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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01D
管理番号 1285416
審判番号 不服2013-15251  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-03-25 
事件の表示 特願2010- 82343「排ガス中の窒素酸化物除去方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日出願公開、特開2010-184238、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年4月28日(優先権主張1993年4月28日 日本国、1993年9月10日 日本国)に出願した特願平6-524106号の一部を新たな特許出願とした特願2005-222916号の一部をさらに平成22年3月31日に新たな特許出願としたものであって、平成24年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月30日付けで意見書及び手続補正がされ、平成25年4月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年11月1日付けで審尋がされ、同年12月25日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年8月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属または該貴金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で0.1?30gおよびリチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属または該金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で1?80gからなる触媒活性成分と耐火性無機酸化物を触媒1リットル当り50?400gとからなり、かつ窒素酸化物飽和吸着量が触媒1リットル当り6?30ミリモルである触媒を、酸化雰囲気下の排ガスと接触させて該排ガス中の窒素酸化物を該触媒に吸着させ、次いで該排ガス中に該触媒に吸着された窒素酸化物(NOとして換算)1モルに対し、該触媒の飽和窒素酸化物の全吸着量の50%に達する前に、間欠的な還元剤の導入あるいは排気を還元雰囲気にするために、還元物質をモル比で1?10倍量含有するガスを10秒?60分間隔で0.1?20秒間導入して該触媒に吸着された窒素酸化物を還元して浄化することを特徴とする排ガス中の窒素酸化物の除去方法。」(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由は、本願発明はその優先日前に日本国内において頒布された次の刊行物1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1:国際公開第93/07363号
同 2:特開昭63-178848号公報
同 3:特開平1-254251号公報
同 4:特開平5-23593号公報

第4 当審の判断
1 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1の記載事項
刊行物には、次の事項が記載されている。
(ア)「発明の開示
本発明の目的は排気系の構造を複雑にすることなくNOxを効率よく吸収し、必要に応じて吸収されたNOxを放出することのできる排気浄化装置を提供することにある。」(第2頁11?14行)
(イ)「ケーシング19内に収容されているNOx吸収剤18は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されている。機関吸気通路およびNOx吸収剤18上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比をNOx吸収剤18への流入排気ガスの空燃比と称するとこのNOx吸収剤18は流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。」(第5頁下から5行?第6頁6行)
(ウ)「 上述のNOx吸収剤18を機関排気通路内に配置すればこのNOx吸収剤18は実際にNOxの吸放出作用を行うがこの吸放出作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もある。しかしながらこの吸放出作用は第5図に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて担体上に白金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
即ち、流入排気ガスがかなりリーンになると流入排気ガス中の酸素濃度が大巾に増大し、第5図(A)に示されるようにこれら酸素O_(2)がO_(2)^(-)の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO_(2)^(-)と反応し、NO_(2)となる(2NO+O_(2)→2NO_(2))。次いで生成されたNO_(2)の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら第5図(A)に示されるように硝酸イオンNO_(3)^(-)の形で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤18内に吸収される。」(第6頁13行?第7頁2行)
(エ)「 一方、このとき燃焼室3内に供給される混合気がリッチにされて流入排気ガスの空燃比がリッチになると第4図に示されるように機関からは多量の未燃HC、COが排出され、これら未燃HC、COは白金Pt上の酸素O_(2)^(-)と反応して酸化せしめられる。また、流入排気ガスの空燃比がリッチになると流入排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するために吸収剤からNO_(2)が放出され、このNO_(2)は第5図(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO_(2)が存在しなくなると吸収剤から次から次へとNO_(2)が放出される。従って流入排気ガスの空燃比をリッチにすると短時間のうちにNOx吸収剤18からNOxが放出されることになる。
即ち、流入排気ガスの空燃比をリッチにするとまず初めに未燃HC、COが白金Pt上のO_(2)^(-)とただちに反応して酸化せしめられ、次いで白金Pt上のO_(2)^(-)が消費されてもまだ未燃HC、COが残っていればこの未燃HC、COによって吸収剤から放出されたNOxおよび機関から排出されたNOxが還元せしめられる。従って流入排気ガスの空燃比をリッチにすれば短時間のうちにNOx吸収剤18に吸収されているNOxが放出され、しかもこの放出されたNOxが還元されるために大気中にNOxが排出されるのを阻止することができることになる。また、NOx吸収剤18は還元触媒の機能を有しているので流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にしてもNOx吸収剤18から放出されたNOxが還元せしめられる。」(第7頁15行?第8頁9行)
(オ)「従って本発明による実施例ではNOx吸収剤18からNOxを放出すべきときには流入排気ガスの空燃比が理論空燃比或いはリッチにされ、それによってNOx吸収剤18から放出されたNOxをNOx吸収剤18において還元するようにしている。」(第8頁下から3行?第9頁1行)
(カ)「従って本発明による実施例ではリーン混合気が継続して燃焼せしめられているときには第7図(A)に示されるように流入排気ガスの空燃比を周期的にリッチにするか、或いは第7図(B)に示されるように流入排気ガスの空燃比が周期的に理論空燃比にされる。」(第10頁16?19行)
(キ)「 第7図(A)に示すように流入排気ガスの空燃比が周期的にリッチにされる場合についてみるとリーン混合気の燃焼が行われている時間t_(1)に比べて流入排気ガスの空燃比がリッチにされる時間t_(2)は極めて短かい。具体的に云うと流入排気ガスの空燃比がリッチにされる時間t_(2)はほぼ10秒以内であるのに対してリーン混合気の燃焼が行われている時間t_(1)は10数分間から1時間以上の時間となる。即ち、云い換えるとt_(2)はt_(1)の50倍以上の長さとなる。これは第7図(B)および(C)に示す場合でも同様である。
ところでNOx吸収剤18からのNOxの放出作用は一定量のNOxがNOx吸収剤18に吸収されたとき、例えばNOx吸収剤18の吸収能力の50%NOxを吸収したときに行われる。」(第10頁下から4行?第11頁7行)
(ク)「第19図に示される実施例では燃焼室3内の混合気の平均空燃比はリーンにしておいてNOx吸収剤18上流の機関排気通路内に炭化水素を供給することによりNOx吸収剤18への流入排気ガスの空燃比がリッチにされる。」(第20頁11行?14行)
(ケ)「 第19図に示す実施例では排気管17内に還元剤供給弁60が配置され、この還元剤供給弁60は供給ポンプ61を介して還元剤タンク62に連結される。電子制御ユニット30の出力ポート36は夫々駆動回路63,64を介して還元剤供給弁60および供給ポンプ61に接続される。還元剤タンク62内にはガソリン、イソオクタン、ヘキサン、ヘプタン、軽油、灯油のような炭化水素、或いは液体の状態で保存しうるブタン、プロパンのような炭化水素が充填されている。
この実施例では通常燃焼室3内の混合気は空気過剰のもとで、即ち平均空燃比がリーンの状態で燃焼せしめられており、このとき機関から排出されたNOxはNOx吸収剤18に吸収される。NOx吸収剤18からNOxを放出すべきときには供給ポンプ61が駆動されると共に還元剤供給弁60が開弁せしめられ、それによって還元剤タンク62内に充填されている炭化水素が還元剤供給弁60から排気管17に一定時間、例えば5秒間から20秒間程度供給される。このときの炭化水素の供給量はNOx吸収剤18に流入する流入排気ガスの空燃比リッチとなるように定められており、従ってこのときにNOx吸収剤18からNOxが放出されることになる。」(第23頁7行?同頁下から4行)

(2)刊行物1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、刊行物1には、NOx含有ガスの排気浄化装置装置に関する発明が記載されており、同(イ)によれば、その装置において使用するNOx吸収剤は、「アルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウム、ナトリウム、リチウム、セシウムのようなアルカリ金属、バリウム、カルシウムのようなアルカリ土類、ランタン、イットリウムのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白金のような貴金属とが担持されている」ものであり、この機能は、「流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxの吸放出作用を行う」ものである。
そして、同(ウ)?(オ)には、NOx吸収剤の作用が具体的に記載されており、機関排気通路内に配置され、流入排気ガスがかなりリーンになると流入排気ガス中の酸素濃度が増大し、NOxがNOx吸収剤18内に吸収され(同(ウ))、流入排気ガスの空燃比がリッチになると流入排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するために吸収剤からNO_(2)が放出され、このNO_(2)は未燃HC、COと反応して還元せしめられることにより、NOxの浄化が行われる。
さらに、空燃比をリッチにすることについて、同(カ)によれば、流入排気ガスの空燃比を周期的にリッチにする。
また、同(ク)によれば、第19図に示される実施例では、空燃比をリッチにすることは排気通路内に炭化水素を供給することによって行ない、具体的には、同(ケ)によれば、通常は燃焼室がリーンの状態で燃焼されているが、NOx吸収剤からNOxを放出すべき時には、還元剤タンク内に充填されている炭化水素を5秒間から20秒間程度供給することによりNOx吸収剤に流入する流入排気ガスの空燃比がリッチとなるようにしている。
また、同(キ)によれば、NOx吸収剤からのNOxの放出作用は、NOx吸収剤の吸収能力の50%NOxを吸収したときに行われるので、第19図に示される実施例では、還元剤の供給は周期的に行われているといえる。
これらの事項を排気ガスからのNOx除去方法としてとらえると、刊行物1の第19図に示される実施例には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「アルミナを担体とし、この担体上にカリウム、ナトリウム、リチウム、セシウムのようなアルカリ金属、バリウム、カルシウムのようなアルカリ土類、ランタン、イットリウムのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白金のような貴金属とが担持されたNOx吸収剤を機関排気通路内に配置し、
流入排気ガスの空燃比をリーンにしてNOxをNOx吸収剤内に吸収させ、 流入排気ガスの空燃比を周期的にリッチにしてNOxを還元するにあたり、
その吸収・還元の周期を、通常は流入排気ガスの空燃比をリーンとしてNOxの吸収を行い、NOx吸収剤の吸収能力の50%NOxを吸収したときに、還元剤タンク内に充填されている炭化水素を5秒間から20秒間程度供給して流入排気ガスの空燃比をリッチにすることで吸収・還元を行ない、NOx吸収剤に吸収されているNOxを還元して大気中にNOxが排出されるのを阻止する方法。」

(3)刊行物2の記載事項
特許請求の範囲には次の記載がある。
「(1)白金および/またはパラジウムを5?30重量%の範囲およびロジウムを1?20重量%の範囲担持せしめてなるジルコニア(a)を0.1?20μの平均粒子径の凝集粒子の形で含有せしめた触媒組成物を一体構造を有するハニカム担体に被覆担持せしめてなることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。」
(4)刊行物3の記載事項
特許請求の範囲には次の記載がある。
「1.(a)耐火性無機酸化物、(b)パラジウム、ならびに(c)プラセオジム、ネオジウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含有する触媒成分が耐火性三次元構造体に担持されていることを特徴とする炭素系微粒子を浄化する排ガス浄化用触媒。」
(5)刊行物4の記載事項
特許請求の範囲には次の記載がある。
「【請求項1】(A)排気ガス流入側の触媒と(B)排気ガス流出側の触媒とからなり、(A)排気ガス流入側の触媒がパラジウム、アルカリ土類金属酸化物、セリウム酸化物、ジルコニウム酸化物及び耐火性無機酸化物(c)より構成される触媒成分を一体構造体に被覆したものであり、(B)排気ガス流出側の触媒が貴金属として(a)ロジウム及び白金、または(b)ロジウム、白金及びパラジウム、並びに耐火性無機酸化物(d)を含有してなる触媒成分を一体構造体に被覆したものであることを特徴とする排気ガス浄化システム。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、・・・、パラジウム触媒にアルカリ土類金属酸化物を添加することにより、パラジウムに直接作用し、その電荷状態を修飾させ、リッチ雰囲気でのNOx浄化能を向上させることをみいだした。・・・。」

3 対比
(1)一致点
そこで、本願発明と引用発明とを対比する
引用発明の「アルミナ」は、本願発明の「耐火性無機酸化物」に相当し、引用発明のNOx吸収剤は、アルミナ上に担持され、NOxを吸収・吸着する作用を有するので本願発明の「触媒」に相当し、その構成成分については、引用発明のNOx吸収剤と本願発明の触媒とは、「リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属」(以下、「アルカリ(土類)金属」ともいう。)及び「白金」からなる触媒活性成分と、耐火性無機酸化物とを有する触媒」である点で共通している。
また、その使用方法については、引用発明の「流入排気ガスの空燃比をリーンにしてNOxをNOx吸収剤に吸収させること」は、本願発明の触媒を「酸化雰囲気下の排ガスと接触させて該排ガス中の窒素酸化物を吸着させ」ることに相当し、さらに、引用発明の「流入排気ガスの空燃比を周期的にリッチにしてNOxを還元する」することは、本願発明の「排ガス中に還元物質をを含有するガスを間欠的に導入して吸着された窒素酸化物を還元して浄化すること」に相当する。
そうすると、引用発明の「大気中にNOxが排出されるのを阻止する方法」は、本願発明の「排ガス中の窒素酸化物の除去方法」に相当するので、本願発明と引用発明とは、
「白金と、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属からなる触媒活性成分と、耐火性無機酸化物とを有する触媒を、酸化雰囲気下の排ガスと接触させて該排ガス中の窒素酸化物を吸着させ、次いで該排ガス中に還元物質を間欠的に導入して吸着された窒素酸化物を還元して浄化する排ガス中の窒素酸化物の除去方法」 である点で一致するが、以下の点で相違する。
(2)相違点
本願発明では、(ア)触媒を構成する各成分の量について、貴金属または該貴金属の化合物、アルカリ(土類)金属または該金属の化合物及び耐火性無機酸化物の量を、それぞれ触媒1リットル当り「金属換算で0.1?30g」、「金属換算で1?80g」、「50?400g」とし、(イ)触媒の窒素酸化物飽和吸着量に関し「触媒1リットル当り6?30ミリモルである」とし、(ウ)還元物質の量と吸着・還元の周期について、本願発明では「排ガス中に該触媒に吸着された窒素酸化物(NOとして換算)1モルに対し、該触媒の飽和窒素酸化物の全吸着量の50%に達する前に、間欠的な還元剤の導入あるいは排気を還元雰囲気にするために、還元物質をモル比で1?10倍量含有するガスを10秒?60分間隔で0.1?20秒間導入」として、それぞれの技術事項について具体的な数値範囲を特定するのに対し、
引用発明では、(ア)触媒を構成する各成分の量、及び、(イ)使用する触媒の窒素酸化物飽和吸着量を特定せず、(ウ)還元物質の量を特定せず、吸着・還元の周期については「通常は流入排気ガスの空燃比をリーンとしてNOxの吸収を行い、NOx吸収剤の吸収能力の50%NOxを吸収したときに、還元剤タンク内に充填されている炭化水素を5秒間から20秒間程度供給して流入排気ガスの空燃比をリッチ」にして還元するとしている点。

4 判断
上記相違点について検討する。
刊行物1には、(ア)触媒を構成する各成分の量、(イ)触媒の飽和吸着量及び(ウ)還元物質の量について、具体的な記載はないし、これをどの程度とすべきかについて示唆する記載もない。
また、刊行物2、3に記載の触媒は、本願発明の触媒を構成する成分であるアルカリ(土類)金属を含むものではないし、刊行物4に記載の触媒は、アルカリ(土類)金属を含むものの、リッチ雰囲気でのNOx浄化能を有するものであるから、その触媒成分の構成比をリーン雰囲気におけるNOx除去を目的とする本願発明に適用できるものでもない。
そして、本願発明においては、(ア)触媒を構成する各成分の量及び(イ)触媒の窒素酸化物飽和吸着量を所定の数値範囲内とすることにより、本願明細書の【表1-1】及び【表1-2】の実験データから明らかなように、該所定の数値範囲をはずれるものに比較して、NOxの除去率において顕著な効果を発揮しているし、【表2】?【表5】の実験データから明らかなように、触媒の窒素酸化物飽和吸着量を50%未満とし、還元物質の導入間隔、導入時間及び導入量を所定の数値範囲とすることにより、該所定範囲をはずれる場合に比較して、NOxの除去率において顕著な効果を発揮している。これらの効果は、刊行物1の記載からは予測できないことである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。また、本願の請求項2?12に係る発明は、本願発明の特定事項を限定具体化したものであるか、あるいは、さらに別の特定事項を付加したものであるので、同様の理由から、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?12に係る発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-12 
出願番号 特願2010-82343(P2010-82343)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 政博  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 川端 修
吉水 純子
発明の名称 排ガス中の窒素酸化物除去方法  
代理人 八田国際特許業務法人  

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