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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1286293 |
審判番号 | 不服2012-24891 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-14 |
確定日 | 2014-03-26 |
事件の表示 | 特願2009-519617「地理情報表示システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日国際公開、WO2008/008724、平成21年12月10日国内公表、特表2009-544074〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007年7月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年7月14日、2007年7月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月23日付けで手続補正されたが、同年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成25年4月15日付けで審尋がなされ、同年8月12日に回答書が提出されたものである。 第2 平成24年12月14日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月14日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正 平成24年12月14日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)による特許請求の範囲の請求項14は、以下のとおりである。 (新請求項14) 「【請求項14】 ウェブブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行することを有するコンピュータにより実現される方法であって、 前記ウェブベースアプリケーションは、 クライアント計算システムのディスプレイ上に地図を表示する処理と、 複数の情報データベースの少なくとも2つの情報データベースの選択を受信する処理と、 前記少なくとも2つの情報データベースの各情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信する処理と、 ユーザのため前記地図上の特定の地理的位置に前記データレコードと、前記データレコードを送信した前記各情報データベースのデータベース名とを同時に表示する処理と、 を実行する方法。」 一方、新請求項14に対応する本件補正前の特許請求の範囲の請求項14は、平成24年7月23日付け手続補正による、以下のとおりである。 (旧請求項14) 「【請求項14】 ウェブブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行することを有するコンピュータにより実現される方法であって、 前記ウェブベースアプリケーションは、 クライアント計算システムのディスプレイ上に地図を表示する処理と、 地理空間、コンテクスト又は時間フィルタ基準に基づき、情報データベースの複数のデータレコードをフィルタリングする処理と、 ユーザのアクセス可能なタイプのデータレコードを指定するためのユーザアクセス権限と、ユーザが嗜好するタイプのデータレコードを指定するためのユーザ嗜好とに基づき、前記複数のデータレコードをフィルタリングする処理と、 前記複数のデータレコードのフィルタリングの結果として前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信する処理と、 ユーザのため前記地図上の特定の地理的位置に前記データレコードを表示する処理と、 を実行する方法。」 したがって、本件補正は、以下の補正事項(a)を含むものである。 (a)旧請求項14の「地理空間、コンテクスト又は時間フィルタ基準に基づき、情報データベースの複数のデータレコードをフィルタリングする処理と、ユーザのアクセス可能なタイプのデータレコードを指定するためのユーザアクセス権限と、ユーザが嗜好するタイプのデータレコードを指定するためのユーザ嗜好とに基づき、前記複数のデータレコードをフィルタリングする処理と」という発明特定事項を、新請求項14から削除する補正。 (2)特許法第17条の2第5項に適合するかについての検討 上記補正事項(a)は、旧請求項14の発明特定事項を新請求項14から削除し、特許請求の範囲を拡張するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しない。 そして、上記補正事項(a)は、明らかに、請求項の削除に該当しない。さらに、誤った記載をその本来の意味内容に正すものでもなく、不明瞭な記載についてその本来の意味内容を明らかにするものであるとも認められないから、誤記の訂正にも明瞭でない記載の釈明にも該当しない。 したがって、上記補正事項(a)は、特許法第17条の2第5項各号に掲げられた事項を目的とするものでないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。 (3)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について (1)本願発明 平成24年12月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年7月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項14に記載されたものと認める。(上記「第2 平成24年12月14日付け手続補正についての補正却下の決定 (1)本件補正(旧請求項14)」参照。) (2)引用発明及び技術的事項 原審の拒絶理由に引用された特開2003-131565号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワークを介して取得した地図上に独自の情報を登録でき、かつ、登録した地図上の情報を閲覧する方法に関する。」(3頁3欄) ロ.「【0015】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき説明を加える。図1は、本発明の実施の形態にかかる地図情報提供システムを利用した情報通信システム10の構成を示す図である。図1に示すように、情報通信システム10は、インターネット12を介して、ユーザが操作するコンピュータであるクライアントマシン14-1、14-2、14-3、・・・(以下、場合により「クライアントマシン14」と称する)と地図情報提供システム16が接続されている。 【0016】地図情報提供システム16は、クライアントマシン14からの各種要求に応じた処理をするサーバ18と、管理者が操作するコンソール20と、クライアントマシン14に配信する地図データを記憶する地図データベース(DB)22と、ユーザの情報を記憶するユーザ情報データベース(DB)24とを有している。なお、図1においては、3台のクライアントマシン14-1?14-3が示されているが、実際には、多数のクライアントマシンがインターネット12に接続され得る。 【0017】地図情報提供システム16は、図2に示すように、インターネット12を介した外部のコンピュータ(たとえば、クライアントマシン14)との通信を制御する通信制御部26と、クライアントマシン14からの検索要求に応答して、地図DB22を検索する検索部28と、クライアントマシン14からの要求にしたがった地図画像を生成する地図画像生成部30と、アクセス元であるユーザを認証する認証部32と、クライアントマシン14において入力画面に入力されたユーザの登録情報に基づき、必要な事項を登録/修正する第1の登録/修正部34と、クライアントマシン14において入力画面に入力された座標情報に基づき、必要な事項を登録/修正する第2の登録/修正部36と、クライアントマシン14からの要求に応じて表示すべき地名などのテキスト、地籍、路線価、都市計画、小/中学区、および、地図のデータ記憶した地図DB22と、クライアントマシン14において登録されたユーザの登録情報を記憶するユーザ情報DB24とを有している。 【0018】次に、地図データを利用した情報通信システム10の処理について詳細に説明する。ユーザはクライアントマシン14を操作することにより、インターネット12を介して地図情報提供システム16にアクセスし、所定の地図データを取得する。クライアントマシン14においては、ブラウザ上で所定のビューワソフトウェアを起動して、取得した地図データに基づく地図画像を表示させる。ビューワソフトウェアは、インターネット12を介して入手して良いことはいうまでもない。 【0019】図3は、本実施の形態にかかる地図情報提供システム16から取得した画像の例を示す図である。ユーザは、地図情報提供システム16にアクセスして、当該地図情報提供システム16から伝達されたログインページに、あらかじめ取得したユーザIDおよびパスワードを入力してログインする。これにより、図3に示す地域選択画像300がクライアントマシン14の表示装置の画面上に表示される。本実施の形態では、地域選択画像300には沖縄県が表示されている。 【0020】図3に示すように、地域選択画像300は、たとえば、北部地区、中部地区などの地域から市町村指定で選択できる市町村選択欄302と、地図上の地域名を選択する地図選択欄304とを有する。ユーザは、クライアントマシン14の画面上に表示された地域選択画像300中で必要な地域や市町村名を選択する。この選択により、たとえば、図4に示すような詳細地図画像400が表示される。 【0021】詳細地図画像400は、地図表示ウィンドウ401と、検索アイコン群405と、キーワード検索欄406と、種々の表示アイコン群407と、登録ボタン408と、座標登録ボタン410とを有する。地図表示ウィンドウ401には、地図画像402が表示され、地図画像調整ボタン群403を操作することにより、地図の拡大、縮小、移動等ができる。また、地図表示ウィンドウ401には、緯度や経度を表示する座標表示欄404が設けられている。 【0022】詳細地図画像400に設けられた検索アイコン群405中の所定のアイコンを選択し、或いは、キーワード検索欄406に検索文字列を入力することにより、住所、地名、企業、公共施設、および、観光案内の項目検索が可能である。また、あいまい検索、自社顧客検索等によるキーワード検索も可能である。さらに、地図画像402に表示されている各種の登録情報を、半径指定、または、バッファ表示などのエリア検索により見出すこともできる。 【0023】また、詳細地図画像400の表示アイコン群407には、都市計画、路線価、小/中学区および地籍アイコンがあり、何れかのアイコンを選択することにより、都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区、地籍図を地図上に重ね合わせて表示することができる。また、表示アイコン群407中の航空写真アイコンを指定することにより、地図画像402に示される領域を含む航空写真のウィンドウを開くことができるようになっている。さらに、ユーザは地図画像402において所望の点を指定することにより、その間の距離を測定することもできる。」(4頁6欄?5頁8欄) ハ.「【0032】次に、図2、図4、図7および図8を参照して、ユーザの座標登録手順を説明する。この例においても、データ通信に先立って、クライアントマシン14と地図情報提供システム16のサーバ18との間の通信路が確立され、かつ、クライアントマシン14が、サーバ18にログインしている。 【0033】図7は、ユーザにより座標登録ボタン410が指定された(オンされた)場合の処理を示している。ユーザがクライアントマシン14を操作することにより、インターネット12を介して地図情報提供システム16のサーバ18に画像の送信を要求する(ステップ701)。サーバ18の検索部28は、ユーザが指定した地域を検索して(ステップ702)、地図DB22から検索された領域の地図画像のデータを読み出す(ステップ703)。地図画像生成部30は、読み出されたデータに基づいて地図画像を生成し、これをクライアントマシン14に送る(ステップ704)。 【0034】ユーザは、クライアントマシン14の表示装置の画面上に表示された詳細地図画像400を参照し、座標登録ボタン410を押す(ステップ705)。これにより、座標を登録するための座標入力シート800がサーバ18に対して要求される(ステップ706)。サーバ18は、所定の項目の入力欄を備えた座標入力シート800をクライアントマシン14に送り(ステップ707)、ユーザはクライアントマシン14の表示装置の画面上に表示された座標入力シート800の記入欄中に必要事項を入力する(ステップ708)。 【0035】たとえば、図8に示すように、座標入力シート800には、緯度記入欄801、経度記入欄802、登録者ID記入欄803、名称記入欄804、住所記入欄805、登録業種記入欄806、業種記入欄807、電話番号記入欄808、備考記入欄809、および、URL記入欄810などが含まれる。ユーザは、図5等を参照して説明した登録の際と同様に、上記記入欄中に必要事項を入力し、或いは、メニューから所定の文字列を選択する。 【0036】ユーザが、座標入力シート800の記入欄に入力した内容を確認した後に、登録ボタン811を押すと、座標入力シート800がサーバ18に送られる(ステップ709)。サーバ18により受理された座標入力シート800は、第2登録/修正部36にて処理され、ユーザ情報DB24に記憶される(ステップ710)。ここでは、ユーザIDと関連付けられて、座標入力シート800に記入された位置を示す情報、つまり、緯度記入欄801および経度記入欄802に記入された情報と、座標入力シート800に含まれる他の情報群(名称、住所、登録業種、業種等)とが、ユーザ情報DB24中に記憶される。この座標入力シートに入力され、ユーザ情報DB24に記憶された他の情報群も、ユーザ固有の情報を構成する。このようにして、座標登録ボタン410の指定に基づく登録処理は終了する。以下のステップは、登録された情報が表示される際に実行される処理である。 【0037】ユーザが、クライアントマシン14を操作し、インターネット12を介して地図情報提供システム16のサーバ18に接続して、地図画像の送信を要求する(ステップ711)。サーバ18は、要求に応答して、送信要求にかかる地図の領域に含まれるようなユーザ情報を、ユーザ情報DB24から読み出すとともに(ステップ712)、当該領域の地図のデータを地図DB22から読み出す(ステップ713)。上記ステップ713においても、ユーザIDとユーザが送信要求した地図の領域とに基づき、ユーザ情報DB24中の、当該ユーザIDと関連付けられた情報のうち、地図の領域に含まれる位置が付与されたものが選択される。 【0038】地図画像生成部30は、ユーザ情報DB24から取得した情報に基づき、所定のシンボルが付与された地図画像を作成し(ステップ714)、クライアントマシン14に送る(ステップ715)。これにより、クライアントマシン14の表示装置の画面上には、ユーザ自身が登録した位置に、所定のシンボルが付与された地図画像を表示することができる。なお、上記地図中に表示されるシンボルは、図5のステップ501?511にて登録された事項に関するもの、および、図7のステップ701?710にて登録された事項に関するものの双方が含まれる。 【0039】情報入力シート600、および、座標入力シート800の各記入欄に入力された情報は、地図画像402上のシンボルを選択することにより、図9に示すように、登録情報表示ウィンドウ900に表示される。登録情報表示ウィンドウ900には、図5のステップ501?511にて登録された項目、或いは、図7のステップ701?711にて登録された項目が含まれる。これには、たとえば、登録者ID901、名称902、住所903、登録業種904、業種905、電話番号906、その他907、および、URL908の各記載欄が含まれる。」(6頁10欄?7頁12欄) なお、原文の上記ロ.の【0023】には「路線化」と記載されているが、その2行前に「路線価」との記載があり、「路線化」は「路線価」の明らかな誤記と認め、上記ロ.の【0023】のように認定した。 A 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0018】における「地図データを利用した情報通信システム10の処理について詳細に説明する。ユーザはクライアントマシン14を操作することにより、インターネット12を介して地図情報提供システム16にアクセスし、所定の地図データを取得する。クライアントマシン14においては、ブラウザ上で所定のビューワソフトウェアを起動して、取得した地図データに基づく地図画像を表示させる。」との記載、同ロ.の【0020】における「ユーザは、クライアントマシン14の画面上に表示された地域選択画像300中で必要な地域や市町村名を選択する。この選択により、たとえば、図4に示すような詳細地図画像400が表示される。」との記載、図1及び図4によれば、情報通信システム(10)は、ブラウザを用いてビューワソフトウェアを起動して地図画像を表示させるものである。ここで、ビューワソフトウェアは、クライアントマシン(14)において、詳細地図画像(400)を表示させる以上、(α)クライアントマシン(14)のディスプレイ上に詳細地図画像(400)を表示することは明らかである。 また、上記ロ.の【0023】における「詳細地図画像400の表示アイコン群407には、都市計画、路線価、小/中学区および地籍アイコンがあり、何れかのアイコンを選択することにより、都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区、地籍図を地図上に重ね合わせて表示することができる。」との記載、及び図4によれば、情報通信システム(10)は、表示アイコン(407)を選択することにより、(β)詳細地図画像(400)上に重ね合わせて都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を表示することができる。ここで、同ロ.の【0017】における「表示すべき地名などのテキスト、地籍、路線価、都市計画、小/中学区、および、地図のデータ記憶した地図DB22」との記載によれば、情報通信システム(10)は、(γ)表示アイコン(407)を選択することにより、地図DB(22)の都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を読み出している。そして、情報通信システム(10)は、インターネット(12)を介して、クライアントマシン(14)が所定の地図データを取得する以上、(δ)地図DB(22)から取得される都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を、クライアントマシン(14)に送信していることは明らかである。 また、ソフトウェアの観点から見ると、ブラウザ上で動作するビューワソフトウェアとサーバ側で協調して動作するソフトウェアは、これらをまとめて、ウェブベースアプリケーションということができる。そうすると、上記(α)?(δ)は、方法としてまとめると、ブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行するコンピュータにより実現される方法ということができる。 したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行するコンピュータにより実現される方法であって、 前記ウェブベースアプリケーションは、 クライアントマシン(14)のディスプレイ上に詳細地図画像(400)を表示する処理と、 表示アイコン(407)を選択することにより、地図DB(22)の都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を読み出す処理と、 前記地図DB(22)から取得される都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を前記クライアントマシン(14)に送信する処理と、 前記詳細地図画像(400)上に重ね合わせて前記都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を表示する処理と、 を実行する方法。」 B 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ハ.の【0034】における「ユーザは、クライアントマシン14の表示装置の画面上に表示された詳細地図画像400を参照し、座標登録ボタン410を押す(ステップ705)。・・・」との記載、及び図7によれば、情報通信システム(10)は、ユーザの座標登録を行うことができるものである。 また、上記ハ.の【0036】における「ユーザが、座標入力シート800の記入欄に入力した内容を確認した後に、登録ボタン811を押すと、座標入力シート800がサーバ18に送られる(ステップ709)。サーバ18により受理された座標入力シート800は、第2登録/修正部36にて処理され、ユーザ情報DB24に記憶される(ステップ710)。ここでは、ユーザIDと関連付けられて、座標入力シート800に記入された位置を示す情報、つまり、緯度記入欄801および経度記入欄802に記入された情報と、座標入力シート800に含まれる他の情報群(名称、住所、登録業種、業種等)とが、ユーザ情報DB24中に記憶される。この座標入力シートに入力され、ユーザ情報DB24に記憶された他の情報群も、ユーザ固有の情報を構成する。」との記載、及び図7によれば、前述のユーザの座標登録は、ユーザ情報DB(24)にユーザ固有の情報を登録するものである。 また、上記ハ.の【0037】における「ユーザが、クライアントマシン14を操作し、インターネット12を介して地図情報提供システム16のサーバ18に接続して、地図画像の送信を要求する(ステップ711)。サーバ18は、要求に応答して、送信要求にかかる地図の領域に含まれるようなユーザ情報を、ユーザ情報DB24から読み出すとともに(ステップ712)、当該領域の地図のデータを地図DB22から読み出す(ステップ713)。上記ステップ713においても、ユーザIDとユーザが送信要求した地図の領域とに基づき、ユーザ情報DB24中の、当該ユーザIDと関連付けられた情報のうち、地図の領域に含まれる位置が付与されたものが選択される。」との記載、及び図7によれば、情報通信システム(10)は、ユーザIDと関連付けられた情報のうち、地図の領域に含まれる位置が付与されたものがユーザ情報DB(24)から選択される。すなわち、ユーザIDと、ユーザ固有の情報を登録するユーザ座標登録とに基づき、ユーザ固有の情報が選択されることが読み取れる。 したがって、引用例には、以下の技術的事項(以下、「技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。 ブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行するコンピュータにより実現される方法において「ユーザIDと、ユーザ固有の情報を登録するユーザ座標登録とに基づき、ユーザ固有の情報を選択する技術。」 (3)対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 a.引用発明の「ブラウザ」は、上記引用例の上記ロ.の【0018】における「ユーザはクライアントマシン14を操作することにより、インターネット12を介して地図情報提供システム16にアクセスし、所定の地図データを取得する。」との記載、及び図1によれば、インターネット(12)を介して地図データを取得しているから、本願発明の「ウェブブラウザ」と実質的な差異はない。 b.引用発明の「クライアントマシン(14)」は、本願発明の「クライアント計算システム」に相当する。 c.引用発明の「詳細地図画像(400)」、「地図DB(22)」及び「都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図」は、本願発明の「地図」、「情報データベース」及び「複数のデータレコード」にそれぞれ含まれる。 d.引用発明の「表示アイコン(407)を選択することにより」と、本願発明の「地理空間、コンテクスト又は時間フィルタ基準に基づき」とは、いずれも、「特定の条件に基づき」という点で一致する。 e.引用発明の「読み出す」は、表示アイコン(407)を選択することにより、地図DB(22)から都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を選別しているから、「フィルタリング」ということができる。 f.引用発明の「取得される」は、地図DB(22)から抽出して取得されるから、「抽出される」ということができる。 g.引用発明の「都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図」は、詳細地図画像(400)の特定の地理的位置に対応付けられることは明らかであるから、「特定の地理的位置に係るデータレコード」ということができる。 h.引用発明の「前記詳細地図画像(400)上に重ね合わせて前記都市計画図、路線価を図表化した図、小学区や中学区又は地籍図を表示する」は、上記c.及びg.の対比を考慮すれば、「ユーザのため前記地図上の特定の地理的位置に前記データレコードを表示する」ということができる。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 <一致点> 「ウェブブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行することを有するコンピュータにより実現される方法であって、 前記ウェブベースアプリケーションは、 クライアント計算システムのディスプレイ上に地図を表示する処理と、 特定の条件に基づき、情報データベースの複数のデータレコードをフィルタリングする処理と、 前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信する処理と、 ユーザのため前記地図上の特定の地理的位置に前記データレコードを表示する処理と、 を実行する方法。」 <相違点1> 「特定の条件に基づき」に関し、 本願発明は、「地理空間、コンテクスト又は時間フィルタ基準に基づき」であるのに対し、 引用発明は、「表示アイコン(407)を選択することにより」である点。 <相違点2> 「ウェブベースアプリケーション」の処理に関し、 本願発明は、「ユーザのアクセス可能なタイプのデータレコードを指定するためのユーザアクセス権限と、ユーザが嗜好するタイプのデータレコードを指定するためのユーザ嗜好とに基づき、前記複数のデータレコードをフィルタリングする処理」を備えるのに対し、 引用発明は、その様な処理を備えていない点。 <相違点3> 「前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信する処理」に関し、 本願発明は、「前記複数のデータレコードのフィルタリングの結果として」前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信するのに対し、 引用発明は、その様な特定がない点。 (4)判断 そこで、まず、上記相違点1について検討する。 データベースの検索において、地理空間、コンテクストで検索することは、例えば、上記引用例の上記ロ.の【0022】における「キーワード検索欄406に検索文字列を入力することにより、住所、地名、企業、公共施設、および、観光案内の項目検索が可能である。また、あいまい検索、自社顧客検索等によるキーワード検索も可能である。」との記載のように周知である。また、時間フィルタ基準に基づき検索することも、例えば、特開2002-297654号公報(段落【0037】における「ユーザはたとえば「2001年2月28日午前8時ごろ」・・といった表示指示を・・表示対象時刻・時間指示入力端子112・・から入力する。」、図1)に開示されているように周知である。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、本願発明のように「地理空間、コンテクスト又は時間フィルタ基準に基づき」フィルタリングすることは格別に困難なことではない。 次に、上記相違点2及び3について検討する。 上記引用例には、ブラウザを用いてウェブベースアプリケーションを実行するコンピュータにより実現される方法において「ユーザIDと、ユーザ固有の情報を登録するユーザ座標登録とに基づき、ユーザ固有の情報を選択する技術。」(技術的事項)が記載されているところ、「ユーザID」は、ユーザ固有の情報と関連付けられ、ユーザIDに係るユーザのみにアクセスする権限があるから、「ユーザのアクセス可能なタイプのデータレコードを指定するためのユーザアクセス権限」ということができ、また、「ユーザ固有の情報を登録するユーザ座標登録」は、ユーザ固有の情報は、ユーザが嗜好するタイプのデータレコードといえ、これを登録するユーザ座標登録は、当該データレコードを指定するためのユーザ嗜好を表しているから、「ユーザが嗜好するタイプのデータレコードを指定するためのユーザ嗜好」ということができるものである。 そうすると、引用発明に上記技術的事項を付加して、本願発明のように「ユーザのアクセス可能なタイプのデータレコードを指定するためのユーザアクセス権限と、ユーザが嗜好するタイプのデータレコードを指定するためのユーザ嗜好とに基づき、前記複数のデータレコードをフィルタリングする処理」を備えること(相違点2)は格別に困難なことではない。その際、「前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信する処理」に関し、本願発明のように「前記複数のデータレコードのフィルタリングの結果として」前記情報データベースから抽出される特定の地理的位置に係るデータレコードを前記クライアント計算システムに送信すること(相違点3)は当然である。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、技術的事項及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-23 |
結審通知日 | 2013-10-29 |
審決日 | 2013-11-11 |
出願番号 | 特願2009-519617(P2009-519617) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 早川 学 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 酒井 伸芳 |
発明の名称 | 地理情報表示システム及び方法 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |