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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1285943 |
審判番号 | 不服2012-18070 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-18 |
確定日 | 2014-03-19 |
事件の表示 | 特願2007-205350「磁気ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日出願公開、特開2008- 47276〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年8月7日(パリ条約による優先権主張2006年8月14日、米国)の出願であって、平成23年10月7日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月10日付けで手続補正され、同年2月23日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月18日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成25年4月15日付けで審尋がなされ、同年6月24日に回答書が提出されたものである。 第2 本願発明 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月18日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「テープ支持表面を有する磁気ヘッドであって、 複数のライタを含み、各ライタは、テープ支持表面に向かって配置された極先端を各々が有する第1および第2の極と、極先端間に画定されたフロント・ギャップと、テープ支持表面から離れて配置された極の部分において極の電気的接続に沿って画定されたバック・ギャップとを有し、 前記フロントおよびバック・ギャップの幅は、前記テープ支持表面に平行な方向に画定され、 前記バック・ギャップの幅と前記フロント・ギャップの幅との比率が3:1未満であり、 前記フロント・ギャップの前記幅が2?10ミクロンであり、 前記ライタの外部に配置されたサーボ・リーダをさらに含み、前記サーボ・リーダ間の距離が1.5mm未満であり、 前記ライタの各々がコイルを含み、該コイルは、少なくとも2層に積み重ねられている、 磁気ヘッド。」 第3 引用発明 A 原審の平成24年2月23日付け最後の拒絶理由に引用された特開昭58-70417号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 イ.「この発明は磁気記録の分野に関する。特に、レコーダのヘッドおよび多トラックのヘッドにおける構造的配置に関する。 磁気記録の分野においては、薄フィルムヘッドは周知である。一般に符号10で表わされる薄フィルムヘッドが第1図および第2図に示され、そして基材30の上に形成された底パーマロイ20を具備し、該パーマロイ上にコイル40が設けられている。上パーマロイの極片50が設けられており、この極片50は底パーマロイ20層と、設定ギャップ52によって分離されている。コイル40には、電流ドライバ44が付設されたパッド42が接続されている。絶縁層60は、隣接するパーマロイ20および50よりコイル40を絶縁するように設けられている。動作中において、電流ドライバからコイル40を通った電流が、磁気テープあるいは他の記録媒体に磁気スポットを記録させるようにギャップ52上における磁場を形成する。 薄フィルムヘッドの形成について簡単に説明すると、次の通りである。シリコンあるいはセラミックの基材30は、パーマロイ[NiFe]磁性材料20でもって被覆される。その後、望ましくはシリコン二酸化物の絶縁層60がパーマロイ上に形成される。次いで、アルミニウムあるいは他の導体が載置され、コイル40がパターン化される。それに続いて、別の絶縁体60が載置される。任意に、別のパターン化されたコイルを設けても差支えない。例えば、IBMは一層当たり4巻である2つの層を用いた記録ヘッドを製造し、そしてDESTEKは、1つの層においては5巻である一方、他の層においては4巻であるコイルを有する、改良された記録ヘッドを生産した。コイル40を形成した後、パーマロイの極片50が形成され、底パーマロイ20に、一端部において接続配置される一方、他端部において底パーマロイから分離されて、技術分野において周知である記録ギャップ52を設けている。 そのような薄フィルムヘッド配列が最大利用されるのは、ディスクドライブに対してである。ディスクドライブは、典型的には、単一のヘッドを用い、それをディスクについて横断させる。いくつかのディスクについての応用には、固定されたヘッド配列が用いられている。また、テープレコーダにおける薄フィルムヘッドに対しても応用されるが、それらに用いられているものは、たいてい、2?4個のヘッドを有している。 小型化の傾向でもって、磁化可能なテープのような記録媒体上の最小可能スペースに多くのデータを記録する必要がある。このことは、特に記録装置が非常に幅の狭いテープを用いることが望ましい場合、例えば1/4インチ以下の幅のテープである小型カセットを用いる携帯用の手持ちのビデオカメラの場合にあてはまる。」(2頁左下欄1行?3頁左上欄14行) ロ.「この発明の実施例を示す第4図を参照すると、参照符号100は、一般に、2つのスタック110および120を具備する薄フィルムヘッド配列を示している。第1のスタック110は4つの薄フィルムヘッド112、114、116および118を具備し、そしてこの発明の背景の説明において前述したように、それらは単一の基材上に形成されている。第2のスタック120は4つの薄フィルムヘッド112、124、126および128を具備する。2つのスタックは、第2のスタックにおける各記録ギャップが前側のスタック上のヘッド従って記録ギャップの間の中間に本質的に配置されるように、設定量シフトされた第2のスタックとともに配設されている。2つのスタックは、エポキシのような接着剤によって固定されている。勿論、第4図において示される距離”A”は、配列を具備する2以上のスタックがあるとき、変化することになるのは、理解されるべきである。 このようにして形成された薄フィルムヘッド配列でもって、記録媒体、例えば配列における各記録ギャップが磁気テープ上の分離トラックを占有するような前記磁気テープと操作的関係で配置されている。第4図におけるように配置された2つのスタックでもって、利用可能なトラックの数が、単一の基材から得られるものの2倍になる。かくして、テープにおける所定の領域に、多量のデータを充填することが可能である。」(4頁左上欄18行?同頁左下欄4行) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.における「符号10で表わされる薄フィルムヘッドが第1図および第2図に示され、そして基材30の上に形成された底パーマロイ20を具備し、該パーマロイ上にコイル40が設けられている。上パーマロイの極片50が設けられており、この極片50は底パーマロイ20層と、設定ギャップ52によって分離されている。」との記載、第1図及び第2図によれば、薄フィルムヘッド(10)は、底パーマロイ(20)と、上パーマロイの極片(50)と、コイル(40)とを有している。ここで、同イ.における「電流ドライバからコイル40を通った電流が、磁気テープあるいは他の記録媒体に磁気スポットを記録させるようにギャップ52上における磁場を形成する。」との記載、及び第2図によれば、底パーマロイ(20)及び上パーマロイの極片(50)は、磁気テープ(70)に向かって配置された極先端を各々有し、極先端間にギャップ(52)が形成されていることが見て取れる。また、磁気テープ(70)から離れて配置された上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分が見て取れる。また、第1図及び第2図によれば、前述のギャップ(52)および上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分の幅は、磁気テープ(70)に平行な方向に画定されている。そして、前述の上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分の幅と前述のギャップ(52)の幅との比率が1:1であることが見て取れる。 また、上記ロ.の記載、及び第4図によれば、前述の薄フィルムヘッド(10)は、複数配置され、磁気テープに磁気記録するものであるから、これを磁気記録ヘッドと称することは任意である。 また、前述の磁気記録ヘッドは、各々コイル(40)を含んでいるということができる。 したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「薄フィルムヘッド(10)であって、 複数の磁気記録ヘッドを含み、各磁気記録ヘッドは、磁気テープ(70)に向かって配置された極先端を各々が有する底パーマロイ(20)及び上パーマロイの極片(50)と、極先端間に形成されたギャップ(52)と、磁気テープから離れて配置された上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分とを有し、 前記ギャップ(52)および上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分の幅は、前記磁気テープ(70)に平行な方向に画定され、 前記上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分の幅と前記ギャップ(52)の幅との比率が1:1であり、 前記磁気記録ヘッドの各々がコイルを含む、薄フィルムヘッド(10)。」 B 原審の平成24年2月23日付け最後の拒絶理由に引用された特開2006-18953号(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ハ.「【技術分野】 【0001】 本発明は、リニア磁気テープシステムが適用される磁気記録再生装置および磁気記録再生方法に関する。」(4頁) ニ.「【0041】 これら磁気ヘッドスタック部31、32の各ヘッド摺動面には、図3の要部平面図に示すように、同一データトラックに対応する記録磁気ヘッド素子1Wと再生磁気ヘッド素子1Pとがそれぞれ並置形成される。各スタック部31及び32において、各記録磁気ヘッド1W及び再生磁気ヘッド1Pは、その磁気ギャップが、所定の間隔を保持してそれぞれトラック幅方向に直線的に配列される。 【0042】 更に、第1および第2の磁気ヘッドスタック部31、32の、これら記録磁気ヘッド素子1W及び再生磁気ヘッド素子1Pの配列部33の両端に、サーボ信号再生磁気ヘッド素子1Sが配置される。 【0043】 そして記録トラック幅を5ミクロン、再生トラック幅を1.25ミクロンとした前記磁気ヘッド素子の記録・再生ギャップを左右線対称な配置にして上下に例えば16個、100ミクロンおきに配置している。各磁気ヘッドスタック部31、32のヘッド摺動面はフラット面若しくはテープ幅方向を軸線とする大きな曲率半径を持つ曲面としている。」(10頁) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.の【0043】における「そして記録トラック幅を5ミクロン、再生トラック幅を1.25ミクロンとした前記磁気ヘッド素子の記録・再生ギャップを左右線対称な配置にして」との記載、及び図3によれば、記録磁気ヘッド素子は、記録トラック幅を5ミクロンとしている。すなわち、ギャップの幅は、5ミクロンということができる。 したがって、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「記録磁気ヘッドにおいて、ギャップの幅を5ミクロンとすること。」 C 原審の平成24年2月23日付け最後の拒絶理由に引用された特開2006-172705号(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 ホ.「【0002】 本発明は磁気データ記憶媒体に関し、より詳細にはこのような媒体に対してデータを読み取りおよび書き込むための磁気ヘッドに関する。」(2頁) ヘ.「【0016】 また本発明は二次元マトリックスに配列された書き込みヘッドのアレイと二次元マトリックスに配列されたMRヘッドのアレイとを利用する、磁気媒体に対して情報を読み取りおよび書き込みするシステム内で用いることができる。この場合書き込みヘッドの各々は読み取りヘッドのうちの対応する1つと実質的に位置合わせされており、書き込みチャネルの各々が対応する読み取りチャネルと実質的に整列するようになっている。別個のデータ信号を書き込みヘッドの二次元マトリックスアレイのチャネルを用いて媒体上のトラックに書き込むことができるとともに、MRヘッドの非線形アレイのそれぞれのチャネルを用いて読み取ることができる。しかし場合によっては読み取りヘッドのアレイは、例えばサーボトラッキングに用い得る書き込みヘッドと必ずしも整列していない追加読み取りヘッドを含み得る。」(5頁) ト.「【0023】 線形アレイ14は線形構成で配置された一組の磁気抵抗(MR)ヘッド24を備える。重要なことは書き込みヘッド22の各々がMRヘッド24の対応する1つと実質的に整列していることである。このようにシステム10は同じ数の書き込みヘッド22とMRヘッド24とを含み得る。16個のMRヘッド24および16個の書き込みヘッド22が図示されているが、システム10は任意の数のMRヘッド24と対応する数の書き込みヘッド22とを含み得る。場合によって追加読み取りヘッドをサーボ位置決め信号の読み出し用に設け得る。」(6頁) チ.「【0027】 図3は書き込みヘッドの平面アレイ12と読み取りヘッドの線形アレイ14とを備えるシステム10の他の底面線図である。図3の図示において平面アレイ12は二次元マトリックスに配列された書き込みギャップとして図示された一組の書き込みヘッドを備える。また書き込みヘッド(または書き込みギャップ)の各々はシステム10の書き込みチャネルを画定する。図3上では16個のチャネルに標識が付されている。 【0028】 線形アレイ14は線形構成で配列されたギャップ27として図3に図示された一組の磁気抵抗(MR)ヘッドを備える。重要なことは書き込みヘッド22の各々がMRヘッド24の対応する1つと実質的に整列していることである。このようにシステム10は同じ数の書き込みヘッド22とMRヘッド24とを含み得る。各チャネルは線形アレイ14の対応ヘッド、平面アレイ12の対応ヘッド、またはその両方により画定されていると考えることができる。しかし上記したように場合によっては追加読み取りヘッドをサーボ位置決め信号の読み出し用に設け得る。いずれの場合も本発明はMRヘッドの線形アレイ14と書き込みヘッドの平面アレイ12とを組み合わせて、従来の読み取り/書き込みシステムに比べて向上したトラックピッチで動作可能なシステムを容易にする。またこのようなトラックピッチは100μm未満、50μm未満、さらには10μm未満であり得る。このようなトラックピッチでは磁気媒体のデータ記憶密度を特に磁気テープに対して増大させることができる。」(7頁) 上記引用例3の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記チ.の【0028】における「・・・またこのようなトラックピッチは100μm未満、50μm未満、さらには10μm未満であり得る。」との記載、及び図3によれば、磁気ヘッドは、トラックピッチが10μm未満である。ここで、書き込みヘッドは、上記ト.の【0023】によれば、16個あるから、両端の書き込みヘッド同士の距離は、トラックピッチを10μmとして、約10μm×15である約0.15mmということができる。 したがって、引用例3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「磁気ヘッドにおいて、両端の書き込みヘッド同士の距離を約0.15mmとすること。」 第4 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「磁気記録ヘッド」、「底パーマロイ(20)」、「上パーマロイの極片(50)」及び「ギャップ(52)」は、本願発明の「ライタ」、「第1の極」、「第2の極」及び「フロント・ギャップ」にそれぞれ相当する。 b.引用発明1の「磁気テープ(70)」と、本願発明の「テープ支持表面」とは、「磁気テープ」はテープ面を有するから、いずれも、「テープに係る面」という点で一致する。 c.引用発明1の極先端間に「形成された」ギャップ(52)は、ギャップ(52)が形成されてくぎりが(画定)するから、「画定された」(フロント・ギャップ)ということができる。 d.引用発明1の「上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分」と、本願発明の「極の部分において極の電気的接続に沿って画定されたバック・ギャップ」とは、「上パーマロイの極片(50)の端部(54)」は「極の部分」といえ、「底パーマロイ(20)」に接続されている以上「電気的接続」が有るといえ、くぎりが接続に沿って画定されているから、「極の部分において極の電気的接続に沿って画定された特定のバック部分」という点で一致する。 e.引用発明1の「比率が1:1」と、本願発明の「比率が3:1未満」とは、いずれも、「比率が特定の比率」という点で一致する。 f.引用発明1の「薄フィルムヘッド(10)」と、「磁気ヘッド」とは、いずれも、「磁気ヘッド」という点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「磁気ヘッドであって、 複数のライタを含み、各ライタは、テープに係る面に向かって配置された極先端を各々が有する第1および第2の極と、極先端間に画定されたフロント・ギャップと、テープに係る面から離れて配置された極の部分において極の電気的接続に沿って画定された特定のバック部分とを有し、 前記フロントおよび特定のバック部分の幅は、前記テープに係る面に平行な方向に画定され、 前記特定の部分の幅と前記フロント・ギャップの幅との比率が特定の比率であり、 前記ライタの各々がコイルを含む、磁気ヘッド。」 <相違点1> 「磁気ヘッド」の態様に関し、 本願発明は、「テープ支持表面を有する」のに対し、引用発明1は、当該「テープ支持表面を有する」との特定がない点。 <相違点2> 「テープに係る面」に関し、 本願発明は、「テープ支持表面」であるのに対し、引用発明1は、「磁気テープ(70)」である点。 <相違点3> 「特定のバック部分」に関し、 本願発明は、「バック・ギャップ」であるのに対し、引用発明1は、「磁気テープから離れて配置された上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分」である点。 <相違点4> 「特定の比率」に関し、 本願発明は、「3:1未満」であるのに対し、引用発明1は、「1:1」である点。 <相違点5> 「フロント・ギャップ」に関し、 本願発明は、「前記フロント・ギャップの前記幅が2?10ミクロンである」のに対し、引用発明1は、当該「前記フロント・ギャップの前記幅が2?10ミクロンである」との特定がない点。 <相違点6> 「ライタ」の態様に関し、 本願発明は、「前記ライタの外部に配置されたサーボ・リーダをさらに含み、前記サーボ・リーダ間の距離が1.5mm未満である」のに対し、引用発明1は、当該「前記ライタの外部に配置されたサーボ・リーダをさらに含み、前記サーボ・リーダ間の距離が1.5mm未満である」との特定がない点。 <相違点7> 「コイル」の態様に関し、 本願発明は、「該コイルは、少なくとも2層に積み重ねられている」のに対し、引用発明1は、当該「該コイルは、少なくとも2層に積み重ねられている」との特定がない点。 第5 判断 そこで、まず、上記相違点1について検討する。 引用発明1は、「薄フィルムヘッド(10)」であるところ、磁気テープ(70)にギャップ(52)を用いて磁気記録するものであり、薄フィルムヘッド(10)と磁気テープ(70)とを接触させて磁気テープ(70)の面を支持する表面を備えることは、例えば、実願平5-47242号(実開平7-19808号)のCD-ROM(段落【0004】、図10)に開示されるように周知であるから、本願発明のように「テープ支持表面を有する」ことは格別なことではない。 次に、上記相違点2について検討する。 引用発明1は、「磁気テープ(70)」であるところ、上記相違点1についての検討を踏まえると、「テープ支持表面」は、「磁気テープ(70)」の面を支持する表面を備えることは明らかであるから、「テープに係る面」に関し、本願発明のように「テープ支持表面」とすることは格別のことではない。 次に、上記相違点3について検討する。 引用発明1は、「磁気テープから離れて配置された上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分」であるところ、磁気テープ(70)から離れて配置された上パーマロイの極片(50)の端部(54)において底パーマロイ(20)に接続された部分は、ギャップを有することは普通のことであるから、当該「部分」を、本願発明のように「バック・ギャップ」と称することは実質的なことではない。 次に、上記相違点4について検討する。 上記引用例1の上記イ.における「小型化の傾向でもって、磁化可能なテープのような記録媒体上の最小可能スペースに多くのデータを記録する必要がある。」との記載のように、磁気ヘッドを小型化し高密度記録する課題は周知である。そうすると、引用発明1の比率は「1:1」であり、本願発明の「3:1未満」と重なり、しかも、明細書の記載を参酌しても数値範囲を「3:1未満」とすることに臨界的意義は見いだせないから、本願発明のように「3:1未満」とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点5について検討する。 引用発明1と引用発明2とは、磁気ヘッドという共通の技術分野に属し、上記引用例1の上記イ.における「小型化の傾向でもって、磁化可能なテープのような記録媒体上の最小可能スペースに多くのデータを記録する必要がある。」との記載のように、磁気ヘッドを小型化し高密度記録する課題は周知である。そうすると、引用発明2の数値は「5ミクロン」であり、本願発明の数値範囲「2?10ミクロン」と重なり、しかも、明細書の記載を参酌しても数値範囲を「2?10ミクロン」に限定することに臨界的意義は見いだせないから、本願発明のように「前記フロント・ギャップの前記幅が2?10ミクロンである」とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点6について検討する。 引用発明1と引用発明3とは、磁気ヘッドという共通の技術分野に属し、上記引用例1の上記イ.における「小型化の傾向でもって、磁化可能なテープのような記録媒体上の最小可能スペースに多くのデータを記録する必要がある。」との記載のように、磁気ヘッドを小型化し高密度記録する課題は周知である。そして、磁気ヘッドにおいて、ライタの外部にサーボ・リーダを配置することは、例えば、上記引用例2の上記ニ.の【0042】における「第1および第2の磁気ヘッドスタック部31、32の、これら記録磁気ヘッド素子1W及び再生磁気ヘッド素子1Pの配列部33の両端に、サーボ信号再生磁気ヘッド素子1Sが配置される。」との記載及び図3、特開平8-221708号公報(段落【0038】における「磁気ヘッドブロック7及び8には磁気テープ11上に記録されているサーボトラックS11?S14及びS21?S24の位置情報を読み取るサーボヘッドS1及びS2が内在している。」との記載、図7)に開示されているように周知慣用技術である。 そうすると、引用発明3の「両端の書き込みヘッド同士の距離」は、「サーボ・リーダ間の距離」より僅かに短いことは技術常識であり、また、引用発明3の数値は「約0.15mm」であり、本願発明の「1.5mm未満」と重なり、しかも、明細書の記載を参酌しても数値範囲を「1.5mm未満」とすることに臨界的意義は見いだせなから、本願発明のように「前記ライタの外部に配置されたサーボ・リーダをさらに含み、前記サーボ・リーダ間の距離が1.5mm未満である」とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点7について検討する。 上記引用例1の上記イ.における「別のパターン化されたコイルを設けても差支えない。例えば、IBMは一層当たり4巻である2つの層を用いた記録ヘッドを製造し」との記載によれば、コイルは、2層に積み重ねることが示唆されているから、本願発明のように「該コイルは、少なくとも2層に積み重ねられている」ことは格別のことではない。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1ないし3並びに周知慣用技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1ないし3並びに周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-30 |
結審通知日 | 2013-10-15 |
審決日 | 2013-10-28 |
出願番号 | 特願2007-205350(P2007-205350) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 和俊、中野 和彦 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 関谷 隆一 |
発明の名称 | 磁気ヘッド |
代理人 | 市位 嘉宏 |
代理人 | 上野 剛史 |
代理人 | 太佐 種一 |
復代理人 | 小池 文雄 |