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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08J
管理番号 1285415
審判番号 不服2013-11392  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-18 
確定日 2014-03-26 
事件の表示 特願2007- 1067「ポリエステルフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月24日出願公開、特開2008-169239、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年1月9日の出願であって、平成24年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年10月30日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成25年1月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年2月27日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年5月7日に、同年2月27日提出の手続補正書による手続補正の却下の決定とともに拒絶査定がされた。
これに対し、平成25年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年8月15日付けで前置報告がなされ、当審において同年9月6日付けで審尋がされ、同年10月10日に回答書が提出されたものである。

2 平成25年6月18日提出の手続補正書による手続補正について
(1)手続補正の内容及び目的
平成25年6月18日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件手続補正」という。)のうち、特許請求の範囲についてする手続補正は、

本件手続補正前に、
「 【請求項1】
ポリ乳酸樹脂と可塑剤と多官能性化合物の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50?95質量%、可塑剤4?49質量%、および多官能性化合物0.1?5質量%からなるポリエステルフィルムであって、
かつ引張弾性率が0.1?1.5GPaであり、
前記ポリ乳酸樹脂が、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用した態様であることを特徴とする、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記多官能性化合物がカルボジイミド基、グリシジル基、オキサゾリン基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルムのヘーズ値が10%以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
170℃における溶融粘度が400?3000Pa・sであることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記可塑剤の融点+30℃における可塑剤の粘度が1?5Pa・sであることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記可塑剤がポリ乳酸セグメントを有する可塑剤であることを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
23℃における引張伸度が150?600%であることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。」

と記載されていたものを、

本件手続補正後は、
「【請求項1】
ポリ乳酸樹脂と可塑剤と多官能性化合物の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50?95質量%、可塑剤4?49質量%、および多官能性化合物0.1?5質量%からる(当審注:「からなる」の誤記であると認める。)ポリエステルフィルムであって、
かつ引張弾性率が0.1?1.5GPaであり、
前記ポリ乳酸樹脂が、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用した態様であり、
前記可塑剤が、1分子中に数平均分子量が1500?10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ数平均分子量が1000?20000であるポリエーテルおよび/またはポリエステル系セグメントを有する可塑剤であり、
前記多官能性化合物がメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体であることを特徴とする、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルムのヘーズ値が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
170℃における溶融粘度が400?3000Pa・sであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記可塑剤の融点+30℃における可塑剤の粘度が1?5Pa・sであることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
23℃における引張伸度が150?600%であることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。 」

と補正するものである。

したがって、本件手続補正は、本件手続補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項である「可塑剤」及び「多官能性化合物」について、それぞれ、「前記可塑剤が、1分子中に数平均分子量が1500?10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ数平均分子量が1000?20000であるポリエーテルおよび/またはポリエステル系セグメントを有する可塑剤であり」及び「前記多官能性化合物がメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体である」との限定を付加する補正事項(以下、「補正事項1」という。)、請求項2および6を削除する補正事項(以下、「補正事項2」という。)、請求項2および6の削除にともなって引用する請求項の番号を補正する補正事項(以下、「補正事項3」という。)を含むものである。

補正事項1は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「特許法」という。)特許法17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、補正事項2は、同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、補正事項3は、同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件
(2-1)本願発明
本件手続補正後の請求項1乃至5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明5」という。)は、本件手続補正後の特許請求の範囲に記載された事項(上記(1)手続補正の内容及び目的の本件手続補正後の記載を参照。)により特定されるとおりのものである。

(2-2)刊行物及び刊行物の記載事項
本願の出願前に頒布された特開平10-36651号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献1。以下、「刊行物1」という。)には以下の事項が記載されている。なお、下線を当審で付した。(以下、同様。)
(1A)
「【請求項1】 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)とを、重量比(A)/(B)が99/1部?40/60部となる範囲で含有して成ることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項2】 重合触媒の失活処理にキレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を用いることを特徴とする請求項1に記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項3】 可塑剤(B)が、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、数平均分子量が500?20,000の範囲であるポリエステル系可塑剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項4】 可塑剤(B)が、末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止されたものであることを特徴とする請求項3に記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項5】 可塑剤(B)が、酸価3KOHmg/g以下のエステル系可塑剤であることを特徴とする請求項3又は4に記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項6】 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1?5のいずれか一つに記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項7】 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、乳酸成分とジカルボン酸成分とジオール成分から成る乳酸系ポリエステルであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一つに記載の乳酸系ポリエステル組成物。
【請求項8】 請求項1?7に記載の乳酸系ポリエステル組成物を成形後、結晶化させることを特徴とする乳酸系ポリエステル成形物。」
(1B)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、柔軟性、耐クレージング性、熱安定性、貯蔵安定性などに優れ、しかも、使用後に焼却されたときには、燃焼カロリーが少なく、又、埋め立てや散乱ゴミになったときには、自然環境下で分解される性質を有し、農業・園芸用資材、食品包装用材料、衛生用材料、日用雑貨品、産業用資材等の、特に柔軟性が要求される用途、即ち、農業用袋、マルチフィルム、トンネルフィルム、植生シート、種紐、養生シート、苗木用ポットなどの農業・園芸用資材、食品用容器、
【0002】食品包装用フィルム、トレー、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、飲料用ボトルなどの食品包装用材料、紙おむつ、生理用品包装などの衛生用材料、シート、規格袋、レジ袋、ゴミ袋、テープ、ラベル、シャンプーボトル、リンスボトル、化粧品容器、封筒の宛名窓などの日用雑貨品、梱包材、緩衝材、結束テープ、紐などの産業用資材、骨修復材、人工皮膚などの生体材料、薬品、農薬や肥料の徐放性基材等に有用な乳酸系ポリマー組成物に関するものである。」
(1C)
「【0066】また、本発明で使用されるポリエステルや、乳酸とジカルボン酸成分とジオール成分とを構造単位として含む乳酸系ポリエステルの分子量を高めるために、高分子量化剤を反応させることができる。この高分子量化剤は成形加工工程での熱による分子量低下を抑制する効果もある。高分子量化剤の添加時期は重合の前、中、後の工程、重合後の脱揮工程、押出工程、加工工程などいずれの工程でも良く、特に限定されるものではない。
【0067】この高分子量化剤としては、多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネートなど或いはそれらの混合物を挙げることができる。多価カルボン酸としては、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、(無水)マレイン酸、トリメチルアジピン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロン4400等、及びそれらの混合物が挙げられる。特に、3官能以上のカルボン酸は高分子量化に有効である。」
(1D)
「【0069】エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ο-フタル酸ジグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4エポキシシクロヘキシル)アジペート、テトラデカン-1,14-ジカルボン酸グリシジルエステルなどを用いることができる。」
(1E)
「【0071】これらの高分子量化剤の中では、安全性、着色などから多価カルボン酸、金属錯体が好ましく、生分解性からは脂肪族系化合物が好ましい。また、高分子量化剤の添加量は、その種類によって異なるが、乳酸系ポリエステル100重量部に対して0.001?5重量部、更に好ましくは0.01?2重量部を添加することが好ましい。5重量部を越えるときには乳酸系ポリエステルが、ゲル化したり、着色したり、粘度低下を起こすことから好ましくない。」
(1F)
「【0093】また、ポリエステル系可塑剤として、ポリ乳酸のエチルエステル、ポリ乳酸ブチルエステル、ポリ乳酸ベンジルエステル、ポリグリコール酸のエチルエステル、ポリグリコール酸のブチルエステル、ポリグリコール酸のベンジルエステルなどを使用しても良い。特に、ポリ乳酸のアルキル或いはベンジルエステルは乳酸系ポリエステルとの相溶性に優れ、ブリードアウトがなく、柔軟性や透明性などにも優れる。これらのポリエステル系可塑剤も、熱安定性や透明性から、末端が一塩基酸及び/又は一価のアルコールで封止されており、酸価と水酸基価の合計が40以下であることが好ましい。更に好ましくは30以下である。
【0094】ポリエステル系可塑剤の数平均分子量については、特に限定されないが、可塑剤効果が高く、ブリードアウトが発生しにくい観点から、500?20,000のものが好ましく、更に好ましくは500?5,000である。更に、ポリエステル系可塑剤としては、常温で固形、更に、それより融点が高い方がブリードアウトが起こり難くく好ましい傾向が見られる。」
(1G)
「【0112】これらの方法により成形加工された成形物の引張弾性率は、例えば包装材料用フィルムとして使用する場合は、折り曲がり性や風合いの観点から、通常1000?15000kg/cm^(2)であることが好ましい。」
(1H)
「【0114】本発明の乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物は、優れた透明性を有しており、透明性の指標として、特にヘイズ値20%以下のものが好ましく用いられる。また本発明に用いられるエステル系可塑剤及び乳酸系ポリエステルは共に生分解する利点を備えており、かつ安全性の高いものであるために、食品包装用にも優れている。」

本願の出願前に頒布された特開2003-247140号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献2。以下、「刊行物2」という。)には以下の事項が記載されている。
(2A)
「【0012】本発明におけるポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL-乳酸であるポリL-乳酸、構造単位がD-乳酸であるポリD-乳酸、さらにはL-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリDL-乳酸、あるいはこれらの混合体が使用でき、数平均分子量が3万?15万であるものが好ましく、9万?12万の範囲にあるものがより好ましい。数平均分子量が3万未満であると、溶融押出によるフィルム成形が困難となるだけでなく、フィルム紐の機械的強力が低下する傾向にあるので好ましくない。一方、数平均分子量が15万を超えても溶融押出が困難となる。なお、本発明におけるポリ乳酸には、分子量の増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、有機過酸化物、ビスオキサゾリン化合物、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などが配合されていてもよい。」

本願の出願前に頒布された特開2004-359785号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献3。以下、「刊行物3」という。)には以下の事項が記載されている。
(3A)
「【0002】
【従来の技術】
α-ヒドロキシカルボン酸類縮合体(2-ヒドロキシカルボン酸類縮合体)としては、例えばポリ乳酸やポリグリコール酸等が例示されるが、これらは一般的に、乳酸やグリコール酸といったα-ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシカルボン酸)からの脱水縮合反応によって得ることができる(例えば、特許文献1参照)。その場合、得られる縮合体の末端の形は一方が水酸基、他方がカルボキシル基となる。」
(3B)
「【0035】
また本発明のα-ヒドロキシカルボン酸類縮合体をより具体的に例示すると、一般式(5)で表されるような、α-ヒドロキシカルボン酸類縮合体の末端が、1,2-アルカンジオールエステルとなっているものが挙げられる。(式中Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基を表す。またRは分子内で異なっていてもよい。nは2?200の範囲である。)
また、一般式(6)で表されるような1,2-アルカンジオールの両末端にα-ヒドロキシカルボン酸類縮合体が結合しているものも挙げられる。(式中Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基を表す。またRは分子内で異なっていてもよい。n1、n2はいずれも1以上であり、n1+n2は2?200の範囲である。)
これらのα-ヒドロキシカルボン酸類縮合体は両末端に水酸基を有していることにより、鎖延長剤を作用させることにより、容易に高分子量化をはかることができる。高分子量化には一般的な鎖延長剤を用いることができる。鎖延長剤としては例えば、多価酸無水物、多価カルボン酸、多価エステル、多価イソシアネート、多官能オキサゾリン化合物、多官能アジリジン化合物、カーボネート化合物、エポキシ化合物、シランカップリング剤、リン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキル亜鉛、アルキルアルミニウム等が挙げられる。」

本願の出願前に頒布された特開2003-129334号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献4。以下、「刊行物4」という。)には以下の事項が記載されている。
(4A)
「【0011】本発明におけるポリ乳酸としては、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、L-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリDL-乳酸、あるいはこれらの混合体が好適に使用でき、数平均分子量が3万?15万であるものが好ましく、9万?11万の範囲にあるものがより好ましい。数平均分子量が3万未満であると、溶融押出が困難となるだけでなく、スリットヤーンの機械的強力が低下する傾向にある。また、数平均分子量が15万を超えても、溶融押出が困難となる。なお、本発明におけるポリ乳酸には、分子量の増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、有機過酸化物、ビスオキサゾリン化合物、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などが配合されていてもよい。」

本願の出願前に頒布された特開2002-146170号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献5。以下、「刊行物5」という。)には以下の事項が記載されている。
(5A)
「【請求項1】 (A)結晶性ポリ乳酸系樹脂、(B)可塑剤、(C)結晶核剤を必須成分とし、以下の条件を満たすことを特徴とする高結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(1)ガラス転移温度≦30℃
(2)融解状態から20℃/minの速度において冷却した際の示差走査型熱量計によるポリ乳酸樹脂成分1g当たりの結晶化発熱量をΔHcとしたとき、
ΔHc≧10(J/g)
(3)融解状態から20℃/minの速度において冷却した際の示差走査型熱量計による結晶化ピーク温度をTccとしたとき、
Tcc≧80℃
【請求項2】 結晶性ポリ乳酸系樹脂が、光学純度90%以上のポリ乳酸樹脂(P1)と光学純度90%未満のポリ乳酸樹脂(P2)の混合物であり、かつP1とP2の合計質量に対するP1の質量分率が30?100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の高結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】 結晶核剤がタルクであることを特徴とする請求項1または2に記載の高結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載したポリ乳酸樹脂組成物を主成分とするフィルムあるいはシート。
【請求項5】 (A)結晶性ポリ乳酸系樹脂、(B)可塑剤、(C)結晶核剤を必須成分とし、以下の条件を満たすことを特徴とするフィルムあるいはシート。
(1)ガラス転移温度≦30℃
(2)融解状態から20℃/minの速度において冷却した際の示差走査型熱量計によるポリ乳酸樹脂成分1g当たりの結晶化発熱量をΔHcとしたとき、
ΔHc≧10(J/g)
(3)融解状態から20℃/minの速度において冷却した際の示差走査型熱量計による結晶化ピーク温度をTccとしたとき、
Tcc≧80℃
【請求項6】 インフレーション法により製造されることを特徴とする請求項4または5に記載のフィルムあるいはシート。」
(5B)
「【0018】本発明に用いられるポリ乳酸は結晶性を有することを必要としていることから、L-乳酸成分またはD-乳酸成分を主たる成分とするポリ乳酸を含んでいることが望ましい。具体的には光学純度L≧90(%)であるポリ乳酸を含んでいることが望ましい。光学純度が90%以上のポリ乳酸を含まないと、ブロッキングを抑制するのに十分な結晶性が得られないため好ましくない。さらに本発明で用いられるポリ乳酸は、高濃度で可塑剤を添加する場合に発生しやすいブリードアウトを抑制するために、低結晶性または非晶性のポリ乳酸成分を含んでいてもよい。すなわち本発明で用いられるポリ乳酸は光学純度が90%以上の高結晶性ポリマー(P1)と光学純度が90%未満の低結晶性または非晶性ポリ乳酸(P2)の混合物が好ましい。さらに、低結晶性または非晶性ポリ乳酸P2は光学純度の低いモノマーを用いるほど溶融加工後の色調が悪化する傾向にあるため、光学純度Lが50%≦L≦90%の範囲のものを用いるのが好ましい。高結晶性ポリ乳酸P1と低結晶性または非晶性ポリ乳酸P2の混合比率はP1:P2が100:0?30:70の範囲が好ましい。P1の混合比がこれより小さいと十分な結晶性が得られずブロッキングなどの問題が発生する。」

本願の出願前に頒布された特開2003-191425号公報(平成25年1月30日付け拒絶理由通知で引用した引用文献6。以下、「刊行物6」という。)には以下の事項が記載されている。
(6A)
「【請求項1】ポリ乳酸系樹脂a100重量部に対し可塑剤p10?200重量部を含有する樹脂組成物a’からなる層Aと、結晶性ポリ乳酸系樹脂b100重量部に対し可塑剤p’0?50重量部を含有する樹脂組成物b’からなる層Bを、B/A/B型に積層し、層Aの厚みがフィルム全体の厚みの30?99%であり、層Bが少なくとも一方向に延伸してなることを特徴とする柔軟化ポリ乳酸系樹脂延伸フィルム。(但し、上記において、b’はa’より3℃以上高いガラス転移温度であり、かつb’のガラス転移温度は30℃以上であることを特徴とし、pはp’と同一でも異なっていてもよい。)」
(6B)
「【0017】層Aを構成する成分であるポリ乳酸系樹脂aは、結晶性でも非晶性でもよいが、高い柔軟性が求められる用途には、非晶性または融点が150℃未満の低い結晶性の樹脂を用いかつ可塑剤pの含有量を高めることが好ましい。通常、可塑剤を樹脂に混合して使用する場合には可塑剤分子は樹脂の非晶部分にのみ混和した状態で存在するため、可塑剤pの含有量を高めて高い柔軟性を付与するにあたり同時に可塑剤のブリードアウトを抑制するためには、特に非晶性ポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。
【0018】一方で、また、高い柔軟性に加えて耐熱性を同時に確保するためには、融点150℃以上の結晶性ホモポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸系樹脂を混合して用いることが好ましい。」

本願の出願前に頒布された国際公開第2004/939号(平成25年8月15日付け前置報告書で引用した引用文献7。以下、「刊行物7」という。)には以下の事項が記載されている。
(7A)
「結晶性を有するポリ乳酸系重合体と、可塑剤を含有するポリ乳酸系重合体組成物であって、可塑剤が、一分子中に分子量が1,200以上のポリ乳酸セグメントを一つ以上有し、ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントを有する可塑剤であることを特徴とするポリ乳酸系重合体組成物。」(52頁3-6行)

本願の出願前に頒布された特開2005-343970号公報(平成25年8月15日付け前置報告書で引用した引用文献8。以下、「刊行物8」という。)には以下の事項が記載されている。
(8A)
「【請求項1】
ポリ乳酸(A)100重量部と、エポキシ当量200?1000g/eq、重量平均分子量(Mw)5000?100000であるエポキシ基含有アクリル系ポリマー(B)0.001重量部ないし1重量部とを加熱してなることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。」
(8B)
「【0001】
本発明は、透明性、溶融張力が高く、インフレーションフィルム成形に好適なポリ乳酸系樹脂組成物に関する。」
(8C)
「【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸(A)にエポキシ基含有アクリル系ポリマー(B)を添加することにより、溶融張力が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の(1)?(3)に記載した事項により特定される。
(1)ポリ乳酸(A)100重量部と、エポキシ当量200?1000g/eq、重量平均分子量(Mw)5000?100000であるエポキシ基含有アクリル系ポリマー(B)0.001重量部ないし1重量部とを加熱してなることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)190℃で測定される溶融張力が0.1g以上であることを特徴とする上記(1)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)190℃における溶融伸長が20m/分以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸がインフレーション成形時において加水分解されても、エポキシ基含有アクリル系ポリマーが、ポリ乳酸の分子鎖同士を結びつけ分子量の低下を最大限抑止する。この結果、組成物全体としての溶融張力、溶融伸長が維持され、製膜可能なブロー比、引取速度の範囲が広がり、厚み、幅等の設定条件の自由度が広がる。また組成物から得られる成形体の透明性はほぼ維持されており、耐加水分解性も向上したものである。」
(8D)
「【0015】
本発明でいうエポキシ基含有アクリル系ポリマーとしてはまず、(1):アクリル酸グリシジル、および/または、メタクリル酸グリシジルと、(2):(1)以外のアクリル酸系単量体との共重合体が挙げられる。さらに、(1):アクリル酸グリシジル、および/または、メタクリル酸グリシジルと、(2):(1)以外のアクリル酸系単量体と、(3):(1)?(2)以外の重合性二重結合を含む単量体との共重合体が挙げられる。
(1)以外のアクリル酸系単量体(2)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドコシルなどの炭素数が1?22のアルキル基をもつ(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール基をもつ(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸およびこれらの塩;フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの酸無水物およびこれらの塩;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジt-ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn-ブチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸メチル-n-ブチル、イタコン酸メチルエチル、イタコン酸エチル-t-ブチル等のジカルボン酸エステル等が挙げられる。
(1)?(2)以外の重合性二重結合を含む単量体(3)としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルやハロゲン化ビニリデン;メチルビニルケトン、n-ブチルビニルケトンなどの不飽和ケトン;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアン化ビニル;アクリルアミドやそのアルキル置換アミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸やこれらの塩;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-マレイミドなどのビニル化合物等を挙げることができる。」

本願の出願前に頒布された特開2006-117768号公報(平成25年8月15日付け前置報告書で引用した引用文献9。以下、「刊行物9」という。)には以下の事項が記載されている。
(9A)
「【請求項1】
ポリエステル樹脂100重量部に対して、天然由来の有機充填剤1?350重量部および、重量平均分子量が1000?20000の範囲であり、かつエポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体0.01?30重量部を配合してなる樹脂組成物。
【請求項2】
前記天然由来の有機充填剤が、紙粉、木粉、竹粉、竹繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維から選ばれる少なくとも1種以上を含むものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂100重量部に対して、結晶化促進剤0.1?50重量部を配合してなるものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体のエポキシ価が、0.1?10meq/gの範囲である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体のガラス転移温度が、30?100℃の範囲である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。」
(9B)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0006】
従って、本発明は、成形性、表面外観性、耐衝撃性および耐久性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。」
(9C)
「【0034】
本発明においては、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体を配合することを特徴とする。
本発明において、エポキシ基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、p-スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルあるいはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-4-グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中では、ラジカル重合性の点からアクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。【0035】
本発明において、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体には、エポキシ基含有ビニル系単位以外のビニル系単位を共重合成分として含むことが好ましく、その選択により重合体の物性を調整することができる。
【0036】
エポキシ基含有ビニル系単位以外のビニル系単位としては、アクリル系ビニル単位、カルボン酸ビニルエステル単位、芳香族系ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、脂肪族系ビニル単位、マレイミド系単位またはその他のビニル系単位などが挙げられる。
【0037】
アクリル系ビニル単位を形成する原料モノマーとしては、アクリル酸とそのエステル、メタクリル酸とそのエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、α-置換アクリル酸とそのエステルなどが挙げられる。」
(9D)
「【0043】
本発明において、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体は、重量平均分子量が1000?20000の範囲であることを特徴とする。さらに、ブリードアウト現象を抑制でき、優れた耐衝撃性を有する樹脂組成物が得られるという点で、3000?15000であることが好ましく、5000?12000であることがより好ましい。1000未満であるとブリードアウト現象が増加する傾向にあり、20000を越えると耐衝撃性改良効果が不充分となる傾向にある。ここで、重量平均分子量は、溶媒としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0044】
本発明において、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体としては、優れた耐衝撃性を有する樹脂組成物が得られるという点で、エポキシ価が0.1?10meq/gの範囲であることが好ましく、0.5?7meq/gの範囲であることがより好ましく、1?5meq/gの範囲であることがさらに好ましく、1.5?4meq/gの範囲であることが特に好ましく、2?3meq/gの範囲であることが最も好ましい。エポキシ価が0.1meq/gより小さいと、溶融粘度特性改良効果は不充分であり、エポキシ価が10meq/gより大きいと、ゲル化などにより成形性が大幅に低下する傾向にあるため好ましくない。ここで、エポキシ価は、塩酸-ジオキサン法で測定した値である。なお、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体のエポキシ価は、エポキシ基含有ビニル系単位の含有量を調節することにより調節することができる。」
(9E)
「【0051】
本発明においては、結晶化促進剤を配合することが好ましい。ポリエステル樹脂、天然由来の有機充填剤、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体および結晶化促進剤を配合することで、成形性および耐熱性に優れた樹脂組成物及び成形品が得られる、特にポリ乳酸の様な結晶化しにくいポリエステル樹脂であっても、通常の射出成形においてポリエステル樹脂が十分に結晶化し、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。本発明で使用する結晶化促進剤は、多種類の化合物から選択することができるが、ポリマーの結晶核の形成を促進する結晶核剤や、ポリマーを柔軟化して動きやすく結晶の成長を促進する可塑剤を好ましく使用することができる。」
(9F)
「【0057】
本発明で結晶化促進剤としても機能する可塑剤としては、一般によく知られているものを使用することができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などをあげることができる。」
(9G)
「【0089】
本発明において、樹脂組成物中のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、2万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましく、30万以上であることがさらに好ましく、40万以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されないが、成形加工性の点で、100万以下であればよい。また、樹脂組成物中のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、本発明のエポキシ基含有ビニル系単位を有する重合体を用いる場合には反応することにより、原料として用いるポリエステル樹脂の重量平均分子量に比較して増大する。樹脂組成物中のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、原料のポリエステル樹脂の重量平均分子量に対して、1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましく、2.5倍以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されないが、成形加工性の点で、6倍以下であればよい。なお、樹脂組成物中のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ポリエステル樹脂とエポキシ基含有ビニル系単位を有する重合体が反応したものとして樹脂組成物をそのまま測定して求めることができるが、用いる原料およびそれらの組成に応じて、前処理として抽出などの単離操作を行い、赤外線分光法(IR)もしくは核磁気共鳴分光法(NMR)などにより、ポリエステル樹脂であることを確認したものを測定することが好ましい。」

本願の出願前に頒布された特開2006-265399号公報(平成25年8月15日付け前置報告書で引用した引用文献10。以下、「刊行物10」という。)には以下の事項が記載されている。
(10A)
「【請求項1】
乳酸単位を有する重合体を主成分とし、ラクチド又は乳酸の含有量が0.2質量%未満である脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、ガラス転移温度が0℃以上で、1分子当たりの平均エポキシ基の数が3?30であり、かつ質量平均分子量が1,000?30,000であるアクリル樹脂系改質剤(B)を0.15?1質量部の割合で含有することを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
JIS-K7210に規定された熱可塑性プラスチックの流れ試験方法に準じて測定された210℃、荷重2.16kgでのMFR値であって、樹脂投入5分後のMFR値(MFR_(5))と15分後のMFR値(MFR_(15))の変化率偏差(σMFR:(MFR_(15)-MFR_(5))/MFR_(5))の値が-0.35?0.1であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル樹脂系改質剤(B)のエポキシ当量が0.70?3.00meq/gであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル樹脂系改質剤(B)が、エポキシ基含有アクリル系単量体及びスチレン系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。」
(10B)
「【0044】
アクリル樹脂系改質剤は、エポキシ基含有アクリル系重合体単位、スチレン系重合体単位及びその他のビニル系重合体単位が各々10?40質量%、90?20質量%及び0?70質量%が好ましく、15?35質量%、85?25質量%及び0?60質量%がより好ましく、20?30質量%、80?30質量%及び0?50質量%が更に好ましい。アクリル系重合体単位の割合が10質量%未満である場合には、アクリル樹脂系改質剤の単位質量中のエポキシ基が乏しく、ポリエステル樹脂組成物の成形加工性や熱安定性の改良効果を十分に得るためには、ポリエステル樹脂へアクリル樹脂系改質剤を多量に添加することが必要となる。その結果、ポリエステル樹脂組成物より得られる成形体の機械的強度が低下すという問題を生じる。一方、アクリル系重合体単位の割合が40質量%を越える場合には、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂系改質剤との過剰な架橋反応により、ポリエステル樹脂組成物が過度に架橋した架橋物が生成し、所望形状の成形体を得ることができない場合がある。スチレン系重合体単位及びその他のビニル系重合体単位は、アクリル系重合体単位の割合を設定した後に、上記の範囲内において成形体の機械的強度等を勘案して適宜設定される。」
(10C)
「【0054】
ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて従来公知の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤・抗カビ剤、他の核形成剤等の各種添加剤を配合することもできる。特に、成形加工性の改善のために、公知の結晶核剤である脂肪族アミド系化合物、芳香族アミド系化合物、タルク等を配合することが好ましい。」

(2-3)引用発明
刊行物1(摘示1Aの請求項1、6、8)には成形物が記載されており、その具体例について摘示1Bを勘案すると、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「重合触媒を失活処理したポリ乳酸(A)と、可塑剤(B)とを、重量比(A)/(B)が99/1部?40/60部となる範囲で含有して成るポリ乳酸組成物を成形後、結晶化させたポリ乳酸フィルム」

(2-4)対比・判断
本願発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「重合触媒を失活処理したポリ乳酸(A)」は、本願発明1の「ポリ乳酸樹脂」に相当する。
引用発明1の「可塑剤(B)」は、本願発明1の「可塑剤」に相当する。
引用発明1の「重量比(A)/(B)が99/1部?40/60部となる範囲」は、本願発明1の「ポリ乳酸樹脂50?95質量%、可塑剤4?49質量%」に重複一致する。
引用発明1の「ポリ乳酸フィルム」は、本願発明1の「ポリエステルフィルム」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ポリ乳酸樹脂と可塑剤と多官能性化合物の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50?95質量%、可塑剤4?49質量%を含むポリエステルフィルム。 」

<相違点>
・相違点1
本願発明1は、「多官能性化合物」を含むとともに、該多官能性化合物が「メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体」であり、かつ、その含有量が「ポリ乳酸樹脂と可塑剤と多官能性化合物の合計100質量%において、0.1?5質量%」と限定されているのに対し、引用発明1は、このような限定を有していない点。

・相違点2
本願発明1は、「引張弾性率が0.1?1.5GPa」との限定を有するのに対し、引用発明1は、このような限定を有していない点。

・相違点3
本願発明1は、ポリ乳酸樹脂について、「結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用した態様」に限定されているのに対し、引用発明1は、このような限定を有していない点。

・相違点4
本願発明1は、可塑剤について、「1分子中に数平均分子量が1500?10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ数平均分子量が1000?20000であるポリエーテルおよび/またはポリエステル系セグメントを有する可塑剤」に限定されているのに対し、引用発明1は、このような限定を有していない点。

相違点1について検討すると、刊行物1には乳酸系ポリエステルの分子量を高めるために、高分子量化剤を反応させることができること(摘示1C)、及び、高分子量化剤としてビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物が例示されているが、例示された化合物の中にメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体は、含まれていない。
引用文献2乃至4(摘示2A、3B、4A)にも、ポリ乳酸の分子量の増大を目的として、エポキシ化合物などの鎖延長剤を添加することが記載されているが、メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体は、記載されていない。
引用文献5乃至7には、多官能性化合物について記載も示唆もない。

引用文献8(摘示8A、8C、8D)には、ポリ乳酸(A)とエポキシ基含有アクリル系ポリマー(B)とを加熱してなるポリ乳酸系樹脂組成物について、エポキシ基含有アクリル系ポリマーとして、(1):アクリル酸グリシジル、および/または、メタクリル酸グリシジルと、(2):(1)以外のアクリル酸系単量体、例えば、(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体が他の多数の共重合体とともに例示されている。また、エポキシ基含有アクリル系ポリマーが、ポリ乳酸の分子鎖同士を結びつけ分子量の低下を最大限抑止する結果、組成物全体としての溶融張力、溶融伸長が維持され、製膜可能なブロー比、引取速度の範囲が広がり、厚み、幅等の設定条件の自由度が広がること、組成物から得られる成形体の透明性はほぼ維持されており、耐加水分解性も向上すること、も記載されている。
しかしながら、エポキシ基含有アクリル系ポリマーは、ポリ乳酸の分子量の低下を抑止するのであって、高分子量化剤ではないし、仮に高分子量化剤といえるとしても、多数例示されている共重合体の一つとしてメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体が記載されているにすぎない。
そして、本願発明1は、「多官能性化合物」を「メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体」に限定(実施例2)することにより、カルボジイミド変性イソシアネート化合物などの他の多官能性化合物を使用した場合(実施例1等)と比較してさらに透明性が優れているなどの当業者に予測できない格別顕著な効果を奏するものである。
引用文献8の記載に基いて、引用発明1において高分子量化剤をメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体に変えてみることを本願発明1が属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に着想できたとはいえない。

引用文献9(摘示9A、9C、9D)には、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体を配合してなる樹脂組成物において、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体を形成する原料モノマーの具体例として、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸とそのエステルが記載されている。
しかしながら、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体は、耐衝撃性を改良するものであって、高分子量化剤ではないし、仮に高分子量化剤といえるとしても、多数例示されている共重合体の一つとしてメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体が記載されているにすぎない。
そして、本願発明1は、「多官能性化合物」を「メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体」に限定(実施例2)することにより、カルボジイミド変性イソシアネート化合物などの他の多官能性化合物を使用した場合(実施例1等)と比較してさらに透明性が優れているなどの当業者に予測できない格別顕著な効果を奏するものである。
引用文献9の記載に基いて、引用発明1において高分子量化剤をメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体に変えてみることを当業者が容易に着想できたとはいえない。

引用文献10(摘示10A、10B)には、脂肪族ポリエステル樹脂(A)とアクリル樹脂系改質剤(B)を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物について、アクリル樹脂系改質剤は、エポキシ基含有アクリル系重合体単位、スチレン系重合体単位及びその他のビニル系重合体単位が各々10?40質量%、90?20質量%及び0?70質量%が好ましいことが記載されているが、メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体は、記載されていない。

そうすると、当業者であっても、刊行物1乃至10に記載された発明に基いて、引用発明1において「多官能性化合物」を含むとともに、該多官能性化合物が「メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルエステルとの共重合体」であり、かつ、その含有量が「ポリ乳酸樹脂と可塑剤と多官能性化合物の合計100質量%において、0.1?5質量%」とすることにより、相違点1に係る構成を着想することが容易であるとはいえない。

したがって、相違点2乃至4について検討するまでもなく、本願発明1は、刊行物1乃至10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明2乃至5は、本願発明1を引用しさらに限定したものであることから、本願発明1と同様の理由により刊行物1乃至10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件手続補正後の請求項1乃至5に係る発明は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3 当審の判断
(1)本願発明
本件手続補正後の請求項1乃至5に係る発明は、平成25年6月18日提出の手続補正書による手続補正(本件手続補正)後の特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりの、本願発明1乃至5であると認められる。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、要するにこの出願に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、刊行物として下記1乃至6の刊行物(以下、それぞれ「引用例1」乃至「引用例6」という。)を引用するものである。

1.特開平10-036651号公報
2.特開2003-247140号公報
3.特開2004-359785号公報
4.特開2003-129334号公報
5.特開2002-146170号公報
6.特開2003-191425号公報

(3)判断
引用例1乃至6は、それぞれ、上記2 (2-2)に記載した刊行物1乃至6である。
また、上記2 (2-4)対比・判断に記載したとおり、本願発明1乃至5は、いずれも、刊行物1乃至10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものである。
したがって、本願発明1乃至5は、いずれも、刊行物1乃至6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 むすび
以上のとおりであるので、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-03 
出願番号 特願2007-1067(P2007-1067)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 塩見 篤史
大島 祥吾
発明の名称 ポリエステルフィルム  
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