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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B29C
管理番号 1285699
審判番号 無効2013-800097  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-05-30 
確定日 2014-03-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2932136号発明「電子部品の樹脂封止成形方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2932136号に係る経緯の概要は、以下のとおりである。
平成 5年 7月22日 特許出願(特願平5-202689号)
平成 9年 2月14日 拒絶理由通知(起案日)
同 年 4月25日 意見書及び手続補正書
同 年 6月26日 拒絶査定(起案日)
同 年 8月 7日 拒絶査定不服の審判請求
同 年 9月 3日 手続補正書
平成11年 4月 6日 特許審決(起案日)
同 年 5月28日 設定登録
平成25年 5月30日 本件無効審判請求(請求項1乃至4に対して )
同 年 8月19日 答弁書
同 年10月28日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 年11月18日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同 年12月 5日 口頭審理
同 年12月 6日 調書(作成日)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1乃至4に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」、請求項2に係る発明を「本件特許発明2」などといい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 固定型と可動型とを対向配置した金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に配設したキャビティと、該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通路とを有するモールディングユニットを用いてリードフレーム上に装着した電子部品を樹脂材料にて封止成形する電子部品の樹脂封止成形方法であって、
樹脂封止成形装置に既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設することにより、該モールディングユニットの数を任意に増減調整する工程と、
上記各モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する工程と、
上記各モールディングユニットを用いて、上記電子部品の樹脂封止成形を行う工程と、
樹脂封止された電子部品を上記各モールディングユニットから外部へ取出す工程とを備えたことを特徴とする電子部品の樹脂封止成形方法。」

「【請求項2】 各モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する工程は、
電子部品を装着した多数枚の樹脂封止前リードフレームを、リードフレーム供給ユニットにおける所定位置に供給しセットする工程と、
上記リードフレーム供給ユニットにセットした樹脂封止前リードフレームを、リードフレーム整列ユニットへ移送する工程と、
上記リードフレーム整列ユニットに移送した樹脂封止前リードフレームを、所定の方向へ整列させる工程と、
所定数の樹脂タブレットを樹脂タブレット搬出ユニットに供給し整列させる工程と、
上記リードフレーム整列ユニットにセットした樹脂封止前リードフレームと、上記樹脂タブレット搬出ユニットに整列させた樹脂タブレットとを、モールディングユニットにおける固定型及び可動型間に移送すると共に、上記樹脂封止前リードフレームをモールディングユニットのキャビティ部の所定位置に供給し、且つ、上記樹脂タブレットをポット内に供給する工程とを備えており、
電子部品の樹脂封止成形を行う工程は、
上記固定型及び可動型の両型を型締めすると共に、ポット内の樹脂タブレットを加熱且つ加圧して溶融化し、該溶融樹脂材料を上記樹脂通路を通してキャビティ内に夫々注入充填させて、該キャビティ内に嵌装した電子部品を夫々樹脂封止成形する工程を備えており、
樹脂封止した電子部品を上記各モールディングユニットから外部へ取出す工程は、
上記樹脂封止成形工程を経た樹脂封止済リードフレームを、上記固定型及び可動型の両型から外部へ取り出す工程と、
上記固定型及び可動型における型面のクリーニィングを行う工程と、
上記樹脂封止済リードフレームを、ディゲーティングユニットの位置に移送する工程と、
上記ディゲーティングユニットにおいて、上記樹脂封止済リードフレームにおけるゲート部分を除去する工程と、
上記ゲート除去工程を経た上記樹脂封止済リードフレームを、リードフレーム収容ユニットへ移送する工程と、
上記リードフレーム収容ユニットにおいて、上記ゲート除去工程を経た樹脂封止済リードフレームを各別に係着する工程と、
各別に係着した上記各樹脂封止済リードフレームを、各別に収容する工程とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の樹脂封止成形方法。」

「【請求項3】 固定型と可動型とを対向配置した金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に配設したキャビティと、該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通路とを有するモールディングユニットと、上記モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する手段と、樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって、
既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設可能とし、これによって該モールディングユニットの数を増減調整自在に構成したことを特徴とする電子部品の樹脂封止成形装置。」

「【請求項4】 モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する手段が、
電子部品を装着した多数枚の樹脂封止前リードフレームを供給する供給ユニットと、
上記各樹脂封止前リードフレームを所定方向へ整列させるリードフレーム整列ユニットと、
樹脂タブレットの供給ユニットと、
樹脂タブレットを整列して搬出する樹脂タブレットの搬出ユニットと、
整列させた上記樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを上記モールディングユニットに移送するローダユニットとを備えており、
樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取出す手段が、
樹脂封止済リードフレームを取り出すアンローダユニットと、
金型のクリーナユニットと、
上記樹脂封止済リードフレームの移送ユニットと、
上記樹脂封止済リードフレームのゲートを除去するディゲーティングユニットと、
ゲートを除去した各樹脂封止済リードフレームを個々に係着するピックアップユニットと、
係着した個々の上記樹脂封止済リードフレームを各別に収容するリードフレーム収容ユニットとを備えており、
更に、上記各ユニットの各動作を連続的に且つ自動的に制御するコントローラユニットとを備えたことを特徴とする請求項3に記載の電子部品の樹脂封止成形装置。」

第3 請求人及び被請求人の主張の概要
1.請求人の主張
本件特許発明1?4は、甲第1号証(CIM/FA事典)に記載の発明及び甲第2号証(特開昭61-148016号公報)、甲第3号証(特開平1-186638号公報)等の周知慣用技術に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(審判請求書22頁1?7行)。
甲第1号証の2に記載の発明を主たる引用発明とし、本件特許発明1及び3は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2は、引用発明、周知技術及び甲第3号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明4は、引用発明、周知技術、甲第3号証及び甲第9号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない(口頭審理陳述要領書3頁5?10行、10頁12?15行、同頁31?33行、11頁7?9行)。

[証拠方法]
甲第1号証の1:CIM/FA事典編集委員会、「CIM/FA事典」、 株式会社産業調査会、1991年5月10日、初版第3 刷、目次、46?53頁
甲第1号証の2:同、772?775頁
甲第1号証の3:同、1134?1135頁
甲第1号証の4:同、270?274頁
甲第1号証の5:同、812?814頁
甲第2号証:特開昭61-148016号公報
甲第3号証:特開平01-186638号公報
甲第4号証:工場自動化事典編集委員会、「工場自動化事典」、株式会社 産業調査会出版部、昭和58年1月10日、初版、530? 535頁
甲第5号証の1:被請求人からの書面(2011年05月26日付)
甲第5号証の2:被請求人からの書面(2011年06月28日付)
甲第5号証の3:被請求人からの書面(2011年08月10日付)
甲第5号証の4;被請求人からの回答書(2011年10月18日付)
甲第6号証の1:TOWA販売促進資料 製品「Y120」(平成24年 9月30日印刷)
甲第6号証の2:TOWA販売促進資料 製品「YPS60」(平成24 年9月30日印刷)
甲第6号証の3:TOWA販売促進資料 製品「PMC1040」(平成 24年9月30日印刷)
甲第6号証の4:TOWA販売促進資料 製品「LCM1010」(平成 24年9月30日印刷)
甲第7号証の1:新村出、「広辞苑」、株式会社岩波書店、1995年1 1月10日、第4版第5刷、1358、1491及び2 538頁
甲第7号証の2:新村出、「広辞苑」、株式会社岩波書店、2008年1 月11日、第6版第1刷、1478及び1625頁
甲第8号証:社団法人日本機械学会、「機械工学便覧 C.エンジニアリ ング編」、丸善株式会社、1989年10月15日、初版第 1刷、C4-58及びC1-140頁
甲第9号証:特開平4-349639号公報
甲第10号証:機電用語辞典編集委員会、「最新●機電用語辞典」、株式 会社技術評論社、昭和57年9月10日、初版第1刷、4 23頁
甲第11号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1982年8月、6 2?67頁
甲第12号証:日刊工業新聞、株式会社日刊工業新聞社、1992年12 月2日付、第25面
甲第13号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1987年8月、7 2?79頁
甲第14号証:FICO 販売促進資料 (発行日は不明)
甲第15号証:土屋哲、「変種変量生産時代のIE」、日刊工業新聞社、 1993年4月30日、初版1刷、144?153頁
甲第16号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1989年3月、3 6?47頁
甲第17号証:電波新聞、株式会社電波新聞社、1992年1月21日付 、第28面
甲第18号証:審決取消請求事件(平成24年(行ケ)第10294号) の被告第2準備書面(平成25年2月28日付)
甲第19号証:審決取消請求事件の判決(知財高裁 平成25年1月17 日判決 平成24年(行ケ)第10146号)
甲第20号証:無効2012-800001号の答弁書
甲第21号証:無効2012-800001号の審決謄本
甲第22号証:審決取消請求事件(平成24年(行ケ)第10294号) の被告第1準備書面(平成24年11月22日付)
甲第23号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1982年7月、2 8?37頁
甲第24号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1984年5月、1 12?119頁
甲第25号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1984年9月、8 2?87頁
甲第26号証:電波新聞、株式会社電波新聞社、1993年1月20日付 、第9面
甲第27号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1988年5月、9 6?103頁
甲第28号証:「自動化技術」、株式会社工業調査会、第23巻第3号、 1991年、40?51頁
甲第29号証:「電子材料」、株式会社工業調査会、1990年10月、 60?63頁

2.被請求人の主張
本件発明の技術思想は、本件特許明細書の段落【0014】や【0042】に記載のとおり、最小構成単位の樹脂封止成形装置におけるモールディングユニットに対して他のモールディングを着脱自在の状態で装設することにより、モールディングユニットの数を簡易且つ任意に増減調整するというものであり、このような技術思想は、甲第1号証の1乃至甲第1号証の5のみならず、その他のどの先行技術(甲各号証)にも示されておらず、甲各号証に記載の発明をどのように組み合わせようとも本件発明を容易に想到し得ない(答弁書10頁11?18行)。
甲第1号証の2には、「ダイ・ボンディング工程」、「ワイヤー・ボンディング工程」、及び「モールド工程」という異なる工程(装置)を連結することが示されているだけであり、本件発明でいうところの「モールディングユニット」を甲第1号証の2は開示していない(口頭審理陳述要領書3頁21行?4頁1行)。
また、甲第1号証の2に記載の発明に他の発明を適用して本件発明を得ようとする動機づけも存在しない(同4頁2?4行)。
甲第2号証には、金型の「交換」や「取替」が示されているだけであり、本件発明の特徴的な構成である「着脱自在の状態で装設」及びモールディングユニットの数を「増減調整」する思想が示されていない(同7頁19?25行)。
甲第13号証及び甲第14号証は、トリム&フォーム工程を実施するための装置において、複数の異なる金型により、装置中を順次移動していく製品に対し上記に挙げた種類の異なる工程を順次実施していくものであり、「モールド工程」の後のトリム&フォーム工程を実施するための装置を示すに過ぎず、樹脂封止に関する技術ではなく、「モールディングユニット」どうしを着脱自在に設けるものでもなく、同じ機能を有するユニットを複数並べたものではなく、本件発明でいうところの「増減調整」や生産量の調整とも関係がない(同8頁下から4行?9頁18行)。

[証拠方法]
乙第1号証:平成25年7月8日知財高裁判決(平成24年(行ケ)第1 0294号審決取消請求事件)の正本写し
乙第2号証:香山晋、他1名、「実践講座 VLSIパッケージング技術 (下)」、日経BP社、1993年5月31日、1版1刷、 1?3頁、9?53頁、292?293頁
乙第3号証:香山晋、他4名、「ASICパッケージング技術ハンドブッ ク」、株式会社サイエンスフォーラム、1992年12月2 5日、第1版第1刷、8?10頁、331?335頁

第4 当審の判断
1.本件特許発明について
(1)本件特許の特許請求の範囲は、前記「第2」に記載のとおりであるところ、本件特許明細書には次の記載がある。
ア 本件特許発明は、「例えば、リードフレームに装着したIC、LSI、ダイオード、コンデンサー等の電子部品を樹脂材料によって封止するための樹脂封止成形方法とその樹脂封止成形装置の改良に係り、特に、少量生産及び多量生産に夫々即応できるように改善したものに関する。」(【0001】)
イ 「従来より、トランスファモールド法によって電子部品を樹脂封止成形することが行われている・・・(略)・・・この種の樹脂封止成形装置には、固定型と可動型とを対向配置した一対の金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に対設したキャビティと、上記ポットとキャビティとの間に配設した樹脂通路等が備えられている。・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来装置に装着する金型に多量生産用のものを用いる場合においては、特に、次のような問題がある。
例えば、金型の重量や形状が必然的に大型化されるので、その取り扱いが面倒になるのみならず、金型の加工精度を均一に維持することが困難となる。このため、該金型の各部位において樹脂成形条件が相違することになり、特に、電子部品の樹脂封止成形のように高品質性及び高信頼性を要求される製品の製造に際しては、樹脂封止成形条件の相違に起因して、キャビティ内の樹脂未充填状態が発生したり、樹脂封止成形体の内外部にボイドや欠損部が形成されて製品の品質を著しく低下させると云った樹脂封止成形上の重大な弊害が生じる。更に、金型の加工精度を均一に維持するには、高級型材を使用する等の必要があるため、金型及び装置が高価格になると云った問題もある。
また、金型の型面に樹脂バリが多量に付着することになるため、該樹脂バリの取り除きに手数を要して全体的な成形時間が長くなり、生産性を著しく低下させると云った問題がある。
また、金型の大型化は型締機構等の大型化をも考慮しなければならないので、上記従来装置に多量生産用の金型を装着する場合にも限度があって、金型の大きさや生産量に必然的な制約を受けると云った問題がある。
更に上記したような従来装置における金型においては、通常の場合、同種の成形品を同時に成形するように設けられている。従って、異なる成形品を成形するためには成形装置に装着する金型自体を交換する必要がある。また、同じ成形装置を用いて異なる成形品を同時に成形するためには、例えば、金型自体のレイアウトを変更するか、異種の金型を同時に装着する必要がある。このような異なる成形品を成形するために、成形装置に装着する金型自体を頻繁に交換する場合は、金型交換作業が面倒であると共に、生産性を低下させる要因となる。また、成形装置に装着する金型自体のレイアウトを異なる成形品と同時に成形できるように変更する場合は、金型の設計製作が面倒になると共に、用途がそのレイアウトのものに限られて凡用性を欠くことになるため、金型及び成形装置が高価になると云う間題もある。」(【0002】?【0008】)。
ウ 「そこで、本発明は、電子部品の樹脂封止成形に際して、その少量生産及び多量生産に夫々簡易に即応できると共に、樹脂封止成形体の内外部にボイドや欠損部が形成されない高品質性及び高信頼性を備えた製品を成形することができる電子部品の樹脂封止成形方法とその装置を提供することを目的とするものである。」(【0009】)。
エ 「本発明によれば、他のモールディングユニットを追加しない態様・構成においては、電子部品を樹脂封止成形する最少構成単位の樹脂封止成形装置として利用することができる。また、このような電子部品を樹脂封止成形する最少構成単位の組合せから構成した電子部品の樹脂封止成形装置に対して、他のモールディングユニットを適宜に追加して構成することができるので、金型自体を大型化することなく、多量生産用に対応させた樹脂封止成形装置を簡易に構成することができる。また、追加した他のモールディングユニットを適宜に取り外して構成することができるので、金型自体を小型化することなく、少量生産用に対応させた樹脂封止成形装置を簡易に構成することができる。即ち、必要な生産量に対応して、成形装置におけるモールディングユニットの数を任意に且つ簡易に増減調整することができる。従って、電子部品の樹脂封止成形に際して、必要に応じて、その少量生産及び多量生産に夫々簡易に即応できると云った優れた実用的な効果を奏する。」(【0042】)。
オ 「また、本発明によれば、金型自体を大型化することなく、多量生産用に対応させた樹脂封止成形装置を簡易に構成することができるので、電子部品の樹脂封止成形体における内外部にボイドや欠損部が形成されない高品質性及び高信頼性を備えた製品を高能率生産することができる。従って、前述したような従来の弊害を確実に解消し得る電子部品の樹脂封止成形方法とその成形装置を提供することができると云った優れた実用的な効果を奏するものである。」(【0043】)。

(2)以上によれば、本件特許発明は、樹脂封止成形方法とその樹脂封止成形装置について、前記イの従来の問題を解決すべく、前記ウ及びエのとおり、樹脂封止成形装置に既に備えられたモールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設することにより、該モールディングユニットの数を任意に増減調整するものであり、電子部品の樹脂封止成形に際して、必要に応じて、その少量生産及び多量生産に即応できるといった優れた効果を奏するものと認められる。

2.甲第1号証の2の記載について
(以下、甲第1号証を単に「甲1」、甲第1号証の2を単に「甲1の2」などと記載する。)
(1)甲1の2には、「(3)封止の自動化」の項に、写真4とともに次の記載がある(当審注:以下、○で囲まれた文字を「○1」などと表記する。)。
ア 「a)モールド工程
ICは,苛酷な使用環境からの保護及び使い易い外形(パッケージ)とするために,種々の方法で封止(成型)されるが,現状は高性能のエポキシモールド樹脂を用いた低圧トランスファーモールド方式が,その汎用性,寸法精度,信頼性等にすぐれる事から,現在もその主流をなしている。
モールド方法それ自体の原理は簡単で,予めモールド装置(モールドプレス等)にセットされ,所定の温度に昇温されたモールド金型に対し,
○1 まず,金型表面のクリーニング及び離型剤処理を行う。
○2 すでにICチップが搭載され,ワイヤボンディングも終わったリードフレームを,該モールド金型にセットする。
○3 予めタブレット化されたモールド樹脂を,高周波予熱機で所定の温度に予熱する。
○4 予熱の終わったタブレットを金型のポット部に投入し,金型を閉じる。
○5 投入されたタブレットをプランジャーで所定の圧力パターンで加圧し,ランナー・ゲート経由で各キャビティに圧送し,そのままキュア(正硬化)させる。
○6 金型を開き,モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出す。
○7 ランナー・ゲート部を分離する。
○8 分離されたモールド済みリードフレームをポストキュア(後硬化)し,次工程へ送る(以下上記を繰り返す)。」(772頁左欄2行?773頁左欄4行)
イ 「以上でモールドの全工程が完了するわけであるが,この様なモールドの各工程において,これまで金型表面のクリーニングや離型剤処理,タブレットの予熱,移載工程(リードフレームやタブレットのローディング,モールド済フレームのアン・ローディング等),ランナー・ゲート部の分離などはこれまで全面的に人手に頼っていたが,現在ではすでにそれらはオート・クリーナーや自動離型剤スプレー装置,オート・プリヒーター,ロポットや移載機,自動ゲートブレーカー等でかなりの部分自動化されてきた。」(773頁左欄5?14行)
ウ 「最近の注目の的であるCIM/FA化のためには,更にその主たる目的である機能/品質,納期,価格の3点1)でいかに,それも多品種変量生産対応で,顧客のNeeds(これは新製品の開発からその実用化までも含めて)に答えることが出来るかが重要となる。」(773頁左欄15?20行)
エ 「最近のモールド工程においては,
○1 従来の単品多量生産対応の大型モールド装置やモールド金型から,多品種変量生産対応の小型汎用モールド装置及び金型へと変化すると共に,メカ精度,位置決め精度や耐久性,MTBFの向上及びインテリジェンスの高度化。
○2 モールドプレスの電動化,クリーナーの高性能化等による装置のクリーン化,低振動化。なお,モールドプレスの電動化は,高度なプロセス条件の実現を可能とし品質,成型性の向上にも寄与。
○3 タブレットのミニ化,材料(タブレット)の保管及び供給の自動化。尚,タブレットのミニ化は材料の節減のみならず,プリヒート工程の廃止や各キャビティへの同時注入及び高サイクル化が可能で,工程の合理化や品質,成型性の向上,生産性の向上へも寄与。
○4 モジュール化(FMC化)→品質,生産性,MTBFの向上等を踏まえ,前工程と連結化。
○5 パッケージ対応での装置,金型の設計仕様の標準化,シリーズ化,共通化。
○6 Pre-maintenance方式,外段取り方式の徹底。
等が検討導入され,品質,生産性の向上,自動化,省力化,環境改善,コストダウンのみならず,ラインの汎用化やPOP化,リードタイムや投資費用のミニマム化,ラインの拡張性の向上等が図られており,例によってその中身の変化は著しい。」(773頁左欄31行?右欄13行)
オ 「写真4にダイボンド,ワイヤーボンド及びモールド工程をモジュール化したクリーンな小型,汎用タイプの組立て・モールド一貫生産装置を示す。」(773頁右欄14?16行)
カ 写真4(774頁下)




(2)上記アの記載によれば、「モールド方法それ自体の原理」について、
「モールドプレス等のモールド装置にセットされ、所定の温度に昇温されたモールド金型に対し、
ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレームをモールド金型にセットし、
タブレット化されたモールド樹脂を予熱し、
予熱の終わったタブレットを金型のポット部に投入し、金型を閉じ、
予熱されたタブレットは、プランジャーで加圧され、ランナー・ゲートを経由して、各キャビティに圧送され、そのままキュア(硬化)させ、
金型を開き、モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出し、
ランナー・ゲート部を分離し、
分離されたモールド済みリードフレームをポストキュア(後硬化)し、次工程へ送るモールド工程を行う」ことが記載されている。
また、上記オの記載によれば、写真4には、「ダイボンド、ワイヤーボンド及び上記モールド工程をモジュール化した組立て・モールド一貫生産装置」が記載されている。
そして、上記「ダイボンド、ワイヤーボンド及び上記モールド工程をモジュール化した組立て・モールド一貫生産装置」は、モールド工程を有していることから、上記アに記載された「モールド方法それ自体の原理」を備えたものであるということができるから、甲1の2には、
「モールドプレス等のモールド装置にセットされ、所定の温度に昇温されたモールド金型に対し、
ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレームをモールド金型にセットし、
タブレット化されたモールド樹脂を予熱し、
予熱の終わったタブレットを金型のポット部に投入し、金型を閉じ、
予熱されたタブレットは、プランジャーで加圧され、ランナー・ゲートを経由して、各キャビティに圧送され、そのままキュア(硬化)させ、
金型を開き、モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出し、
ランナー・ゲート部を分離し、
分離されたモールド済みリードフレームをポストキュア(後硬化)し、次工程へ送るモールド工程を備えた、ダイボンド、ワイヤーボンド及び上記モールド工程をモジュール化した組立て・モールド一貫生産装置。」(以下、「甲1の2発明」という。)が記載されている。

(3)そして、甲1の2発明について次のことがいえる。
ア 「ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレーム」において、ICチップはリードフレーム上に装着されていることは明らかである。
イ 「キャビティ」は、金型が閉じられた後に、モールド樹脂が圧送されて、ICチップが搭載されたリードフレームのモールドを行う場所であるから、金型の閉じられる側の型面にあることは明らかである。
ウ 「ランナーゲート」は、ポット部からのモールド樹脂がキャビティに圧送される際に経由するものであるから、ポット部とキャビティとの間にあることは明らかである。
エ 金型のポット部に投入されたタブレットがプランジャーで加圧されて、圧送されるのであるから、プランジャーは、ポット部に作用するものであることは明らかである。

3.本件特許発明1と甲1の2発明との対比・判断
(1)甲1の2発明の「モールド工程」は、「ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレーム」に対し、「モールド樹脂」を「金型」の「キャビティに圧送」して、「モールド済みリードフレーム」を「ポストキュア(後硬化)」するものであるから、本件特許発明1の「樹脂封止成形を行う工程」に相当する。
そして、甲1の2発明の「ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレーム」、「モールド金型」、「モールド樹脂であるタブレット」、「ポット部」、「プランジャー」、「ランナーゲート」、「モールド及びキュア」、「モールド工程」、「モールド済みリードフレーム」及び「金型を開き、モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出す」ことは、本件特許発明1の「リードフレーム上に装着した電子部品」「金型」、「樹脂材料」、「ポット」、「プランジャ」、「樹脂通路」、「封止成形」、「樹脂封止成形方法」、「樹脂封止された電子部品」及び「樹脂封止された電子部品を外部へ取出す工程」にそれぞれ相当する。
また、本件特許発明1の「モールディングユニット」と甲1の2発明の「組立て・モールド一貫生産装置」のうち、モールド工程を行う「モールド装置」とは、モールドを行う手段という点では共通する。

(2)そうすると、本件特許発明1と甲1の2発明とは、
「金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に配設したキャビティと、該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通路とを有するモールドを行う手段を用いてリードフレーム上に装着した電子部品を樹脂材料にて封止成形する電子部品の樹脂封止成形方法であって、
上記モールドを行う手段に電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する工程と、
上記モールドを行う手段を用いて、上記電子部品の樹脂封止成形を行う工程と、
樹脂封止された電子部品を上記モールドを行う手段から外部へ取出す工程とを備えた電子部品の樹脂封止成形方法。」である点で一致し、次の相違点1?3で相違する。
(相違点1)
金型について、本件特許発明1では、固定型と可動型とを対向配置した金型であるのに対し、甲1の2発明の金型は、どのようなものであるか不明な点。
(相違点2)
プランジャーについて、本件特許発明1では、ポットに嵌装したプランジャーであるのに対し、甲1の2発明ではポット部にどのように設けられているか不明な点。
(相違点3)
モールドを行う手段について、甲1の2発明の「組立て・モールド一貫生産装置」のうち、モールド工程を行うモールド装置が本件特許発明1の「樹脂封止成形装置に既に備えられたモールディングユニット」に相当するかどうかは不明であり、さらに、本件特許発明1では、「樹脂封止成形装置に既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設することにより、該モールディングユニットの数を任意に増減調整する工程」を備えているのに対し、甲1の2発明は、このような構成を備えているか不明な点。

(3)事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
上記「2.(1)エ」で摘示したように、甲1の2には、ICチップが搭載されたリードフレームの「最近のモールド工程」について、「○1 ・・・(略)・・・ ○4 モジュール化(FMC化)→品質,生産性,MTBFの向上等を踏まえ,前工程と連結化。・・・(略)・・・」「等が検討導入され」ることが記載されている。
ここで、ICの製造において「前工程」とは、ウェハ上に多数のICチップを形成する工程であって、ダイボンドやワイヤーボンドの工程を含むものではないことは技術常識である(必要であれば、特開平4-151845号公報の図1を参照。)から、「最近のモールド工程」では、「モジュール化」及び「前工程と連結」することが「検討導入され」るとしても、「前工程」には、ダイボンドやワイヤーボンドの工程が含まれないのであるから、甲1の2には、モールド工程を行う装置が、ダイボンドやワイヤーボンドの工程を行う装置にモジュール化されて連結されることが記載されているとは認められない。
また、写真4からは、複数の装置が隣接して配置され、装置間が連結されていることまでは看取できるものの、甲1の2の他の記載を参照しても、写真4の装置がそれぞれどの工程に対応する装置なのか、また、それらの装置のそれぞれが、他の装置に対して、どのような構造で連結されているのかどうかまでは把握できない。
そうすると、甲1の2の「写真4」に記載された「ダイボンド,ワイヤーボンド及びモールド工程をモジュール化したクリーンな小型,汎用タイプの組立て・モールド一貫生産装置」は、「ダイボンド,ワイヤーボンド及びモールド工程」の全ての工程を行う装置がまとめてひとつのモジュールとして前工程と連結するものである、ということはできても、モールド工程を行うモールド装置がモジュール化されて、ダイボンド又はワイヤーボンド工程を行う装置に連結されたものであるということはできない。

一方、本件特許発明1では、「樹脂封止成形装置に既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設」するのであるから、本件特許発明1において、「モールディングユニット」とは、少なくとも、他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設できるものでなくてはならないところ、甲1の2発明の「組立て・モールド一貫生産装置」のうち、「モールド工程」を行う「モールド装置」は、他の装置に対して連結されているにせよ、他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設できるようになっているとまではいえないことから、甲1の2発明の「モールド装置」は、本件特許発明1の「樹脂封止成形装置に既に備えられたモールディングユニット」に相当するということができない。

次に、他の証拠において、モールド工程を行う「モールド装置」を、ユニット(モジュール)化して、既に備えられたモールディングユニットに着脱自在に装設する技術思想が開示されているかどうかについて検討する。
ア 甲2について
(ア) 甲2には、次の記載がある。
a「〔技術分野〕
本発明はレジンモールド型半導体装置の製造装置に関し、特に製造の自動化成形条件の均一化、品質の向上を図ったレジンモールドに適用して有効なモールドシステムに関するものである。
〔背景技術〕
近年盛んに利用されてきているレジンモールド型の半導体装置は、リードフレーム上に半導体素子ペレットを組み付けた上で、この半導体構体をモールド金型内にセットし、この金型内のキャビティにレジン材を圧送してモールド成形を行っている(工業調査会発行「電子材料」1981年11月号別冊、昭和56年11月10日発行、P170?175)。
ところが、これまでのレジンモールド装置では一度に大量のモールド処理を行うべく製造装置が構成されているために、次のような問題が生じている。・・・(略)・・・この従来装置では次のような不具合が生じている。
(1)・・・(略)・・・このローディング治具6が大きいために装置全体が大型化しかつ治具の操作が難しくなる。
(2)・・・(略)・・・このローディング治具内およびローディング治具間での寸法精度の維持が困難であり、各キャビティ2上に正しくフレーム5をセットすることは難しい。
(3)一度に12フレームを処理するために金型1の平面面積が大となり、型面の平坦度が出にくく、上下型内での平坦度の誤差によってモールドバリが発生し易く製品の品質の低下を招く。
(4)金型1の大型化に伴ってカル3と各キャビティ2を連通するランナ4の長さが大きくなり、カル3から圧送されるレジンの温度(粘度)が各キャビティ2に対して相違してこれを一定にコントロールすることが難しく、それぞれでの成形条件が相違して均一な品質が得られ難い。
(5)金型1の面積が大きいため全面にわたって金型清掃を良好に行うのに時間と手間がかかる。
(6)ローデング治具を利用しない場合には、フレーム5を一つずつ人手によってセットしなければならないため作業効率は極めて悪い。
(7)ローデング治具を用いる場合でも用いない場合でもフレーム5のセット、その取り外し等を自動化することは困難であり、モールド工程全体の自動化実現は困難である。
(8)一度に多量のモールドが可能であるが、近年のように多品種少量生産が要求される場合にはこれに対処することが難しい。
(9)一のキャビティに不良があると、モールド装置全体を停止しなければならず、その間モールド製造が停止されて製造効率が低下する。」(1頁右下欄13行?2頁左下欄20行)
b「〔発明の目的〕
本発明の目的はモールドの全自動化を可能にすると共に成形条件の均一化を図りかつ品質の向上を図り得るレジンモールドに用いて好適なモールドシステムを提供することにある。
また、本発明の他の目的はレジン等のモールドの作業性の改善を図りかつモールド効率の向上を図り得るモールドシステムを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は多品種少量生産に対処できると共に装置構造の簡易化を図ったモールドシステムを提供することにある。」(1頁右下欄9?19行)
c「〔発明の概要〕
・・・少ない数のキャビティを形成した複数個の小型の金型を直列に配置すると共に、これら金型に沿って移動されるロボットを設け、このロボットは各金型に対する清掃、フレームのロード、モールド成形品のアンロード、タブレットの投入等を自動的に行うことができるよう構成することにより、モールドの全自動化を可能とし、かつ成形条件の均一化を図り、さらに品質の向上を達成できる。
・・・(略)・・・
〔実施例〕
第1図および第2図は本発明をレジンモールドシステムに適用した実施例の全体平面図と正面断面図を示す。図において、符号11ないし16はそれぞれ小型に構成されたモールド用の金型であり、各々上型11A?16Aと下型11B?16Bとで対をなしており、両型11A?16A,11B?16Bをプレス機構21によって上下移動することによりそれぞれの金型は単独でモールド成形を行い得るようになっている。各モールド金型11?16にはそれぞれ中央部下側のカル部17とその四周囲に4本のフレームをセットできる20個のキャビティ(5連フレームの場合)18を形成し、ランナ19にて連通している。カル部17にはカルプランジャ20を備え、後述するレジンタブレットを加熱圧縮することによりレジン流をランナ19を通して各キャビティ18に圧送することができる。そして、各金型11?16は同一もしくは異なる種類の金型を同一ピッチ間隔で直列状に配置しているが、これらは任意に取替られるようになっている。なお、金型11?16にはそれぞれヒータ等の付属構体が設けられていることはいうまでもない。」(3頁左上欄3行?左下欄14行)
d 「金型11?16が小型化されて1回に成形されるモールド成形品の数が低減しても各金型11?16はそれぞれ独立してしかも順序的にモールド動作を行うので、最終的に得られるモールド成形品の製造効率はこれまでと同程度或いはそれ以上のものがえられる。」(5頁右上欄8?14行)
e 「小型の金型を複数個配列しているので、一つのキャビティないし金型が不良になってもその金型のみを交換すればよく、その間他の金型によるモールドを進行することができ、製造を停止させる必要はない。また、このとき不良の金型の交換のみでよいためかつ金型が小型であることから、交換作業は極めて容易である。」(5頁右上欄15行?左下欄1行)
f 「〔効果〕
(1)少ないキャビティ数の小型の金型を直列に配置し、ロボットをこれに沿って往復移動して金型の清掃、モールド成形品のアンロード、フレームのロード、タブレットの投入等を自動的に行うようにしているので、半導体装置を初めとする種々の製品のモールドを全自動的に行うことができる。
(2)フレームのロードに際しては、ローデング治具が不要であるため、ローデング治具が原因とされるフレームの位置誤差を抑制でき、寸法精度の良いモールド成形を行うことができる。
(3)金型が小型であるのでランナ長を短くでき、レジンの温度、粘度を一定かつ均一にコントロールできかつ上下金型の表面の平坦性を向上して密着性を向上し、モールドバリ等の発生を防止してモールド成形品の品質を向上できる。
(4)金型内のキャビティの数が少なくても、複数個の金型によるモールド作業を順序的に行っているので、モールド成形の効率が低減されることはない。
(5)金型は小型に構成されかつ固定的に設置されているので、各金型におけるプレス機構や加熱機構を小型かつ簡易に構成できる。
(6)それぞれの金型が独立してモールド成形を行うので、各金型に異なる種類のものを用いれば異なる半導体装置を同時に成形でき、特に多品種少量生産の半導体装置の製造に有効である。
(7)一のキャビティや金型に不良が生じても、他の金型でのモールド成形をそのまま継続でき、モールド成形を停止させることなく成形効率を向上できる。」(5頁左下欄7行?右下欄18行)
g 「清掃部、ローダ部、アンローダ部、投入部はそれぞれ個別のステーシヨンに配置し、それぞれ別個の金型にたいして作用を行うように構成してもよい。もちろん、金型におけるプレス機構やロボットにおける各部の具体的な構成は適宜変更できる。」(6頁左上欄4?9行)
h 「


i 「


(イ)これらの記載から、甲2には、「本発明はレジンモールド型半導体装置の製造装置に関し、特に製造の自動化成形条件の均一化、品質の向上を図ったレジンモールドに適用して有効なモールドシステム」(a)であって、「モールドの全自動化を可能にすると共に成形条件の均一化を図りかつ品質の向上を図り得るレジンモールドに用いて好適なモールドシステムを提供すること」、「レジン等のモールドの作業性の改善を図りかつモールド効率の向上を図り得るモールドシステムを提供すること」及び「多品種少量生産に対処できると共に装置構造の簡易化を図ったモールドシステムを提供すること」(b)を目的とし、「少ない数のキャビティを形成した複数個の小型の金型を直列に配置すると共に、これら金型に沿って移動されるロボットを設け、このロボットは各金型に対する清掃、フレームのロード、モールド成形品のアンロード、タブレットの投入等を自動的に行うことができるよう構成する」ことで、「モールドの全自動化を可能とし、かつ成形条件の均一化を図り、さらに品質の向上を達成する」ようにしたこと(c)が記載されていると認められる。
また、甲2には、清掃部、ローダ部、アンローダ部、投入部をそれぞれ個別のステーシヨンに配置すること(g)が記載されており、それぞれの金型が、他の金型とは独立してモールド成形を行うこと(f)も記載されている。

ここで、本件特許発明1の「モールディングユニット」は、「固定型と可動型とを対向配置した金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に配設したキャビティと、該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通路とを有するモールディングユニット」であるところ、甲2に記載された金型11?16は、本件特許発明の「ポット」及び「プランジャ」にそれぞれ相当する「カル部17」及び「カルプランジャ20」を備えているということができる。
しかしながら、「各金型11?16は同一もしくは異なる種類の金型を同一ピッチ間隔で直列状に配置しているが、これらは任意に取替られるようになっている。」(c)という記載からは、複数の金型11?16の個々の金型が取替可能であって、金型自体を、同一又は異なる種類の金型に取替られるということは理解できても、「金型が取替可能」ということだけでは、直ちには、金型が他の金型に対して着脱自在であるということはできないし、仮に、金型を取替可能とするために金型が他の金型に対して着脱自在とする態様をとることがあったとしても、当該記載からは、ひとつの金型に「カル部17」及び「カルプランジャ20」を含めたものが、他の金型に「カル部17」及び「カルプランジャ20」を含めたものに対して、着脱自在の状態で装設されているということまではいうことはできないことから、「カル部17」及び「カルプランジャ20」を備えたひとつひとつの金型はユニット(モジュール)化されているものではないというべきであり、甲2には、本件特許発明1における「他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設」する「既に備えられたモールディングユニット」も、「他のモールディングユニット」も開示されているということはできないし、モールド工程を行う「モールド装置」を、ユニット(モジュール)化して、既に備えられたモールディングユニットに着脱自在に装設する技術思想が開示されているということもできない。

また、「小型の金型を複数個配列しているので、一つのキャビティないし金型が不良になってもその金型のみを交換すればよく、その間他の金型によるモールドを進行することができ、製造を停止させる必要はない。また、このとき不良の金型の交換のみでよいためかつ金型が小型であることから、交換作業は極めて容易である。」(e)という記載からは、金型11?16のうち、一つの金型が不良となった場合に、該不良となった金型を交換する間に、他の金型によるモールドが行われるということは理解できても、これは、不良となった金型は、いずれは正常な金型に交換されて、金型11?16の全てを使用することが前提となっているものであって、特定の金型を使用しないままモールドを行うということを意図するものではないことから、金型の数を削減して使用することは示されていないし、金型を増設することが示されているものでもない。

そして、甲2には、第1図の右端にある金型16に対して、他の金型を取り付けて増設することを示唆する記載はないことから、金型11?16に対して、さらに別の金型を着脱自在に装設することが示されているとはいえない。

したがって、甲2には、本件特許発明1の「既に備えられたモールディングユニット」に対して着脱自在の状態で装設する「他のモールディングユニット」に相当する技術的思想は開示されているということはできない。

イ 甲1の1(CIM/FA事典編集委員会、「CIM/FA事典」、株式会社産業調査会、1991年5月10日、初版第3刷、目次、46?53頁)
「カスタマイジング製品は,多種少量というよりも,変種変量生産といった方がよい生産形態をとる。そこでは,完全無人化工場よりも,人間をシステムの中に取り込み,人間の知恵を生かすシステムが必要となる。
また,生産システムは変種・変量に対応するために,自己増殖・衰退機能を持つことが必要になる。そのために,生産設備等のハードウェアには,『自己変態(Metamorphic)』機能3)を持つことになる。『自己変態』とは,ハードウェア的にはモジュラー設計による機能交換を示し,制御・管理機能(ソフトウェア)面では,一つの設備,一つのグループ,一つのシステムが,それ自体で自律していることが必要となる。すなわち,自律機械(Metamorphic Autonomous Machine)であること^(4))が求められる。(図3)。
このように,
『変態可能なハードウェア製造機器が,それぞれ自律的に分散制御され,これらが全体として調和を持って統合化されたシステム』
こそが,カスタマイジング製品を変種変量生産できる形態である。」(49頁左欄7行?右欄6行)
この記載によれば、甲1の1には、生産システムは変種・変量に対応するために、自己増殖・衰退機能を持つことが必要になることが記載されていると認められる。

ウ 甲1の3(CIM/FA事典編集委員会、「CIM/FA事典」、株式会社産業調査会、1991年5月10日、初版第3刷、1134?1135頁)
「モジュールMMC(マキノマシニングコンプレクス)」(標題)
「生産性とフレキシビリティを融合-モジュールMMCの特長
モジュールMMCは,構成する機器と機能をモジュール化して任意の組み合わせができ,同時に信頼性を向上しています。
・流動的な生産状況に柔軟に対応し,しかも,その時々の最適生産性を追求します。
多品種,中・少量生産に対応する柔軟な加工計画と納期の短縮化を要求される場合に適しています。」(1134頁左欄13?21行)
甲1の3には、多品種、中・少量生産に対応するために、構成する機器と機能をモジュール化して任意の組み合わせをすることが記載されていると認められる。

エ 甲1の4(CIM/FA事典編集委員会、「CIM/FA事典」、株式会社産業調査会、1991年5月10日、初版第3刷、270?274頁)
「4.2FMS
現在FMS(Flexible Manufacturing System)が実現しているフレキシビリティは,従来のFMSに備えていた製造過程(運用)面のものに加えて,機能および構成機器をモジュール化して,生産形態に依るシステムの指向性,拡張・縮小性に対応する面も充実してきた。特に生産システムの統合化を志向した概念をモジュールに組込んでゆくことが重要である。」(270頁左欄11?19行)
「(1)特色
a)システムのフレキシビリティ
部品加工システムでは生産の形態を,少品種大量,中品種中量,多品種少量に大分類できる。おのおのの形態に応じて要求される機能,生産的に見た拡張・縮小性,およびフロアスペースなどによる構成機器をモジュール化した。」(270頁右欄1?7行)
この記載によれば、甲1の4には、FMS(Flexible Manufacturing System)において、機能及び構成機器をモジュール化することによって、生産形態によるシステムの指向性、拡張・縮少性に対応することが記載されていると認められる。

オ 甲1の5(CIM/FA事典編集委員会、「CIM/FA事典」、株式会社産業調査会、1991年5月10日、初版第3刷、812?814頁)
「6.システムの詳細
6.1 コンピュータシステム
ターミナルプリンタ自動組立ラインのコンピュータシステムは上位の生産管理(NPC)と下位の工場管理の2階層構成となっている。」(812頁左欄12?16行)
「6.2組立ラインの基本モジュール構成
組立に使用しているベースマシンは1.2mのモジュールユニットとなっている。自動組立機は独立制御ユニット化されておりラインの組替えや,移動,延長,短縮が簡単に出来るように工夫してある。」(813頁左欄3?7行)
この記載によれば、甲1の5には、ターミナルプリンタの自動組立ラインにおいて、自動組立機を独立制御ユニット化することによって、ラインの組替えや、移動、延長、短縮が簡単に出来ることが記載されていると認められる。

カ 甲7の1(新村出、「広辞苑」、株式会社岩波書店、1995年11月10日、第4版第5刷、1358、1491及び2538頁)
「すいたい【衰頽・衰退】おとろえくずれること。おとろえ退歩すること。」
「ぞうしょく【増殖】○1ましふえること。ましふやすこと。○2生物で、個体・組織・細胞など、あらゆる段階おこる量的増加の総称。」
「モジュール【module】寸法あるいは機能の単位。○イ規格化された建築材。○ロ歯車の歯の大きさを表す値。ピッチ円直径(単位ミリメートル)を歯数で割ったもの。○ハ装置・機械・システムを構成する部分で、機能的にまとまった部分。」
キ 甲7の2(新村出、「広辞苑」、株式会社岩波書店、2008年1月11日、第6版第1刷、1478及び1625頁)
「すいたい【衰頽・衰退】おとろえくずれること。おとろえ退歩すること。」
「ぞうしょく【増殖】○1ふえて多くなること。ふやして多くすること。○2生物の個体・細胞などが数を増やす現象。→繁殖。」
甲7の1及び甲7の2には、「衰頽・衰退」とは、おとろえくずれること、「増殖」とは、ましふえること、「モジュール」とは、装置・機械・システムを構成する部分で、機能的にまとまった部分を意味することが記載されていると認められる。

ク 甲8(社団法人日本機械学会、「機械工学便覧 C.エンジニアリング編」、丸善株式会社、1989年10月15日、初版第1刷、C4-58及びC1-140頁)
「2・7・2 ハウジング
a.機構のモジュール化 ハウジング(housing)を考える際,機構全体の生産性・経済性・保守性についての十分な検討が必要であり,有効な手段としての機能単位のモジュール化がある.」(C4-58頁左欄下から8行?下から4行)
「モジュール化の着眼点を以下に示す.
i.組立てやすい構造,自動化に適した構造
ii.量産化に適した製造工程の分割
iii.調整・検査の最適化および品質保証
iv.保守時の分解,部品交換の簡便化
v.オプションの増設 等」(C4-58頁左欄下から1行?右欄1?5行)
「故障発生時の修理時間を短縮するために主要コンポーネントのモジュール構造(modular design)(個別ユニットで簡単に脱着できる)や,主要装置部分の異常を事前にオペレータに知らせる故障予防モニタが代表的なものである(図6・28).」(C1-140頁右欄6?10行)
この記載によれば、甲8には、機構全体の生産性・経済性・保守性に対する有効な手段としての機能単位のモジュール化があることが記載されていると認められる。

ケ 甲23(「電子材料」、株式会社工業調査会、1982年7月、28?37頁)
「パナサートによる電子部品実装技術と実用例」(標題)
「(2)多機種生産に対応した,ミックス生産を可能とさせるフレキシビリティをもつこと。
・・・
(5)あらゆる生産形態に自動実装機群を適宜組み合せ,コストに見合うシステムが組めること。」(28頁右欄21?28行)
「(4)それぞれの実装機は単体,連結化が自由にでき,生産量,生産形態に適したシステムを組むことができる。」(29頁右欄21?23行)
また、写真4(PANASERT-U(3台連結))(31頁右上)から、装置を3台連結したものが看取される。
この記載によれば、甲23には、プリント基板に電子部品を自動実装するシステムにおいて、多くの種類の電子部品を実装するそれぞれの実装機を自由に連結化することによって、生産量、生産形態に適したシステムが組め、自動実装機群を適宜組み合わせることによって、コストに見合うシステムが組めることが記載されていると認められる。

コ 甲24(「電子材料」、株式会社工業調査会、1984年5月、112?119頁)
「電子回路実装工程のトータルシステム化」(標題)
「ハイブリッドICのトータルな実装を考えた上での特徴を抽出してみると次のようなことが載げられる。
(1)短納期対応ができる。
(2)少量生産である。
(3)品種はきわめて多い。
(4)集積度は高い(プリント基板実装に比較して)。
これらよりどのような実装工程があり,将来どのような工程が加わるかを考えてみた上でパルサー100シリーズに下記の特徴をもたせることにした。
(1)品種切り換えがやりやすい。
(2)どんな部品にも対応できる。
(3)コンピュータを中心にした無人化ができる。
(4)高稼働率が保証できるシステムである。
これらを具現化するためには各機能毎にユニット化しておいた方がベターであり,将来の変化にも対応できる。この有効な手段としてモジュール化することにした。」(114頁左欄11?28行)
「このようなモジュール化により,コンパクトで思いのままの実装ラインの実現はもちろん,将来の変化にも対応できる。」(117頁左欄3?5行)
この記載によれば、甲24には、ハイブリッドICの実装システムにおいて、各機能毎に、ユニット化、モジュール化して、必要に応じて増減することによって、コンパクトで思いのままの実装ラインの実現はもちろん、将来の変化にも対応できることが記載されていると認められる。

サ 甲25(「電子材料」、株式会社工業調査会、1984年9月、82?87頁)
「チップ部品自動装着システム [3]マルチ方式」(標題)
「パナサートMMについて
・・・
3.設備構成
図2にパナサートMMの設備構成を示す。
・・・
(d)マウント機:チップ部品をマウントする装置であり,5mm格子でチップ部品のマウントができる構造となっている。本例ではこれを4台連結することにより,2.5mm格子でのマウントが可能となっている。」(82頁右欄4行?83頁左欄下から7行)
「図6は,基板の生産量に応じたパナサートMMのシステム形態を示した図である。」(85頁左欄1?3行)と記載され、図6(生産規模別システム構成例)(84頁)からは、生産能力に応じて、マウント機を1台、2台、又は4台としてシステム構成を変更することが看取される。
この記載によれば、甲25には、チップ部品を同時に多数個装着する一括マウントシステムにおいて、マウント機を1台、2台又は4台にすることによって、基板の生産量に応じたシステムとすることが記載されていると認められる。

シ 甲26(電波新聞、株式会社電波新聞社、1993年1月20日付、第9面)
「自動アセンブル装置の動向」(見出し)
この生産の効率化はコストもからみ○1できるだけ多品種の部品を高速で実装処理できる大型機の導入方向と○2導入コストが安く、連結することによってフレキシブルなシステムを構築できる中型機の普及という二つの方法がとられている。」(3段目右から3?11行)
「一方、中型機によるシステム化はバブル崩壊、景気低迷化で注目されている。その第一が設備投資の抑制が起因する導入コストの優位性である。
処理能力、速度といった機能面では大型機に劣るものの、機体が低価格で、しかも生産/実装形態に最適なシステムを構築するために複数台を連結することができる。つまり、フレキシブル性に富んでいるという点では大型機に勝る。」(5段目左から8行?6段目右から7行)
この記載によれば、甲26には、中型機による自動アセンブル装置において、生産/実装形態に最適なシステムを構築するために複数台を連結することによって、大型機よりフレキシブル性に富むことが記載されていると認められる。

ス 甲27(「電子材料」、株式会社工業調査会、1988年5月、96?103頁)
「<プロセス・実装技術編> チップ部品装着機」(標題)
「本シリーズの特徴は次の通りである。
(1)製造工程の中で作業別にユニット化しており,導入にあたっては独立したユニットとして,あるいは自由な組み合わせでシステム化ができる。
・・・
(3)多品種少量生産に適したシステムで,機種切り換えはプログラムで簡単にできる。」(99頁左欄2?10行)
この記載によれば、甲27には、チップ部品装着機において、ユニット化して、自由な組み合わせでシステム化することが記載されていると認められる。

セ 甲28(「自動化技術」、株式会社工業調査会、第23巻第3号、1991年、40?51頁)
「中種中・多量生産向け 省人化加工システム」(標題)
「これらのニーズを実現させ得るシステムとして『FMS-L44』と呼ばれる柔軟性に富んだ加工システムが実現した.このシステムの基本的な構成は,走行式ワークハンドリングロボットと横形NC旋盤から成立っている.
・・・
○3加工セルの構築と加工ラインの編成のいずれにも適応できる.
○4システムを構築する機械群の加減算ができるので,生産量の変化に応じて工程編成が可能である.」(41頁左欄20行?42頁右欄1行)
この記載によれば、甲28には、走行式ワークハンドリングロボットと横形NC旋盤からなる省人化加工システムFMS-L44において、システムを構築する機械群の加減算ができるので、生産量の変化に応じた工程編成ができることが記載されていると認められる。

ソ 甲29(「電子材料」、株式会社工業調査会、1990年10月、60?63頁)
「穴あけ加工の多品種変量システム」(標題)
「本稿では,1990年のJPCAショーで当社が発表した穴あけ加工の多品種変量システムについて紹介する。」(60頁左欄9?10行)
「写真1に当社の多品種変量システム示す。本システムの特徴は,CNC装置一式でXYZ軸よりなる単軸ユニットを4ユニット同時制御できることである。
すなわち図2(a)に示すように,NC装置と機械から構成されるユニットを4台並べただけでなく,図2(b)に示すように,異種基板を各主軸が同時に,かつ個別に加工できる4軸マルチ制御加工システムである。」(60頁左欄16?24行)
「各走行ラインは,前述したように回転ローラ上の基板自走式であるため,ユニット増設の場合,通り精度を出しておくだけでライン化接続が容易にできるなどの特長がある。」(61頁右欄下から13?10行)
「上述したように,各単軸穴あけ機は4ユニットごとに1セットとなり,64ユニットまで増設可能である。」(62頁左欄29行?右欄1行)
この記載によれば、甲29には、穴あけ加工の多品種変量システムにおいて、NC装置と機械から構成されるユニットを64ユニットまで増設可能であることが記載されていると認められる。

以上のことから、請求人の示したいずれの証拠にも、モールド工程を行う「モールド装置」を、ユニット(モジュール)化して、既に備えられたモールディングユニットに着脱自在に装設する技術思想が記載ないし示唆がされているということはできない。

(4)相違点3についての判断のまとめ
甲1の2発明は、本件発明1の「既に備えられたモールディングユニット」に相当するものがなく、他の証拠のいずれにも、モールド工程を行う「モールド装置」を、ユニット(モジュール)化して、既に備えられたモールディングユニットに着脱自在に装設する技術思想が開示されていないのであるから、仮に、多品種変量生産に対応するために、設置後に「モジュール(ユニット)」自体を増設することが周知であるとしても、甲1の2発明に、樹脂封止成形装置に既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設することにより、該モールディングユニットの数を任意に増減調整する工程を備えるという、本件特許発明1の上記相違点3に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は、甲第2号証について、「第1図において、6台のモールド金型11?16を配置するであれば、通常、レール22の一端部にロボット23を停止するために何らかのストッパーを設けるのが常である。また、第1図におけるレール22の一端部の端面は単なる線の歪ではなく、レール22の軸方向に直交する波線で図示され、レール22が更に連続していることを図示しており、レール22の延長を予感させるので、7台目,8台目のモールド金型を増設できることが示唆されていると言える。」(口頭審理陳述要領書21頁11?17行)と主張している。

しかしながら、上記「(4)ア」で述べたように、甲2には、レールの右端がどのようになっているかについての記載はなく、レールを延長することについては直接的な記載もなく、第1図の右端にある金型16に対して、他の金型を取り付けて増設することを示唆する記載もないのであるから、第1図のレールの右端の波線を根拠として、甲2に、金型11?16に対して、さらに他の金型を装設することが示されているとすることはできない。

イ 請求人は、「機械的生産分野において、モジュールの概念は『簡単に脱着できる規格化された機能単位』であり、多品種変量生産に対応するための生産様式であると広く認識され、周知技術であるといえる。特に、多品種変量生産に対応するため、設置後に『モジュール(ユニット)』を増設することは公知であり、削減することも示唆されていた(審判請求書35頁18行目から40頁21行目、甲7の1、甲8、甲10、甲1の1、甲1の3?5、甲23?29)。
半導体製造分野でも、半導体製造工程の『前工程』および『後工程』のいずれにおいても、モジュール化(ユニット化)された製造装置(機能単位)を必要に応じて任意に選択し、脱着可能に連結することは周知慣用技術である(審判請求書40頁22行目?45頁30行目、甲16、甲17、甲12、甲11、甲3、甲1の2、甲13、甲14、甲9)。
半導体製造分野においてはラインバランス問題を解決すべく、特定の製造工程において、モジュール化(ユニット化)した同一の製造装置(機能単位)を複数台、揃えて分担させることが知られていた(審判請求書45頁31行目から47頁11行目、甲15、甲16、甲12、甲14、甲17)。
モールディングユニットの大型化に伴う不具合を解消するとともに、多品種変量生産に対応するという理由により、モールディング工程をモジュール化した複数台のモールド装置で構成することが、前記甲第2号証に開示されている。特に、甲第2号証においては、同一のモールド装置(モールディングユニット)を任意に取替えできることが明記されているだけでなく、異種のモールド装置(モールディングユニット)にも取替えできることが明記されている(審判請求書47頁12行目から48頁23行目)。
多品種変量生産に対応するために機能および構成機器をモジュール化し、生産形態に依るシステムの『指向性、拡張・縮少性』を必要とすること、モジュール化した構成機器の一つである小型汎用モールド装置を増設することだけでなく、削減することは、周知技術である(審判請求書49頁20-27行目、甲1の4)。」(口頭審理陳述要領書8頁28行?9頁22行)と主張している。

しかしながら、上述したように、請求人の示したいずれの文献にも、モールド装置において、既に備えられたモールド装置に対して、モールド工程を有する他のモールド装置を装設することは示されていない。
そして、仮に、半導体製造分野において、多品種変量生産に対応するために「モジュール化(ユニット化)した同一の製造装置(機能単位)を複数台備えること」及び「モジュール化(ユニット化)された製造装置(機能単位)を必要に応じて任意に選択し、脱着可能に連結すること」が周知技術であると認定できたとしても、係る周知技術からは、モールド工程を行うモールド装置を、モジュール化(ユニット化)し、モールド工程を有しない他の製造装置と着脱可能とする程度のことは着想し得ても、「既に備えられた(モールド工程を行う)モールディングユニット」に対して、「他の(モールド工程を行う)モールディングユニットを着脱自在の状態で装設する」ことまでは想到し得るとはいえず、本件特許発明1が、甲1の2発明及び周知技術に基いて、当業者によって容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

ウ 請求人は、「6 動機付けの不存在について
6-1 ・・・
すなわち、甲第1号証の2には、品質、生産性等を確保しつつ、異なる種類を含む多品種変量生産への対応、モールド装置を小型化することが開示され、モジュール化という同一の解決手段である『モールディングユニット』同士を『着脱自在の状態で装設』すること、及び、『モールディングユニット』の数を『増減調整』することへの動機づけが明示されているので、被請求人の主張は失当である。
6-2 同様に、甲第2号証においても、金型の大型化に伴う不具合の解消、例えば、製品の品質のバラツキを解消するとともに、多品種少量生産に対応し、金型の小形化を図るという甲第1号証の2と同様な目的が開示されている(審判請求書第28頁ないし第29頁(vi),(vii))。このように、甲第2号証にも、本件発明と同様な目的が開示され、『モールデイングユニット』同士を『着脱自在の状態で装設』すること、及び、『モールディングユニット』の数を『増減調整』することを動機づけすることが開示されている。
したがって、甲第1号証の2および甲第2号証が同一の技術分野に属し、いずれも同様な動機付けを有することから、主たる引用発明である甲第1号証の2に、従たる引用発明として甲第2号証を組み合わせることを阻害する要因はない。」(口頭審理陳述要領書17頁13行?18頁7行)と主張している。

そこで、甲1の2の記載を検討する。
甲1の2には、「最近のモールド工程においては,
○1 従来の単品多量生産対応の大型モールド装置やモールド金型から,多品種変量生産対応の小型汎用モールド装置及び金型へと変化すると共に,メカ精度,位置決め精度や耐久性,MTBFの向上及びインテリジェンスの高度化。
・・・(略)・・・
○4 モジュール化(FMC化)→品質,生産性,MTBFの向上等を踏まえ,前工程と連結化。」(773頁左欄31行?右欄5行)という記載があり、この記載からは、「最近のモールド工程」においては、「多品種変量生産に対応するために、モールド装置及び金型を小型汎用化し、メカ精度、位置決め精度や耐久性、MTBFの向上、インテリジェンスの高度化を図ること」、及び、「モジュール化によって、品質、生産性、MTBFの向上し、前工程と連結すること」は記載されているということができる。

次に、甲2の記載について検討する。
甲2には、次の記載がある。
「これまでのレジンモールド装置では一度に大量のモールド処理を行うべく製造装置が構成されているために、次のような問題が生じている。・・・(略)・・・
(8)一度に多量のモールドが可能であるが、近年のように多品種少量生産が要求される場合にはこれに対処することが難しい。」(2頁左上欄6行?左下欄17行)
「〔発明の目的〕
本発明の目的はモールドの全自動化を可能にすると共に成形条件の均一化を図りかつ品質の向上を図り得るレジンモールドに用いて好適なモールドシステムを提供することにある。・・・(略)・・・
さらに、本発明の他の目的は多品種少量生産に対処できると共に装置構造の簡易化を図ったモールドシステムを提供することにある。」(2頁右下欄9?19行)、
「〔発明の概要〕
・・・(略)・・・少ない数のキャビティを形成した複数個の小型の金型を直列に配置すると共に、これら金型に沿って移動されるロボットを設け、このロボットは各金型に対する清掃、フレームのロード、モールド成形品のアンロード、タブレットの投入等を自動的に行うことができるよう構成することにより、モールドの全自動化を可能とし、かつ成形条件の均一化を図り、さらに品質の向上を達成できる。」(3頁左上欄3?14行)、及び、
「(6)それぞれの金型が独立してモールド成形を行うので、各金型に異なる種類のものを用いれば異なる半導体装置を同時に成形でき、特に多品種少量生産の半導体装置の製造に有効である。」(5頁右下欄11?14行)
これらの記載から、甲2には、少ない数のキャビティを形成した複数個の小型の金型を直列に配置すると共に、これら金型に沿って移動されるロボットを設け、このロボットは各金型に対する清掃、フレームのロード、モールド成形品のアンロード、タブレットの投入等を自動的に行うことができるよう構成し、各金型に異なる種類のものを用いて、それぞれの金型が独立してモールド成形を行うことで、異なる半導体装置を同時に成形できるようにして多品種少量生産に対応するモールドシステムを提供することが記載されていると認められる。
してみると、甲2には、「少ない数のキャビティを形成した複数個の小型の金型を直列に配置すると共に、これら金型に沿って移動されるロボットを設け、このロボットは各金型に対する清掃、フレームのロード、モールド成形品のアンロード、タブレットの投入等を自動的に行うことができるよう構成」したものにおいて、多品種少量生産に対応するために、各金型に異なる種類のものを用いるようにしたものと認められる。

そうすると、甲1の2には、「最近のモールド工程において」、「多品種変量生産対応」することが記載され、「多品種変量生産」が「多品種少量生産」を包含するものとしても、甲1の2には、多品種変量生産に対応するために小型汎用モールド装置及び金型を採用することが記載され、甲2には、多品種少量生産に対応するために、複数個の金型を配置して各金型に異なる種類のものを用いることが記載されており、甲1の2発明と甲2に記載されたものとは、それぞれ「多品種変量生産」又は「多品種少量生産」に対して解決しようとする技術思想が異なり、甲1の2発明に甲2に記載された技術を採用する動機付けはないというべきである。

よって、上記ア?ウの請求人の主張は採用することができない。

なお、本件明細書【0033】の記載によれば、本件特許発明に係るモールディングユニットの数を任意に増減調整する方法には、他のモールディングユニット自体を追加し、取り外すことだけでなく、モールディングユニットの作動を中止し、再び作動させることも含まれていることが認められるものの、甲1の2には、樹脂封止成形装置に既に備えられたモールディングユニットに対して他のモールディングユニットを任意に着脱自在の状態で装設する構成が開示されていない以上、上記記載が上記判断を左右するものではない。

(6)まとめ
したがって、本件特許発明1は、相違点1及び2について検討するまでもなく、甲第1号証の2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
よって、請求人の主張する本件特許発明1に係る無効理由には理由がない。


4.本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1の2発明とを対比する。
上述したように、「ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレーム」、「モールド金型」、「モールド樹脂であるタブレット」、「ポット部」、「プランジャー」、「ランナーゲート」、「モールド及びキュア」、「モールド装置」及び「モールド済みリードフレーム」は、本件特許発明3の「リードフレーム上に装着した電子部品」「金型」、「樹脂材料」、「ポット」、「プランジャ」、「樹脂通路」、「封止成形」、「樹脂封止成形装置」及び「樹脂封止された電子部品」及びにそれぞれ相当することは明らかである。
また、甲1の2発明において、ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレームをモールド金型にセットし、タブレット化されたモールド樹脂を予熱し、金型を開き、モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出していることから、甲1の2発明は、「ICチップが搭載され、ワイヤボンディングが終わったリードフレームをモールド金型にセットする手段」、「モールド樹脂を供給する手段」及び「金型を開き、モールド及びキュアの終わったモールド済みリードフレームを取出す手段」を有していることは明らかであり、これらは本件特許発明3の「電子部品を装着した樹脂封止前リードフレームを供給する手段」、「樹脂タブレットを供給する手段」及び「樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取出す手段」にそれぞれ相当する。
そして、本件特許発明3の「モールディングユニット」と甲1の2発明の「組立て・モールド一貫生産装置」のモールド工程を行う「モールド装置」とは、モールドを行う手段という点では共通する。

したがって、本件特許発明3と甲1の2発明とは、
「金型と、該金型に配設した樹脂材料供給用のポットと、樹脂加圧用のプランジャと、上記金型の型面に配設したキャビティと、該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通路とを有するモールドを行う手段と、上記モールドを行う手段に電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレットを供給する手段と、樹脂封止された電子部品を上記モールドを行う手段から外部へ取出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置」である点で一致し、次の相違点4?6で相違する。
(相違点4)
金型について、本件特許発明3では、固定型と可動型とを対向配置した金型であるのに対し、甲1の2発明の金型は、どのようなものであるか不明な点。
(相違点5)
プランジャーについて、本件特許発明3では、ポットに嵌装したプランジャーであるのに対し、甲1の2発明ではポット部にどのように設けられているか不明な点。
(相違点6)
モールドを行う手段について、甲1の2発明の「組立て・モールド一貫生産装置」のうち、モールド工程を行うモールド装置が本件特許発明3の「モールディングユニット」に相当するかどうかは不明であり、さらに、本件特許発明3では、「既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設可能とし、これによって該モールディングユニットの数を増減調整自在に構成」しているのに対し、甲1の2発明は、このような構成は備えているか不明な点。

そして、相違点について検討すると、相違点6は上記相違点3とおおむね同じであり、相違点6に対する判断も、上記相違点3と同様である。
そうすると、相違点6に係る構成は、請求人の示したいずれの証拠からも当業者が容易に想到し得たとすることはできず、相違点4、5について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1の2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

5.本件特許発明2及び4について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し本件特許発明1の全ての構成を含むものであり、本件特許発明4は、本件特許発明3を引用し本件特許発明3の全ての構成を含むものであるから、本件特許発明1又は3と同様な理由から、本件特許発明2及び4が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、とすることはできない。

6.まとめ
以上で検討したとおり、請求人の主張する無効理由は、理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1乃至4の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-08 
結審通知日 2014-01-10 
審決日 2014-01-30 
出願番号 特願平5-202689
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B29C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 鈴木 正紀
川端 修
登録日 1999-05-28 
登録番号 特許第2932136号(P2932136)
発明の名称 電子部品の樹脂封止成形方法及び装置  
代理人 前田 厚司  
代理人 深見 久郎  
代理人 高橋 智洋  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 黒田 佑輝  
代理人 森本 純  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 重冨 貴光  
代理人 田中 光雄  
代理人 中嶋 隆宣  
代理人 森田 俊雄  
代理人 辻 淳子  
代理人 山崎 宏  
代理人 吉田 昌司  

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