より分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載によれば、刊行物2には、自走車20を用いて検体を搬送する検体搬送システム10が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、刊行物2に記載された検体搬送システム10は、上流側の搬送機構13と、前記上流側の搬送機構13と離間して配設された下流側の搬送機構13と、前記上流側の搬送機構13と下流側の搬送機構13との間を走行可能に構成された自走車20とを備えることが分かる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、刊行物2に記載された検体搬送システム10において、前記上流側の搬送機構13、下流側の搬送機構13、及び前記自走車20には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で保持できる検体ホルダー12が載置可能であり、送り運動されることにより載置された検体ホルダー12が載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式の搬送レーン13a,13b;23a,23bがそれぞれ設けられることが分かる。

(エ)上記(1)(e)及び図面の記載から、刊行物2に記載された検体搬送システム10において、前記検体ホルダー12が前記上流側の搬送機構13の前記搬送レーン13a,13b上に配置され、かつ、前記自走車の搬送レーン23a,23bが前記上流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bと接続された状態において、前記上流側の搬送機構13の前記搬送レーン13a,13b及び前記自走車20の搬送レーン23a,23bの送り運動により前記検体ホルダー12を前記上流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13b上から前記自走車20の搬送レーン23a,23b上へ移動可能であることが分かる。

(オ)上記(1)(e)及び図面の記載から、刊行物2に記載された検体搬送システム10において、前記自走車の搬送レーン23a,23b上に前記検体ホルダー12が配置され、かつ、前記自走車の搬送レーン23a,23bが前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bと接続された状態において、前記自走車の搬送レーン23a,23b及び前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bの送り運動により、前記検体ホルダー12を自走車20の前記搬送レーン23a,23b上から前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13b上に移動可能であることが分かる。

(3)刊行物2記載の発明及び技術
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物2記載の発明>
「検体を搬送する検体搬送システム10であって、
上流側の搬送機構13と、
前記上流側の搬送機構13と離間して配設された下流側の搬送機構13と、
前記上流側の搬送機構13と下流側の搬送機構13との間を走行可能に構成された自走車20と、
を備え、
前記上流側の搬送機構13、下流側の搬送機構13、及び前記自走車20には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で保持できる検体ホルダー12が載置可能であり、送り運動されることにより載置された検体ホルダー12が載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記検体ホルダー12を移動させるベルトコンベアを有するコンベア式の搬送レーン13a,13b;23a,23bがそれぞれ設けられ、
前記検体ホルダー12が前記上流側の搬送機構13の前記搬送レーン13a,13b上に配置され、かつ、前記自走車の搬送レーン23a,23bが前記上流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bと接続された状態において、前記上流側の搬送機構13の前記搬送レーン13a,13b及び前記自走車20の搬送レーン23a,23bの送り運動により前記検体ホルダー12を前記上流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13b上から前記自走車20の搬送レーン23a,23b上へ移動可能であり、
前記自走車の搬送レーン23a,23b上に前記検体ホルダー12が配置され、かつ、前記自走車の搬送レーン23a,23bが前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bと接続された状態において、前記自走車の搬送レーン23a,23b及び前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13bの送り運動により、前記検体ホルダー12を自走車20の前記搬送レーン23a,23b上から前記下流側の搬送機構13の搬送レーン13a,13b上に移動可能である、検体搬送システム。」

また、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物2記載の技術>
「検体を搬送する検体搬送システム10であって、
上流側の搬送機構13と、
前記上流側の搬送機構13と離間して配設された下流側の搬送機構13と、
前記上流側の搬送機構13と下流側の搬送機構13との間を走行可能に構成された自走車20と、
を備え、
移載機構としてベルトコンベアを用い、前記上流側の搬送機構13に自走車20が接続された状態において、前記上流側の搬送機構13及び自走車20の搬送レーン23a,23bの送り運動により、検体を収容した検体容器を立位状態で保持できる検体ホルダー12が上流側の搬送機構13上から自走車20の搬送レーン23a,23b上へ移動可能であり、自走車20が前記上流側の搬送機構13に接続された状態において、自走車の搬送レーン23a,23b及び下流側の搬送機構13の送り運動により、検体を収容した検体容器を立位状態で保持できる検体ホルダー12が自走車20の搬送レーン23a,23b上から下流側の搬送機構13上に移動可能であるようにする技術。」


3-3 対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「先行搬送路21」及び「自走車第1接続台25」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「先行部」に相当し、以下同様に、「後継搬送路22」及び「自走車第2接続台26」は「後継部」に、「自走車23」は「自走車」に、「検体入り容器1」は「検体を収容した検体容器」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1記載の発明における「検体ホルダー2」は、検体容器の保持具であるから、「検体容器保持具」という限りにおいて、本件補正発明における「ラック」に相当する。
また、刊行物1記載の発明における「検体ホルダー2を移動させるベルトコンベア3」は、「送り運動されることにより載置された検体容器保持具を移動させるベルトコンベアを有するコンベア式の検体容器保持具搬送機構」という限りにおいて、本件補正発明における「送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式のラック搬送機構」に相当する。

してみると、本件補正発明と刊行物1記載の発明とは、
「検体を搬送する検体搬送システムであって、
先行部と、
前記先行部と離間して配設された後継部と、
前記先行部と前記後継部との間を走行可能に構成された自走車と、
を備え、
前記先行部及び前記後継部、及び前記自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できる検体容器保持具が載置可能であり、
前記先行部及び前記後継部には、所定の幅を有し、検体容器を立位状態で保持できる検体容器保持具が載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記検体容器保持具を移動させるベルトコンベアを有するコンベア式の搬送機構がそれぞれ設けられる、
検体搬送システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件補正発明においては、「前記先行部、前記後継部、及び前記自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能であり、送り運動されることにより載置された前記ラックを移動させるベルトコンベアを有するコンベア式のラック搬送機構がそれぞれ設けられ、
前記ラックが前記先行部の前記ラック搬送機構の前記ベルトコンベア上に配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記先行部のベルトコンベアと隣り合う先行状態において、前記先行部の前記ベルトコンベアおよび前記自走車の前記ベルトコンベアの送り運動により前記ラックを前記先行部の前記ベルトコンベア上から前記自走車の前記ベルトコンベア上へ移動可能であり、
前記自走車の前記ベルトコンベア上に前記ラックが配置され、かつ、前記自走車のベルトコンベアが前記後継部のベルトコンベアに隣り合う後継状態において、前記自走車の前記ベルトコンベアおよび前記後継部の前記ベルトコンベアの送り運動により、前記ラックを自走車の前記ベルトコンベア上から前記後継部の前記ベルトコンベア上に移動可能である」のに対して、
刊行物1記載の発明においては、
「自走車第1接続台25、自走車第2接続台、及び自走車には、所定の幅を有し、検体を収容した検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックが載置可能」であるが、ラックの移動は、ベルトコンベアではなく、ラックリフト移載装置41,51により行う点(以下、「相違点」という)。

3-4 判断
上記相違点について検討する。

3-4-1 容易想到性1
刊行物1記載の発明は、先行搬送路と自走車との間の容器収納ラックの移載及び自走車と後継搬送路との間の容器収納ラックの移載をハンガーを昇降させ横行移動させるラックリフト移載装置41,51により行うものであるが、このように、先行搬送路と自走車との間の移載及び自走車と後継搬送路との間の移載を、ハンガーを昇降させ横行移動させる移載装置により行う技術は、搬送システムの技術分野における周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
また、移載装置としてベルトコンベアを用い、先行状態において、先行部のベルトコンベア及び自走車のベルトコンベアの送り運動により、物品が先行部のベルトコンベア上から自走車のベルトコンベア上へ移動可能であり、後継状態において、自走車のベルトコンベア及び後継部のベルトコンベアの送り運動により、物品が自走車のベルトコンベア上から後継部のベルトコンベア上に移動可能であるようにする技術は、搬送システムの技術分野においてごく普通に知られている技術(以下、「周知技術2」という。例えば、刊行物2記載の技術、特公昭52-45984号公報(例えば、第3ページ第5欄第11行ないし第6欄第10行の記載及び図面を参照。)、実願昭61-13393号(実開昭62-127741号)のマイクロフィルム(例えば、明細書第8ページ第17行ないし第13ページ第19行の記載及び図面を参照。)等を参照。)である。
そうすると、搬送システムの技術分野における発明である刊行物1記載の発明において、移載装置として、刊行物1に記載された発明における、搬送システムの技術分野においてごく普通に知られている技術であるハンガーを昇降させ横行移動させる周知技術1の移載装置に代えて、搬送システムの技術分野においてごく普通に知られている技術である周知技術2のベルトコンベア装置を用いて該ラックの搬送を行うようにすることにより、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-4-2 容易想到性2
上記周知技術2のベルトコンベア装置において、どのような物品を搬送するかは、当業者が適宜選択する設計的事項であり、例えば、周知技術2の例証として示した上記刊行物2記載の技術においては検体入り容器を保持した検体ホルダーを搬送しており、周知技術2の例証として示した上記特公昭52-45984号公報及び実願昭61-13393号(実開昭62-127741号)のマイクロフィルムに記載されたものにおいては、複数の荷物を載せることができる荷役台であるパレットを搬送している。
そして、検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックに収納した状態で搬送することは、搬送システムの技術分野における周知技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開平10-90277号公報(例えば、特許請求の範囲の請求項1ないし3、段落【0002】及び【0003】等の記載及び図面を参照。)、特開2004-77395号公報(例えば、段落【0002】ないし【0005】等の記載及び図面を参照。)を参照。)である。
そうすると、上記周知技術2のベルトコンベア装置において、被搬送物として、検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラックを選択することは、当業者が容易に想到できることである。
そして、本件補正発明は、上記周知技術2の搬送装置において、被搬送物を、刊行物1に記載された発明又は上記周知技術3の「検体容器を立位状態で縦横に複数列保持できるラック」とすることにより、当業者が容易に想到し得たものであるともいえる。
したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4 補正却下の決定のむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3 本件発明について

1 本件発明

平成24年12月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明は、平成24年3月9日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。

2 刊行物1及び2

原査定の拒絶の理由に引用された、刊行物1(特開2005-300357号公報)には、上記第2〔理由〕3 3-1(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。
また、刊行物2(特開2002-137822号公報)には、上記第2〔理由〕3 3-2(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。

3 対比・判断

本件発明は、前記第2〔理由〕1及び2で検討したように、実質的に、本件補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2〔理由〕3に記載したとおり、刊行物1記載の発明並びに周知技術1及び2に基いて、又は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明並びに周知技術1及び2に基いて、又は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1記載の発明並びに周知技術1及び2に基いて、又は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術2及び3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-27 
結審通知日 2014-01-07 
審決日 2014-01-20 
出願番号 特願2006-236940(P2006-236940)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
加藤 友也
発明の名称 検体搬送システム  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 岡田 貴志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 堀内 美保子  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 砂川 克  
代理人 竹内 将訓  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  

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