ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C11D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C11D 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C11D |
---|---|
管理番号 | 1286036 |
審判番号 | 不服2013-17360 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-09 |
確定日 | 2014-04-11 |
事件の表示 | 特願2009-512581「ポリアルキレンオキシド及びビニルエステルをベースとする両染性グラフトポリマーを有する洗浄組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日国際公開、WO2007/138054、平成21年11月12日国内公表、特表2009-538947、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007(平成19)年5月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006(平成18)年5月31日欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成24年3月16日付けで拒絶理由が通知され、平成24年7月23日付けで手続補正がされ、平成25年4月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年9月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?12に係る発明は、平成24年7月23日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明1?12」という)。 「【請求項1】 グラフト基材としての水溶性ポリアルキレンオキシド(A)及びビニルエステル成分(B)の重合により形成される側鎖をベースとする両親媒性グラフトポリマーを含み、前記ポリマーが、平均50アルキレンオキシド単位あたり≦0.6のグラフト部位、及び平均モル質量Mw3000?100000を有する、洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項2】 前記洗濯洗剤又は洗浄組成物が、液体洗濯洗剤組成物、固体洗濯洗剤組成物、硬質表面洗浄組成物、液体食器手洗い用組成物、固体自動食器洗い用組成物、液体自動食器洗い及びタブ/単位用量型自動食器洗い用組成物からなる群から選択される、請求項1に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項3】 前記洗剤又は洗浄組成物が、洗剤又は洗浄組成物の0.05?10重量%の両親媒性グラフトポリマーを含む、請求項1又は2に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項4】 前記両親媒性グラフトポリマーが3以下の多分散性を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項5】 前記両親媒性グラフトポリマーが、ポリマーの10重量%以下の、非グラフト形態のポリビニルエステルを含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項6】 前記両親媒性グラフトポリマーが、 (A)20?70重量%の、グラフト基材としての水溶性アルキレンオキシドと、 (B)(A)の存在下で、 (B1)70?100重量%の、酢酸ビニル及び/又はプロピオン酸ビニル、 並びに、 (B2)0?30重量%の、さらなるエチレン性不飽和モノマーから構成される、30?80重量%のビニルエステル成分のフリーラジカル重合により形成される側鎖と、を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項7】 前記両親媒性グラフトポリマーが、 (A)20?70重量%の、平均モル質量Mn1500?20000の水溶性ポリアルキレンオキシドと、 (C)成分(B)を基準として0.25?5重量%のフリーラジカル形成反応開始剤と、 (D)成分(A)、(B)及び(C)の合計を基準として0?40重量%の有機溶媒と、の存在下で、 反応開始剤(C)が40?500分の分解半減期を有する平均重合温度で、反応混合物中の未反応グラフトモノマー(B)及び反応開始剤(C)の割合がポリアルキレンオキシド(A)に対して常に量的欠乏状態に維持されるように、 (B1)70?100重量%の、酢酸ビニル及び/又はプロピオン酸ビニルと、 (B2)0?30重量%の、さらなるエチレン性不飽和モノマーと、 から構成される、(B)30?80重量%のビニルエステル成分 のフリーラジカル重合により得ることができ、 ポリアルキレンオキシド(A)と未反応グラフトモノマー(B)及び反応開始剤(C)との量比が≧10:1である、請求項1又は2に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項8】 前記洗剤又は組成物が界面活性剤系をさらに含む、請求項1?7のいずれか一項に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項9】 前記界面活性剤系がC10?C15アルキルベンゼンスルホネートを含む、請求項8に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項10】 前記界面活性剤系がC8?C18直鎖アルキルスルホネート界面活性剤を含む、請求項8に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項11】 前記界面活性剤系が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の補助界面活性剤をさらに含む、請求項9又は10に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。 【請求項12】 前記洗剤又は組成物が、洗浄補助添加剤をさらに含む、請求項1?11のいずれか一項に記載の洗濯洗剤又は洗浄組成物。」 第3 原査定の理由の概要 1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物:特開昭62-95399号公報 ・理由1:請求項1?13 ・備考 [請求項1?12について] 引用文献1には、(a)エチレンオキシド等を基礎とする2000?100000の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシドに(b)酢酸ビニルを(a):(b)が1:0.2?1:10の重量比でグラフトさせることにより得られるグラフト共重合物、界面活性剤等を含有する洗剤が記載されている(特許請求の範囲、実施例)。 ここで、引用文献1に記載の発明は、グラフト共重合物の平均50アルキレンオキシド単位あたりのグラフト部位の割合が特定されていない点(相違点1)、及び、グラフト共重合物の平均モル質量Mwの範囲が特定されてない点(相違点2)でそれぞれ本願請求項1、2、4?12に係る発明と相違する。 上記相違点1について検討すると、引用文献1に記載のグラフト重合物は、灰色化防止剤として用いられるものである(請求項1等)。そして、上記グラフト重合物の灰色化防止作用が十分に発揮されるように、グラフト重合物の構造を最適化することは当業者が当然試みることであるところ、引用文献1の第2表の実施例1?10と比較例6を参照すると、酢酸ビニルをグラフトさせた点が灰色化防止作用の向上に寄与しているといえるから、引用文献1に記載の発明において、グラフト重合物の灰色化防止作用が十分に発揮されるように、ポリアルキレンオキシドに対する、酢酸ビニルのグラフト鎖の割合を好ましい範囲に設定することは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願明細書を参照しても、本願請求項1、2、4?12に係る発明が、上記相違点1により当業者が予測し得ない効果を奏するとは認められない。 上記相違点2について検討すると、引用文献1に記載のグラフト重合物の重量平均分子量を、灰色化防止作用の点で好ましい範囲に設定することは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願明細書を参照しても、本願請求項1、2、4?12に係る発明が、上記相違点2により当業者が予測し得ない効果を奏するとは認められない。 さらに、所望の灰色化防止作用が得られるように、グラフト重合物の多分散性の範囲を適宜設定することは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願明細書を参照しても、本願請求項3に係る発明が、多分散性の範囲を特定したことにより当業者が予測し得ない効果を奏するとは認められない。 [請求項13について] 洗剤を不織布と組み合わせたシート状洗剤は周知であるから、引用文献1に記載の洗剤をこのような形態とすることは当業者が容易になし得たことである。 2.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 …… 記 ・理由2、3 発明の詳細な説明の段落【0005】等の記載によると、本願発明の課題は、特に布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去するために、洗濯及び洗浄組成物への添加剤として好適であるポリマーを提供することであると認められる。そして、発明の詳細な説明には、本願請求項1に規定の両親媒性グラフトポリマーを含む洗濯洗剤又は洗浄組成物の配合例が記載されている(実施例7?11)ものの、発明の詳細な説明には、該洗濯洗剤又は洗浄組成物が、布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去する効果を有することを客観的に示したデータは開示されていない。そして、グラフトコポリマーを洗浄剤組成物に配合したときに布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去するという効果があるかどうかは、グラフトコポリマーの主鎖、側鎖の種類や、グラフト化の程度、分子量等から直ちに予測できることではないと解されるから、本願請求項1に規定の両親媒性グラフトポリマーを洗濯洗剤又は洗浄組成物に配合すれば、布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去できるものとなることが出願時の技術常識から推認可能であるとはいえない。したがって、本願請求項1に係る発明を使用できる程度に発明の詳細な説明が記載されているとはいえない。また、上記のような発明の詳細な説明、及び、出願時の技術常識を考慮すると、発明の詳細な説明は、本願請求項1に規定の両親媒性グラフトポリマーを含む洗濯洗剤又は洗浄組成物が、布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去するという本願発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?13に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。よって、請求項1?13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 第4 当審の判断 A.理由1について 1.刊行物の記載事項 刊行物には、「(a)エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを基礎とする2000?100000の分子量(数平均による)を有するポリアルキレンオキシドに(b)酢酸ビニルを(a):(b)が1:0.2ないし1:10の重量比でグラフトさせることにより得られ、そしてそのアセテート基が所望により15%までけん化されているグラフト共重合物を、合成繊維を含有する繊維材料の洗浄及び後処理における灰色化防止剤として使用する方法」が記載されている(特許請求の範囲第1項)。 さらに、刊行物には「本発明により使用されるグラフト共重合物は、市販の洗剤混合物に、これに対し0.1?3重量%好ましくは0.3?2重量%の量で添加される」ことが記載されている(第3頁右下欄8行?11行参照)から、上記刊行物には、「2000?100000の分子量(数平均による)を有するポリアルキレンオキシドに(b)酢酸ビニルを(a):(b)が1:0.2ないし1:10の重量比でグラフトさせることにより得られるグラフト共重合物を灰色化防止剤として含む洗剤」の発明(以下、「引用発明」という)が、実質的に記載されているものと認められる。 2.対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は「グラフト基材としての水溶性ポリアルキレンオキシド(A)及びビニルエステル成分(B)の重合により形成される側鎖をベースとする両親媒性グラフトポリマーを含み、洗濯洗剤又は洗浄組成物」である点で一致しており、一方、本願発明1においては、「前記ポリマーが、平均50アルキレンオキシド単位あたり≦0.6のグラフト部位、及び平均モル質量Mw3000?100000を有する」のに対して、引用発明においては、平均50アルキレンオキシド単位あたりのグラフト部位、及び平均モル質量については記載がない点で相違している。 3.判断 上記相違点について検討する。 引用発明のグラフト共重合物は、(a)ポリアルキレンオキシドに(b)酢酸ビニルを(a):(b)が1:0.2ないし1:10の重量比でグラフトさせることにより得られたものであり、実施例においては、(a):(b)が1:0.6ないし1:3の重量比でグラフトさせたグラフト共重合物を配合した洗剤が灰色化防止効果を有することが記載されている(刊行物の第1表及び第2表参照)。 しかしながら、これらのグラフト共重合物につき、グラフト部位が平均50アルキレンオキシド単位あたり≦0.6との少量であることが記載されていない。加えて、グラフト共重合物のグラフト鎖の含量と灰色化防止作用との関係について何らかの技術常識が存在するわけではないから、グラフト共重合物の灰色化防止作用が十分に発揮されるようにグラフト共重合のグラフト鎖含量を最適化することが当業者により当然試みられることであるということもできない。 したがって、引用発明において、酢酸ビニルをグラフトさせた点が灰色化防止作用の向上に寄与しているとしても、グラフト共重合物の灰色化防止作用が十分に発揮されるようにグラフト共重合物のポリアルキレンオキシドに対する酢酸ビニルのグラフト鎖の割合を好ましい範囲に設定すること、すなわち「平均50アルキレンオキシド単位あたり≦0.6のグラフト部位」に設定することが、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 そして、審判請求書とともに提出された実験報告書によれば、本願発明1の洗剤組成物が従来の洗剤組成物に比べて汚れ除去において当業者が予測し得ない顕著な効果のあることは明らかである。 よって、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本願発明2?12は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明1について検討したのと同様の理由により、上記引用発明及び本願優先日前周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 B.理由2について 本願発明1?12におけるグラフト共重合物の製造方法は、本願明細書の段落【0030】?【0037】に記載されており、また実施例には、具体例として、グラフト部位が平均50アルキレンオキシド単位あたり≦0.6であるグラフトポリマー1?6の製造方法が詳述されている(段落【0075】?【0105】参照)。これらの記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであると認められ、また 、審判請求書とともに提出された実験報告書によれば、本願発明1?12のグラフト共重合物を含有する洗剤組成物が、従来の洗剤組成物に比べて汚れ除去において当業者が予測し得ない顕著な効果のあることは明らかであるから、本願発明1?12のグラフト共重合物を含む洗濯洗剤又は洗浄組成物が、布地及び硬質表面から疎水性汚れを除去するという本願発明1?12の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていないとすることはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1?12は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、また、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-03-31 |
出願番号 | 特願2009-512581(P2009-512581) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(C11D)
P 1 8・ 121- WY (C11D) P 1 8・ 537- WY (C11D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 福井 美穂、中根 知大 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 橋本 栄和 |
発明の名称 | ポリアルキレンオキシド及びビニルエステルをベースとする両染性グラフトポリマーを有する洗浄組成物 |
代理人 | 榎 保孝 |
代理人 | 磯貝 克臣 |
代理人 | 出口 智也 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |