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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1285844 |
審判番号 | 不服2013-2134 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-04 |
確定日 | 2014-03-12 |
事件の表示 | 特願2010- 47860「有機電界発光表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日出願公開、特開2011- 14870〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年3月4日(パリ条約による優先権主張2009年7月3日、韓国)の出願であって、平成23年10月4日に手続補正がなされたが、平成24年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明の特許性 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「発光領域と非発光領域を含む基板と、 前記基板上に位置するバッファ層と、 前記バッファ層上の非発光領域に位置する半導体層と、 前記基板全面に位置するゲート絶縁膜と、 前記ゲート絶縁膜上に位置し、前記発光領域上に位置する第1の電極と、 前記ゲート絶縁膜上に位置し、前記非発光領域上に位置するゲート電極と、 前記基板全面に位置し、前記第1の電極の一部を開口させる層間絶縁膜と、 前記層間絶縁膜上に位置し、前記半導体層及び前記第1の電極と電気的に接続するソース/ドレイン電極と、 前記基板全面に位置し、前記第1の電極の一部を開口させる保護膜と、 前記第1の電極上に位置する有機膜と、 前記基板全面に位置する第2の電極と、を含み、 前記ゲート絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜が順次積層された多層膜であり、前記シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さが、それぞれ300?500Åであり、 前記第1の電極は、透明電導膜であるITO系列とIZO、AZO、GZOなどのZnO系列の材料で形成される、ことを特徴とする有機電界発光表示装置。」 2.引用刊行物及び該刊行物に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-272193号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を具備したアクティブマトリックス(Active Matrix:AM)型フラットパネルディスプレイに係る。・・・ 【0002】 液晶ディスプレイ素子や、有機ELディスプレイ素子または無機ELディスプレイ素子などのフラットパネルディスプレイに使われる薄膜トランジスタは、各画素の動作を制御するスイッチング素子及び画素を駆動させる駆動素子として使われる。」 (2)「【0088】 図6、図8及び図9に示すように、ガラス材の絶縁基板1に、バッファ層2が形成されており、このバッファ層2の上部に第1TFT10、第2TFT20、キャパシタ30及びEL素子40が具備される。 【0089】 図示するように、前記第1TFT10はゲートライン51に接続され、TFTオン/オフ信号を印加するゲート電極13と、ゲート電極13の上部に形成されてかつデータライン52と接続して第1活性層11にデータ信号を供給するソース電極14と、第1TFT10とキャパシタ30とを連結してキャパシタ30に電源を供給するドレイン電極15とより構成される。第1活性層11とゲート電極13との間にはゲート絶縁膜3が備えられている。 【0090】 充電用キャパシタ30は、第1TFT10と第2TFT20との間に位置して1フレームの期間、第2TFT20を駆動させるのに必要な駆動電圧を貯蔵する。図6及び図8に示すように、第1TFT10のドレイン電極15と接続する第1電極31;第1電極31の上部に第1電極31とオーバーラップされるように形成され、電力を印加する駆動ライン53と電気的に連結される第2電極32;及び第1電極31と第2電極32との間に形成されて誘電体として使われる層間絶縁膜4から構成される。もちろん、このような充電用キャパシタ30の構造は必ずこれに限定されることではなく、TFTのシリコン薄膜とゲート電極13の導電層とが第1及び第2電極として使われ、ゲート絶縁層が誘電層として使われることもあり、それ以外にも多様な方法により形成できる。 【0091】 第2TFT20は図6及び図9に示したように、キャパシタ30の第1電極31と連結されてTFTオン/オフ信号を供給するゲート電極23;ゲート電極23の上部に形成されて駆動ライン53と接続して第2活性層21に駆動のためのレファレンス共通電圧を供給するソース電極24;及び第2TFT20とEL素子40とを連結してEL素子40に駆動電源を印加するドレイン電極25から構成される。第2活性層21とゲート電極23との間にはゲート絶縁膜3が備えられている。ここで、第2活性層21のチャンネル領域は副画素の色相によってその結晶粒界と平行、垂直、または傾いて配列されている。 【0092】 一方、EL素子40は電流が流れることによって、R、G、Bの光を発光して所定の画像情報を表示する。図6及び図9に示したように、第2TFT20のドレイン電極25に連結されてこれよりプラス電源を供給されるアノード電極41;画素全体を覆うように備えられてマイナス電源を供給するカソード電極43;及びアノード電極41及びカソード電極43の間に配置されて発光する有機発光膜42から構成される。図面の未説明符号である5はSiO_(2)等よりなる絶縁性パッシベーション膜であり、6はアクリルなどよりなる絶縁性平坦化膜である。」 (3)「【図6】 」 (4)「【図9】 」 これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「ガラス材の絶縁基板(1)に、バッファ層(2)が形成されており、このバッファ層の上部に第1TFT(10)、第2TFT(20)、キャパシタ(30)及びEL素子(40)が具備され、 キャパシタは、第1TFTのドレイン電極(15)と接続する第1電極(31);第1電極の上部に第1電極とオーバーラップされるように形成され、電力を印加する駆動ライン(53)と電気的に連結される第2電極(32);及び第1電極と第2電極との間に形成されて誘電体として使われる層間絶縁膜(4)から構成され 第2TFTは、キャパシタの第1電極(31)と連結されてTFTオン/オフ信号を供給するゲート電極(23);ゲート電極の上部に形成されて駆動ライン(53)と接続して第2活性層(21)に駆動のためのレファレンス共通電圧を供給するソース電極(24);及び第2TFTとEL素子(40)とを連結してEL素子に駆動電源を印加するドレイン電極(25)から構成され、 第2活性層とゲート電極との間にはゲート絶縁膜(3)が備えられており、 EL素子は、第2TFTのドレイン電極に連結されてこれよりプラス電源を供給されるアノード電極(41);画素全体を覆うように備えられてマイナス電源を供給するカソード電極(43);及びアノード電極及びカソード電極の間に配置されて発光する有機発光膜(42)から構成され、 SiO_(2)等よりなる絶縁性パッシベーション膜(5)及びアクリルなどよりなる絶縁性平坦化膜(6)を備える、 有機ELディスプレイ。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「ガラス材の絶縁基板」は本願発明の「基板」に相当する。 以下同様に「バッファ層」は「バッファ層」に、 「ゲート絶縁膜」は「ゲート絶縁膜」に、 「アノード電極」は「第1の電極」に、 「ゲート電極」は「ゲート電極」に、 「層間絶縁膜」は「層間絶縁膜」に、 「ソース電極及びドレイン電極」は「ソース/ドレイン電極」に、 「絶縁性平坦化膜」は「保護膜」に、 「有機発光膜」は「有機膜」に、 「カソード電極」は「第2の電極」に、 「有機ELディスプレイ」は「有機電界発光表示装置」に、 それぞれ相当する。 (2)引用発明の「基板」の「EL素子」上の領域及び「第1TFT、第2TFT及びキャパシタ」上の領域は、それぞれ本願発明の「発光領域」及び「非発光領域」に相当する。 (3)引用発明は「バッファ層の上部に第1TFT及び第2TFTを具備」するから、本願発明の「バッファ層上の非発光領域に位置する半導体層」に相当する構成を有する。 (4)引用発明の「ゲート絶縁膜」が「基板全面に位置する」ことは自明である。 (5)上記の各相当関係に基づき、引用発明の「アノード電極」(本願発明の「第1の電極」に相当)が「ゲート絶縁膜上に位置し、発光領域上に位置する」こと、 同「ゲート電極」(同「ゲート電極」に相当) が「ゲート絶縁膜上に位置し、非発光領域上に位置する」こと、 同「層間絶縁膜」(同「層間絶縁膜」に相当) が「基板全面に位置し、第1の電極の一部を開口させる」こと、 同「ソース電極及びドレイン電極」(同「ソース/ドレイン電極」に相当) が「層間絶縁膜上に位置し、半導体層及び第1の電極と電気的に接続する」こと、 同「絶縁性平坦化膜」(同「保護膜」に相当) が「基板全面に位置し、第1の電極の一部を開口させる」こと、 同「有機発光膜」(同「有機膜」に相当) が「第1の電極上に位置する」こと、 及び同「カソード電極」(同「第2の電極」に相当)が「基板全面に位置する」ことは、いずれも自明な事項である。 そうすると、両者は、 「発光領域と非発光領域を含む基板と、 前記基板上に位置するバッファ層と、 前記バッファ層上の非発光領域に位置する半導体層と、 前記基板全面に位置するゲート絶縁膜と、 前記ゲート絶縁膜上に位置し、前記発光領域上に位置する第1の電極と、 前記ゲート絶縁膜上に位置し、前記非発光領域上に位置するゲート電極と、 前記基板全面に位置し、前記第1の電極の一部を開口させる層間絶縁膜と、 前記層間絶縁膜上に位置し、前記半導体層及び前記第1の電極と電気的に接続するソース/ドレイン電極と、 前記基板全面に位置し、前記第1の電極の一部を開口させる保護膜と、 前記第1の電極上に位置する有機膜と、 前記基板全面に位置する第2の電極と、を含む有機電界発光表示装置。」 の点で一致し、次の点で相違している。 (相違点) 本願発明では「ゲート絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜が順次積層された多層膜であり、前記シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さが、それぞれ300?500Åであり、第1の電極は、透明電導膜であるITO系列とIZO、AZO、GZOなどのZnO系列の材料で形成される」であるのに対して、引用発明ではそのような構成を有しているかどうか不明な点。 4.判断 上記相違点について検討する。 基板上にEL素子の発光領域とTFTの非発光領域を有し、ゲート絶縁膜と該絶縁膜上の発光領域上に位置する電極を備える有機電界発光表示装置において、ゲート絶縁膜を、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜が順次積層された多層膜で構成することも、電極を透明電導膜であるITO系列とIZO、AZO、GZOなどのZnO系列の材料で形成することも、ともにごく普通に用いられる周知技術(特開2006-54425号公報段落【0330】及び【0125】参照)である。 引用発明のゲート絶縁膜及び第1の電極として当該周知の材料及び構成を用いることに格別の技術的困難性も阻害要因もない。 また、上記のような材料で構成されたゲート絶縁膜の膜厚として500Å?2000Å程度のものが周知である(上記文献段落【0112】参照)。 そして、引用発明に上記周知技術を適用しゲート絶縁膜を多層膜で構成するに際して、その膜厚を周知のものとするべく各層の厚さをそれぞれ300?500Å程度のものとすることにも格別の技術的困難性も阻害要因もない。 してみると、引用発明に周知技術を適用し上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 また、本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 なお、請求人は審判請求書において「本願発明に示される『シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さが、それぞれ300?500Å』との構成、及びこれにより奏される「第2のシリコン酸化膜130cを300?500Åで形成することで、赤発光、緑発光、青発光の効果を最大化できる」(段落0055)、「シリコン窒化膜130bの厚さを300?500Åに形成することで、赤発光、緑発光、青発光を最も好適に実現できる」(段落0059)との効果は、引用文献からは奏されない本願発明に特有なものであると」と主張しているが、本願明細書及び図面の記載に基づく限り、請求人の主張する上記「赤発光、緑発光、青発光の効果を最大化できる」及び「赤発光、緑発光、青発光を最も好適に実現できる」という事項は、単に「実現したい色座標の範囲の色を実現できる」ということにすぎず、どのような色を実現すべきかは、その素子を用いる目的や他の構成との兼ね合い等に応じて、当業者が適宜決定しうるものであるから、そのような効果が従来のものに比べて格別のものであるとすることはできない。したがって、請求人の上記主張には理由がない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-09 |
結審通知日 | 2013-10-15 |
審決日 | 2013-10-28 |
出願番号 | 特願2010-47860(P2010-47860) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 佳美 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 有機電界発光表示装置及びその製造方法 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 佐伯 義文 |