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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1285956
審判番号 不服2013-3946  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-28 
確定日 2014-03-19 
事件の表示 特願2009-543146「ビーム時空間符号化および送信ダイバーシティ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日国際公開、WO2008/077056、平成22年 4月30日国内公表、特表2010-514377〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2007年12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年12月19日 米国,2007年3月9日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年10月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成25年2月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[結論]
平成25年2月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成24年7月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項15に記載された
「【請求項15】
送信ダイバーシティを導入するための方法であって,
送信シグナルストリームを生成することと,
前記送信シグナルストリームから,複数,Gの送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームを生成することと,
複数,Kのウェイトされたサブストリームを生成するために前記送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのそれぞれをビームフォーミングすることと,ここにおいて前記複数のウェイトされたサブストリームの各ウェイトされたサブストリームは,前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするために一つおきにウェイトされたサブストリームから独立した複数,Kのアンテナの各専用アンテナと結合するように構成される,
Kの各ウェイトされたストリームを送信することと,
を備えた方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項15】
送信ダイバーシティを導入するための方法であって,
送信シグナルストリームを生成することと,
前記送信シグナルストリームから,複数,Gの送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームを生成することと,
複数,Kのウェイトされたサブストリームを生成するために前記送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのそれぞれをビームフォーミングすることと,ここにおいて前記複数のウェイトされたサブストリームの各ウェイトされたサブストリームは,前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするために一つおきにウェイトされたサブストリームから独立した複数,Kのアンテナの各専用アンテナと結合するように構成され,前記複数のウェイトされたサブストリームは,振幅および位相要素が変化する,
Kの各ウェイトされたストリームを送信することと,
を備えた方法。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,本願発明の「複数のウェイトされたサブストリーム」について,「前記複数のウェイトされたサブストリームは,振幅および位相要素が変化する」と限定し,特許請求の範囲を減縮するものである。したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定(新規事項)及び同法第17条の2第5項の規定(補正の目的)に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

イ.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表2005-503045号公報(以下,「引用例」という。)には,「複数アンテナ送信用の非ゼロ複素重み付けした空間-時間符号」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は,通信システムにおいて送信ダイバーシティを実現する方法及び装置に関し,更に詳しくは,複数アンテナで送信するべく,信号を非ゼロ複素重み付け及び空間-時間符号化する方法及び装置に関する。
(中略)
【0005】
2つのアンテナの場合の送信ダイバーシティについては十分な研究が行われている。Alamoutiは,複素値信号用の二次ダイバーシティを提供する2つのアンテナ用の送信ダイバーシティ方式を提案している。1998年10月の「特定通信領域に関するIEEEジャーナル(IEEE Journal on Selected Areas of Communications)」の1451?1458頁のS.アラムウティ(S. Alamouti)による「無線通信用の単純な送信ダイバーシティ技術(A Simple Transmit Diversity Technique for Wireless Communications)」を参照されたい。このAlamoutiの方法によれば,1シンボル周期の間に2つのアンテナから2つの信号を同時に送信する。1シンボル周期の間に,第1アンテナから送信される信号をS0と表記し,第2アンテナから送信される信号をS1と表記する。次のシンボル周期の間に,-S1^(*)信号が第1アンテナから送信され,S0^(*)信号が第2アンテナから送信されるが,ここで^(*)は複素共役演算子である。同様のダイバーシティ送信システムは,符号ドメインにおいても実現可能である。一例として,2つの直交ウォルシュ(Walsh)符号を使用し,同一シンボルの2つの複写を並行して送信可能である。同様の技術を使用し,空間-周波数符号化方式を構築することもできる。
【0006】
3つ以上のアンテナにAlamoutiの方法を拡張するのは容易ではない。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って,3つ以上のアンテナによる送信ダイバーシティの利点を提供すると同時に,システム設計の複雑性を大幅に増加させない方法及び装置を提供すれば有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,複数アンテナで送信するべく,信号を非ゼロ複素重み付け及び空間-時間符号化する方法及びシステムを提供する。この方法及び装置は,N×N'空間-時間ブロック符号(Nは送信経路数であり,N'は1送信経路当たりの出力シンボル数である)をM×M'空間-時間ブロック符号(M>N,N×N'空間-時間ブロック符号内におけるシンボルの反復と非ゼロ複素重み付けを使用することにより生成される)に拡張し,M個のダイバーシティ送信経路による空間-時間ブロック符号の送信を可能にするものである。これらのダイバーシティ送信経路は,別個のアンテナ又はビームで構成することができる。大きい方の符号M'の時間的な長さは,元の符号N'の時間的な長さと等しい。この方法及び装置によれば,入力シンボルストリームを変換し,空間-時間ブロック符号からなる変換結果を生成する。そして,それぞれがN'個の出力シンボルで構成された空間-時間ブロック符号のN個の出力ストリームを反復し,これらの反復ストリームの中の少なくとも1つを時間軸で非ゼロ複素重み付けし,M個のダイバーシティ送信経路で送信するべく,N'個の出力シンボルのM個のストリームを生成する。この非ゼロ複素重み付けには,位相偏移も含まれる。
【0009】
一実施例においては,Nは少なくとも2であり,Mは少なくとも3である。」(5?7頁)

(イ)「【0013】
まず,図1aを参照すれば,本発明の一実施例による送信機150のブロック図が示されている。送信機150は,入力シンボルストリームを受信する入力152と,この入力シンボルストリームを変換して直交空間-時間ブロック符号で表現される変換結果を生成し,この変換結果の2つのシンボルストリームを出力するブロック符号プロセッサ154と,この2つのシンボルストリームの中の第1のものを非ゼロ複素重み付けする非ゼロ複素重み付け器156と,2つのシンボルストリームの第2のものを非ゼロ複素重み付けする非ゼロ複素重み付け器158と,第1のシンボルストリームをAnt.1で送信するRF送信器160と,非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームをAnt.2で送信するRF送信機162と,第2のシンボルストリームをAnt.3で送信するRF送信機164と,位相偏移された第2のシンボルストリームをAnt.4で送信するRF送信機166と,を含んでいる。アンテナAnt.1?Ant.4は,ダイバーシティ受信を促進するべく,互いに対して分極されてもよい。例えば,Ant.1又はAnt.2は,Ant.3又はAnt.4の水平偏波に対して,それぞれ垂直偏波であってよい。この図1aの送信機150の実施例は,4つの送信ダイバーシティ経路で送信するために2×N'ブロック符号を拡張する様々な技術及びシステムに好適な様々な形態で実現することが可能である。送信機150では,4つの送信ダイバーシティ経路のそれぞれに別個のアンテナ,Ant.1?Ant.4が含まれている。これには,送信ダイバーシティを導入可能な符号分割多元接続(CDMA)システム,時分割多元接続(TDMA)システム,又はその他のタイプのデジタル通信システムが含まれる。図1aの実施例の代替例においては,送信経路の中から選択したものについて非ゼロ複素重み付けを実行し,Ant.1とAnt.2,或いはAnt.3とAnt.4による送信間に相対的な位相の偏移を生成することができる。例えば,RF送信機160及び164への入力の前にも非ゼロ複素重み付けを適用し,各シンボルストリームの非ゼロ複素重み付けされたバージョンを生成するが,送信信号間の相対的な位相偏移を維持することができる。4個未満のアンテナを使用して送信機150の実施例の代替例を実現し,4つのダイバーシティ経路を実現することも可能である。一例として,RF送信機164又は166への信号入力を1つに纏めて単一のアンテナで送信することができる。又,例えば,4個未満のアンテナを使用し,2つのデータストリームの中の1つのみを非ゼロ複素重み付けして2つのダイバーシティ経路で送信可能なその他の代替例も可能である。図1aの別の実施例においては,非ゼロ複素重み付け演算をRF送信機部160,162,164,166の後で実行することができる,即ち,変調後の連続位相掃引と空間-時間符号化シンボルのベースバンドフィルタリングとして非ゼロ複素重み付けを実現可能である。」(8?9頁)

引用例の上記記載及び図面並びに当該技術分野における技術常識を考慮すると,
a.上記(ア)の【0001】の記載によれば,引用例には,送信ダイバーシティを実現する方法が記載されていると認められる。

b.上記(イ)及び図1aの記載によれば,ブロック符号プロセッサ154は,受信した入力シンボルストリームを変換して直交空間-時間ブロック符号で表現される変換結果を生成し,この変換結果の2つのシンボルストリームを出力するのであるから,引用例には,入力シンボルストリームから,2つの直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームを生成することが記載されていると認められる。

c.上記(イ)及び図1aの記載によれば,2つのシンボルストリームの中の第1のものは2つに分けられ,1つはアンテナANT1で送信するRF送信器160に入力され,もう1つは非ゼロ複素重み付けする非ゼロ複素重み付け器156で位相偏移されアンテナANT2で送信するRF送信器162に入力され,2つのシンボルストリームの中の第2のものは2つに分けられ,1つはアンテナANT3で送信するRF送信器164に入力され,もう1つは非ゼロ複素重み付けする非ゼロ複素重み付け器158で位相偏移されアンテナANT4で送信するRF送信器166に入力されるものである。そして,上記(イ)の「例えば,RF送信機160及び164への入力の前にも非ゼロ複素重み付けを適用し,各シンボルストリームの非ゼロ複素重み付けされたバージョンを生成するが,送信信号間の相対的な位相偏移を維持することができる。」の記載によれば,アンテナANT1で送信するRF送信器160及びアンテナANT3で送信するRF送信器164の前にもそれぞれ非ゼロ複素重み付けする非ゼロ複素重み付け器が存在し得るといえる。そして,上記(ア)の【0008】の記載によれば,非ゼロ複素重み付けは,位相偏移させるためのものであるといえる。
したがって,引用例には,2つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームを生成するために前記直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームのそれぞれを位相偏移することが記載されていると認められる。

d.上記(ア)の【0008】,上記(イ)及び図1aの記載によれば,2つの非ゼロ複素重み付け器(RF送信器160前に存在し得るもの,156)は直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームの中の第1のものを位相偏移するために非ゼロ複素重み付けするものであり,これらの2つの非ゼロ複素重み付け器により非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームが,それぞれ独立に,対応するアンテナATN1,ATN2から送信されることによって,ビームが形成されることは明らかである。同様に,2つの非ゼロ複素重み付け器(RF送信器164前に存在し得るもの,158)は直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームの中の第2のものを位相偏移するために非ゼロ複素重み付けするものであり,これらの2つの非ゼロ複素重み付け器により非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームが,それぞれ独立に,対応するアンテナATN3,ATN4から送信されることによって,ビームが形成されることは明らかである。ここで,1つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームは,対応する1つのアンテナから送信されるのであるから,当該1つのアンテナと結合するように構成されていることは明らかである。
したがって,引用例には,前記2つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームは,前記2つの直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームのうちの1つを位相偏移したものからなるビームとするために,他の非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームから独立して,2つのアンテナの対応する各アンテナと結合するように構成されることが記載されていると認められる。

e.上記c.,d.のとおり,非ゼロ複素重み付けは位相偏移させるためのものといえるから,非ゼロ複素重み付けシンボルストリームは,位相要素が変化することは明らかである。

f.上記d.のとおり,直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームの中の第1のものを非ゼロ複素重み付けした2つの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームはそれぞれアンテナANT1,ANT2から送信され,直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームの中の第2のものを非ゼロ複素重み付けした2つの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームはそれぞれアンテナANT3,ANT4から送信されるから,引用例には,2つの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームを送信することが記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「送信ダイバーシティを実現する方法であって,
入力シンボルストリームから,2つの直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームを生成することと,
2つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームを生成するために前記直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームのそれぞれを位相偏移することと,ここにおいて前記2つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームは,前記2つの直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームのうちの1つを位相偏移したものからなるビームとするために,他の非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームから独立して,2つのアンテナの対応する各アンテナと結合するように構成され,前記非ゼロ複素重み付けシンボルストリームは,位相要素が変化する,
2つの各非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームを送信することと,
を備えた方法。」

ウ.対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,
(ア)送信ダイバーシティを実現することは,実質的に送信ダイバーシティを導入することになるから,引用発明の「送信ダイバーシティを実現する方法」を「送信ダイバーシティを導入するための方法」と称することは任意である。

(イ)引用発明の「入力シンボルストリーム」,「直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリーム」は,明らかに補正後の発明の「送信シグナルストリーム」,「送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリーム」にそれぞれ相当する。また,「2つの」は「複数の」といえる。

(ウ)引用発明の「非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリーム」は,以下の相違点4は別として,補正後の発明の「ウェイトされたサブストリーム」に相当する。すなわち,両者は,「前記複数のウェイトされたサブストリームは,位相要素が変化する」点で一致している。

(エ)引用発明の「非ゼロ複素重み付け」は,1つの直交空間-時間ブロック符号化されたシンボルストリームを複数のアンテナから送信するにあたり,各アンテナから送信されるシンボルストリームの位相を偏移させるものであり,引用例の【0008】の「この方法及び装置は,・・・M個のダイバーシティ送信経路による空間-時間ブロック符号の送信を可能にするものである。これらのダイバーシティ送信経路は,別個のアンテナ又はビームで構成することができる。」の記載(上記イ.(ア)参照。)にもよれば,引用発明の「位相偏移」はビームフォーミングのためのものであることは当業者に明らかである。
したがって,両者は,「前記複数のウェイトされたサブストリームの各ウェイトされたサブストリームは,前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするためにウェイトされたサブストリームから独立した複数のアンテナの各専用アンテナと結合するように構成され」の点で一致している。

(オ)引用発明は,1つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームが1つの対応するアンテナにより送信されるのであるから,「対応する各アンテナ」を「各専用アンテナ」と称することは任意である。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「送信ダイバーシティを導入するための方法であって,
前記送信シグナルストリームから,複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームを生成することと,
複数のウェイトされたサブストリームを生成するために前記送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのそれぞれをビームフォーミングすることと,ここにおいて前記複数のウェイトされたサブストリームの各ウェイトされたサブストリームは,前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするためにウェイトされたサブストリームから独立した複数のアンテナの各専用アンテナと結合するように構成され,前記複数のウェイトされたサブストリームは,位相要素が変化する,
Kの各ウェイトされたストリームを送信することと,
を備えた方法。」

(相違点1)
補正後の発明は「送信シグナルストリームを生成すること」なる構成を備えているのに対し,引用発明は当該構成を明らかにしていない点。

(相違点2)
「複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリーム」及び「複数のウェイトされたサブストリーム」に関して,補正後の発明は「複数」がそれぞれ「複数,G」,「複数,K」であるのに対し,引用発明はいずれも「2つ」である点。

(相違点3)
補正後の発明は「前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするために一つおきにウェイトされたサブストリーム」であるのに対して,引用発明は「一つおきにウェイトされた」ことが明示されていない点。

(相違点4)
補正後の発明は「前記複数のウェイトされたサブストリームは,振幅および位相要素が変化する」のに対し,引用発明は振幅の変化について言及していない点,

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例の図1aによれば,ブロック符号プロセッサの入力152は入力シンボルストリーム(補正後の発明の「送信シグナルストリーム」に相当。)を受信するのであるから,当該入力シンボルストリームが生成されていることは明らかである。したがって,相違点1には実質的な相違はない。

(相違点2について)
本願の図4にも示されているように,補正後の発明の「複数,G」及び「複数,K」はいずれも「2つ」であることを含むものであるから,相違点2には実質的な相違はない。

(相違点3について)
補正後の発明はKの値について特定していないが,Kが2である場合は,「一つおきにウェイトされた」とは,本願の図4にも示されているように,ウェイトされたものとウェイトされないものとがあることに対応するから,引用発明(引用例の図1a)を包含するものである。したがって,相違点3には実質的な相違はない。

なお,Kが2よりも大きい場合,ウェイトされないサブストリームが複数存在することになるが,本願明細書の【0073】の記載に照らせば,ウェイトされないことは標準化(すなわち,正規化)に起因するものであるから,同一のウェイトが複数存在し,当該同一のウェイトに基づいて標準化するような特殊な場合を除き,Kが2よりも大きいことはあり得ないはずである。そして,「1つおき」は英語では「every other ・・・」と表現されるところ,「every other ・・・」には「ほかのすべての・・・」との意味もあることから,「ここにおいて前記複数のウェイトされたサブストリームの各ウェイトされたサブストリームは,前記複数の送信ダイバーシティ/時空間符号化された送信ストリームのうちの前記1つをビームフォーミングするためにほかのすべてのウェイトされたサブストリームから独立した複数,Kのアンテナの各専用アンテナと結合するように構成され,」の意図であったとも推察されるが,もしそうであるとしても,引用発明は1つの非ゼロ複素重み付けされたシンボルストリームが1つの対応するアンテナにて送信されるから,実質的な相違はない。

(相違点4について)
ビームフォーミングにおいて振幅および位相要素を変化させることは普通に行われていることに過ぎないから,位相要素のみならず振幅も変化するようにすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,補正後の発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお,請求人は,審尋に対する平成25年8月7日付け回答書において,「前記GシグナルストリームのそれぞれをKアンテナによってビームフォーミングすることは,対応するウェイトベクトルからの要素によって前記Kサブストリームのそれぞれをウェイトすることを備え,前記ウェイトすることは,受信機からのフィードバックに基づいてレートを変化させることと,個々のウェイトの振幅および位相要素を独立して変化させることとを備える,」なる構成を更に限定した補正案を示しているが,ウェイトベクトルをフィードバックすること,フィードバックに基づいてレート制御を行うこと等はいずれも普通に行われていることに過ぎず,当該限定事項も何ら格別でない。

3.結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年2月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-15 
結審通知日 2013-10-22 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2009-543146(P2009-543146)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 友輝  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 藤井 浩
新川 圭二
発明の名称 ビーム時空間符号化および送信ダイバーシティ  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 白根 俊郎  
代理人 砂川 克  
代理人 野河 信久  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 竹内 将訓  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 井上 正  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  

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