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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L
管理番号 1286215
審判番号 不服2013-4579  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-11 
確定日 2014-04-18 
事件の表示 特願2010-126378号「消防用ホース結合金具」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-252540号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月2日の出願であって、平成24年11月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に明細書及び特許請求の範囲について手続補正がされたものである。

第2 平成25年3月11日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
平成25年3月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】
雌金具と雄金具とを備える差込式の消防用ホース結合金具において、
前記雌金具は、消防用ホースに接続可能な受け金具と、略円筒状の筒部を有し前記受け金具に取り付けられる締め輪と、前記締め輪の前記筒部の内周側に取り付けられるツメ座と、前記ツメ座の内周面から前記ツメ座の径方向の内方へ突出して前記雄金具に係合する結合ツメとを備え、
前記受け金具は、前記雄金具と前記雌金具との結合時の水漏れを防止するシール部材が配置される略円筒状のシール配置部と、前記シール配置部の内径よりも内径の小さな略円筒状に形成され前記雌金具の先端側への前記シール部材の抜けを防止する抜け防止部とを備え、
前記抜け防止部は、前記雌金具の先端側から見たときに前記ツメ座の奥側に配置され、
前記抜け防止部の内周側には、前記雌金具の先端側から基端側に向かってその内径が小さくなる傾斜面が形成されるとともに、前記雌金具の軸方向における前記抜け防止部の内周側の基端側には、その内径が略一定な円筒面が前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端に繋がるように形成され、
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の先端の内径は、前記ツメ座の内径と略等しくなっており、
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径は、前記円筒面の内径と等しくなっており、
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径および前記円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっており、
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の幅は、前記雌金具の軸方向における前記円筒面の幅よりも広くなっており、
前記雌金具の軸方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記雄金具の先端部の外周面の、前記雄金具の軸方向に対する傾斜角度よりも大きくなっていることを特徴とする消防用ホース結合金具。
【請求項2】
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径は、平成4年自治省令第2号「消防用ホースに使用する差込式の結合金具の技術上の規格を定める省令」で規定される規格値となっており、
前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の先端の内径は、前記平成4年自治省令第2号で規定される規格値よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の消防用ホース結合金具。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記雌金具の軸方向における前記抜け防止部の先端から前記雌金具の基端側に向かってその内径が次第に小さくなる略円錐台状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の消防用ホース結合金具。
【請求項4】
前記締め輪は、前記雌金具の先端に配置される略円環状の差込部を備え、
前記差込部は、前記雌金具の先端側から見たときに前記ツメ座の手前側に配置されていることを特徴とする請求項3記載の消防用ホース結合金具。
【請求項5】
前記締め輪は、前記雌金具の先端に配置される略円環状の差込部を備え、
前記差込部は、前記雌金具の先端側から見たときに前記ツメ座の手前側に配置され、
前記差込部の内径は、前記ツメ座の内径以下となっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の消防用ホース結合金具。
【請求項6】
前記締め輪は、前記雌金具の先端に配置される略円環状の差込部を備え、
前記差込部は、前記雌金具の先端側から見たときに前記ツメ座の手前側に配置され、
前記差込部の内径は、前記ツメ座の内径と略等しくなっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の消防用ホース結合金具。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1、請求項8、請求項9を削除するとともに、補正前の請求項2を、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「抜け防止」について、「雌金具の軸方向における前記抜け防止部の内周側の基端側には、その内径が略一定な円筒面が前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端に繋がるように形成され」と限定するとともに、「抜け防止部の傾斜面」について、「傾斜面の先端の内径は、前記ツメ座の内径と略等しくなっており」と限定されていたものを、「雌金具の軸方向における前記傾斜面の先端の内径は、前記ツメ座の内径と略等しくなっており、前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径は、前記円筒面の内径と等しくなっており、前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径および前記円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっており、前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の幅は、前記雌金具の軸方向における前記円筒面の幅よりも広くなっており」とさらに限定して新たな請求項1とするものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項2?6は、本件補正により減縮された請求項1を引用しているから、実質的には補正前の請求項3?7から減縮されている。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用文献の記載事項

(1-1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-187271号公報(以下、「引用文献1」という。)には、段落【0001】?【0009】、【0014】?【0026】の記載事項及び【図1】?【図5】から、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「受け金具3と差し金具2とを備える消防用ホース接続金具において、
前記受け金具3は、ホース1に接続可能な受け金具3と、略円筒状の筒部を有し前記受け金具3に取り付けられる受け部12と、前記受け部12の前記筒部の内周側に取り付けられるツメ座と、前記ツメ座の内周面から前記ツメ座の径方向の内方へ突出して前記差し金具3に係合する係合爪14とを備え、
前記受け金具3は、前記差し金具2と前記受け金具3との結合時の水漏れを防止するパッキン16が配置される略円筒状の凹部と、前記凹部の内径よりも内径の小さな略円筒状に形成され前記受け金具3の先端側への前記シール部材の抜けを防止する抜け防止部とを備え、
前記抜け防止部は、前記受け金具3の先端側から見たときに前記ツメ座の奥側に配置され、
抜け防止部の内周側には円筒面が形成され、
前記受け金具3の円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記差し金具2の先端部の外周面の外径よりも大きくなっている、消防用ホース結合金具。」

(1-2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-136893号公報(以下、「引用文献2」という。)には、段落【0001】?【0006】、【0009】?【0015】の記載事項及び【図1】?【図7】から、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「開口2を有するニップル1と、管14が貫通されニップル1の開口に挿入されるコレット11とからなる管の接続具において、ニップル1の開口2内には、管14の接続時にニップル1と管14との水漏れを防止する密封リング10が配置される略円筒状の密封リング保持環状溝9と、密封リング保持環状溝9の内径よりも内径の小さな略円筒状に形成され密封リング10の抜けを防止する管案内環状突出壁5と、コレット11の舌片13外面に当接するとともにコレット11の舌片13に形成された凹溝13eに嵌合する環状突出壁8とを備え、管案内環状突出壁5及び環状突出壁8のそれぞれの前端面5a、8aが傾斜している管の接続具」

(2)対比・判断
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
後者の「受け金具3」は、その構成及び機能からみて、前者の「雌金具」及び「受け金具」に相当する。以下同様に、後者の「差し金具2」は、前者の「雄金具」に、「消防用ホース接続金具」は「消防用ホース結合金具」に、「ホース1」は「消防用ホース」に、「受け部12」は「締め輪」に、「係合爪14」は「結合ツメ」に、「パッキン16」は「シール部材」に、「略円筒状の凹部」は「略円筒状のシール配置部」にそれぞれ相当する。
また、後者の「抜け防止部の内周側には円筒面が形成され」と前者の「雌金具の軸方向における前記抜け防止部の内周側の基端側には、その内径が略一定な円筒面が前記雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端に繋がるように形成され」とは、「抜け防止部の内周側には円筒面が形成され」という限りにおいて一致し、後者の「受け金具3の円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記差し金具2の先端部の外周面の外径よりも大きくなっている」と前者の「雌金具の軸方向における前記傾斜面の基端の内径および前記円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっており」とは、「雌金具の円筒面の内径は、ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっている」という限りにおいて一致する。
してみると、両者は以下の点で一致する。
(一致点)
「雌金具と雄金具とを備える差込式の消防用ホース結合金具において、
前記雌金具は、消防用ホースに接続可能な受け金具と、略円筒状の筒部を有し前記受け金具に取り付けられる締め輪と、前記締め輪の前記筒部の内周側に取り付けられるツメ座と、前記ツメ座の内周面から前記ツメ座の径方向の内方へ突出して前記雄金具に係合する結合ツメとを備え、
前記受け金具は、前記雄金具と前記雌金具との結合時の水漏れを防止するシール部材が配置される略円筒状のシール配置部と、前記シール配置部の内径よりも内径の小さな略円筒状に形成され前記雌金具の先端側への前記シール部材の抜けを防止する抜け防止部とを備え、
前記抜け防止部は、前記雌金具の先端側から見たときに前記ツメ座の奥側に配置され、
前記抜け防止部の内周側には、その内径が略一定な円筒面が形成され、
前記雌金具の円筒面の内径は、前記ツメ座の内径よりも小さく、かつ、前記雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっている、消防用ホース結合金具。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本件補正発明が、抜け防止部の内周側に、雌金具の先端側から基端側に向かってその内径が小さくなる傾斜面が形成されるとともに、雌金具の軸方向における抜け防止部の内周側の基端側には、その内径が略一定な円筒面が雌金具の軸方向における傾斜面の基端に繋がるように形成され、雌金具の軸方向における傾斜面の先端の内径は、ツメ座の内径と略等しくなっており、雌金具の軸方向における傾斜面の基端の内径は、円筒面の内径と等しくなっており、雌金具の軸方向における傾斜面の基端の内径および円筒面の内径は、ツメ座の内径よりも小さく、かつ、雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっており、雌金具の軸方向における傾斜面の幅は、雌金具の軸方向における円筒面の幅よりも広くなっており、雌金具の軸方向に対する傾斜面の傾斜角度は、雄金具の先端部の外周面の、雄金具の軸方向に対する傾斜角度よりも大きくなっているという構成を有するのに対し、引用発明は、抜け防止部の内周側に、その内径が略一定な円筒面が形成され、雌金具の円筒面の内径は、ツメ座の内径よりも小さく、かつ、雄金具の先端部の外周面の外径よりも大きくなっている点。

以下、上記相違点について検討する。
本件補正発明の課題は、雄金具への雌金具の差込を容易に行うことが可能な消防用ホース結合金具を提供することにあり(発明の詳細な説明、段落【0006】)、さらには、雌金具の先端側から見たときにツメ座の奥側に配置されるシール部材の抜け防止部の形状が雄金具への雌金具の差込性に大きな影響を及ぼしていることを知見するに至り(段落【0007】)、上記相違点に係る本件補正発明の構成に想到したものと認められる。
そこで、上記相違点に係る本件補正発明の構成についてさらに検討すると、ホースの結合金具のみならず、棒状あるいは筒状の部材を開口部に容易に挿入すべく、開口部の端面にテーパ状の傾斜面を設けることは、広く一般的に用いられる周知の事項である。そして、当該消防用ホースの結合金具においても、迅速かつ容易なホースの結合金具が求められることは自明の課題であり、そのような周知の事項を適用すること自体は当業者が容易に想到し得ると認められる。
しかしながら、そのようなテーパ状の傾斜面は、開口部の入口もしくは入口近辺に設ければ、その課題が解決されるものであると理解するのが技術常識である。このことは、従来技術である引用文献1や本件明細書に記載された先行技術文献の特開2005-147370号公報、さらには、「消防用ホースの差込み式結合金具の寸法」に関する「日本工業規格 JIS B9911-1968,」においても、開口部に近い爪にテーパ状の傾斜面が設けられた構成が開示されていることからも理解できる。
そして、本件補正発明は、そのような従来技術をさらに改良すべく、上記明細書段落【0006】に記載の知見に基づき、従来からテーパー状の傾斜面が設けられている爪よりも、更に奥に位置する抜け防止部の内周側に傾斜面を設けることで、本件発明の構成に至ったものである。
一方、引用発明2には、消防ホースではないが、表面に若干の弾性を備えた流体配管路の接続具において、接続具を構成するニップルの開口内に、管案内環状壁と環状突出壁という2つの突出部が設けられ、それらの前端面が傾斜した構成、換言すれば傾斜面が形成された発明が記載されているが、この2つの突出部の傾斜面は、一方は管そのものの案内、他方は、管が貫通されるコレットの舌片の案内のためのものであり、異なる部材をそれぞれ案内する傾斜面であるから、引用発明1と引用発明2とに接した当業者であっても、爪の奥に位置する、抜け防止部の内周側に傾斜面を設けて、上記相違点に係る本件補正発明の構成に至ることは困難といわざるを得ない。

したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2、並びに周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知の事項から当業者が通常予測し得た以上の格別な効果を奏するものと認められる。

本件補正後の請求項2ないし6に係る発明は、本件補正発明の発明特定事項のすべてをその構成の一部とするものであるから、上記理由と同様の理由により、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記 第2で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明は、原査定の拒絶理由で提示した引用文献1、引用文献2に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定の理由により拒絶すべきものとすることはできない。
本願の請求項2ないし6に係る発明は、本願の請求項1に係る発明の発明特定事項のすべてをその構成の一部とするものであるから、上記第2で検討したとおり、引用文献1、引用文献2に記載された発明、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
さらに、原査定の理由で引用した引用文献3を検討しても、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-04-04 
出願番号 特願2010-126378(P2010-126378)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 佳孝西田 侑以横山 幸弘  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 平田 信勝
小関 峰夫
発明の名称 消防用ホース結合金具  
代理人 小平 晋  
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