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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1286245
審判番号 不服2010-29196  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-24 
確定日 2014-03-25 
事件の表示 特願2004-520457「インターロイキン-4およびその突然変異蛋白質の精製法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日国際公開、WO2004/007549、平成18年 2月23日国内公表、特表2006-506332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年7月2日を国際出願日(パリ条約による優先権主張2002年7月15日 欧州特許庁)とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成22年5月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)封入体中に発現させること、
(b)細胞を分解し、封入体を分離すること、
(c)そのように得られた封入体を洗浄すること、
(d)変性により封入体を可溶化させること、
(e)発現生成物を復元すること、および
(f)発現生成物を精製すること、
を含んで成り、(c)で封入体が封入体の表面に結合された脂質もしくは細胞壁断片中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる洗浄剤を含むバッファーで洗浄され、復元(e)が人工的シャペロンの存在下で実施されることを特徴とする、組換え体発現によるインターロイキン-4もしくはインターロイキン-4の突然変異蛋白質の調製法であって、蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内にある、上記調整法。」(以下、「本願発明」という。)
第2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の2000年に頒布された刊行物であるJournal of Biotechnology,2000,Vol.84,p.217-230(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(ア)「インターロイキン-4(IL-4)は様々な免疫反応の制御において重要な役割を果たす複数の機能を有するサイトカインである。しかしながら、治療用医薬へのIL-4又はIL-4変異体の開発はこのタンパク質のvitroでのリフォールディング過程の低い効率により、妨げられている。この研究において、二つの異なる合理的なデザインアプローチを利用してIL-4のリフォールディング収率の改良を研究した。第1は、いわゆる逆疎水性効果に基づくものであり、溶媒に曝露され、保存されていない、疎水性残基(W91)をセリンに置換することを含んでいる。・・・。第2のアプローチは、好ましい局所的な相互作用の導入を通じてαヘリックスの安定化に基づくものである。・・。この変異体タンパク質は0.5kcal mol^(-1)の安定化がなされ、Tmは68℃にシフトし、リフォールディング収率の2倍の増加が常に観察された。」(要約の1?10行)

(イ)「2.4.蛋白質発現
フラスコの振盪培養では、E.coli AD494(DE3)がプラスミドで形質転換された。LB培地の入ったフラスコ(1l)は、単一のコロニーを接種され、37℃でシェーカーでインキュベートされた。OD_(600)が0.5に達した後、IPTGが最終濃度0.16mMで加えられた。その培地は一晩インキュベートされ、細胞は遠心分離により回収された。
より大量の蛋白質を産生するために、10-及び100-lのバイオリアクターで培養がなされた。これらの培養のために、プラスミドは、E.coli W3110(DE3)に形質転換された。その細胞は、37℃で混合培地(・・・)にてバッチ培養により、OD_(600)が3.0となるまで成長させた。この段階で、組み換え蛋白質の発現は0.4-mM IPTGの添加により誘導された。4時間の誘導フェーズの後、細胞は遠心分離により回収された。
封入体(IB)含有量は、野生型IL-4を標準として用いてキャピラリーゲル電気泳動により決定された。・・・。」(220頁右欄1?26行)

(ウ)「2.5 蛋白質精製及びリフォールディング
回収された細胞は、25-mM Tris-HCl,pH 8.0に再懸濁された。細胞の破壊はリゾチーム(1mg g^(-1)細胞乾燥重量)の添加及び30分の室温でのインキュベーションにより酵素的になされた。放出された封入体は8000×g(30 min)の遠心分離で回収された。ペレットは、0.1-M Tris-HCl pH8/1-mM EDTA/0.1% zwittergent に再懸濁し遠心分離(8000×g,15min)することにより、4回洗浄した。洗浄された封入体は8M GdnHCl/0.1M Tris-HCl,pH 9に可溶化された。・・・。リフォールディングは、・・・クロスフローウルトラフィルトレーションにより200-300 mg l^(-1)の蛋白濃度で実施された。」(220頁右欄27行?221頁左欄2行)

(エ)「3.3.リフォールディング収率及び活性分析
表2は、IL-4WT及び二つの変異体を10 lバイオリアクターで過剰発現させた時のリフォールディングデータを示している。3つの他の実験では、1-lの振盪フラスコで及び100 l のスケールのバイオリアクターで、セクション2に記載したように、2回過剰発現された。」(226頁左欄4?10行)

記載事項(イ)?(エ)より、IL-4およびIL-4変異体は、IPTG誘導により封入体中に発現させられたと認められる。

よって、引用例1には、以下の発明が記載されている。
「(a)封入体中に発現させること、
(b)細胞を破壊し、封入体を遠心分離で回収すること、
(c)そのように得られた封入体を洗浄すること、
(d)8M GdnHCl/0.1M Tris-HCl,pH 9により封入体を可溶化させること、
(e)リフォールディングすること、
を含んで成り、前記洗浄で封入体が0.1-M Tris-HCl pH8/1-mM EDTA/0.1% zwittergentで洗浄され、リフォールディングがクロスフローウルトラフィルトレーションで実施されることを特徴とする、組換え体発現によるインターロイキン-4もしくはインターロイキン-4の突然変異蛋白質の調製法であって、(e)リフォールディングが実施される際の蛋白質濃度が、200-300mg l^(-1)の範囲内にある、上記調製法。」(以下、「引用発明」という。)

原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された本願優先日前の2000年に頒布された刊行物であるInternational Immunology,2000,Vol.12,No.9,pp.1255-1265(以下、「引用例3」という。)には、下記の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(オ)「重症筋無力症(MG)は、α_(2)βγδサブユニットにより構成されるオリゴマー膜貫通型糖蛋白質である筋肉のアセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体により引き起こされる自己免疫疾患である。・・・。ヒトAChRαサブユニットの1-207残基であるN末端細胞外フラグメントは、Escherichia coliにおいて、変性型で発現され、グアニジウム塩酸塩含有バッファーで可溶化され、精製され、そして"人工的シャペロン"として界面活性剤及びシクロデキストリンを利用したリフォールディングアプローチにより、復元された。」(要約1?11行)

原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された本願優先日前の1998年に頒布された刊行物であるThe Journal of Biological Chemistry,1998,Vol.273,No.51,pp.33961-33971(以下、「引用例4」という。)には、下記の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(カ)「クエン酸合成酵素の人工的シャペロンアシストリフォールディング」(表題)

(キ)「増加するゲノムの情報にともない、遺伝子工学的手法の能力は、ヘテロな蛋白質発現を非常に重要な生化学的ツールにするものである。不幸なことに、この方法により得られる蛋白質は、しばしば、そのネイティブな形で発現されず、フォールディングが蛋白質産生における重要なステップとなるものである。我々は、化学的に変性された蛋白質を引き続き低分子量の”人工的シャペロン”を添加することによりフォールディングを促進する方法を最近開発した。この方法の豚心臓クエン酸合成酵素への適用の詳細をここに記載する。65%の復元率が達成された。」(要約1?12行)

(ク)「豚心臓クエン酸合成酵素(CS)に対する人工的シャペロンリフォールディング方法の適用を我々はここで議論する。」(33961頁右欄33?34行)

(ケ)「ウルトラフィルトレーションにより精製後のリフォールディングされたCSの分析は、表Iに報告された相対的第1触媒速度は復元率の正確な指標(・・・)を提供するものと考えられる。2ステップのウルトラフィルトレーションプロトコールがリフォールディングされたCSの単離のために採用された。人工的シャペロンプロトコールが完了した後、蛋白質溶液は0.22μm酢酸フィルターを通過させられた。・・・。10,000分子量のカットオフフィルターを用いた第2のフィルトレーションは、リフォールディング過程で用いられた低分子を除去するのに対し蛋白質は維持するものであった。」(33964頁左欄11?22行)

原査定の拒絶の理由で引用文献6として引用された本願優先日前の1996年に頒布された刊行物であるBiochemistry,1996,Vol.35,pp.15760-15771(以下、「引用例6」という。)には、下記の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(コ)「変性還元リゾチームの人工的シャペロンアシストリフォールディング:
復元と凝集の競合の調節」(表題)

(サ)「多くの事例において、変性蛋白質の復元を促進する条件は、蛋白質の凝集もまた促進するものである。なぜならこれらの分子内及び分子間の競合過程は、非共有結合の相互作用が類似したネットワークにより促進されるからである。GroEL/GroESシステム及び関連する生物学的シャペロンは、凝集過程を最小化することにより、基質蛋白質の復元を引き起こすものである。我々は、低分子である”人工的シャペロン”が化学的に変性した状態からの蛋白質のリフォールディングを促進する2ステップによる方法を開発した。最初のステップは、塩化グアニジンを非変性濃度へ希釈しながら、界面活性剤により蛋白質が捕捉される;蛋白質-界面活性剤複合体の形成は、蛋白質の凝集及び適切なリフォールディングの両者を阻害する。第2のステップは、シクロデキストリンが、蛋白質から界面活性剤を奪い、蛋白質のリフォールディングを誘導するものである。天然条件ではジスルフィドを形成する蛋白質に対し、この方法の初めての適用をここに記載する。リゾチーム(ニワトリ卵の白身)は、Gdm変性、DTT還元状態から、最終蛋白質濃度1mg/mLの良好な収率でリフォールディングされるものである。」(要約)

(シ)「^(a)プロトコール:50mg/mLのリゾチームが6M GdmCl,30mM DTT,100mM Tris sulfate,pH8.5で5時間変性された。この溶液は0.29mg/mLリゾチーム・・・記載されている時は5.7 mM界面活性剤(0.175mL)まで希釈された。10分後、これらのアリコットは0.075mLのメチルβシクロデキストリン溶液又は水により、0.2mg/mLリゾチーム・・・記載されている時は、4.0mM界面活性剤及び16.5mMメチルβシクロデキストリンまで、希釈された。・・・。」(15763頁左欄表1の説明の項)

(ス)「可能な限り高い最終濃度で蛋白質のリフォールディングを行うことがしばしば望ましい。界面活性剤及びシクロデキストリン濃度も高めれば、人工的シャペロンプロトコールの最終リゾチーム濃度を高めることができる。例えば、6M GdmCl,30mM DTTで変性還元された50mg/mLリゾチームが、17mM CTABを含むバッファーで35倍希釈され、メチルβシクロデキストリンが引き続き加えられて、最終濃度12mM CTAB,150mMメチルβシクロデキストリン及び1.0 mg/mLリゾチームとした場合、57%の酵素活性が回復した。」(15763頁左欄下から6行?右欄5行)


第3.対比・判断
1.本願発明について
本願発明は、
「【請求項1】
(a)封入体中に発現させること、
(b)細胞を分解し、封入体を分離すること、
(c)そのように得られた封入体を洗浄すること、
(d)変性により封入体を可溶化させること、
(e)発現生成物を復元すること、および
(f)発現生成物を精製すること、
を含んで成り、(c)で封入体が封入体の表面に結合された脂質もしくは細胞壁断片中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる洗浄剤を含むバッファーで洗浄され、復元(e)が人工的シャペロンの存在下で実施されることを特徴とする、組換え体発現によるインターロイキン-4もしくはインターロイキン-4の突然変異蛋白質の調製法であって、蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内にある、上記調整法。」であるが、「蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内にある、」という記載が(a)?(f)のいずれの工程の蛋白質濃度を特定の範囲に限定したものかが、請求項1の記載から明らかであるとはいえない。
そこで、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「蛋白質濃度」に関し、「もう1つのアスペクトにおいて、本発明は比較的高蛋白質濃度のインターロイキン-4もしくはその突然変異蛋白質を復元して高い復元率を与える方法を提供する。」(段落【0014】)と記載され、また、復元に用いる5つの方法についての説明が、「1.マトリックス補助復元」、「2.透析もしくはダイアフィルトレーションによる復元」、「3.希釈による復元」、「4.人工的シャペロン系」、及び「5.その他の方法」と題してなされているが(段落【0041】?【0053】)、このうちの「4.人工的シャペロン系」において、「蛋白質濃度は0.01?1g/L、好ましくは0.1?0.5g/Lの範囲内にある。」(段落【0049】)と記載されている。そして、この他に、発明の詳細な説明中に「蛋白質濃度が0.1?0.5g/L」という記載箇所は見出すことができない。
そうすると、本願発明の「蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内にある、」とは、本願発明の「(e)の人工的シャペロンの存在下で実施される発現生成物を復元すること」における蛋白質濃度を特定の範囲に限定したものと解釈される。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の工程(b)の「破壊」及び「遠心分離で回収」は、本願発明の(b)の「分解」及び「分離」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の(d)の「GdnHCl」とは、塩酸グアニジンのことであるが、塩酸グアニジンは蛋白質の変性剤として一般的に用いられるものであり、また、本願明細書においても、「グアニジン-変性インターロイキン-4」という記載がみられることから(段落【0040】、【0042】等)、引用発明の「8M GdnHCl/0.1M Tris-HCl,pH 9により封入体を可溶化させること」は、本願発明(d)の「変性により封入体を可溶化させること」に相当する。
そして、引用発明の(e)のリフォールディングすることは、本願発明(e)の発現生成物を復元することに相当する。
さらに、本願明細書には、「更に、非イオン性洗浄剤(例えばTriton X-100、Tween-シリーズ、ドデシルマルトシド他)、イオン界面活性剤(例えばSDS、CTAC、CTAB、コール酸およびその誘導体)もしくはもっとも好ましくは双性イオン洗浄剤(例えばZwittergent-シリーズ、CHAPS、CHAPSO、デスオキシコレート)のような、封入体表面に結合された脂質もしくは細胞壁フラグメント中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる適した洗浄剤が洗浄バッファーに含まれなければならない。」(段落【0029】)(下線は当審が付与した。)と記載されていることから、引用発明のzwittergentは、本願発明の「封入体表面に結合された脂質もしくは細胞壁フラグメント中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる適した洗浄剤」に相当するから、引用発明の封入体の洗浄に用いる「0.1-M Tris-HCl pH8/1-mM EDTA/0.1% zwittergent」は、「封入体表面に結合された脂質もしくは細胞壁フラグメント中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる適した洗浄剤を含むバッファー」に相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のようになる。

一致点:「(a)封入体中に発現させること、
(b)細胞を分解し、封入体を分離すること、
(c)そのように得られた封入体を洗浄すること、
(d)変性により封入体を可溶化させること、および
(e)発現生成物を復元すること、
を含んで成り、(c)で封入体が封入体の表面に結合された脂質もしくは細胞壁断片中に含まれる脂質を効果的に可溶化させる洗浄剤を含むバッファーで洗浄され、復元(e)が実施されることを特徴とする、組換え体発現によるインターロイキン-4もしくはインターロイキン-4の突然変異蛋白質の調製法であって、蛋白質濃度が特定の範囲内にある、上記調整法。」

相違点1:本願発明においては、復元(e)が「人工的シャペロンの存在下」「蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内」で実施されるのに対し、引用発明においては、クロスフローウルトラフィルトレーションによりタンパク質濃度が200-300mg l^(-1)の範囲内で実施される点。

相違点2:本願発明においては、「(f)発現生成物を精製すること」を備えているのに対し、引用発明は備えていない点。

3.当審の判断
(1)相違点1について
引用例3、4及び6より、化学的に変性された種々の蛋白質を、人工的シャペロンの存在下でリフォールディングする技術は、本願優先日前における周知技術であったといえる(記載事項(オ)、(カ)、(キ)、(コ)及び(サ))。そして、人工的シャペロンを利用した復元を含む蛋白質の調製法において、豚心臓クエン酸合成酵素では65%もの復元率を達成し(記載事項(キ)参照)、また、ニワトリリゾチームでは57%もの酵素活性が回復されたことが記載されているのだから(記載事項(ス)参照)、引用発明の、化学的変性後の蛋白質の復元の手法であるクロスフローウルトラフィルトレーションにかえて、人工的シャペロンの存在下で実施することは、当業者であれば、容易に想到する事項である。
そして、引用発明において復元工程中の蛋白質濃度は既に着目されている指標であるところ、引用例6には、復元中の蛋白質濃度が0.29mg/mL(第1ステップの界面活性剤添加後)、0.2mg/mL(第2ステップのシクロデキストリン添加後)であることが記載され(記載事項(シ))、さらには、界面活性剤及びシクロデキストリン濃度を調節することで、人工的シャペロンプロトコールの最終蛋白質濃度を調節できる旨記載されているのだから(記載事項(ス))、復元を人工的シャペロンの存在下で実施するに際しても、蛋白質濃度を、引用例6記載事項(シ)に記載された数値を含む適当な範囲に設定することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
混合物から目的とする化合物の濃度を精製により高めることは、当業者に自明の技術的事項であり、引用例4には(記載事項(ク)、(ケ))、人工的シャペロンを用いた復元工程の後に、精製することが具体的に記載されている。
してみれば、上記のとおりにして、インターロイキン4もしくはインターロイキン4の突然変異体タンパク質の調製における復元を人工的シャペロンの存在下で実施するに際し、復元工程の後に目的蛋白質であるインターロイキン4もしくはインターロイキン4変異体を精製することは、当業者が容易
になし得たことである。

そして、本願発明が、引用例1、3、4及び6に記載された事項より、予測し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

4.請求人の主張について
請求人は、平成23年2月3日付け審判請求書の手続補正書において、以下の主張をしている。
ア.蛋白質はリフォールディング過程において異なる行動をとるものであるから、引用例1?6に記載された発明を組み合わせて本願発明をなすことは容易でない。

イ.本願発明の方法は、従来技術の方法に比べて10倍以上も高い濃度である、1000mg/lまでの蛋白質濃度でのリフォールディングを可能とするものであり、有利な効果を奏するものである。

以下、請求人の主張について検討する。
ア.について
蛋白質の種類によりリフォールディング過程が異なるものであっても、第3 3.で述べたとおり、化学的に変性された種々の蛋白質を人工的シャペロンの存在下でリフォールディングすることは、周知であったといえ、蛋白質濃度を適当な範囲に設定することにも困難性はないから、本願発明は、当業者が容易になし得たものであり、本願発明が、引用例及び当業者の技術常識をこえた格別の創意工夫により、初めて達成されたものとも認められない。

イ.について
本願発明は、上記したとおり(第3 1.参照)、「蛋白質濃度が0.1?0.5g/Lの範囲内」で発現生成物を復元するものであり、最大濃度は、0.5g/L(500mg/l)であるから、請求人の主張は、本願発明に対応しておらず、失当である。
仮に、「1000mg/l」ではなく、「0.5g/l」までの蛋白質濃度でのリフォールディングを可能とする点で有利であると主張するのであるとしても、引用例6には、本願発明の範囲内の蛋白質濃度で復元を行ったことが記載され(記載事項(シ)参照)、かつ、可能な限り高い最終濃度で蛋白質のリフォールディングを行うことが望ましいこと、及び、その実現手段も明らかにされているのだから(記載事項(ス)参照)、この点で本願発明が予想外の顕著な効果を奏するとは認められない。

よって、請求人の主張は採用できない。

第4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例1、3、4及び6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-17 
結審通知日 2013-10-22 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2004-520457(P2004-520457)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 大輔  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 田中 晴絵
冨永 みどり
発明の名称 インターロイキン-4およびその突然変異蛋白質の精製法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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