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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C10L |
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管理番号 | 1285988 |
審判番号 | 不服2012-17896 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-13 |
確定日 | 2014-03-20 |
事件の表示 | 特願2003-529877「均一予混合圧縮着火エンジン用燃料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月27日国際公開、WO2003/025100、平成17年 2月10日国内公表、特表2005-504138〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2002年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年9月18日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年3月18日に翻訳文が提出され、同年5月11日に条約第34条に基づく補正の翻訳文が提出され、平成21年4月6日付け拒絶理由通知に対して、同年7月10日付けで意見書が提出され、平成22年7月6日付け拒絶理由通知に対して、同年11月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年11月11日付け拒絶理由通知に対して、平成24年4月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原審の拒絶査定の概要 原審において、平成23年11月11日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。 <拒絶理由通知> 「理由1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同項に規定する要件を満たしていない。 ……」 <拒絶査定> 「 この出願については、平成23年11月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。 ……」 第3 当審の判断 平成24年4月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、原査定の拒絶理由(特に理由1)が成立するか否かにつき、以下検討する。 1 前提 特許法第36条第6項には、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、同条同項第1号には、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定されている。 そして、特許請求の範囲の記載が、上記「第1号」に係る規定(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するものであるか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁特別部判決平成17年(行ケ)第10042号参照)から、以下当該観点に基づいて検討する。 2 本願特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項 (1)特許請求の範囲に記載された発明 本願の特許請求の範囲には、その請求項1ないし7に項分け記載されて、そのうち、請求項1には、以下の発明(以下「本願発明」という。)が記載されている。 「 【請求項1】 均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料であって、炭化水素基材を含み、ASTM D 86で測定した95%溜出時の沸点が35?350℃の範囲、セタン価が2?20の範囲、オクタン価が63?110の範囲、高圧自己着火温度が400?800℃の範囲にあり、 前記燃料は、前記均一予混合圧縮着火エンジン内の全ての燃料が燃焼開始より前に気相に移行することができ、かつ、ピストンが最大機械的圧縮点を通過した後に燃料による燃焼が開始するように着火遅れを有し、 前記燃料は、1以上の専用集積回路によって制御して前記均一予混合圧縮着火エンジンに用いることを特徴とする燃料。」 (2)明細書に記載された事項 本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。 「【発明の開示】 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明は、均一予混合圧縮着火(HCCI)モードで運転するエンジン用の燃料、そうした燃料を定義するための方法、これらの燃料を燃焼させるための方法、HCCIエンジンを問題なく所期の性能で運転できるように燃焼を制御するための方法に関する。 【0012】 HCCIエンジンが有用な回転力を発生し、同等の排気量のオットーサイクルまたはディーゼルサイクルエンジンに比べて低い未燃焼燃料および煤の排出量あるいは窒素酸化物の排出量を達成できるかどうかは、適切に製造された燃料に依存する。また、オットーサイクルやディーゼルサイクルは、使用可能な混合基材をどちらか一方の用途に割り当てて専用の燃料製造プロセスを経た燃料を必要とするので、燃料供給源の最適な利用という点では制約がある。HCCIエンジンは、オットーサイクルやディーゼルサイクルエンジン用の燃料混合物として充当するには相応しくない供給源からの燃料を使用できる可能性がある。 【0013】 本発明は、上述した問題を克服することを目的とする。本発明は、HCCIエンジンでの使用に適した燃料の特性の範囲、およびこれらの燃料をHCCIエンジン用燃料として効率的に使用するための変形形態を開示する。本発明者らによる多くの実験における観察に基づいて識別した特定の特性と特性間の関係をここに開示する。 【0014】 特に、本発明者らは広範囲の燃料を使用して500回以上ものエンジン試験を実施することによって、重要な燃料特性を決定し、本発明で特定するような特性の限界値を定義することに成功した。」 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 …… 【0022】 本発明の各実施形態の説明は、HCCIエンジンを効率性と実用性の最適レベルで運転するために好ましい新規な燃料を説明することを意図している。しかし、オットーサイクルエンジンに典型的に供給され、オクタン価がアンチノック性指数83?97を中心とする着火特性を有し、沸点が通常は30?225℃であるガソリンや、ディーゼルサイクルエンジンに典型的に供給され、セタン価が30?48を中心とする着火特性を有し、沸点が約175?340℃であるディーゼル油などもHCCIエンジンに供給することができる。しかし、通常のオットーサイクル燃料やディーゼルサイクル燃料をHCCIエンジンに供給すると、エンジンの効率性が低下し、汚染物質の排出量が増加する。したがって、通常のオットーサイクル燃料およびディーゼルサイクル燃料をHCCIエンジンに供給することは可能ではあるが、効率性および環境への配慮の点で最適であるとは言えない。 【0023】 また、本発明の各実施形態は、単一の燃焼が発生するエンジンサイクルと、複数回の燃焼が発生し、そのうちの少なくとも1回がHCCIであるエンジンサイクルとを含む。 【0024】 HCCI用燃料の最適な利用のために、HCCIエンジンを設計通り運転できるかどうかは、どのエンジン構成を選択するかによって左右される。例えば、温度や圧力を含む流入する混合気の条件を注意深く調節することによって、エンジンの運転と燃料構成の効率的な組合せを達成することができる。選択された燃料と運転モードに合わせて、点火開始剤、補助燃料噴射器、圧縮比の変更、排気ガス再循環(EGR)または不活性ガス導入、可変バルブタイミング機構などの他の燃焼調節要素を用いることもでき、それによってHCCIエンジンの運転を向上させることができる。 【0025】 本発明の各実施形態によれば、好ましい新規なHCCI用燃料の特性は、CO、各種の炭化水素、含炭素粒子、窒素酸化物といった汚染物質のエンジンまたは車両からの排出量を最小に抑制するように設定する。また、沸点範囲、沸点分布、揮発性、着火性指数を、上記汚染物質の発生を同時に最小に抑制するように設定することもできる。こうした燃料組成に適したエンジンの運転モードとしては、例えば吸気温度を上げること、空燃比、回転数、吸気温度を、燃焼の開始を制御し、低い断熱火炎温度でより完全な燃焼を起こさせるように選ぶことが含まれる。 【0026】 本発明の他の実施形態によれば、エンジン内で燃焼する燃料の固有効率および燃料自体の製造を考慮に入れ、燃料の特性をエネルギー発生の全体的な効率が最大化されるように設定する。指定される特性としては、限定するものではないが、例えば沸点範囲、沸点分布、揮発性、着火性指数が含まれ、これらは様々な混合基材を含むように選択する。こうした混合基材としては、例えば直溜ナフサ、ヘキサン分離装置の残留物、分解基材、中間溜分、重合ガソリンその他のガソリン基材、その他の石油精製基材といった石油由来の基材があり、これらは製油所内の装置から直接取り出されたものであるか、その後の精製工程の目的物であるかを問わない。こうした材料に含まれるのは、例えば、異性化その他の組成改変工程の産物;天然ガソリンやガス化装置から出る液状物、天然の製品または廃棄物の分解蒸留のような分解工程、例えばFischer-Tropsch合成その他の化学合成工程からの合成物といった炭化水素基材;非石油基材、例えばアルコール類、種々の含酸素化合物、炭素と水素以外の元素を含むその他の物質;オクタン価修正剤やセタン価修正剤といった添加剤などである。 【0027】 本発明の実施形態によれば、HCCIモードでの使用に適した内燃機関用燃料は、好ましくは以下に列挙する特性の1以上を含む。 【0028】 エンジン用燃料は、各吸気における基本的にすべての燃料成分が燃焼の開始より前に気相に移行するために十分な蒸発性あるいは蒸発特性を有することができる。この燃料は、運動サイクルにおいて移動するピストンが最大機械的圧縮点を通過した後に、エンジン用燃料によって燃焼が開始するために十分な着火遅れを有することができる。さらに、エンジン用燃料は、燃焼が開始した後はシリンダーを満たした混合気全体にわたって均一で連続的な燃焼が達成されるために十分な着火性を有することができる。 【0029】 本発明の実施形態にしたがって使用される好ましいエンジン用燃料は、好ましくは以下の特性を有する燃料からなる。 【0030】 (1)ASTM D 86で測定した95%溜出時の沸点が約35?350℃、好ましくは約180?350℃、より好ましくは約225?350℃の範囲にある沸点範囲。 【0031】 (2)ASTM D 613または同様の着火性測定で測定したセタン価が約2?170、好ましくは約2?70、より好ましくは20?70であって、前記セタン価は炭化水素、含酸素化合物、および/またはその他の主要な混合基材の混合物に基づく。さらに、前記セタン価は、必ずしもというわけではないが、1以上の少量成分および/またはセタン価を改変できる添加剤を添加することによって変化させることができる。 【0032】 (3)ASTM D 4814または同様の着火性測定で定義されるアンチノック指数によって測定したオクタン価が約10?110、好ましくは12?110、より好ましくは約12?82であって、前記オクタン価は炭化水素類、含酸素化合物、および/またはその他の主要な混合基材の混合物に基づく。 【0033】 本発明の実施形態である燃料の着火性の他の測定方法として、高圧自己着火温度(EPAIT:Elevated Pressure Autoignition Temperature)を使用して、HCCIエンジン用として使用が可能なあるいは好ましい燃料の特性を把握してもよい。この方法は、ライアン(Ryan)およびマシューズ(Matheaus)が詳細に説明し(T.W. Ryan, III /A.C. Matheaus、 “Fuel Requirements for HCCI Engine Operation”、 Thiesel 2002、 スペイン・バレンシア、2002年9月11?14日)、本発明の端緒となったものであり、その内容はこの参照によって開示に含まれるものとする。HCCI燃料の重要な特性は、着火遅れ時間と燃焼反応の始点における温度である。これらの特性は、EPAITを確定する過程において測定することができる。本発明の燃料は、400?800℃の範囲のEPAITを有する。 【0034】 本発明の各実施形態において、燃料のセタン価が約47?170である場合、オクタン価は約2?24の範囲にあることが好ましい。本発明の他の実施形態において、燃料のセタン価が約20?70である場合、オクタン価は約12?82であることが好ましい。本発明のさらに他の実施形態において、燃料のセタン価が約2?20である場合、オクタン価は約63?110の範囲にあることが好ましい。 【0035】 本発明の実施形態によれば、エンジン用燃料は、1以上のエンジン制御および設計の特徴と組み合わせて使用することができ、例えば可変圧縮比を備えたエンジン、可変バルブタイミング、可変式または固定式排気ガス再循環(EGR)、可変式吸気温度、および可変式燃料温度を備えたエンジンなどが含まれる。 【0036】 エンジン用燃料の効率的な使用を制御するためのシステムは、本発明の実施形態によれば、プログラムされた汎用コンピュータとして実現することができる。当業者には周知のことであるが、コントローラーは、全体的なシステムレベルでの制御のための主処理部または中央処理部と、中央処理部の制御の下で各種の特殊演算、機能、その他の処理を専門に行う個々に分離された部分とを含む、単一の専用集積回路、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実現することができる。また、コントローラーは、複数の専用あるいはプログラム可能な集積回路またはその他の電子回路またはデバイス、例えばディスクリート素子回路やプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)といった、ハードウェアによって構成された電子回路または論理回路などであってもよい。」 2 検討 (1)本願発明の解決課題について 本願発明の解決課題は、段落【0013】からみて、「均一予混合圧縮着火(HCCI)エンジンでの使用に適した燃料の特性の範囲」の提供にあるものと認められる。なお、「均一予混合圧縮着火(HCCI)エンジンでの使用に適した燃料」とは、段落【0012】からみて、「HCCIエンジンが有用な回転力を発生し、同等の排気量のオットーサイクルまたはディーゼルサイクルエンジンに比べて低い未燃焼燃料および煤の排出量あるいは窒素酸化物の排出量を達成できる」燃料を意味する。 (2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について ア 本願明細書の発明の詳細な説明の記載に係る上記摘示について検討する。 段落【0014】には、「本発明者らは広範囲の燃料を使用して500回以上ものエンジン試験を実施することによって、重要な燃料特性を決定し、本発明で特定するような特性の限界値を定義することに成功した。」と記載されているが、発明の詳細な説明の記載全体をみても、請求項1記載の均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料として、ASTM D 86で測定した95%溜出時の沸点、セタン価、オクタン価及び高圧自己着火温度について、それぞれ具体的に如何なる数値を有する燃料を使用して500回以上ものエンジン試験を実施し、当該実施により得られた実験データに基づいて、どのようにして、重要な燃料特性を決定し、本発明で特定するような特性の限界値、すなわち、「均一予混合圧縮着火エンジンでの使用に適した燃料の特性の範囲」を定義することに成功したのかについては記載されていない。 また、段落【0029】?【0034】には、「ASTM D 86で測定した95%溜出時の沸点が35?350℃の範囲、セタン価が2?20の範囲、オクタン価が63?110の範囲、高圧自己着火温度が400?800℃の範囲」(以下「本願請求項1に記載の範囲」という。)にある燃料が均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料として好ましいことは記載されているものの、このことと「均一予混合圧縮着火エンジン内の全ての燃料が燃焼開始より前に気相に移行することができ、かつ、ピストンが最大機械圧縮点を通過した後に燃料による燃焼が開始するように着火遅れを有」することとどのような関係があるのか不明であるうえ、本願請求項1に記載の範囲にある燃料が均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料として良好であることを示すデータ等の具体的開示はない。さらに、燃料は、「1以上の専用集積回路によって制御して前記均一予混合圧縮着火エンジンに用いる」ものであるところ、「1以上の専用集積回路」による制御の仕方により使用できる燃料も変わるものと解され、この「制御」自体不明であるから、使用できる燃料も具体的に開示されているものとはいえない。そして段落【0022】?【0028】には、請求項1記載の均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料について一般的な記載はあるものの、段落【0022】?【0028】から、請求項1記載の均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料であることで、上記本願発明の解決課題を解決できるとまで認識できるものでない。 以上のとおり、本願発明の詳細な説明の記載は、本願請求項1の燃料が、「均一予混合圧縮着火エンジンの使用に適した燃料の特性の範囲」のものであることを示すに足りるといえる技術的な説明、実験データ等の開示はなく、また当該「範囲」の定義すら明確でないものである。そして、本願の優先日(2001年9月18日)前に、請求項1記載の均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料とすることにより、上記本願発明の解決課題を解決することができる効果を奏するであろうと当業者が認識すべき技術常識が存するものとも認められない。 イ 小括 してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、たとえ技術常識に照らしても、本願請求項1に記載された事項で特定される範囲まで、拡張ないし一般化することができるものではない。 したがって、本願請求項1に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明(本願発明)は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、平成24年10月22日付け審判請求書(請求の理由)の「(3)拒絶の理由1に対する反論」(3頁16行?6頁8行)において、 拒絶査定において、審査官は「特定のセタン価及びオクタン価を満たすことにより、本願発明の課題(均一予混合圧縮着火エンジンに最適な燃料を提供すること)が解決することは当業者の技術常識とはいえない」と認定しているが、平成23年11月16日発送の拒絶理由の通知における刊行物1(SAE TECHNICAL PAPER SERIES,1999年,レポートNo.,1999-01-3679。以下、刊行物1)の記載を参照することにより、本願の出願時において、セタン価及びオクタン価の点から本願発明の課題(特にHCCIエンジンの排出量を低減されせる燃料を定義すること)を解決することができることは、当業者の技術常識の範囲内であり、この認定は誤りであるから、本願の出願時の技術常識に照らせば、本願発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡大ないし一般化することができ、本願発明が上記課題を解決できる理由に関するメカニズム、科学的根拠、あるいは実施例等の追加実験データを本願明細書にさらに記載する必要はなく、本願は特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている旨主張する。 しかしながら、刊行物1を参照しても、本願発明が、段落【0024】「HCCI用燃料の最適な利用のために、HCCIエンジンを設計通り運転できるかどうかは、どのエンジン構成を選択するかによって左右される。……」及び段落【0035】「エンジン用燃料は、1以上のエンジン制御および設計の特徴と組み合わせて使用することができ……」等からみて、すべての場合につき請求項1記載の均一予混合圧縮着火エンジン用の燃料であることにより、上記本願発明の解決課題を解決することができるであろうと当業者が認識することができるとは認められない。 してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、たとえ技術常識に照らしても、本願請求項1に記載された事項で特定される範囲まで、拡張ないし一般化することができるものではない。 (4)検討のまとめ 以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明(本願発明)が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものでなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願請求項1は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではないのであって、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているものではない。 第4 むすび 以上のとおり、本願は、特許法第49条第4号の規定に該当するから、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-16 |
結審通知日 | 2013-10-23 |
審決日 | 2013-11-06 |
出願番号 | 特願2003-529877(P2003-529877) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C10L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤代 亮、細井 龍史 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 新居田 知生 |
発明の名称 | 均一予混合圧縮着火エンジン用燃料 |
代理人 | 大渕 美千栄 |
代理人 | 布施 行夫 |