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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L
管理番号 1285959
審判番号 不服2013-6725  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-11 
確定日 2014-03-19 
事件の表示 特願2011-500786号「流体移送アセンブリおよび関連方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年9月24日国際公開、WO2009/117059、平成23年5月19日国内公表、特表2011-515635号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成21年3月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2008年3月18日 US)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成25年6月20日付けで当審により拒絶の理由が通知され、平成25年9月20日付けで意見書が提出されたものであって、その請求項1?17に係る発明は、平成24年11月21日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「第1通路と前記第1通路に対して固定された第2通路とを有する第1ポリマーコネクタと、第3通路を有する第1ポリマー導管とを取り付ける方法であって、
前記第1ポリマーコネクタを前記第1ポリマー導管に、前記第1コネクタおよび前記第1導管の外面の少なくとも一部に延在する第1ポリマー部材によって取り付けるステップであって、前記第1ポリマーコネクタと前記第1ポリマー導管との間に流体通路を形成する、ステップを含み、
前記第1ポリマーコネクタが3つ以上の端部開口部を備え、
前記第1ポリマー部材が、前記第1ポリマーコネクタの端部と前記第1ポリマー導管の端部との間に画定された間隙内に延在するが、前記第1ポリマーコネクタと前記第1ポリマー導管の間の流体通路内に1mm未満で延在する、
方法。」

2.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-323357号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 熱可塑性樹脂短筒の開口部に熱可塑性樹脂管の管端部を挿入してその外周面を短筒の内周面に接触させると共に熱可塑性樹脂管を短筒方向に押圧しつつ短筒をその筒軸を回転軸として回転させて熱可塑性樹脂管の管端部外周面と短筒の内周面とを溶融し、次いで短筒の回転を止めることにより熱可塑性樹脂管の管端部外周面を短筒内周面に融着することを特徴とする熱可塑性樹脂管の接続方法。
【請求項2】 熱可塑性樹脂短筒をその筒軸を回転軸として回転するための回転装置と、熱可塑性樹脂管をその管軸が前記熱可塑性樹脂短筒の管軸と一致するように保持し、回転装置に向けて押圧する押圧装置とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂管の接続装置。」(【特許請求の範囲】)

(イ)「【発明の属する技術分野】この発明は融着による熱可塑性樹脂管の接続方法およびその装置に関する。」(【0001】)

(ウ)「ポリエチレン短筒4は、図2に示すとおり、両端に管受口41、41とその奥部にストッパー42を有するいわゆるソケット式の管継手であり、外周面に筒軸方向の複数の凹溝43が多数設けられている。・・・」(【0017】)

(エ)「なお、この発明方法による熱可塑性樹脂管の分岐部や屈曲部等の接続にあたっては、熱可塑性樹脂管と、熱可塑性樹脂分岐管や熱可塑性樹脂エルボ等の管継手との間に前記のような熱可塑性樹脂短筒を介在させて回転させることにより融着して接続すればよい。例えば、分岐部の接続にあたっては、図3に示すとおり、管端部の外径が熱可塑性樹脂管3aと同径の熱可塑性樹脂分岐管5を用い、その管端部と熱可塑性樹脂管3aとの間に熱可塑性樹脂短筒4aを介在させ、前記と同様にして短筒4a回転させて融着して接続する。
・・・ ・・・
また、この発明の熱可塑性樹脂管の接続装置によれば、熱可塑性樹脂管と熱可塑性樹脂短筒とを、それぞれ押圧装置と回転装置とに装着し、それぞれの装置を駆動させることにより、熱可塑性樹脂管の端部が熱可塑性樹脂短筒の開口部に挿入され押圧状態で熱可塑性樹脂短筒が回転し、この回転によって熱可塑性樹脂短筒と熱可塑性樹脂管の接触部分に摩擦熱が発生し、その部分が融着可能な程度に溶融し一体化して融着されるので、この発明方法を確実に行うことができる。」(【0021】?【0023】)

(オ)「【図1】図1はこの発明の熱可塑性樹脂管の接続装置の概略図であって、(イ)は正面断面図、(ロ)は(イ)のA-A断面図である。
【図2】この方法において用いられる熱可塑性樹脂短筒の一例を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は(イ)のB-B断面図である。
【図3】分岐部の接続状態を示す断面図である。」(【図面の簡単な説明】)

(カ)「【符号の説明】
1 回転装置
13 駆動ベルト
2 押圧装置
21 管保持部
22 押圧部
3 熱可塑性樹脂管(ポリエチレン管)
4 熱可塑性樹脂短筒(ポリエチレン短筒)
5 熱可塑性樹脂分岐管」(【符号の説明】)

また、【図3】には、熱可塑性樹脂分岐管5が、横方向通路と縦方向通路とを有し、横方向通路に縦方向通路が連通している構成、熱可塑性樹脂分岐管5が3つの端部開口部を備えている構成、及び、熱可塑性樹脂分岐管5と熱可塑性樹脂管3aとの間に流体通路が形成される構成が開示されている。
さらに、【図2】(ロ)、【図3】から、熱可塑性樹脂分岐管5の端部と熱可塑性樹脂管3aの端部との間に画定された間隙内に、熱可塑性樹脂短筒4a(ポリエチレン短筒4)の構成部材であるストッパー42が延材し、かつ、熱可塑性樹脂分岐管5の端部と熱可塑性樹脂管3aの端部との間の流体通路内に延在する構成が開示されている。

上記(ア)?(カ)の記載、及び【図2】、【図3】の開示事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「横通路と横通路に連通する縦通路とを有する熱可塑性樹脂分岐管5と、通路を有する熱可塑性樹脂管3aとを取り付ける方法であって、
前記熱可塑性樹脂分岐管5を前記熱可塑性樹脂管3aに、前記熱可塑性樹脂分岐管5および前記熱可塑性樹脂管3aの外面の少なくとも一部に延在する熱可塑性樹脂短筒4aによって取り付けるステップであって、前記熱可塑性樹脂分岐管5と前記熱可塑性樹脂管3aとの間に流体通路を形成する、ステップを含み、
前記熱可塑性樹脂分岐管5が3つの端部開口部を備え、
前記熱可塑性樹脂短筒4aが、前記熱可塑性樹脂分岐管5の端部と前記熱可塑性樹脂管3aの端部との間に画定された間隙内に延在するが、前記熱可塑性樹脂分岐管5と前記熱可塑性樹脂管3aの間の流体通路内に延在する、方法。」

3.対比・判断
引用発明の「横通路と横通路に連通する縦通路とを有する熱可塑性樹脂分岐管5」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「第1通路と前記第1通路に対して固定された第2通路とを有する第1ポリマーコネクタ」に相当し、以下同様に、「通路を有する熱可塑性樹脂管3a」は「第3通路を有する第1ポリマー導管」に、「熱可塑性樹脂短筒4a」は「第1ポリマー部材」にそれぞれ相当する。
また、本願発明の「第1ポリマーコネクタ」と「第1コネクタ」とは同じ部材を意味し、「第1ポリマー導管」と「第1導管」とは同じ部材を意味すると解される。
さらに、引用発明の「熱可塑性樹脂分岐管5が3つの端部開口部を備え」は、本願発明の「第1ポリマーコネクタが3つ以上の端部開口部を備え」を充足するものである。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は次の点で一致している。
「第1通路と前記第1通路に対して固定された第2通路とを有する第1ポリマーコネクタと、第3通路を有する第1ポリマー導管とを取り付ける方法であって、
前記第1ポリマーコネクタを前記第1ポリマー導管に、前記第1コネクタおよび前記第1導管の外面の少なくとも一部に延在する第1ポリマー部材によって取り付けるステップであって、前記第1ポリマーコネクタと前記第1ポリマー導管との間に流体通路を形成する、ステップを含み、
前記第1ポリマーコネクタが3つ以上の端部開口部を備え、
前記第1ポリマー部材が、前記第1ポリマーコネクタの端部と前記第1ポリマー導管の端部との間に画定された間隙内に延在するが、前記第1ポリマーコネクタと前記第1ポリマー導管の間の流体通路内に延在する、方法」

そして、両者は次の点で相違している。

(相違点)
本願発明では、第1ポリマー部材の、第1ポリマーコネクタと第1ポリマー導管の間の流体通路内に延材する部分が、1mm未満という限定がされているのに対し、引用発明では、その部分の寸法が特定されていない点。

以下、上記各相違点について検討する。

通路を形成する管の接続部において、樹脂で接続する際、その接続において生ずる部分に突出が生じると、その部分で流れの損失が生じたり、不要なものが蓄積し悪影響が生じるという課題、及び、その課題解決のため、接続部の突出部をなくすという解決手段は、本願優先日において周知の事項であり(例えば、特開平4-8535号公報、特開平4-321894号公報、特開2004-100767号公報等参照。)、引用発明に接した当業者であれば、当該周知の事項を考慮し、引用発明の「流体通路内に延材する部分」を極力少なくする、あるいは、平坦とする程度のことは容易に想到し得ることと認められる。そして、本願発明の上記「1mm未満」という数値限定は、明細書の記載からみて「実質的に継目のない遷移」(明細書、段落【0018】等参照。)を意図するものと解され、また、その数値限定に格別作用効果上の差異があるとも認められないから、引用発明に、周知の事項を適用して上記相異点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

審判請求人は、平成25年9月20日付け意見書において、「確かに、「通路を形成する管の接続部において、接続部の突出部をなくすという解決手段」それ自体は、本願出願前から周知の事項であるものの、引用文献1に記載された技術は、その段落[0005][発明が解決しようとする課題]に記載されているように、射出成形時の樹脂圧によって、所定位置に固定されず、熱可塑性樹脂が均一に加熱されなかったり、」などの課題を解決せんとして、段落[0017]および図2に記載されているように、2つのポリエチレン管3の管端部をポリエチレン短筒4により融着して接続するために、ポリエチレン短筒4の構成を、両端に管受口41,41とその奥部にストッパー42を有するいわゆるソケット式の管継手としたものである。このストッパー42は、流路内まで延びる突起を有するとともに、その突起は管内面に接触するフランジを有するものである。このような突起は、当然ながら、実質的に、スムーズで継ぎ目の無い管接続を達成することができないのである。 引用文献1は、このような構成のポリエチレン短筒4を用いた熱可塑性樹脂管の接続方法及びその装置を開示するものであり、図1(イ)、図2に示すように、ポリマー部材は、2つのポリエチレン管の間の流体通路内に延びて突起のようなものを形成するのである。 以上のとおり、引用文献1においては、「接続部の突出部をなくす」という解決課題は何ら存在しないのである。
さらに、引用文献1に記載の方法及び装置は、ポリエチレン管3をポリエチレン短筒4の方向に押圧しつつ短筒4をその筒軸を回転軸として回転させてポリエチレン管3の管端部外周面と短筒4の内周面とを溶融してポリエチレン管3と短筒4を融着させる、いわゆる摩擦-誘導溶融法による融着方法とそのための装置である。ポリエチレン管3とポリエチレン短筒4に適用する押圧のため、接続するポリエチレン管3は構造的に強い内壁を必要とする。そして、このような融着方法及び装置は、コネクタが2つのポリエチレン管の間の流体通路内に延びないような場合には、効果的なものではない。」と主張している。
しかしながら、引用発明のストッパー42が通路内に突出していても、上記周知の事項を考慮して、その突出部を極力小さくして、流れの損失が生じたり、不要なものが蓄積し悪影響が生じないようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。また、本願発明も、その突出部を1mm未満としており、突出部を全く生じさせない平坦な状態にするとまで特定するものでもなく、引用発明のストッパー42を極力小さくして本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
さらに、審判請求人は、引用発明は、ポリエチレン管3の管端部外周面と短筒4の内周面とを溶融してポリエチレン管3と短筒4を融着させる摩擦-誘導溶融法による融着方法のため、コネクタが2つのポリエチレン管の間の流体通路内に延びないような場合には、効果的なものではないとも主張するが、引用発明においても、流体通路内にストッパ42の突出部を設けなくとも、短筒部4がポリエチレン管3の外周に接する部分とポリエチレン管3の端部とのみが短筒部4と溶着することで、両者を接続することができるのは明らかであり、引用発明において、ストッパー42の流路内の突出部を生じさせないようにすることも当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、上記審判請求人の主張は理由がない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の事項から当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?17に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-17 
結審通知日 2013-10-22 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2011-500786(P2011-500786)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 小関 峰夫
平田 信勝
発明の名称 流体移送アセンブリおよび関連方法  
代理人 渡邉 一平  

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