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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) B25F |
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管理番号 | 1285449 |
判定請求番号 | 判定2013-600043 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-11-22 |
確定日 | 2014-03-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4986258号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD133Dは、特許第4986258号の請求項1ないし3に係る特許発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1.請求の趣旨と手続の経緯 判定請求人の請求の趣旨は、イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD133Dは、特許第4986258号の請求項1ないし3に係る特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成18年 4月26日 本件特許に係る特許出願(優先権主張 平成17年12月27日) 平成23年12月14日 拒絶理由 平成24年 2月24日 意見書及び補正書提出 平成24年 4月 2日 特許査定 平成24年 5月11日 特許登録 平成25年11月22日 判定請求 平成26年 1月23日 答弁書提出 第2.本件特許発明 特許第4986258号の請求項1ないし5に係る特許発明は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものであり、そのうちの請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである。 1.本件特許発明1 【請求項1】 A.吸気口が設けられたハウジング部と、 B.ステータコイルが巻回され回転軸方向に延びる外周部及び内周部を有する略円筒状のステータと、該ステータの内部に略同心状に配置されたロータと、を有し、前記ハウジング部に収容されるブラシレスモータと、 C.該ブラシレスモータの前記ステータコイルに接続される基板と、 D.前記ハウジング部に収容され、前記回転軸に装着される冷却ファンと、を備えた電動工具において、 E.前記ブラシレスモータは、前記ステータに設けられ前記ステータと前記ステータコイルとを絶縁し、前記ステータの端部より前記回転軸方向に突出する突出部を有する絶縁部材を備え、 F.前記基板は、前記吸気口側の前記ステータの端部を覆うように前記絶縁部材の前記突出部に固定されていることを特徴とする電動工具。 2.本件特許発明2 【請求項2】 G.前記吸気口から前記ハウジング部内に吸入された冷却用気体を、前記ハウジング部の外へ排出する排出口を備え、 H.該排出口は、前記吸気口と離間して、前記ハウジング部に形成されたことを特徴とする請求項1記載の電動工具。 3.本件特許発明3 【請求項3】 I.前記ブラシレスモータの前記ステータコイルに電流を通電する複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路基板を備え、 J.該インバータ回路基板と前記基板とを別々に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動工具。 第3.イ号物件 1.イ号物件についての証拠 本件特許発明1ないし3の技術的範囲に含まれるか否かを判断する対象物(以下、「イ号物件」という。)は、イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD133Dである。 そして、イ号写真1ないし11として、充電式インパクトドライバTD133Dの写真の写しが提出されているほかに、証拠方法として、以下の書証が提出されている。 甲第1号証の1 本件特許公報 甲第1号証の2 登録原簿謄本の写し 甲第2号証 イ号物件が掲載されたカタログの写し 甲第3号証 イ号物件の取扱説明書の写し 甲第4号証 イ号物件についてのプレスリリース記事の写し 甲第5号証 請求人が被請求人に対して送った書簡の写し 甲第6号証 本件特許に係る出願手続での拒絶理由通知書の写し 甲第7号証 本件特許に係る出願手続での手続補正書の写し 甲第8号証 本件特許に係る出願手続での意見書の写し 第4.答弁書における被請求人の主張 被請求人の答弁の趣旨は、イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD133Dは、特許第4986258号の請求項1ないし3に係る特許発明の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものである。 そして、被請求人は、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に含まれることを認めるわけではないが、請求人の主張に対する個別具体的な反論の主張をしていない。 第5.当審の判断 1.イ号写真及び各証拠によって示されるイ号物件に関する事項 イ号写真及び上記の各証拠を総合すると、イ号物件について、以下の事項を認めることができる。 なお、用語や符号については、イ号写真1ないし11に記載された用語や符合を用いる。 (1)イ号写真1ないし2について イ号物件がハウジング部50a、及びハンドルハウジング部50cを有し、当該ハウジング部50aの側面に吸気口17が設けられ、その後方側面に排気口18が設けられていること。 (2)イ号写真3ないし4について ハウジング部50aの内部には、吸気口17に対応する位置にモータ3が設けられ、排気口18に対応する位置に冷却ファン15が設けられていること。 イ号物件のハンドルハウジング部50cには、回路装置2が設けられていること。 回路装置2に、径の太い被覆電線が3本接続されていること。 (3)イ号写真5について モータ3が、ステータ12と回転軸11とを有していること。 ステータ12が絶縁部材14eを有し、当該絶縁部材14eが、ステータ12よりも前方側に突出する突出部14e2を有しており、当該突出部14e2の端部に基板31が設けられていること。 (4)イ号写真6について 回転軸11、ロータ13、及び冷却ファン15が同軸に設けられていること。 冷却ファン15が遠心式のファンであること。 (5)イ号写真7及び8について ステータ12が略円筒形で、内周部12b及び外周部12cを有すること。 基板31には、ステータ12の内周部12bに通じる円形の穴が設けられていること。 ステータコイル12aの前方側の導線が、基板31とハンダで接続されていること。 (6)イ号写真9について ステータ12の内部には、ステータコイル12aが巻回されていること。 基板31が、ステータコイル12aの前方側の端部を覆っていること。 基板31において、ステータコイル12aの前方側の端部と対向する面に電子素子が設けられていること。 基板31に、径の太い被覆電線が3本接続され、径の細い被覆電線が5本接続されていること。 (7)イ号写真11について 基板31は、排気口18よりも、吸気口17に近い位置に設けられていること。 (8)甲第3号証について イ号物件が、充電式インパクトドライバであること(第1及び第3ページ)。 イ号物件のモータが、DCブラシレスモータであること(第3ページ)。 2.イ号物件の構成 (1)構成a. 上記1.(1)に認定する事項からみて、イ号物件は、吸気口17が設けられたハウジング部50aを備えている。 (2)構成b. 上記1.(3)ないし(5)、及び(8)に認定する事項からみて、イ号物件は、ステータコイル12aが巻回され回転軸11方向に延びる外周部12c及び内周部12bを有する略円筒状のステータ12と、該ステータ12の内部に略同心状に配置されたロータ13と、を有し、前記ハウジング部50aに収容されるDCブラシレスモータ3を備えている。 (3)構成c. 上記1.(5)に認定する事項からみて、イ号物件は、DCブラシレスモータ3のステータコイル12aに接続される基板31を備えている。 (4)構成d. 上記1.(2)、(4)及び(8)に認定する事項からみて、イ号物件は、ハウジング部50aに収容され、回転軸11に装着される冷却ファン15を備えた充電式インパクトドライバである。 (5)構成e. 上記1.(3)に認定する事項からみて、イ号物件のDCブラシレスモータ3は、ステータ12に設けられ前記ステータ12とステータコイル12aとを絶縁し、前記ステータ12の端部より回転軸方向に突出する突出部14e2を有する絶縁部材14eを備えている。 (6)構成f. 上記1.(3)、(6)及び(7)に認定する事項からみて、イ号物件の基板31は、吸気口17側のステータ12の端部を覆うように絶縁部材14eの突出部14e2に固定されている。 (7)構成g. 上記1.(1)及び(7)に認定する事項からみて、イ号物件は、吸気口17からハウジング部50a内に吸入された冷却用気体を、前記ハウジング部50aの外へ排出する排出口18を備えている。 (8)構成h. 上記1.(1)に認定する事項からみて、イ号物件の排出口18は、吸気口17と離間して、ハウジング部50aに形成されている。 (9)構成i. 上記1.(2)及び(6)に認定する事項からみて、イ号物件は、回路装置2と、電子素子を有する基板31とを備えている。また、DCブラシレスモータの駆動回路に、ステータコイルに電流を通電する複数のスイッチング素子を設けることや、当該スイッチング素子を備えた回路は直流を交流に変換するものであり、当該回路をインバータ回路と呼ぶことは、技術常識である。そして、3本の径の太い被覆電線が回路装置2と基板31とに接続されており、当該3本の径の太い被覆電線は、交流のための電線にほかならないから、イ号物件の回路装置2は、DCブラシレスモータ3のステータコイル12aに電流を通電する複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路基板を備えている。 (10)構成j. 上記1.(2)及び(3)に認定する事項からみて、イ号物件において、回路装置2と基板31とを別々に設けている。 (11)イ号物件の第1構成 上記(1)ないし(6)の構成を本件特許発明1の構成要件の記載に沿って整理すると、イ号物件の第1構成は、以下のとおりのものと認めることができる。 a.吸気口17が設けられたハウジング部50aと、 b.ステータコイル12aが巻回され回転軸11方向に延びる外周部12c及び内周部12bを有する略円筒状のステータ12と、該ステータ12の内部に略同心状に配置されたロータ13と、を有し、前記ハウジング部50aに収容されるDCブラシレスモータ3と、 c.該ブラシレスモータ3の前記ステータコイル12aに接続される基板31と、 d.前記ハウジング部50aに収容され、前記回転軸11に装着される冷却ファン15と、を備えた充電式インパクトドライバにおいて、 e.前記DCブラシレスモータ3は、前記ステータ12に設けられ前記ステータ12と前記ステータコイル12aとを絶縁し、前記ステータ12の端部より前記回転軸方向に突出する突出部14e2を有する絶縁部材14eを備え、 f.前記基板31は、前記吸気口17側の前記ステータ12の端部を覆うように前記絶縁部材14eの前記突出部14e2に固定されている充電式インパクトドライバ。 (12)イ号物件の第2構成 上記(7)ないし(8)の構成を本件特許発明2の構成要件の記載に沿って整理すると、イ号物件の第2構成は、以下のとおりのものと認めることができる。 g.吸気口17からハウジング部50a内に吸入された冷却用気体を、前記ハウジング部50aの外へ排出する排出口18を備え、 h.該排出口18は、前記吸気口17と離間して、前記ハウジング部50aに形成されたこと。 (13)イ号物件の第3構成 上記(9)ないし(10)の構成を本件特許発明3の構成要件の記載に沿って整理すると、イ号物件の第3構成は、以下のとおりのものと認めることができる。 i.DCブラシレスモータ3のステータコイル12aに電流を通電する複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路を備え、 j.該インバータ回路基板と基板31とを別々に設けたこと。 3.対比及び判断 (1)本件特許発明1とイ号物件の第1構成との対比及び判断について ア.構成要件A.の充足性について イ号物件の第1構成の「吸気口17」が、本件特許発明1の「吸気口」に対応し、同様に「ハウジング部50a」が「ハウジング部」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件A.を充足する。 イ.構成要件B.の充足性について イ号物件の第1構成の「ステータコイル12a」が、本件特許発明1の「ステータコイル」に対応し、以下同様に「ハウジング部50a」が「ハウジング部」に対応し、「回転軸11」が「回転軸」に対応し、「外周部12c及び内周部12bを有する略円筒状のステータ12」が「外周部及び内周部を有する略円筒状のステータ」に対応し、「ステータ12の内部に略同心状に配置されたロータ13」が「ステータの内部に略同心状に配置されたロータ」に対応し、「DCブラシレスモータ3」が「ブラシレスモータ」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件B.を充足する。 ウ.構成要件C.の充足性について イ号物件の第1構成の「ブラシレスモータ3のステータコイル12aに接続される基板31」が本件特許発明1の「ブラシレスモータのステータコイルに接続される基板」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件C.を充足する。 エ.構成要件D.の充足性について イ号物件の第1構成の「回転軸11に装着される冷却ファン15」が、本件特許発明1の「回転軸に装着される冷却ファン」に対応し、同様に「充電式インパクトドライバ」が「電動工具」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件D.を充足する。 オ.構成要件E.の充足性について イ号物件の第1構成の「ステータ12に設けられ前記ステータ12とステータコイル12aとを絶縁し、前記ステータ12の端部より回転軸方向に突出する突出部14e2を有する絶縁部材14e」が、本件特許発明1の「ステータに設けられ前記ステータとステータコイルとを絶縁し、前記ステータの端部より回転軸方向に突出する突出部を有する絶縁部材」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件E.を充足する。 カ.構成要件F.の充足性について イ号物件の第1構成において「基板31は、吸気口17側のステータ12の端部を覆うように絶縁部材14eの突出部14e2に固定されている」ことが、本件特許発明1において「基板は、吸気口側のステータの端部を覆うように絶縁部材の突出部に固定されている」ことに対応するから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件F.を充足する。 キ.まとめ 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件A.ないしF.を全て充足しているから、イ号物件は、本件特許発明1の技術的範囲に属する。 (2)本件特許発明2とイ号物件の第2構成との対比及び判断について ア.構成要件G.ないしH.の充足性について イ号物件の第2構成の「吸気口17からハウジング部50a内に吸入された冷却用気体を、前記ハウジング部50aの外へ排出する排出口18」が、本件特許発明2の「吸気口からハウジング部内に吸入された冷却用気体を、前記ハウジング部の外へ排出する排出口」に対応し、イ号物件の第2構成において「排出口18は、吸気口17と離間して、ハウジング部50aに形成されている」ことが、本件特許発明2において「排出口は、吸気口と離間して、ハウジング部に形成された」ことに対応するから、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件G.ないしH.を充足する。 イ.まとめ 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件G.ないしH.を全て充足しているから、イ号物件は、本件特許発明2の技術的範囲に属する。 (3)本件特許発明3とイ号物件の第3構成との対比及び判断について ア.構成要件I.ないしJ.の充足性について イ号物件の第3構成の「DCブラシレスモータ3のステータコイル12aに電流を通電する複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路基板」が、本件特許発明3の「ブラシレスモータのステータコイルに電流を通電する複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路基板」に対応し、イ号物件の第3構成において「インバータ回路基板と基板31とを別々に設けたこと」が、本件特許発明3において「インバータ回路基板と基板とを別々に設けたこと」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明3の構成要件I.ないしJ.を充足する。 イ.まとめ 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明3の構成要件I.ないしJ.を全て充足しているから、イ号物件は、本件特許発明3の技術的範囲に属する。 (4)被請求人の主張について 上記第4.に示すとおり、被請求人は、イ号物件の認定や、本件特許発明1ないし3とイ号物件との対比及び判断について、個別具体的な反論をしていないから、被請求人の主張は、上記(1)ないし(3)における判断を妨げるものではない。 第6.むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明1ないし3の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2014-03-03 |
出願番号 | 特願2006-121427(P2006-121427) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(B25F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 阿部 利英 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 長屋 陽二郎 |
登録日 | 2012-05-11 |
登録番号 | 特許第4986258号(P4986258) |
発明の名称 | 電動工具 |
代理人 | 筒井 章子 |
代理人 | 筒井 大和 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 青山 仁 |