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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1285716
審判番号 不服2012-21351  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-29 
確定日 2014-03-10 
事件の表示 特願2006-542467「新規なヌクレオシド若しくはヌクレオチド誘導体及びその利用」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日国際公開,WO2006/049297〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年11月8日(優先権主張 平成16年11月8日)を国際出願日とする特許出願であって,平成24年1月23日付けで拒絶理由が通知され,同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付で手続補正がなされ,平成25年1月21日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
その後,平成25年6月28日付けで当審より審尋が出され,同年8月30日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年10月29日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成24年10月29日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の目的
本件補正は,補正前の請求項1?7を削除すると共に,補正前の請求項1を引用する請求項8について下記のごとく補正する事項を含むものである。

補正前の請求項8が引用する「請求項1ないし7のいずれか1項」との引用を,本件補正により請求項1のみを引用するものと減縮すべく,請求項を引用を解除し,補正前の「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドが組み込まれた核酸」を,本件補正により「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドを組み込む転写によって調製された核酸」と転写によって調製された核酸に限定すると共に,請求項1?7の削除に伴い不明りょうとなった補正前の請求項8を,新たに請求項1と補正したものである。
このように,本件補正は,補正前の請求項8の特許請求の範囲の減縮を含むものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件について
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)補正発明
本件補正により補正された請求項1に係る発明は,次の事項により特定される発明であると認める。
「【請求項1】
1)以下に規定する核酸を合成し;
2)前記核酸を標的タンパク質と結合させ;
3)標的タンパク質を支持体に付着させ;そして
4)支持体に付着した標的タンパク質に結合した前記核酸の蛍光を測定することを含む,標的タンパク質の検出方法であって,
前記核酸は,5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドを組み込む転写によって調製された核酸であって,
前記塩基の5位に,5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM),6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM),5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA),6-カルボキシテトラメチルローダミン(6-TAMRA),5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホン酸(DANSYL),5-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(5-HEX),6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(6-HEX),5-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(5-TET),6-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(6-TET),5-カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX),及び6-カルボキシ-X-ローダミン(6-ROX)からなるグループから選択される蛍光色素が,直接又はリンカーを介して結合している,
前記核酸である,
前記標的タンパク質の検出方法。」

(2) 引用刊行物記載の事項
原査定の拒絶理由で引用され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/007713号(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が記載されている。
なお,下線は当審にて付記したものである。
(刊1-1)「請求の範囲
1. 5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチド。
2. 前記塩基の5位が,以下の
1)ヨウ素,臭素から選択される光反応性基;
2)アルケニル基,アルキニル基若しくはアミノ基,又はその誘導体;
3)ビオチン又はその誘導体;あるいは
4)フルオレセイン,6-カルボキシフルオレセイン,テトラメチル-6-カルボキシローダミン,及びそれらの誘導体から選択される蛍光分子
からなるグループから選択される置換基によって置換されている,請求項1記載の前記ヌクレオシド又はヌクレオチド。
・・・(略)・・・
10. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヌクレオチドが組み込まれた,核酸を調製する方法であって,
6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型として転写,複製又は逆転写を行い,前記6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドの相補的な位置に,請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヌクレオチドを組み込むことを含む,前記方法。」(48頁1行?49頁末行)

(刊1-2)
「4)5位置換基として,フルオレセイン,6-カルボキシフルオレセイン,テトラメチル-6-カルボキシローダミン,及びそれらの誘導体から選択される蛍光分子を有する場合,蛍光分子の種類に応じて,本発明のヌクレオチドを含む核酸の検出を行うことが可能である。よって,5位に蛍光分子を有する本発明のヌクレオチドを含む核酸は,標識核酸として当該核酸と相互作用する物質検出のプローブとして使用されうる。」(明細書12頁1?6行)

(刊1-3)「これまでに,修飾塩基のヌクレオシドフルオレセイン-12-ウラシル(F-12-U)[Jhaveri et al.,2000],5-(1-ペンチニル)ウラシル[Latham et al.,1994],5-(3''-アミノプロピニル)ウラシル[Battersby et al.,1999],5-ヨードウラシル(5IU)[Jensen et al.,1995],5-ブロモウラシル(5BrU)[Golden.,et al.,2000]をin vitroセレクションで利用した例が報告されている。しかしながら,これらの例では全て,DNAもしくはRNAプールの調製の段階から修飾塩基を天然型塩基(TもしくはU)と置換している。本発明では,5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基の,6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基との特異的な塩基対を利用して,転写反応の1段階で位置選択的に本発明のヌクレオチドをRNAに取り込むことが可能になった。本発明の非天然型の塩基を含む5種類の塩基からなるRNAを任意に調製出来れば,その有用性・汎用性は非常に高い。
また,本発明の,ヌクレオチドが組み込まれたDNA又はRNAは,タンパク質,ペプチドの全体又は一部をコードするものであってもよい。」(明細書16頁11?24行)

(3) 刊行物1に記載の発明
刊行物1記載の請求項10(刊1-1)に係る発明は,「請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヌクレオチド」と請求項2を引用する発明を含んでいる。
そして,請求項2(刊1-1)は,「5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチド」の5位に「1)」?「4)」の「グループから選択される置換基によって置換されている」こととされている。
前記選択肢の一つである,前記「4)」は「4)フルオレセイン,6-カルボキシフルオレセイン,テトラメチル-6-カルボキシローダミン,及びそれらの誘導体から選択される蛍光分子」であって,「標識核酸として当該核酸と相互作用する物質検出のプローブとして使用されうる」(刊1-2)との記載からみて,前記「5位」に「4)」の蛍光分子」を導入することで,当該「標識核酸」をプローブとして使用することが分かる。
これを「当該核酸と相互作用する物質」からみれば,蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する方法と言い換えることができる。

以上のことから,請求項10を中心に,置換基の選択肢として「4)・・・蛍光分子」に注目し,蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する方法として整理すると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型として転写,複製又は逆転写を行い,
前記6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドの相補的な位置に,
5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチドの5位が,フルオレセイン,6-カルボキシフルオレセイン,テトラメチル-6-カルボキシローダミン,及びそれらの誘導体から選択される蛍光分子置換基によって置換されている,ヌクレオチドを組み込み,核酸を調製し,
前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する方法。」

(4) 対比
補正発明と引用発明を対比する。
ア 蛍光色素について
引用発明の「フルオレセイン,6-カルボキシフルオレセイン,テトラメチル-6-カルボキシローダミン,及びそれらの誘導体から選択される蛍光分子」は,6-カルボキシフルオレセインを選択肢に含むものである。
他方,補正発明の「5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM),6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM),5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA),6-カルボキシテトラメチルローダミン(6-TAMRA),5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホン酸(DANSYL),5-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(5-HEX),6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(6-HEX),5-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(5-TET),6-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(6-TET),5-カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX),及び6-カルボキシ-X-ローダミン(6-ROX)からなるグループから選択される蛍光色素」は,6-カルボキシフルオレセインを選択肢に含むものである。
そうすると,両者は「6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)からなる蛍光色素」という点で一致する。

イ 核酸に含まれる塩基について
引用発明の「5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基」は,補正発明の「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基」に相当する。

ウ 蛍光色素の置換位置について
引用発明は,「5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチドの5位」が,「蛍光分子置換基によって置換されている」ものであるから,直接該5位に「蛍光分子置換基」が結合していると解される。
そうすると,引用発明の「5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチドの5位」に直接「蛍光分子置換基」が結合していることは,補正発明の「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基」の「前記塩基の5位」に「蛍光色素が,直接又はリンカーを介して結合している」ことに相当する。

エ 転写によって調製された核酸について
補正発明の「転写」について,本願明細書の段落[0051]には,次のように記載されている。
「よって,限定されるわけではないが,本発明のヌクレオチドが組み込まれた核酸は,6位置換された2-アミノプリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型として転写,複製又は逆転写を行い,前記6位置換された2-アミノプリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドの相補的な位置に,本発明の核酸を組み込む,ことを含む,方法によって調製することが可能である。あるいは,天然型塩基を有するヌクレオシド又はヌクレオチドと同様に,化学合成によってDNA又はRNAに取り込んでもよい。」
この記載から,本願発明の「転写」には,「6位置換された2-アミノプリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型」とする態様が包含されていると理解される。

他方,引用発明の「転写」は,「6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型として転写」を行うものであるから,前記本願明細書の段落[0051]の記載に照らせば,両発明の「転写」で使用される鋳型は,同じものといえる。

そうすると,引用発明の「6位置換された2-アミノ-プリン-9-イル基を塩基として有するヌクレオチドを含む核酸を鋳型」として「転写」を行い,「5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基を塩基として有するヌクレオシド又はヌクレオチドの5位が,・・・置換されている,ヌクレオチドを組み込」むことで,「調製」された「核酸」は,補正発明の「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドを組み込む転写によって調製された核酸」に相当する。

また,引用発明の「核酸を調製」することは,「鋳型」を用いて「転写」を行うことで,人工的に核酸を合成するものであるから,補正発明の「1)以下に規定する核酸を合成」することに相当する。

オ 標的タンパク質との結合について
引用発明の「前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する」過程で,「前記調製された核酸」と「相互作用する物質」とは結合しないと検出できないし,「相互作用する物質」は,検出対象となる物質であるから,標的物ということもできる。しかし,引用発明の「相互作用する物質」は,タンパク質に限られるものではない。
よって,引用発明の「前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する」過程で,「前記調製された核酸」と「相互作用する物質」と結合させることと,補正発明の「2)前記核酸を標的タンパク質と結合させ」ることとは,「2)前記核酸を標的物と結合させ」る点で共通する。

カ 標的タンパク質を支持体に付着させることについて
引用発明においては,「相互作用する物質を検出する」過程で,該物質を支持体に付着させることは規定されていない。

キ 前記核酸の蛍光を測定することについて
引用発明の「前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する」過程で,「相互作用する物質」に結合した「前記調製により得た蛍光分子標識された核酸」の蛍光を測定することは自明である。
そうすると,引用発明の「前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する」ことと,補正発明の「支持体に付着した標的タンパク質に結合した前記核酸の蛍光を測定する」こととは,標的となるものが異なるから,「標的物に結合した前記核酸の蛍光を測定する」という点で共通する。

ク 標的タンパク質の検出方法について
引用発明の「前記調製により得た蛍光分子標識核酸をプローブとして,当該標識核酸と相互作用する物質を検出する方法」と,補正発明の「標的タンパク質の検出方法」とは,標的となるものが異なるから,「標的物の検出方法」という点で共通する。

ケ 小括
以上の事項を総合すると,両発明の間には,次の(一致点)並びに(相違点1)及び(相違点2)を有する。

「1)以下に規定する核酸を合成し;
2)前記核酸を標的物と結合させ;
4)標的物に結合した前記核酸の蛍光を測定することを含む,標的物の検出方法であって,
前記核酸は,5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドを組み込む転写によって調製された核酸であって,
前記塩基の5位に,6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)からなる蛍光色素が,直接又はリンカーを介して結合している,
前記核酸である,
前記標的物の検出方法。」

(相違点1)
標的物が,補正発明では標的「タンパク質」であるのに対して,引用発明では検出対象となる標的であるものの,「物質」であって,タンパク質とまでは特定されていない点。

(相違点2)
補正発明が「3)標的タンパク質を支持体に付着させ」「4)支持体に付着した標的タンパク質に結合した前記核酸の蛍光を測定する」ものであるのに対して,引用発明は「3)標的タンパク質を支持体に付着させ」る工程を具備しておらず,そのため,相互作用する物質に結合した前記核酸の蛍光を測定するものであるが,測定時に当該相互作用する物質は支持体に付着していない点。

(5) 検討・判断
ア 相違点1について
標識した核酸と結合するタンパク質を測定することは,下記刊行物A及びBに記載のように,本願優先権主張日前から知られた周知の技術的事項である。
そうすると,標的となる物質を何等特定していない引用発明において,「前記調製により得た蛍光分子標識核酸」に対して「相互作用する物質」として,タンパク質を選ぶことは,上記周知の技術的事項に照らし,当業者が特段の困難性なくなし得たことといえる。

刊行物A:国際公開第2004/057016号
なお,翻訳は,対応日本出願の公表特許公報である特表2006-510371号公報の段落【0091】?【0093】に基づくものである。
(刊A-1)「[00103] 図5は,蛋白質:核酸親和性の定量性測定のための当業界でよく知られた手法である,ニトロセルロースフィルター結合実験においてアッセイされる様々なRNase H酵素アッセイのためのRNA:DNA結合親和性の観察された増加を示す。当該実験において,示されたRNase H蛋白質の連続希釈を,以下の配列の放射線標識されたRNA:DNAハイブリッドと共に,1X FBバッファー[100μg/ml BSA;50mM NaCl;1mM EDTA;20mM HEPES,pH7.0]中で個別にインキュベートした。
RNA:DNA#1
配列番号:6 5'-GGACCGGAAAGGUACGAGCAUGUGA-3'(RNA)
配列番号:7 3'-CCTGGCCTTTCCATGCTCGTACACT-5'(DNA)
(ハイブリッドRNA:DNA#1のDNA鎖は実験のためにラジオヌクリド32Pにより一方の末端のみ標識された。)
[00104]25℃において30分間インキュベート後に,50μlの反応物を素早くバッファー平衡化ニトロセルロースに通して濾過し,そして2回,500μlの洗浄バッファー[10%グリセロール。50mM NaCl;1mM EDTA;20mM HEPES,pH7.0]で洗浄した。蛋白質はニトロセルロースに結合するが,二重鎖の核酸はしない;よって,フィルター上の放射活性は直接に蛋白質結合核酸を反映する。各フィルターにより保持されたRNA:DNAハイブリッドの量を,チェレンコフカウンティングにより湿ったフィルターから直接定量した。各蛋白質を3重に試験して,結果を平均した。全投入量放射活性を測定するための対照フィルターを用いることにより,結合した全投入量ハイブリッドのパーセントを計算した。SDS-PAGE及びデンシトメトリーは,蛋白質の濃度を再確認した。」

刊行物B:特表2001-505191号公報
(刊B-1)「結合親和性の測定
転写の際のα-^(32)P-ラベルされたNTPの取り込みにより,あるいはγ-^(32)P-ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて合成した後に放射標識された核酸リガンドを,低濃度で様々な濃度のVEGFまたは他の増殖因子と,37℃にて15分間インキュベートした。インキュベーションはTBS,PBS,またはHEPES緩衝生理食塩水(HBS),pH7.4中で,補足の二価の陽イオンを添加するか,あるいは添加せずにであった。あらかじめ洗っておいた0.45μm Type HAフィルター(Millipore)に試料を通し,続いて結合バッファーにより5-10ml洗いを行った。フィルターをシンチラントに浸し,計数して各フィルターに保持されているタンパク結合RNAの量を見積もった。特異的なタンパク質に結合している核酸リガンドの平衡解離定数(KD)をGreen et al.(1996)Biochem.35;14413-14424に記載のデータ点から算出した。」(明細書74頁17行?末行)

イ 相違点2について
補正発明の「支持体」とは,本願明細書の段落【0064】の「支持体としては,例えば,ニトロセルロースフィルター等が利用可能である。支持体は標的タンパク質は付着するが,核酸分子は単独では結合しない。」との記載からみて,ニトロセルロースフィルターが包含されると理解される。

他方,上記刊行物A及びBに記載されているように,前記核酸をタンパク質と結合させ,タンパク質をニトロセルロースフィルターに付着させ,そして,ニトロセルロースフィルターに付着したタンパク質に結合した前記核酸を,核酸導入した放射標識で,タンパク質に結合した核酸の量を測定する手法は,本願優先権主張日前から周知の技術的事項である。特に言及すれば,刊行物Aには「核酸親和性の定量性測定のための当業界でよく知られた手法である,ニトロセルロースフィルター結合実験」とも記載されている。
そして,放射標識は,放射線を出すことから危険性があり,本願優先権主張日前から放射線を発しない標識が広く求められていたことであって,蛍光分子標識を使用する引用発明において,上記周知のニトロセルロースフィルターにタンパク質を付着させて測定する手法を採用し,標識を引用発明の蛍光分子標識のままとすることで,相違点2に記載の本願発明のごとく構成することは,当業者が容易になし得たことといえる。

ウ 本願発明の効果について
本願発明の効果は,刊行物1及び上記周知の技術的事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著な効果とはいえない。

エ 請求人の主張について
請求人は平成24年3月27日に意見書において,次のように主張する。なお,下線は,当審にて付記したものである。
「本願発明において,直接又はリンカーを介して5位に結合する蛍光色素又は消光色素は,非常に大きく嵩高いものである,という点をご理解ください。本願発明は,大きな置換基である蛍光色素又は消光色素が結合した非天然型塩基を有するヌクレオチドが,T7RNAポリメラーゼによる転写反応によって転写産物(RNA)に導入可能である,という発見に基づきます。本出願前は,このような大きな置換基を伴うヌクレオチドが転写反応によってRNAに導入される,という報告は全くありませんでした。
本願発明者は非天然型塩基の研究を永年行っている本技術分野の第一人者です。この非天然型塩基の研究では予測不能な要素が多く,非天然型塩基を含むヌクレオチドが実際に成功裏に核酸に取り込まれるか,当該ヌクレオチドが別の非天然型塩基を含むヌクレオチドと核酸上で上手く塩基対を形成するのかは,実際に実験を行ってみなければ不明であった,という点をご理解ください。・・・(略)・・・
(3)本願発明前の技術水準をご理解いただくために,本意見書の添付資料として提出するTorらの文献(J. Am. Chem.Soc.1993, 115, p.4461-4467)をご高覧ください。当該文献は,置換基を伴う非天然型塩基を有するヌクレオチドを転写反応によりRNAに導入したことを報告した文献として,本願優先日前に頒布された文献では,本願発明者が知る限り唯一の文献です。当該文献は,DNA鋳型中のデオキシ-5-メチルイソチジヂン(dMcisoC)を用いて,T7RNAポリメラーゼにより,N6-(6-アミノヘキシル)イソグアノシン(6-AH-isoG)をRNA転写産物に取り込んだことを記載しています。即ち,本願発明前に転写によりRNAに取り込まれることが示された唯一の例は,塩基の置換基が,アミノアルキル基である「6-アミノヘキシル」基でした。このアミノアルキル基は,本願発明の蛍光色素又は消光色素と比較して著しく小さな置換基です。」(意見書3頁27行?4頁2行)

しかしながら,報告がないからといって,「このような大きな置換基を伴うヌクレオチドが転写反応によってRNAに導入される」ことはあり得ないというような技術常識があったことを意味するわけではない。

前記したように,刊行物1には,補正発明のごとく蛍光分子置換基を導入したヌクレオチドを転写により核酸に導入し得るものとして記載されており,前記したように大きな置換基を伴うヌクレオチドが転写反応によってRNAに導入されることはあり得ないとの技術常識があるわけでもないから,刊行物1の前記記載のとおり,導入し得ると理解するのが自然である。

したがって,本願優先権主張日前に,「転写によりRNAに取り込まれることが示された唯一の例は,塩基の置換基が,アミノアルキル基である「6-アミノヘキシル」基」のみであったことをもって,実際に実験を行ってみなければ不明であったとまでいうことはできないから,請求人の主張を採用することはできない。

念のため,平成24年3月27日に意見書の「実際に実験を行ってみなければ不明であった」(意見書3頁36?37行)という主張のとおりであるものとしても,せいぜい,前記塩基の5位に,6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)からなる蛍光色素が,直接又はリンカーを介して結合することについて,補正発明が実際に実験を行って確かめているのに対して,引用発明では実験によって確かめられたものではない程度のことである。

前記したように,刊行物1には,補正発明のごとく蛍光分子置換基を導入したヌクレオチドを転写により核酸に導入し得るものとして記載されており,実験で確かめてみようとする充分な動機があるというべきであって,前記請求項2の数種の置換基を,「塩基の5位」(請求項1)という規定された位置に導入して確かめるのに過度な試行錯誤が要求されるようなこともない。よって,予想どおり導入できることを確かめることは,当業者にとって,何の創作力も要求されることのない単なる確認事項にすぎない。

オ 回答書について
請求人は,回答書に補正案を提示する。この補正案は,請求項1に対する補正を含むものであって,蛍光色素と核酸との結合について,「蛍光色素が,下記の化学式I-III:
[化1] [式I中,nは1ないし5の整数から選択される]
[化2]
[式II中,m及びlは,1ないし5の整数から各々独立に選択される]
及び
[化3]
からなるグループから選択されるリンカーを介して結合している,前記核酸である,」(下線は,追加される補正事項を示す。)との事項を追加するものである。
[化1],[化2]及び[化3]の化学構造が補正案に記載されておらず,技術内容が不明であるが,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項9の【化1】?【化3】についてのものと解される。
しかしながら,これらのリンカーは例示するまでもなく周知のものであって,被標識物に対して直接標識を付けるか,リンカーを介して付けるかは,当業者が適宜決め得る単なる設計事項といえる。

よって,補正案のとおりに補正したとしても特許性を有さない。

(5) むすび
補正発明は,刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,平成18年改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
上記したように,本件補正は補正却下されたので,本件請求項1?14に係る発明は,平成24年3月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であると認める。
そのうち,「請求項1ないし7のいずれか1項」を引用する本件請求項8に係る発明に含まれる発明であって,請求項1を引用する請求項8に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下の事項により特定される発明である。

「【請求項1】
5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドが組み込まれた核酸であって,
前記塩基の5位に,5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM),6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM),5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA),6-カルボキシテトラメチルローダミン(6-TAMRA),5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホン酸(DANSYL),5-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(5-HEX),6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン(6-HEX),5-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(5-TET),6-カルボキシ-2,4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン(6-TET),5-カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX),及び6-カルボキシ-X-ローダミン(6-ROX)からなるグループから選択される蛍光色素が,直接又はリンカーを介して結合している,
前記核酸。
【請求項8】
1)請求項1ないし7のいずれか1項に記載の核酸を合成し;
2)前記核酸を標的タンパク質と結合させ;
3)標的タンパク質を支持体に付着させ;そして
4)支持体に付着した標的タンパク質に結合した前記核酸の蛍光を測定することを含む,標的タンパク質の検出方法。」

1 引用刊行物記載の事項
原査定で引用された刊行物及びその記載事項は,上記「第2 2(2) 引用刊行物記載の事項」に記したとおりであり,刊行物1に記載された発明は上記「第2 2(3)刊行物1に記載の発明」に記したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は,補正発明の「5位置換-2-オキソ(1H)ピリジン-3-イル-基を塩基として有するヌクレオチドを組み込む転写によって調製された核酸」とする限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,「第2 2(4)検討・判断」及び「第2 2(5)むすび」に記載したとおり,刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもののであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 結語
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-18 
結審通知日 2013-12-19 
審決日 2014-01-27 
出願番号 特願2006-542467(P2006-542467)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C07D)
P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂原 一公  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 関 美祝
齊藤 真由美
発明の名称 新規なヌクレオシド若しくはヌクレオチド誘導体及びその利用  
代理人 小林 泰  
代理人 星野 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 星野 修  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 富田 博行  
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