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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B |
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管理番号 | 1285776 |
審判番号 | 不服2013-7069 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-17 |
確定日 | 2014-04-07 |
事件の表示 | 特願2009- 91138「同軸ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日出願公開、特開2009-252745、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年4月3日(パリ条約による優先権主張2008年4月9日 中華人民共和国)の出願であって、平成24年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月14日付けで拒絶査定がされたので、平成25年4月17日に拒絶査定不服審判が請求され、平成26年2月12日付けで当審の拒絶理由が通知され、同年3月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願発明は、平成26年3月7日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の項番にしたがい、「本願発明1」などとい、全体を「本願発明」という。)。 「 【請求項1】 コアと、前記コアに被覆された絶縁層と、前記絶縁層に被覆された遮蔽層と、前記遮蔽層に被覆されたシース層と、を含み、 前記コアがカーボンナノチューブ構造体及び少なくとも一つの導電性層を含み、 前記カーボンナノチューブ構造体が前記導電性層で被覆され、 前記カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含み、該カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムからなり、該カーボンナノチューブフィルムは超配列カーボンナノチューブアレイから形成されることを特徴とする同軸ケーブル。 【請求項2】 前記カーボンナノチューブワイヤにおける複数のカーボンナノチューブが、端と端が接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項3】 前記カーボンナノチューブワイヤにおける複数のカーボンナノチューブが、前記カーボンナノチューブ構造体の中心軸に平行に配列されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。 【請求項4】 前記複数のカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。 【請求項5】 前記コアが複数の前記カーボンナノチューブワイヤを含み、前記複数のカーボンナノチューブワイヤが織り合っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。 【請求項6】 複数のコアと、複数の絶縁層と、一つの遮蔽層と、一つのシース層と、を備える同軸ケーブルにおいて、一つの前記絶縁層が、一つのコアを包むように設置され、前記遮蔽層が、前記絶縁層で被覆された前記複数のコアを包むように設置され、前記シース層が、前記遮蔽層の表面に被覆されていることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載の同軸ケーブル。 【請求項7】 複数のコアと、複数の絶縁層と、複数の遮蔽層と、一つのシース層と、を備える同軸ケーブルにおいて、一つの前記絶縁層が、一つのコアを包むように設置され、一つの前記遮蔽層が、一つの前記絶縁層で被覆された前記のコアを包むように設置され、前記シース層が、前記遮蔽層及び前記絶縁層で被覆された前記複数のコアを包むように設置されていることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載の同軸ケーブル。 【請求項8】 前記遮蔽層が、複数のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載の同軸ケーブル。」 第3 原査定及び当審の拒絶理由の概要 原査定の拒絶の理由は次の1であり、また、当審の拒絶理由は次の2である。 1 本願発明は、その出願日前に日本国内において頒布された次の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:米国特許出願公開2007/293086号明細書 同 2:米国特許出願公開2007/284145号明細書 同 3:特開2005-96024号公報 2 特許請求の範囲の記載は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項1号の規定に適合しない。 本願明細書の【0035】の記載によれば、本願発明の「カーボンナノチューブフィルム」は、超配列カーボンナノチューブアレイから形成されたものである。しかし、特許請求の範囲に記載された該フィルムは、そのような限定がされていないので、本願発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとすることはできない 第4 当審の判断 4-1 拒絶の理由1について 1 刊行物に記載された発明 (1)刊行物1に記載された発明 ア 刊行物1には次の事項が記載されている。 (ア)「[0003] The present invention relates to cables and, more particularly, to a coaxial cable.」(仮訳:本発明は、ケーブル、特に同軸ケーブルに関する。) (イ)「[0018] The present coaxial cable is further described below with reference to the drawings. [0019] The present coaxial cable includes at least one conducting wire, at least one insulating layer, each insulating layer respectively surrounding a corresponding conducting wire, at least one shielding layer encompassing the at least one insulating layer, and a sheath wrapping the above-mentioned three parts thereof. 」(仮訳:本発明の同軸ケーブルについて図面を参照しつつ詳細に記述する。 本発明の同軸ケーブルは、少なくとも1つの導電性ワイヤ、それぞれ対応する導電性ワイヤを覆う少なくとも1つの絶縁層、少なくとも1つの絶縁層を覆っている少なくとも1つのシールド層、これら3つのパーツを包み込む1つのシースからなる。) (ウ)「[0021] The conducting wire 110 can be a single wire or a number of stranded wires. The conducting wire 110 is made of a conducting material, such as a metal, an alloy, a carbon nanotube bundle, or a carbon nanotube composite having electrical conduction. ・・・. The carbon nanotube composite advantageously includes the carbon nanotubes and one of the above-mentioned alloys. Preferably, the mass percent of the carbon nanotubes in the carbon nanotube composite is 0.2%-10%. The carbon nanotube bundle is, usefully, a sort of carbon nanotube chain connected by van der Waals attractive forces between ends of adjacent carbon nanotubes.」(仮訳:導電ワイヤ110は、単一のワイヤや複数の撚糸であってもよい、導電ワイヤ110は、金属、合金、カーボンナノチューブ束、あるいは導電性を有するカーボンナノチューブ複合体のような導電性材料からなる。・・・。カーボンナノチューブ複合体は、好ましくは、複数のカーボンナノチューブと上記した合金の1つを含む。好ましくは、カーボンナノチューブ複合体中のカーボンナノチューブの体積百分率は、0.2?10%である。カーボンナノチューブ束は、通常、隣接したカーボンナノチューブの端部がファンデルワールス力により接続されたカーボンナノチューブ鎖である。) (エ)「[0023] Referring to FIG. 2 , the shielding layer 130 coating/encompassing the insulting layer 120 is a carbon nanotube/polymer composite including a polymer material 134 and carbon nanotubes 132 embedded therein.」(仮訳:第2図を参照すると、絶縁層120を被覆しているシールド層130は、高分子材料134とこれに埋め込まれたカーボンナノチューブ132からなるカーボンナノチューブ/高分子複合材料である。) イ 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、記載事項(ア)によれば、同軸ケーブルに関する発明が記載されており、具体的には、同(イ)によれば、導電性ワイヤ、絶縁層、シールド層及びシースからなる。 そして、同(ウ)によれば、導電性ワイヤは、隣接したカーボンナノチューブの端部がファンデルワールス力により接続されたカーボンナノチューブ鎖等の導電性材料からなり、シールド層は、同(エ)によれば、カーボンナノチューブ/高分子複合材料である。 これらの事項によれば、刊行物1には、「導電性ワイヤ、該導電性ワイヤを覆う絶縁層、該絶縁層を覆い、カーボンナノチューブ/高分子複合材料であるシールド層およびシースからなり、該導電性ワイヤが、隣接したカーボンナノチューブの端部がファンデルワールス力により接続されたカーボンナノチューブ鎖等の導電性材料からなる同軸ケーブル。」に関する発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2) 刊行物2の記載事項 (カ)「[0005] One embodiment of the present invention is a conductor cable that includes an inner portion and a conductive coating. The inner portion is formed of a metal/ceramic composite. The conductive coating is coated on the inner portion.」(仮訳:本発明を具体化した1つは、内側部分とこれを覆う導電性被覆を含む導電性ケーブルである。内側部分は金属/セラミック複合体から形成される。導電性被覆は内側部分を被覆する。) (キ)「[0011] FIG. 1 shows a partial sectional side perspective view of coaxial cable 10 . Cable 10 includes conductor 12 , dielectric sheath 14 , metallic shield 16 , and jacket 18.・・・・」(仮訳:第1図は、同軸ケーブル10の部分的断面の透視図を示す。ケーブル10は、導体12、誘電体シース14、金属シールド16及び被覆層18からなる。・・・) (ク)「[0013] FIG. 2 shows a cross-sectional view of conductor 12 (for use with cable 10 , for example) according to an embodiment of the present invention, having a metal and ceramic composite base 20 plated or clad with a conductive layer such as copper layer 22 and a second conductive layer such as silver layer 24 .」(仮訳:第2図は、導体12(例えば、ケーブル10に使われるもの)の断面図を示し、本発明によれば、銅からなる第1の導電体層22と銀からなる第2の導電体層24で覆われた又はクラッドされた金属とセラミックの複合体ベース20からなる。) (3)刊行物3の記載事項 (サ)「【請求項1】 官能基が結合した複数のカーボンナノチューブの前記官能基間を化学結合させて相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体の芯線を備えることを特徴とするワイヤ。」 (シ)「【0069】 また、単層カーボンナノチューブの変種であるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、・・・等、厳密にチューブ形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。」 2 対比 そこで、本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の同軸ケーブルにおける導電性ワイヤは、同軸ケーブルの中心部にあって導電性を有する点で、本願発明1の「コア」に相当する。また、引用発明のシールド層は、絶縁層とシースの間にある点で本願発明1の遮蔽層に相当する。また、引用発明の「シース」は、本願発明1の「シース層」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、「コアと、前記コアに被覆された絶縁層と、前記絶縁層に被覆された遮蔽層と、前記遮蔽層に被覆されたシース層と、を含む同軸ケーブル」に関する発明である点で一致し、次の1、2の点で相違する。 ア 相違点1:本願発明1では、「コアがカーボンナノチューブ構造体及び少なくとも一つの導電性層を含み、前記カーボンナノチューブ構造体が前記導電性層で被覆され」るが、引用発明の導電性ワイヤ(コア)が、導電性層で被覆されたカーボンナノチューブであるか明らかではない点。 イ 相違点2:本願発明1では、コアを構成する「カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含み、該カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムからなり、該カーボンナノチューブフィルムは超配列カーボンナノチューブアレイから形成される」のに対し、引用発明では、導電性ワイヤを構成するカーボンナノチューブは、隣接したカーボンナノチューブの端部がファンデルワールス力により接続されたカーボンナノチューブ鎖である点。 3 判断 相違点2のカーボンナノチューブワイヤに関しては、刊行物1には、隣接したカーボンナノチューブの端部がファンデルワールス力により接続されたカーボンナノチューブ鎖を使用することが記載されている。 しかし、刊行物1には、コアを構成するカーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブワイヤを含み、該カーボンナノチューブワイヤが超配列カーボンナノチューブアレイから形成されることについては記載も示唆もされていない。また、超配列カーボンナノチューブアレイから形成されたワイヤが知られているとしても、これにより同軸ケーブルのコアを形成することは知られていない。 本願発明1に係る同軸ケーブルは、上記相違点2の構成を採用することにより、本願明細書の段落【0018】に記載されているとおり、高い強度及び強靭性を有し、良好な導電性を有する。これらの効果は、刊行物1?3の記載からは予測することができない顕著な効果である。 したがって、本願発明1は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。また、本願発明2?8は、本願発明1の特定事項を全て有するものであるので、本願発明1と同様の理由により、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 4-2 拒絶の理由2について 平成26年3月7日付けの手続補正により、本願発明の「カーボンナノチューブフィルム」は、「超配列カーボンナノチューブアレイから形成される」ものであることが明確になった。このため、本願発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるので、サポート要件違反とする当審の拒絶理由は解消された。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができず、特許請求の範囲の記載はサポート要件を充足するから、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-03-24 |
出願番号 | 特願2009-91138(P2009-91138) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井原 純 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
川端 修 吉水 純子 |
発明の名称 | 同軸ケーブル |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 村山 靖彦 |